説明

信号記録装置

【課題】 高速運動する運動体を確実に測定しつつリアルタイムで測定状況を確認する。
【解決手段】 第1モードでは、CPU14は、A/Dコンバータ11、CPLD12を介して入力された測定データをすべてブルートゥース無線通信モジュール15に供給する。ブルートゥース無線通信モジュール15は、すべての測定データをリアルタイムで通信端末装置30に送信する。第2モードでは、ブルートゥース無線通信モジュール15は、測定データを間引いて得られた間欠データを、通信端末装置30を介してホストコンピュータ40に送信する。CPLD12は、A/Dコンバータ11から入力されるすべての測定データをメモリ13に書き込む。測定終了後に、メモリ13のデータは、読み出されて、ホストコンピュータ40に送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号記録装置に係り、特に、所定の軌跡上を高速で運動するサイクルを繰り返す運動体に取り付けられた状態で該運動体に関する信号を記録する信号記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外部からの電力供給を受けることなくアナログ量を測定・収集し、コンピュータを使用した多様なデータ解析を行なうための小型データ収集装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された小型データ収集装置は、アナログ/デジタル変換機能、データ記録部へデータを記録する機能、及びデータ記録部に記録されたデータを外部のパーソナルコンピュータに出力する機能を有するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータ及びデータ記録部に電力を供給する電池とを含んで構成されたデータ収集装置本体を備えており、データ収集装置本体には複数のアナログセンサが接続されている。
【0004】
このような構成の小型データ収集装置は、他からの電源供給を必要とせず、限られた狭い空間に設置できるように小型に成形されている。そして、複数の異なるアナログ量を測定・収集し、かつ汎用のパーソナルコンピュータを用いて複数の異なるアナログ量を多様に解析することができる。
【0005】
また、測定データを無線で送信する装置として、テレメータシステム、無線データ送信機、無線LANなどが、従来から用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−159817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたような、リアルタイム送信機能を持たないデータ収集装置は、測定対象に独立して装着されるため、測定対象物の運動中では、測定データを外部に伝えることができない。このため、測定対象物の状況、測定が正しく実行されているか否かが分からないという問題がある。
【0008】
また、測定データを無線で送信するアナログ型テレメータは、電波状態によってノイズが発生して、良好な状態で測定することが困難である。
【0009】
また、ディジタル型のデータ送信装置は、上述のようなノイズの問題だけでなく、小型化を図ろうとすると、データ転送速度が遅くなってしまう。このため、高速サンプリングを必要とする高周波の測定信号には対応できない問題があった。また、データ転送速度を上げようとすると、複雑な回路が必要になってデータ送信装置が大型になってしまい、高速運動の測定対象物に装着できない問題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、高速運動する運動体を確実に測定しつつリアルタイムで測定状況を確認することができる信号記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る信号記録装置は、所定の軌跡上を運動するサイクルを繰り返す運動体に取り付けられ、前記運動体と一体に運動しつつ該運動体の状態に応じた信号を記録する信号記録装置であって、前記運動体の状態に応じた信号を入力する信号入力手段と、前記信号入力手段に入力された信号をアナログ信号からディジタル信号へ変換するアナログ/ディジタル変換手段と、前記アナログ/ディジタル変換手段によりディジタル信号に変換された信号を記憶する記憶手段と、前記アナログ/ディジタル変換手段によりディジタル信号に変換された信号を無線又は赤外線で通信する通信手段と、を備え、前記通信手段は、転送レートが前記信号入力手段に入力される信号のサンプリングレートを超えているときに前記信号入力手段に入力されディジタル信号に変換された信号のすべてを通信し、前記転送レートが前記サンプリングレート以下のときに前記ディジタル信号に変換された信号から間引かれた信号を通信すると共に間引かれる前の前記ディジタル信号の全てを前記記憶手段に記憶する。
【0012】
したがって、信号記録装置は、運動体と一体になって運動すると共に、運動体の状態に応じた信号をディジタル信号に変換して記憶手段に記憶し、その信号を通信することにより、運動体の状態に応じた信号を確実に記録することができると共に、通信先においてその信号をリアルタイムでモニタすることができる。
【0013】
通信手段は、転送レートが前記信号入力手段に入力される信号のサンプリングレートを超えているときに前記信号入力手段に入力されディジタル信号に変換された信号のすべてを通信し、前記転送レートが前記サンプリングレート以下のときに前記ディジタル信号に変換された信号から間引かれた信号を通信すると共に間引かれる前の前記ディジタル信号の全てを前記記憶手段に記憶する。これにより、入力された信号のサンプリングレートがどのような値であっても、少なくとも入力された信号の状況をモニタすることができる。
【0014】
また、上記信号記録装置は、前記通信手段の通信先に設けられた第1の電磁結合手段と対になる第2の電磁結合手段と、前記第2の電磁結合手段により得られた電力を電源として蓄積する蓄積手段と、を更に備えてもよい。これにより、信号記録装置は、外部から供給される電源を用いて回路を動作させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る信号記録装置は、運動体の状態に応じた信号をディジタル信号に変換して記憶手段に記憶し、その信号を無線又は赤外線で通信することにより、運動体の状態に応じた信号を確実に記録することができると共に、通信先においてその信号をリアルタイムでモニタすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る運動体測定システムの構成図である。
【図2】データ収録装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】データ収録装置の動作モードと転送レートとの関係を示す図である。
【図4】第3の実施形態に係るデータ収録装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】運動体が往復運動をする場合の通信端末装置の設置場所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る運動体測定システムの構成図である。運動体測定システムは、所定の軌跡上を高速で運動するサイクルを繰り返す運動体5を測定するものである。運動体測定システムは、運動体5に取り付けられたデータ収録装置10と、データ収録装置10との間で無線通信を行う通信端末装置30と、通信端末装置30からのデータを受信するホストコンピュータ40と、を備えている。
【0019】
なお、図1において、運動体5は2つのプーリー間で一定の張力で掛けられたベルト部材であるが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、運動体5は、所定の軌跡上を運動するサイクルを繰り返すものであればよい。
【0020】
図2は、データ収録装置10の詳細な構成を示すブロック図である。データ収録装置10は、運動体と一体になって運動して、運動体の状態に応じた測定信号を記録する。運動体の状態に応じた測定信号とは、例えば、運動体の温度、運動体の速度などを表す信号である。
【0021】
データ収録装置10は、アナログ信号である運動体の測定信号をディジタル信号の測定データに変換するA/Dコンバータ11と、測定データの書き込みや読み出しを制御するCPLD(Complex Programmable Logic Device)12と、測定データを記憶するメモリ13と、全体的な制御を行うCPU(Central Processing Unit)14と、ブルートゥース無線通信を行うブルートゥース無線通信モジュール15と、無線アンテナ16と、を備えている。
【0022】
データ収録装置10は、更に、電磁結合コイル21と、電磁誘導を行う電磁誘導回路22と、電磁誘導回路22により得られた電力を電源として後述の充電式電池24に充電する電源・充電回路23と、各回路に供給すべき電源を蓄積する充電式電池24と、を備えている。
【0023】
通信端末装置30は、データ収録装置10に対して給電すると共に、データ収録装置10からのデータを受信する。通信端末装置30は、データ収録装置10からの電波を受信するための無線アンテナ31と、電磁結合コイル21との間で電磁結合を行うための電磁結合コイル32と、を備えている。電磁結合コイル32には通信端末装置30から電流が供給され、電磁結合コイル32から磁界が発生している。また、通信端末装置30は、USBケーブルを介してホストコンピュータ40に接続されている。
【0024】
運動体5の測定時では、データ収録装置10は、運動体5と共に回転して、同じ軌跡をたどるように移動する。そして、データ収録装置10が通信端末装置30の近傍を通過する毎に、電磁結合コイル21と電磁結合コイル32が電磁結合を行う。電磁誘導回路22は、電磁結合により電力を発生し、その電力を、電源・充電回路23を介して充電式電池24に蓄積する。電源・充電回路23は、充電式電池24に蓄積された電力を電源電圧としてCPU14やその他の回路に供給する。
【0025】
一方、CPLD12は、A/Dコンバータ11を介して供給された運動体5の測定データを、メモリ13に書き込むと共にCPU14に供給する。CPU14は、測定データをブルートゥース無線通信モジュール15に供給すると共に、ブルートゥース無線通信モジュール15に測定データの無線通信を指示する。ブルートゥース無線通信モジュール15は、無線アンテナ16を介して、通信端末装置30に対して測定データを無線通信する。
【0026】
以上のように構成されたデータ収録装置10は、測定対象物である運動体5の状態に応じて以下の2つのモードのいずれかで動作する。
【0027】
図3は、データ収録装置10の動作モードと転送レートとの関係を示す図である。ブルートゥースのデータ転送レートを100kbs(消費電力が少ない低速転送モード)とした場合、1データを64ビット(2バイト4チャンネル)とすると、送信可能データは約1500データ/secとなる。この転送レートを境にして、モードが分かれている。
【0028】
(第1モード:ディジタルテレモード)
第1モードは、温度測定のように、比較的低速な現象を測定するときに最適なモードである。サンプリングレートが転送レート1500データ/sec以下の場合、データ収録装置10のCPU14は、A/Dコンバータ11、CPLD12を介して入力された測定データをすべてブルートゥース無線通信モジュール15に供給する。ブルートゥース無線通信モジュール15は、すべての測定データをリアルタイムで通信端末装置30に送信する。これにより、ホストコンピュータ40は、通信端末装置30を介して、運動体5の測定データをリアルタイムで受信することができる。なお、ホストコンピュータ40がすべての測定データを受信すると、測定が終了する。
【0029】
(第2モード:リアルタイムモニタモード)
第2モードは、高速に変化する現象を測定するに当たり、1500データ/secを超えるサンプリングレートが必要なときに最適なモードである。
【0030】
サンプリングレートが1500データ/secを超えると、ブルートゥース無線通信モジュール15はすべての測定データをリアルタイムで送信することができない。そこで、CPU14は、A/Dコンバータ11、CPLD12を介して入力された測定データを間引きして、このデータ(間欠データ)をブルートゥース無線通信モジュール15に供給する。このとき、CPU14は、サンプリングレートとブルートゥース無線通信モジュール15の転送レートとに基づいて、間欠データの時間間隔が等しくなるように演算するとよい。ブルートゥース無線通信モジュール15は、間欠データを、通信端末装置30を介してホストコンピュータ40に送信する。なお、CPU14は測定データのすべてをブルートゥース無線通信モジュール15に供給し、ブルートゥース無線通信モジュール15が測定データを間引いて無線通信してもよい。
【0031】
測定データが無線で通信端末装置30に送信される一方で、CPLD12は、A/Dコンバータ11から入力されるすべての測定データをメモリ13に書き込む。
【0032】
これにより、ホストコンピュータ40は測定データの状態をリアルタイムでモニタすることができ、必要なデータはすべてデータ収録装置10のメモリ13に記憶される。そして、すべての測定データがメモリ13に記憶され、測定が終了すると、メモリ13に記憶された測定データは、CPLD12、CPU14、無線アンテナ16を介して、通信端末装置30に送信される。よって、ホストコンピュータ40は、測定終了後に、運動体5の測定データをすべて取得することができる。
【0033】
以上のように、データ収録装置10は、一定の軌跡を移動する運動体5の測定データを記憶するメモリ13と、その測定データを無線通信によって通信端末装置30及びホストコンピュータ40に送信するするブルートゥース無線通信モジュール15を備えている。これにより、ホストコンピュータ40がリアルタイムで運動体5の現象を確認することができると共に、小型化・軽量化されたデータ収録装置10が運動体5の測定データのすべてを取得することができる。
【0034】
特に、第1モードでは、ホストコンピュータ40は運動体5の測定データをすべてリアルタイムで取得することができる。第2モードでは、ホストコンピュータ40は運動体5の間欠的な現象をリアルタイムで確認すると共に、データ収録装置10が運動体5のすべての測定データを取得することができる。また、第1及び第2モードでは、測定中であってもデータ収録装置10とホストコンピュータ40との通信が確立されているので、測定中にデータ収録装置10の設定を変更することも可能である。
【0035】
[第2の実施形態]
つぎに、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る運動体測定システムは、運動体5の近くに通信端末装置30を設置することができない場合にデータ収録装置10単独で動作させるものである。
【0036】
データ収録装置10は、図2に示した回路から、電磁結合コイル21、電磁誘導回路22、電源・充電回路23、充電式電池24を除いた構成となっている。これにより、データ収録装置10は、第1の実施形態に比べて、小型化・軽量化を実現することができる。
【0037】
本実施形態では、データ収録装置10は、測定時においては、通信端末装置30との間で無線通信を行うことができず、更に通信端末装置30から給電されない。そこで、データ収録装置10のCPU14は、ブルートゥース無線通信モジュール15を停止させて、消費電力を抑制している。
【0038】
運動体5の測定時では、測定データはすべてメモリ13に記憶される。測定終了後、ユーザは運動体5からデータ収録装置10を取り外して、データ収録装置10を通信端末装置30に近づければよい。このときデータ収録装置10のメモリ13に記憶された測定データは、CPLD12、CPU14、無線アンテナ16を介して、通信端末装置30に送信される。よって、ホストコンピュータ40は、測定終了後に、運動体5の測定データをすべて取得することができる。
【0039】
以上のように、第2の実施形態に係るデータ収録装置10は、運動体5の運動に与える影響を最小限にするように、小型化・軽量化されている。このため、様々な運動体5にデータ収録装置10を装着することができる。
【0040】
[第3の実施形態]
図4は、第3の実施形態に係るデータ収録装置10の詳細な構成を示すブロック図である。
【0041】
データ収録装置10は、図2に示したCPLD12、CPU14、ブルートゥース無線通信モジュール15の代わりに、これらを一体化したブルートゥース内蔵CPU17を備えている。ブルートゥース内蔵CPU17は、無線アンテナ16を介して、無線通信するためのブルートゥース通信回路17aを備えている。上記データ収録装置10は、1個のICチップ(ブルートゥース内蔵CPU17)で主な機能を実行することができるので、第1の実施形態のデータ収録装置10に比べて、より小型化・軽量化されている。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で設計上の変更をされたものにも適用可能であるのは勿論である。例えば、第1乃至第3の実施形態では、測定データの入力チャンネルが1つの場合を例に挙げたが、入力チャンネルは2つ以上であってもよい。また、第1の実施形態において、運動体5が往復運動をする場合、通信端末装置30の設置場所を次のようにするとよい。
【0043】
図5は、運動体5が往復運動をする場合の通信端末装置30の設置場所を示す図である。同図に示すように、データ収録装置10が運動体5と共に往復運動の端点に達したときに、データ収録装置10の電磁結合コイル21と通信端末装置30の電磁結合コイル32が近接するように、通信端末装置30が配置されている。
【0044】
これにより、データ収録装置10が運動体5と共に往復運動の端点に達したときに、データ収録装置10の電磁結合コイル21と通信端末装置30の電磁結合コイル32が近接する時間が長くなり、通信端末装置30からデータ収録装置10への電力供給量を増加させることができる。
【0045】
また、第1乃至第3の実施形態において、データ収録装置は、ブルートゥース無線通信モジュール15の代わりに、通信端末装置30との間で赤外線通信を行うための赤外線通信モジュールを設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 データ収録装置
11 A/Dコンバータ
12 CPLD
13 メモリ
14 CPU
15 ブルートゥース無線通信モジュール
16 無線アンテナ
21 電磁結合コイル
22 電磁誘導回路
23 電源・充電回路
24 充電式電池
30 通信端末装置
40 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軌跡上を運動するサイクルを繰り返す運動体に取り付けられ、前記運動体と一体に運動しつつ該運動体の状態に応じた信号を記録する信号記録装置であって、
前記運動体の状態に応じた信号を入力する信号入力手段と、
前記信号入力手段に入力された信号をアナログ信号からディジタル信号へ変換するアナログ/ディジタル変換手段と、
前記アナログ/ディジタル変換手段によりディジタル信号に変換された信号を記憶する記憶手段と、
前記アナログ/ディジタル変換手段によりディジタル信号に変換された信号を無線又は赤外線で通信する通信手段と、
を備え、
前記通信手段は、転送レートが前記信号入力手段に入力される信号のサンプリングレートを超えているときに前記信号入力手段に入力されディジタル信号に変換された信号のすべてを通信し、前記転送レートが前記サンプリングレート以下のときに前記ディジタル信号に変換された信号から間引かれた信号を通信すると共に間引かれる前の前記ディジタル信号の全てを前記記憶手段に記憶する信号記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−118079(P2010−118079A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38852(P2010−38852)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【分割の表示】特願2005−162820(P2005−162820)の分割
【原出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】