説明

偏光子の製造方法、偏光子、偏光板、光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】 テンター方式等により幅方向に親水性ポリマーフィルムを延伸しても、光学特性の低下が抑制された偏光子を製造可能な偏光子の製造方法を提供する。
【解決手段】 親水性ポリマーフィルム1の幅方向の両端を把持手段2により把持し、前記把持手段2を前記フィルム1の長手方向に進行させると共に、前記フィルム1の両端を把持する前記把持手段2の双方を前記フィルム1の幅方向の外側にも移動させることで前記フィルム1を幅方向に延伸する幅方向延伸工程と、前記フィルム1を二色性物質により染色する染色工程とを有する偏光子の製造方法において、前記幅方向延伸工程後、開放位置Xにおいて前記フィルム1を前記把持手段2から開放し、前記開放位置Xから固定位置Yに前記フィルム1を移動させ、前記固定位置Yにおいて把持手段2で前記フィルム1の幅方向の両端を固定して幅方向内側への移動を制限することで、前記フィルム1の幅方向の収縮を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子の製造方法、偏光子、偏光板、光学フィルムおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パソコン、携帯電話等の各種液晶表示装置(LCD)には、偏光子が用いられている。LCDでは、液晶セルの表裏に吸収軸(吸収が生じる光の振動方向)が直交関係となるように偏光子が配置される。通常、前記偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを二色性物質で染色し、前記PVAフィルムを長手方向に一軸延伸することで作製されている(例えば、特許文献1参照)。PVAフィルムを一軸延伸すると、PVA分子に吸着(染色)した二色性物質が配向するため、偏光子となる。この場合、偏光子の吸収軸は、その長手方向に現れる。
【0003】
前記偏光子は、所定の大きさにカットされ、その長手方向と、それと直交する幅方向とを組み合わせて用いることにより、前記液晶セルの表裏での吸収軸の直交関係が達成される。したがって、LCDでは、前記偏光子を90度回転させた関係で用いることとなる。ここで、前記液晶セルの表裏に適用する同一サイズの偏光子を得る場合、前記偏光子の大きさの上限は、前記幅方向の長さとなる。PVAフィルムをその長手方向に一軸延伸する従来の偏光子の製造方法では、前記PVAフィルムの延伸時にその幅方向に収縮が起こる。このため、従来の製造方法で得られる偏光子は、その幅方向の長さに限界があり、LCDの大画面化に応じた偏光子の大型化の要求に対応できないという問題があった。
【特許文献1】特開2001−305347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記偏光子の大型化には、PVAフィルムを、その幅方向に一軸延伸することで対応することが考えられる。前記PVAフィルムを幅方向に一軸延伸する手段としては、例えば、テンター方式等が挙げられる。しかしながら、前記PVAフィルムをテンター方式で幅方向に一軸延伸した場合、前記PVAフィルムがテンタークリップから開放された後、前記PVAフィルムの幅方向(延伸方向)に収縮が起こり、得られる偏光子に二軸性が強く発現し、その光学特性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、テンター方式等により幅方向に親水性ポリマーフィルムを延伸しても、光学特性の低下が抑制された偏光子を製造可能な偏光子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の偏光子の製造方法は、
連続的に供給される親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を把持手段により把持し、前記把持手段を前記親水性ポリマーフィルムの長手方向に進行させると共に、前記親水性ポリマーフィルムの両端を把持する前記把持手段の少なくとも一方を前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の外側にも移動させることで前記親水性ポリマーフィルムを幅方向に延伸する幅方向延伸工程と、
前記親水性ポリマーフィルムを二色性物質により染色処理する染色工程とを有し、
前記幅方向延伸工程を、前記染色工程および前記染色工程とは別の工程の少なくとも一つの工程において実施する偏光子の製造方法であって、
さらに、前記幅方向延伸工程後、開放位置において前記親水性ポリマーフィルムを前記把持手段から開放する開放工程と、
前記開放位置から固定位置に前記親水性ポリマーフィルムを移動させ、前記固定位置において幅方向両端固定手段で前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を固定して幅方向内側への移動を制限することにより、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の収縮を抑制する幅方向両端固定工程とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の偏光子は、前記本発明の偏光子の製造方法により製造された偏光子である。
【0008】
本発明の偏光板は、偏光子の少なくとも一方の表面に保護層が積層された偏光板であって、前記偏光子が、前記本発明の偏光子であることを特徴とする。
【0009】
本発明の光学フィルムは、偏光子または偏光板の少なくとも一方の表面に位相差板が積層された光学フィルムであって、前記偏光子が、前記本発明の偏光子であり、前記偏光板が、前記本発明の偏光板であることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像表示装置は、偏光子、偏光板および光学フィルムの少なくとも一つを含む画像表示装置であって、前記偏光子が、前記本発明の偏光子であり、前記偏光板が、前記本発明の偏光板であり、前記光学フィルムが、前記本発明の光学フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の偏光子の製造方法では、親水性ポリマーフィルムを把持手段から開放した後、幅方向両端固定工程を実施し、同工程において、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の収縮を抑制する。この結果、本発明の製造方法で得られる偏光子では、二軸性の発現が少なく、光学特性の低下が抑制される。本発明の製造方法は、大型の偏光子の製造に好ましく用いられるが、これに限定されず、各種サイズの偏光子の製造にも適用できる。なお、親水性ポリマーフィルムの幅方向の収縮の問題は、本発明者等が初めて見出したものである。本発明によれば、この親水性ポリマーフィルムの幅方向の収縮の問題が解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、前記光学特性には、例えば、二色比、単体透過率、偏光度等が含まれる。
【0013】
本発明の製造方法において、前記幅方向両端固定手段は、例えば、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を把持する把持手段であってもよい。
【0014】
本発明の製造方法において、前記幅方向両端固定手段は、例えば、前記親水性ポリマーフィルムを、その上下方向から2本のロールでピンチするロールピンチ手段であってもよい。
【0015】
本発明の製造方法では、前記開放工程および前記幅方向両端固定工程において、前記開放位置での前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(W)と、前記開放位置から前記固定位置までの距離(L)との比(L/W)を、0.2以下とすることが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法では、前記開放工程および前記幅方向両端固定工程において、前記開放位置での前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(W)と、前記固定位置での前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(W)との比である幅残存率(W/W)を、0.92以上とすることが好ましい。
【0017】
本発明の製造方法において、さらに、前記親水性ポリマーフィルムを乾燥させる乾燥工程を有し、前記乾燥工程を、少なくとも前記幅方向両端固定工程後に実施することが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法において、前記開放工程を省略し、前記幅方向両端固定工程を、前記幅方向延伸工程における幅方向延伸処理終了後、前記把持手段による前記フィルム幅方向両端の把持を継続して前記フィルムの幅方向の長さを一定に保持しながら、前記乾燥工程に移行することで実施してもよい。
【0019】
本発明の製造方法において、前記乾燥工程直前の前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さをW、前記乾燥工程後の前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さをWとしたとき、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。

{−0.66×(L×W)+1.05}×(W/W)≧0.92 (1)
:開放位置での親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(mm)
L:開放位置から固定位置までの距離(mm)
:乾燥工程直前の親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(mm)
:乾燥工程後の親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(mm)

【0020】
本発明の製造方法において、前記別の工程は、例えば、前記親水性ポリマーフィルムを膨潤させる膨潤工程、および前記親水性ポリマーフィルムを架橋する架橋工程等がある。
【0021】
本発明の製造方法において、前記膨潤工程、前記染色工程、前記架橋工程および前記幅方向延伸工程の少なくとも一つの工程において、気相中で、前記親水性ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に液を接触させることが好ましい。この場合において、前記液の接触は、前記液の噴霧および塗布の少なくとも一方により実施することが好ましい。
【0022】
本発明において、前記液には、例えば、後述の膨潤液、染色液、架橋液、延伸液、調整液等が含まれる。
【0023】
本発明の偏光子の製造方法において、前記親水性ポリマーフィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく、前記二色性物質はヨウ素が好ましい。
【0024】
つぎに、本発明の偏光子の製造方法について、例を挙げて、以下に説明する。本発明の製造方法は、親水性ポリマーフィルムを材料とし、例えば、膨潤工程、染色工程、架橋工程、調整工程、乾燥工程等の一連の工程を有し、これらの工程の少なくとも一つにおいてまたは別個に前記幅方向延伸工程を実施し、前記幅方向延伸工程後、前記開放工程および前記幅方向両端固定工程を実施する。
【0025】
(1)親水性ポリマーフィルム
前記親水性ポリマーフィルムとしては、特に制限されず、従来公知のフィルムが使用できる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィレム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系フィルムや、これらの部分ケン化フィルム等の親水性ポリマーフィルム等が挙げられる。また、これらの他にも、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム、延伸配向されたポリビニレン系フィルム等も使用できる。これらの中でも、後述する二色性物質であるヨウ素による染色性に優れることから、PVA系ポリマーフィルムが好ましい。
【0026】
前記PVA系ポリマーフィルムの原料ポリマーとしては、例えば、酢酸ビニルを重合した後にケン化したものや、酢酸ビニルに対して、少量の不飽和カルボン酸や不飽和スルホン酸等の共重合可能なモノマーを共重合したポリマー等が挙げられる。前記PVA系ポリマーの重合度は、特に制限されないが、水に対する溶解度の点等から、500〜10000の範囲が好ましく、より好ましくは、1000〜6000の範囲である。また、前記PVA系ポリマーのケン化度は、75モル%以上が好ましく、より好ましくは、98〜100モル%の範囲である。
【0027】
前記親水性ポリマーフィルム(例えば、PVA系フィルム)は、ロールに巻回した原反フィルムの形態が好ましい。前記親水性ポリマーフィルム(例えば、PVA系フィルム)の厚みは、特に制限されないが、例えば、15〜110μmの範囲であり、好ましくは、38〜110μmの範囲であり、より好ましくは、50〜100μmの範囲であり、さらに好ましくは、60〜80μmの範囲である。
【0028】
(2)幅方向延伸工程
まず、フィルム幅方向に延伸する幅方向延伸工程について説明する。なお、偏光子の製造は、例えば、膨潤工程、染色工程、架橋工程、調整工程、乾燥工程という順で実施することが一般的である。前述のように、前記幅方向延伸工程は、これらの各工程で実施してもよいし、別個独立に実施してもよい。図1に、本工程の一例を模式的に示す。図示のように、本工程においては、連続的に供給される親水性ポリマーフィルム1の幅方向(同図において左右方向)の両端を、把持手段2により把持する。そして、矢印Aに示すように、前記把持手段2を前記親水性ポリマーフィルム1の長手方向(同図において上方向)に進行させる。これにより、矢印Bに示すように、前記親水性ポリマーフィルム1は、その長手方向(同図において上方向)に搬送される。それと共に、矢印Cに示すように、前記親水性ポリマーフィルム1の両端を把持する前記把持手段2の双方を前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向にも移動させることで、前記親水性ポリマーフィルム1を幅方向に延伸する。なお、図1は、前記親水性ポリマーフィルム1の両端を把持する前記把持手段2の双方を前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の外側に移動させることで、前記親水性ポリマーフィルム1を幅方向に延伸する場合を示している。ただし、本発明は、これに限定されるものではなく、前記親水性ポリマーフィルム1の両端を把持する前記把持手段2の一方のみを前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の外側に移動させることで、前記親水性ポリマーフィルム1を幅方向に延伸してもよい。
【0029】
前記把持手段2により前記親水性ポリマーフィルム1が把持された状態を、図2に示す。図2(A)に示すように、この把持手段2は、回転軸21、上把持部22および下把持部23を備える。前記上把持部22は、前記回転軸21により前記把持手段2の内側(同図において左側)に動かすことが可能である。この状態で、図2(B)に示すように、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の一端を前記下把持部23の上に載せ、前記上把持部22を前記親水性ポリマーフィルム1の上面と接するまで前記把持手段2の外側(同図において右側)に動かすことで、前記親水性ポリマーフィルム1を把持する。
【0030】
図3は、図1の一部の拡大図である。前記把持手段2により前記親水性ポリマーフィルム1が把持される部分(つかみしろ)の長さ(同図におけるa)は、特に制限されないが、例えば、10〜100mmの範囲であり、好ましくは、10〜75mmの範囲であり、より好ましくは、25〜75mmの範囲であり、前記つかみしろの幅(同図におけるb)は、特に制限されないが、例えば、5〜50mmの範囲であり、好ましくは、10〜30mmの範囲であり、より好ましくは、10〜20mmの範囲である。また、前記親水性ポリマーフィルム1の長手方向に隣接する前記把持手段2の間の距離(同図におけるc)は、短いほど好ましいが、例えば、1〜20mmの範囲であり、好ましくは、3〜10mmの範囲であり、より好ましくは、3〜6mmの範囲である。
【0031】
前述のとおり、本工程において、気相中で、前記親水性ポリマーフィルムの少なくとも一方の面を液に接触させることが好ましい。前記液の接触は、前記液の噴霧および塗布の少なくとも一方により実施することが好ましい。
【0032】
前記親水性ポリマーフィルムに前記液を噴霧する手段としては、任意の適切な噴霧装置が用いられる。前記噴霧装置としては、例えば、扶桑精機(株)製の商品名「MKシリーズ」、DeVILBISS社製の商品名「T−AFPV」、ACCUSPLAY社製の商品名「56シリーズ」等が挙げられる。前記噴霧装置において、噴霧用ノズルの数は、例えば、1〜10個の範囲であり、好ましくは、1〜8個の範囲であり、より好ましくは、1〜4個の範囲であり、前記噴霧用ノズルの孔径は、例えば、0.3〜2mmの範囲であり、好ましくは、0.5〜1.5mmの範囲であり、より好ましくは、0.75〜1mmの範囲であり、前記噴霧用ノズル1個当たりの流量は、例えば、10〜1200mL/秒の範囲であり、好ましくは、10〜700mL/秒の範囲であり、より好ましくは、50〜400mL/秒の範囲であり、噴霧空気圧力は、例えば、0.03〜3MPaの範囲であり、好ましくは、0.1〜1MPaの範囲であり、より好ましくは、0.2〜0.5MPaの範囲であり、噴霧角度は、例えば、45°〜135°の範囲であり、好ましくは、60°〜120°の範囲であり、より好ましくは、80°〜100°の範囲である。
【0033】
前記液の噴霧において、前記噴霧装置の噴霧用ノズルと前記親水性ポリマーフィルムとの間の距離は、前記噴霧空気圧力等に応じて適宜に決定することができるが、15cm以下の範囲が好ましい。前記距離を前記範囲とすることで、前記液をロスなく、確実に前記親水性ポリマーフィルムに接触させることができる。
【0034】
前記液の噴霧時間は、特に制限されないが、20秒以上の範囲が好ましく、より好ましくは、30〜120秒の範囲であり、さらに好ましくは、40〜60秒の範囲である。また、前記親水性ポリマーフィルムへの前記液の噴霧量は、特に制限されないが、0.06〜0.19mL/1cmの範囲が好ましい。そして、前記液の温度は、特に制限されないが、例えば、40〜70℃の範囲であり、好ましくは、50〜70℃の範囲であり、より好ましくは、60〜70℃の範囲である。
【0035】
前記親水性ポリマーフィルムに前記液を塗布する手段としては、ロールコータ、ダイコータ、バーコータ、スライドコータ、カーテンコータ等、従来公知の手段を取ることができる。なお、前記液の接触において、前記液の噴霧および塗布を併用してもよい。
【0036】
前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の延伸処理は、例えば、従来公知のテンター延伸機、手延伸機等を用いて実施することができる。この幅方向延伸工程における前記親水性ポリマーフィルムの合計延伸倍率は、例えば、延伸前のフィルム(原反)の長さに対して、例えば、2〜12倍の範囲であり、好ましくは、3〜10倍の範囲であり、より好ましくは、4〜8倍の範囲である。
【0037】
前記幅方向延伸工程は、前述のように、膨潤工程、染色工程、架橋工程、調整工程等の各工程で実施してもよいし、別個独立に実施してもよい。前記幅方向延伸工程を、別個独立に実施する場合には、例えば、前記親水性ポリマーフィルムを、延伸液に接触させながら延伸する。
【0038】
前記延伸液としては、特に制限されないが、例えば、ホウ酸、ヨウ化カリウム、各種金属塩やその他のヨウ化化合物、亜鉛化合物等を含む溶液が使用できる。この溶液の溶媒としては、例えば、水、エタノール等が使用できる。具体的には、例えば、ホウ酸およびヨウ化カリウムを含むことが好ましく、前記両者の含有量は、例えば、合計で2〜18重量%の範囲であり、好ましくは、合計で4〜17重量%の範囲であり、より好ましくは、合計で6〜15重量%の範囲である。また、前記ホウ酸(A)とヨウ化カリウム(B)との含有割合(A:B(重量比))は、例えば、1:0.1〜1:4の範囲であり、好ましくは、1:0.2〜1:3.5の範囲であり、より好ましくは、1:0.5〜1:3の範囲である。
【0039】
(3)開放工程および幅方向両端固定工程
前記幅方向延伸工程後、開放位置において前記親水性ポリマーフィルムを前記把持手段から開放する。ついで、前記開放位置から固定位置に前記親水性ポリマーフィルムを移動させ、前記固定位置において幅方向両端固定手段で前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を固定して幅方向内側への移動を制限する。これにより、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の収縮を抑制する。前記幅方向延伸工程後に、前記親水性ポリマーフィルムが前記把持手段から開放されると、そのままの状態では、前記親水性ポリマーフィルムが幅方向に収縮する。本発明の製造方法では、この親水性ポリマーフィルムの幅方向の収縮を抑制することを特徴とし、これにより、得られる偏光子の光学特性の低下を抑制する。
【0040】
図4に、本工程の一例を模式的に示す。この例では、前記幅方向固定手段が、前記親水性ポリマーフィルムの両端を把持する把持手段である。なお、同図においては、便宜上、図1と異なり、その左右方向を前記親水性ポリマーフィルムの長手方向、その上下方向を前記親水性ポリマーフィルムの幅方向としている。図示のように、前記幅方向延伸工程後、まず、開放位置Xにおいて前記親水性ポリマーフィルム1を前記把持手段2から開放する。ついで、前記開放位置Xから固定位置Yに前記親水性ポリマーフィルム1を移動させ(矢印A)、前記固定位置Yにおいて第2の把持手段2により前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の両端を把持する。これにより、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向内側への移動を制限する。前記第2の把持手段2としては、前記幅方向延伸工程で用いた把持手段を、再度、利用してもよい。また、前記第2の把持手段2は、前記幅方向延伸工程で用いたのとは別の把持手段であってもよい。
【0041】
前記開放位置Xでの前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の長さWは、特に制限されないが、例えば、1500〜3000mmの範囲であり、好ましくは、1800〜2500mmの範囲であり、より好ましくは、2000〜2200mmの範囲である。また、前記開放位置Xから前記固定位置Yまでの距離Lは、短いほど好ましく、例えば、100〜500mmの範囲であり、好ましくは、100〜300mmの範囲であり、より好ましくは、100〜200mmの範囲である。ここで、前述のとおり、前記L/Wは、0.2以下であることが好ましい。前記L/Wを0.2以下とすることで、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の収縮を、より好適に抑制できる。前記L/Wは、より好ましくは、0.03〜0.15の範囲であり、さらに好ましくは、0.03〜0.1の範囲である。
【0042】
前記固定位置Yでの前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の長さWは、例えば、1425〜2850mmの範囲であり、好ましくは、1710〜2375mmの範囲であり、より好ましくは、1900〜2090mmの範囲である。また、前述のとおり、前記幅残存率(W/W)は、0.92以上であることが好ましい。前記幅残存率(W/W)を0.92以上とすることで、得られる偏光子の光学特性の低下を、より好適に抑制できる。前記幅残存率(W/W)は、より好ましくは、0.93〜0.98の範囲であり、さらに好ましくは、0.95〜0.98の範囲である。
【0043】
図5に、本工程のその他の例を模式的に示す。この例では、前記幅方向固定手段が、ロールピンチ手段であり、前記固定位置Yで、前記親水性ポリマーフィルム1を、その上下方向から2本のロール3でピンチする(挟み込む)ことで、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向内側への移動を制限している。前記ロール3の直径は、大きいほど好ましい。これは、前記ロール3の直径が大きければ、前記ロール3により近い位置まで前記把持手段2で前記親水性ポリマーフィルム1の両端を把持しておくことができる(前記開放位置Xから前記固定位置Yまでの距離Lを、より短くできる)からである。すなわち、前記ロール3の直径を大きくすれば、前記ロール3の中心軸を前記親水性ポリマーフィルム1の表面からより遠ざけることができる。この結果、前記ロール3により近い位置まで、前記親水性ポリマーフィルム1の表面(幅方向の両端)から前記把持手段2を取り除かなくとも、前記把持手段2と前記ロール3とをぶつからないようにすることができる。前記ロール3の直径は、例えば、200〜500mmの範囲であり、好ましくは、300〜400mmの範囲であり、より好ましくは、300〜350mmの範囲である。
【0044】
本発明の製造方法においては、前記開放工程を省略することもできる。この場合には、前記幅方向延伸工程における幅方向延伸処理終了後、前記幅方向両端固定工程において、前記把持手段による前記フィルム幅方向両端の把持を継続する。これにより、前記幅方向両端固定工程を、前記フィルムの幅方向の長さを一定に保持しながら実施する。その後、そのままの状態で、後述の乾燥工程に移行する。このようにすることでも、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向内側への移動を制限し、その幅方向の収縮を抑制できる。
【0045】
(4)膨潤工程
前記親水性ポリマーフィルムを、まず、膨潤液に接触させて膨潤させる。
【0046】
前記膨潤液としては、例えば、水、グリセリン水溶液、ヨウ化カリウム水溶液等が使用できる。
【0047】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施する場合の前記親水性ポリマーフィルムに前記膨潤液を接触させる手段および条件等については、前記幅方向延伸工程で述べたとおりである。
【0048】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施しない場合(例えば、無延伸処理、以下同じ)には、前記膨潤液の接触は、例えば、前記膨潤液への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬等により行われてもよい。この場合には、膨潤浴が用いられる。この場合における前記膨潤液(膨潤浴)への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬時間は、特に制限されないが、例えば、20〜300秒の範囲であり、好ましくは、30〜200秒の範囲であり、より好ましくは、30〜120秒の範囲であり、前記膨潤液(膨潤浴)の温度は、例えば、20〜45℃の範囲であり、好ましくは、25〜40℃の範囲であり、より好ましくは、27〜37℃の範囲である。
【0049】
(5)染色工程
つぎに、前記膨潤後の親水性ポリマーフィルムを、二色性物質を含む染色液に接触させる。
【0050】
前記二色性物質としては、従来公知の物質が使用でき、例えば、ヨウ素や有機染料等が挙げられる。前記有機染料を使用する場合には、例えば、可視光領域のニュートラル化を図る点より、二種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0051】
前記染色液としては、前記二色性物質を溶媒に溶解した溶液が使用できる。前記溶媒としては、例えば、水が使用できるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されてもよい。前記溶液における二色性物質の濃度は、特に制限されないが、例えば、0.005〜0.40重量%の範囲であり、好ましくは、0.01〜0.30重量%の範囲である。
【0052】
また、前記二色性物質としてヨウ素を使用する場合、溶解度、染色効率等をより一層向上できることから、ヨウ素に加えて、助剤としてヨウ化物をさらに添加することが好ましい。前記ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等があげられる。これらのヨウ化物の添加割合は、前記染色液において、0.05〜10重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.10〜5重量%の範囲である。
【0053】
例えば、ヨウ素とヨウ化カリウムとを組み合わせて使用する場合、前記溶液におけるヨウ素(A)とヨウ化カリウム(B)の割合(A:B(重量比))は、例えば、1:5〜1:100の範囲であり、好ましくは、1:7〜1:50の範囲であり、より好ましくは、1:10〜1:30の範囲である。
【0054】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施する場合の前記親水性ポリマーフィルムに前記染色液を接触させる手段および条件等については、前記幅方向延伸工程で述べたとおりである。
【0055】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施しない場合には、前記染色液の接触は、例えば、前記染色液への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬等により行われてもよい。この場合には、染色浴が用いられる。この場合における前記染色液(染色浴)への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬時間は、特に制限されないが、例えば、10〜90秒の範囲であり、好ましくは、15〜60秒の範囲であり、より好ましくは、20〜45秒の範囲であり、前記染色液(染色浴)の温度は、例えば、5〜42℃の範囲であり、好ましくは、10〜35℃の範囲であり、より好ましくは、12〜30℃の範囲である。
【0056】
(6)架橋工程
つぎに、前記染色処理後の親水性ポリマーフィルムを、架橋剤を含む架橋液に接触させる。
【0057】
前記架橋剤としては、従来公知の物質が使用でき、例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物等があげられる。これらは一種類で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記架橋液としては、前記架橋剤を溶媒に溶解した溶液が使用できる。前記溶媒としては、例えば、水が使用できるが、さらに水と相溶性のある有機溶媒を含んでもよい。
【0058】
前記溶液における架橋剤の濃度は、特に制限されないが、例えば、前記溶媒(例えば、水)100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、1.5〜8重量部の範囲であり、さらに好ましくは、2〜6重量部の範囲である。
【0059】
前記架橋液は、偏光子の面内の均一な特性が得られる点から、前記ホウ素化合物の他に、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を含んでいてもよい。これらの中でもホウ酸とヨウ化カリウムとの組み合わせが好ましい。前記溶液における前記助剤の含有量は、例えば、0.05〜15重量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜8重量%の範囲である。
【0060】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施する場合の前記親水性ポリマーフィルムに前記架橋液を接触させる手段および条件等については、前記幅方向延伸工程で述べたとおりである。
【0061】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施しない場合には、前記架橋液の接触は、例えば、前記架橋液への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬等により行われてもよい。この場合には、架橋浴が用いられる。この場合における前記架橋液(架橋浴)への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬時間は、特に制限されないが、例えば、5〜150秒の範囲であり、好ましくは、10〜90秒の範囲であり、より好ましくは、20〜40秒の範囲であり、前記架橋液(架橋浴)の温度は、例えば、20〜70℃の範囲であり、好ましくは、40〜60℃の範囲である。
【0062】
(7)調整・乾燥工程
最後に、前記親水性ポリマーフィルムをヨウ化物含有水溶液(調整液)に接触させた後、乾燥することにより、本発明の偏光子が得られる。
【0063】
前記ヨウ化物含有水溶液におけるヨウ化物としては、前述のものが使用でき、その中でも、例えば、ヨウ化カリウムやヨウ化ナトリウム等が好ましい。このヨウ化物含有水溶液によって、前記幅方向延伸工程において使用した残存するホウ酸を、親水性ポリマーフィルムから洗い流すことができる。
【0064】
前記水溶液が、ヨウ化カリウム水溶液の場合、その濃度は、例えば、0.5〜20重量%の範囲であり、好ましくは、1〜15重量%の範囲であり、より好ましくは、1.5〜7重量%の範囲である。
【0065】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施する場合の前記親水性ポリマーフィルムに前記調整液を接触させる手段および条件等については、前記幅方向延伸工程で述べたとおりである。
【0066】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施しない場合には、前記調整液の接触は、例えば、前記調整液への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬等により行われてもよい。この場合には、調整浴が用いられる。この場合における前記調整液(調整浴)への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬時間は、特に制限されないが、例えば、2〜15秒の範囲であり、好ましくは、3〜12秒の範囲であり、前記調整液(調整浴)の温度は、例えば、15〜40℃の範囲であり、好ましくは、20〜35℃の範囲である。
【0067】
乾燥は、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥等、従来公知の方法で実施すればよい。加熱乾燥の場合は、特に制限されないが、温度25〜60℃の範囲が好ましく、より好ましくは、30〜50℃の範囲であり、さらに好ましくは、30〜45℃の範囲である。
【0068】
前述のとおり、本発明の製造方法においては、この乾燥工程を、少なくとも前記幅方向両端固定後に実施することが好ましい。図5に示した場合を例に、この乾燥工程について説明する。この例では、乾燥工程Dが、固定位置Yで前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向内側への移動を制限した直後から実施されている。また、この例では、3本の搬送ロール4を用いて、前記親水性ポリマーフィルム1をその長手方向(同図において右方向)に搬送しながら、乾燥工程Dが実施されている。
【0069】
前記乾燥工程D直前の前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の長さWは、例えば、1425〜2850mmの範囲であり、好ましくは、1710〜2375mmの範囲であり、より好ましくは、1900〜2090mmの範囲である。前述のとおり、この例では、乾燥工程Dを、固定位置Yで前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向内側への移動を制限した直後から実施しているため、前記Wが、前記固定位置Yでの前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の長さWと同じになっている。前記乾燥工程D後の前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さWは、例えば、1380〜2760mmの範囲であり、好ましくは、1656〜2300mmの範囲であり、より好ましくは、1840〜2024mmの範囲である。また、本発明の製造方法においては、前述のとおり、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。下記式(1)の関係を満たすことで、得られる偏光子の光学特性の低下をより好適に抑制できる。

{−0.66×(L/W)+1.05}×(W/W)≧0.92 (1)
:開放位置での親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(mm)
L:開放位置から固定位置までの距離(mm)
:乾燥工程直前の親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(mm)
:乾燥工程後の親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(mm)

なお、α={−0.66×(L/W)+1.05}×(W/W)としたとき、前記αは、より好ましくは、0.93〜0.98の範囲であり、さらに好ましくは、0.95〜0.98の範囲である。
【0070】
以上、膨潤工程、染色工程、架橋工程、幅方向延伸工程、開放工程および幅方向両端固定工程、調整・乾燥工程について、説明してきた。これらの工程は、別々に実施してもよいが、一工程にまとめることが可能な工程は、まとめて実施してもよい。また、各工程終了ごとに、調整・乾燥工程を実施してもよい。
【0071】
このような一連の工程を経て、偏光子を製造することができる。偏光子は、通常、所定の大きさにカットして使用される。
【0072】
(8)偏光子
本発明の偏光子の厚みは、特に制限されないが、例えば、5〜40μmの範囲であり、好ましくは、10〜37μmの範囲であり、より好ましくは、15〜35μmの範囲である。
【0073】
(9)偏光板
つぎに、本発明の偏光板は、前記本発明の偏光子の少なくとも一方の表面に保護層が積層された構成である。前記保護層は、前記偏光子の片面のみに積層されてもよいし、両面に積層されてもよい。両面に積層する場合には、例えば、同じ種類の保護層を使用してもよいし、異なる種類の保護層を使用してもよい。
【0074】
図6に、本発明の偏光板の一例の断面図を示す。図示のように、この偏光板60は、前記偏光子61の両面に保護層62がそれぞれ積層されている。
【0075】
前記保護層62としては、特に制限されず、従来公知の保護フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、アクリル系、アセテート系、ポリオレフィン系等の樹脂等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。
【0076】
この他にも、特開2001−343529号公報やWO 01/37007号公報に記載されているような、例えば、イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物の混合押出物からなるフィルム等も使用できる。
【0077】
さらに、これらの保護フィルムは、例えば、その表面が、アルカリ等によってケン化処理されてもよい。これらの中でも、偏光特性や耐久性等の点から、TACフィルムが好ましく、より好ましくは、その表面がケン化処理されたTACフィルムである。
【0078】
前記保護層の厚みは、適宜に決定しうるが、強度や取扱性等の作業性、薄型化等の観点から、例えば、1〜500μmの範囲である。前記保護層の厚みが前記範囲であれば、偏光子を機械的に保護し、高温高湿下に曝されても偏光子の収縮が防止され、安定した光学特性を保持できる。前記保護層の厚みは、好ましくは、5〜200μmの範囲であり、より好ましくは、10〜150μmの範囲である。
【0079】
前記保護層には、位相差値が最適化されたものを用いることが好ましい。そのような保護層を用いれば、画像表示装置の視野角特性に影響を及ぼすことがない。
【0080】
前記保護層の位相差値としては、フィルム面内の位相差値(Re)が、好ましくは、0〜5nmの範囲であり、より好ましくは、0〜3nmの範囲であり、さらに好ましくは、0〜1nmの範囲であり、厚み方向の位相差値(Rth)が、好ましくは、0〜15nmの範囲であり、より好ましくは、0〜12nmの範囲であり、さらに好ましくは、0〜5nmの範囲であり、最も好ましくは、0〜3nmの範囲である。
【0081】
前記保護層は、例えば、偏光子に前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光子に前記樹脂製フィルム等を積層する方法等、従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
【0082】
また、前記保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、拡散やアンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。
【0083】
前記偏光子と前記保護層との接着方法は、特に制限されず、従来公知の方法によって行うことができる。一般には、粘着剤やその他の接着剤等が使用され、その種類は、偏光子や保護層の種類等によって適宜決定できる。具体的には、例えば、PVA系、変性PVA系、ウレタン系ポリマーから構成される接着剤や粘着剤が挙げられる。これらの接着剤や粘着剤は、耐久性の向上のため、例えば、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸、キチン、キトサン、金属塩、アルコール系溶剤等のような、ビニルアルコール系ポリマーを架橋させる水溶性架橋剤が添加されてもよい。前記偏光子が、例えば、PVA系フィルムの場合、接着処理の安定性等の点から、PVA系の接着剤や粘着剤が好ましい。これらの接着剤や粘着剤は、例えば、接着剤や粘着剤の水溶液として、そのまま偏光子や保護層の表面に塗布して接着層や粘着剤層を形成してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような接着層や粘着剤層を前記表面に配置してもよい。なお、前記接着剤や粘着剤を塗布する場合は、例えば、前記水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。このような接着層や粘着剤層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1〜500nmの範囲であり、好ましくは、10〜300nmの範囲であり、より好ましくは、20〜100nmの範囲である。
【0084】
前記偏光子と前記保護層とを前記接着剤によって接着した場合、例えば、湿度や熱の影響によって剥れることを防止し、光透過率や偏光度に優れた偏光板とするために、乾燥処理を施すことが好ましい。乾燥温度としては、特に制限されず、例えば、20〜90℃の範囲であり、好ましくは、30〜60℃の範囲である。乾燥時間は、特に制限されないが、例えば、1〜20分の範囲であり、好ましくは、3〜20分の範囲である。
【0085】
また、本発明の偏光板は、例えば、液晶セル等への積層が容易になることから、その最外層に、さらに粘着剤層を有していることが好ましい。図7に、このような粘着剤層を有する偏光板の断面図を示す。図7において、図6と同一部分には、同一符号を付している。図示のように、偏光板70は、前記偏光板60の一方の保護層62の表面にさらに粘着剤層71が配置されているという構成である。
【0086】
前記保護層表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、粘着剤の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記保護層の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するセパレータ上に粘着剤層を形成させて、それを前記保護層の所定面に移着する方式等によって行うことができる。なお、このような粘着剤層は、前記図7のように偏光板のいずれか一方の表面に形成してもよいが、これには限定されず、必要に応じて両面に配置してもよい。
【0087】
前記粘着剤層としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の従来公知の粘着剤を適宜使用して形成できる。特に、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、さらに高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成等の点から、吸湿率が低く、耐熱性に優れる粘着剤を使用することが好ましい。このような粘着剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、アクリルシリコーン系、ポリエステル系、耐熱ゴム系等の粘着剤が挙げられる。また、前記粘着剤層は、微粒子を含有する光拡散性を示す粘着剤層等であってもよい。
【0088】
また、前記粘着剤層の表面は、汚染防止等を目的として、セパレータによってカバーすることが好ましい。このセパレータは、前記保護フィルム等のような薄層のフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを設ける方法等によって形成できる。
【0089】
前記粘着剤層の厚みは、特に制限されないが、例えば、5〜35μmの範囲であり、好ましくは、10〜25μmの範囲であり、より好ましくは、15〜25μmの範囲である。
【0090】
(10)光学フィルム
つぎに、本発明の光学フィルムは、前記本発明の偏光子または前記本発明の偏光板の少なくとも一方の表面に位相差板が積層された構成である。
【0091】
前記位相差板の種類は、例えば、1/2λ板や1/4λ板等の各種波長板、液晶層の複屈折による着色の補償や視野角拡大等の視覚の補償を目的にしたもの等、使用目的に応じた位相差を有するものでもよく、厚み方向の屈折率を制御した傾斜配向フィルムであってもよい。また、2種以上の位相差板を積層し、位相差等の光学特性を制御した積層体等でもよい。
【0092】
前記位相差板の材料としては、例えば、ポリカーボネート、PVA、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリノルボルネン等のポリマーフィルムを延伸処理した複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムで支持した積層体等が挙げられる。
【0093】
前記傾斜配向フィルムは、例えば、ポリマーフィルムに熱収縮性フィルムを接着して、加熱によるその収縮力の作用の下に、前記ポリマーフィルムに延伸処理や収縮処理を施す方法や、液晶ポリマーを斜め配向させる方法等により得ることができる。
【0094】
(11)用途
本発明の偏光子、偏光板および光学フィルムは、液晶表示装置(LCD)やELディスプレイ(ELD)等の各種の画像表示装置に好ましく用いることができる。本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光子、偏光板および光学フィルムの少なくとも一つを用いること以外は、従来の液晶表示装置と同様の構成である。本発明の液晶表示装置は、例えば、液晶セル、本発明の偏光子等の光学部材、および必要に応じて照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0095】
本発明において、液晶表示装置の構成は、特に制限されず、液晶セルの片側又は両側に本発明の偏光子等の光学部材を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いた液晶表示装置等が挙げられる。液晶セルの両側に本発明の偏光子等の光学部材を配置する場合、それらは同一でもよいし、異なっていてもよい。さらに、本発明の液晶表示装置には、例えば、拡散板、アンチグレア層、反射防止層、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート等の光学部材および光学部品を配置してもよい。
【0096】
本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等が挙げられる。
【0097】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例によってなんら限定ないし制限されない。また、実施例における各種特性および物性の測定は、下記の方法により実施した。
【0098】
(1)幅残存率
図8(A)の矢印に示すように、手延伸機の把持手段2により、PVAフィルム1を幅方向(同図においては上下方向)に延伸した。その後、図8(B)に示すように、前記PVAフィルム1の幅方向両端の前記把持手段2をはずし、その直後に前記PVAフィルム1の幅方向の長さWを測定した。つぎに、別の手延伸機を用いて、前記PVAフィルム1の長手方向の両端を把持手段2により把持した。これにより、前記PVAフィルム1の幅方向内側への移動を制限し、その幅方向の収縮を抑制した。この際、前記PVAフィルム1の長手方向両端の前記把持手段2の間の距離をLとした。すなわち、前記PVAフィルム1の長手方向両端の前記把持手段2の間の距離を、前記開放位置から前記固定位置までの距離と仮想した。この状態で、前記PVAフィルム1の幅方向の長さWを測定した。このようにして測定したWおよびWをもとに、幅残存率(W/W)を算出した。
【0099】
(2)単体透過率および偏光度
単体透過率は、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製、商品名「V−7100」)を用いて、JIS Z 8701−1982に規定の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値を測定して求めた。また、偏光度は、前記紫外可視分光光度計を用いて、偏光子の平行透過率(H)および直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H−H90)/(H+H90)}1/2×100より求めた。前記平行透過率(H)は、同じ種類の2枚の偏光子を、互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。また、前記直交透過率(H90)は、同じ種類の2枚の偏光子を、互いに吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光子の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JIS Z 8701−1982に規定の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
【0100】
(3)二色比
二色比は、波長550nmにおける偏光子の平行透過率(H)および直交透過率(H90)を用いて、下記式(I)〜(III)により計算した。下記式(III)中、DRは、二色比である。また、平行透過率(H)および直交透過率(H90)の測定方法は、前述のとおりである。
【数1】

【実施例】
【0101】
[実施例1]
(PVAフィルムの準備)
原反PVAフィルム(クラレ社製、商品名「VF−PS」)を、長手方向の長さが180mm、幅方向の長さが50mmになるようにカットし、サンプルのPVAフィルムを得た。このPVAフィルムの厚みは、75μmであった。
【0102】
(偏光子の作製)
(1)膨潤工程および幅方向延伸工程
前記PVAフィルムの両面に、気相中で、30℃の水(膨潤液)を30秒噴霧しながら、手延伸機を用いて、膨潤前のPVAフィルムの長さに対して、2.2倍の長さになるように幅方向に一軸延伸を行った。
【0103】
(2)染色工程および幅方向延伸工程
前記PVAフィルムの片面に、気相中で、水とヨウ素とヨウ化カリウムとを重量比92:7:1の割合で含む30℃の水溶液(染色液)を47秒噴霧しながら、手延伸機を用いて、前記膨潤工程後のPVAフィルムの長さに対して、1.5倍の長さになるように幅方向に一軸延伸を行った。
【0104】
(3)架橋工程および幅方向延伸工程
前記PVAフィルムの片面に、気相中で、3重量%のホウ酸と3重量%のヨウ化カリウムとを含む30℃の水溶液(架橋液)を52秒噴霧しながら、手延伸機を用いて、前記染色工程後のPVAフィルムの長さに対して、1.1倍の長さになるように幅方向に一軸延伸を行った。
【0105】
(4)幅方向延伸工程
前記PVAフィルムの片面に、気相中で、4重量%のホウ酸と5重量%のヨウ化カリウムとを含む30℃の水溶液(延伸液)を58秒噴霧しながら、手延伸機を用いて、前記架橋工程後のPVAフィルムの長さに対し、1.6倍の長さになるように幅方向に一軸延伸を行った。
【0106】
(5)調整工程
前記幅方向延伸処理後の前記PVAフィルムの片面に、気相中で、4重量%のヨウ化カリウムを含む30℃の水溶液(調整液)を10秒噴霧した。
【0107】
(6)開放工程および幅方向両端固定工程
前記調整工程後、前記幅残存率の測定方法に従って、前記PVAフィルムを把持手段から開放した後、前記PVAフィルムの幅方向内側への移動を制限した。
【0108】
(7)乾燥工程
前記幅残存率の測定後、60℃のオーブン中で、前記PVAフィルムを4分間乾燥させた。このようにして、本実施例の偏光子を得た。この偏光子について、前記単体透過率、偏光度および二色比の測定を行った。
【0109】
前記図8(C)に示したLを変化させて、L/Wと幅残存率(W/W)との関係を求めた。その結果を、図9のグラフに示す。また、図10のグラフに、幅残存率(W/W)と二色比との関係を示す。さらに、図11のグラフに、異なる幅残存率での単体透過率と偏光度との関係を示す。
【0110】
図9からわかるように、L/Wが0.2以下のとき、幅残存率(W/W)が0.92以上となった。また、図10からわかるように、幅残存率(W/W)が0.92以上のとき、二色比が134.8以上の光学特性に優れた偏光子が得られた。さらに、図11のグラフからわかるように、幅残存率(W/W)が0.92以上のとき、得られた偏光子の光学特性が優れていた。
【0111】
図9に示すグラフにおいて、L/Wと幅残存率(W/W)との関係は、最小二乗近似により求めた下記式(2)の関係にあった。

(W/W)=−0.66(L/W)+1.05 (2)

ここで、前記乾燥工程直前の前記PVAフィルムの幅方向の長さをW、前記乾燥工程後の前記PVAフィルムの幅方向の長さをWとしたとき、前記式(1)の関係を満たすことが好ましい。前記式(1)の関係を満たせば、前記乾燥工程後における前記PVAフィルムの幅残存率(W/W)×(W/W)が0.92以上となる。この結果、得られる偏光子の特性の低下を、より好適に抑制できる。
【0112】
[比較例1]
幅方向両端固定工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例の偏光子を得た。この偏光子は、幅方向に収縮し、シワが入った。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上のように、本発明の偏光子の製造方法によれば、光学特性の低下が抑制された偏光子を製造可能である。本発明の偏光子およびそれを用いた偏光板、光学フィルム、画像表示装置の用途は、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等が挙げられ、その用途は限定されず、広い分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、本発明の幅方向延伸工程の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の把持手段による親水性ポリマーフィルムの把持について説明する図である。
【図3】図3は、図1の一部の拡大図である。
【図4】図4は、本発明の開放工程および幅方向両端固定工程の一例を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の開放工程および幅方向両端固定工程のその他の例、並びに本発明の乾燥工程の一例を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明の偏光板の構成の一例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の偏光板の構成のその他の例を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施例における幅残存率の測定方法を説明する図である。
【図9】図9は、本発明の実施例におけるL/Wと幅残存率(W/W)との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の実施例における幅残存率(W/W)と二色比との関係を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明の実施例における異なる幅残存率での単体透過率と偏光度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0115】
1 親水性ポリマーフィルム
2 把持手段
3 ロール
4 搬送ロール
21 回転軸
22 上把持部
23 下把持部
60、70 偏光板
61 偏光子
62 保護層
71 粘着剤層
A、B、C 矢印
D 乾燥工程
X 開放位置
Y 固定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に供給される親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を把持手段により把持し、前記把持手段を前記親水性ポリマーフィルムの長手方向に進行させると共に、前記親水性ポリマーフィルムの両端を把持する前記把持手段の少なくとも一方を前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の外側にも移動させることで前記親水性ポリマーフィルムを幅方向に延伸する幅方向延伸工程と、
前記親水性ポリマーフィルムを二色性物質により染色処理する染色工程とを有し、
前記幅方向延伸工程を、前記染色工程および前記染色工程とは別の工程の少なくとも一つの工程において実施する偏光子の製造方法であって、
さらに、前記幅方向延伸工程後、開放位置において前記親水性ポリマーフィルムを前記把持手段から開放する開放工程と、
前記開放位置から固定位置に前記親水性ポリマーフィルムを移動させ、前記固定位置において幅方向両端固定手段で前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を固定して幅方向内側への移動を制限することにより、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の収縮を抑制する幅方向両端固定工程とを有することを特徴とする偏光子の製造方法。
【請求項2】
前記幅方向両端固定手段が、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を把持する把持手段である請求項1記載の偏光子の製造方法。
【請求項3】
前記幅方向両端固定手段が、前記親水性ポリマーフィルムを、その上下方向から2本のロールでピンチするロールピンチ手段である請求項1記載の偏光子の製造方法。
【請求項4】
前記開放工程および前記幅方向両端固定工程において、前記開放位置での前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(W)と、前記開放位置から前記固定位置までの距離(L)との比(L/W)を、0.2以下とする請求項1から3のいずれか一項に記載の偏光子の製造方法。
【請求項5】
前記開放工程および前記幅方向両端固定工程において、前記開放位置での前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(W)と、前記固定位置での前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(W)との比である幅残存率(W/W)を、0.92以上とする請求項1から4のいずれか一項に記載の偏光子の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記親水性ポリマーフィルムを乾燥させる乾燥工程を有し、前記乾燥工程を、少なくとも前記幅方向両端固定工程後に実施する請求項1から5のいずれか一項に記載の偏光子の製造方法。
【請求項7】
前記開放工程を省略し、前記幅方向両端固定工程を、前記幅方向延伸工程における幅方向延伸処理終了後、前記把持手段による前記フィルム幅方向両端の把持を継続して前記フィルムの幅方向の長さを一定に保持しながら、前記乾燥工程に移行することで実施する請求項6記載の偏光子の製造方法。
【請求項8】
前記乾燥工程直前の前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さをW、前記乾燥工程後の前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さをWとしたとき、下記式(1)の関係を満たす請求項6記載の偏光子の製造方法。

{−0.66×(L/W)+1.05}×(W/W)≧0.92 (1)
:開放位置での親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(mm)
L:開放位置から固定位置までの距離(mm)
:乾燥工程直前の親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(mm)
:乾燥工程後の親水性ポリマーフィルムの幅方向の長さ(mm)

【請求項9】
前記別の工程が、前記親水性ポリマーフィルムを膨潤させる膨潤工程および前記親水性ポリマーフィルムを架橋する架橋工程の少なくとも一方の工程を含む請求項1から8のいずれか一項に記載の偏光子の製造方法。
【請求項10】
前記膨潤工程、前記染色工程、前記架橋工程および前記幅方向延伸工程の少なくとも一つの工程において、気相中で、前記親水性ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に液を接触させる請求項9記載の偏光子の製造方法。
【請求項11】
前記液の接触を、前記液の噴霧および塗布の少なくとも一方により実施する請求項10記載の偏光子の製造方法。
【請求項12】
前記親水性ポリマーフィルムが、ポリビニルアルコール系フィルムであり、前記二色性物質がヨウ素である請求項1から11のいずれか一項に記載の偏光子の製造方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の製造方法により製造された偏光子。
【請求項14】
偏光子の少なくとも一方の表面に保護層が積層された偏光板であって、前記偏光子が、請求項13記載の偏光子である偏光板。
【請求項15】
偏光子または偏光板の少なくとも一方の表面に位相差板が積層された光学フィルムであって、前記偏光子が、請求項13記載の偏光子であり、前記偏光板が、請求項14記載の偏光板である光学フィルム。
【請求項16】
偏光子、偏光板および光学フィルムの少なくとも一つを含む画像表示装置であって、前記偏光子が、請求項13記載の偏光子であり、前記偏光板が、請求項14記載の偏光板であり、前記光学フィルムが、請求項15記載の光学フィルムである画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−224826(P2008−224826A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59968(P2007−59968)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】