説明

偏心揺動型減速機の製造方法および研削盤

【課題】偏心揺動型減速機において、側板と出力ピンを一体成形することなしに、出力ピンの設置本数を増加させることが可能な偏心揺動型減速機の製造方法と製造するための研削盤を提供する。
【解決手段】出力ピン16を側板13の回転軸心の同心円上に圧入しサブアッシー29とする圧入工程と、全ての出力ピン16の端面161を側板13の基準面134からの距離が同一となるように加工する研削工程で構成された製造方法。
上記研削工程を、砥石車7の外周面を用いて、サブアッシー29の回転軸心を中心とする円周の外周側から所定の量半径方向に移動ながら順次研削し、研削後の出力ピン16の端面161の高さを工作物測定装置8で測定して仕上研削の切込量を決定する仕上研削を行う研削盤1で実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心揺動型減速機に関するものであり、詳しくは出力ピンの本数を多くして伝達トルクを大きくする偏心揺動型減速機の製造方法および研削盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏心揺動型減速機の外歯歯車の自転を出力として出力軸に伝達するために、出力軸に固定された出力ピンと外歯歯車に設けられ出力ピンに内接して公転する穴を複数備え、出力ピンと穴の接触部を介して自転トルクをキャリヤに伝達する機構が用いられている。また、大トルクを偏荷重を無くしバランスよく伝達するために、外歯歯車を2枚備えて外歯歯車を挟んで2枚の側板を連結したキャリヤを設ける機構が賞用されている。この場合、側板を連結する部材を配置するため出力ピンの設置本数に制限を受ける。この制限を無くして出力ピンの本数を増加させるために、側板と出力ピンを一体成形した従来技術(例えば、特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−263878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は側板と出力ピンを一体成形するためには、出力ピンを削り出しで製作する必要がある。このため、出力ピンの周囲に工具の作動スペースが必要であるため出力ピンの間隔を狭めることに限界があり出力ピンの設置本数に制限が生じる、また部品製造コストも高くなる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、側板と出力ピンを一体成形することなしに、出力ピンの設置本数を増加させることが可能な偏心揺動型減速機の製造方法と製造するための研削盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、内歯歯車と、前記内歯歯車と噛合する外歯歯車と、前記外歯歯車を前記内歯歯車中心軸線に対し所定の偏心量で公転可能に支持するクランク軸と、前記外歯歯車を挟んで配置される第1側板と第2側板で構成されるキャリヤを備え、前記外歯歯車に備えた前記内歯歯車中心軸線に平行な貫通穴と前記キャリヤに固定された複数の出力ピンを係合させて前記外歯歯車の自転運動と前記キャリヤが連動し、前記クランク軸を入力軸とし、前記内歯歯車と前記キャリヤのいずれかを出力軸として回転作動させる偏心揺動型減速機の製造方法において、
前記出力ピンを前記第1側板の回転軸心の同心円上に圧入しサブアッシーとする圧入工程と、
前記サブアッシーの前記出力ピンの前記第2側板に結合する全ての端面を前記第1側板の基準面から前記端面までの距離が同一となるように加工する加工工程を備え、前記加工工程が、全ての前記端面を順次、前記サブアッシーの前記回転軸心から見た前記出力ピンの外周側または内周側から半径方向で所定の幅となる研削幅を加工する第1工程と、工具の位置を前工程から前記研削幅だけ半径方向に移動した後に前記端面を順次加工する工程を前記端面が全て加工できるまで繰り返す第2工程で、
構成されることである。
【0006】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1に係る発明において、前記工具が外周面を研削作用面として用いる砥石車であり、前記第2工程における前記砥石車の半径方向への総移動量が前記端面の直径と前記研削作用面の幅の和から前記研削幅の2倍を引いた値以上であることである。
【0007】
請求項3に係る発明の特徴は、内歯歯車と、前記内歯歯車と噛合する外歯歯車と、前記外歯歯車を前記内歯歯車中心軸線に対し所定の偏心量で公転可能に支持するクランク軸と、前記外歯歯車を挟んで配置される第1側板と第2側板で構成されるキャリヤを備え、前記外歯歯車に備えた前記内歯歯車中心軸線に平行な貫通穴と前記キャリヤに固定された複数の出力ピンを係合させて前記外歯歯車の自転運動と前記キャリヤが連動し、前記クランク軸を入力軸とし、前記内歯歯車と前記キャリヤのいずれかを出力軸として作動させる偏心揺動型減速機の、前記出力ピンを前記第1側板の回転軸心の同心円上に圧入したサブアッシーの前記出力ピンを研削する研削盤において、
前記サブアッシーを支持して回転駆動させる工作物支持手段と、
砥石車を支持し駆動装置で回転駆動させる砥石車支持手段と、
前記工作物支持手段を移動させる工作物移動手段と、
前記砥石車支持手段を移動させる砥石車移動手段と、
前記砥石車の外周面を研削作用面として用いて、全ての前記出力ピンの前記第2側板に結合する端面を順次、前記サブアッシーの前記回転軸心から見た前記出力ピンの外周側または内周側から半径方向で所定の幅となる研削幅を加工する第1工程と、工具の位置を前工程から前記研削幅だけ半径方向に移動した後に前記端面を順次加工する工程を前記端面が全て加工できるまで繰り返す第2工程を構成すべく、工作物支持手段と工作物移動手段と砥石車移動手段を制御する制御手段を、
備えることである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、第1側板に出力ピンを圧入するので第1側板と出力ピンの結合剛性が大きく、第1側板と第2側板を連結する連結部材を省略できるため、出力ピンの本数を多くでき小型で大きなトルクを伝達できる減速機を実現できる。さらに、加工による工具摩耗の影響が全ての出力ピンにほぼ均一に作用するので、出力ピンの第1側板の基準面からの距離がほぼ同一となる。このため、第1側板と第2側板を平行に結合でき、クランク軸に曲げ力を作用させることが無く伝達損失の少ない偏心揺動型減速機を実現できる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、砥石車の摩耗の影響が全ての出力ピンに均一に作用し、かつ砥石車の研削作用面を順次作用させて研削するので砥石車の最終研削作用部の摩耗が非常に小さくなるので、出力ピンの第1側板の基準面からの距離が同一となり、かつ出力ピンの端面が平坦となる。このため、第1側板と第2側板を平行に結合でき、かつ第2側板と出力ピンの結合部での局部変形が少なくなる。結果として、クランク軸に曲げ力を作用させることが無いため伝達損失が少なく、かつ出力ピンが曲がらないので出力ピンと貫通穴が全面で接触し局部摩耗の少ない偏心揺動型減速機を実現できる。
さらに、砥石車の全研削作用面を用いるので砥石寿命が長く研削コストが安価となる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、砥石車の摩耗の影響が全ての出力ピンに均一に作用し、かつ砥石車の研削作用面を順次作用させて研削するので砥石車の最終研削作用部の摩耗が少なくなり、出力ピンの第1側板の基準面からの距離が同一となる研削加工と、砥石車の全研削作用面を用いるので砥石寿命が長く研削コストが安価な研削加工を自動で実現できる。このため、伝達損失が少なく局部摩耗の少ない偏心揺動型減速機を安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の研削盤の全体図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】本実施形態の偏心揺動型減速機の加工方法を説明する図である。
【図4】図3のサブアッシーと砥石車の関係を上から見た平面図である。
【図5】図4のB−B断面で研削開始位置における砥石車と出力ピンの位置を示す図である。
【図6】図4のB−B断面で各研削工程における砥石車と出力ピンの位置を示す図である。
【図7】本実施形態のサブアッシーの研削工程を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態の偏心揺動型減速機の断面図である(図9のD−D断面)。
【図9】図8のC−C断面図である。
【図10】本実施形態のサブアッシーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図8、図9に示す偏心揺動型減速機10の構造、図1〜図7に示す製造方法および研削盤で説明する。
はじめに、本発明の適用される偏心揺動型減速機の構造について図8、図9に基づき説明する。
図8に示すように、本減速機10はハウジング11で保持された軸受18により回転自在に支持された側板13と、ハウジング11で保持された軸受22により回転自在に支持された側板17を備えている。ハウジング11の中心部に、側板13で保持された軸受19と側板17で保持された軸受23を介して両端部を回転自在に支持されたクランク軸12を備えている。クランク軸12は中央部に円筒状の偏心カム部121、122を備え、偏心カム部121、122は偏心量e(図9参照)を持ちクランク軸12の回転軸心廻りで互いに180度対向している。偏心カム部121の外周に軸受20を介して回転自在に支持された外歯歯車14を備え、偏心カム部122の外周に軸受21を介して回転自在に支持された外歯歯車15を備えている。側板13はクランク軸12の回転軸心に同心円周位置に配置され軸線がクランク軸12の回転軸心と平行なピン挿入穴131を複数備え、ピン挿入穴131の外歯歯車14と対向する面には逃し座グリ穴133を備え、その反対面には座グリ穴132を備えている。出力ピン16はピン挿入穴131の径より大きなピン径を持ち、一端にフランジ部162を備えている。出力ピン16はフランジ部162が座グリ穴132に嵌合するようにピン挿入穴131に圧入され、外歯歯車14、15に設けられた穴141、151を貫通して側板17にボルト24で結合されている。ここで、出力ピン16の長さは軸受18、22に対して側板13の基準面134、側板17の基準面171を介して軸方向に所定の予圧を付与できる寸法となっている。
【0013】
外歯歯車14、15はハウジング11の内周面に設けられた内歯車111と1箇所で噛合するような歯車のピッチ円径を備えている。クランク軸12の回転に伴い外歯歯車14、15は内歯車111と噛合しながらクランク軸12の偏心量eを半径とする公転運動をするが、穴141、151の穴径dは出力ピン16の外径をDとするとd=2・e+Dに設定されており、穴141、151は出力ピン16の外周に常に内接して回転する。
【0014】
以下、この偏心揺動型減速機10の作動について図9に基づき外歯歯車14の例で説明する。
図9に示すように、クランク軸12が回転すると外歯歯車14はハウジング11の内周面に設けられた内歯車111と噛合しながら公転する。このとき、外歯歯車14の歯数をZ、内歯車111の歯数をZとすると、外歯歯車14はクランク軸12の1回転当りZ−Zの歯数だけ相対回転をする。つまり、外歯歯車14はハウジング11に対して偏心eを半径とする1回転の公転運動と、(Z−Z)/Z回転の自転運動をする。この自転運動は穴141、と出力ピン16の接触部を介して出力軸である側板13、17で構成されるキャリヤに伝達される。
同様にして、外歯歯車15の自転運動も穴151、と出力ピン16の接触部を介して出力軸である側板13、17で構成されるキャリヤに伝達される。
【0015】
以下、本発明の偏心揺動型減速機10の製造方法について説明する。
はじめに、図10に基づき圧入工程を説明する。挿入穴131の径に対して所定の量だけ大きな径を備えた全ての出力ピン16を側板13のピン挿入穴131に圧入する。このとき、出力ピン16のフランジ部162が座グリ穴132の底面に接触するまで圧入し、サブアッシー29を製作する。
【0016】
次に、サブアッシー29の出力ピン16の端面161の研削加工工程について説明する。
必要な加工精度は以下のようである。図10に示すサブアッシー29において、側板13の基準面134から端面161までの寸法Lは、図8における軸受18、22に対して側板13の基準面134、側板17の基準面171を介して軸方向に所定の予圧を付与できる寸法となる必要がある。また、側板13、17はクランク軸12に軸受19、23を介して曲げ力を作用させないために平行に保持される必要がある。
このため、全ての出力ピン16の端面161が基準面134から所望の同一寸法Lとなるように加工することが求められる。
【0017】
研削盤について以下に説明する。
図1と図2に示す研削盤1は、ベッド2を備え、ベッド2上にX軸方向に往復可能なテーブル3とX軸に直交するZ軸方向に往復可能なコラム4とを備えている。コラム4にはX、Z軸に直交する鉛直方法のY軸方向に往復可能な砥石台5を備えている。砥石台5は砥石車7を回転自在に支持し、砥石車7は砥石軸回転モータ(図示省略する)により回転駆動される。テーブル3上には、工作物であるサブアッシー29を主軸モータ(図示省略する)により鉛直方向を回転軸として回転駆動する主軸6が配置されている。テーブル3上には工作物測定装置8が配置され、工作物測定装置8はシリンダー82により駆動される計測ヘッド81とそれらを支持するブラケット83により構成されている。計測ヘッド81がシリンダー82により前進した位置でサブアッシー29の出力ピン16の端面161の高さを計測でき、加工終了時は計測ヘッド81がシリンダー82により後退するようになっている。
【0018】
この研削盤1は、所定のプログラムを実行することで自動化された研削加工を実行する制御装置9を備えている。制御装置9の機能的構成として、テーブル3の送りを制御するX軸制御手段91、砥石台5の送りを制御するY軸制御手段92、コラム4の送りを制御するZ軸制御手段93、主軸6の回転を制御する主軸制御手段94、砥石車7の回転を制御する砥石軸制御手段95、工作物測定装置8の測定を制御する工作物測定装置制御手段96などを具備している。
【0019】
図3に示すように、サブアッシー29の基準面134を基準面板63に押し付けて固定し、サブアッシー29を側板13の減速機10の作動時における回転軸心を中心として回転できるように面板62に取り付ける。これにより、研削加工時の各出力ピン16の回転半径は同一となる。また、出力ピン16の端面161の高さ変動は基準面134と端面161の長さL(図10参照)の変動と対応し、端面161の高さを測定することでLを測定できる。
【0020】
研削加工は以下のように実施する。
研削開始位置は、図4に示すようにX軸を主軸6の回転軸心と砥石車の回転軸心が直交するテーブル3の位置とし、図5に示すようにY軸を砥石車7の外周面が出力ピン16の端面161からY軸方向でY離れた位置とし、Z軸を砥石車7の研削作用面の端部aが出力ピン16の端面161の外周からZ軸方向でZ離れた位置とする。
【0021】
以下に研削サイクルの詳細を図6の加工図と制御装置9による動作を図7のフローチャートに基づき説明する。
はじめに、砥石車7を回転させると共に、X軸、Y軸、Z軸送りにより砥石車7を研削開始位置へ割出す(STP1)。主軸6を回転させると共に、砥石車7を図6(A)に示すように出力ピン16の外周からZ軸方向へf切込んだ位置へ位置決めする(STP2)。砥石車7をY軸送りにより下降させ図6(B)に示す出力ピン16の端面からY軸方向へt切込んだ位置へ位置決めし、面板62が1回転以上回転するまでその位置で静止すると共に、制御装置9内のデータである研削回数値Nの値を1に書き換える(STP3)。砥石車7をY軸の研削開始位置(Y=Y)まで上昇させる(STP4)。砥石車7をZ軸の主軸回転中心方向へf送る(STP5)。砥石車7をY軸送りにより下降させ図6(C)〜(J)に示す出力ピン16の端面からY軸方向へt切込んだ位置へ位置決めし、面板62が1回転以上回転するまでその位置で静止すると共に、研削回数値Nの値に1を加算する(STP6)。粗研削加工をK回実施したか判定(K≦N?)しK≦NならSTP8へ移動し、K>NならSTP4へ移動する(STP7)。砥石車7を研削開始位置へ割出す(STP8)。工作物測定装置8の測定ヘッド81を前進させて端面161の高さを測定し、制御装置9により端面161が所望の高さになるY軸方向の仕上研削の切込量tを計算した後に、工作物測定装置8の測定ヘッド81を後退させる(STP9)。砥石車7を図6(A)に示すように出力ピン16の外周からZ軸方向へf切込んだ位置へ位置決めする(STP10)。砥石車7をY軸送りにより下降させ出力ピン16の初期の端面からY軸方向へt+t切込んだ位置へ位置決めし、面板62が1回転以上回転するまでその位置で静止すると共に、研削回数値Nの値を1に書き換える(STP11)。砥石車7をY軸の研削開始位置(Y=Y)まで上昇させる(STP12)。砥石車7をZ軸方向で主軸回転中心へf送る(STP13)。砥石車7をY軸送りにより下降させ出力ピン16の初期の端面からY軸方向へt+t切込んだ位置へ位置決めし、面板62が1回転以上回転するまでその位置で静止すると共に、研削回数値Nの値に1を加算する(STP14)。仕上研削加工をK回実施したか判定(K≦N?)しK≦NならSTP16へ移動し、K>NならSTP12へ移動する(STP15)。砥石車7を研削開始位置へ割出すと共に、主軸回転を停止する(STP16)。
【0022】
ここで、図6において砥石車7の偏摩耗の状態を模式的に示した。特に図6(D)において図6(B)、図6(C)による研削により研削除去量の大きな砥石車7の研削作用面の端部aに摩耗が生じている。この摩耗による端面161の研削面の平坦度の悪化を修正するためには、図6(F)〜図6(J)に示すように、砥石車7の摩耗の少ない研削作用面の端部bにより端面161の全研削面を仕上研削することが有効である。
粗研削の切込量であるtは出力ピン16の端面161の研削代の概略1/2の値に設定し、Z軸送りfは出力ピン16の外径寸法の1/3〜1/6の値に設定するのが好適である。また、工作物測定は断続的な測定となるが、最大高さを測定すればよい。
【0023】
図7のフローチャートに示す研削方法では砥石車7のZ軸方向の送りをステップ送りとしたが、主軸6を回転させた状態でY軸位置を一定とし砥石車7を連続的にZ軸方向へ送り渦巻状の軌跡で研削をしてもよい。
また、出力ピン16の高さの測定時に工作物測定装置8の測定ヘッド81の位置へ出力ピン16を割出し、主軸6の回転を停止させた状態で工作物測定を実施してもよい。
【0024】
上記のように本発明による偏心揺動型減速機の製造方法によれば、側板13に出力ピン16を圧入することにより出力ピン16と側板13を強固に固定できるため、出力ピン16の端部を側板17にボルト結合することで連結部材を用いることなく側板13と側板17を強固に結合したキャリヤを構成できる。
また、本発明の出力ピン16の端面161の研削方法によれば、研削抵抗のなかで最大となる法線研削抵抗力が出力ピン16の軸力として作用するため、出力ピン16の半径方法に作用する力が小さくなり、研削中の出力ピン16の倒れが小さくなる。さらに、サブアッシー29を回転させながら全ての出力ピン16を順次研削し、砥石車7の研削作用面の摩耗の少ない端部bを端面161の全研削面に作用させる研削加工ができ、砥石車7の磨耗による研削除去深さのばらつきを最小とできる。
このため、全ての出力ピン16の基準面134からの長さが均一となり、かつ端面161が平坦となるため、側板13と側板17を平行に連結でき、かつ側板17と出力ピン16の結合部での局部変形が少なくなる。結果として、クランク軸12に曲げ力を作用させることが無いため伝達損失が少なく、かつ出力ピン16が曲がらないので出力ピン16と穴141、151が全面で接触し局部摩耗の少ない偏心揺動型減速機を実現できる。さらに、砥石車7の全研削作用面を無駄なく用いるので砥石寿命が長く研削コストが安価となる研削加工を実現できる。
以上の結果、連結部材を用いる必要がないので出力ピン16の本数を多くできトルク伝達能力が大きく、伝達損失が少なく、出力ピン16と穴141、151の局部摩耗の少ない偏心揺動型減速機を安価に製作できる。
【0025】
本実施形態では出力ピン16の端面161を研削加工する例について述べたが、切削工具を用いた切削加工やラップ加工により端面161を加工してもよい。
【0026】
本発明による研削盤によれば、全ての出力ピン16の基準面134からの長さが均一となり、かつ端面161が平坦となる研削加工を自動で容易に実現できる。
【符号の説明】
【0027】
1:研削盤 7:砥石車 8:工作物測定装置 13:側板 16:出力ピン 29:サブアッシー 161:端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯歯車と、前記内歯歯車と噛合する外歯歯車と、前記外歯歯車を前記内歯歯車中心軸線に対し所定の偏心量で公転可能に支持するクランク軸と、前記外歯歯車を挟んで配置される第1側板と第2側板で構成されるキャリヤを備え、前記外歯歯車に備えた前記内歯歯車中心軸線に平行な貫通穴と前記キャリヤに固定された複数の出力ピンを係合させて前記外歯歯車の自転運動と前記キャリヤが連動し、前記クランク軸を入力軸とし、前記内歯歯車と前記キャリヤのいずれかを出力軸として回転作動させる偏心揺動型減速機の製造方法において、
前記出力ピンを前記第1側板の回転軸心の同心円上に圧入しサブアッシーとする圧入工程と、
前記サブアッシーの前記出力ピンの前記第2側板に結合する全ての端面を前記第1側板の基準面から前記端面までの距離が同一となるように加工する加工工程を備え、前記加工工程が、全ての前記端面を順次、前記サブアッシーの前記回転軸心から見た前記出力ピンの外周側または内周側から半径方向で所定の幅となる研削幅を加工する第1工程と、工具の位置を前工程から前記研削幅だけ半径方向に移動した後に前記端面を順次加工する工程を前記端面が全て加工できるまで繰り返す第2工程で、
構成される偏心揺動型減速機の製造方法。
【請求項2】
前記工具が外周面を研削作用面として用いる砥石車であり、前記第2工程における前記砥石車の半径方向への総移動量が前記出力ピンの前記端面の直径と前記研削作用面の幅の和から前記研削幅の2倍を引いた値以上である、請求項1に記載の偏心揺動型減速機の製造方法。
【請求項3】
内歯歯車と、前記内歯歯車と噛合する外歯歯車と、前記外歯歯車を前記内歯歯車中心軸線に対し所定の偏心量で公転可能に支持するクランク軸と、前記外歯歯車を挟んで配置される第1側板と第2側板で構成されるキャリヤを備え、前記外歯歯車に備えた前記内歯歯車中心軸線に平行な貫通穴と前記キャリヤに固定された複数の出力ピンを係合させて前記外歯歯車の自転運動と前記キャリヤが連動し、前記クランク軸を入力軸とし、前記内歯歯車と前記キャリヤのいずれかを出力軸として作動させる偏心揺動型減速機の、前記出力ピンを前記第1側板の回転軸心の同心円上に圧入したサブアッシーの前記出力ピンを研削する研削盤において、
前記サブアッシーを支持して回転駆動させる工作物支持手段と、
砥石車を支持し駆動装置で回転駆動させる砥石車支持手段と、
前記工作物支持手段を移動させる工作物移動手段と、
前記砥石車支持手段を移動させる砥石車移動手段と、
前記砥石車の外周面を研削作用面として用いて、全ての前記出力ピンの前記第2側板に結合する端面を順次、前記サブアッシーの前記回転軸心から見た前記出力ピンの外周側または内周側から半径方向で所定の幅となる研削幅を加工する第1工程と、工具の位置を前工程から前記研削幅だけ半径方向に移動した後に前記端面を順次加工する工程を前記端面が全て加工できるまで繰り返す第2工程を構成すべく、工作物支持手段と工作物移動手段と砥石車移動手段を制御する制御手段を、
備える研削盤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−117566(P2012−117566A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265856(P2010−265856)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】