説明

健康管理装置、健康管理方法、及び健康管理プログラム

【課題】被介護者の排泄物の漏れを検知する健康管理装置等を提供する。
【解決手段】本発明の健康管理装置3は、排泄物吸引機2から、排泄物吸引機を一意に特定する識別子と、排泄物に関する物理量を受け付け、受け付けた識別子を検索キーとして閾値情報データベース38を検索し、該当したレコードの物理量の範囲を示す値を取得し、受け付けた物理量と、取得した前記物理量の範囲を示す値とを比較し、比較の結果に基づいて、排泄物の漏れが発生している旨の第1のメッセージ又は、被介護者の健康状態が異常である旨の第2のメッセージを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康管理装置、健康管理方法、及び健康管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寝たきり又は自力ではトイレに行くことができない人(被介護者)のために、排泄物を受け取るものとして、高分子ゲル状の吸引性物質を用いた使い捨てのオムツが知られている。さらに、湿った吸引性物質に触れる不快感や不衛生を防止するために、又は排泄物を健康管理のデータとするために、排泄物をタンク等に貯蔵し、排泄物の分析結果を管理する発明が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3718136号公報(段落0009、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被介護者の泌尿器等に接する吸引部の装着に失敗した場合、所謂「尿漏れ」等の状態が発生する。しかしながら、特許文献1の発明によっては、この尿漏れ等の状態を検知することができず、被介護者にとって不快かつ不衛生な状態が続くとともに、介護者の負担を増加させ、健康管理のためのデータも失う結果となる。
【0005】
そこで、本発明では、被介護者の排泄物の漏れを検知する健康管理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の健康管理装置は、排泄物吸引機から、排泄物吸引機を一意に特定する識別子と、排泄物に関する物理量を受け付け、受け付けた識別子を検索キーとして閾値情報データベースを検索し、該当したレコードの物理量の範囲を示す値を取得し、受け付けた物理量と、取得した前記物理量の範囲を示す値とを比較し、比較の結果に基づいて、排泄物の漏れが発生している旨の第1のメッセージ又は、被介護者の健康状態が異常である旨の第2のメッセージを出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被介護者の排泄物の漏れを検知する健康管理装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の概要を説明するための図である。
【図2】本実施形態に係る健康管理システムの全体構成図である。
【図3】本実施形態に係る健康管理装置の判定原理を説明する図である。
【図4】(a)は、本実施形態における閾値情報データベースの一例である。(b)は、本実施形態に係る排泄物情報データベースの一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る測定処理手順のフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る判定処理手順のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以降、本発明を実施するための形態(「本実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の概要を説明するための図である。
健康管理システム1は、排泄物吸引機2及び健康管理装置3を有する。
排泄物吸引機2は、寝たきり又は自力ではトイレに行くことができない人(「被介護者」という)の近傍に配置される。排泄物吸引機2は、装着部10及び排泄物吸引機本体20を有する。装着部10は、下着の形状をしており、被介護者の腰部に装着される。排泄物吸引機本体20は、例えば寝台の下等に配置され、装着部10とは、通信回線(図示せず)及び排泄物が通過するチューブによって接続されている。健康管理装置3は、ネットワーク4を介して排泄物吸引機本体20と接続されており、通常は、介護者、医師又は看護師が待機する場所に配置される。
【0011】
図2は、本実施形態に係る健康管理システムの全体構成図である。
排泄物吸引機本体20は、相互に接続された中央制御装置21、主記憶装置22、貯蓄部23及び通信インタフェース(IF)24を有する。貯蓄部23以外の部分は、一般的なコンピュータである。排泄管理部25、排泄量計測部26及び動作時間計測部27はプログラムである。以降、「○○部は」と主体を記した場合は、中央制御装置21が補助記憶装置(図示せず)から各プログラムを読み出し主記憶装置22にロードしたうえで、各プログラムの機能を実行するものとする(健康管理装置3のプログラムについても同じ)。
貯蓄部23は吸引ポンプ28及びタンク29を有する。タンク29は、被介護者の排泄物を格納する容器である。吸引ポンプ28は、被介護者の排泄物を、装着部10の吸引部12からタンク29へ移動させる動力を有し、吸引部12及びタンク29とはチューブで接続されている。
【0012】
装着部10は、全体として下着の形状をしており被介護者の腰部を覆う。装着部10は、吸引性物質11、吸引部12及び感知センサ13を有する。
吸引性物質11は、排泄物を吸収し得る素材からなり、吸引部12が排泄物を吸引することに失敗した場合、排泄物を装着部10から漏らすことなく保持する。
感知センサ13は、排泄物が排泄されていることを検知するものであり、例えば、排尿時にのみ尿によって短絡する一対の電極部分と、その電極部分に電流が流れていることを検知する検知部分とからなる。感知センサ13は、排泄物吸引機本体20と有線又は無線で接続されている。
吸引部12は、被介護者の泌尿器等に接し、排泄物を受け取る受け皿であり、吸引ポンプ28を介してタンク29に対しチューブによって接続されている。
【0013】
以上の構成により、排泄物吸引機2は、被介護者が排泄をする都度、排泄物をタンク29に運搬し、貯蔵することができる。また、排泄物が排泄されている時間及びタンク29に運搬された排泄物の体積及び/又は質量を計測することができる。更に、これらの計測した情報を、ネットワークを介して健康管理装置3に送信することができる。
【0014】
健康管理装置3は、一般的なコンピュータであり、相互に接続された中央制御装置30、主記憶装置31、補助記憶装置32、入力装置33、出力装置34及び通信インタフェース(IF)35を有する。補助記憶装置32は、閾値情報データベース38及び排泄物情報データベース39を格納している。情報記録部36及び情報解析部37はプログラムである。
【0015】
排泄物吸引機2の台数は特に制限されない。通常は、1人の被介護者に対し1台が配置される。大規模な介護施設であれば、総台数が数十台になることもある。健康管理装置3の台数も特に制限はない。通常は、介護者、医師又は看護師1人に対して1台が割り当てられる。夜間、介護者が少なくなる場合は、1台を当直者等に割り当てることにしてもよい。
【0016】
(健康管理装置の判定原理)
図3は、本実施形態に係る健康管理装置の判定原理を説明する図である。
横軸に、測定結果(排泄物の体積/排泄に要した時間)をとる。横軸上の基準値は、被介護者が通常の健康状態にある場合に取り得る標準の値であると判定して医師等が設定した値であり、初期閾値及び実測閾値(いずれも図4において詳細後記)の中央値(「±0%」の値)である。
測定結果が基準値から隔離している場合、一般的にいえば被介護者の健康状態に異常があると考えられる。しかしながら、測定結果がマイナスの方向に基準値を大きく外れた場合(図3の<5>)、例えば尿の排泄が極端に細々と継続していると判定するよりは、吸引部12が外れて排泄物漏れが発生していると判定するほうが自然である。よって、測定結果がある範囲を有する閾値の外側である場合、場合分けをし、プラス側に外れれば(図3の<4>)、健康状態が異常であると判定し、マイナス側に外れれば(図3の<5>)、排泄物漏れであると判定する。この判定の基準になる範囲を定めた閾値が「初期閾値」(図4にても詳細後記)である。
【0017】
初期閾値は、被介護者の食事等の条件によって異なる値を、入力装置33を介して設定し得る。しかしながら、あまり幅(「±○%」の絶対値部分)を狭く設定しすぎると、「健康状態が異常」又は「排泄物漏れ」であると判定される場合が必要以上に多くなる。逆に、幅を広く設定しすぎると、「健康状態が異常」又は「排泄物漏れ」であると判定される場合が殆どなくなってしまう。この際、健康状態が正常であると判定される範囲の経験的な限界値を知り、それに基づき初期閾値を再設定することが便宜である。この経験的な限界値、つまり、初期閾値をその被介護者に応じて再設定したものが「実測閾値」である。
【0018】
ある実際の測定結果が「5.1(ml/秒)」であったとする。この値は、「5(ml/秒)+2%」である。更に別の測定結果が、「4.95(ml/秒)」あったとする。この値は、「5(ml/秒)−1%」である。本実施形態では、このとき、実測閾値を、基準値からより離れている「+2%」で代表し、「5(ml/秒)±2%」と表記する。
測定結果が、初期閾値の範囲内(図3の<1><2><3>)である場合は、健康管理装置3は、「健康状態が異常」である、又は「排泄物漏れ」であるとの判定を行わない。
しかしながら、測定結果が実測閾値の範囲外である場合(図3の<2><3>)は、測定結果をその時点での実測閾値に上書きする。その結果、実測閾値は、「±b」→「±b2」→「±b3」というように、初期閾値の値に近づいていく。つまり幅が(1)→(2)→(3)というように大きくなっていく。
例えば、初期閾値を「5(ml/秒)±5%」と設定し、排泄の回数が充分にあった後、実測閾値が「5(ml/秒)±4.5%」になっていたとする。このことは、過去における測定結果のうち、「健康状態が異常」又は「排泄物漏れ」であると判定されない範囲で最も基準値を外れた測定結果が「5(ml/秒)±4.5%」であったことを意味する。さらに、初期閾値を例えば「5(ml/秒)±4.6%」に設定しなおせば、より正確な「健康状態が異常」又は「排泄物漏れ」の判定が可能であることを意味する。
【0019】
前記の説明では、測定結果は、排泄物の体積/排泄に要した時間であるとしたが、排泄物に関して取得され得る物理量、又はそれらの物理量に基づいて算出され得る値であればなんでもよい。通常は、排泄物の体積、排泄物の質量又は排泄に要した時間が当該物理量として採用される。そして、排泄物の体積、排泄物の質量、排泄に要した時間、排泄物の体積/排泄に要した時間又は排泄物の質量/排泄に要した時間が測定結果となり得る。
初期閾値及び実測閾値は、所定の基準値から前後同じ幅を有する範囲としたが、幅は前後同じ値でなくてもよいし、その幅が%表示ではなく、数値表示でもかまわない。更に、基準値という考え方を取らず、単にある数値から別の数値までの範囲を初期閾値及び実測閾値としてもよい。
【0020】
(閾値情報データベース)
図4(a)は、本実施形態における閾値情報データベースの一例である。
閾値情報データベース38においては、吸引機ID欄101に記憶された吸引機IDに関連付けて、日時範囲欄102には日時範囲が、初期閾値欄103には初期閾値が、実測閾値欄104には実測閾値が、それぞれ記憶されている。
吸引機ID欄101の吸引機IDは、排泄物吸引機2を一意に特定する識別子である。
日時範囲欄102の日時範囲は、初期閾値及び実測閾値を適用すべき時間帯である。
初期閾値欄103の初期閾値は、被介護者が通常の健康状態において排泄する排泄物の体積を排泄に要する時間で除した値の範囲(上限値と下限値の組合せ)である。ここでは、単位は1秒あたりの体積(ml)としている。そして、「5(ml/秒)±5%」のように、ある基準値から上下等しい間隔を有する幅をもって表記されている。初期閾値は、起床時刻、食事量・時刻、摂水量・時刻等を考慮して、医師が予め設定し、設定されたものを被介護者に使用する。ここでは、日時範囲によって複数の異なる値を設定することとする。なお、「第1の閾値」には、初期閾値が相当する。
実測閾値欄104の実測閾値は、初期閾値に含まれる範囲であって、被介護者が実際に排泄した前記排泄物の体積を前記排泄に要した時間で除した値が過去に分布した範囲(上限値と下限値の組合せ)である。なお、「第2の閾値」には、実測閾値が相当する。
【0021】
ちなみに、閾値情報データベース38の1行目のレコードを参照すると、吸引機IDが「001」である排泄物吸引機2を装着されている被介護者が、日時範囲「06:00〜08:00」において排泄をした場合は、初期閾値「5(ml/秒)±5%」及び実測閾値「5(ml/秒)±4.8%」が適用されることがわかる。
【0022】
閾値情報データベース38のレコードは、吸引機IDの数と日時範囲の数の積だけ存在する。ただし、日時範囲の数は、吸引機ID毎に異なる。前記の例では、日時範囲を「06:00〜08:00」のように1日の中での特定の時間帯を示すものとした。しかしながら、「01/01〜06/30」のように1年の中での特定の時間帯を示すものでもよい。更にこれら両者を別々の欄に記憶させてもよい。すなわち、「日」を示す情報と「時」を示す情報を検索キーとして、初期閾値及び実測閾値を取得できればよい。
【0023】
(排泄物情報データベース)
図4(b)は、本実施形態に係る排泄物情報データベースの一例を示す図である。
排泄物情報データベース39においては、吸引機ID欄111に記憶された吸引機IDに関連付けて、日時欄112には日時が、排泄量欄113には排泄量が、吸引時間欄114には吸引時間が、初期閾値欄115には初期閾値が、実測閾値欄116には実測閾値が、それぞれ記憶されている。
吸引機ID欄111の吸引機IDは、図4(a)の吸引機IDと同じである。
日時欄112の日時は、感知センサ13が、被介護者が排泄を開始したという信号を排泄物吸引機本体20に送信した日時である。
排泄量欄113の排泄量は、1回の排泄当たりの排泄物の体積である。
吸引時間欄114の吸引時間は、吸引ポンプ28が稼動している時間である。
初期閾値欄115の初期閾値は、図4(a)の初期閾値と同じである。
実測閾値欄116の実測閾値は、図4(a)の実測閾値と同じである。
【0024】
ちなみに、排泄物情報データベース39の1行目のレコードを参照すると以下の事柄がわかる。すなわち、吸引機IDが「001」である排泄物吸引機2の装着部10を装着している被介護者が、日時「2008/08/22 06:37」に排泄を開始したこと、排泄量は「150ml」であり吸引時間は「29秒」であったこと、当該日時に対して設定された初期閾値は「5(ml/秒)±5%」であり、当該時点における実測閾値は「5(ml/秒)±4.8%」であったこと。そして、これらの事柄から、当該排泄の排泄量を吸引時間で除した値(測定結果)は、150/29=5.17であり、この値は、実測閾値「5(ml/秒)±4.8%」の範囲内であることが計算によりわかる。
排泄物情報データベース39のレコードの数は、被介護者が排泄をした回数だけ存在する。
【0025】
以降、処理手順を説明する。処理手順には、(1)測定処理手順及び(2)判定処理手順がある。(2)は(1)が終了することを前提としている。
【0026】
(測定処理手順)
図5は、本実施形態に係る測定処理手順のフローチャートである。
前提として初期閾値は設定されているものとする。
ステップS301において、排泄管理部25は、排泄の開始を検知する。
具体的には、排泄管理部25は、排泄物吸引機2の感知センサ13から、感知センサ13が排泄を検知した旨の信号を、その排泄物吸引機2の吸引機IDとともに、受け付ける。
なお、感知センサ13は、排泄が行われている間は、信号を送信し続けるものとする。
【0027】
ステップS302において、動作時間計測部27は、時間経過のカウントを開始する。カウントの開始は、ステップS301にて感知センサ13からの信号を受け付けた時点からである。
【0028】
ステップS303において、排泄管理部25は、排泄物の吸引を開始する。
具体的には、排泄管理部25は、吸引ポンプ28に対して、排泄物の吸引を開始する指示を送信する。
【0029】
ステップS304において、排泄管理部25は、排泄の終了を検知する。
具体的には、排泄管理部25は、感知センサ13からの信号が所定の時間途絶えたことを検知する。
【0030】
ステップS305において、排泄管理部25は、排泄物の吸引を終了する。
具体的には、排泄管理部25は、吸引ポンプ28に対して、排泄物の吸引を終了する指示を送信する。
【0031】
ステップS306において、動作時間計測部27は、時間経過のカウントを終了する。
【0032】
ステップS307において、排泄量計測部26は、排泄物の体積を測定する。
具体的には、排泄量計測部26は、今回排出分としてタンク29に新たに貯蔵された排泄物の体積を測定する。前回排泄時における貯蔵水準との差分を測定してもよい。
【0033】
ステップS308において、排泄管理部25は、測定情報を健康管理装置3に送信する。
具体的には、排泄管理部25は、ステップS301にて受け付けた吸引機ID、ステップS302にて開始しステップS306にて終了したカウントの値(経過時間)、カウント開始時の時刻、及びステップS307にて測定した排泄物の体積(これらをまとめて「測定情報」という)を、健康管理装置3に対し送信する。
【0034】
ステップS309において、排泄管理部25は、送信に成功したか否かを判定する。
具体的には、排泄管理部25は、ステップS308における送信後、所定の時間が経過しても健康管理装置3から受信した旨の通知がない場合(ステップS309“NO”)は、ステップS310に進む。それ以外の場合(ステップS309“YES”)は、測定処理手順を終了する。
【0035】
ステップS310において、排泄管理部25は、測定情報を健康管理装置3に再度送信し、測定処理手順を終了する。
なお、ステップS310の後、ステップS309に戻る手順とし、所定時間内に健康管理装置3から受信した旨の通知を受信するまで、ステップS309、S310を繰り返すこととしてもよい。
【0036】
(判定処理手順)
図6は、本実施形態に係る判定処理手順のフローチャートである。
ステップS321において、健康管理装置3の情報記録部36は、測定情報を受信する。
【0037】
ステップS322において、情報記録部36は、排泄物情報データベース39のレコードを作成する。
具体的には、情報記録部36は、第一に、欄が空白の排泄物情報データベース39のレコードを新たに作成する。
第二に、ステップS321にて受信した測定情報に含まれる、吸引機ID及びカウント開始時の時刻を検索キーとして、閾値情報データベース38を検索し、該当したレコードの初期閾値及び実測閾値を取得する。
第三に、排泄物情報データベース39のレコードの初期閾値欄115及び実測閾値欄116に、「第二」にて取得した初期閾値及び実測閾値をそれぞれ記憶し、測定情報に含まれる吸引機ID、経過時間、カウント開始時の時刻、及び排泄物の体積を、吸引機ID欄111、吸引時間欄114、日時欄112、及び排泄量欄113にそれぞれ記憶し、排泄物情報データベース39のレコードを完成させる。
なお、初回排泄の場合は、実測閾値が存在しない。この場合、基準値(初期閾値から「±○%」の部分を除いた値)を実測閾値として取得するものとする。
【0038】
ステップS323において、情報解析部37は、測定結果を算出する。
具体的には、情報解析部37は、ステップS322にて完成させた排泄物情報データベース39のレコードの排泄量を吸引時間で除して測定結果とする。
【0039】
ステップS324において、情報解析部37は、測定結果と実測閾値を比較し、測定結果が実測閾値の範囲内であるか否かを判定する。
具体的には、情報解析部37は、測定結果が実測閾値の範囲内である場合(ステップS324“YES”)は、判定処理手順を終了する。それ以外の場合(ステップS324“NO”)はステップS325に進む。初回の場合は、必ずステップS324は“NO”となる。
【0040】
ステップS325において、情報解析部37は、測定結果と初期閾値を比較し、測定結果が初期閾値の範囲内であるか否かを判定する。
具体的には、情報解析部37は、測定結果が初期閾値の範囲内である場合(ステップS325“YES”)は、ステップS327に進む。それ以外の場合(ステップS325“NO”)はステップS326に進む。
【0041】
ステップS326において、情報解析部37は、測定結果と初期閾値を再度比較する。
具体的には、情報解析部37は、測定結果が初期閾値の下限値を下回る場合(ステップS326“下限値を下回る”)は、ステップS328に進む。測定結果が初期閾値の上限値を上回る場合(ステップS326“上限値を上回る”)はステップS329に進む。
【0042】
ステップS327において、情報解析部37は、実測閾値を更新する。
具体的には、情報解析部37は、測定結果を閾値情報データベース38の実測閾値欄104に上書きする。
例えば、初期閾値が「5(ml/秒)±10%」であり、実測閾値が「5(ml/秒)±5%」であったとする。そして、測定結果が「5.3(ml/秒)」であったとする。この場合、「5.3(ml/秒)」は「5(ml/秒)+6%」に相当するので、実測閾値「5(ml/秒)±5%」を「5(ml/秒)±6%」に更新する(上限値と下限値を同時に更新する)。
【0043】
ステップS328において、情報解析部37は、排泄物漏れのメッセージを出力する。
具体的には、情報解析部37は、健康管理装置3の出力装置34に、「排泄物漏れ」が発生している旨のメッセージ(第1のメッセージ)を、吸引機IDとともに出力する。
【0044】
ステップS329において、情報解析部37は、健康状態異常のメッセージを出力する。
具体的には、情報解析部37は、健康管理装置3の出力装置34に、被介護者の「健康状態が異常」である旨のメッセージ(第2のメッセージ)を、吸引機IDとともに出力する。
【0045】
ステップS327、S328又はS329の処理が終了した時点で、判定処理手順は終了する。
【0046】
(初期閾値の更新)
前記では、初期閾値は、初めに任意の数値が設定され、充分な排泄回数があった後、その時点での実測閾値に基づいて、再設定し得ることとした。しかしながら、単に医師等からの設定値の入力を受け付けるだけでなく、健康管理装置3が初期閾値を更新することとしてもよい。例えば、情報記録部36は、所定の時期に又は所定の期間が経過したときに、その時点において閾値情報データベース38に記憶されている初期閾値及び実測閾値を取得し、両者の中間の数値を新たな初期閾値とし、初期閾値欄103に上書きしてもよい。
【0047】
(経過時間の取得の変形例)
前記では、排泄物吸引機2が感知センサ13からの信号に基づいて「経過時間」を取得し、経過時間のカウント開始時の時刻とともに、健康管理装置3に送信している。しかしながら、感知センサ13からの信号によって発停する吸引ポンプ28の電力消費量を健康管理装置3の情報記録部36が常時監視しておき、消費電力が所定の閾値以上の値を示す時間を「経過時間」としてもよい。この構成によれば、排泄物吸引機2がタイマ機能を有する必要はなくなる。
【符号の説明】
【0048】
1 健康管理システム
2 排泄物吸引機
3 健康管理装置
4 ネットワーク
20 排泄物吸引機本体
21、30 中央制御装置(制御部)
22、31 主記憶装置(記憶部)
23 貯蓄部
24、35 通信インタフェース(IF)
25 排泄管理部
26 排泄量計測部
27 動作時間計測部
32 補助記憶装置(記憶部)
33 入力装置
34 出力装置
36 情報記録部
37 情報解析部
38 閾値情報データベース
39 排泄物情報データベース
103、115 初期閾値(第1の閾値)
104、116 実測閾値(第2の閾値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄を自ら行えない被介護者から排泄物を吸引するとともに前記排泄物に関する物理量を取得する排泄物吸引機に対して接続された健康管理装置であって、
前記健康管理装置の記憶部は、
前記排泄物吸引機を一意に特定する識別子に関連付けて、前記物理量の範囲を示す値を
記憶する閾値情報データベースを備え、
前記健康管理装置の制御部は、
前記排泄物吸引機から、前記識別子と、前記物理量を受け付け、
前記受け付けた識別子を検索キーとして前記閾値情報データベースを検索し、該当したレコードの前記物理量の範囲を示す値を取得し、
前記受け付けた物理量と、前記取得した前記物理量の範囲を示す値とを比較し、
前記比較の結果に基づいて、前記排泄物の漏れが発生している旨の第1のメッセージ又は前記被介護者の健康状態が異常である旨の第2のメッセージを出力すること、
を特徴とする健康管理装置。
【請求項2】
前記物理量は、
前記排泄物の体積及び前記排泄に要した時間であり、
前記閾値情報データベースは、
前記物理量の範囲を示す値として、
前記被介護者が通常の健康状態にある際に取り得る、前記排泄物の体積を前記排泄に要する時間で除した値の範囲である第1の閾値と、
前記第1の閾値が示す範囲に含まれる範囲であって、前記被介護者が実際に排泄した前記排泄物の体積を前記排泄に要した時間で除した値が過去に分布した範囲である第2の閾値と、を記憶し、
前記健康管理装置の制御部は、
前記比較において、
前記排泄物の体積を前記排泄に要した時間で除した値を測定結果とし、
前記測定結果が、前記第1の閾値の下限値を下回る場合は、前記第1のメッセージを出力し、
前記測定結果が、前記第1の閾値の上限値を上回る場合は、前記第2のメッセージを出力すること、
を特徴とする請求項1に記載の健康管理装置。
【請求項3】
前記健康管理装置の制御部は、
前記比較において、
前記測定結果が、前記第2の閾値が示す範囲内になく、かつ、前記第1の閾値が示す範囲内にある場合は、前記測定結果に基づいて前記第2の閾値の下限値及び上限値を更新すること、
を特徴とする請求項2に記載の健康管理装置。
【請求項4】
前記第1の閾値及び前記第2の閾値は、
所定の基準値に対し、前後に同じ幅を有する閾値であること、
を特徴とする請求項2に記載の健康管理装置。
【請求項5】
前記閾値情報データベースは、前記排泄物吸引機を一意に特定する識別子に関連付けて前記排泄が開始された日時情報の範囲を更に記憶し、
前記健康管理装置の制御部は、
前記排泄物吸引機から、前記日時情報を更に受け付け、
前記受け付けた識別子及び前記日時情報を検索キーとして前記閾値情報データベースを検索し、該当したレコードの前記物理量の範囲を示す値を取得すること、
を特徴とする請求項1に記載の健康管理装置。
【請求項6】
排泄を自ら行えない被介護者から排泄物を吸引するとともに前記排泄物に関する物理量を取得する排泄物吸引機に対して接続された健康管理装置を用いた健康管理方法であって、
前記健康管理装置の記憶部は、
前記排泄物吸引機を一意に特定する識別子に関連付けて、前記物理量の範囲を示す値を
記憶する閾値情報データベースを備え、
前記健康管理装置の制御部は、
前記排泄物吸引機から、前記識別子と、前記物理量を受け付け、
前記受け付けた識別子を検索キーとして前記閾値情報データベースを検索し、該当したレコードの前記物理量の範囲を示す値を取得し、
前記受け付けた物理量と、前記取得した前記物理量の範囲を示す値とを比較し、
前記比較の結果に基づいて、前記排泄物の漏れが発生している旨の第1のメッセージ又は前記被介護者の健康状態が異常である旨の第2のメッセージを出力すること、
を特徴とする健康管理方法。
【請求項7】
前記物理量は、
前記排泄物の体積及び前記排泄に要した時間であり、
前記閾値情報データベースは、
前記物理量の範囲を示す値として、
前記被介護者が通常の健康状態にある際に取り得る、前記排泄物の体積を前記排泄に要する時間で除した値の範囲である第1の閾値と、
前記第1の閾値が示す範囲に含まれる範囲であって、前記被介護者が実際に排泄した前記排泄物の体積を前記排泄に要した時間で除した値が過去に分布した範囲である第2の閾値と、を記憶し、
前記健康管理装置の制御部は、
前記比較において、
前記排泄物の体積を前記排泄に要した時間で除した値を測定結果とし、
前記測定結果が、前記第1の閾値の下限値を下回る場合は、前記第1のメッセージを出力し、
前記測定結果が、前記第1の閾値の上限値を上回る場合は、前記第2のメッセージを出力すること、
を特徴とする請求項6に記載の健康管理方法。
【請求項8】
前記健康管理装置の制御部は、
前記比較において、
前記測定結果が、前記第2の閾値が示す範囲内になく、かつ、前記第1の閾値が示す範囲内にある場合は、前記測定結果に基づいて前記第2の閾値の下限値及び上限値を更新すること、
を特徴とする請求項7に記載の健康管理方法。
【請求項9】
前記第1の閾値及び前記第2の閾値は、
所定の基準値に対し、前後に同じ幅を有する閾値であること、
を特徴とする請求項7に記載の健康管理方法。
【請求項10】
前記閾値情報データベースは、前記排泄物吸引機を一意に特定する識別子に関連付けて前記排泄が開始された日時情報の範囲を更に記憶し、
前記健康管理装置の制御部は、
前記排泄物吸引機から、前記日時情報を更に受け付け、
前記受け付けた識別子及び前記日時情報を検索キーとして前記閾値情報データベースを検索し、該当したレコードの前記物理量の範囲を示す値を取得すること、
を特徴とする請求項6に記載の健康管理方法。
【請求項11】
排泄を自ら行えない被介護者から排泄物を吸引するとともに前記排泄物に関する物理量を取得する排泄物吸引機に対して接続された健康管理装置を機能させる健康管理プログラムであって、
前記健康管理装置の記憶部に対し、
前記排泄物吸引機を一意に特定する識別子に関連付けて、前記物理量の範囲を示す値を
記憶する閾値情報データベースを備えさせ、
前記健康管理装置の制御部に対し、
前記排泄物吸引機から、前記識別子と、前記物理量を受け付け、
前記受け付けた識別子を検索キーとして前記閾値情報データベースを検索し、該当したレコードの前記物理量の範囲を示す値を取得し、
前記受け付けた物理量と、前記取得した前記物理量の範囲を示す値とを比較し、
前記比較の結果に基づいて、前記排泄物の漏れが発生している旨の第1のメッセージ又は前記被介護者の健康状態が異常である旨の第2のメッセージを出力するステップを実行させること、
を特徴とする健康管理プログラム。
【請求項12】
前記物理量は、
前記排泄物の体積及び前記排泄に要した時間であり、
前記閾値情報データベースは、
前記物理量の範囲を示す値として、
前記被介護者が通常の健康状態にある際に取り得る、前記排泄物の体積を前記排泄に要する時間で除した値の範囲である第1の閾値と、
前記第1の閾値が示す範囲に含まれる範囲であって、前記被介護者が実際に排泄した前記排泄物の体積を前記排泄に要した時間で除した値が過去に分布した範囲である第2の閾値と、を記憶し、
前記健康管理装置の制御部に対し、
前記比較において、
前記排泄物の体積を前記排泄に要した時間で除した値を測定結果とし、
前記測定結果が、前記第1の閾値の下限値を下回る場合は、前記第1のメッセージを出力し、
前記測定結果が、前記第1の閾値の上限値を上回る場合は、前記第2のメッセージを出力するステップを実行させること、
を特徴とする請求項11に記載の健康管理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−158285(P2010−158285A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−761(P2009−761)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】