説明

側溝付き部材の成形装置

【課題】側面に断面視が∠型に形成され側溝を有するタイルを成形する際に、側溝の形状が崩れることなく、側溝を所定の形状に簡単に成形して量産できるタイル成形装置を実現する。
【解決手段】型枠2と、型枠2内に装入可能な上型4及び下型3と、型枠2と下型3との間に配設されたライナスライダ20とを備え、ライナスライダ20の板片部24は、タイル7の側面に側溝105を形成する凸条部29が形成されており、通常はライナスライダ20は、型枠2内面に当接しているが、キャビティ11内のタイル砂10を圧縮して側面に側溝105を有するタイル7を成形してから、下型3と型枠2が相対的に移動して、板片部24が型枠2より上方に位置すると外側に開き、成形されたタイル7の側溝105が凸条部29で破損されることなく、キャビティ11から取り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面に溝を有する側溝付き部材の成形装置に関し、特に、側面に溝を有するタイルを成形するタイル(より正確にはタイル生地)成形するのに適したタイル成形装置に関する発明である。そして、本発明は、特に、側面に断面視で∠型の側溝の形成されたタイルを製造する場合に最適なタイル成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物のコンクリート等の外壁にモルタルを介して貼り付けられるタイルは、十分、モルタルで接着されていないと、剥がれ落ちるという問題がある。そこで、従来、モルタルに接着するタイルの裏面に溝を設けてモルタルとの接着面積を増加させるタイルは従来知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような溝を設けたタイルをさらに改善することを目的とし、本出願人は、すでに裏面に設けた一方向への複数の溝に対し、直交して溝同士を相互に接続する溝を設けるとともに、この溝がさらに側部で開口するように形成することで、裏面に空気が滞留しにくくして、剥がれ落ちにくくするようにしたタイルを提案している(特許文献2参照)。
【0004】
裏面に貼り付け用モルタルを入り込ませる溝を有するタイルにおいて、側面にもモルタルを入り込ませる湾曲状等の凹溝を設ける構成は知られている(特許文献3〜5参照)。
【0005】
金属又は強化プラスチック等の嵌め込み板の穴に、側面に溝の形成された矩形のタイルを嵌め込むとともにボルトで固着し、その後でモルタルを裏面側から打込み、嵌め込み板とタイルを一体化して、同時に目地を完成する目地タイルパネルの製造方法が知られている(特許文献6参照)。
【0006】
タイルを貫通する孔又は溝を設け、この孔又は溝を通して金属杆を挿着することで、複数のタイルを連結し、剥離や破壊を防止するタイルにおいて、タイルの裏面及び側面に膠泥溝を形成した点が記載され、この側面に形成した膠泥溝は、タイルの側面において裏面側の下縁から始まり、裏面側から表面側に向けて徐々に深くなる傾斜面が形成され、表面側に最も近い最深部では平坦な頂面が形成された構成が記載されている(特許文献7参照)。
【0007】
本出願人は、さらにタイルをモルタルを介して強力に接着して、剥離しにくい構造のタイルを得ることを目的とし、しかもタイル貼りの仕上げとして施工される目地も剥離しにくい構造のタイルを得ることを目的として、また、モルタル内に適正かつ均等な深さでタイルが埋め込まれて貼り付けられているか否か、一目で簡単に判断できる基準となるタイル側面の側溝構造を実現することを目的として、特にタイルの側面の構造及びタイル側面に設ける側溝の構造についてきめ細かい研究開発を鋭意行ってきた。
【0008】
その結果、本出願人は、側面に断面視が∠型の側溝の形成されたタイルをすでに提案している(特願2009−212762参照)。図10は、本出願人が提案した特願2009−121762に係る発明(以下、「先行発明」という。)のタイルの一例を説明する図である。
【0009】
このタイル7の裏面103には、複数の縦溝104が平行に形成されている。タイル7の側面102には、表面側平坦面107と裏面側平坦面108との間に、側溝105が形成されている。この側溝105は、断面視で∠型に形成されている。
【0010】
即ち、側溝105は、表面側から裏面側に向けて序々に側溝10の深さが深くなる傾斜面100と、傾斜面100の裏面側端縁111で接続し、裏面側平坦面108に対して直交して接続する平坦面(平坦な底面)112とから成る。タイル7がモルタル内に押されて埋め込まれる際に、タイル7の裏面側からモルタルが側溝105内に回り込み、平坦面112にモルタルを堆積する。
【0011】
このような構成であるから、先行発明のタイル7は、モルタルとの接着が強力に行われてタイル7がタイルを貼り付ける壁面から剥離しにくく、目地も剥がれないようにタイル間に高密度で充填でき、しかも破損等しにくくなる。さらに、先行発明では、モルタル内に適正かつ均等な深さでタイル7が埋め込まれて貼り付けられているか否か、一目で簡単に判断できる基準となるタイル側面の側溝構造を実現することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−81622号公報
【特許文献2】実用新案登録第3144970号公報
【特許文献3】実開平4−28550号公報(第2、3図参照)
【特許文献4】特開昭52−97230号公報(第3〜5図参照)
【特許文献5】実開昭62−101932号公報(第1、2図参照)
【特許文献6】特開昭55−61467号公報
【特許文献7】昭和3年実用新案出願公告第876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
タイルの側面に側溝を設けた側溝付きタイルを成形するには、その側溝の断面形状が、矩形、半円、∠型等の形状に拘わらず、タイルの側面に対して側方から側溝の断面形状に対応する形状の凸型を押しつけて側溝を成形しなくてはならない。
【0014】
この側面に対する側溝の成形は、タイル本体を圧縮して成形した後で行うのでは、タイル本体を成形装置内で砂が圧縮されて固められているので、きわめて困難又は不可能である。従って、側面に対する側溝の成形は、タイル本体を圧縮して成形すると同時に行う必要がある。そこで、タイル本体の成形と同時に側面に対する側溝の成形を行うためには、いくつかの成形装置の構成が考えられる。
【0015】
図11は、側溝付きタイルを成形するためのタイル成形装置の参考例であり、このタイル成形装置84は、型枠86と、型枠86内の下部に設けられた下型87と、プレス装置88で下型87に対して相対的に移動する上型89とから構成されている。型枠86の内側面にタイル側面に成形すべき側溝に対応して凸型部90が設けられている。型枠86は定盤94上に定置され、下型87は定盤94上に設けられた油圧又は空圧等の駆動機構85により上下方向に移動可能である。
【0016】
このような成形装置を利用して、側溝付きタイル91を成形する場合は、図11(a)に示すようにタイル砂92を型枠86と下型87で囲まれるキャビティ内に充填する。そして、図11(b)に示すように、上型89を型枠86内に挿入してプレス機で上型89を下型87に向けて移動してタイル砂92を圧縮してタイル91を成形するともに、凸型部90によって、タイル91の側面に側溝93を同時に成形する。
【0017】
しかしながら、このような成形装置では、図11(c)に示すように、上型89を引き上げて成形されたタイル91を下型87内から取り出すことは、凸型部90が邪魔となって、事実上、不可能である。
【0018】
そこで、図11(d)に示すように、型枠86を左右方向に開く構成とすることが考えられるが、そのような構成を採用することはタイル成形装置84の構造がきわめて複雑となって装置及び生産コストが高くなる。特に、タイルの実際の製造は、マトリクス状に形成された型枠で複数のタイルを大量生産するので、型枠を開くような構成とすることは事実上不可能でもある。
【0019】
図12は、側溝付きタイルを成形するための成形装置の別の参考例であり、このタイル成形装置95は、型枠86と、型枠86内の下部に設けられた下型87と、プレス機88で下型87に対して相対的に移動する上型89とから構成されており、型枠86の内側面に開口部96を設け、この開口部96からキャビティ内に出没自在な凸型部材97が設けられている。
【0020】
このような成形装置95を利用して、側溝付きタイル91を成形する場合は、図12(a)に示すようにタイル砂92を型枠86と下型87で囲まれるキャビティ内に充填する。そして、図12(b)に示すように、上型89を型枠86内に挿入してプレス機88で上型を下型87に向けて移動してタイル砂92を圧縮してから、側方からタイル91の側面に凸型部材97を押しつけて、タイル側面に側溝93を同時に成形する。
【0021】
その後で、図11(c)に示すように、上型89を引き上げて成形された後、凸型部材97を側方に退避してから、型枠86に対して下型87を駆動機構84によって移動してタイルを取り出すことができる。
【0022】
しかしながら、このような成形装置95では、凸型部材97を側方に退避しなければならず、それだけ成形装置95の構造がきわめて複雑ととなってタイル成形装置95のコストが高くなる。特に、タイル91の実際の製造は、マトリクス状に形成された型枠で複数のタイルを大量生産するので、このように側方に移動する凸型部材97を設ける構成は、ますます複雑な構成となる。さらに、このような凸型部材97を有する場合、成形材の上下の圧力分布が著しく不均一になり、特に部材97と下型87の間の部分が欠け易くなる。
【0023】
ところで、図10に示す前記先行発明では、タイルの側面に断面視が∠型に形成され側溝105を設けているが、側溝105内に鋭角部αが形成されていると、タイル成形の際に、側溝105を成形する凸型部材のタイルの砂への圧縮の仕方によっては、側溝105内のタイル砂92の強度が部分的に弱い部分が形成され、成形中又は成形型からの取り出しの際に、側溝105が崩れたりして所定の形状に形成されないという問題も生じる。
【0024】
本発明は、以上のような問題点を解決することを目的とするものであり、側面に側溝の形成された側溝付き部材を量産可能な、簡単な構造の成形装置を実現することを課題とするものであり、特に、タイルの側面に側溝の形成された側溝付きタイルを量産可能な、簡単な構造のタイル成形装置を実現することを課題とするものである。
【0025】
また、本発明は、側面に断面視が∠型に形成され側溝を有するタイルを成形する際に、側溝の形状が崩れることなく、側溝を所定の形状に簡単に成形できるタイル成形装置を実現することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は上記課題を解決するために、型枠と、該型枠内に装入可能な上型及び下型と、型枠と下型との間に配設されたライナスライダとを備え、型枠及び下枠で形成されたキャビティ内に成形材料を充填して、プレス装置により上型を下型に対して移動することで、キャビティ内の成形材料を圧縮して側面に側溝を有する所定形状の側溝付き部材を成形する成形装置であって、前記下型と型枠は、互いに上下方向に相対的に移動可能であり、前記下型は、側面に凹所を有し、前記ライナスライダは、上部としての板片部と、下部としての基体部とから成り、前記下型の凹所において前記基体部と下型の間に設けられたバネを介して、下型に対して上方に弾力的に付勢され、且つ型枠の内面に沿って移動可能に設けられており、前記板片部は、そのキャビティ側の内面に前記側溝を形成する凸条部が形成されており、型枠内では、型枠内面に当接しており、キャビティ内の成形材料を圧縮して側面に側溝を有する所定形状の溝付き部材を成形してから、前記下型と型枠が相対的に移動して、板片部が型枠より上方に位置すると、キャビティと反対の外側に開き、成形された部材の側溝が凸条部で破損されることなく、前記キャビティから取り出すことができるようにした構成を特徴とする側溝付き部材の成形装置を提供する。
【0027】
前記バネは圧縮コイルバネであり、該圧縮コイルバネの上端はライナスライダの基体部に配置され、該圧縮コイルバネの下端は下型の凹所の底部上に配置され、圧縮コイルバネは上方且つ外側に向くように、上端の配置箇所と下端の配置箇所が、偏心して設けられている構成としてもよい。
【0028】
前記ライナスライダは、圧縮コイルバネの上端を配置して受け入れるバネ受け孔を有し、前記下型の凹所の底部にはバネ受け部材が設けられ、該バネ受け部材は、圧縮コイルバネの下端を配置して受け入れるバネ受け孔を有する構成としてもよい。
【0029】
前記バネは板バネである構成としてもよい。
【0030】
前記ライナスライダは、その上端には、上方に向かうに従って型枠の内面側に向けてライナスライダが漸次薄肉となるような傾斜面が形成されている構成としてもよい。
【0031】
前記ライナスライダは、板片部と基体部は一体で形成されている構成としてもよい。
【0032】
板片部と基体部は、薄肉部を介して一体で形成されている構成としてもよい。
【0033】
前記ライナスライダは、板片部と基体部は別体で形成されており、板片部が型枠内面に当接するように、板片部と基体部はバネを介して接続されている構成としてもよい。
【0034】
前記スライダ及び前記下型のいずれか一方が型抜き駆動機によって駆動され、他方は定置されており、前記スライダと下型は相対的に上下方向に移動可能である構成としてもよい。
【0035】
前記型枠を複数構成する格子枠を備え、該複数の型枠には、それぞれ前記下型及びライナスライダが装入されているとともに前記上型が挿入可能に設けられており、前記格子枠の複数の型枠に挿入可能な複数の上型は、一つのプレス装置で同時に複数の下型に対して移動可能であり、前記格子枠及び該格子枠の複数の型枠内に装入されている複数の下型の一方が型抜き駆動機によって駆動され、他方は定置されており、格子枠と複数の下型は相対的に上下方向に移動可能であり、複数の溝付き部材を同時に成形できる構成である構成としてもよい。
【0036】
前記充填される成形材料は砂又は土であり、前記溝付き部材はタイルである構成としてもよい。
【0037】
前記充填される成形材料は粉末状金属である構成としてもよい。
【0038】
前記溝付き部材の側面に形成される側溝は、平坦な底面と傾斜面とから断面視で∠型の凹形状であり、前記ライナの凸条部は、前記側溝を形成するように断面視で∠型の凸形状である構成としてもよい。なお、側溝の凹形状及びライナの凸条部についての断面視で∠型は、その平坦面が下方で傾斜面が上方の∠型であっても、その平坦面が上方で傾斜面が下方の∠型(これを本明細書では「逆∠型」という。)のいずれでもよい。さらに、前記溝付き部材の側面に形成される側溝は、断面視で矩形、半円、その他の各種の型の凹形状であり、前記ライナの凸条部は、前記側溝を形成するように断面視で矩形、半円、その他の各種の型の凸形状である構成としてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る側溝付き部材の成形装置は、プレス装置により上型、下型及び型枠内でタイル砂をプレス成形する際に、ライナスライダがタイルの側面に側溝を形成し、型抜きする際にはライナスライダが成形したタイルから外側に自動的に離れるから、側溝の形状が崩れることなく、側溝を所定の形状に簡単に成形できる。
【0040】
特に、側面に断面視が∠型に形成され側溝を有するタイルの成形については、側溝の形状が崩れることなく成形したタイルを型抜きするのは困難であるが、本発明に係る側溝付き部材の成形装置を使用すれば、側溝の形状を崩すことなく、タイルを簡単に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例1を説明する図であり、(a)断面図であり、(b)は(a)のA−A方向に見た平面図である。(c)は実施例1の側溝付き部材の成形装置の下型の凸条型部を説明する断面図である。
【図2】実施例1のタイル成形装置のライナスライダを説明する図であり、(a)は成形型内に組み込んだ状態を示し、(b)は斜視図であり、(c)は正面図であり、(d)は(c)のA−A断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、実施例1のタイル成形装置の作用を説明する図である。
【図4】(a)、(b)は、実施例1のタイル成形装置の型抜き駆動機の変形例を説明する図であり、(d)、(e)は別の変形例である。
【図5】(a)〜(c)は実施例1のタイル成形装置のライナスライダの変形例を説明する図であり、(d)、(e)はライナスライダの別の変形例を説明する図である。
【図6】本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例2の構成及び作用を説明する図である。
【図7】本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例3の構成及び作用を説明する図である。
【図8】本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例4を説明する図であり、(a)断面図であり、(b)は(a)のA−A方向に見た平面図である。
【図9】実施例4のタイル成形装置の構成及び作用を説明する図である。
【図10】本出願人がすでに提案している先行発明のタイルの構成を説明する図である。
【図11】側溝付きタイルを成形するための、通常考えられるタイル成形装置の参考例の構成を及びその作用を説明する図である。
【図12】側溝付きタイルを成形するための、通常考えられるタイル成形装置の別の参考例の構成を及びその作用を説明する図である。
【図13】本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例5を説明する図であり、(a)断面図であり、(b)は(a)のA−A方向に見た平面図である。(c)は実施例5の側溝付き部材の成形装置の下型の凸条型部を説明する断面図である。
【図14】実施例5のタイル成形装置のライナスライダを説明する図であり、(a)は成形型内に組み込んだ状態を示し、(b)は斜視図であり、(c)は正面図であり、(d)は(c)のA−A断面図である。
【図15】(a)〜(d)は、実施例5のタイル成形装置の作用を説明する図である。
【図16】(a)、(b)は、実施例5のタイル成形装置で製造されるタイルの断面図であり、(c)、(d)は同じ実施例5のタイル成形装置で製造も可能な別のタイルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明に係る側溝付き部材の成形装置を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【0043】
本発明に係る側溝付き部材の成形装置は、原料となる成形材料を成形型内に充填してプレス装置で側溝付き部材を成形する装置であり、成形材料としてタイル砂を使用しタイルを成形する場合に適切であるが、タイル以外の建築資材等の成形にも適用可能であり、さらには、樹脂、粉末金属等を成形材料として樹脂、粉末冶金等の側溝付き部材の成形する場合にも適用可能である。
【0044】
以下に説明する本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例は、成形材料として、例えば砂、土(例.珪藻土)等(以下、本明細書では「タイル砂」という)を、タイルの成形型内に充填してプレス装置で成形して、溝付き部材としてタイル生地(タイルの仕掛品)を製造するためのタイル成形装置について説明する。なお、本発明に係る側溝付き部材の成形装置について、樹脂製、粉末冶金製の溝付き部材の成形についは特に実施例として説明はしないが、タイル成形装置と基本的には全く同じ構成である。
【0045】
タイル成形装置で成形したタイル生地は、必要に応じてタイルの釉薬を塗布し、その後、焼成してタイル製品とする。従って、以下の実施例で説明するタイル成形装置は、より正確には、タイル生地を成形する装置であるが、本発明及び本明細書では、このようなタイル生地の成形について、タイルの成形として説明する。
【0046】
特に、以下に説明する各実施例では主に、図10に示すような断面視が∠型に形成された側溝105を側面に有するタイル7を成形するタイル成形装置について説明するが、このような断面形状の側溝だけでなく、断面視がいろいろな形状(例.断面視が矩形、半円等の形状)の側溝を側面に有するタイル成形装置としても適用できることは言うまでもない。
【実施例1】
【0047】
(全体的構成)
図1(a)は、本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例1として、タイル成形装置1の構成を説明する断面図であり、図1(b)は、図1(a)においてA−A方向に見た平面図である。この実施例1のタイル成形装置1は、成形型として、型枠2と、この型枠2内に配置されている下型3、型枠2に挿脱可能であり下型3に対して直線方向(図1(a)中の上下方向)に移動する上型4とを備えている。
【0048】
さらに、タイル成形装置1は、成形型から成型物(側溝付き部材)であるタイル7を型抜きする際に、型枠2と下型3とを相対的に上下方向に移動するために型抜き駆動機8を備えている。この実施例1では、下型3を定盤9上に定置し、この定置された下型3に対して型枠2が型抜き駆動機8で上下方向に移動可能な構成によって説明する。
【0049】
しかし、これとは逆に、後記する実施例2で説明するが、型枠2を定盤9上に載置し、この定置された型枠2に対して下型3が型抜き駆動機8で上下方向に移動可能な構成としてもよい。
【0050】
型枠2は、下型3とともにタイル砂10を充填すべきキャビティ(空所)11を形成すものであり、平面視で、成形すべきタイル7と同じ形状をしている。この実施例1では、成形すべき側溝付き部材として、図10に示す断面視が∠型の側溝を側面に有するタイル7を成形するために、型枠2は、図1(b)に示すように、平面視で矩形の構成としている。
【0051】
型枠2は、図3(a)に示す上方の基準位置と、図3(c)に示す下方の退避位置とに停止し、且つ両位置の間を上下に移動可能に設けられている。この上下の移動は、人がハンドル等を操作してアームを介して型枠2を上下させる駆動機でもよいが、本実施例では、前記したとおり、型枠2を型抜き駆動機8によって上下方向に移動可能とする構成を説明する。
【0052】
型抜き駆動機8は、例えば、油圧又は空気圧により動作する駆動機構12と、その駆動機構12で上下動する駆動アーム13とから成り、型枠2は、駆動アーム13に結合されて上下動可能な構成となっている。
【0053】
型枠2は、通常は、図1(a)、図3(a)に示すような基準位置に配置されている。この基準位置では、型枠2の下面が下型3の下面より下方で定盤9の溝14内にあり、下型3とともにタイル砂10を充填すべきキャビティ11を作ることができる。そして、型抜きの際には、型枠2は、型抜き駆動機8によって、定盤9の溝14内を、図3(c)に示す退避位置まで下降する。
【0054】
下型3は、型枠2内に挿入されるようにして定盤9上に載置され定置されている。下型3は、前記のとおり、型枠2とともにタイル砂10を充填すべきキャビティ11(空所)を形成する。下型3は型枠2に内に装入され、型枠2と下型3が互いに相対的に上下方向に移動するように、下型3は型枠2対して平面寸法で若干小さく形成されている。
【0055】
特に、タイル7の側面に側溝105(図3(c)、図10参照)が形成されるタイル7の側面方向については、型枠2と下型3の上部の間に所定の隙間gが設けられるように、型枠2に対して下型3の幅寸法が形成されている(図1(a)の要部X拡大図参照)。これにより、後記するライナスライダ20が上下方向に摺動可能となる。
【0056】
ところで、図10(a)に示すタイル7では、その裏面103に縦溝104が形成されているが、このような縦溝104を形成するためには、図1(c)に示すように、下型3に、タイル7の裏面103の縦溝104を成形するための複数の断面視で矩形状の凸条型部19を設ける必要がある。しかしながら、本発明に係る側溝付き部材の成形装置では、側溝を形成する構成を特徴とするものであるから、本願における実施例及び添付の図面には、特に、タイル裏面の縦溝を成形するための下型に設けられた凸条型部は、省略する。
【0057】
上型4は、型枠2内に挿脱可能で、プレス装置5のプレスヘッド6に取り付けられており、プレス装置5により下型3に対して移動し、キャビティ11内に充填されたタイル砂10(図3(a)参照)を、下型3とともに圧縮してタイル7を成形する。
【0058】
(特徴的構成)
以上が本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例1の全体構成であるが、以下、タイル7の側面に断面視で∠型の側溝105を形成するために必要な、本発明に係る側溝付き部材の成形装置の特徴的構成について、引き続き実施例1のタイル成形装置1において説明する。なお、ここで形成されるタイル7は、図3(c)、図10に示すように、表面が上方を、裏面103が下方を向いているものである。
【0059】
側溝105が形成されるタイル7の側面に対応する側の下型3の側面には、凹所15が設けられている。この凹所15は、図2(a)に断面図で示すように、水平な底部と、垂直な側面と、傾斜した頂面とから形成されている。底部には、バネ受け部材16がネジ等(ここでは図示せず)により固定されている。バネ受け部材16は、その上面から底部に向けてバネ受け孔17が形成されている。このバネ受け孔17内には、圧縮コイルバネ18の下部が装入されている。
【0060】
型枠2と下型3の間には、図2(a)に示すように、ライナスライダ20が配置されている。このライナスライダ20は、型枠2と下型3との間の隙間g(図1(a)参照)を通して上下方向に伸びるように設けられている。ライナスライダ20は、図2(b)に斜視図、図2(c)に正面図を示すように、正面視で全体的には矩形に形成されている。
【0061】
また、図2(d)に図2(c)におけるA−A断面図を示すように、ライナスライダ20は、その外側面22は平坦面として形成されており、型枠2の内面23に対して上下方向に摺動可能となっている。そして、ライナスライダ20は、弾性を有する樹脂部材又は金属部材で形成されており、上部の板片部24及び下部の基体部25とから一体に構成されている。
【0062】
ライナスライダ20の板片部24は、弾性を有する薄板片として形成されている。このライナスライダ20の板片部24は、その上端には、図2(a)〜(d)に示すように、外側に向けて(型枠2側に向けて)徐々に薄肉となるように傾斜面26が形成されており、キャビティ11を上方に向けて拡開するように構成されている。これにより、成形材料であるタイル砂27をキャビティ11内にスムースに供給可能とする。
【0063】
また、ライナスライダ20の内側面28には、タイル7の側面に側溝105を形成するための凸条部29が設けられている。この凸条部29は、タイル7の側面に断面視が∠型の側溝105に対応した断面形状を有する。この実施例1では、凸条部29は、下部の平坦面30と上方に向けて徐々に肉厚が低減するような傾斜面31が設けられている。
【0064】
ライナスライダ20の基体部25は、その底部にバネ受け孔32が形成されており、圧縮コイルバネ18の上部が装入されて取り付けられている。ライナスライダ20のバネ受け孔32は、バネ受け部材16のバネ受け孔17に対して、図2(a)に示すように、外側(型枠2側)に若干偏心して形成されている。
【0065】
これにより、ライナスライダ20は、圧縮コイルバネ18の弾力により、上方且つ若干、外側(型枠2方向)に向けて付勢されている。これにより、ライナスライダ20には、全体的に外側に向けてモーメントが作用し、型枠2の内面23に弾力的に当接している。
【0066】
ライナスライダ20の基体部25は、その内面側には、傾斜した頂面に対向するように、傾斜部33が形成されている。この傾斜部33の上端部と板片部24の下端部の接続部の内面には、図2(d)に示すように、凹溝34が形成されている。この凹溝34の内面は、湾曲状に形成されている。
【0067】
(作用)
以上の構成から成る実施例1のタイル成形装置1の作用を、主に図3において、タイル7の成形工程を通して説明する。
【0068】
タイル7を成形する場合には、まず、タイル成形装置1を、図3(a)に示すような状態にセットする。この状態では、型枠2は、型抜き駆動機8により、基準位置に配置されており、下型3は型枠2内の上下方向のほぼ中間位置までに装入され、定盤9上に載置されている。
【0069】
ライナスライダ20は、図2(a)、図3(a)に示すように、圧縮コイルバネ18によって上方に付勢され、その傾斜面31が下型3の上部に当接して拘束され、ライナスライダ20の上端は、型枠2のほぼ上面位置になるように配置されている。
【0070】
次に、キャビティ11内の上端までタイル砂10が充填される。この場合、ライナスライダ20の板片部24は、圧縮コイルバネ18によって型枠2内面に弾力的に押しつけられて当接され、型枠2内面との間に隙間が生じない状態となっているので、充填されるタイル砂10がライナスライダ20の上端と型枠2との間の隙間に入り込むことなく、キャビティ11内にタイル砂10が充填される。
【0071】
充填されるタイル砂10は、ライナスライダ20の上端の傾斜面26に沿い案内され、さらに、凸条部29の下方まで回り込む。ライナスライダ20の凸条部29は、断面視で上方に向けて肉厚が徐々に低減するように傾斜面31が形成されているから、タイル砂10は、この凸条部29の傾斜面31に沿って下方に案内されて、キャビティ11の隅々まで十分充填可能となる。
【0072】
そして、プレス装置5により上型4を、型枠2内に押し込み下型3方向に向けて移動し、図3(b)に示す所定の深さまで圧入する。このように上型4が下型3方向に移動するプレス成形の工程で、ライナスライダ20は、キャビティ11内のタイル砂10とともに、圧縮コイルバネ18の付勢力に抗し、圧縮コイルバネ18を下方に向けて圧縮しながら、型枠2の内面23に沿って下方に摺動する。
【0073】
このプレス成形の工程で、型枠2、上型4及び下型3は、キャビティ11内のタイル砂10を圧縮してタイル7を成形するとともに、ライナスライダ20の凸条部29をタイル7の側面102に食い込ませるようにして、タイル7の側面に断面視で∠型の側溝105を形成することができる。なお、前記のとおり、成形されるタイル7は、図3(b)、(c)に示すように、その裏面103が下方を向いている。
【0074】
次に、成形したタイル7を成形型から取り外すための型抜きをする場合は、上型4を、プレス装置5により型枠2から引き抜いて、図3(a)と同じ上方の元の位置まで上昇させる。そして、型抜き駆動機8により型枠2を、下型3に対して相対的に移動させて、図3(c)に示すように、その上面を下型3のほぼ上面の位置又はさらにその位置より少し下方の位置まで下降させる。
【0075】
すると、ライナスライダ20の板片部24は型枠2から上方に突出し、型枠2により外側から拘束されていないフリーの状態となる。その結果、ライナスライダ20の板片部24は、自身の弾性により、しかも前記したとおり、圧縮コイルバネ18により、上方且つ外側に向けて付勢され、外側方向へのモーメントも作用しているから、図3(c)に示すように、タイル7から外側に離れて開くように移動する。
【0076】
これにより、ライナスライダ20の板片部24の内面に形成された凸条部29が、タイル7の側面に形成された凹溝105から離れる。従って、成形されたタイル7は、その凹溝105が破損されるようなことなく、型抜きされて簡単に取り出すことが可能となる。
【0077】
なお、上記したライナスライダ20の板片部24は型枠2から上方に突出し、型枠2で拘束されていないフリーの状態となる際には、図3(d)に示すように、ライナスライダ20の傾斜部33の上端部と板片部24の下端部の接続部に形成されている凹溝34(図2参照)に、下型3の上端部が嵌合するように入り込む。
【0078】
この下型3の上端部を支点(枢支点)として、板片部24の凹溝34の部分を中心にして、ライナスライダ20の板片部24は、上記モーメントも作用して外側に滑らかに回転するようにして開くので、板片部24の内面に形成された凸条部29がタイル7の側面に形成された凹溝105から素早く、簡単に離れることが可能となる。
【0079】
このようにしてプレス成形されたタイル7は、その後、必要に応じて色付けのための釉薬が吹き付けられ、さらに焼成炉で焼成して、タイルの完成品となる。
【0080】
(実施例1の変形例)
型抜き駆動機の変形例:
型抜き駆動機8の駆動機構は、図1に示す油圧又は空気圧により動作する駆動機構12ではなく、その他の機構であってもよい。図4は、その他の駆動機構を利用した変形例の構成を説明する図である。
【0081】
図4(a)は、型抜き駆動機8の駆動機構として、ねじ軸直動機構40を使用した構成を示す。これは、型枠2に付設したねじ受け部材41に雌ねじを上下方向に貫通して形成し、この雌ねじに雄ねじ軸42を螺合して設け、この雄ねじ軸42をモータ43で回転して型枠2を上下動させる構成である。
【0082】
図4(b)は、型抜き駆動機8の駆動機構として、ラックピニオン機構45を使用した構成を示す。これは、型枠2の外側面にラック46を設け、これに噛み合うピニオン47をモータ48で回転することで、型枠2を上下動させる構成である。なお、図示はしないが、型抜き駆動機8は、型枠2に連動するリンクアームをモータで回転して型枠2を上下動させるモータリンクアーム機構としてもよい。
【0083】
ライナスライダの変形例:
図5(a)〜(c)は、ライナスライダの変形例を説明する図である。このライナスライダ50は、板片部24と基体部25は、互いに別体として形成されており、両者の間は板バネ51で結合されている。板バネ51は、自然状態では、図5(a)に示すようにくの字型として、外側に偏寄されている。
【0084】
ライナスライダ50は、図5(b)に示すように、図2(a)に示す実施例1と同様に、圧縮コイルバネ18及びバネ受け部材16を介して下型3に取り付けられている。図5(b)に示すように、ライナスライダ50は、型枠2内にある状態では、型枠2の内面23に弾力的に当接するように構成されている。
【0085】
このような構成のライナスライダ50によれば、型抜きにおいて、成形型内で成形されたタイル7を上方に取り出す際に、図5(c)に示すように、板片部24は板バネ51で付勢されて自然に外側に開くことができ、タイル7が板片部24の凸条部29で阻止されることなく、スムースに取り出すことが可能となる。なお、このようなライナスライダ50では、圧縮コイルバネ18は、実施例1と同様に偏心して装着してもよいが、特に偏心して装着しなくてもよい。
【0086】
図5(d)、(e)は、ライナスライダのさらに別の変形例を説明する断面図である。このライナスライダ55は、図5(d)に示すように、板片部24と基体部25は一体として形成されているが、両者の間には、弾性を有する薄肉部56が設けられている。
【0087】
このような構成とすれば、型抜きにおいて、成形型内で成形されたタイル7を上方に取り出す際に、板片部24はタイル7の側溝105の傾斜面で外側に押されながら、図5(e)に示すように、開くことができ、タイル7を板片部24の凸条部29で阻止されることなくスムースに取り出すことが可能となる。なお、このようなライナスライダ50についても、圧縮コイルバネ18は偏心して装着してもよいが、特に偏心して装着しなくてもよい。
【実施例2】
【0088】
図6は、本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例2として、実施例1とは別のタイル成形装置を説明する図である。この実施例2のタイル成形装置60は、実施例1のタイル成形装置1とほぼ同じ構成であるが、ここでは、実施例1のタイル成形装置と異なる構成を中心にして以下説明する。
【0089】
実施例1のタイル成形装置1は、図1(a)、図3に示すように、下型3を定盤9上に定置し、この定置された下型3に対して型枠2が型抜き駆動機8で上下方向に移動可能な構成である。しかし、これとは逆に、実施例2の成形装置60は、型枠2を定盤9上に定置し、この定置された型枠2に対して下型3が型抜き駆動機8で上下方向に移動可能とする構成である。
【0090】
図6(a)は、型枠2を定盤9上に定置し、下型3が成形型のキャビティ11内にタイル砂10を充填する基準位置にある状態を示している。図6(b)に示すように、タイル砂10を上型4でプレスしてタイル7を成形する。そして、タイル7を成形型から型抜きする場合は、図6(c)に示すように、型抜き駆動機8で下型3を上昇させると、ライナスライダ20が外側に開き、成形されたタイル7を取り出すことが可能となる。
【0091】
なお、型抜き駆動機8は、実施例2において、油圧又は空気圧により動作する駆動機構12を設けた構成としたが、実施例1と同様に、別の駆動機構を利用してもよい。また、ハンドル等を操作してアームを介して型枠2を上下させる人が駆動する駆動機構でもよい。
【実施例3】
【0092】
図7は、本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例3として、実施例1、2とは別のタイル成形装置を説明する図である。この実施例3のタイル成形装置62は、実施例1のタイル成形装置1とほぼ同じ構成であるが、実施例1のタイル成形装置と異なる構成を中心にして以下説明する。
【0093】
実施例1のタイル成形装置1では、ライナスライダ20を付勢するために圧縮コイルバネ18を使用しているが、この実施例3のタイル成形装置62では、図7に示すような略7字形状の板バネ63を使用している。板バネ63の下部は下型3の凹所64の垂直壁面65にネジ66で固定されている。
【0094】
そして、板バネ63の上部の湾曲部67におけるバネ掛け用のくぼみ68に、ライナスライダ69が対向又は当接した状態で設けられている。ライナスライダ69は、その板片部24は、実施例1と同じ構成であるが、基体部25は、板状に形成されており、その上部には厚肉部70が形成されている。この厚肉部70が、下型3の凹所64の傾斜面71に当接可能に配置されている。
【0095】
このタイル成形装置62においてタイル砂10を充填して、上型4を下型3方向に移動してタイル砂を圧縮するプレス成形の工程では、ライナスライダ69は板バネ63の弾力に抗して下降しながら、その凸条部29でタイル7の側面に側溝105を形成する。
【0096】
次に、タイル7をプレス成形後、型抜きする場合には、下枠3に対して型枠2を相対的に移動させると、ライナスライダ69は、板バネ63によって下方から弾力的に押圧されて上昇する。
【0097】
そして、図7(b)に示す位置において、ライナスライダ69は、板バネ63により下方から上方且つ外側に付勢される。この結果、ライナスライダ69は外側に開き、成形されたタイル7を凸条部29で破損されることなく、取り出すことが可能となる。
【実施例4】
【0098】
図8及び図9は、本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例4として、実施例1〜3とは別のタイル成形装置を説明する図である。この実施例4のタイル成形装置75は、複数のタイル7を大量に工業生産する場合に適している。
【0099】
実施例4のタイル成形装置75は、実施例1の成形装置1と同じ下型3及び上型4を複数、平面視でマトリクス状に設け、マトリクス状に設けられた下型3及び上型4を、複数の型枠2内に、装入可能として、タイル砂10をプレスして複数のタイル7を同時に成形する構成を特徴とする。
【0100】
実施例4では、タイル成形装置75は、図8(a)、(b)に示すように、複数の下型3、上型4及び型枠2として、それぞれ9個を設けた構成として説明する。複数の下型3は、定盤77上に平面視でマトリクス状に定置して設けられている。複数の型枠2は、格子枠76として一体に形成されている。
【0101】
格子枠76は、型抜き駆動機8によって下型3に対して上下動可能であり、その基準位置(図8(a)参照)ではその下部は、隣接する下型の間に設けられた定盤77の溝14内に所定の深さhの位置まで装入されている。複数の上型4は、それぞれ複数の下型3に対向して平面視でマトリクス状に配置されており、プレス装置5のプレスヘッド6に一括して取り付けられている。
【0102】
この実施例4において、複数の型枠2、下型3及び上型4は、それぞれ個別的には実施例1と同じ構成であり、それぞれ実施例1と同じ構成のライナスライダ20及び圧縮コイルバネ18を備えており、その作用効果は実施例1と同じである。
【0103】
タイル7の成形を行う場合は、複数の型枠2で形成された複数のキャビティ11内にタイル砂10を充填し、プレス5装置により複数の上型4を複数の下型3に向けて複数の型枠2内に下降して、図9(a)に示すように、タイル砂10を圧縮してプレス成形する。
【0104】
このプレス成形の工程において、実施例1と同様に、複数の型枠2、下型3及び上型4で形成される複数の成形型において、それぞれ実施例1と同じ構成のライナスライダ20が圧縮コイルバネ18の付勢力に抗して型枠2内をスライドして下降しながら、タイル7の側面に側溝105を形成する。このようにして、側面に側溝105の形成された複数のタイル7を同時に成形することが可能である。
【0105】
型抜きする場合は、実施例1と同様に、複数の上型4をプレス装置4により複数の型枠2から上昇させて引き抜き、図9(b)に示すように、格子枠76を型抜き駆動機8により隣接する定盤77に設けられた複数の凹所14内に下降させる。これにより、それぞれのライナスライダ20が外側に開いて、複数のタイル7を、それぞれ側面に形成された側溝105を、ライナスライダ20の凸条部29で破損することなく取り出すことができる。
【0106】
実施例4では、実施例1と同様に、複数の型枠2を備えた格子枠76を型抜き駆動機8により上下方向に移動可能な構成としているが、格子枠76を定盤上に定置して、実施例2と同様に複数の下型3を、型抜き駆動機8で上下方向に移動可能な構成としてもよい。また、実施例4では、実施例1と同様のライナスライダ20及び圧縮コイルバネ10を設けた構成であるが、実施例3と同様のライナスライダ69及び板バネ63を設けた構成としてもよい。
【実施例5】
【0107】
図13〜図16は、本発明に係る側溝付き部材の成形装置の実施例5を示す図である。この実施例5の側溝付き部材の成形装置1’は、実施例1の側溝付き部材の成形装置1とライナスライダ20の凸条部の構成(形状)が異なるのみで、その他の構成は全く同じであり、作用も同じである。
【0108】
よって、ここでは、実施例5の側溝付き部材の成形装置1’の構成及び作用の説明については、実施例1の側溝付き部材の成形装置1における説明とほぼ同じであるので、実施例1の側溝付き部材の成形装置1の構成と異なるライナスライダ20の凸条部29’の構成のみについて説明する。実施例5の側溝付き部材の成形装置1’において、実施例1の側溝付き部材の成形装置1と同じ構成の部分については、同じ符号を付す。
【0109】
実施例1の側溝付き部材の成形装置1では、凸条部29は、下部の平坦面30と上方に向けて徐々に肉厚が低減するような傾斜面31が設けられた断面視で∠型の凸形状であり、図3(c)、図10に示すように、タイル7の側面に断面視が∠型の側溝105を成形する。この∠型の側溝105は、下部(タイル7の裏面103に近い側)に平坦面112を有し、上方(タイル7の表面側)に向けて底が浅くなる傾斜面100(図3(c)、図10(d)参照)を有する。
【0110】
これに対して、実施例5の側溝付き部材の成形装置1’では、ライナスライダ20の凸条部29’は、上部の平坦面30’と下方に向けて徐々に肉厚が低減するような傾斜面31’が設けられている。要するに、実施例5のライナスライダ20の凸条部29’は、図14に示すように、平坦面30’が上方で傾斜面31’が下方の∠型(これを本明細書では「逆∠型」という。)の凸形状であり、この実施例5の側溝付き部材の成形装置1’は、実施例1の側溝付き部材の成形装置1と作用は同じである。
【0111】
この実施例5の側溝付き部材の成形装置1’を使用すると、図15(b)、(c)、図16(a)に示すように、タイル7’の側面に断面視で逆∠型の型の側溝105’を成形することが可能となる。このタイル7’の逆∠型の側溝105’は、実施例1で成形されるタイル7の∠型の側溝105とは上下の向きが逆であり、図15(b)、(c)において上部側(タイル7’の表面に近い側)に平坦面112’を有し、下方(タイル7’の裏面側)に向けて底が浅くなる傾斜面100’を有する(図16(a)参照)。
【0112】
ところで、この実施例5の側溝付き部材の成形装置1’において、下型3の上面に、図13(c)に示すような、断面視で複数の矩形状の凸条型部19を設けると、図16(b)に示すように、側面に逆∠型の側溝105’を有し、裏面103’に縦溝104’を備えたタイル7’を成形することができる。
【0113】
なお、実施例5の側溝付き部材の成形装置1’において、下型3の上面に凸条型部19を設けることなく平坦面とし、上型4の下面に複数の矩形状の凸条型部を設けることで、図15(a)〜(c)に示す工程で、タイルの上面に縦溝を成形することが可能であれば、図16(c)に示すようなタイル7’が成形される。
【0114】
この図16(c)に示すタイル7’を、成形後、図16(d)に示すように上下を逆にすれば、実施例1の側溝付き部材の成形装置1で成形されるタイル7と同じタイル、即ち、図10(d)に示すような、裏面103に縦溝104と、平坦面112を裏面103側に且つ傾斜面100を表面側にそれぞれ有する∠型の側溝105と、を備えたタイル7と同じ構成のタイル7’が得られる。
【0115】
この実施例5の側溝付き部材の成形装置1’についても、実施例1の側溝付き部材の成形装置1の型抜き駆動機の変形例及びライナスライダの変形例を適用できる。また、実施例5の側溝付き部材の成形装置1’のライナスライダ20の凸条部29’の構成は、実施例2〜4の側溝付き部材の成形装置のライナスライダの凸条部の構成としても適用可能である。
【0116】
以上、本発明に係る側溝付き部材の成形装置を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明に係る側溝付き部材の成形装置は、上記のような構成であるから、建物の外壁に貼り付ける外壁用タイル、台所、浴室等の室内壁用タイル、その他床タイル等、各種の分野のタイルであって、側面に側溝を有するタイルの成形装置に適用可能である。
【0118】
さらに、本発明に係る側溝付き部材の成形装置は、タイルだけでなく、側溝を側面に備えたその他の建築資材(ブロック、外壁部材等)の成形装置としても適用可能であり、さらに、成形材料として、砂、土以外にも、樹脂、粉末金属等を材料とした各種の溝付き部材を成形する成形装置としても利用可能である。
【符号の説明】
【0119】
(実施例1)
1 タイル成形装置
2 型枠
3 下型
4 上型
5 プレス装置
6 プレスヘッド
7 タイル(タイル生地)
8 型抜き駆動機
9 定盤
10 タイル砂
11 キャビティ
12 駆動機構
13 駆動アーム
14 定盤の溝
15 下型の側面の凹所
16 バネ受け部材
17 バネ受け部材のバネ受け孔
18 圧縮コイルバネ
19 凸条型部
20 ライナスライダ
22 ライナスライダの外側面
23 型枠の内面
24 ライナスライダの板片部
25 ライナスライダの基体部
26 板片部の上端の傾斜面
28 ライナスライダの内側面
29 ライナスライダの凸条部
30 凸条部の平坦面
31 凸条部の傾斜面
32 基体部のバネ受け孔
33 ライナスライダ傾斜部
34 ライナスライダ凹溝
40 ねじ軸直動機構
41 型枠に付設したねじ受け部材
42 雄ねじ軸
43 モータ
45 ラックピニオン機構
46 型枠の外側面に設けられたラック
47 ピニオン
48 モータ
50 ライナスライダ
51 板バネ
55 ライナスライダ
56 薄肉部
g 型枠と下型の間の隙間
h 格子枠が基準位置で定盤の溝内に装入されている深さ
(実施例2)
60 成形装置
(実施例3)
62 タイル成形装置
63 板バネ
64 下型の凹所
65 下型の凹所の垂直壁面
66 板バネ固定用のネジ
67 板バネ上端の湾曲部
68 板バネ上端の湾曲部のくぼみ
69 ライナスライダ
70 ライナスライダ下部の厚肉部
71 下型の凹所の傾斜面
(実施例4)
75 タイル成形装置
76 格子枠
77 定盤の溝
(実施例5)
1’ 側溝付き部材の成形装置
7’ タイル
29’ 凸条部
30’ 平坦面
31’ 側溝の傾斜面
100’ 傾斜面
103’ 裏面
104’ 縦溝
105’ 逆∠型の側溝
112’ 側溝の平坦面
(参考例1)
84 成形装置
85 駆動機構
86 型枠
87 下型
88 プレス装置
89 上型
90 型枠の凸型部
91 タイル
92 タイル砂
93 タイル側面に溝
(参考例2)
95 成形装置
96 型枠の開口部
97 凸型部材
(先行発明)
102 タイルの側面
103 タイル裏面
104 タイル裏面の縦溝
105 タイルの側面の断面視で∠型の側溝
107 タイルの側面の表面側平坦面
108 裏面側平坦面
110 側溝の傾斜面
111 側溝の傾斜面の裏面側端縁
112 側溝の平坦面(平坦な底面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠と、該型枠内に装入可能な上型及び下型と、型枠と下型との間に配設されたライナスライダとを備え、型枠及び下枠で形成されたキャビティ内に成形材料を充填して、プレス装置により上型を下型に対して移動することで、キャビティ内の成形材料を圧縮して側面に側溝を有する所定形状の側溝付き部材を成形する成形装置であって、
前記下型と型枠は、互いに上下方向に相対的に移動可能であり、
前記下型は、側面に凹所を有し、
前記ライナスライダは、上部としての板片部と、下部としての基体部とから成り、前記下型の凹所において前記基体部と下型の間に設けられたバネを介して、下型に対して上方に弾力的に付勢され、且つ型枠の内面に沿って移動可能に設けられており、
前記板片部は、そのキャビティ側の内面に前記側溝を形成する凸条部が形成されており、型枠内では、型枠内面に当接しており、キャビティ内の成形材料を圧縮して側面に側溝を有する所定形状の溝付き部材を成形してから、前記下型と型枠が相対的に移動して、板片部が型枠より上方に位置すると、キャビティと反対の外側に開き、成形された部材の側溝が凸条部で破損されることなく、前記キャビティから取り出すことができるようにした構成を特徴とする側溝付き部材の成形装置。
【請求項2】
前記バネは圧縮コイルバネであり、該圧縮コイルバネの上端はライナスライダの基体部に配置され、該圧縮コイルバネの下端は下型の凹所の底部上に配置され、圧縮コイルバネは上方且つ外側に向くように、上端の配置箇所と下端の配置箇所が、偏心して設けられていることを特徴とする請求項1記載の側溝付き部材の成形装置。
【請求項3】
前記ライナスライダは、圧縮コイルバネの上端を配置して受け入れるバネ受け孔を有し、前記下型の凹所の底部にはバネ受け部材が設けられ、該バネ受け部材は、圧縮コイルバネの下端を配置して受け入れるバネ受け孔を有することを特徴とする請求項2記載の側溝付き部材の成形装置。
【請求項4】
前記バネは板バネであることを特徴とする請求項1記載の側溝付き部材の成形装置。
【請求項5】
前記ライナスライダは、その上端には、上方に向かうに従って型枠の内面側に向けてライナスライダが漸次薄肉となるような傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の側溝付き部材の成形装置。
【請求項6】
前記ライナスライダは、板片部と基体部は一体で形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の側溝付き部材の成形装置。
【請求項7】
板片部と基体部は、薄肉部を介して一体で形成されていることを特徴とする請求項6に記載の溝付き部材の側溝付き部材の成形装置。
【請求項8】
前記ライナスライダは、板片部と基体部は別体で形成されており、板片部が型枠内面に当接するように、板片部と基体部はバネを介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載の側溝付き部材の成形装置。
【請求項9】
前記スライダ及び前記下型のいずれか一方が型抜き駆動機によって駆動され、他方は定置されており、前記スライダと下型は相対的に上下方向に移動可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の側溝付き部材の成形装置。
【請求項10】
前記型枠を複数構成する格子枠を備え、該複数の型枠には、それぞれ前記下型及びライナスライダが装入されているとともに前記上型が挿入可能に設けられており、
前記格子枠の複数の型枠に挿入可能な複数の上型は、一つのプレス装置で同時に複数の下型に対して移動可能であり、
前記格子枠及び該格子枠の複数の型枠内に装入されている複数の下型の一方が型抜き駆動機によって駆動され、他方は定置されており、格子枠と複数の下型は相対的に上下方向に移動可能であり、複数の溝付き部材を同時に成形できる構成であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の側溝付き部材の成形装置。
【請求項11】
前記充填される成形材料は砂又は土であり、前記溝付き部材はタイルであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の側溝付き部材の成形装置。
【請求項12】
前記充填される成形材料は粉末金属であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の側溝付き部材の成形装置
【請求項13】
前記溝付き部材の側面に形成される側溝は、平坦な底面と傾斜面とから断面視で∠型の凹形状であり、前記ライナの凸条部は、前記側溝を形成するように断面視で∠型の凸形状であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の側溝付き部材の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−156750(P2011−156750A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20135(P2010−20135)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(508205268)有限会社ミトモ (5)
【Fターム(参考)】