説明

偽造防止媒体、及び、偽造防止シート

【課題】偽造品の製作を困難にし、かつ、真贋判別を容易に効率よく実施できる偽造防止媒体及び偽造防止シートを提供する。
【解決手段】偽造防止媒体(20)は、基材(21)と、基材(21)の一方の面側に設けられ、光の干渉によって生じる干渉縞を屈折率の異なる縞として層の厚さ方向に記録している体積型ホログラム層(22)と、体積型ホログラム層(22)の前記基材とは反対の面側に設けられ、強磁性材料によってパターン状に形成される強磁性材層(24)と、を備えることを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積型ホログラム層及び強磁性体層を備えた偽造防止媒体及び偽造防止シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
商品券、ギフト券などの金券は、その価値から偽造防止機能が必要とされており、基材(金券)上にさまざまな対策が施されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、真贋判定を容易に行なえるように、表面にホログラム層を設けた金券を開示している。このような金券は、ホログラム層として主に、表面に微細な凹凸が設けられることにより干渉縞が記録されるレリーフ型ホログラムが用いられているが、昨今のホログラム技術の普及及び偽造技術の高度化に伴い、レリーフ型ホログラムそのものが偽造されてしまい、本来の偽造判定、偽造防止としての機能が有効に果たせなくなる場合があった。
【特許文献1】特開平07−285286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、偽造品の製作を困難にし、かつ、真贋判別を容易に効率よく実施できる偽造防止媒体及び偽造防止シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を括弧内に付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、基材(21)と、前記基材(21)の一方の面側に設けられ、光の干渉によって生じる干渉縞を屈折率の異なる縞として層の厚さ方向に記録している体積型ホログラム層(22)と、前記体積型ホログラム層(22)の前記基材(21)とは反対の面側に設けられ、強磁性材料によって形成される強磁性材層(24)と、を備える偽造防止媒体(20)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の偽造防止媒体(20)において、前記強磁性材層(24)は、特定の磁化特性を有したアモルファス強磁性材料によって形成されること、を特徴とする偽造防止媒体(20)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の偽造防止媒体(20)において、前記強磁性材層(24)と前記体積型ホログラム層(22)との間に、着色層(23)を備えること、を特徴とする偽造防止媒体(20)である。
請求項4の発明は、請求項3に記載の偽造防止媒体(20)において、前記着色層(23)は、パターン状に形成されていること、を特徴とする偽造防止媒体(20)である。
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載の偽造防止媒体(20)において、前記着色層(23)は、黒色インキによって形成されていること、を特徴とする偽造防止媒体(20)である。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の偽造防止媒体(20)において、前記強磁性材層(24)の前記体積型ホログラム層(22)とは反対の面側に接着層(25)を備えること、を特徴とする偽造防止媒体(20)である。
請求項7の発明は、請求項6に記載の偽造防止媒体(20−2)において、前記基材(21)と前記体積型ホログラム層(22)との間に剥離層(26)を備えること、を特徴とする偽造防止媒体(20−2)である。
請求項8の発明は、請求項7に記載の偽造防止媒体(20−2)において、当該偽造防止媒体(20−2)は、前記剥離層(26)によって前記基材(21)から剥がされた状態で貼付対象物(11)に前記接着層(27)によって貼付されること、を特徴とする偽造防止媒体(20−2)である。
【0005】
請求項9の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の偽造防止媒体(20−4)と、前記偽造防止媒体(20−4)を漉き込んだ状態で形成されるシート状基材(11)と、を備える偽造防止シート(10−4)である。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
(1)偽造防止媒体は、基材の一方の面側に体積型ホログラム層、強磁性材層が順に設けられているので、体積型ホログラム層の視認による確認と、強磁性材層の磁気の情報による確認とによって、偽造防止媒体の真贋判別を実行することができ、また、干渉縞の複製が困難な体積型ホログラム層を採用することによって偽造防止媒体の偽造を困難にすることができる。
(2)強磁性材層は、アモルファス強磁性材料によって形成されているので、一般の磁性材料が示す磁気特性とは異なるアモルファス強磁性材料固有の磁気特性(大バルクハウゼン効果)を利用することによって、偽造防止媒体の真贋判別を容易にするとともに強磁性材層の偽造を困難にすることができる。
【0007】
(3)偽造防止媒体は、強磁性材層と体積型ホログラム層との間に着色層を備えているので、偽造防止媒体の外観からは強磁性材層の存在を着色層によって隠蔽することができ、偽造防止媒体のセキュリティ機能を向上させることができる。
(4)着色層は、パターン状に形成されているので、体積型ホログラム層を介してパターン印刷を視認することができ、偽造印刷媒体の意匠性を向上させることができる。
(5)着色層は、黒色インキによって形成されているので、体積型ホログラム層のホログラム像を鮮明にすることができる。
(6)偽造防止媒体は、強磁性材層の体積型ホログラム層とは反対の面側に接着層を備えているので、偽造防止媒体をラベルとして使用することができ、商品などに貼付することによって、商品の模倣品の判別をすることができる。
【0008】
(7)偽造防止媒体は、基材と体積型ホログラム層との間に剥離層を備えているので、基材から剥離層を介して剥離された偽造防止媒体を、転写箔の形態で商品や金券に剥離不可能に貼付することができ、商品や金券の模倣品の判別を可能にするとともに、貼り替えなどによる不正も防止することができる。
(8)偽造防止シートは、偽造防止媒体をシート状基材に漉き込んだ状態で形成されるので、偽造防止媒体のシート状基材からの不正な貼り替えを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、偽造品の製作を困難にし、かつ、真贋判別を容易に効率よく実施できる偽造防止媒体及び偽造防止シートを提供するという目的を、体積型ホログラム層及び強磁性材層を基材の片面に順に設けることにより実現する。
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による偽造防止媒体の第1実施形態として商品券に貼付された偽造防止ラベルを示す模式図であり、図1(a)に平面図を、図1(b)に図1(a)のA−A断面の断面図を示す。図2は、アモルファス強磁性材料及び一般の磁性材料のB−H磁化特性曲線を示す図である。ここで、説明を明確にするために、図1(b)の上方を表面とし、下方を裏面とする。
商品券10は、図1に示すように、デパートなどで利用される金券であり、シート状基材11及び偽造防止ラベル20を備えている。
シート状基材11は、商品券10の台紙となる長方形形状の上質紙であり、図1(a)に示すように、その表面に商品券の名称(デパート商品券)及び金額(¥1,000)が印刷されている。
【0011】
偽造防止ラベル20は、商品券10の偽造防止及び真贋判定を行うために商品券10の表面に貼付された長方形の帯状に形成されたラベルであり、帯状の長辺部の寸法をシート状基材11の短辺部の寸法としている。偽造防止ラベル20は、図1(b)に示すように、基材21の裏面に体積型ホログラム層22、着色層23、強磁性材層24及び接着層25を順に積層させており、接着層25によってシート状基材11の表面に貼付される。
基材21は、偽造防止ラベル20の基礎となる厚さ50μmの透明な樹脂製(例えば、PET:PolyEthylene Terephthalate)のシートである。また、基材21は、偽造防止ラベル20の表面に位置するので、体積型ホログラム層22を保護する保護層としての役割も兼ねている。
【0012】
体積型ホログラム層22は、少なくとも1種の光重合性化合物と光重合開始剤などとを有した樹脂組成物から形成される厚さ10μmのホログラム層であり、別名リップマンホログラムとも呼ばれている。体積型ホログラム層22は、波長の等しい物体光と参照光とを干渉させて物体光の波面を縞干渉として樹脂組成物に記録しており、参照光と同一条件の光が当てられると干渉縞で回折現象を生じ、物体光と同じ波面が再生される。例えば、特定の図柄などを干渉縞として樹脂組成物に記録している場合、参照光と同一条件の光が当てられたときに、その特定の図柄を偽造防止ラベル20の表面から視認することができる。
【0013】
また、体積型ホログラム層22は、レリーフ型のホログラムと異なり、光の干渉によって生じる干渉縞を、屈折率の異なる縞として層の厚さ方向に三次元的に記録している。体積型ホログラム層22は、リアルな立体的な画像表現や、赤、青、緑の三原色とそれらの重ね合わせの発色によりフルカラーの画像表現などが可能となり、レリーフ型ホログラムとは視覚効果が異なり真贋判別を容易にする。本実施形態では、図1(a)に示すように、物体光として立体的な星の形状22a(ホログラム像)を記録している。このように、体積型ホログラム層22は、複雑な立体形状などを表現することができるように設けられた干渉縞の特性を外部から把握するのが困難であるので、レリーフ型のホログラムよりも偽造が困難になる。
ここで、体積型ホログラム層22に使用される光重合性化合物は、例えば、光ラジカル重合性化合物や光カチオン重合性化合物などであり、光重合開始剤は、例えば、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤などが使用される。また、本願の体積型ホログラム層22は、ホログラフィ法で求めたホログラム以外の体積型の光回折構造も含むものとする。
【0014】
着色層23は、体積型ホログラム層22の裏面を特定の色インキで印刷した厚さ2μmの印刷層である。また、着色層23は、縞模様にパターン印刷されており、その縞模様は基材21及び体積型ホログラム層22を透過して偽造防止ラベル20の表面から視認することができ、偽造防止ラベル20の意匠性を向上させている。
ここで、体積型ホログラム層22のホログラム像は、体積型ホログラム層22の裏面に着色層23を設けても、図1(a)に示すように視認することができるが、仮に、従来技術で使用されていたレリーフ型ホログラム層の裏面に着色層23を設けた場合、レリーフ型ホログラム層と着色層とが重なった部位ではホログラム像は視認できなくなる。これは、レリーフ型ホログラム層と着色層との屈折率が近似しているため、レリーフ型ホログラム層に設けられた微細な凹凸に着色層23の印刷インキが入り込むことで、凹凸による光の反射がなくなってしまうためである。
【0015】
強磁性材層24は、コバルトCo、鉄Fe、ニッケルNiを主材料としたアモルファス強磁性材料から形成される厚さ100nmの薄膜層であり、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング方などの真空成膜法によって着色層23の裏面に形成されている。
強磁性材層24のアモルファス強磁性材料は、加熱、切断などにより、透磁率や飽和磁化特性が変化する性質を有した磁性材料であり、また、図2(a)に示すように、特異な磁気特性を有している。図2(a)及び図2(b)は、それぞれがアモルファス強磁性材料及び一般の磁性材料(例えば、鉄やフェライト)のB−H曲線を示しており、縦軸が磁束密度(B)、横軸が磁界の強さ(H)を示している。アモルファス強磁性材料は、保磁力(Hc)と飽和磁束密度(Bm)において、一般の磁性材料に比べ特異な特性を示しており、一般の磁性材料が、図2(b)に示すように、略S字型のヒステリシス曲線を有しているのに対し、アモルファス強磁性材料は、図2(a)に示すように、矩形に近いヒステリシス曲線を有し、低強度の振動磁界によって急峻に磁化反転を繰り返す性質(大バルクハウゼン現象)を備えている。
【0016】
強磁性材層24は、アモルファス強磁性材料の上記の特異な性質を用いて真贋判定に用いる情報などを記録し、記録した情報を読み出すことによって精巧な偽造品に対する判別を容易にしている。また、強磁性材層24は、アモルファス強磁性材料に配合する材料を変化させることによって、その磁気特性を自在に変更することができ、さらに、その材料に一般市場の入手が困難である材料を用いることによって、強磁性材層24の形成自体を困難にすることができ、偽造防止の効果を高めている。
【0017】
強磁性材層24は、上述したように、蒸着などにより着色層23の下面に形成されているので、着色層23の縞状のインキの無い部位にも形成され、図1(b)に示すように、その部位のみ強磁性材層24の厚みが厚くなる。そのため、強磁性材層24は、厚みの変化する(厚くなる)部位のみ磁気特性が変化し、強磁性材層24の真贋判別の容易性及び偽造の困難性を向上させている。
接着層25は、偽造防止ラベル20を商品券10に剥離不可能に貼付する接着剤である。
【0018】
以上の構成により、商品券10を扱う小売店などの店員には、予め体積型ホログラム層22に記録された真正のホログラム像が知らされており、商品の会計時に顧客から手渡される商品券10のホログラム像を確認することによって、商品券10の真贋判別を即座に実施することができる。また、仮にホログラム像が精巧に模倣されていたとしても、アモルファス強磁性材料で形成された強磁性材層24の固有の磁気特性を後述の磁気ヘッドで検出することにより、確実に模倣品の発見をすることができる。
【0019】
次に、本実施形態の偽造防止ラベル20の強磁性材層24を検出する磁気ヘッドについて説明する。図3は、強磁性材層の磁気特性を読み取る磁気ヘッドの概略図である。
磁気ヘッド100は、図3に示すように、検出コイル部101、励磁コイル部102、制御部103及び表示部104を備えており、強磁性材層24の磁気情報を非接触で読み取る検出器である。
検出コイル部101は、強磁性材層24から発生する磁束の変化を検出するソレノイドコイル101−Aと、その検出データを増幅して出力する増幅器101−Bとを備えている。
励磁コイル部102は、強磁性材層24に交番励磁磁界を印加するソレノイドコイル102−Aと、ソレノイドコイル102−Aに交番励磁磁界を発生させる交番励磁電流を流すアンプ102−Bとを備えている。
【0020】
制御部103は、励磁コイル部102のソレノイドコイル102−Aに所定の交番励磁電流を流すための指令信号をアンプ102−Bに出力し、強磁性材層24から発生する磁束の変化を検出した検出コイル部101のソレノイドコイル101−Aの検出結果を増幅器101−Bを介して入力する磁気ヘッド100の各部を統括制御する制御回路である。
表示部104は、検出コイル部101により検出した結果を、制御部103を介して表示する液晶ディスプレイである。
【0021】
次に、本実施形態の磁気ヘッド100による偽造防止ラベル20の強磁性材層24の検出方法について説明する。
磁気ヘッド100の制御部103は、電源が投入されると、励磁コイル部102のソレノイドコイル102−Aにアンプ102−Bを介して高調波の交番励磁電流を流し、ソレノイドコイル102−Aに保磁力Hc以上の交番励磁磁界を発生させる。続いて、商品券10の表面に貼付された偽造防止ラベル20の強磁性材層24に磁気ヘッド100を近づけると、保磁力Hc以上の交番励磁磁界により大バルクハウゼン現象を起こし、制御部103は、強磁性材層24から発生する磁束の変化を、検出コイル部101のソレノイドコイル101−Aに検出させる。制御部103は、検出した結果を増幅器101−Bを介して入力し、表示部104に表示する。
【0022】
磁気ヘッド100で検出されたデータは、特定の材料を配合させたアモルファス強磁性材料が有する固有の特性が表示部104に表示されるので、仮に商品券10の偽造品が強磁性材層24を設けていたとしても、検出した磁気特性のデータまでは同一にすることができず、精巧な偽造品を判別することができる。
【0023】
以上より、本実施形態の偽造防止ラベルには以下のような効果がある。
(1)偽造防止ラベル20は、基材21の裏面に体積型ホログラム層22、着色層23、強磁性材層24が順に設けられているので、体積型ホログラム層22の視認による確認と、強磁性材層24の磁気の情報による確認とによって、偽造防止ラベル20の真贋判別を実行することができ、また、干渉縞の複製が困難な体積型ホログラム層22を採用することによって偽造防止ラベル20の偽造を困難にすることができる。
(2)偽造防止ラベル20は、強磁性材層24の裏面に接着層25を備えているので、商品券10に使用するシート状基材11に貼付することによって、商品券10の模倣品の判別を容易にすることができる。
【0024】
(3)強磁性材層24は、アモルファス強磁性材料によって形成されているので、一般の磁性材料が示す磁気特性とは異なるアモルファス強磁性材料固有の磁気特性(大バルクハウゼン効果)を利用することによって、強磁性材層24の真贋判別を容易にするとともに強磁性材層24の偽造を困難にすることができる。
(4)着色層23は、縞状に形成されているので、透明な基材21及び体積型ホログラム層22を介して着色層23の縞状の模様を視認することができ、偽造防止ラベル20の意匠性を向上させることができる。また、着色層23の縞状の印刷インキのない部位には、強磁性材層24が蒸着等により形成されるので、その部位にのみ強磁性材層24の厚みを変化させることができ、その厚みの変化によって磁気特性を変化させて強磁性材層24の真贋判別を容易にするとともに強磁性材層24の偽造を困難にすることができる。
【0025】
(第2実施形態)
図4は、本発明による偽造防止媒体の第2実施形態として商品券に転写された偽造防止転写箔を示す模式図であり、図4(a)に平面図を、図4(b)〜(d)に図4(a)のC−C断面図における商品券に偽造防止転写箔を転写するまでの流れを説明する図を示す。ここで、以下の実施形態の説明では、前述した第1実施形態と同様な機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に統一した符号を付して、重複する説明や図面を適宜省略する。
【0026】
第2実施形態の偽造防止転写箔20−2は、図4(a)に示すように、基本的な層構成が第1実施形態の偽造防止ラベル20に類似しており、その相違点は、主に、基材21と体積型ホログラム層22との間に剥離層26が設けられている点と、着色層23−2の形態が変更されている点と、接着層25が感熱接着層27に変更されている点である。
偽造防止転写箔20−2は、商品券10の偽造防止及び真贋判定を行うために商品券10の表面に熱転写される転写箔であり、基材21の裏面に剥離層26、体積型ホログラム層22、着色層23−2、強磁性材層24及び感熱接着層27を順に積層させている。
【0027】
剥離層26は、偽造防止転写箔20−2をシート状基材11に転写させた後に不要となる基材21を、体積型ホログラム層22の表面から剥離するために設けられている。また、剥離層26は、基材21の剥離後に体積型ホログラム層22の表面に残り、表出する体積型ホログラム層22の表面を保護することができる。そのために、剥離層26は、易剥離性だけでなく透明性、耐摩擦性、耐汚染性、耐溶剤性なども兼ね備えた樹脂、例えば、アクリル酸エステル系樹脂や塩化ビニル系樹脂などによって形成される。ここで、剥離層26は、基材21と体積型ホログラム層22とを特定の貼付力によって再貼付不可能に貼付しており、その貼付力は、後述の感熱接着層27を溶融させて得られる接着力よりも弱く設定されている。
【0028】
着色層23−2は、第1実施形態とは異なり体積型ホログラム層22の裏面の全面に対して黒色インキによって形成されており、視認される体積型ホログラム層22のホログラム像を鮮明にすることができる。
感熱接着層27は、強磁性材層24の裏面に設けられ、加熱することによって接着力を発生する接着剤であり、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂などによって形成される。
【0029】
次に、偽造防止転写箔20−2をシート状基材11に転写する方法について説明する。
偽造防止転写箔20−2は、感熱接着層27を備えているので、熱板200を押し付けることによってシート状基材11に転写させることができる。
熱板200は、図4(b)に示すように、偽造防止転写箔20−2と接触する面にバーコード状の凹凸が形成されている。この凹凸の形状によって、熱板200によって押し付けられた偽造防止転写箔20−2は、熱板200の凸部200aによって押し付けられた部位のみシート状基材11に転写される。
【0030】
具体的には、作業者は、熱板200を、感熱接着層27を溶融させるのに必要な温度まで昇温させ、熱板200が規定温度に達したら、図4(b)に示すように、シート状基材11に重ねられた偽造防止転写箔20−2に押し付けて圧着する(矢印D)。熱板200を押し付けて所定の時間経過させると、偽造防止転写箔20−2の感熱接着層27は、熱板200の熱によって溶融し、偽造防止転写箔20−2がシート状基材11に接着される。
偽造防止転写箔20−2は、熱板200に形成された凸部200aに対応した部位のみが、感熱接着層27によってシート状基材11に接着されるので、図4(c)に示すように、偽造防止転写箔22から基材21を剥離層26との界面で剥離すると(矢印E)、偽造防止転写箔22の熱板200の凹部200bに対応する部位のみが基材21とともに偽造防止転写箔22から剥がされる。
【0031】
基材21を偽造防止転写箔20−2から剥離することによって、シート状基材11の表面には、図4(d)及び図4(a)に示すように、偽造防止転写箔20−2の熱板200の凸部200aに対応する部位のみが残り、バーコード状の偽造防止転写箔20−2を有した商品券10が完成する。
ここで、基材21を剥離層26との界面で剥離する際に、偽造防止転写箔20−2は、熱板200の凸部200aに対応する位置と凹部200bに対応する位置との間で切断される。この凹凸部間における偽造防止転写箔20−2の切断を容易(箔切れ性を容易)にするために、偽造防止転写箔20−2は、体積型ホログラム層22や強磁性材層24の組成材料に微粒子を添加してもよい。
【0032】
以上より、本実施形態の偽造防止転写箔20−2には、以下のような効果がある。
(1)偽造防止転写箔20−2は、剥離層26を介して基材21の裏面に、体積型ホログラム層22、着色層23−2、強磁性材層24及び感熱接着層27が順に配置されているので、商品券10に体積型ホログラム層22、着色層23−2及び強磁性材層24を有した転写箔を感熱接着層27によって剥離不可能に転写することができ、商品券10の模倣品の判別を可能にするとともに、貼り替えなどによる不正を防止することができる。
【0033】
(2)偽造防止ラベル20−2の着色層23−2は、体積型ホログラム層22の裏面の全面を黒色インキで塗り潰すように印刷されているので、着色層23−2の裏面に設けられる強磁性材層24を、偽造防止転写箔20−2の表面から視認されるのを防止し、強磁性材層24を隠蔽することができる。また、着色層23−2に黒色インキを使用しているので、偽造防止転写箔20−2から視認される体積型ホログラム層22に記録されたホログラム像を鮮明にすることができる。
【0034】
(第3実施形態)
図5は、本発明による偽造防止媒体の第3実施形態として商品券に転写された偽造防止転写箔を示す模式図である。
第3実施形態の偽造防止ラベル20−3は、第1実施形態の偽造防止ラベル20との相違点は、図5に示すように、着色層が2層に、すなわち、第1の着色層23a及び第2の着色層23bとして存在している点である。
第1及び第2の着色層23a、23bは、それぞれ、ピッチが同一であり、太さが異なる縞状のパターンが印刷されている。具体的には、第1の着色層23aの縞は、第2の着色層23bの縞よりも太く設定されており、第2の着色層23bは、基材21の表面から視認されないように形成されている。
【0035】
強磁性材層24は、アモルファス強磁性材料から形成される薄膜層であり、蒸着などの真空成膜法によって第2の着色層23bの裏面に形成されている。また、強磁性材層24は、第1の着色層23a及び第2の着色層23bそれぞれの縞状のパターンのインキが無い部位にも蒸着によって形成されるので、その部位のみ強磁性材層24の厚みを他の部位よりも厚くすることができる。
具体的には、強磁性材層24の厚みは、図5(b)に示すように、第2の着色層23bの裏面に形成されたG部が最も薄く、また、第1の着色層23aの裏面のH部が、G部の強磁性材層24の層厚に加え、第2の着色層23bの厚みも加わるのでG部よりも厚くなり、さらに、体積型ホログラム層22の裏面のI部が、H部の強磁性材層24の層厚に加え第1の着色層23aの厚みが加わるので最も厚くなる。
【0036】
以上より、本実施形態の偽造防止転写箔20−3は、第1の着色層23a及び第2の着色層23bを備えているので、強磁性材層24が、第2の着色層23bの下面だけでなく、第1の着色層23a及び第2の着色層23bそれぞれの縞状のパターンのインキが無い部位にも形成され、強磁性材層24に厚みの変化を設けて磁気特性を変化させることができ、真贋判別を特定の磁気特性によって実施することができる。また、基材21の表面からは、第2の着色層23bが隠蔽されているので、強磁性材層24の厚みの変化を偽造防止ラベル20−3の外観からは判別できないので、強磁性材層24の偽造をより困難にすることができる。
【0037】
(第4実施形態)
図6は、本発明による偽造防止媒体の第4実施形態として商品券に漉き込まれた偽造防止スレッドを示す模式図であり、図6(a)に偽造防止スレッドがシート状基材に漉き込まれた状態の模式図を、図6(b)に図6(a)のJ−J断面の拡大図を示す。
第4実施形態の偽造防止スレッド20−4は、図6に示すように、基本的な層構成が第1実施形態の偽造防止ラベル20に類似しており、その相違点は、偽造防止スレッド20−4の強磁性材層24の裏面に接着層25を有していない点と、スレッドとしてシート状基材11に漉き込まれている点である。
【0038】
商品券10−4は、図6(a)に示すように、長方形状の上質紙で形成されるシート状基材11と、シート状基材11に漉き込まれた偽造防止スレッド20−4とを備え、デパートや小売店などで使用することができる金券である。
偽造防止スレッド20−4は、図6(b)に示すように、シート状基材11の製紙時に漉き込まれる帯状のスレッドであり、帯状の長辺部の寸法をシート状基材11の短辺部の寸法としている。また、偽造防止スレッド20−4は、基材21の裏面に体積型ホログラム層22、着色層23及び強磁性材層24を順に積層させている。
【0039】
以上より、本実施形態の商品券10−4は、偽造防止スレッド20−4をシート状基材11に漉き込んだ状態で形成されるので、偽造防止スレッド20−4をシート状基材11と一体化することによって、商品券10−4の偽造防止部の不正な貼り替えを防止することができ、商品券10−4の偽造を困難にすることができる。
【0040】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態では、商品券10の偽造防止対策を例にして説明したが、それ以外の物、例えば、商品の包装箱や、商品そのものに偽造防止ラベル20や偽造防止転写箔20−2を使用してもよい。
(2)第2実施形態では、熱板200の偽造防止転写箔20−2と接触する面は、バーコード状の凹凸が形成されていたが、凹凸を全く設けない平面や、模様などを形成する凹凸面を設けてもよい。
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は、以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による偽造防止媒体の第1実施形態として商品券に貼付された偽造防止ラベルを示す模式図である。
【図2】アモルファス強磁性材料及び一般の磁性材料のB−H磁化特性曲線を示す図である。
【図3】強磁性材層の磁気特性を読み取る磁気ヘッドの概略図である。
【図4】本発明による偽造防止媒体の第2実施形態として商品券に転写された偽造防止転写箔を示す模式図である。
【図5】本発明による偽造防止媒体の第3実施形態として商品券に貼付された偽造防止ラベルを示す模式図である。
【図6】本発明による偽造防止媒体の第4実施形態として商品券に漉き込まれた偽造防止転スレッドを示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
10 商品券
11 シート状基材
20、20−3 偽造防止ラベル
20−2 偽造防止転写箔
20−4 偽造防止スレッド
21 基材
22 体積型ホログラム層
23 着色層
24 強磁性材層
25 接着層
26 剥離層
27 感熱接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面側に設けられ、光の干渉によって生じる干渉縞を屈折率の異なる縞として層の厚さ方向に記録している体積型ホログラム層と、
前記体積型ホログラム層の前記基材とは反対の面側に設けられ、強磁性材料によって形成される強磁性材層と、
を備える偽造防止媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の偽造防止媒体において、
前記強磁性材層は、特定の磁化特性を有したアモルファス強磁性材料によって形成されること、
を特徴とする偽造防止媒体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の偽造防止媒体において、
前記強磁性材層と前記体積型ホログラム層との間に、着色層を備えること、
を特徴とする偽造防止媒体。
【請求項4】
請求項3に記載の偽造防止媒体において、
前記着色層は、パターン状に形成されていること、
を特徴とする偽造防止媒体。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の偽造防止媒体において、
前記着色層は、黒色インキによって形成されていること、
を特徴とする偽造防止媒体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の偽造防止媒体において、
前記強磁性材層の前記体積型ホログラム層とは反対の面側に接着層を備えること、
を特徴とする偽造防止媒体。
【請求項7】
請求項6に記載の偽造防止媒体において、
前記基材と前記体積型ホログラム層との間に剥離層を備えること、
を特徴とする偽造防止媒体。
【請求項8】
請求項7に記載の偽造防止媒体において、
当該偽造防止媒体は、前記剥離層によって前記基材から剥がされた状態で貼付対象物に前記接着層によって貼付されること、
を特徴とする偽造防止媒体。
【請求項9】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の偽造防止媒体と、
前記偽造防止媒体を漉き込んだ状態で形成されるシート状基材と、
を備える偽造防止シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−908(P2009−908A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164117(P2007−164117)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】