説明

催眠用医薬組成物

【課題】本発明は、新規な催眠用、睡眠障害の改善用、または睡眠改善用医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明において、トウキ、ショウキョウ、ケイヒ、ケイシ、ケイヨウヘイ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉またはそれらの抽出物からなる群より選ばれる1種または2種以上のものは抗ヒスタミン性物質の催眠作用を増強することを示した。したがい、上記成分を含有する組成物は、優れた催眠効果を示し、また、催眠用、睡眠障害の治療用、睡眠改善用の医薬組成物として有用なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な催眠用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠障害には、不眠症や過眠症、概日リズム障害、睡眠時随伴症等の種々パターンがあり、中でも不眠症はさらに入眠障害、途中覚醒、熟眠障害、早朝覚醒に分類される。
睡眠障害により、心身の疲労回復遅延、免疫・防御機構の低下、身体精神疾患の発症や悪化といった個人の健康問題を生じるばかりではなく、日常生活に様々な支障(集中困難、倦怠感、意欲低下、不機嫌など)をきたし、本来その人が持つ能力が発揮できず、仕事や学業に悪い影響を及ぼす。さらに適切な診断・治療がなされないと、眠気に関連したミスに伴って、交通事故や労働災害による社会的な損失を引き起こす。
不眠症の治療には、医師の処方箋が必要な医療用においては、バルビツール酸系、ベンゾジアゼピン系、バルビタール酸系等の睡眠薬が使用されており、また、医師の処方箋が必要ない一般用医薬品では、催眠作用を有する抗ヒスタミン性物質、特に塩酸ジフェンヒドラミンが使用されており、我国においても発売されている。
また、催眠作用が増強された薬剤を得るために、例えば、西洋チャボ時計草抽出エキスと抗ヒスタミン性物質を併用すること(例えば、特許文献1参照)や、塩酸ジフェンヒドラミンと、カノコソウまたはサンソウニンとを併用すること(例えば、特許文献2参照)が試みられている。
しかし、これまでに、抗ヒスタミン様物質と、トウキまたはその抽出物、ショウキョウまたはその抽出物、ケイヒまたはその抽出物、ケイシまたはその抽出物、ケイヨウヘイまたはその抽出物、チンピまたはその抽出物、トウヒまたはその抽出物、オウゴンまたはその抽出物、ソウジュツまたはその抽出物、または、イチョウまたはその抽出物を含有する、催眠用、睡眠障害の改善用、または睡眠改善用の医薬組成物については知られていない。
【0003】
【特許文献1】特許第2943247号明細書
【特許文献2】特許第2969509号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、西洋チャボ時計草は、血圧を降下させる作用があり、特に低血圧の患者には適用しにくいという問題点がある。また、サンソウニンおよびカノコソウは、消化器系の副作用があり、使用しにくいという問題点がある。また、抗ヒスタミン性物質単独では、催眠作用として充分に高い効果があるとは言いがたい。かかる事情を踏まえ、本発明は、副作用の少なく、しかも、より効果の高い催眠用医薬組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、催眠作用のある抗ヒスタミン性物質と、元来、催眠作用がほとんどあるいは全くないトウキ、ショウキョウ、ケイヒ、ケイシ、ケイヨウヘイ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉またはそれらの抽出物からなる群より選ばれる1種または2種以上とを併用することにより、抗ヒスタミン性物質の催眠作用を著しく増強することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
(1)抗ヒスタミン性物質および下記の群から選ばれる1種または2種以上を含有する催眠用、睡眠障害の改善用、または睡眠改善用医薬組成物。
群:トウキまたはその抽出物、ショウキョウまたはその抽出物、ケイヒまたはその抽出物、ケイシまたはその抽出物、ケイヨウヘイまたはその抽出物、チンピまたはその抽出物、トウヒまたはその抽出物、オウゴンまたはその抽出物、ソウジュツまたはその抽出物、イチョウ葉またはその抽出物
(2)抗ヒスタミン性物質およびトウキまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
(3)抗ヒスタミン性物質およびショウキョウまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
(4)抗ヒスタミン性物質およびケイヒまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
(5)抗ヒスタミン性物質およびケイシまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
(6)抗ヒスタミン性物質およびケイヨウヘイまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
(7)抗ヒスタミン性物質およびチンピまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
(8)抗ヒスタミン性物質およびトウヒまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
(9)抗ヒスタミン性物質およびオウゴンまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
(10)抗ヒスタミン性物質およびソウジュツまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
(11)抗ヒスタミン性物質およびイチョウ葉またはその抽出物を含有する医薬組成物。
(12)抗ヒスタミン性物質が、アリメマジンまたはその塩、ジフェンヒドラミンまたはその塩、クロルフェニラミンまたはその塩、ドキシラミンまたはその塩、メキタジンまたはその塩、クレマスチンまたはその塩、カルビノキサミンまたはその塩、ジフェニルピラリンまたはその塩およびクロモグリク酸またはその塩から選ばれる1種または2種以上である上記(1)〜(11)のいずれか1に記載の医薬組成物。
(13)抗ヒスタミン性物質が、ジフェンヒドラミンまたはその塩である上記(1)〜(11)のいずれか1に記載の医薬組成物。
(14)ジフェンヒドラミンまたはその塩が、塩酸ジフェンヒドラミンである上記(11)または(13)に記載の医薬組成物。
(15)製剤が経口投与製剤である上記(1)〜(14)のいずれか1に記載の医薬組成物。
(16)製剤の剤形が、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、液剤、トローチ剤またはゼリー剤である上記(1)〜(14)のいずれか1に記載の医薬組成物。
(17)下記の群より選ばれる1種または2種以上を含有する抗ヒスタミン性物質の作用増強剤。
群:トウキまたはその抽出物、ショウキョウまたはその抽出物、ケイヒまたはその抽出物、ケイシまたはその抽出物、ケイヨウヘイまたはその抽出物、チンピまたはその抽出物、トウヒまたはその抽出物、オウゴンまたはその抽出物、ソウジュツまたはその抽出物およびイチョウ葉またはその抽出物
【発明の効果】
【0007】
後記実施例から明らかなように、抗ヒスタミン性物質と、トウキ、ショウキョウ、ケイヒ、ケイシ、ケイヨウヘイ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉またはそれらの抽出物からなる群より選ばれる1種または2種以上を含有する医薬組成物は、優れた催眠作用を示した。
【0008】
したがって、抗ヒスタミン性物質と、トウキ、ショウキョウ、ケイヒ、ケイシ、ケイヨウヘイ、チンピ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉またはそれらの抽出物からなる群より選ばれる1種または2種以上を含有する医薬組成物は、催眠用、睡眠障害の治療用、睡眠改善用として有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にかかる抗ヒスタミン性物質は、中枢神経系におけるヒスタミンの働きを抑え、催眠作用を有するものである。かかる作用を有する抗ヒスタミン性物質とは、例えば、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、クレマスチン、アリメマジン、クロルフェニラミン、ドキシラミン、メキタジン、カルビノキサミンおよびクロモグリク酸等を挙げることができる。これらの抗ヒスタミン性物質は、遊離塩基または遊離酸そのままでもよいが、薬学的に許容される塩であってもよい。抗ヒスタミン性物質の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の鉱酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ラウリル酸塩等の有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。これらの抗ヒスタミン性物質は、公知の化合物であり、市販品を用いてもよく、公知の方法に基づき製造することもできる。本発明にかかる抗ヒスタミン性物質としては、ジフェンヒドラミンまたはその塩が好ましい。ジフェンヒドラミンの塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、サリチル酸、タンニン酸、ラウリル硫酸等の有機酸塩を挙げることができる。本発明においては、塩酸ジフェンヒドラミンが好ましい。
【0010】
次に、本発明における抗ヒスタミン性物質とともに配合される成分について説明する。
【0011】
本発明は、トウキ、ショウキョウ、ケイヒ、ケイシ、ケイヨウヘイ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉またはそれらの抽出物からなる群より選ばれる1種または2種以上を、抗ヒスタミン性物質の作用を増強するために配合することを特徴としている。
【0012】
トウキ(当帰)は、セリ科のトウキまたはホッカイトウキの根を、通例湯通ししたものであり、鎮静、鎮痛、平滑筋の興奮作用などが知られている。ショウキョウ(生姜)は、ショウガ科ジンジャーの根茎であり、発汗作用、健胃作用等が知られている。ケイヒ(桂皮)はクスノキ科の桂樹の樹皮を乾燥したものであり、腸蠕動運動促進作用、解熱作用、鎮静作用等が知られている。ケイヨウヘイ(桂葉柄)は、桂樹の葉を水蒸気蒸留して精油としたもの、ケイシ(桂枝)は、1cm以下の桂樹の細枝を帯皮のまま乾燥させたものであり、ケイヨウヘイおよびケイシともにケイヒの類薬として用いられる。チンピ(陳皮)は、ミカン科ウンシュウミカンの果皮を乾燥したものであり、健胃、整腸、止嘔、止吃逆作用、去痰作用等が知られている。トウヒ(橙皮)は、ミカン科のダイダイの果皮を乾燥したものであり、チンピの類薬として使用されている。オウゴン(黄ごん)は、シソ科のコガネバナの根を乾燥したものであり、鎮静降圧作用、解熱作用、利尿作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗真菌作用等が知られている。ソウジュツ(蒼朮)は、キク科の芽蒼朮の根茎を乾燥したものであり、健胃作用、利尿作用、発汗作用、鎮静作用、血糖降下作用、強壮作用等が知られている。イチョウ葉は、イチョウ科の銀杏の葉を乾燥したものであり、抗酸化作用、血流改善作用、血流増加作用、PAF阻害作用、精神安定作用等が知られている。
【0013】
本発明におけるトウキ、ショウキョウ、ケイヒ、ケイシ、ケイヨウヘイ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉は、必要に応じて自由にその形態を調節することができる。例えば、その原料の植物の薬用となる部分等を乾燥し、または簡単な加工を施してそのまま用いることもでき、また、小片、小塊に切断または破砕することができ、あるいは粉末に粉砕することもできる。例えば、粉末に粉砕したものとしては、トウキ末、ショウキョウ末、ケイヒ末、チンピ末、トウヒ末、オウゴン末、ソウジュツ末、イチョウ葉末等である。これらの乾燥物または切断、破砕または粉砕したものをそのまま用いてもよく、また、トウキ、ショウキョウ、ケイヒ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉から公知の方法にて抽出した抽出物を用いてもよい。抽出物とは、トウキ、ショウキョウ、ケイヒ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツまたはイチョウ葉に適当な浸出剤を加えて浸出した液、または浸出液を濃縮した液、または水蒸気蒸留等により得られる精油を言い、具体的には「エキス」および「チンキ」を挙げることができる。例えば、「トウキ」の抽出物としては、「トウキエキス」および「トウキチンキ」、ケイヒの抽出物としては「ケイヒチンキ」、「ケイヒエキス」および「ケイヒ油」等を挙げることができる。浸出剤としては、公知の方法にて浸出するのに適切なものを選択すればよく、特に制限されないが、例えば水、エタノール、メタノール等のアルコール、アセトン、ジクロルメタン、クロロホルム、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の溶媒またはこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本発明の医薬組成物における、抗ヒスタミン性物質とトウキ、ショウキョウ、ケイヒ、ケイシ、ケイヨウヘイ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉またはそれらの抽出物からなる群より選ばれる1種または2種以上の配合比は特に限定されるべきものではないが、抗ヒスタミン性物質1重量部に対して、トウキまたはその抽出物は1〜5000重量部、好ましくは1〜1000重量部、ショウキョウまたはその抽出物は1〜5000重量部、好ましくは1〜1000重量部、ケイヒまたはその抽出物は1〜5000重量部、好ましくは1〜1000重量部、ケイシまたはその抽出物は1〜5000重量部、好ましくは1〜1000重量部、ケイヨウヘイまたはその抽出物は1〜5000重量部、好ましくは1〜1000重量部、チンピまたはその抽出物は1〜3000重量部、好ましくは1〜1000重量部、トウヒまたはその抽出物は1〜5000重量部、好ましくは1〜1000重量部、オウゴンまたはその抽出物は1〜1000重量部、ソウジュツまたはその抽出物は1〜5000重量部、好ましくは1〜1000重量部、イチョウ葉またはその抽出物は1〜5000重量部、好ましくは1〜1000重量部である。
本発明の医薬組成物を投与するにあたっては、患者の性別、体重、年齢、症状、投与方法、投与回数、投与時期等により、医薬組成物の投与量を適宜決めればよい。本発明の医薬組成物においては、抗ヒスタミン性物質の投与量は、患者に対して1日あたり通常10〜300mgであり、25〜100mgであることが好ましく、抗ヒスタミン性物質が塩酸ジフェンヒドラミンの場合、塩酸ジフェンヒドラミンとして50〜75mgであることがさらに好ましい。
また、トウキまたはその抽出物の投与量は1日あたり通常100〜10000mgであり、500〜5000mgが好ましく、トウキまたはその抽出物がトウキの抽出物である場合1000〜5000mgであることがさらに好ましい。ショウキョウまたはその抽出物の投与量は1日あたり通常100〜10000mgであり、500〜5000mgであることが好ましく、ショウキョウまたはその抽出物がショウキョウの抽出物である場合、1500〜3000mgであることがさらに好ましい。ケイヒまたはその抽出物の投与量は1日あたり通常100〜10000mgであり、500〜5000mgが好ましく、ケイヒまたはその抽出物がケイヒの抽出物である場合、1000mg〜5000mgであることがさらに好ましい。ケイシまたはその抽出物の投与量は通常100〜10000mgであり、500〜5000mgであることが好ましく、ケイシまたはその抽出物がケイシの抽出物である場合1000〜5000mgであることがさらに好ましい。ケイヨウヘイまたはその抽出物の投与量は通常100〜10000mgであり、500〜5000mgであることが好ましく、ケイヨウヘイまたはその抽出物がケイヨウヘイの抽出物である場合1000〜5000mgであることがさらに好ましい。チンピまたはその抽出物の投与量は通常100〜10000mgであり、500〜5000mgであることが好ましく、チンピまたはその抽出物がチンピの抽出物である場合2500〜5000mgであることがさらに好ましい。トウヒまたはその抽出物の投与量は通常100〜10000mgであり、500〜5000mgであることが好ましく、トウヒまたはその抽出物がトウヒの抽出物である場合、2500〜5000mgであることがさらに好ましい。オウゴンまたはその抽出物の投与量は通常100〜10000mgであり、500〜6000mgであることが好ましく、オウゴンまたはその抽出物がオウゴンの抽出物である場合、3000〜6000mgであることがさらに好ましい。ソウジュツまたはその抽出物の投与量は通常100〜10000mgであり、500〜5000mgであることが好ましく、ソウジュツまたはその抽出物がソウジュツの抽出物である場合2500〜5000mgであることがさらに好ましい。イチョウ葉またはそれらの抽出物の投与量は通常100〜10000mgであり、500〜5000mgであることが好ましく、イチョウ葉またはその抽出物がイチョウ葉の抽出物である場合100〜300mgであることがさらに好ましい。
【0014】
本発明の医薬組成物には、トウキ、ショウキョウ、ケイヒ、ケイシ、ケイヨウヘイ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉またはそれらの抽出物からなる群から選ばれる1種または2種以上と抗ヒスタミン性物質以外に、さらに以下に示す医薬成分を配合してもよい。配合可能な成分としては、西洋チャボ時計草、サンソウニン、カノコソウ等の植物またはその抽出物、アスピリン、アスピリンアルミニウム、サザピリン、エテンザミド、サリチルアミド、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン等の解熱鎮痛薬、ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素等の鎮静剤、トリプトファン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン、グリシン、セリン、オルチニン等のアミノ酸等を挙げることができるが、上記のもののみに限定されるべきものではない。これらの医薬成分は、単一成分を配合してもよく、2つ以上のものを組み合わせて配合してもよい。
【0015】
本発明の医薬組成物は、経口または非経口的に投与することができる。非経口的に投与する製剤としては、注射剤、硬膏剤、酒精剤、エキス剤、坐剤、懸濁剤、チンキ剤、軟膏剤、パップ剤、点鼻剤、吸入剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤等の剤形を挙げることができる。また、経口的に投与する製剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、液剤、トローチ剤、ゼリー剤等の剤形を挙げることができる。本発明においては、経口投与製剤が好ましい。中でも、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、液剤、トローチ剤、ゼリー剤の経口投与可能な剤形が好ましい。
【0016】
製剤化は、公知の製剤技術により行うことができ、製剤中には適当な製剤添加物を加えることができる。製剤添加物は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜加えればよい。製剤添加物としては、例えば、賦形剤、基剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、流動化剤、可塑剤、界面活性剤、可能化剤、緩衝剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、安定化剤、乳化剤、懸濁剤、分散剤、抗酸化剤、充填剤、粘稠剤、粘稠化剤、pH調節剤、防腐剤、保存剤、甘味料、矯味剤、清涼化剤、着香剤・香料、芳香剤、着色剤等を挙げることができる。これら製剤添加物は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明の医薬組成物は、本発明に係る複数の成分を含む単一の製剤として製し、これを投与(服用)してもよいし、また本発明に係る各成分を分けて別の製剤とし、それら製剤を同時または順次投与(服用)可能としたキット製剤としてもよい。
【0018】
本発明の医薬組成物は、睡眠障害の治療用、催眠用、睡眠改善用として用いられるのが好ましい。効能・効果としては、一時的な不眠の症状の緩和(寝つきが悪い、眠りが浅い等)、不眠症、神経症等を挙げることができる。
【0019】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらにのみ限定されるべきものではない。
【実施例】
【0020】
1.試験方法
試験には、5週齢のマウスを用い、1群を6匹とした。表1の検体を経口投与し、投与30分後に、ヘキソバルビタール60mg/kg(投与液量:10mL/kg)を腹腔内投与した。マウスの正向反射が消失してから再度出現するまでの時間(睡眠時間)をストップウォッチにて測定した。薬剤を含まない0.5%メチルセルロース溶液を経口投与したものを対照とした。結果を表1に示した。
【表1】

【0021】
値は平均値±標準偏差を示す。
Studentのt検定またはAspin-Welchのt検定により対照群との間で有意(* p<0.05, ** p<0.01)。
Studentのt検定またはAspin-Welchのt検定により塩酸ジフェンヒドラミン単独群との間で有意(#p<0.05、##p<0.01)。
【0022】
2.試験結果
表1から明らかなように、実施例1〜7の塩酸ジフェンヒドラミン+トウキ群、塩酸ジフェンヒドラミン+ショウキョウ群、塩酸ジフェンヒドラミン+ケイヒ群、塩酸ジフェンヒドラミン+チンピ群、塩酸ジフェンヒドラミン+オウゴン群、塩酸ジフェンヒドラミン+ソウジュツ群および塩酸ジフェンヒドラミン+イチョウ葉群はいずれも、比較例1の対照群および比較例2の塩酸ジフェンヒドラミン単独群に比べて、有意に正向反射消失持続時間の延長が認められた。したがい、抗ヒスタミン性物質とトウキ、ショウキョウ、ケイヒ、チンピ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉からなる群より選ばれる1種または2種以上の組み合わせは優れた催眠作用を示すことがわかった。塩酸ジフェンヒドラミンの催眠作用が、トウキ、ショウキョウ、ケイヒ、チンピ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉のいずれにおいても増強されていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
トウキ、ショウキョウ、ケイヒ、ケイシ、ケイヨウヘイ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉またはそれらの抽出物からなる群より選ばれる1種または2種以上のものは抗ヒスタミン性物質の催眠作用を増強することを示した。
【0024】
したがって、抗ヒスタミン性物質と、トウキ、ショウキョウ、ケイヒ、ケイシ、ケイヨウヘイ、チンピ、トウヒ、オウゴン、ソウジュツおよびイチョウ葉またはそれらの抽出物からなる群より選ばれる1種または2種以上とを含有する医薬組成物は、優れた催眠効果を示し、また、催眠用、睡眠障害の予防および/または治療用、睡眠改善用等として有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒスタミン性物質および下記の群から選ばれる1種または2種以上を含有する催眠用、睡眠障害の治療用または睡眠改善用医薬組成物。
群:トウキまたはその抽出物、ショウキョウまたはその抽出物、ケイヒまたはその抽出物、ケイシまたはその抽出物、ケイヨウヘイまたはその抽出物、チンピまたはその抽出物、トウヒまたはその抽出物、オウゴンまたはその抽出物、ソウジュツまたはその抽出物およびイチョウ葉またはその抽出物
【請求項2】
抗ヒスタミン性物質およびトウキまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
【請求項3】
抗ヒスタミン性物質およびショウキョウまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
【請求項4】
抗ヒスタミン性物質およびケイヒまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
【請求項5】
抗ヒスタミン性物質およびケイシまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
【請求項6】
抗ヒスタミン性物質およびケイヨウヘイまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
【請求項7】
抗ヒスタミン性物質およびチンピまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
【請求項8】
抗ヒスタミン性物質およびトウヒまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
【請求項9】
抗ヒスタミン性物質およびオウゴンまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
【請求項10】
抗ヒスタミン性物質およびソウジュツまたはその抽出物を含有する医薬組成物。
【請求項11】
抗ヒスタミン性物質およびイチョウ葉またはその抽出物を含有する医薬組成物。
【請求項12】
抗ヒスタミン性物質が、アリメマジンまたはその塩、ジフェンヒドラミンまたはその塩、クロルフェニラミンまたはその塩、ドキシラミンまたはその塩、メキタジンまたはその塩、クレマスチンまたはその塩、カルビノキサミンまたはその塩およびジフェニルピラリンまたはその塩からなる群より選ばれる1種または2種以上である請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗ヒスタミン性物質が、ジフェンヒドラミンまたはその塩である請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ジフェンヒドラミンまたはその塩が、塩酸ジフェンヒドラミンである請求項12または13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
製剤が経口投与製剤である請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
製剤の剤形が、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、液剤、トローチ剤またはゼリー剤である請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
下記の群より選ばれる1種または2種以上を含有する抗ヒスタミン性物質の作用増強剤。
群:トウキまたはその抽出物、ショウキョウまたはその抽出物、ケイヒまたはその抽出物、ケイシまたはその抽出物、ケイヨウヘイまたはその抽出物、チンピまたはその抽出物、トウヒまたはその抽出物、オウゴンまたはその抽出物、ソウジュツまたはその抽出物およびイチョウ葉またはその抽出物

【公開番号】特開2007−291071(P2007−291071A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61436(P2007−61436)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】