説明

像担持体ユニットの製造方法、像担持体ユニット、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】熱かしめによって、フランジ部材に取り付けられたアース板(アース部材)の振動を防ぐことにより、異常音の発生を抑制した、安価で小型の像担持体ユニットの製造方法、像担持体ユニット、プロセスカートリッジおよびこれらを具備する画像形成装置を実現し提供する。
【解決手段】フランジ2のかしめ部2Aの直径D1が、アース板5に開けられた穴5Dの直径D2に対して2倍以上になるように熱かしめ条件を設定した(D1≧2×D2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体ユニットの製造方法、像担持体ユニット、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関し、さらに詳しくは、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プロッタ等またはそれら複数の機能を備えた複合機等の画像形成装置に用いられる像担持体ユニット、これを用いたプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ、プロッタ等またはそれら複数の機能を備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置に配置されている画像形成部において、トナー画像を作成して用紙等に転写するために用いられている像担持体は、導電性基材としてアルミ等の金属上に感光層を備えている。
そして、上記感光層に対してその周囲に配置している帯電装置、現像装置、転写装置等により、帯電・現像・トナー画像の転写等の動作を順次繰り返して行い、トナー画像を用紙に転写して画像形成された用紙を作成する。このような像担持体においては、繰り返して帯電動作等が行われ、その帯電電圧が高いものであることから、電子写真感光体などの円筒部材との導通性をより向上させることのできるアース部材を提供する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、特許文献1記載の技術では、アース部材において、円筒部材の内壁に当接する少なくとも二つ以上の第二の板バネの位置関係を、電子写真画像形成装置側の導通軸に当接する第一の板バネの導通軸との接点部の中心を中心とし、線対称とする構成を採っている。また、ドラムフランジ本体(フランジ部材)とドラムアース板(アース部材)とを、熱かしめで溶融固着することが記載されているが、ドラムアース板の振動による異常音発生や、かしめ部の形状による異常音の防止に関しては何ら言及されていない。
【0004】
アース部材としては、特許文献1においても、例えば板厚0.2mm程度のりん青銅製の薄板が用いられているので、熱かしめの諸条件が適正でないとビビリ・振動が発生しやすい課題を有する。
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置である事務機器は、室内で使用されるため、特にビビリ・振動による異常音等の騒音は皆無にすることが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、熱かしめによって、フランジ部材に取り付けられたアース板(アース部材)の振動を防ぐことにより、異常音の発生を抑制した、安価で小型の像担持体ユニットの製造方法、像担持体ユニット、プロセスカートリッジおよびこれらを具備する画像形成装置を実現し提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、導電性基材上に感光層を備えた像担持体と、該像担持体の少なくとも一端部に固定され、熱かしめ可能かつ非導電性の材料で形成されたフランジ部材と、該フランジ部材の中心部を貫通することにより前記像担持体を回転可能に支持するシャフトと、前記フランジ部材に少なくとも2箇所で固定されその一部が前記導電性基材に接触し他部が前記シャフトに接触することにより、前記導電性基材と前記シャフトとを導通するアース部材と、前記シャフトを支持するフレームと、前記シャフトを電気的に接地する導通手段とを用いると共に、前記アース部材を前記フランジ部材に固定する方法に熱かしめを用いた像担持体ユニットの製造方法において、前記熱かしめによる前記フランジ部材に対する前記アース部材の固定は、前記フランジ部材の少なくとも2箇所に形成されたボスを前記アース部材に開けられた少なくとも2箇所の穴に挿入した後、前記各ボスの先端部を溶着することで行い、前記熱かしめ後におけるかしめ部の直径が、前記穴の直径に対して2倍以上となるようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の像担持体ユニットの製造方法において、前記熱かしめ後における前記かしめ部の高さが、0.8mm以上となるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の像担持体ユニットの製造方法において、前記熱かしめ後における前記かしめ部の底面と、前記アース部材の厚さ方向における前記底面と対向する前記アース部材との間に形成される隙間が、0.2mm以下となるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一つに記載の像担持体ユニットの製造方法において、前記ボスの直径と前記穴の直径とが略一致していることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載の像担持体ユニットの製造方法において、前記アース部材の材質が、ステンレススチールまたはりん青銅であることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか一つに記載の像担持体ユニットの製造方法を使用して製造されたことを特徴とする像担持体ユニットである。
【0012】
請求項7記載の発明は、像担持体と、帯電手段、クリーニング手段および現像手段より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジにおいて、請求項6記載の像担持体ユニットを有することを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の像担持体ユニットまたは請求項7記載のプロセスカートリッジを具備することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記課題を解決して新規な像担持体ユニット、プロセスカートリッジおよびこれらを具備する画像形成装置を実現し提供することができる。請求項ごとの効果を挙げれば、以下のとおりである。
請求項1、2記載の発明によれば、上記各構成を用いることにより、アース部材がフランジ部材から浮き上がろうとする動きに対して、フランジ部材のかしめ部によって押さえつけられるので、アース部材(通常、例えば金属製の薄板が用いられるので、ビビリ・振動が発生しやすい)が振動することによる異常音の発生を抑制することができ、安価で小型の像担持体ユニットの製造方法を提供することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、上記構成を用いることにより、請求項1、2記載の発明の効果に加えて、アース部材とフランジ部材との熱かしめ部のガタ(特に、アース部材の厚さ方向のガタ)を抑えることができるので、アース部材が振動することによる異常音の発生を抑制することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、上記構成を用いることにより、請求項1ないし3の何れか一つに記載の発明の効果に加えて、アース部材の穴とフランジ部材のボスとの間のガタを抑えることができるので、アース部材が振動することによる異常音の発生を抑制することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、上記構成を用いることにより、安定した画像品質を得られる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし5の何れか一つに記載の発明の効果を像担持体ユニットで奏する。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、上記構成のプロセスカートリッジにおいても、請求項6記載の像担持体ユニットと同等の効果を得ることができる。
【0020】
請求項8記載の発明によれば、上記構成の画像形成装置においても、請求項6記載の像担持体ユニットまたは請求項7記載のプロセスカートリッジと同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1等の像担持体ユニットの外観斜視図である。
【図2】実施形態1等の像担持体ユニットを長手(軸)方向で断面にした断面図である。
【図3】実施形態1等の像担持体ユニットにおけるフランジ、アース板周りの斜視図である。
【図4】実施形態1等の像担持体ユニットをシャフトと直交する方向で断面にした像担持体、シャフト、フランジ、アース板周りの断面図である。
【図5】実施形態1等における、熱かしめ後のかしめ部の直径とアース板の穴の直径との関係を示す要部の断面図である。
【図6】実施形態1の変形例2における、熱かしめ後のかしめ部の高さを示す要部の断面図である。
【図7】変形例2の別の変形例における、熱かしめ後のかしめ部形状の一例を示す要部の断面図である。
【図8】変形例2のさらに別の変形例における、熱かしめ後のかしめ部形状の一例を示す要部の断面図である。
【図9】実施形態1の変形例3における、熱かしめ後のかしめ部の底面と、アース板上面との間の隙間を示す要部の断面図である。
【図10】実施形態1の変形例4における、熱かしめ前のボスの直径とアース板の穴の直径との関係を示す要部の断面図である。
【図11】実施形態1等を適用したカラー画像形成装置全体の概略的な構成図である。
【図12】実施形態1等を適用したプロセスカートリッジの要部の断面図である。
【図13】従来の熱かしめの問題点を説明するための、従来の像担持体ユニットの要部の断面図である。
【図14】図13におけるA部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、混同の虞がない限り同一符号を付すこととする。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0023】
(実施形態1)
まず、図11を参照して、本発明の実施形態1を適用した電子写真方式のカラー画像形成装置100の全体構成とともに動作を説明する。図11は、カラー画像形成装置100の内部構成を示す概略的な断面図である。
同図に示すように、カラー画像形成装置100は、装置本体としての機枠体をなす本体フレーム101のほぼ中央部に、画像形成部を構成するプロセスカートリッジとして右から左に向けて順に4つのプロセスカートリッジ106K,106C,106M,106Yを並設しており、プロセスカートリッジ106K,106C,106M,106Yの上側には、それぞれの像担持体1K,1C,1M,1Yに潜像を形成するための露光装置105を配置している。図示した例では、各像担持体1K,1C,1M,1Yの表面に、ブラックトナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像およびイエロートナー像像がそれぞれ形成される。
以下、プロセスカートリッジ106K,106C,106M,106Yでは、現像剤として使用されるトナーの色および形成されるトナー像が異なるだけで同様の構成であるため、これらを総括的に説明する際にはその色を表す符号を削除したプロセスカートリッジ106で説明する。同様に、像担持体1K,1C,1M,1Yを総括的に説明する際にはその色を表す符号を削除した像担持体1で説明する。
【0024】
プロセスカートリッジ106は、図11および図12に示すように、後述するように像担持体1等を有して構成された像担持体ユニット10と、帯電手段としての帯電装置を構成する帯電ローラ11と、クリーニング手段としてのクリーニング装置を構成するクリーニングブレード13と、現像手段としての現像装置を構成する現像ローラ12とを一体に支持する筺体状の支持部材としてのフレーム14を有し、フレーム14を介して、カラー画像形成装置100の本体フレーム101に対して着脱自在に構成されている。フレーム14は、図12において紙面の手前側および奥側に一対配設された支持側板を有している。
【0025】
プロセスカートリッジ106の下側には、複数の支持ローラ104a,104bに巻き掛けられ矢印方向に駆動される、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト103が設置されている。さらに中間転写ベルト103の下側には、給紙装置を構成する、用紙やOHPシート等のシート状記録媒体(以下、「シート」という)107を積載・収容する給紙カセット108が配置されている。給紙装置を構成する給紙ローラ109および図示しないシート分離手段によって1枚ずつ分離して給紙されたシート107は、支持ローラ104aを介して中間転写ベルト103と第2転写装置としての第2転写ローラ111との間を通り、定着装置112へ導かれてシート107にトナー像が熱定着される。
【0026】
プロセスカートリッジ106の像担持体1が中間転写ベルト103と接する下方位置には、第1転写装置を構成する第1転写ローラ103aがそれぞれ設置されている。各第1転写ローラ103aに高電位を印加することによって、像担持体1と中間転写ベルト103に電位差が生じることで像担持体1表面に形成された各色のトナー像が中間転写ベルト103に転写される。
各プロセスカートリッジ106にてこれら色毎のトナー像が順次中間転写ベルト103に転写され、中間転写ベルト103上に単色トナー像を重ね合わせた複数色のカラートナー像が形成される。
【0027】
給紙ローラ109から給送されたシート107は、レジスト手段としてのレジストローラ110でタイミングをとって第2転写ローラ111に供給され、中間転写ベルト103の表面に形成されている単色あるいはカラートナー像は、第2転写ローラ111において高電位が印加されることによって、中間転写ベルト103と第2転写ローラ111との間に電位差が生じることで、中間転写ベルト103表面に形成されたトナー像がシート107上に転写される。
【0028】
未定着のトナー像が転写されたシート107は、中間転写ベルト103から剥離され、定着装置112によってトナー像がシート107に溶融定着され、排紙装置を構成する排紙ローラ113により本体フレーム101の上面に配置された排紙トレイ116に排出・排紙される。
【0029】
シート107へトナー像を転写した後の中間転写ベルト103の表面に残っている余剰トナーは、中間転写体清掃装置114により清掃され、トナー回収装置115に回収される。清掃された中間転写ベルト103は、次のトナー像の転写に備える。
【0030】
図11に示すように、カラー画像形成装置100は、シート107の給紙から排紙までのシート搬送経路をできる限り簡略化し、そのシート搬送経路の曲率半径を大きくすることにより、搬送途中での紙詰まりを防止し、信頼性を向上させることができる。また、紙詰まり発生時の解消処理操作も簡単に行うことができ、さらに、厚紙等も使用する多種記録媒体方式のカラー電子写真装置にも対応することもできるよう構成されている。
【0031】
この実施形態では、シート搬送経路を略円弧状に形成し、中間転写ベルト103とプロセスカートリッジ106と露光装置105とを、シート搬送経路の内側に配置することにより、本体フレーム101内の空間を有効利用して小型化するとともに、シート搬送経路を簡略化し、画像面を下向きにしてシート107を排出する構成とした。
【0032】
上記構成により、シート搬送経路を簡略化することができ、かつ、殆どの構成ユニットをシート搬送経路よりも内側に配置したことによって、シート搬送経路が外側の本体フレーム101に近くなり、シート搬送経路を開放し易くなるために、紙詰まり発生時の解消処理操作も簡単になる。また、シート107が画像面を下向きにして本体フレーム101上面の排紙トレイ116上に排出されることにより、排紙トレイ116上に積み重なったシート107は、画像面側が上を向くように取り出すと、上側から下側に印刷順に並ぶように積み重なる利点がある。
また、図11での右側が正面となるよう構成するとともに、シート搬送経路のほぼ中央で分割してその右側を開閉自在なカバーユニット(図示せず)とし、このカバーユニットを開放してシート搬送経路を露出させることができる構成であるため、紙詰まり発生時の解消処理操作もより簡単になる。
【0033】
次に、電子写真画像形成プロセスについて説明する。図12はプロセスカートリッジ106の断面図である。図11および図12において、像担持体1は、本体フレーム101に設置された図示しない駆動装置により矢印方向に回転駆動され、その表面の感光層1Bが帯電ローラ11によって一様な高電位に帯電される。一様帯電された感光層1Bは、露光装置105からの画像情報に基づく光線(例えばレーザ光)Lにより露光される。この露光により電位の減衰した低電位部と初期化による高電位部とからなる静電潜像が感光層1Bに形成される。次いで、当該静電潜像の低電位部(または高電位部)が像担持体1と現像ローラ12との対向位置に至ると、その表面にトナー薄層を担持した現像ローラ12からトナーが像担持体1に移され、像担持体1の表面にトナー像が形成される。像担持体1の回転が進むと、上記トナー像は図11に示した1次転写ローラ103aによって中間転写ベルト103に転写される。このとき、像担持体1上には、中間転写ベルト103に転写されずに残った転写残トナーが存在するが、この転写残トナーはクリーニングブレード13によって像担持体1から除去される。このクリーニングブレード13よりも像担持体1の回転方向下流側には、図示しない除電装置が設けられている。この除電装置では、像担持体1の表面の残留電荷が除去される。除電装置における像担持体1の回転方向下流側には上記帯電ローラ11が設けられており、像担持体1は再び帯電ローラ11によって一様な高電位に帯電される。
【0034】
図1〜図4を参照して、本実施形態のプロセスカートリッジ106を構成する像担持体ユニット10について、図13および図14に示す従来の比較例である像担持体ユニット500と比較しながら説明する。本実施形態の像担持体ユニット10は、比較例の像担持体ユニット500と比較して、後述するようにアース板5(図3参照)をフランジ2に固定する熱かしめ方法が主に相違する。
【0035】
図1は、像担持体ユニット10の外観斜視図であり、図2は、像担持体ユニット10をその長手方向(軸方向)で断面にした図であり、像担持体ユニット10を構成する像担持体1の周辺部品も同時に表したものである。図3は、フランジ部材(以下、「フランジ」という)2およびアース部材(以下、「アース板」という)5を表した斜視図である。また図4は、像担持体ユニット10をシャフト4と直交する方向で断面にした図であり、像担持体ユニット10を構成する像担持体1の周辺部品も同時に表したものである。
【0036】
図1〜図4に示すように、像担持体ユニット10は、円筒状をなす導電性基材1Aの表面に感光層1Bを備えた像担持体1(図4参照)と、像担持体1の一端部に取り付け・固定されたフランジ部材としてのフランジ2と、像担持体1の他端部に取り付け・固定されたギヤ3と、フランジ2およびギヤ3の中心部を貫通することにより像担持体1を回転可能に支持するシャフト4と、その一部が導電性基材1Aに接触し他部がシャフト4に接触することにより、導電性基材1Aとシャフト4とを導通するアース部材としてのアース板5と、シャフト4のアース板5との接触部位に塗布される図示しない導電性潤滑剤と、シャフト4を支持するフレーム14と、シャフト4を電気的に接地する後述する導通手段とを有している。
【0037】
図1、図2、図3に示すように、像担持体1は、フランジ2の中心部に形成された孔2aと、ギヤ3の中心部に形成された孔3aとを貫通するシャフト4によって回転可能に支持されている。シャフト4は、例えば導電性の特殊鋼等の金属で形成されたり、導電性のメッキ処理を施されていて、プロセスカートリッジ106のフレーム14によってその両端部を支持され、止め輪等の回転防止部材9によってシャフト4は回転することを抑制されるとともに、図において左側への抜け止めがなされている。また、シャフト4は、回転防止部材9と反対側の端部において、図示しない別部材で軸方向に対する完全な抜け止めがなされている。
【0038】
プロセスカートリッジ106をカラー画像形成装置100の本体フレーム101に装着したときに、本体フレーム101に取り付けられ電気的に接地された例えばステンレススチール製の板金(図示せず)と、導電性のシャフト4の端部とが接触することにより、シャフト4が接地されるようになっている。上記のとおり、本体フレーム101に取り付けられ電気的に接地された板金(図示せず)は、シャフト4を電気的に接地する導通手段を構成している。
【0039】
図4に示すように、像担持体1は、アルミ等で形成された導電性基材1Aの表面にセレン等からなる感光層1Bを設けた構成であり、図11および図12において、感光層1Bに対してその周囲に配置している帯電装置の帯電ローラ11、現像装置の現像ローラ12、1次転写装置の1次転写ローラ103aにより、帯電・現像・トナー画像の転写等の動作を順次繰り返して行い、中間転写ベルト103を介してトナー像を最終的に用紙等のシート107に転写して画像形成されたシートを作成するものである。
【0040】
像担持体1においては、繰り返して帯電動作が行われ、その帯電電圧が高いものであるため、回転駆動される像担持体1とシャフト4との間の導通を確保し、静電気を容易に逃がすために、例えば金属製のばね材で形成されたアース板5を、次のように形成し配置することで、画像に異常が発生することを防いでいる。すなわち、図4等に示すように、アース板5は、その一部としてアース板5に一体形成された2箇所の凸部5Aが導電性基材1Aの内面に食い込むように接触し、他部としてアース板5に一体形成された2箇所の折り曲げ部5Bの突起形状5Cがシャフト4に摺動・接触するように配置されることにより、導電性基材1Aとシャフト4とを電気的に導通している。
【0041】
アース板5は、後で詳述するように、熱かしめ可能な電気絶縁性の樹脂で形成されたフランジ2に植設された2箇所のボス2B,2Bを、アース板5に開けられた2箇所の穴5D、5Eに嵌入した後、各ボス2Bの先端部である頭部を加熱溶着する熱かしめで固定・保持される。
【0042】
アース板5は、上述したように、フランジ2の円筒状外周部の外側に固定する状態で設けられ、4隅が丸みを帯びたほぼ正方形状をなし、一方の一対の対向する辺の部位が外側に突出するように延びて導電性基材1Aの内周面に食い込むように接触する2箇所の凸部5A,5Aと、他方の一対の対向する辺の部位がシャフト4の軸方向に沿うように折り曲げられてシャフト4の外周表面に接触する突起形状5Cを備えた2箇所の折り曲げ部5B,5Bと、フランジの各ボス2Bが嵌入される2箇所の穴5D、5Eとを有し、りん青銅あるいはアルミ等の薄板状のばね材で一体的に形成されている。
突起形状5Cは、その断面がほぼU字状をなす。穴5Dは、真円状の貫通穴であり、アース板5を二次元方向に位置決めするための基準穴でもある。穴5Eは、貫通した長穴であり、アース板5を二次元方向に位置決めする際の逃げが長径側に設けられている。
【0043】
像担持体1は、図1および図2において、図示しない駆動装置に連結されたギヤ列等の駆動力伝達部材と噛み合っているギヤ3に上記駆動装置の回転駆動力が伝達されることにより、図4中矢印方向に回転駆動されることによって、フランジ2とともにアース板5も図4中矢印方向に回転することとなり、対向する2箇所の折り曲げ部5B,5Bの突起形状5Cがシャフト4の外周面に塗布された導電性潤滑剤(図示せず)上を摺動・接触しながら回転する。導電性潤滑剤としては、例えば導電性グリースなどが用いられる。
【0044】
ここで、図13および図14を参照して、従来の像担持体ユニット500において、アース板5をフランジ2に熱かしめで溶着固定していた像担持体ユニットの製造方法を説明する。以下、従来例および本発明の実施形態等を含め、2Bは、フランジ2の熱かしめ前のボスを、2Aは、熱かしめ後のボス溶着頭部を指すものとし、これを「かしめ部」ともいう。また、かしめ部2Aおよびボス2B周りの断面は、図を見やすくするためにハッチング表示を省略し、アース板5のみ断面ハッチング表示を施す。
従来では、図14の拡大断面図に示すように、熱かしめによって溶着されたフランジ2のかしめ部2Aの直径(外径)D1が、アース板5に開けられたフランジ2のボス2Bを貫通するための穴5D,5Eの直径D2(但し、穴5Eは短径の穴径を指す。以下、説明の簡明化のため穴5D側で説明する。以下、同じ)から抜けることを防止するためだけの最小限の大きさ(D1>D2)になっており、図示しないシャフトに対してアース板5が摺動することによって発生する振動を抑えることができずに異常音が発生する問題がある。
【0045】
(像担持体ユニットの製造方法)
本実施形態に係る像担持体ユニットの製造方法では、上記従来の問題を解決するために、図5の拡大断面図に示すように、フランジ2のかしめ部2Aの直径D1が、アース板5に開けられた穴5Dの直径D2に対して2倍以上になるように、すなわち、同図に括弧を付して示すように、D1≧2×D2となるように熱かしめ条件を設定したものである。本発明は、実施形態1のように、D1≧2×D2となるように構成することが必須の構成である。
これにより、かしめ部2Aのアース板5に対する面積が大きくなり、アース板5が傾くことで生じるかしめ部2Aと、アース板5との間の隙間があきにくくなることによって、密着性が増し、アース板5が振動しようとしても、かしめ部2Aで押さえ込むことで振動を防止することができ、ひいては異常音の発生を抑えることができる。
アース板5は、その凸部5Aが像担持体1の導電性基材1Aの内面に食い込むように接触する必要があるため、アース板5を固定したフランジ2を像担持体1に組み込む際に、アース板5の凸部5Aには像担持体1の導電性基材1Aの内面から力が加わる。この力が、アース板5がフランジ2から抜ける方向にかかる場合、アース板5からフランジ2のかしめ部2Aに対して力がかかることになる。フランジ2のかしめ部2Aの直径D1が、アース板5の穴5Dの直径D2に対して2倍以上になることにより、かしめ部2Aのアース板5に対する面積が大きくなることで、かしめ部2Aがアース板5を押さえつける効果が大きくなり、アース板5からの力でかしめ部2A自体が変形してしまうことによって生じる隙間はあきにくくなり、アース板5の振動を防止することができ、ひいては異常音の発生を抑えることができる。
また、フランジ2のかしめ部2Aの直径D1が、アース板5の穴5Dの直径D2に対して2倍以上になることにより、熱かしめ時にかしめ部2Aとボス2Bの中心が微小にズレてしまうことによるアース板5の抑え込みが弱くなる箇所の発生をも抑えることができ、アース板5の振動を防止することができ、ひいては異常音の発生を抑えることができる。
【実施例1】
【0046】
熱かしめ条件を以下のように設定して、本発明の実施例1に係る熱かしめ試験を行った結果を説明する。
[熱かしめ条件]
フランジ2の材料:電気絶縁性(非導電性)のポリアセタール(POM)
フランジ2のボス2Bの直径D3(外径):φ1.2±0.03mm
フランジ2のボス2Bの高さ(長さ):3.5〜4mm
アース板5の材料:板厚0.2mmのステンレススチール板
アース板5の穴5Dの直径D2(穴径の公差):φ1.2(+0.1/+0.05)
アース板5の穴5Eの径(長穴径の公差):φ1.2(+0.1/+0.05)×1.5(+0.09/−0.05)
加熱温度:168±3℃
加熱時間:6秒(熱かしめ後に糸を引くのを防止するための冷却時間は7秒)
加圧加重:熱かしめ機にかけている空気圧で400kPa(かしめ部2Aに実際にかかっている加圧加重は未測定)
【0047】
上記の熱かしめ条件にて、熱かしめ後、図5における像担持体ユニット10のかしめ溶着部を切断し、スケールで測定した結果、フランジ2のかしめ部2Aの直径D1が、アース板5に開けられた穴5Dの直径D2に対して2倍以上:D1≧2×D2であることを確認した。
【0048】
図5を参照して、実施形態1の変形例1を説明する。変形例1は、図5に示した実施形態1と比較して、実施形態1の熱かしめ条件を含む熱かしめ要件に加えて、同図に示すように、フランジ2のかしめ部2Aの直径D1が、フランジ2のボス2Bの直径(外径)D3に対して、2倍以上になるように熱かしめ条件を設定した点のみ相違する。
【0049】
変形例1によれば、かしめ部2Aのアース板5に対する面積が大きくなり、アース板5が傾くことで生じるかしめ部2Aとアース板5との間の隙間があきにくくなることによって、密着性が増し、アース板5が振動しようとしても、かしめ部2Aで押さえ込むことにより振動を防止することができ、ひいては異常音の発生を抑えることができる。
また、アース板5は像担持体1の導電性基材1Aの内面に食い込むように接触する必要があるため、アース板5を固定したフランジ2を像担持体1に組み込む際に、アース板5の凸部5Aには像担持体1の導電性基材1Aの内面から力が加わる。この力がアース板5がフランジ2から抜ける方向にかかる場合、アース板5からフランジ2のかしめ部2Aに対して力がかかることになる。フランジ2のかしめ部2Aの直径D1がフランジ2のボス2Bの直径D3に対して2倍以上になることにより、かしめ部2Aのアース板5に対する面積が大きくなることで、かしめ部2Aがアース板5を押さえつける効果が大きくなり、アース板5からの力でかしめ部2A自体が変形してしまうことによって生じる隙間はあきにくくなり、アース板5の振動を防止することができ、ひいては異常音の発生を抑えることができる。また、フランジ2のかしめ部2Aの直径D1がフランジ2のボス2Bの直径D3に対して2倍以上になることにより、かしめ時にかしめ部2Aとボス2Bの中心が微小にズレてしまうことによるアース板5の抑え込みが弱くなる箇所の発生を抑えることができ、アース板5の振動を防止することができ、ひいては異常音の発生を抑えることができる。
【0050】
(実施形態1の変形例2)
図6を参照して、実施形態1の変形例2を説明する。変形例2は、図5の実施形態1と比較して、実施形態1の熱かしめ要件に加えて、同図に示すように、フランジ2のかしめ部2Aの高さH1が、0.8mm以上になるように熱かしめ条件を設定した点のみ相違する。すなわち、同図に括弧を付して示すように、D1≧2×D2、かつ、H1≧0.8mmの熱かしめ要件である。
変形例2によれば、フランジ2のかしめ部2Aの高さH1を0.8mm以上にすることにより、かしめ部2Aの剛性が増し、アース板5がフランジ2から浮き上がろうとする動きに対して、フランジ2のかしめ部2Aによって押さえつけられるので、アース板5の振動を押さえ込む効果をより高めることが可能となる。
【0051】
かしめ部2Aを横から見たときの形状は、図6のような「きのこ状」になるのが一般的であるが、さらに剛性を持たせるために図7に示すような柱形状にすることが望ましい。また、かしめ部2Aの形状を、図8に示すような円錐状の形状にすることで、柱形状より少ない材料で剛性を高めることができる。
これらかしめ部2Aの形状変更は、熱かしめ機のヘッド形状を変更すると共に、熱かしめ条件の一部(加熱温度、加熱時間等)を適正に変更するだけで、容易に達成可能である。
【0052】
(実施形態1の変形例3)
図9を参照して、実施形態1の変形例3を説明する。変形例3は、図5の実施形態1と比較して、実施形態1の熱かしめ要件に加えて、同図に示すように、フランジ2のかしめ部Aの底面と、アース板5の厚さ方向におけるかしめ部Aの底面と対向するアース板5上面との隙間(距離)C1が、0.2mm以下となるように熱かしめ条件を設定した点のみ相違する。すなわち、同図に括弧を付して示すように、D1≧2×D2、かつ、C1≦0.2mmの熱かしめ要件である。
【0053】
変形例2によれば、かしめ部Aの底面とアース板5上面との隙間C1を0.2mm以下とすることで、アース板5とフランジ2との熱かしめ部のガタ(特に、アース2の厚さ方向のガタ)を抑えることができるので、アース板5の振動を防止することができ、ひいては異常音の発生を抑えることができる。
【0054】
(実施形態1の変形例4)
図10を参照して、実施形態1の変形例4を説明する。変形例4は、図5の実施形態1と比較して、実施形態1の熱かしめ要件に加えて、同図に示すように、フランジ2のボス2Bの直径D3と、アース板5の穴5Dの直径D2とが略一致している点のみ相違する。フランジ2のボス2Bの直径D3と、アース板5の穴5Dの直径D2は、熱かしめ前に設定、形成されることは無論である。
ここで、「フランジ2のボス2Bの直径D3と、アース板5の穴5Dの直径D2とが略一致している」とは、通常の手動操作によって、ボス2Bを穴5Dに嵌入・挿入できる程度に一致していることを含むほか、穴5Dの直径D2がボス2Bの直径D3に対して設計上設定される許容公差内に入る場合を含むことを意味する。
本変形例によれば、アース板5の穴5Dとフランジ2のボス2Bとの間のガタを抑えることができるので、アース板5の振動を防止することができ、ひいては異常音の発生を抑えることができる。
【0055】
上述した実施形態1、その変形例1〜4を適宜組み合わせることにより、像担持体ユニットの製造方法の実施、すなわち像担持体ユニットの製造方法を使用した像担持体ユニットを製造することができ、この像担持体ユニットを有するプロセスカートリッジ、このプロセスカートリッジを有する画像形成装置を実施することができる。
以上述べたとおり、本発明を特定の実施例を含む実施形態等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した実施形態等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および目的・用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【符号の説明】
【0056】
1 像担持体
2 フランジ(フランジ部材)
2A かしめ部(熱かしめ後のかしめ部)
2B ボス
3 ギヤ
4 シャフト
5 アース板(アース部材)
5A 凸部(アース部材の一部)
5B 折り曲げ部
5C 突起形状(アース部材の他部)
5D 穴
5E 長穴
10 像担持体ユニット
11 帯電ローラ(帯電手段を構成)
12 現像ローラ(現像手段を構成)
13 クリーニングブレード(クリーニング手段を構成)
14 フレーム(像担持体ユニットの支持部材)
100 カラー画像形成装置(画像形成装置)
101 本体フレーム(画像形成装置の装置本体)
C1 かしめ部の底面とアース部材の厚さ方向におけるアース部材との隙間
D1 かしめ部の直径・外径
D2 穴の直径
D3 ボスの直径・外径
H1 かしめ部の高さ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開平11−249495号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材上に感光層を備えた像担持体と、該像担持体の少なくとも一端部に固定され、熱かしめ可能かつ非導電性の材料で形成されたフランジ部材と、該フランジ部材の中心部を貫通することにより前記像担持体を回転可能に支持するシャフトと、前記フランジ部材に少なくとも2箇所で固定されその一部が前記導電性基材に接触し他部が前記シャフトに接触することにより、前記導電性基材と前記シャフトとを導通するアース部材と、前記シャフトを支持するフレームと、前記シャフトを電気的に接地する導通手段とを用いると共に、前記アース部材を前記フランジ部材に固定する方法に熱かしめを用いた像担持体ユニットの製造方法において、
前記熱かしめによる前記フランジ部材に対する前記アース部材の固定は、前記フランジ部材の少なくとも2箇所に形成されたボスを前記アース部材に開けられた少なくとも2箇所の穴に挿入した後、前記各ボスの先端部を溶着することで行い、
前記熱かしめ後におけるかしめ部の直径が、前記穴の直径に対して2倍以上となるようにしたことを特徴とする像担持体ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記熱かしめ後における前記かしめ部の高さが、0.8mm以上となるようにしたことを特徴とする請求項1記載の像担持体ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記熱かしめ後における前記かしめ部の底面と、前記アース部材の厚さ方向における前記底面と対向する前記アース部材との間に形成される隙間が、0.2mm以下となるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の像担持体ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記ボスの直径と前記穴の直径とが略一致していることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一つに記載の像担持体ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記アース部材の材質が、ステンレススチールまたはりん青銅であることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一つに記載の像担持体ユニットの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一つに記載の像担持体ユニットの製造方法を使用して製造されたことを特徴とする像担持体ユニット。
【請求項7】
像担持体と、帯電手段、クリーニング手段および現像手段より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジにおいて、
請求項6記載の像担持体ユニットを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項6記載の像担持体ユニットまたは請求項7記載のプロセスカートリッジを具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−217694(P2010−217694A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66208(P2009−66208)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】