説明

優れた耐火性を有する複合品

複合品はガラス質材料から形成される第一の窓層及び第一の窓層に隣接して配置される強化シリコーン層を備える。強化シリコーン層は硬化シリコーン組成物及び繊維強化剤を含む。強化シリコーン層中の硬化シリコーン組成物の存在のおかげで、複合品は優れた耐火性を示し、主に炭素系材料を含む複合品ほどたくさんの煙や毒ガスを放出しない。さらに、強化シリコーン層中の繊維強化剤の存在のおかげで、熱により複合品に欠陥が形成された後でさえも、複合品は優れた構造的な統合性を維持する。主題となる本発明の複合品は、それ自体、現存する複合品では可能ではなかった耐荷重性用用途に対して適しているであろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願書類
この特許出願書類は、2007年2月22日に出願された特許文献1の優先権を主張し、その全ての利益を有する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概して、優れた耐火性を有する複合品に関する。より具体的には、本発明は、複合品に優れた耐火性を提供する窓層及び新規なシリコーン層を有する複合品に関する。
【0003】
防炎加工窓は、居住用、商業用、及び産業用建築業界や、消費財及び自動車業界において、火、煙、または建造物を伝う高熱(または、例えばオーブンなどにおける空間内の熱または火も含む。)を防ぐための用途において知られている。防炎加工窓は、典型的には、30、60または90分のいずれかの防炎加工窓として等級付けされ、それは、開始から30分後に843℃、60分後に926℃、120分後に1010℃、及び240分後に1093℃の暴露温度へと到達する、事前に規定された火炎状態に防炎加工窓が暴露された場合の、防炎加工窓における欠陥を形成するのにどれぐらい時間がかかるかに依存する。例えば、窓が、30分を超えるが60分未満の間、前記事前に規定された火炎状態に暴露されると、30分と格付けされた防炎加工窓には欠陥が生じる。防炎加工窓に要求される防炎加工の特定の格付けは、用途及び経費の検討に依存しており、それは、より高い防炎加工格付けを有する防炎加工窓は、通常、より低い防炎加工格付けを有する防炎加工窓よりも経費がかかるからである。
【0004】
十分な防炎加工格付けを有する防炎加工窓を開発するための多くの開発が行われている。防炎加工窓は、通常、慣習的なガラス層及び防炎加工窓に耐火性を提供する層を備える、一連の層から形成される。多くの異なる材料を用いて耐火性を提供する層を形成するが、耐火性を提供する層を形成するために使用される材料の多くが欠点を有する。例えば、炭素系材料、特に、材料中の全材料の総重量に対して50重量部を超える炭素を有する主として炭素系材料を使用して耐火性を提供する層を形成させた場合、材料は最終的には過剰な量の煙及び毒ガスを放出する。
【0005】
主として炭素系材料が使用される場合と比較して、それほどたくさんの煙及び毒ガスを放出しない他の非炭素系材料もまた耐火性を提供する層のために使用されている。例えば、無機ケイ素系材料が、防炎加工窓に耐火性を提供する層において使用されている。防炎加工窓における耐火性を提供する層を形成するために使用されている無機ケイ素系材料の具体的な例には、Gelderie et al.,による特許文献2に開示されるようにアルカリ金属ポリケイ酸塩水和物、Mennig et al.,による特許文献3に開示されるようにケイ酸塩の加水分解及び縮合を介して得られる組成物、及び特許文献4に開示されるようにシリコーンエラストマーが挙げられる。無機ケイ素系材料は炭化されるにも関わらず、主として炭素系材料と比較した場合、無機ケイ素系材料はより少ない煙及び毒性ガスを産生する。しかし、ケイ素系材料から形成される層を備える防炎加工窓は、製造に非常に大きな労働力を要し、重たくて、しばしば、加熱下での欠陥に対する構造的な統合性を維持することが不十分である。より具体的には、加熱により、一旦防炎加工窓に欠陥が形成されると、防炎加工窓は力学的欠陥に陥りやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/891,165号
【特許文献2】米国特許第6,159,606号
【特許文献3】米国特許第5,716,424号
【特許文献4】独国特許第2,826,261号
【特許文献5】米国特許第6,570,325号
【特許文献6】米国特許第3,419,593号
【特許文献7】米国特許第4,766,176号
【特許文献8】米国特許第5,017,654号
【特許文献9】米国特許第4,510,094号
【特許文献10】米国特許第5,496,961号
【特許文献11】米国特許第4,530,879号
【特許文献12】米国特許第4,087,585号
【特許文献13】米国特許第5,194,649号
【特許文献14】米国特許第4,324,901号
【特許文献15】米国特許第4,276,424号
【特許文献16】米国特許第4,324,901号
【特許文献17】PCT出願書類JP第2006/315901号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chemistry of Materials,1998,10,531−536
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の防炎加工窓の欠点のせいで、優れた耐火性を有する複合品であって、加工するのにより実質的に費用効率がより優れていて、重量がより軽くて、さらに、加熱下での複合品の欠陥が生じた後、すなわち、複合品に欠陥が形成された後においてさえも、優れた構造的な統合性を維持し、主として炭素系材料を含む複合品ほどたくさんには煙及び毒ガスを放出しない複合品を提供することが有利となろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
主題となる発明は、ガラス質材料から形成される第一の窓層及び第一の窓層に隣接して配置される強化シリコーン層を備える複合品を提供する。強化シリコーン層は、硬化シリコーン組成物及び繊維強化剤を含む。強化シリコーン層中の硬化シリコーン組成物の存在のおかげで、複合品は優れた耐火性を示し、主として炭素系材料を含む複合品ほどにはたくさんの煙及び毒ガスを放出しない。一層さらには、強化シリコーン層中の繊維強化剤の存在のおかげで、複合品は加熱のせいで複合品に欠陥が形成された後でさえも、優れた構造的な統合性を維持する。主題となる本発明の複合品は、それ自体、先行技術の複合品で可能ではなかった耐荷重性用用途に適するであろう。
【0010】
本発明の他の利点は、以下の付随する図面との関連性を考慮した場合、以下の詳細な記載を参酌することにより、さらに一層容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の複合品の垂直断面図である。
【図2】本発明の複合品の他の実施態様の垂直断面図である。
【図3】本発明の複合品の他の実施態様の垂直断面図である。
【図4】加熱中の複合品の低温側の温度を示すグラフである。
【図5】図4のグラフで例示される複合品の低温側の温度に相関する、炉を加熱する速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を参酌した際に、同様の数字は、複数の図面を通して対応する部分を指し示し、複合品は概して図1において10で示される。複合品10は、優れた耐火性を有し、居住用、商業用、及び産業用建築業界や、消費財及び自動車業界において、火、煙、または建造物を伝う高熱(または、例えばオーブンなどにおける空間内の熱または火も含む。)を防ぐのに有用である。本発明の複合品10は耐荷重性用用途においても適しているであろうし、以下の複合品10のさらなる記載に関連してそれは理解されるであろう。
【0013】
複合品10は、ガラス質材料から形成される第一の窓層12を備える。第一の窓層12は、典型的には、少なくとも80%の高透明度を有するが、80%未満の透明度を有する窓層もまた本発明の目的に適しているであろうことが理解される。第一の窓層12は従来の窓に典型的である摩擦及び擦過抵抗性を提供する。
【0014】
第一の窓層12を形成するガラス質材料はさらに窓を形成するのに通常使用される任意の物質として定義される。第一の窓層12を形成するのに使用してもよい適切なガラス質材料の具体例には、典型的にはシリカ系ガラスまたは炭素系ポリマーが挙げられる。一般的なシリカ系ガラスの一具体例は、ソーダ石灰シリカガラスである。第一の窓層12を形成するのに適している炭素系ポリマーの具体例には、以下に限定されないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、及びアクリルが挙げられる。
【0015】
第一の窓層12は、窓層を形成させるための当該技術分野において周知のいずれかの方法により形成させてもよい。典型的には、第一の窓層12はフロート法を介して形成されるフロートガラスであるが、ガラスは強化ガラス、厚板ガラスなどであってよく、これらは、これらの種類のガラスを形成させるための当該技術において周知の方法を介して形成させてもよい。任意の周知の方法を介して形成されるいずれのタイプのガラスも本発明の目的に適していると理解される。
【0016】
第一の窓層12は通常約0.002から約1インチ、典型的には約0.125インチの厚さを有する。第一の窓層12の具体的な厚さは、複合品10が意図される特定の用途に依存する。例えば、耐荷重性用用途または複合品10が好ましくは著しい鈍力に耐えることができる用途においては、第一の窓層12は装飾的用途において必要とされるよりも大きな厚みを有するであろう。しかし、本発明の複合品は耐荷重性用用途における使用に限定されないと理解される。
【0017】
本発明の複合品10はさらに強化シリコーン層14を備える。強化シリコーン層14は、以下にさらに詳細について記載されるように、複合品10に対して優れた耐火性を提供する。強化シリコーン層14は、硬化シリコーン組成物及び繊維強化剤を含む。典型的には、繊維強化剤は硬化シリコーン組成物を添加され、すなわち、強化シリコーン層14は繊維強化剤及び硬化シリコーン組成物を含む単一層である。強化シリコーン層14は、強化シリコーン層14の総重量に対して、50重量部未満の炭素、より典型的には35重量部未満の炭素を有し、それにより、強化シリコーン層14は燃焼中に十分に低水準の煙及び毒ガスを排出することが確実となる。
【0018】
一実施態様において、硬化シリコーン組成物はさらにヒドロシリル化硬化シリコーン組成物として規定される。ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物は、(A)シリコーン樹脂と(B)シリコーン樹脂を硬化するに十分な量の、1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物との、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒の存在下での反応生成物を含む。当技術分野で知られているヒドロシリル化硬化シリコーン組成物のどれでも本発明の目的に適し得る;しかし、あるヒドロシリル化硬化シリコーン組成物が他よりも適している。より具体的には、あるシリコーン樹脂(A)が他よりも適している。
【0019】
シリコーン樹脂(A)は通常ケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子を有する。シリコーン樹脂(A)は通常、RSiO1/2単位、すなわちM単位および/またはRSiO2/2単位、すなわちD単位と組み合わせて、RSiO3/2単位、すなわちT単位および/またはSiO4/2単位、すなわちQ単位を含む共重合体であり、ここで、RはCからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、いずれも脂肪族不飽和を含まず、およびRはR、アルケニル基、または水素である。例えば、シリコーン樹脂はDT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂またはMDQ樹脂であり得る。本明細書で用いられる場合、用語「脂肪族不飽和を含まない」は、ヒドロカルビル基またはハロゲン置換ヒドロカルビル基が脂肪族炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を含まないことを意味する。
【0020】
で表わされるCからC10のヒドロカルビル基およびCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基は、より一般的には1から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル基およびハロゲン置換ヒドロカルビル基は分岐状または非分岐状構造を有し得る。Rで表わされるヒドロカルビル基の例としては、以下に限定されないが、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルやデシルなど;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシルやメチルシクロヘキシルなど;アリール基、例えばフェニルやナフチルなど;アルカリール基、例えばトリルやキシリルなど;およびアラルキル基、例えばベンジルやフェネチルなどが挙げられる。Rで表わされるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、以下に限定されないが、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、そして2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルが挙げられる。
【0021】
シリコーン樹脂内で同じでも異なっていてもよい、Rで表わされるアルケニル基は、通常2から約10個の炭素原子、あるいは2から6個の炭素原子を有し、以下に限定されないが、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、そしてオクテニルによって例示される。一つの実施態様で、Rは大部分がアルケニル基である。この実施態様では、通常、シリコーン樹脂中Rで表わされる基の、少なくとも50モル%、あるいは少なくとも65モル%、あるいは少なくとも80モル%がアルケニル基である。ここで用いられる、R中のアルケニル基のモル%は、シリコーン樹脂中のケイ素結合アルケニル基のモル数の、樹脂中のR基の合計モル数に対する比に100を乗じたものとして定義される。他の実施態様では、Rは大部分が水素である。この実施態様では、通常、シリコーン樹脂中Rで表わされる基の、少なくとも50モル%、あるいは少なくとも65モル%、あるいは少なくとも80モル%が水素である。R中の水素のモル%は、シリコーン樹脂中のケイ素結合水素のモル数の、樹脂中のR基の合計モル数に対する比に100を乗じたものとして定義される。
【0022】
第一の実施態様において、シリコーン樹脂(A)は次式を有する:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (I)
ここで、RおよびRは上で記述され例示されているとおりであり、w、x、y、およびzはモル分率である。式(I)で表わされるシリコーン樹脂は1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有する。より具体的には、下付き文字wは通常0から0.9、あるいは0.02から0.75、あるいは0.05から0.3までの値を有する。下付き文字xは通常0から0.9、あるいは0から0.45、あるいは0から0.25までの値を有する。下付き文字yは通常0から0.99、あるいは0.25から0.8、あるいは0.5から0.8までの値を有する。下付き文字zは通常0から0.85、あるいは0から0.25、あるいは0から0.15までの値を有する。また、比y+z/(w+x+y+z)は通常0.1から0.99、あるいは0.5から0.95、あるいは0.65から0.9である。さらに、比 w+x/(w+x+y+z)は通常0.01から0.90、あるいは0.05から0.5、あるいは0.1から0.35である。
【0023】
が大部分アルケニル基であるときは、式(I)で表わされるシリコーン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(MeSiO3/20.25(PhSiO3/20.50、(ViMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.1、そして(ViMeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.1(PhSiO3/20.75
ここで、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、括弧の外の下付き数字は、式(I)で上述したw、x、yまたはzのいずれかに相当するモル分率を示す。前述の式における単位の順序が本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【0024】
が大部分水素であるときは、前記式(I)で表わされるシリコーン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
(HMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(HMeSiO2/20.3(PhSiO3/20.6(MeSiO3/20.1、そして(MeSiO1/20.1(HSiO2/20.1(MeSiO3/20.4(PhSiO3/20.4
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外の下付き数字はモル分率を示す。前述の式における単位の順序が本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【0025】
式(I)により表されるシリコーン樹脂は、通常、500から50,000、あるいは500から10,000、あるいは1,000から3,000の数平均分子量(Mn)を有し、ここで分子量は、低角度レーザー光散乱検知器、または屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いたゲル透過性クロマトグラフィーによって決定される。
【0026】
式(I)で表わされるシリコーン樹脂の25℃での粘度は、通常0.01から100,000Pa・s、あるいは0.1から10,000Pa・s、あるいは1から100Pa・sである。
【0027】
式(I)で表わされるシリコーン樹脂は通常、29Si NMR測定で、10%(w/w)未満、あるいは5%(w/w)未満、あるいは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含む。
【0028】
式(I)で表わされるシリコーン樹脂の製造方法は当技術分野で広く知られており;これらの樹脂の多くは市販されている。式(I)で表わされるシリコーン樹脂は通常、例えばトルエンなどの有機溶剤中で、クロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することにより製造される。例えば、RSiO1/2単位およびRSiO3/2単位を含むシリコーン樹脂は、式RSiClを有する第一化合物と式RSiCl(ここで、RおよびRは上述され例示されているとおりである)を有する第二化合物とをトルエン中で共加水分解して、塩酸水および第一と第二化合物の加水分解物であるシリコーン樹脂を形成することにより製造される。当技術分野で知られているように、塩酸水とシリコーン樹脂は分離され、シリコーン樹脂は水で洗浄して残渣の酸を除去され、シリコーン樹脂は温和な縮合触媒の存在下で加熱されてシリコーン樹脂を所望の粘度に“ボディー化(body)”する。
【0029】
必要なら、シリコーン樹脂はさらに有機溶剤中縮合触媒で処理され、ケイ素結合ヒドロキシ基の含量を減らすことができる。あるいは、クロロ以外の加水分解性基、例えば−Br、−I、−OCH、−OC(O)CH、−N(CH、−NHCOCH、そして−SCHなどを含有する第一または第二化合物が共加水分解してシリコーン樹脂を生じることもできる。シリコーン樹脂の特性は、第一と第二化合物のタイプ、第一と第二化合物のモル比、縮合の程度、そして製法条件に依存する。
【0030】
有機ケイ素化合物(B)は1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子、あるいは1分子あたり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する。一般に、シリコーン樹脂(A)中の1分子あたりのアルケニル基の平均数と有機ケイ素化合物(B)中の1分子あたりケイ素結合水素原子の平均数との合計が4より大きく、かつ各分子が2個以上の反応基を有する場合に、架橋が起こると理解されている。硬化する前に、有機ケイ素化合物(B)はシリコーン樹脂(A)を硬化するのに十分な量で存在する。
【0031】
有機ケイ素化合物(B)はさらにオルガノ水素シラン、オルガノ水素シロキサンまたはそれらの組合せとして定義されてもよい。有機ケイ素化合物(B)の構造は直鎖状、分岐状、環状、または樹脂状である。非環式ポリシランおよびポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は末端位、側鎖位または末端と側鎖の両方位に位置し得る。シクロシランおよびシクロシロキサンは通常3から12個のケイ素原子、あるいは3から10個のケイ素原子、あるいは3から4個のケイ素原子を有する。
【0032】
該オルガノ水素シランはモノシラン、ジシラン、トリシラン、またはポリシランであってよい。Rが大部分アルケニル基であるときは、本発明の目的に適したオルガノ水素シランの具体例として、以下に限定されないが、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル1,3,5−トリシラン、ポリ(メチルシリレン)フェニレン、そしてポリ(メチルシリレン)メチレンが挙げられる。Rが大部分水素であるときは、本発明の目的に適したオルガノ水素シランの具体例として、以下に限定されないが、次の式を有するシランが挙げられる:
PrSiH、PhSiH、MeSiH、PhMeSiH、PhSiH、そして(HMeSiO)
ここでPrはプロピルであり、Meはメチルであり、及びPhはフェニルである。
【0033】
該オルガノ水素シランはまた以下の式を有し得る:
HRSi−R−SiRH (II)
ここで、Rは上述され例示されているとおりであり、およびRは脂肪族不飽和を含まない、次の構造から選ばれる式を有するヒドロカルビル基である:
【0034】
【化1】

【0035】
ここで、gは1から6である。
【0036】
式(II)(ここで、RおよびRは上述され例示されているとおりである)を有するオルガノ水素シランの具体例として、以下に限定されないが、次の構造から選ばれる式を有するオルガノ水素シランが挙げられる:
【0037】
【化2】

【0038】
該オルガノ水素シランの製造方法は当技術分野では知られている。例えば、オルガノ水素シランはグリニャール試薬とハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとの反応より製造可能である。特に、式HRSi−R−SiRHを有するオルガノ水素シランは、式Rを有するアリールジハライドをエーテル中マグネシウムで処理して相当するグリニャール試薬を製造し、そして該グリニャール試薬を、式HRSiClを有するクロロシランで処理することにより製造される(ここで、RおよびRは上述され例示されているとおりである。)
【0039】
該オルガノ水素シロキサンはジシロキサン、トリシロキサン、またはポリシロキサンである。Rが大部分水素であるときの有機ケイ素化合物(B)として使用に適するオルガノシロキサンの例には、以下に限定されないが、次の式を有するシロキサンが挙げられる:
PhSi(OSiMeH)、Si(OSiMeH)、MeSi(OSiMeH)、そしてPhSi(OSiMeH)
ここで、Meはメチルであり、そしてPhはフェニルである。
【0040】
が大部分アルケニル基であるときに本発明の目的に適するオルガノ水素シロキサンの具体例として、以下に限定されないが、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、ジメチル水素シロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、そしてHMeSiO1/2単位、MeSiO1/2単位とSiO4/2単位(ここで、Meはメチルである)を含む樹脂が挙げられる。
【0041】
該オルガノ水素シロキサンはまたオルガノ水素ポリシロキサン樹脂でもよい。オルガノ水素ポリシロキサン樹脂は通常、RSiO1/2単位、すなわちM単位および/またはRSiO2/2単位、すなわちD単位と組み合わせて、RSiO3/2単位、すなわちT単位、および/またはSiO4/2単位、すなわちQ単位を含有する共重合体である(ここで、Rは上述され例示されているとおりである)。例えば、オルガノ水素ポリシロキサン樹脂はDT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂である。
【0042】
で表わされる基はRまたは少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノシリルアルキル基のいずれかである。Rで表わされるオルガノシリルアルキル基の例として、以下に限定されないが、次の構造から選ばれる式を有する基が挙げられる:
【0043】
【化3】

【0044】
‐CHCHSiMeH、−CHCHSiMe2nSiMeH、−CHCHSiMe2nSiMePhH、−CHCHSiMePhH、−CHCHSiPhH、−CHCHSiMePhC2nSiPhH、−CHCHSiMePhC2nSiMeH、−CHCHSiMePhOSiMePhH、そして−CHCHSiMePhOSiPh(OSiMePhH)
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、および下付き文字nは2から10までの値を有する。通常、オルガノ水素ポリシロキサン樹脂中においてRで表わされる基の少なくとも50モル%、あるいは少なくとも65モル%、あるいは少なくとも80モル%は、少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノシリルアルキル基である。ここで用いられている、R中のオルガノシリルアルキル基のモル%は、シリコーン樹脂中のケイ素結合オルガノシリルアルキル基のモル数の該樹脂中のR基の合計モル数に対する比に100を乗じたものとして定義される。
【0045】
該オルガノ水素ポリシロキサン樹脂は通常次式を有する:
(RSiO1/2(RSiO2/2)x(RSiO3/2(SiO4/2 (III)
ここで、R、R、w、x、y、およびzはそれぞれ上述され例示されているとおりである。
【0046】
前記の式(III)で表わされるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.12(PhSiO3/20.88
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(PhSiO3/20.83
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(MeSiO3/20.17(PhSiO3/20.66
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.10、そして
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.08((HMeSiCSiMeCHCH)MeSiO1/20.06(PhSiO3/20.86
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Cはパラフェニレン基を示し、および括弧の外の下付き数字はモル分率を示す。前述の式において、単位の順序は本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【0047】
オルガノ水素ポリシロキサン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.12(PhSiO3/20.88
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(PhSiO3/20.83
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(MeSiO3/20.17(PhSiO3/20.66
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.10、そして
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.08((HMeSiCSiMeCHCH)MeSiO1/20.06(PhSiO3/20.86
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Cはパラフェニレン基を示し、および括弧の外の下付き数字はモル分率を示す。前述の式において、単位の順序は本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【0048】
式(III)を有するオルガノ水素ポリシロキサン樹脂は、(a)前記式(I)で表わされる式:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
を有するシリコーン樹脂および(b)1分子あたり平均で2から4個のケイ素結合水素原子かつ1,000未満の分子量を有する有機ケイ素化合物を含む反応混合物を、(c)ヒドロシリル化触媒および任意に(d)有機溶剤の存在下で、反応させて製造することができる。ここで、R、R、w、x、y、そしてzはそれぞれ上述され例示されているとおりであり、ただしシリコーン樹脂(a)は1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有し、(b)中のケイ素結合水素原子の(a)中のアルケニル基に対するモル比が1.5から5までである。シリコーン樹脂(a)は、ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物を形成するための成分(A)として用いられる具体的なシリコーン樹脂と同じでも、異なっていてもよい。
【0049】
上で説明したとおり、有機ケイ素化合物(b)は1分子あたり平均で2から4個のケイ素結合水素原子を有する。あるいは、有機ケイ素化合物(b)は1分子あたり平均で2から3個のケイ素結合水素原子を有する。また上で説明したとおり、有機ケイ素化合物(b)は通常1,000未満、あるいは750未満、あるいは500未満の分子量を有する。有機ケイ素化合物(b)はさらに、Rについて上述され例示されている、ヒロドカルビル基およびハロゲン置換ヒドロカルビル基(いずれも脂肪族不飽和を含まない)の群から選ばれるケイ素結合有機基を含む。
【0050】
有機ケイ素化合物(b)はオルガノ水素シランまたはオルガノ水素シロキサンであり、それぞれ前記で詳細に定義されかつ例示されている。有機ケイ素化合物(b)はさらに、単一有機ケイ素化合物または2種以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物でもよく、各ケイ素化合物は上述のとおりである。例えば、有機ケイ素化合物(B)は単一オルガノ水素シラン、二つの異なるオルガノ水素シランの混合物、単一オルガノ水素シロキサン、二つの異なるオルガノ水素シロキサンの混合物、またはオルガノ水素シランとオルガノ水素シロキサンとの混合物である。有機ケイ素化合物(b)中ケイ素結合水素原子の、シリコーン樹脂(a)中のアルケニル基に対するモル比は通常、1.5から5まで、あるいは1.75から3まで、あるいは2から2.5までである。
【0051】
ヒドロシリル化触媒(c)は、白金族金属(すなわち、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムそしてイリジウム)または白金族金属含有化合物を含む周知の任意のヒドロシリル化触媒であってよい。好ましくは、白金族金属はヒドロシリル化反応での高活性度に基づいて、白金である。
【0052】
(c)に適する具体的ヒドロシリル化触媒として、米国特許第3,419,593号でウィリングにより開示されたクロロ白金酸と特定のビニル含有オルガノシロキサンとの錯体が挙げられる。該米国特許は参照することによりここに援用される。このタイプの触媒はクロロ白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの反応生成物である。
【0053】
ヒドロシリル化触媒はまた、白金族金属を表面に有する固体担体を含む担持型ヒドロシリル化触媒でもよい。担持触媒は、好都合なことに式(III)によって表されるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂から、例えば反応混合物をろ過することにより、分離することができる。担持触媒の例として、以下に限定されないが、炭素上の白金、炭素上のパラジウム、炭素上のルテニウム、炭素上のロジウム、シリカ上の白金、シリカ上のパラジウム、アルミナ上の白金、アルミナ上のパラジウム、そしてアルミナ上のルテニウムが挙げられる。
【0054】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)と有機ケイ素化合物(b)との付加反応を触媒するのに十分な濃度である。通常、ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)と有機ケイ素化合物(b)との組み合せた重量に対して、0.1から1000ppmの白金族金属、あるいは1から500ppmの白金族金属、あるいは5から150ppmの白金族金属を与えるのに十分な濃度である。白金族金属0.1ppm以下では、反応速度が非常に遅い。1000ppmを超える白金族金属の使用は、反応速度の相当な増加をもたらすことはなく、よって非経済的である。
【0055】
有機溶剤(d)は少なくとも1種の有機溶剤である。有機溶剤(d)は、本方法の条件下でシリコーン樹脂(a)、有機ケイ素化合物(b)、または得られたオルガノ水素ポリシロキサン樹脂とは反応することなく、かつ成分(a)、(b)およびオルガノ水素ポリシロキサンと混和性である、任意の非プロトン性または両性非プロトン性有機溶剤であってよい。
【0056】
本発明の目的に適する有機溶剤(d)の例として、以下に限定されないが、飽和脂肪族炭化水素、例えばn−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンやドデカンなど;シクロ脂肪族炭化水素、例えばシクロペンタンやシクロヘキサンなど;芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレンやメシチレンなど;環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)やジオキサンなど;ケトン、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)など;ハロゲン化アルカン、例えばトリクロロエタンなど;そしてハロゲン化芳香族炭化水素、例えばブロモベンゼンやクロロベンゼンなどが挙げられる。有機溶剤(d)は、単一有機溶剤または2種以上の異なる有機溶剤を含む混合物でもよく、各有機溶剤は上述のとおりである。有機溶剤(d)の濃度は、反応混合物の合計量に対して、通常0から99%(w/w)、あるいは30から80%(w/w)、あるいは45から60%(w/w)である。
【0057】
式(III)で表わされるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂を形成する反応は、ヒドロシリル化反応に適する任意の標準反応器で行うことができる。適する反応器にはガラスまたはテフロン(登録商標)・ライニング・ガラス反応器が挙げられる。好ましくは、反応器には撹拌機などの攪拌手段が備え付けられている。また、好ましくは、反応は湿分の不存在下窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中で行われる。
【0058】
シリコーン樹脂(a)、有機ケイ素化合物(b)、ヒドロシリル化触媒(c)、そして、任意に、有機溶剤(d)は任意の順序で混合される。通常、有機ケイ素化合物(b)とヒドロシリル化触媒(c)が、シリコーン樹脂(a)および任意で有機溶剤(c)を導入する前に、混合される。該反応は通常0から150℃までの温度、あるいは室温(約23±2℃)から115℃までの温度で行われる。温度が0℃未満であると、反応速度は通常非常に遅い。反応時間は、例えばシリコーン樹脂(a)や有機ケイ素化合物(b)の構造および温度などの複数因子に依存する。反応時間は、室温(約23±2℃)から150℃までの温度で、通常1から24時間である。最適な反応時間は所定の実験により決定され得る。
【0059】
式(III)で表わされるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂は単離または精製せずに使用することができ、またオルガノ水素ポリシロキサン樹脂はほとんどの有機溶剤(d)から蒸発の従来法により分離することができる。例えば、反応混合物は減圧下で加熱される。さらに、ヒドロシリル化触媒(c)が上述された担持触媒であれば、オルガノ水素ポリシロキサン樹脂は反応混合物をろ過することにより、ヒドロシリル化触媒(c)から容易に分離することができる。しかしながら、ヒドロシリル化触媒はオルガノ水素ポリシロキサン樹脂と混ざって残存することもあり、ヒドロシリル化触媒(C)として使用することができる。
【0060】
有機ケイ素化合物(B)は単一有機ケイ素化合物または2種以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であり、各有機ケイ素化合物は上述されたとおりである。例えば、有機ケイ素化合物(B)は単一オルガノ水素シラン、二種の異なるオルガノ水素シランの混合物、単一オルガノ水素シロキサン、二種の異なるオルガノ水素シロキサンの混合物、またはオルガノ水素シランとオルガノ水素シロキサンとの混合物である。特に、有機ケイ素化合物(B)は、有機ケイ素化合物(B)の総重量に対して、少なくとも0.5%(w/w)、あるいは少なくとも50%(w/w)、あるいは少なくとも75%(w/w)の量で式(III)を有するオルガノ水素ポリシロキサン樹脂と、さらにオルガノ水素シランおよび/またはオルガノ水素シロキサン(後者はオルガノ水素ポリシロキサン樹脂と異なる)を含む有機ケイ素化合物(B)とを含む混合物でもよい。
【0061】
有機ケイ素化合物(B)の濃度はシリコーン樹脂(A)を硬化(架橋)するために十分な濃度である。有機ケイ素化合物(B)の正確の量は、所望の硬化程度に依存する。有機ケイ素化合物(B)の濃度は通常、シリコーン樹脂(A)中のアルケニル基の1モルあたり、0.4から2モルのケイ素結合水素原子、あるいは0.8から1.5モルのケイ素結合水素原子、あるいは0.9から1.1モルのケイ素結合水素原子を提供するに十分な濃度である。
【0062】
ヒドロシリル化触媒(C)には、シリコーン樹脂(A)と有機ケイ素化合物(B)との反応を促進する少なくとも1種のヒドロシリル化触媒が挙げられる。一実施態様において、ヒドロシリル化触媒(C)はオルガノ水素ポリシロキサン樹脂を製造するための上述のヒドロシリル化触媒(C)と同じであってよい。さらに、ヒドロシリル化触媒(C)はまた、熱可塑性樹脂中に封止された白金族金属を含むマイクロカプセル化白金族金属含有触媒でもある。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒およびそれの製造方法は、米国特許第4,766,176号、その明細書で引用されている参考文献および米国特許第5,017,654号で例示されているとおり、当技術分野では広く知られている。ヒドロシリル化触媒(C)は単一触媒または2種以上の異なる触媒(少なくとも一つの特性、例えば構造、形、白金族金属触媒、錯体の配位子、そして熱可塑性樹脂などで異なる)を含む混合物である。
【0063】
他の実施態様では、ヒドロシリル化触媒(C)は少なくとも1種の光活性化ヒドロシリル化触媒であってよい。光活性化ヒドロシリル化触媒は、150から800nmの波長を有する放射に曝されると、シリコーン樹脂(A)と有機ケイ素化合物(B)のヒドロシリル化を触媒することのできる任意のヒドロシリル化触媒である。光活性化ヒドロシリル化触媒は、周知の白金族金属または白金族金属含有化合物を含む任意のヒドロシリル化触媒であってよい。白金族金属には白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムおよびイリジウムが含まれる。通常白金族金属は、ヒドロシリル化反応での高活性化に基づいて、白金である。本発明のシリコーン組成物で使用される格別の光活性化ヒドロシリル化触媒の適合性は、所定の実験により容易に決定され得る。
【0064】
本発明の目的に適する光活性化ヒドロシリル化触媒の具体例として、以下に限定されないが、白金(II)β−ジケトナート錯体、例えば白金(II)ビス(2,4−ペンタンジオアート)、白金(II)ビス(2,4−ヘキサンジオアート)、白金(II)ビス(2,4−ヘプタンジオアート)、白金(II)ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオアート)、白金(II)ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオアート)、白金(II)ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオアート)、など;(η−シクロペンタジエニル)トリアルキル白金錯体、例えば(Cp)トリメチル白金、(Cp)エチルジメチル白金、(Cp)トリエチル白金、(クロロ−Cp)トリメチル白金や(トリメチルシリル−Cp)トリメチル白金など、ここでCpはシクロペンタジエニルを表す;トリアゼンオキシド−遷移金属錯体、例えばPt[CNNNOCH、Pt[p−CN−CNNNOC11、Pt[p−HCOCNNNOC11、Pt[p−CH(CH−CNNNOCH、1,5−シクロオクタジエンPt[p−CN−CNNNOC11、1,5−シクロオクタジエンPt[p−CHO−CNNNOCH、[(CP]Rh[p−CN−CNNNOC11]、そしてPd[p−CH(CHNNNOCHなど(ここで、xは1,3,5,11または17である);(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体、例えば(η−1,5−シクロオクタジエニル)ジフェニル白金、(η−1,3,5,7−シクロオクタテトラエニル)ジフェニル白金、(η−2,5−ノルボラジエニル)ジフェニル白金、(η−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−ジメチルアミノフェニル)白金、(η−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−アセチルフェニル)白金、そして(η−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−トリフルオロメチルフェニル)白金などが挙げられる。好ましくは、光活性化ヒドロシリル化触媒は白金(II)β−ジケトナート錯体であり、そして、より好ましくは、触媒は白金(II)ビス(2,4−ペンタンジオアート)である。ヒドロシリル化触媒(C)は単一光活性化ヒドロシリル化
触媒または2種以上の異なる光活性化ヒドロシリル化触媒を含む混合物である。
【0065】
光活性ヒドロシリル化触媒を製造する方法は当技術分野では広く知られている。例えば、白金(II)β−ジケトナートの製造法はグオらによって報告されている(Chemistry of Materials,1998,10,531−536)。(η−シクロペンタジエニル)−トリアルキル白金錯体の製造法は米国特許第4,510,094号で開示されている。トリアゼンオキシド−遷移金属錯体の製造法は米国特許第5,496,961号で開示されている。そして、(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体の製造方法は米国特許第4,530,879号で教示されている。
【0066】
ヒドロシリル化触媒(C)の濃度はシリコーン樹脂(A)と有機ケイ素化合物(B)の付加反応を触媒するために十分な濃度である。ヒドロシリル化触媒(C)の濃度は、シリコーン樹脂(A)と有機ケイ素化合物(B)の合わされた重量に対して、通常0.1から1000ppmの白金族金属、あるいは0.5から100ppmの白金族金属、あるいは1から25ppmの白金族金属を与えるに十分な濃度である。
【0067】
任意に、ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物は、さらに(D)次の群から選ばれる式を有するシリコーンラバーを含む:
(i)RSiO(RSiO)SiR;および
(ii)RSiO(RSiO)SiR
ここで、RおよびRは前記に定義され例示されているとおりであり、RはRまたは−Hであり、下付き文字aおよびbは、それぞれは1から4まで、2から4まで、または2から3までの値を有し、かつw、x、y、およびzもまた前記で定義され例示されているとおりであり、ただしシリコーン樹脂とシリコーンラバー(D)(i)それぞれは1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンラバー(D)(ii)は1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有し、およびシリコーンラバー(D)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子の、シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対するモル比が0.01から0.5である。
【0068】
成分(D)(i)として使用に適するシリコーンラバーの具体例として、以下に限定されないが、次の式を有するシリコーンラバーが挙げられる:
ViMeSiO(MeSiO)SiMeVi、ViMeSiO(PhSiO)SiMeVi、そしてViMeSiO(PhMeSiO)SiMeVi、
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、下付き文字aは1から4までの値を有する。シリコーンラバー(D)(i)は単一シリコーンラバーまたは2種以上の異なるシリコーンラバーを含む混合物で、各シリコーンラバーは(D)(i)の式を満たす。
【0069】
シリコーンラバー(D)(ii)として使用に適するシリコーンラバーの具体的例として、以下に限定されないが、次の式を有するシリコーンラバーが挙げられる:
HMeSiO(MeSiO)SiMeH、HMeSiO(PhSiO)SiMeH、HMeSiO(PhMeSiO)SiMeH、そしてHMeSiO(PhSiO)(MeSiO)SiMeH、
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつ下付き文字bは1から4までの値を有する。成分(D)(ii)は単一シリコーンラバーまたは2種以上の異なるシリコーンラバーを含む混合物であってよく、各シリコーンラバーは(D)(ii)の式を満たす。
【0070】
シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンラバー(D)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子のモル比は、通常0.01から0.5、あるいは0.05から0.4、あるいは0.1から0.3である。
【0071】
シリコーンラバー(D)が(D)(i)であるときは、有機ケイ素化合物(B)の濃度は、シリコーン樹脂(A)およびシリコーンラバー(D)(i)中のケイ素結合アルケニル基のモル数の合計に対する有機ケイ素化合物(B)中のケイ素結合水素原子のモル数の比が通常0.4から2、あるいは0.8から1.5、あるいは0.9から1.1となるほどである。さらに、シリコーンラバー(D)が(D)(ii)であるときは、有機ケイ素化合物(B)の濃度は、シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基のモル数に対する有機ケイ素化合物(B)およびシリコーンラバー(D)(ii)中のケイ素結合水素原子の合計モル数の比が通常0.4から2、あるいは0.8から1.5、あるいは0.9から1.1となるほどである。
【0072】
ケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子を含有するシリコーンラバーの製造法は当技術分野では広く知られており;それら化合物の多くは市販されている。
【0073】
本発明の他の実施態様では、ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物は(A’)ラバー変性シリコーン樹脂と(B)有機ケイ素化合物との、(C)ヒドロシリル化触媒の触媒量の存在下での反応生成物を含む。ラバー変性シリコーン樹脂(A’)は、シリコーン樹脂(A)と次の式を有するシリコーンラバー(D)(iii):
SiO(RSiO)SiR、RSiO(RSiO)SiR
(ここで、RおよびRは上述され例示されているとおりであり、cおよびdはそれぞれ4から1000まで、あるいは10から500まで、あるいは10から50までの値を有する)とを、ヒドロシリル化触媒(c)および任意に有機溶剤の存在下で反応させることにより製造してもよい。ただし、シリコーン樹脂(A)が1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンラバー(D)(iii)が1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有し、かつシリコーン樹脂(A)中ケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンラバー(D)(iii)中のケイ素結合水素原子のモル比が0.01から0.5である。有機溶剤が存在するときは、ラバー変性シリコーン樹脂(A’)は有機溶剤に混和し、沈澱や懸濁を形成しない。
【0074】
シリコーン樹脂(A)、シリコーンラバー(D)(iii)、ヒドロシリル化触媒(c)および有機溶剤は任意の順序で混合してもよい。通常、シリコーン樹脂(A)、シリコーンラバー(D)(iii)および有機溶剤が、ヒドロシリル化触媒(c)の導入前に混合される。
【0075】
該反応は、通常、室温(約23±2℃)から150℃まで、あるいは室温から100℃までの温度で行われる。反応時間は、シリコーン樹脂(A)およびシリコーンラバー(D)(iii)の構造ならびに温度を含むいくつかの因子に依存する。該成分は、通常、ヒドロシリル化反応を完了するに十分な時間の間反応させられる。このことは、シリコーンラバー(D)(iii)中にあらかじめ存在するケイ素結合水素原子の少なくとも95モル%、あるいは少なくとも98モル%、あるいは少なくとも99モル%がヒドロシリル化反応で消費されるまで、該成分が典型的には反応するのが可能となることを意味し、それは、FTIRスペクトロメトリーによって測定される。反応時間は通常、室温(約23±2℃)から100℃までの温度で、0.5から24時間である。最適な反応時間は所定の実験により決定され得る。
【0076】
シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンラバー(D)(iii)中のケイ素結合水素原子のモル比は、通常0.01から0.5まで、あるいは0.05から0.4まで、あるいは0.1から0.3までである。
【0077】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度はシリコーン樹脂(A)のシリコーンラバー(D)(iii)への付加反応を触媒するに十分な濃度である。通常ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は該樹脂と該ラバーの合わさった重量に基づいて、0.1から1000ppmの白金族金属を提供するに十分な濃度である。
【0078】
有機溶剤の濃度は通常、反応混合物の合計量に対して、0から95%(w/w)、あるいは10から75%(w/w)、あるいは40から60%(w/w)である。
【0079】
ラバー変性シリコーン樹脂(A’)は、単離または精製せずに使用することができ、またラバー変性シリコーン樹脂(A’)はほとんどの溶剤から従来的な蒸発方法により分離することができる。例えば、反応混合物は減圧下で加熱されてもよい。さらに、ヒドロシリル化触媒(c)が上述した担持触媒である場合、ラバー変性シリコーン樹脂(A’)は、反応混合物をろ過することにより容易にヒドロシリル化触媒(c)から分離することができる。しかしながら、ラバー変性シリコーン樹脂(A’)がラバー変性シリコーン樹脂(A’)を製造するために使われたヒドロシリル化触媒(c)から分離されないときは、ヒドロシリル化触媒(C)として使用することもできる。
【0080】
本発明のヒドロシリル化硬化シリコーン組成物は当技術分野で知られている追加成分を含むことができる。追加成分の例としては、以下に限定されないが、ヒドロシリル化触媒抑制剤、例えば3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノ−ル、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、ビニルシクロシロキサン、そしてトリフェニルホスフィンなど;接着促進剤、例えば米国特許第4,087,585号および同第5,194,649号で教示されている接着促進剤など;染料;顔料;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線安定剤;難燃剤;流動調節添加剤;および希釈剤、例えば有機溶剤や反応性希釈剤などが挙げられる。
【0081】
ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物の代替として、縮合硬化シリコーン組成物もまた本発明のシリコーン組成物に適している。
【0082】
縮合硬化シリコーン樹脂組成物は、通常、ケイ素結合ヒドロキシ基またはケイ素結合加水分解性基を有するシリコーン樹脂(A”)、および任意にケイ素結合加水分解性基を有する架橋剤(B’)、および任意に縮合触媒(C’)の反応生成物を含む。シリコーン樹脂(A”)は、通常、Mおよび/またはDシロキサン単位と組み合わせて、Tおよび/またはQシロキサン単位を含有する共重合体である。
【0083】
縮合硬化シリコーン組成物は当技術分野で知られている任意の縮合硬化シリコーン組成物であってよい。しかしながら、特定の縮合硬化シリコーン組成物は特に本発明の目的に適している。一実施態様によれば、シリコーン樹脂(A”)は次式を有する:
(RSiO1/2w’(RSiO2/2x’(RSiO3/2y’(SiO4/2z’ (IV)
(ここで、Rは上で定義され例示されているとおりであり、RはR、−H、−OH、または加水分解性基であり、かつw’は0から0.8、好ましくは0.02から0.75、そしてより好ましくは0.05から0.3であり、x’は0から0.95、好ましくは0.05から0.8、そしてより好ましくは0.1から0.3であり、y’は0から1、好ましくは0.25から0.8、そしてより好ましくは0.5から0.8であり、およびz’は0から0.99、好ましくは0.2から0.8、そしてより好ましくは0.4から0.6であり、かつシリコーン樹脂(A”)は1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基を有する)。本明細書で使われている、用語「加水分解性基」とは、ケイ素結合基が室温(約23±2℃)から100℃までの任意の温度で、数分、例えば30分以内で、触媒の不存在下、水と反応してシラノール(Si−OH)基を形成することを意味する。Rで表わされる加水分解性基の例としては、以下に限定されないが、−Cl、−Br、−OR、−OCHCHOR、CHC(=O)O−、Et(Me)C=N−O−、CHC(=O)N(CH)−、そして−ONH、(ここで、RはCからCのヒドロカルビルまたはCからCのハロゲン置換ヒドロカルビル基である)が挙げられる。
【0084】
で表わされるヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は通常1から8個の炭素原子、あるいは3から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分岐状または非分岐状構造を有する。Rで表わされるヒドロカルビル基の例として、以下に限定されないが、非分岐状または分岐状アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、そしてオクチルなど;シクロアルキル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、そしてメチルシクロヘキシルなど;フェニル;アルカリール、例えばトリルそしてキシリルなど、アラルキル、例えばベンジルそしてフェネチルなど;アルケニル、例えばビニル、アリル、そしてプロペニルなど;アリールアルケニル、例えばスチリルなど;そしてアルキニル、例えばエチニルそしてプロピニルなどが挙げられる。Rで表わされるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、以下に限定されないが、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、そしてジクロロフェニルなどが挙げられる。
【0085】
通常、シリコーン樹脂中の基Rの少なくとも5モル%、あるいは少なくとも15モル%、あるいは少なくとも30モル%は、水素、ヒドロキシまたは加水分解性基である。ここで使われている、R中の基のモル%とは、シリコーン樹脂(A”)中のR基の全モル数に対するシリコーン樹脂(A)中のケイ素結合基のモル数の比に、100を乗じたものと定義される。
【0086】
シリコーン樹脂(A”)から形成される硬化シリコーン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する硬化シリコーン樹脂が挙げられる:
(MeSiO3/2、(PhSiO3/2、(MeSiO1/20.8(SiO4/20.2、(MeSiO3/20.67(PhSiO3/20.33、(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.40(PhSiO2/20.1(PhMeSiO2/20.05、(PhSiO3/20.4(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.05、そして(PhSiO3/20.4(MeSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.5
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外の下付き数字はモル分率を示し、下付き文字nはシリコーン樹脂が500から50,000までの数平均分子量を有するようになる値である。前述の式における単位の順序が本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【0087】
前記で説明したとおり、式(IV)で表わされるシリコーン樹脂(A”)は通常500から50,000までの数平均分子量(M)を有する。あるいは、シリコーン樹脂(A”)は少なくとも300、あるいは1,000から3,000のMを有してもよい。ここで分子量は、低角度レーザー光散乱検知器、または屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いたゲル透過性クロマトグラフィーによって測定される。
【0088】
シリコーン樹脂(A”)の25℃での粘度は通常0.01Pa・sから固体、あるいは0.1から100,000Pa・s、あるいは1から1,000Pa・sである。
【0089】
式(IV)で表わされるシリコーン樹脂(A”)の製造方法は当技術分野で広く知られており;それら樹脂の多くが市販されている。式(IV)で表わされるシリコーン樹脂(A”)は通常、例えばトルエンなどの有機溶剤中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することにより製造される。例えば、RSiO1/2単位およびRSiO3/2単位を含むシリコーン樹脂は、式RSiClを有する第一化合物と式RSiClを有する第二化合物とをトルエン中で共加水分解することにより製造できる(ここで、RおよびRは上述され例示されているとおりである)。共加水分解プロセスは、ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物に関して上に記載されている。共加水分解反応物はさらに架橋可能基の量および粘度を制御するために所望の程度にボディー化することができる。
【0090】
式(IV)のQ単位はシリコーン樹脂(A”)中でバラバラの粒子形状であってよい。粒経は通常1nmから20μmである。これらの粒子の例として、限定されないが、直径15nmのシリカ(SiO4/2)粒子が含まれる。
【0091】
縮合硬化シリコーン組成物はさらに無機充填剤、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、そしてマイカなどを含有することができる。存在する場合、無機充填剤は粒子の形状である。
【0092】
他の実施態様では、縮合硬化シリコーン組成物はラバー変性シリコーン樹脂(A”’)および他の任意成分との反応生成物を含む。ラバー変性シリコーン樹脂(A”’)は、(i)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2を有するシリコーン樹脂および(ii)前記(i)の加水分解性前駆体から選ばれる有機ケイ素化合物と、(iii)式RSiO(RSiO)SiRを有するシリコーンラバーとを、水、(iv)縮合触媒および(v)有機溶剤の存在下で反応させることにより製造させてもよく、ここで、RおよびRは上で定義され例示されているとおりであり、RはRまたは加水分解性基であり、mは2から1,000まで、あるいは4から500まで、あるいは8から400までであり、w、x、yおよびzは上で定義され例示されているとおりであり、かつ、シリコーン樹脂(i)は1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合ヒドロキシまたは加水分解性基を有し、シリコーンラバー(iii)は1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合加水分解性基を有し、そしてシリコーン樹脂(i)中のケイ素結合ヒドロキシまたは加水分解性基に対するシリコーンラバー(iii)中のケイ素結合加水分解性基のモル比が0.01から1.5、あるいは0.05から0.8、あるいは0.2から0.5である。
【0093】
通常、シリコーン樹脂(i)中の基Rの少なくとも5モル%、あるいは少なくとも15モル%、あるいは少なくとも30モル%がヒドロキシまたは加水分解性基である。
【0094】
シリコーン樹脂(i)は通常少なくとも300、あるいは500から10,000、あるいは1,000から3,000までの数平均分子量(M)を有する。ここで分子量は、低角度レーザー光散乱検知器、または屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いたゲル透過性クロマトグラフィーによって測定される。
【0095】
シリコーン樹脂(i)から形成される硬化シリコーン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する硬化シリコーン樹脂が挙げられる:
(MeSiO3/2、(PhSiO3/2、(PhSiO3/20.4(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.05、そして(PhSiO3/20.3(SiO4/20.1(MeSiO2/20.2(PhSiO2/20.4
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外の下付き数字はモル分率を示し、下付き文字nはシリコーン樹脂が500から50,000までの数平均分子量を有するようになる値である。前述の式における単位の順序が本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。シリコーン樹脂(i)は単一シリコーン樹脂または2種以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であってよく、各シリコーン樹脂は指定の式を有する。
【0096】
ここで使われている、用語「加水分解性前駆体」は、シリコーン樹脂(i)の製造用の開始物質(前駆体)として使用に適する加水分解性基含有シランを示す。加水分解性前駆体(ii)は式 RSiX、RSiX、RSiX、そしてSiX(ここで、R、R、およびXは上で定義され例示されているとおりである)によって表わされてよい。
【0097】
加水分解性前駆体(ii)の具体例として、以下に限定されないが、式: MeViSiCl、MeSiCl、MeSi(OEt)、PhSiCl、MeSiCl、MeSiCl、PhMeSiCl、SiCl、PhSiCl、PhSi(OMe)、MeSi(OMe)、PhMeSi(OMe)、そしてSi(OEt) (ここで、Meはメチルであり、Etはエチルであり、Phはフェニルである)を有するシランが挙げられる。
【0098】
シリコーンラバー(iii)の具体例としては、以下に限定されないが、次の式を有するシリコーンラバーが挙げられる:
(EtO)SiO(MeSiO)55Si(OEt)、(EtO)SiO(MeSiO)16Si(OEt)、(EtO)SiO(MeSiO)386Si(OEt)、そして(EtO)MeSiO(PhMeSiO)10SiMe(OEt)(ここで、Meはメチルであり、Etはエチルである)。
【0099】
該反応は、通常、室温(約23±2℃)から180℃まで、あるいは室温から100℃までの温度で行われる。
【0100】
反応時間は、シリコーン樹脂(i)およびシリコーンラバー(iii)の構造ならびに温度などを含むいくつかの因子に依存する。該成分は通常縮合反応を完了するに十分な時間の間反応させられる。このことは、シリコーンラバー(iii)中に元々存在するケイ素結合加水分解性基の少なくとも95モル%、あるいは少なくとも98モル%、あるいは少なくとも99モル%が、縮合反応で消費されるまで、該成分が反応することが可能であることを意味し、それは、29Si NMRスペクトロメトリーによって測定される。反応時間は通常、室温(約23±2℃)から100℃までの温度で、1から30時間である。最適な反応時間は所定の実験により決定され得る。
【0101】
適する縮合触媒(iv)は下記にさらに詳細に記述され、適する有機溶剤(v)は前記のラバー変性シリコーン樹脂(A’)との関連で上述されている。縮合触媒(iv)の濃度はシリコーン樹脂(i)とシリコーンラバー(iii)との縮合反応を触媒するに十分は濃度である。通常、縮合触媒(iv)の濃度は、シリコーン樹脂(i)の重量に対して、0.01から2%(w/w)、あるいは0.01から1%(w/w)、あるいは0.05から0.2%(w/w)である。有機溶剤(v)の濃度は、通常、反応混合物の総重量に対して、10から95%(w/w)、あるいは20から85%(w/w)、あるいは50から80%(w/w)である。
【0102】
反応混合物中の水の濃度は有機ケイ素化合物中の基Rの性質およびシリコーンラバー中のケイ素結合加水分解性基の性質に依存する。シリコーン樹脂(i)が加水分解性基を含有するときは、水の濃度はシリコーン樹脂(i)およびシリコーンラバー(iii)中の加水分解性基の加水分解をもたらすに十分な濃度である。例えば、水の濃度は、通常、シリコーン樹脂(i)およびシリコーンラバー(iii)組合せ中の加水分解性基1モルあたり、0.01から3モル、あるいは0.05から1モルまでである。シリコーン樹脂(i)が加水分解性基を含有しないときは、ほんの微量の、例えば、100ppmの水が反応混合物に要求される。微量の水は通常は反応物および/または溶剤中に存在している。
【0103】
前記に説明されたとおり、縮合硬化シリコーン組成物はさらに架橋剤(B’)の反応生成物を含む。架橋剤(B’)は式 RSiX4−q (ここで、RはCからCのヒドロカルビルまたはCからCのハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Xは加水分解性基、そしてqは0または1である)を有する。Rで表わされるヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基、ならびにXで表わされる加水分解性基は、上述され例示されているとおりである。
【0104】
架橋剤(B’)の具体例として、以下に限定されないが、アルコキシシラン、例えばMeSi(OCH、CHSi(OCHCH、CHSi(OCHCHCH、CHSi[O(CHCH、CHCHSi(OCHCH、CSi(OCH、CCHSi(OCH、CSi(OCHCH、CH=CHSi(OCH、CH=CHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCH、CHSi(OCHCHOCH、CFCHCHSi(OCHCHOCH、CH=CHSi(OCHCHOCH、CH=CHCHSi(OCHCHOCH、CSi(OCHCHOCH、Si(OCH、Si(OC、そしてSi(OCなど;有機アセトキシシラン、例えばCHSi(OCOCH、CHCHSi(OCOCH、そしてCH=CHSi(OCOCHなど;有機イミノオキシシラン、例えばCHSi[O−N=C(CH)CHCH、Si[O−N=C(CH)CHCH、そしてCH=CHSi[O−N=C(CH)CHCHなど;有機アセトアミドシラン、例えばCHSi[NHC(=O)CHそしてCSi[NHC(=O)CHなど;アミノシラン、例えばCHSi[NH(s−C)]そしてCHSi(NHC11など;そして有機アミノオキシシランが挙げられる。
【0105】
架橋剤(B’)は単一シランまたは2種以上の異なるシランの混合物でもよく、各シランは上述されたとおりである。また、トリ−およびテトラ−官能性シランの製造方法はこの技術分野では広く知られており;それらシランの多くは市販されている。
【0106】
架橋剤(B’)が使われるときは、縮合硬化シリコーン組成物の形成前のその濃度は、縮合硬化シリコーン樹脂を硬化(架橋)するに十分な濃度である。架橋剤(B’)の正確な量は所望の硬化度に依存し、その硬化度は、一般に、シリコーン樹脂(A”)中のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基のモル数に対する、架橋剤(B’)中のケイ素結合加水分解性基のモル数の比率が増すにつれて、増加する。通常、架橋剤(B’)の濃度は、シリコーン樹脂(A”)中のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基1モルに対し、0.2から4モルのケイ素結合加水分解性基を与えるに十分な濃度である。架橋剤(B’)の最適量は所定の実験で容易に決定され得る。
【0107】
縮合触媒(C’)は、ケイ素結合ヒドロキシ(シラノール)基の縮合を促進して、Si−O−Si結合を形成するに通常使用されている任意の縮合触媒であってよい。縮合触媒の例としては、以下に限定されないが、アミンそしてカルボン酸との鉛、スズ、亜鉛および鉄の錯体がある。特に、縮合触媒(C’)は、スズ(II)およびスズ(IV)化合物、例えばスズジラウラート、スズジオクトエート、そしてテトラブチルスズなど;およびチタニウム化合物、例えばチタニウムテトラブトキシドなどから選択してもよい。
【0108】
縮合触媒(C’)が存在するときは、その濃度は、通常、シリコーン樹脂(A”)の総重量に対して、0.1から10%(w/w)、あるいは0.5から5%(w/w)、あるいは1から3%(w/w)である。
【0109】
縮合硬化シリコーン組成物が縮合触媒(C’)の存在下で形成されるときは、縮合硬化シリコーン組成物は通常シリコーン樹脂(A”)と縮合触媒(C’)とが別々のパーツにされている二液型組成物から形成される。
【0110】
本発明の縮合硬化シリコーン組成物は、当技術分野で知られている、かつヒドロシリル化シリコーン組成物用に上述されている、追加成分を含むことができる。
【0111】
さらに別の実施態様では、シリコーン組成物がフリーラジカル硬化シリコーン組成物である。フリーラジカル硬化シリコーン組成物の例として、過酸化物硬化シリコーン組成物、フリーラジカル光開始剤を含有する放射硬化シリコーン組成物および高エネルギー放射硬化シリコーン組成物が挙げられる。通常フリーラジカル硬化シリコーン組成物はシリコーン樹脂(A””)および任意で架橋剤(B”)および/またはフリーラジカル開始剤(C”)(例えば、フリーラジカル光開始剤または有機過酸化物)の反応生成物からなる。
【0112】
シリコーン樹脂(A””)は、(i)フリーラジカル光開始剤の存在下シリコーン樹脂を150から800nmの波長を有する放射に曝す工程、(ii)有機過酸化物の存在下でシリコーン樹脂(A””)を加熱する工程、および(iii)電子線にシリコーン樹脂(A””)を曝す工程から選ばれる少なくとも一つの方法にて硬化(すなわち、架橋)される。シリコーン樹脂(A””)は、Mおよび/またはDシロキサン単位と組み合わせて、通常、Tシロキサン単位および/またはQシロキサン単位を含有する共重合体である。
【0113】
例えば、シリコーン樹脂(A””)は次式を有する:
(RSiO1/2w”(RSiO2/2x”(RSiO3/2y”(SiO4/2z”
ここで、Rは上で定義され例示されているとおりであり、RはR、アルケニル、またはアルキニルであり、w”は0から0.99であり、x”は0から0.99であり、y”は0から0.99であり、およびz”は0から0.85であり、かつw”+x”+y”+z”=1である。
【0114】
で表わされるアルケニル基は同一でも異なっていてもよく、前記Rの記述で定義され例示されているとおりである。
【0115】
で表わされるアルキニル基は同一でも異なっていてもよく、通常2から10個の炭素原子、あるいは2から6個の炭素原子を有し、そして、以下に限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ヘキシニル、そしてオクチニルによって例示される。
【0116】
シリコーン樹脂(A””)は通常、少なくとも300、あるいは500から10,000、あるいは1,000から3,000までの数平均分子量(M)を有する。分子量は屈折率検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いてゲル透過クロマトグラフィーで測定される。
【0117】
シリコーン樹脂(A””)は、29Si NMRで測定される、10%(w/w)未満、あるいは5%(w/w)未満、あるいは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する。
【0118】
本発明の目的に適するシリコーン樹脂(A””)の具体例としては、以下に限定されないが、次の式を有するシリコーン樹脂が挙げられる:
(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(MeSiO3/20.25(PhSiO3/20.50、(ViMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.1、そして(ViMeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.1(PhSiO3/20.75
ここで、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、そして括弧の外側の下付き数字はモル分率を示す。前述の式における単位の順序が本発明の範囲を限定するものとみなされることはあってはならない。
【0119】
本方法のフリーラジカル硬化シリコーン組成物は、以下に限定されないが、シリコーンラバー;不飽和化合物;フリーラジカル開始剤;有機溶剤;紫外線安定剤;増感剤;染料;難燃剤;酸化防止剤;充填剤、例えば補強用充填剤、増量用充填剤、そして伝導性充填剤など;そして接着促進剤を含む追加成分を含むことができる。
【0120】
フリーラジカル硬化シリコーン組成物は、(i)1分子あたり少なくとも1個のケイ素結合アルケニル基を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物、(ii)1分子あたり少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1種の有機化合物、および(iii)該(i)および該(ii)を含む混合物から選ばれる不飽和化合物の反応生成物をさらに含むことができ、ここで不飽和化合物は500未満の分子量を有する。あるいは不飽和化合物は400未満または300未満の分子量を有する。また、不飽和化合物は直鎖状、分岐状または環状構造を有する。
【0121】
有機ケイ素化合物(i)はオルガノシランまたはオルガノシロキサンであってよい。オルガノシランはモノシラン、ジシラン、トリシラン、またはポリシランであってよい。同様にオルガノシロキサンはジシロキサン、トリシロキサン、またはポリシロキサンであってよい。シクロシランおおびシクロシロキサンは、通常、3から12個のケイ素原子、あるいは3から10個のケイ素原子、あるいは3から4個のケイ素原子を有する。非環式ポリシランおよびポリシロキサンでは、ケイ素結合アルケニル基は末端位、側鎖位または末端と側鎖両方位に位置し得る。
【0122】
オルガノシランの具体例として、以下に限定されないが、次の式を有するシランが挙げられる:
ViSi、PhSiVi、MeSiVi、PhMeSiVi、PhSiVi、そしてPhSi(CHCH=CH
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルである。
【0123】
オルガノシロキサンの具体例としては、以下に限定されないが、次の式を有するシロキサンが挙げられる:
PhSi(OSiMeVi)、Si(OSiMeVi)、MeSi(OSiMeVi)、そしてPhSi(OSiMeVi)
ここで、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルである。
【0124】
該有機化合物は、1分子あたり少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素二重結合を含有し、ただしシリコーン樹脂(A””)の、シリコーン樹脂膜形成のための硬化を抑制することのない、任意の有機化合物であってよい。有機化合物はアルケン、ジエン、トリエン、またポリエンである。さらに、非環式有機化合物では、炭素−炭素二重結合は末端位、側鎖位、または末端と側鎖両方位に位置し得る。
【0125】
該有機化合物は1個以上の、脂肪族炭素−炭素二重結合以外の官能基を含有する。適する官能基の例としては、以下に限定されないが、−O−、>C=O、−CHO、−CO−、−C≡N、−NO、>C=C<、−C≡C−、−F、−Cl、−Br、そして−Iが挙げられる。本発明のフリーラジカル硬化シリコーン組成物への使用で特定な不飽和有機化合物の適合性は、所定の実験で容易に決定され得る。
【0126】
該有機化合物は室温で液状または固体状態にある。また、該有機化合物は、硬化前のフリーラジカル硬化シリコーン組成物に、溶解し、部分的に溶解し、または溶解しない。該有機化合物の通常の沸点は、分子量、構造、そして化合物中の官能基の数と性質に依存し、広範囲にわたって変化している。好ましくは、有機化合物は組成物の硬化温度よりも通常高い沸点を有する。さもなければ、有機化合物の相当量が硬化中に蒸発によって除去されてしまう。
【0127】
脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物の例としては、以下に限定されないが、1,4−ジビニルベンゼン、1,3−ヘキサジエニルベンゼン、そして1,2−ジエテニルシクロブタンが挙げられる。
【0128】
該不飽和化合物は、単一不飽和化合物または2種以上の異なる不飽和化合物を含む混合物でもよく、各不飽和化合物は上述されたとおりである。例えば、不飽和化合物は単一のオルガノシラン、2種の異なるオルガノシランの混合物、単一のオルガノシロキサン、2種の異なるオルガノシロキサンの混合物、オルガノシランとオルガノシロキサンとの混合物、単一の有機化合物、2種の異なる有機化合物の混合物、オルガノシランと有機化合物との混合物、またはオルガノシロキサンと有機化合物との混合物である。
【0129】
該不飽和化合物の濃度は通常、硬化の前、フリーラジカル硬化シリコーン組成物の総重量に対して、0から70%(w/w)、あるいは10から50%(w/w)、あるいは20から40%(w/w)である。
【0130】
ケイ素結合アルケニル基を含有するオルガノシランおよびオルガノシロキサンならびに脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物の製造法は当技術分野で広く知られており;これら化合物の多くは市販されている。
【0131】
フリーラジカル開始剤は通常フリーラジカル光開始剤または有機過酸化物である。さらに、フリーラジカル光開始剤は、200から800nmの波長を有する放射に曝されるとシリコーン樹脂の硬化(架橋)を開始できる任意のフリーラジカル光開始剤である。
【0132】
フリーラジカル光開始剤の例としては、以下に限定されないが、ベンゾフェノン;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;ハロゲン化ベンゾフェノン;アセトフェノン;α−ヒドロキシアセトフェノン;クロロアセトフェノン、例えばジクロロアセトフェノンやトリクロロアセトフェノンなど;ジアルコキシアセトフェノン、例えば2,2−ジエトキシアセトフェノンなど;α−ヒドロキシアルキルフェノン、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンや1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;α−アミノアルキルフェノン、例えば2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノンなど;ベンゾイン;ベンゾインエーテル、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルやベンゾインイソブチルエーテルなど;ベンジルケタール、例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなど;アシルホスフインオキシド、例えばジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなど;キサントン誘導体;チオキサントン誘導体;フルオレノン誘導体;メチルフェニルグリオキシラート;アセトナフトン;アントラキノン誘導体;芳香族化合物のスルホニルクロリド;そしてO−アシル α−オキシミノケトン、例えば1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムなどが挙げられる。
【0133】
フリーラジカル光開始剤はまた、ポリシラン、例えば米国特許第4,260,780号でウエストにより明示されたフェニルメチルポリシラン、該特許でのフェニルメチルポリシランに関する開示はここに参照することにより組み込まれる;米国特許第4,314,956号でベイニィ他により明示されたアミン化メチルポリシラン、該特許での開示はアミン化メチルポリシランに関してここに参照することにより組み込まれる;米国特許第4,276,424号でピーターソン他のメチルポリシラン、該特許の開示はメチルポリシランに関してここに参照することにより組み込まれる;米国特許第4,324,901号でウェスト他により明示されたポリシラスチレン、該特許での開示はポリシラスチレンに関してここに参照することにより組み込まれる;などである。
【0134】
フリーラジカル光開始剤は単一フリーラジカル光開始剤または2種以上の異なるフリーラジカル光開始剤の混合物でもよい。フリーラジカル光開始剤の濃度は通常、シリコーン樹脂(A””)の重量に対して、0.1から6%(w/w)、あるいは1から3%(w/w)である。
【0135】
フリーラジカル開始剤はまた有機過酸化物でもある。有機過酸化物の例としては、ジアロイルペルオキシド、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジ−p−クロロベンゾイルペルオキシド、そしてビス−2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシドなど;ジアルキルペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシドそして2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルぺルオキシ)ヘキサンなど;ジアラルキルペルオキシド、例えばジクミルペルオキシドなど;アラルキルペルオキシド、例えばt−ブチル−クミルペルオキシドそして1,4−ビス(t−ブチルぺルオキシイソプロピル)ベンゼンなど;アルキルアロイルペルオキシド、例えば過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、そしてt−ブチルペルオクトエートなどが挙げられる。
【0136】
該有機過酸化物は単一過酸化物または2種以上の異なる有機過酸化物を含む混合物でもよい。有機過酸化物の濃度は通常、シリコーン樹脂(A””)の重量に対して、0.1から5%(w/w)、あるいは0.2から2%(w/w)である。
【0137】
フリーラジカル硬化シリコーン組成物はさらに少なくとも1種の有機溶剤の存在下で形成され得る。有機溶剤は、シリコーン樹脂(A””)または追加成分と反応しない、かつシリコーン樹脂(A””)と混和性である任意の非プロトン性または双極非プロトン性有機溶剤であってよい。有機溶剤の例としては、以下に限定されないが、飽和脂肪族炭化水素、例えばn−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンそしてドデカンなど;シクロ脂肪族炭化水素、例えばシクロペンタンそしてシクロヘキサンなど;芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレンそしてメシチレンなど;環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)そしてジオキサンなど;ケトン、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK);ハロゲン化アルカン、例えばトリクロロエタンなど;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えばブロモベンゼンそしてクロロベンゼンなどが挙げられる。有機溶剤は、単一有機溶剤または2種以上の異なる有機溶剤を含む混合物でもよく、各有機溶剤は上述されたとおりである。
【0138】
有機溶剤の濃度は通常、硬化前のフリーラジカル硬化シリコーン組成物の総重量に対して、0から99%(w/w)、あるいは30から80%(w/w)、あるいは45から60%(w/w)である。
【0139】
上述のフリーラジカル硬化シリコーン組成物が1種以上の追加成分、例えばフリーラジカル開始剤から形成されるときは、フリーラジカル硬化シリコーン組成物は、一つのパーツにシリコーン樹脂と任意成分を含んでいる一液性組成物、または二つ以上のパーツに該成分を含んでいる多液性組成物から形成されてもよい。
【0140】
上述のシリコーン組成物に加えて、他の硬化シリコーン組成物もまた本発明の目的に適している。例えば、本発明の目的のために適切なシリコーン組成物がPCT出願書類JP第2006/315901号に開示されており、シリコーン組成物に関連するので、その開示は参照により本明細書に取り込まれる。さらに、ポリシルセスキオキサンもまた本発明の目的に適している。
【0141】
繊維強化剤は繊維を含む任意の強化剤であり得る。繊維強化剤は典型的には25℃で少なくとも3GPaのヤング率を有する。例えば、強化剤は典型的には25℃で3から1,000GPa、あるいは3から200GPa、あるいは10から100GPaのヤング率を有する。さらに、強化剤は典型的には25℃で少なくとも50MPaの伸張強度を有する。例えば、強化剤は典型的には25℃で50から10,000MPa、あるいは50から1,000MPa、あるいは50から500MPaの伸張強度を有する。
【0142】
繊維強化剤は織布、例えば布;非織布、例えばマットまたはロービング;またはルース(loose)(個々的な(individual))繊維であってよい。強化剤中の繊維は通常円筒状の形状であり、1から100μm、あるいは1から20μm、あるいは1から10μmの直径を有する。ルース繊維は通常は連続的であり、ほとんどの場合切れ目のない態様で強化シリコーン膜全体に亘って繊維が広がっていることを意味している。
【0143】
繊維強化剤は、典型的には、有機汚染物質を除くために使用前に加熱処理される。例えば、繊維強化剤は通常、上昇した温度、例えば575℃で、適切な期間、例えば2時間、空気中で加熱される。
【0144】
本発明の目的に適切である繊維強化剤の具体例には、以下に限定されないが、ガラス繊維;石英繊維;グラファイト繊維;ナイロン繊維;ポリエステル繊維;アラミド繊維、例えばKevlar(登録商標)やNomex(登録商標)など;ポリエチレン繊維;ポリプロピレン繊維;シリコンカーバイド繊維;アルミナ繊維;シリコンオキシカーバイド繊維;金属線、例えば鋼線;及びそれらの組合せを含む強化剤が挙げられる。
【0145】
上述したように、繊維強化剤は通常シリコーン組成物で含浸される。繊維強化剤は、様々な方法を用いてシリコーン組成物で含浸されてもよい。上述したように、例えば、シリコーン組成物をリリースライナー(release liner)に適用することにより、シリコーン膜を形成させてもよい。シリコーン組成物を、従来的なコーティング技術を用いてリリースライナーに適用してもよく、例えばそれはスピンコート法、浸漬コート法、スプレー法、はけ塗り法、またはスクリーンプリント法などである。シリコーン組成物は繊維強化剤を含浸するのに十分な量で適用される。リリースライナーは、シリコーン樹脂が硬化した後に層間剥離による損傷なしに強化シリコーン樹脂膜が除去可能である表面を有する、任意の剛性もしくは柔軟性のある物質であってよい。リリースライナーの例には、以下に限定されないが、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリイミドが挙げられる。
【0146】
繊維強化剤は次いでシリコーン膜に組み込まれ、それにより組込繊維強化剤を形成する。繊維強化剤は、強化剤を単にシリコーン膜上に配置し、シリコーン組成物が強化剤に含浸することを可能にすることにより、シリコーン膜中に含浸され得る。しかし、繊維強化剤が最初にリリースライナー上に配置され、続いて繊維強化剤上にシリコーン組成物が適用されてもよいことが理解される。他の実施態様では、繊維強化剤が織布または非織布である場合、強化剤は、リリースライナーを使用することなく、シリコーン組成物を強化剤で貫通させることによってシリコーン組成物に添加することが可能である。織物は、通常、室温(約23±2℃)で1から1,000cm/sの速度でシリコーン組成物を貫通させられる。
【0147】
組込繊維強化剤は次いで任意に脱気される。組込繊維強化剤は、室温(約23±2℃)から60℃の温度で、組込強化剤中に封入された空気を取り除くのに十分な時間で、真空にさらされることによって脱気させることが可能である。例えば、組込繊維強化剤は、典型的には、室温で5から60分間、1,000から20,000Paの圧力に組込繊維強化剤をさらさせることによって脱気することが可能である。
【0148】
脱気した後に、さらなるシリコーン組成物を組込繊維強化剤に適用して、含浸(impregnated)繊維強化剤を形成させる。シリコーン組成物を、上述のように、従来方法を用いて脱気された組込繊維強化剤に適用することが可能である。さらなる脱気及びシリコーン組成物の適用の繰り返しを行ってもよい。
【0149】
含浸繊維強化剤は、また、圧縮させることにより過剰なシリコーン組成物及び/または封入された空気を除去させ、並びに含浸繊維強化剤の厚みを低減させてもよい。含浸繊維強化剤を従来的な装置を用いて圧縮させることが可能であり、それには例えばステンレス製ローラー、水圧プレス、ゴム製ローラー、または積層ロールセットなどがある。含浸繊維強化剤は典型的には1,000Paから10MPaの圧力及び室温(約23±2℃)から50℃の温度で圧縮される。
【0150】
含浸繊維強化剤を室温で十分に加熱してシリコーン組成物を硬化させ、強化シリコーン層14を形成させる。含浸繊維強化剤は大気圧、大気圧より低い圧、または大気圧より高い圧で加熱し得る。含浸繊維強化剤は、通常、室温(約23±2℃)から250℃の温度で、あるいは室温から200℃で、あるいは室温から150℃で、大気圧で加熱される。含浸繊維強化剤は、シリコーン組成物を硬化させる(架橋させる)のに十分に長い時間で加熱される。例えば、含浸繊維強化剤は、通常、150から200℃の温度で0.1から3時間の時間で加熱される。
【0151】
あるいは、含浸繊維強化剤は真空中100から200℃の温度かつ1,000から20,000Paの圧力で0.5から3時間の時間加熱されて、強化シリコーン膜を形成することができる。含浸繊維強化剤は従来からの真空バッグ法を用いて真空中で加熱されてよい。通常の方法で、ブリーダー(例、ポリエステル)が含浸繊維強化剤の全体を覆って施され、ブリーザ(例、ナイロン、ポリエステル)がブリーダーの全体を覆って施され、真空ノズルを備え付けられた真空バッグフィルム(例、ナイロン)がブリーザの全体を覆って施され、組立物がテープで密封され、真空(例、1,000Pa)を密封された組立物に適用し、気体が抜かれたバッグを上述のとおりに加熱する。
【0152】
強化シリコーン層14の厚さは複合品10が意図する用途に依存する。典型的には、強化シリコーン層14は少なくとも1ミリ、より典型的には2から100ミリ、最も典型的には約5ミリの厚さを有する。
【0153】
強化シリコーン層14は第一の窓層12に隣接して配置される。さらに具体的には、強化シリコーン層14は第一の窓層12に接着されている。一実施態様において、図1に示されるとおり、強化シリコーン層14は直接第一の窓層12上に形成されてもよい。この実施態様では、硬化シリコーン組成物は、硬化シリコーン組成物ひいては強化シリコーン層14を第一の窓層12に接着させるために、硬化する前、少なくとも1個の官能基を含む。少なくとも1個の官能基は、以下に限定されないが、シラノール基、アルコキシ基、エポキシ基、水素化ケイ素基、アセトキシ基、そしてこれらの組合せの群から選択してもよい。第一の窓層12上に直接強化シリコーン層14を形成させるために、含浸繊維強化剤を上述したように形成する。次いで、含浸繊維強化剤が完全に硬化する前に、含浸繊維強化剤を第一の窓層12上に配置する。いったん含浸繊維強化剤を第一の窓層12上に配置したら、含浸繊維強化剤を加熱してシリコーン組成物を硬化させ、強化シリコーン層14を形成させ、第一の窓層12上に強化シリコーン層14を接着させる。強化シリコーン層14が第一の窓層12上に直接形成された場合には、第一の窓層12を形成するために使用されるガラス質材料が、劣化または変形することなく、シリコーン組成物を硬化させるために使用される温度に耐えることができることを確実にすることが重要である。これは特に、ガラス質材料が炭素系ポリマーを含む場合に適用可能である。
【0154】
他の実施態様では、図3で示されるとおり、複合品210は強化シリコーン層14と第一の窓層12との間に配置される接着層20をさらに備える。さらに具体的には、強化シリコーン層14は接着層20を有する第一の窓層12に接着する。接着層20は典型的にはシリコーンベース接着剤を含む;しかし、シリコーンをガラスに接着するために適する任意の接着剤が本発明の目的に適することが理解されるであろう。シリコーンベース接着剤は、シリコーンベース接着剤が主に炭素系接着剤を使用することが可能ではない可能性がある複合品に対してさらなる耐火性を提供するので特に好ましい。シリコーンベース接着剤は、通常、接着層20を強化シリコーン層14に接着するために、また接着層20を第一の窓層12に接着するために、少なくとも1個の官能基を含有する。少なくとも1個の官能基は、以下に限定されないが、シラノール基、アルコキシ基、エポキシ基、水素化ケイ素基、アセトキシ基、そしてこれらの組合せの群から選択してもよい。かかるシリコーンベース接着剤は当技術分野では知られている。シリコーンベース接着剤は一液系または多液系であってよい。
【0155】
典型的には、図2で示されるとおり、複合品110は第二のガラス質材料から形成され、第一の窓層12から空間をあけて配置される第二の窓層16を備え、第一の窓層12と第二の窓層16との間に配置される強化シリコーン層14を有する。強化シリコーン層14は、それ自体、第一の窓層12及び第二の窓層16の間で完全に囲まれることにより、ひっかき傷またはその他の損傷から強化シリコーン層14を保護する。第二の窓層16は典型的には第一の窓層12と同一であり、第二のガラス質材料は典型的には第一の窓層12のガラス質材料と同一であるが、特定の用途においては、第一の窓層12及び第二の窓層16は異なる特性を有していてもよいことが理解されるであろう。例えば、第一の窓層12及び第二の窓層16は異なる厚さを有していてもよく、異なるガラス質材料から形成されてもよい。
【0156】
一実施態様において、本発明の複合品210はさらに少なくとも1つの追加の強化シリコーン層14を備え、複数の追加の強化シリコーン層14を備えてもよく、それにより複合品210にさらなる耐火性を提供する。少なくとも1つの追加のシリコーン層14は、厚み、繊維強化剤の種類、または硬化シリコーン組成物の種類の観点で、強化シリコーン層14と同一であるかまたは異なっていてもよい。図3で示されるとおり、少なくとも1つの追加の強化シリコーン層14は強化シリコーン層14に隣接して配置され、第一の窓層12と第二の窓層16との間に配置される。上述したように、接着層20は典型的には強化シリコーン層14の間に配置されるが、強化シリコーン層14及び少なくとも1つの追加の強化シリコーン層14は、上述したように、硬化する前に存在するシリコーン組成物中の官能基を介して接着されてもよい。
【0157】
他の実施態様において、第三のガラス質材料から形成される第三の窓層18が強化シリコーン層14と少なくとも1つの追加の強化シリコーン層14との間に配置され、上述したように層12、14、16、18は互いに接着する。第三の窓層18は第一の窓層12及び/または第二の窓層16と、厚みの観点で同一であってもまたは異なっていてもよく、第三のガラス質材料は第一の窓層12を形成するために使用されるガラス質材料と同一であってもまたは異なっていてもよい。第三の窓層18が存在することにより、複合品210に構造的な剛性を提供できる。窓層の数は、要求される構造的な剛性、耐火性能等級(fire performance rating)、及び力学的/熱的インパクト耐性要件に依存する。最も好ましい実施態様では、図3で示されるとおり、少なくとも2つの強化シリコーン層14が各窓層の間に配置されることにより複合品10に最大限の耐火性を提供することができる。
【0158】
本発明の複合品10は優れた耐火性を有する。さらに具体的には、本発明の複合品10は、典型的には、ホースストリームインパクトなしでASTM E 119−05a、ホースストリームインパクトありでASTM E 2010−01、及びASTM E 2074−00の少なくとも一つに従って、少なくとも30分の耐火等級(fire rating)を有する。さらに具体的には、本発明の複合品10は、90分の耐火等級を有し、180分を超える時間、複合品10に欠陥が形成されない。耐火等級は複合品10の耐火性の指標であり、炉により提供される熱に暴露された場合に、複合品10に破損が形成されるのにどれぐらい時間がかかるかの測定値である。ASTM E 119−05aに従って耐火等級を立証するために、複合品10を炉に配置し、炉を加熱して10分を超える時間で約1300°Fの温度まで加熱し、次いで、190分を超える時間で約1950°Fの温度まで実質的に定速で加熱し続ける。炉の加熱速度を図5に例示する。熱への暴露の間に破損が複合品10中に形成されるにも関わらず、複合品10は典型的には溶解し、強化シリコーン層14は典型的には炭化する。
【0159】
本発明の複合品10は、図4に例示するように、優れた防熱特性をも示す。優れた防熱特性は、火災中の建物全体の熱の伝導を防ぎ、または例えばオーブンなどの含有空間内に熱を維持するのに重要である。
【0160】
本発明の複合品10中に破損が生じた場合であっても、強化シリコーン層14中の繊維強化剤の存在のおかげで、本発明の複合品10は実質的な構造的な統合性を維持するであろう。さらに具体的には、繊維強化剤の存在のおかげで、炭化の程度に関わらず、複合品10はそれ自身の重量によっては通常崩落しないであろう。
【0161】
以下の実施例は本発明を説明するためであり、いかなる態様においても本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【実施例】
【0162】
[実施例1]
複合品は一連の窓層、強化シリコーン層、及び接着層を供給することにより形成される。さらに具体的には、窓層は、約0.125インチの厚さを有する焼きなましフロートガラスから形成される。強化シリコーン層は硬化シリコーン組成物及び繊維強化剤を含む。硬化シリコーン組成物は、SiH-官能性架橋剤によって架橋されたビニルジメチルシロキシ末端フェニルシルセスキノキサン樹脂を含み、それは、Midland,MIのダウ・コーニング社より市販される。繊維強化剤はStyle 106ガラス織物を含み、約1.5ミリの厚さを有する。接着層は約71重量部のシリコーンベース接着剤及び約29重量部のポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。シリコーンベース接着剤はダウ・コーニング社より市販される6−3444樹脂であり、PDMSは測定される可塑性値が55と65の間にあるような数平均分子量を有する。接着層はリリースライナー上に提供されることにより接着層の操作が可能となる。
【0163】
複合品を形成するために、リリースライナーを接着層の一つより取り除き、接着層を窓層の一つの最上部に配置する。次いで、強化シリコーン層の一つを接着層の上に配置する。追加の接着層及び強化シリコーン層を組立てて、3つの強化シリコーン層を有する堆積構造物(stack)を形成する。他の接着層を第三の強化シリコーン層の最上部に配置する。次いで、第二の窓層を堆積構造物の最上部に配置する。次いで、接着層と交互になっているさらに3つの強化シリコーン層を第二の窓層の最上部に組立てて、次いで、堆積構造物の最上部に第三の窓層を配置することにより複合品を完成させる。
【0164】
実施例1の複合品はASTM E119−05aに従い耐火等級付けされる。さらに具体的には、複合品は炉の一開口上に取り付けられ、複合品の片側は周囲雰囲気にさらされる。炉を図5に示す速度で加熱する。195分後に複合品に欠陥が形成され、低温側の温度、すなわち、周囲雰囲気にさらされている複合品の側の温度を、時間に対して、図4において示す。
【0165】
[実施例2]
複合品を実施例1に記載したのと同様の手順により加工してもよいが、外側の層として2つの窓層のみを使用する。3つの強化シリコーン樹脂層及び4つの接着層を2つの窓層の間に配置してもよい。
【0166】
[実施例3]
2つの窓層及び1つの強化シリコーン樹脂層を供える複合品を以下のように形成することができる。部分硬化ガラス織物強化シリコーン層は、シリコーン被覆リリースペーパー上にSiH官能性架橋剤及び触媒を含む、3ミリの厚さの層のビニルジメチルシロキシ末端フェニルシルセスキノキサン樹脂をコーティングし、Style 106ガラス織物を液体樹脂中に入れて、樹脂を粘着性の半固体に硬化させることにより形成される。使用される触媒に応じて、この目的を達成するために硬化条件が調節される必要がある。例えば、ジビニルテトラメチルジシロキサンとの複合体の形態で10ppmの白金が使用される場合、4から6時間室温で静止させる(standing)ことで充分であろう。次いで、ガラス織物を有する部分硬化樹脂膜を窓層の一つの上に配置する。ガラス織物を含む部分硬化樹脂の最上部に第二の窓層を配置することにより複合品を形成することができる。次いで、複合品は真空バッグ中に配置される。真空を適用し、次いで樹脂の硬化を完全にするために硬化手順が続く。以下は適当な硬化手順であり得る:100℃の温度まで、5℃/分の速度で複合品を加熱させ、100℃で1時間複合品を維持し、160℃の温度まで、5℃/分の速度で複合品を加熱させ、160℃で1時間複合品を維持し、そして200℃の温度まで、5℃/分の速度で複合品を加熱させ、200℃で1時間複合品を維持する。
【0167】
明らかに、前記の教示を踏まえて、本発明の多くの変更や変化は可能であり、本発明は、添付の特許請求項の範囲内で具体的に記述されたもの以外にて実施可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス質材料から形成される第一の窓層;並びに
前記第一の窓層に隣接して配置され、
硬化シリコーン組成物、及び
繊維強化剤
を含む、強化シリコーン層
を備える複合品。
【請求項2】
前記繊維強化剤がさらに織布、非織布、及ぶルース繊維の少なくとも1つとして規定される、請求項1に記載の複合品。
【請求項3】
前記繊維強化剤がガラス繊維、石英繊維、グラファイト繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、シリコンカーバイド繊維、アルミナ繊維、シリコンオキシカーバイド繊維、金属線、及びこれらの組合せの群から選択される繊維を含む、請求項1または2に記載の複合品。
【請求項4】
前記繊維強化剤が前記硬化シリコーン組成物で含浸される請求項1から3のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項5】
前記硬化シリコーン組成物がヒドロシリル化硬化シリコーン組成物としてさらに規定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項6】
前記ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物が、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒の存在下での、
(A)シリコーン樹脂、及び
(B)前記シリコーン樹脂を硬化するために十分な量の、1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物との
反応生成物を含む、請求項5に記載の複合品。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂(A)が次式:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
[式中、RはCからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、いずれも脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニル基であり、wは0から0.9であり、xは0から0.9であり、yは0から0.99であり、zは0から0.85であり、w+x+y+z=1、y+z/(w+x+y+z)は0.1から0.99であり、及びw+x/(w+x+y+z)は0.01から0.9であり、ただし、前記シリコーン樹脂(A)は1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有する。]
を有する、請求項6に記載の複合品。
【請求項8】
前記硬化シリコーン組成物が縮合硬化シリコーン組成物としてさらに規定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項9】
前記縮合硬化シリコーン組成物が、任意に、(C’)触媒量の縮合触媒の存在下での、
(A”)少なくとも2個のケイ素結合ヒドロキシ基またはケイ素結合加水分解性基を有するシリコーン樹脂、及び
任意に、(B’)ケイ素結合加水分解性基を有する架橋剤との、
反応生成物を含む、請求項8に記載の複合品。
【請求項10】
前記シリコーン樹脂(A”)が次式:
(RSiO1/2w’(RSiO2/2x’(RSiO3/2y’(SiO4/2z’
[式中、RはCからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、いずれも脂肪族不飽和を含まず、RはR、−H、−OH、または加水分解性基であり、w’は0から0.8であり、x’は0から0.95であり、y’は0から1であり、z’は0から0.99であり、w’+x’+y’+z’=1、かつ前記シリコーン樹脂(A”)は1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基を有する。]
を有する、請求項9に記載の複合品。
【請求項11】
前記縮合硬化シリコーン組成物がさらに粒子形状での無機充填剤を含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項12】
前記硬化シリコーン組成物がフリーラジカル硬化シリコーン組成物としてさらに規定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項13】
前記フリーラジカル硬化シリコーン組成物が次式:
(RSiO1/2w”(RSiO2/2x”(RSiO3/2y”(SiO4/2z”
[式中、RはCからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、いずれも脂肪族不飽和を含まず、RはR、アルケニル、またはアルキニルであり、w”は0から0.99であり、x”は0から0.99であり、y”は0から0.99であり、z”は0から0.85であり、かつw”+x”+y”+z”=1である。

を有するシリコーン樹脂(A””)から形成される、請求項12に記載の複合品。
【請求項14】
前記ガラス質材料がポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート及びアクリルの群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項15】
前記シリコーン組成物が、前記第一の窓層に前記硬化シリコーン組成物を接着させるために、硬化する前に、少なくとも1個の官能基を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項16】
前記少なくとも1個の官能基がシラノール基、アルコキシ基、エポキシ基、水素化ケイ素基、アセトキシ基、及びこれらの組合せの群から選択される、請求項15に記載の複合品。
【請求項17】
前記強化シリコーン層と前記第一の窓層との間に配置される接着層をさらに備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項18】
前記接着層がシリコーンベース接着剤を含む、請求項17に記載の複合品。
【請求項19】
第二のガラス質材料から形成されてかつ前記第一の窓層から空間をあけて配置される第二の窓層であって、前記第一の窓層と前記第二の窓層との間に前記強化シリコーン層が配置される第二の窓層をさらに備える、請求項1から18のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項20】
前記強化シリコーン層に隣接して配置される少なくとも1つの追加の強化シリコーン層をさらに備える、請求項1から19のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項21】
前記強化シリコーン層の間に配置される接着層をさらに備える、請求項20に記載の複合品。
【請求項22】
第三のガラス質材料から形成され、前記強化シリコーン層と前記少なくとも1つの追加の強化シリコーン層との間に配置される第三の窓層をさらに備える、請求項20に記載の複合品。
【請求項23】
少なくとも2つの強化シリコーン層が各前記窓層の間に配置される、請求項22に記載の複合品。
【請求項24】
ASTM E 119−05a、ASTM E 2010−01、及びASTM E 2074−00の少なくとも一つに従って、少なくとも30分の耐火等級を有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の複合品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−522649(P2010−522649A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550911(P2009−550911)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/002287
【国際公開番号】WO2008/103407
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】