説明

充填剤を分散させた状態の溶融混練物の製造方法、溶融混練物の製造方法により得られる樹脂成形物、その製造方法若しくはその用途

【課題】非相溶性の高分子ブレンド物から制御された共連続構造組成の非相溶性の高分子ブレンド物の溶融混練物、溶融混練物から制御された共連続構造組成の非相溶性の高分子ブレンド物の樹脂成形物並びに樹脂成形物を溶剤処理して得られる材料の提供
【解決手段】特定割合のフィラー並びに非相溶性の樹脂等を、スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1の条件下に処理して得られる溶融混練した樹脂又はエラストマーを、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの後端に移行させる循環を行い、溶融混練物の内部構造としての共連続構造を制御し、その連続相のサイズをメゾスコピックレベル(0.3〜100μm)で自在に変化させて得られる溶融混練物、樹脂成形物及び樹脂成形物を溶剤処理して得る材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填剤を分散させた状態の樹脂溶融混練方法及び樹脂溶融混練方法により得
られる樹脂溶融混練物、樹脂溶融混練方法に接続する成形加工方法及び成形加工方法によ
り得られる成形加工物、成形加工物からなる樹脂成形物、樹脂成形物からなる物質透過膜
若しくは分離膜並びに樹脂成形物からなる物質徐放材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非相溶性の高分子ブレンドの高次構造としては一方の高分子がマトリクスとなり他方が分散相となることで海一島構造を形成することがよく知られている。
この海一島構造はブレンドを構成する高分子間の組成とそれぞれの溶融粘度の比がほぼ比例するような条件で相転換を起こし、その条件より組成や粘度比が変わることで海と島の関係が逆転する。この相転換が起こる条件付近で現れる高次構造が、2種類の高分子が互いに連続相を形成する、いわゆる共連続構造と呼ばれるものである。従って、どのような非相溶性高分子ブレンドにおいても、上記のようなブレンド組成と構成ポリマー間の粘度比により、必ず共連続構造が出現する(S. Steinmann, W. Gronski, C. Friedrich, Polymer, 2002, 43, 4467(非特許文献1).F. Gubbels, S. Blacher, E. Vanlathem, R. Jerome, R. Deltour, F. Brouers, Ph. Teyssie, Macromolecules, 1995, 28,1559(非特許文献2))。
【0003】
この共連続構造は海−島構造と異なり、互いに連続相を形成しているので、その構造を反映して多様な物性を発現することが知られており、多岐にわたる応用のアイデアが提案されている。例えば、連続相の一方に導電性ポリマーを使うことにより、導電性や制電性の特徴を生かした材料開発が可能となる(特許文献1)。共連続構造の一方の相を溶媒等で除去することにより、他方の相から成るメゾポーラス材料を容易に形成させることができるので、それらのサイズに合致した分離膜やフィルターとしての応用が提案されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。非相溶性高分子ブレンド系材料に対して超臨界流体処理等により一方の相を発泡させる技術もあるが、発泡ではバルク材料の表面付近だけに数十μm程度の孔が形成されるだけなので、バルク材料として物質を選択的に透過させることは不可能である。
【0004】
この共連続構造体の利用に関しては従来押出成形機などを用いて溶融混練した状態の生成物を得た後、成形加工して各種形状体として用いていることは前述の通りである。この他に、非相溶性高分子ブレンドの共連続構造体を製造した後、一方の非相溶性高分子を溶剤で除去して得られる多孔質体を得た後、この多孔質体として利用することが行なわれる。
例えば、特開2006−136673号(特許文献6)では、「生体吸収性高分子材料から成り、孔径が5〜50μmの小孔構造を有する立体的な網目構造中に断面積中の20〜80%を占める不定形な連続孔からなり、生体吸収性高分子材料が、ポリグリコール酸,ポリ乳酸,乳酸−グリコール酸共重合体などから選ばれるブロック状細胞工学用支持体。」を得ている。この場合の形状は、粒子径が300〜700μm、平均孔径5μmであり、これより5〜50μmの小孔構造の不定形な連続孔を有する構造のものが具体的に記載されている(実施例1)。同様に特開2006−306983号(特許文献7)では、平均孔径1〜30μmの連通孔を有する多孔質体が得られることが記載されている。これらのことから多孔質体の形状、特に形成される多孔質体の形状は極めて不均一であり、多孔質体の形状を形成するもととなる、非相溶性高分子ブレンドの共連続構造体はかなり規則性が無く乱雑な構造であることがわかる。
【0005】
以上のことから、この非相溶性の高分子ブレンドにより形成された共連続構造は熱的に不安定であり、例えば高温下で熱処理或いはアニーリングすると、構造緩和が起きて、一度形成された構造での連続相サイズが粗大化することを避けることができなかった。すなわち、得られた高分子ブレンドは熱的安定性に欠けるという技術的問題があり、安定した共連続構造の樹脂成形物を得るための方法を見出すことは必要不可欠ということになる。又、共連続構造は熱的に不安定であるだけでなく、ブレンド組成と構成ポリマー間の粘度比により一義的に連続相のサイズが決まってしまうため、そのサイズを外因的パラメータにより自在に制御することが困難とされている。
これら非相溶性の高分子ブレンドにより形成される共連続構造は、上述したブレンドを構成する高分子の組成と溶融粘度比のバランスにより生じる構造であるため、共連続構造のサイズを何らかの外因的パラメータにより自在に制御する方法の開発が必要とされている。
【0006】
共連続構造を経由して得られるメゾポーラス構造は二つの大きな特徴がある。一つは、ポーラス構造が三次元的に形成されているので、物質の選択的透過には最適となる点である。もう一つは、溶媒で除去されずに残った、メゾポーラス材料の骨格ともいえる高分子の方も同様に三次元的に繋がった構造を維持するため、他方の高分子相が除去されても三次元的には非常に強固な、天然骨類似の構造とすることが必要である。
そのためにも、共連続構造のサイズを何らかの外因的パラメータにより自在に制御する方法により得られる非相溶性の高分子ブレンドにより形成された共連続構造体は、熱的に安定となり、一義的に連続相のサイズが定まることができる理想的な構造体となり、又、この構造体を経て形成される多孔質体の形状は前記共連続構造体に対応した均一な形状のメゾポーラス構造体として得ることが可能となる。
【0007】
従来技術を中心に概観し、従来の問題点を見てみることにする。前記したように、この非相溶性の高分子ブレンドにより形成された共連続構造は熱的に不安定であり、例えば高温下で熱処理或いはアニーリングすると、構造緩和が起きて、一度形成された構造での連続相サイズが粗大化することを避けることができなかった。
従来は、混練押出し機又は成形加工機を用いて非相溶性の高分子ブレンド物を処理すれことがおこなわれてきたが、従来のそのスクリュー回転数は高々300rpm程度であり、この回転数でのせん断速度は100sec-1程度に留まっており、このレベルのせん断速度では混練時のポリマー粘度や充填剤の分散状態を十分に変化させることができず、非相溶性高分子ブレンドをナノレベルで混合することも、フィラー等充填剤を樹脂中でナノ分散させることもできない状況にあった。
【0008】
押出し成形機などを用いて得られる共連続構造では、その構造部分が結びつきを妨げる物理的な障害となる作用を粘土が果すことを、本発明者らはすでに見出していた(Y. J. Li, H. Shimizu, Polymer, 2004, 45, 7381(非特許文献3)、Y. J. Li, H. Shimizu, Macromol. Rapid Commun., 2005, 26, 710 (非特許文献4)、押出成形機で種々なせん断力の条件を採用して非相溶性高分子ブレンドの共連続構造のサイズの制御を行うことができることに成功した(P. Potschke, D. R. Paul, Macromol. Symp., 2003, 198, 69(非特許文献5).M. Jaziri, T. K. Kallel, S. Mbarek, B. Elleuch, Polym. Int., 2005, 54, 1384.(非特許文献6))。
これらは従来の押出成形機の狭いせん断力を用いるものであり、非相溶性高分子ブレンドの共連続構造サイズの制御に関して限定された範囲で述べているものである。具体的には、前記のように、スクリュー回転数は高々300rpm程度であり、この回転数でのせん断速度は100sec-1程度に留まっていることによる。このレベルのせん断速度では、関係する非相溶性高分子系の粘度に相違がある場合、フィラー等充填剤の分散状態をナノレベルで均一に分散させることが必要な場合には、十分に対応できないので、結局、根本的な解決にはなっていなかった。
【0009】
本発明者らは、内部帰還型スクリューを搭載させて、1000rpm以上のスクリュー回転が可能であり、最高出力3000rpmの微量型高せん断成形加工機(特開2005−313608号公報、特許文献5)の発明を行った。
そして、この装置を用いて、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)95〜20質量%とポリアミド11(PA11)5〜80質量%とのポリマーブレンドの押出成形フィルム状物であって、十ナノメーターオーダーのサイズのポリアミド11分散相がポリフッ化ビニリデンマトリクス相に均一に分散されたナノ分散ポリマーブレンド押出成形フィルム状物の圧延加工1フィルムの交流電場印加処理物からなる強誘電体フィルムの発明に成功した(特許文文献8 特開2006−21195公報、 H. Shimizu, Y. L. Li, A. Kaito, H. Sano, Macromolecules, 2005, 38,7880(非特許文献7). H. Shimizu, Y. L. Li, A. Kaito, H. Sano, J. Nanosci. Nanotechnol., 2006,6, 12(非特許文献8). Y. J. Li, H. Shimizu, T. Furumichi, Y. Takahashi, T. Furukawa, J. Polym. Sci.:Part B: Polym. Phys., 2007, 45, 2707(非特許文献9).)。
【特許文献1】特開平07−102175号(特許第3142424号明細書)
【特許文献2】米国特許第5135627号明細書
【特許文献3】特開2000−1612号公報
【特許文献4】ドイツ特許公開第4236935号明細書
【特許文献5】特開2005−313608号公報
【特許文献6】特開2006−136673号
【特許文献7】特開2006−306983号
【特許文献8】特開2006−21195公報
【非特許文献1】S. Steinmann, W. Gronski, C. Friedrich, Polymer, 2002, 43, 4467
【非特許文献2】F. Gubbels, S. Blacher, E. Vanlathem, R. Jerome, R. Deltour, F. Brouers, Ph. Teyssie, Macromolecules, 1995, 28,1559.
【非特許文献3】Y. J. Li, H. Shimizu, Polymer, 2004, 45, 7381
【非特許文献4】Y. J. Li, H. Shimizu, Macromol. Rapid Commun., 2005, 26, 710
【非特許文献5】P. Potschke, D. R. Paul, Macromol. Symp., 2003, 198, 69
【非特許文献6】M. Jaziri, T. K. Kallel, S. Mbarek, B. Elleuch, Polym. Int., 2005, 54, 1384.
【非特許文献7】H. Shimizu, Y. L. Li, A. Kaito, H. Sano, Macromolecules, 2005, 38,7880
【非特許文献8】H. Shimizu, Y. L. Li, A. Kaito, H. Sano, J. Nanosci. Nanotechnol., 2006,6, 3923-3928
【非特許文献9】Y. J. Li, H. Shimizu, T. Furumichi, Y. Takahashi, T. Furukawa, J. Polym.Sci.:Part B: Polym. Phys., 2007, 45, 2707
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、非相溶性の高分子ブレンドにより形成される共連続構造は、共連続構造のサイズを何らかの外因的パラメータにより自在に制御することができる新規な製造方法、熱的に安定であり、一義的に連続相のサイズが定まる、理想的なフィラーである充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの新規溶融混練体、この溶融混練体を成形する新規な成形方法及び新規な成形体、これらから得られるメゾポーラス構造において、そのポーラスサイズが均一かつ一定化されている新規な多孔質体及びその新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく以下のように研究を展開させた。
(1)本発明者らは、内部帰還型スクリューを搭載させて、1000rpm以上のスクリュー回転が可能であり、最高出力3000rpmの微量型高せん断成形加工機(特開2005−313608号公報、特許文献3:通常の二軸スクリュー型混練機ではなく、内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機である。)を用い、フィラーである充填剤を含有する、共連続構造組成の非相溶性の高分子ブレンド物の溶融混練物及び共連続構造組成の非相溶性の高分子ブレンド物の樹脂成形物を得るための外因的パラメータは、せん断速度及びスクリュー回転数及び非相溶性の高分子ブレンド物に対する充填剤の添加量比であり、300rpmで作製した試料では、当該明細書で述べる低せん断と定義していることに相当し、この低せん断下のものはクレイ添加量に依存せず、すぐにサイズが低減化してしまい、制御不能な領域の状態となる。
これに対して、高せん断下条件(特に2000 rpm以上)ではフィラーの添加量とせん断条件とで残された孔を形成する相(具体例では、PLAが除去され、残ったPBS相の場合)には、充填材(具体例ではクレイ)の分散状態(特に界面の分布)を制御することができ(具体例ではPBS相にクレイが偏在し)、その結果、それらをパラメータとして自在に“孔”のサイズを制御できる。好適な条件下では溶融混練物の内部構造として非相溶性の高分子ブレンド物の共連続構造としてメゾスコピックレベル(0.3〜100μm)で自在に制御できることを見いだして、本発明を完成させた。
具体的には以下の通りである。
(2)フィラーである充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーを、スクリューを備えたシリンダーにヒーターを有する溶融混練部の端部に設けられた原料投入部に投入し、前記スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1の条件下に処理して得られる溶融混練した樹脂又はエラストマーを、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの後端に移行させる循環を行う充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方法。
(3)フィラーである充填剤並びに非相溶性の樹脂もしくはエラストマーを、スクリューを備えたシリンダーにヒーターを有する溶融混練部の端部に設けられた原料投入部に投入し、前記スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1であり、加熱温度は室温〜被溶融混練樹脂温度より45℃より高い範囲の温度条件下に、処理して得られる溶融混練した非相溶性の樹脂若しくはエラストマー並びにフィラーである充填剤を、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端と該先端に対向して配置されている及びシール部との間に設けられた0.5から5mmに調節可能な部間隔に閉じ込めた後、スクリューの中央部に設けられているスクリューの中央部に設けられている内径1mmから5mmの孔を通して前記スクリューの後端に移行させることを特徴とする充填剤並びに非相溶性樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方法。
(4)前記充填剤は非相溶性の樹脂若しくはエラストマー100重量%に対して、0.001〜30重量%である前記(2)又は(3)記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂又はエラストマーの溶融混練方法。
(5)得られた溶融混練物から得られる樹脂成形物を有機溶媒等で処理することにより一方の高分子相が除去されるので、他方の相だけから成るメゾポーラス構造が形成され、そのポーラスサイズに合致した物質透過膜あるいは分離膜材料が供給される。又は、そのポーラス部分に物質を予め充填し、樹脂相の生分解速度に比例して、その物質が徐々に放出されるような物質徐放材料を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、共連続構造の連続相のサイズをメゾスコピックレベル(0.3〜100μm)で自在に制御された充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーからなる溶融混練物を得ることができる。
溶融混練物から得られる樹脂成形物を有機溶媒等で処理することにより一方の高分子相が除去されるので、他方の相だけから成るメゾポーラス構造を得ることができる。メゾポーラス構造体をそのポーラスサイズに合致した物質透過膜、分離膜材料、物質徐放材料及び細胞培養用支持体として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の溶融混練方法及び溶融混練方法により得られる溶融混練物は以下の通りである。
図1は、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂中にナノレベルのフィラーからなる充填物を均一に分散させた溶融混練物及び成形物を製造する本発明で移用する装置の全体図である。
図2は、図1の装置の溶融混練部のフィードバック型スクリューを説明する図である。
図3は、図1及び2の装置の溶融混練部のフィードバック型スクリューの前端部に間隙を説明する図である。
【0014】
溶融混練物製造装置10は、原料物質であるフィラーからなる充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの原料投入部16、溶融混練部12及び成形部14から構成されている。
溶融混練部12は、シリンダー18中にフィードバック型スクリュー20(以下単にスクリュー20とも言う)有している。スクリュー20はシリンダー18中にシャフト24を介して設置されている(図1)。充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーはシリンダーとスクリュー間の間隙46を通り(図2)、非相溶性の樹脂若しくはエラストマーは溶融され、充填剤とともに混練される。シャフト24はベアリング22を介してスクリュー20と連絡さている。又、シリンダー18にはシリンダーの外側に沿って非相溶性の樹脂若しくはエラストマーを溶融させるためのヒーター26が設けられている(図1)。シャフト24が位置する場所と反対側の端にはシリンダー18に、溶融混練部12と成形部14の間をシールするための及びシール部28が設けられている。
又、シリンダー18には、スクリューの先端29と及びシール部28の間の間隙32に設置されている。間隙32は、調節するための調節手段30により0.5mmから5mmの範囲で調節することが可能である(図2、3)。
スクリュー20はシリンダー18内で非相溶性の樹脂若しくはエラストマーを溶融するのに十分な構造となっている。図2には、シリンダーとスクリュー間の間隙46が示されている。原料投入部16から供給される、非相溶性の樹脂若しくはエラストマーは、シリンダーとスクリュー間の間隙46中を、スクリュー背後部48からスクリュー前部50に向かって充填剤とともに移行する。溶融された非相溶性の樹脂若しくはエラストマーは充填剤とともに前部スクリューの先端29と及びシール部28との間に形成される間隙32内に閉じ込められる。溶融された非相溶性の樹脂若しくはエラストマーは充填剤とともにスクリューの中央部に設けられている横方向の孔44を経て、異なる方向に向いた孔を通り、スクリュー背後部48を経て、再びスクリューの前方向50に向かい、溶融混練を継続する。
溶融混練された非相溶性の樹脂若しくはエラストマーは充填剤とともに、前記間隙32より弁(図示せず)を介して成形部14に取り出して、成形加工を行う。
成形部14は、押出部ヒーター35及びフィルムを製造するためのTダイ34を有している。Tダイ34は、Tダイ前部末端部加熱ヒーター36及びTダイ背後末端部加熱ヒーター38を有している。押出された成形体はTダイ前部末端部加熱ヒーター36及びTダイ背後部末端加熱ヒーター38の間に形成された排出口40を通過する。成形部及びTダイ前部末端部加熱ヒーター38内には温度測定のために熱電対42が挿入されている。その測定結果は制御装置(図示せず)に送られ、溶融混練部12及びTダイの温度調製を行う。成形体としては、ロッド、フィルム、シート、ファイバーを得ることができる。
せん断溶融に要する時間は、シリンダーとスクリュー間の間隙46中を通過するために要する時間に応じて変更可能である。非相溶性の樹脂若しくはエラストマーがせん断される程度は、スクリュー後部末端と、スクリュー後部末端とスクリュー内部に直径につながるシール表面の間に形成される間隙を変更することにより可能となる。非相溶性の樹脂若しくはエラストマーをせん断する程度は、間隙を狭くすること、孔の直径を狭くすることにより上昇させることができる。間隙とスクリューの孔の内径については非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの粘度の点から最適なものとすることが必要である。シリンダー内に含まれる非相溶性の樹脂若しくはエラストマーを溶融混練するために必要な時間は1分から8分である。
【0015】
本発明の溶融混練法は上記の装置を用いて以下の条件下に行う。
(1)フィラーである充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーを、スクリュー20を備えたシリンダー18にヒーター26を有する溶融混練部の端部に設けられた原料投入部16から投入し、前記スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1の条件下に処理して得られる溶融混練した樹脂又はエラストマーを、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端29の間隙32に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの後端に移行させる循環を行う。
【0016】
(2)フィラーである充填剤並びに非相溶性の樹脂もしくはエラストマーを、スクリューを備えたシリンダー18にヒーター26を有する溶融混練部の端部に設けられた原料投入部16に投入し、前記スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1であり、加熱温度はエラストマーもしくは非晶性ポリマーに対してはガラス転移点以上を目安に、結晶性ポリマーに対しては融点近傍を目安に温度条件を設定し、処理して得られる溶融混練した非相溶性の樹脂若しくはエラストマー並びにフィラーである充填剤を、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端29と該末端に対向して配置されているシール部28との間に設けられた間隔32に閉じ込められる。その後、スクリューの中央部に設けられているスクリューの中央部に設けられている内径1mmから5mmの範囲にある孔を通して前記スクリューの後端に移行させる循環を行う。
【0017】
上記方法で用いる溶融混練機は既に本発明者らが発明した内部帰還型スクリューを搭載させて、1000rpm以上のスクリュー回転が可能であり、最高出力3000rpmの微量型高せん断成形加工機(特開2005−313608号公報、特許文献3:通常の二軸スクリュー型混練機ではなく、内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機である。)を用いる。
前記(1)の場合では、スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1の条件が好ましい。
前記(2)の場合では、更に、スクリューの先端と該先端に対向して配置されているシール部28との間に設けられた間隔32は0.5から5mmに調節可能であり、スクリューの孔内径は1mmから5mmの範囲にあり、前記スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1となる。
上記内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を用いる場合、ブレンド物が充填されているシリンダー先端とシール部との間隙、あるいは内部帰還型スクリューの内径を調節することによりせん断流動場の強さもしくは混練の度合いを変えることができる。通常、ギャップは1ミリから5ミリの間で任意の値を0.5ミリ間隔で設定可能であり、スクリュー内径も同様に1φから5φの間で任意の値を0.5φ間隔で設定可能であるが、ギャップならびに内部帰還型スクリュー内径を、それぞれ1〜2ミリ、2.5φに設定することにより最適な結果を得ることができる。
本発明の場合には前記の特定の温度下に最先端部(シール面)とスクリュー先端部とのギャップならびに内部帰還型スクリュー内径を最適数値にして高せん断成形を行ったところに特徴がある。このように、特定の条件を組み合わせて初めて良好な結果が得られる。仮に温度設定あるいは上記ギャップ等の設定条件の一方でも、前記条件をはずれる場合には満足する結果を得ることができない。
上記内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を用いる場合、成形加工条件としては上記の特定温度の設定だけでなく、当該成形加工機におけるスクリュー回転数(もしくはせん断速度)と混練時間の設定が重要である。本発明では、スクリュー回転数として600〜3000rpm、混練時間として0.1分〜60分の間で任意に設定可能であるが、スクリュー回転数、せん断速度ならびに混練時間として、それぞれ600〜2000さらには3000rpm、900〜3000、さらには4500sec―1に設定することにより最適な結果を得ることができた。
本発明の場合には前記の特定の非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの組成とクレイ添加量、さらには特定の温度下にスクリュー回転数と混練時間を最適数値にして高せん断成形を行ったところに特徴がある。このように、特定の条件を組み合わせて初めて良好な結果が得られる。仮に、ブレンド組成やクレイ添加量、あるいは温度設定もしくは上記スクリュー回転数等の設定条件の一方でも、前記条件をはずれる場合には満足する結果を得ることができない。
【0018】
前記充填剤並びに非相溶性の樹脂又はエラストマーの溶融混練方法では、前記充填剤は非相溶性の樹脂若しくはエラストマー100重量%に対して、0.001〜30重量%である。
生分解性を示す樹脂に関し非相溶性樹脂を組み合わせて、溶融混練方法を行う場合には、(a)ポリ乳酸(PLLA)とポリグリコール酸(PGA)からなる生分解性の脂肪族ポリエステル(b)ポリ乳酸(PLLA)とポリブチレンサクシネート(PBS)との組み合わせ(c)ポリ乳酸(PLLA)に、ポリブチレンサクシネートとコハク酸を共重合したコポリマー(PBSA)(d)ポリ乳酸(PLLA)とポリ(ε・カプロラクトン)(PCL)との組み合わせ(e)ポリ乳酸(PLLA)とポリブチレンアジペートブチレンテレフタレート共重合体(PBAT)にはポリ乳酸(PLLA)70〜30重量%に対して組み合わせる樹脂PBS(もしくはPBSA)などは30〜70重量%、これらのブレンド物100重量%に対して、0.01〜30重量%のクレイ(充填剤)添加を任意に調整可能であるが、ブレンド組成ならびにクレイ添加量として、それぞれ60〜40重量%に対して40〜60重量%とし、これらのブレンド物100重量%に対して、0.1−15重量%のクレイ添加により最適な結果を得ることができた。
熱可塑性樹脂、天然ゴム、合成ゴム又は熱可塑性エラストマーに関し、非相溶性樹脂の組み合わせ、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの非相溶性の組み合わせ、又は天然ゴム、合成ゴム、又は熱可塑性エラストマー同士のブレンド物から非相溶性の組合せを使用する場合には、同じく一方が70〜30重量%であり、これに組み合わせるもう一方が30から70重量%で混合する。樹脂又は樹脂ブレンド物100重量%に対して、充填剤は0.01−30重量%である。
【0019】
本発明の場合には前記の特定のブレンド組成とクレイ添加量、さらには特定の温度下にスクリュー回転数と混練時間を最適数値にして高せん断成形を行ったところに特徴がある。このように、特定の条件を組み合わせて初めて良好な結果が得られる。仮にブレンド組成やクレイ添加量、あるいは温度設定もしくは上記スクリュー回転数等の設定条件の一方でも、前記条件をはずれる場合には満足する結果を得ることができない。
【0020】
本発明で対象とする非相溶性樹脂は、(1)生分解性を示す樹脂に関し非相溶性樹脂の組み合わせ、(2)熱可塑性樹脂、天然ゴム、合成ゴム又は熱可塑性エラストマーに関し
非相溶性樹脂の組み合わせ、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの非相溶性の組み合わせ、又は(3)天然ゴム、合成ゴム、又は熱可塑性エラストマー同士のブレンド物から非相溶性の組合せを意味する。
【0021】
(1)生分解性を示す樹脂に関し非相溶性樹脂の組み合わせについては、以下の通りである。
(a)ポリ乳酸(PLLA)とポリグリコール酸(PGA)からなる生分解性の脂肪族ポリエステル
(b)ポリ乳酸(PLLA)とポリブチレンサクシネート(PBS)との組み合わせ
(c)ポリ乳酸(PLLA)に、ポリブチレンサクシネートとコハク酸を共重合したコポリマー(PBSA)
(d)ポリ乳酸(PLLA)とポリ(ε・カプロラクトン)(PCL)との組み合わせ
(e)ポリ乳酸(PLLA)とポリブチレンアジペートブチレンテレフタレート共重合体(PBAT)
【0022】
前記(a)ポリ乳酸(PLLA)とポリグリコール酸からなる生分解性の脂肪族ポリエステルに関しては、ポリ乳酸(PLLA)70〜30重量%に対してポリグリコール酸30〜70重量%である。
前記(b)のポリ乳酸(PLLA)とポリブチレンサクシネート(PBS)との組み合わせに関しては、ポリ乳酸(PLLA)70〜30重量%に対してポリブチレンサクシネート(PBS)は30〜70重量%である。
前記(c)のポリ乳酸(PLLA)に、ポリブチレンサクシネートとコハク酸を共重合したコポリマー(PBSA)の組み合せに関しては、ポリ乳酸(PLLA)70〜30重量%に対してポリブチレンサクシネート(PBSA)30〜70重量%である。
前記(d)のポリ乳酸(PLLA)にポリ(ε・カプロラクトン)(PCL)との組み合わせに関しては、ポリ乳酸(PLLA)70〜30重量%に対してポリ(ε・カプロラクトン)(PCL)に対してポリ(ε・カプロラクトン)(PCL)30〜70重量%である。
前記(e)のポリ乳酸(PLLA)とポリブチレンアジペートブチレンテレフタレート共重合体(PBAT)の組み合わせに関しては、ポリ乳酸(PLLA)70〜30重量%に対してポリブチレンアジペートブチレンテレフタレート共重合体(PBAT)30〜70重量%である。
【0023】
前記の組み合わせの範囲は、各々PLLAの60〜40重量%に対してPBS(又はPBSA)の40〜60重量%とすることにより更に最適な結果を得ることができる。
【0024】
ポリ乳酸(PLLA)の好ましい分子構造は、L−乳酸またはD−乳酸いずれかの単位85〜100モル%、さらに好ましくは該単位85〜98モル%、及び、それぞれの対掌体の乳酸単位0〜15モル%、さらに好ましくは、該対掌体単位2〜15モル%を含むものである。
これらは市販品を用いることができる。本実施例ではMw=170000,D体含有量1.2%のものを用いている。
【0025】
ポリグリコール酸の市販品として、シグマアルドリッチ社製のポリグリコライドが挙げられる。
ポリブチレンサクシネートの市販品として、昭和高分子(株)製、商品名:ビオノーレ1001、同ビオノーレ1020、同ビオノーレ1903等が挙げられる。
ポリブチレンサクシネート・アジペートの市販品として、昭和高分子(株)製、商品名:ビオノーレ3001、同ビオノーレ3020等が挙げられる。
ポリブチレンサクシネート・テレフタレートの市販品として、BASF社製、商品名:エコフレックス、DuPont社製、商品名:バイオマックス等が挙げられる。
【0026】
(2)熱可塑性樹脂と天然ゴム、合成ゴム又は熱可塑性エラストマーについては、以下の通りである。
非相溶性樹脂の組み合わせ、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの非相溶性の組み合わせについては、以下の通りである。
(a)熱可塑性樹脂同士の非相溶性樹脂のブレンド物、
(b)熱可塑性樹脂と天然ゴム、合成ゴムの非相溶性樹脂のブレンド物、
(c)熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの非相溶性ブレンド物、
熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとのブレンド物と天然ゴム及び(又は)合成ゴム、
(d)熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとのブレンド物と天然ゴム及び(又は)合成ゴムの非相溶性ブレンド物。
【0027】
(3)天然ゴム、合成ゴム、又は熱可塑性エラストマー同士のブレンド物から非相溶性の組み合せについては以下の通りである。
(a)天然ゴムと合成ゴム、天然ゴム又は合成ゴムと熱可塑性エラストマーの非相溶性エラストマーのブレンド物、
(b)熱可塑性エラストマー同士の非相溶性エラストマーのブレンド物。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンなどのポリプロピレン(PP)、エチレンプロピレン共重合体樹脂)、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリ乳酸(PLLA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリエステル共重合体、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド酸/ポリブチレートテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル)、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))、ポリニトリル系樹脂(例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体)、ポリメタクリレート系樹脂 (例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル)、ポリビニル系樹脂 (例えば、酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体)、セルロース系樹脂 (例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース)、フッ素系樹脂 (例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE))、イミド系樹脂 (例えば芳香族ポリイミド(PI))、ポリアセタールなどを用いることができる。
【0029】
エラストマー及び天然ゴムとしては、ジエン系ゴムおよびその水素添加物(たとえばNR、IR、エポキシ化天然ゴム、SBR、BR(高シスBRおよび低シスBR)、NBR、水素化NBR、水素化SBR)、オレフィン系ゴム(たとえばエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、EPMなどのエチレンプロピレンゴム)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、IIR、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー)、含ハロゲンゴム(例えば、Br−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、CR、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)、シリコンゴム(たとえばメチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム)、含イオウゴム(例えば、ポリスルフィドゴム)、フッ素ゴム、(例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム)、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、エラストマー (例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー)などを挙げることができる。
エラストマーは極性基を持たない無極性のエラストマーである、ポリ(スチレン-b-ブタジェン-co-ブチレン-b-スチレン)(SBBS)、ポリ(スチレン-ブタジェン-スチレン)(SBS)、又はエチレンプロピレンゴムなどがある。他のエラストマーについても同様に行うことができる。上記エラストマーはいずれも公知物質であり購入して使用することができる。SBBS、SBS等は熱可塑性エラストマーなので、天然ゴムのように架橋させる必要が無く、通常の樹脂のように成形加工が容易でありながら、ゴム状弾性に優れた物質である。
エラストマー及びゴムに対しては均一に溶融した状態となること、そして、混練した状態を保つものである。
この実施例の場合と同様に他のエラストマーやゴムの場合についても同様に行うことができる。
【0030】
原料の他の一方は、フィラーからなる充填剤である。
フィラーからなる充填剤は、ナノサイズレベルのフィラーであり、具体的には(1)クレイであり、そのうちでも層状ケイ酸塩、(2)合成マイカ、(3)シリカ微粒子、(4)籠状シリカ微粒子から選ばれるものが用いられる。
これらは一次粒子としての粒径や空隙率が小さいために、フィラー同士の凝集力が極めて強く、もともと相互につながりあう状態で存在し、通常の方法では、この凝集力を解くのは困難とされてきた。本発明の場合にはつながりを解いた状態で、非相溶性の樹脂若しくはエラストマー中に分散させることができる。
【0031】
(1)層状ケイ酸塩
層状ケイ酸塩(layer silicate)は、フィロケイ酸塩(phyllosilicate)とも言われる。Si或いはAlを4個の酸素が囲んだ四面体が、3つの頂点を隣の四面体と共有することにより、2次元的に拡がった構造単位(四面体シート)を形成している層状構造をもった珪酸塩の一群。Mg、Alなど6個の酸素ないしOHが囲んだ八面体の2次元的なつながりである八面体シートも重要な構成要素となる。層面に平行なへき開が完全であり、一般に板状又は薄片状の形態である。化学的には、Al、Mg、Fe、アルカリなどの含水珪酸塩である。SouthernClayProduct製のCloisite30B、プリフィード(商標名、株式会社トクヤマ。無水の結晶性層状ケイ酸ナトリウム)がある。
【0032】
(2)合成マイカ
マイカはフィロケイ酸塩鉱物雲母族に属する板状結晶で底面に完全な劈開を持っていることが特徴の鉱物である。その構造は同じ向きを向いたSiO4四面体の六員環が連なった四面体層の対に八面体層がはさまれたタブレットと呼ばれる複合層が積層してなっている。四面体層のSiはその一部をAl3+、Fe3+、B3+等の3価やGe4+等の4価の陽イオンで置き換わる場合もある。八面体層にはLi2+、Mg+2+、Fe2+、Al3+、Fe3+等の陽イオンを含んで5〜6価になっている。タブレットは負の電荷を持っており層間にK、Na等のアルカリ金属陽イオンを持っている。ここが弱線となり劈開を生ずる。このような鱗片状の結晶形状となっている。
マイカを合成すると遷移金属や重金属を含まない無色透明な純粋結晶を作ることができる。逆に微量の金属を混ぜることでマイカの色や機能を制御することもできます。また、マイカの層間イオンをKではなくNaやLiにすることでスメクタイトのような膨潤性を持たせることもできる。
この膨潤性マイカはスメクタイトのように水と接触すると結晶の層間に水分子を吸着して膨潤し、ついにはバラバラになって水中に分散する。その代表的な鉱種であるNa四珪素雲母は人工マイカである。熔融合成を行うとNa四珪素雲母はクリストバライト、角閃石等を共成する。層間に位置するNaイオンはその50%がイオン交換性を持っている。結晶は10〜20μmで天然スメクタイトと比較して結晶が大きいので分散すると500〜1,000もの高アスペクト比をもっている。Na四珪素雲母は乾燥状態では9.6Åの底面間隔であり、大気中の水蒸気を吸着し、d001=12.6Åの一水層状態をとる。さらに水を加えると層間に水分子を取り込み、水中に分散する。また、粒子が大きいので一定濃度での分散系の粒子数は少なくなるため粘度は高くならず、高濃度懸濁液が調整できることが特徴です。四珪素雲母はK、Na型は合成することができるが、Li型に配合してもリシア輝石ができてしまいLi型四珪素雲母にはならないことがわかっている。
Naテニオライトは膨潤性マイカの中で最も結晶化率が高く、陽イオン交換容量(CEC)は理論値通りの約250meq/100gである。しかし、Naテニオライトは水分子を吸着し膨れるが、バラバラにはならない。Liテニオライトも結晶化率は高く、Na型と違って水中で粒子がバラバラになって分散する自由膨潤タイプで、膨潤力も高い。
水に分散した膨潤性マイカ粒子は面の大きさは〜10μm、厚さ2〜10nmの薄片粒子である。
【0033】
(3)シリカ微粒子
シリカ微粒子は、合成シリカを意味し、二酸化珪素の粒子が集まって、連続的に網の目のような微細な孔を形成している。この微細な孔の内側に、水蒸気などの各種物質を吸着することもできる。シリカの製法には大きく分けて2つの方法がある。 珪酸ソーダ水溶液の酸又はアルカリ金属塩による中和、分解反応によりシリカの析出を行う。シリカの製法には大きく2つの方法がある。(1)珪酸ソーダ水溶液の酸又はアルカリ金属塩による中和、分解反応によりシリカの析出を行う方法(湿式法)、及び(2)高温気相反応によりシリカの析出を行う方法(乾式法)である。
シリカ微粒子は、シリカ粒子の凝集性を調整した超微粒子であり、シャープな粒度分布を持ち、良好な分散性を示す(株式会社東ソー(商品名)のE-200A,E-220A,K-500,E-1009,E-1011,E-1030,E-150J,E-170,E-200,E-220などがある。)。
トクシール(商標名 株式会社トクヤマ)は極微細 (約2nm) な単粒子が紐状につなが
り、これがさらに絡み合い3次元の網目構造 (ストラクチャー) となったものが凝集した
ものである。湿式シリカの真比重は2.0g/cm3ですが、網目構造のため内部に空隙をたくさん持ち、外観上はふわふわとした軽い白色の粉末となっている。シリカゾルが各種原料物質の被覆剤として知られている(特開2004−136164号公報)。ナノレベルの粒径を持つシリカ微粒子を使い、樹脂に分散させることにより透明性を保持したまま耐熱性等の機械的性能を向上させることが期待される。
【0034】
(4)籠状シリカ
籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)を用いることができる。籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物は無機化合物と有機化合物の長所を兼ね備えている三次元の籠状構造を有する新規フィラーであり、かつその籠状の三次元構造中には溶解性を高めるための非反応性基(例えば、メチル基、イソブチル基、イソオクチル基等のアルキル基やフェニル基)や重合もしくはグラフト用の官能基(例えば、アミノプロピル基、エポキシ基、ハロゲン基、チオール基、アクリル基等)がシリコン原子に結合しているので、それらの官能基を種々選ぶことにより、樹脂やゴム等に微視的分散させれば、それら既存の材料の機械特性、耐熱性、光学特性、ガス透過性、難燃性、耐薬品性等が飛躍的に向上することが期待されている。
籠上ポリシルセスキオキサン(POSS)は種々な籠型ポリシルセスキオキサンな化合物が知れている。一例を示すと以下の通りである(特開2006−285017号公報)。
【化1】






(式中、R〜Rはすべて同時に又はそれぞれ独立に、メタクリル基、エポキシ基、メチル基、フルオロアルキル基、CF(CF)n−R10を意味する。ここで、R10は炭素数1ないし12個の非置換または置換二価炭化水素基を意味し、nは0〜10の整数を意味する。)
籠型ポリシルセスキオキサンの合成は以下の通りである。
上記一般式(1)で示される籠型ポリシルセスキオキサンの合成に使用されるアルコキシシランとしては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
ここで、アルコキシシランを適宜選択することにより、得られる籠型ポリシルセスキオキサンを変更することができる。具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランをなどである。
【0035】
これらの充填剤の大きさは、一般に、数nmから数10nmの範囲のものが採用される。これらのものはいずれも公知物質であり、市販品である。
【0036】
以上の溶融混練方法により得られる溶融混練物は、前記好適な条件化では溶融混練物の内部構造として非相溶性の高分子ブレンド物の共連続構造としてメゾスコピックレベル(0.3〜100μm)で自在に制御された構造組成物として得ることができる。
この内容については、溶融混練物を用いて樹脂成形物を製造し、溶媒であるテトラヒドロフランを用いてPLLA相を選択的に除去して得られる結果を、除去した後の連続相(ポーラス)サイズについて、共連続構造の観察は走査型電子顕微鏡(SEM)観察により得られたものである。
【0037】
生分解性を示す樹脂に関し非相溶性樹脂を組み合わせて、溶融混練方法を行う場合には、(a)ポリ乳酸(PLLA)とポリブチレンサクシネート(PBS)との組み合わせ(b)ポリ乳酸(PLLA)とポリグリコール酸との組み合わせ
(c)ポリ乳酸(PLLA)に、ポリブチレンサクシネートとコハク酸を共重合したコポリマー(PBSA)
(d)ポリ乳酸(PLLA)とポリ(ε・カプロラクトン)(PCL)との組み合わせ(e)ポリ乳酸(PLLA)とポリブチレンアジペートブチレンテレフタレート共重合体(PBAT)にはポリ乳酸(PLLA)70〜30重量%に対して組み合わせる樹脂PBS(もしくはPBSA)などは30〜70重量%、これらのブレンド物100重量%に対して、0.01〜30重量%のクレイ(充填剤)添加を任意に調整可能であるが、ブレンド組成ならびにクレイ添加量として、それぞれ60〜40重量%に対して40〜60重量%とし、これらのブレンド物100重量%に対して、0.1−15重量%のクレイ添加により最適な結果を得ることができた。
非相溶性樹脂の組み合わせ、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの非相溶性の組み合わせ、又は天然ゴム、合成ゴム、又は熱可塑性エラストマー同士のブレンド物から非相溶性の組合せを使用する場合には、同じく一方が70〜30重量%であり、これに組み合わせるもう一方が30から70重量%で混合する。樹脂又は樹脂ブレンド物100重量%に対して、充填剤は0.01−30重量%である。
これらを溶融混練させるには、混合物を粒状物の状態で混合させるドライブレンドによる方法を用いることができる。ドライブレンドは試料を真空中80℃で12時間乾燥後に行った。
【0038】
溶融混練方法により得られる溶融混練物は、前記好適な条件化では溶融混練物の内部構造として非相溶性の高分子ブレンド物の共連続構造としてメゾスコピックレベル(0.3〜100μm)で自在に制御された構造組成物として得ることができる。
この内容については、溶融混練物を用いて樹脂成形物を製造し、溶媒であるテトラヒドロフランを用いてPLLA相を選択的に除去して得られる結果を、除去した後の連続相(ポーラス)サイズについて、共連続構造の観察は走査型電子顕微鏡(SEM)観察により得られたものである。
実施例3の結果を示す図6では、以下のことが確認できている。
高せん断混練(スクリュー回転数2000rpm)では、クレイを1%添加しただけでそのポーラス相サイズは30〜40μmにも増大する。これは、クレイを少量添加しただけで樹脂の粘度が大きく変化したことと、クレイ添加による組成高分子間における界面張力の変化に起因していると考えられる。
実際、その後はクレイ添加量を増やすにつれて急激にポーラス相サイズが小さくなる挙動が観測された。
また、この図からも明らかなように、低せん断混練(スクリュー回転数300rpm)ではクレイ添加2%までにポーラス相サイズが急激に小さくなるが、それ以上のクレイ添加はサイズに影響を与えない。
これに対して、高せん断混練(スクリュー回転数1000,2000rpm)の条件にするほど、クレイ添加によりポーラス相サイズを広範囲に制御できることが分かる
PLLA/PBS/クレイの系の共連続構造におけるポ−ラスサイズは、クレイ添加量とせん断速度を要因として自由に制御できることが理解できる。高せん断成形加工とクレイ添加量を組み合わせることにより、ポーラスサイズを広範囲で制御できる。
【0039】
溶融混練物を成形加工方法することにより樹脂成形物を得ることができる。
溶融混練した押出し物を成形機末端に取り付けたT−ダイを通すことによりフィルムやシート(以下フィルム状物ともいう)を得ることができる。
そのほか樹脂成形物としては、ロッドを製造することができる。
前記樹脂成形物は、非相溶性の樹脂若しくはエラストマーが互いに連続相を形成している共連続構造を形成している。
例えば、その微視的構造としてPLLA相並びにPBS相(若しくはPBSA相)とが互いに連続相を形成している共連続構造を形成している。
前記樹脂成形物は、その微視的構造としてPLLA相並びにPBS相(若しくはPBSA相)とが共連続構造を形成しており、その後、一方の相を溶媒等により除去することによりメゾポーラス構造を形成することを確認できる。
前記樹脂成形物は、そのメゾポーラス構造のサイズは、クレイ添加量、せん断速度及びスクリュー回転数をパラメータとして得られ、0.3〜100μmの間で自在に制御できる。前記樹脂成形物は、そのメゾポーラス構造が生分解性樹脂により構成されていることができる。
【0040】
樹脂成形物を溶剤処理すると、PLLA相を選択的に除去して得られる結果、共連続構造の相(ポーラス)が得られる。これらの利用に関しては、ポーラス(多孔)サイズに合致した物質透過膜、分離膜材料、あるいは生分解性フィルター材料として利用できる。又、含有する充填剤などの材料が生分解速度に比例して物質が放出されることにより、物質除放材料、ドラッグデリバリー材料、細胞培養用支持体としてりようできる。本発明では、十数ミクロン〜数十ミクロンレベルの多孔体の製造も可能であるから、細胞培養に適した構造であるということができる。
【0041】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
本明細書で述べている共連続構造あるいは溶媒で一方の相を除去した後の連続相(ポーラス)サイズは以下のように測定されたものである。
共連続構造の観察は走査型電子顕微鏡(SEM)観察により行う。
試料は以下のように処理したものであり、得られた試料を走査型電子顕微鏡により行う。
試料(樹脂混練物もしくは樹脂成形物)の内部構造観察に際し、試料を液体窒素中で破断して、その破断面にAuコーティングした後、SEM観察に供する。
測定装置としては、日立製HitachiS−800を用いて、加速電圧10kVにて測定した。連続相(ポーラス)サイズはSEM写真から、その平均値として見積もった。
【実施例1】
【0042】
原料のポリ乳酸(PLLA)は市販品(Mw=170000,D体含有量1.2%)をそのまま用いた。また、ポリブチレンサクシネート(PBS)は昭和高分子(株)製ビオノーレ1020を用いた。
また、層状ケイ酸塩(クレイ)としてSouthernClayProduct製のCloisite30Bを用いた。
これらを、それぞれ真空中80℃で12時間予備乾燥した後に所定の割合でドライブレンドした。
ドライブレンドは、室温で、ブレンド組成ならびにクレイ添加量として、それぞれPLLAの70〜30重量%に対してPBS(もしくはPBSA)の30〜70重量%中の、PLLAの60〜40重量%に対してPBS(もしくはPBSA)の40〜60重量%、さらにはこれらのブレンド物100重量%に対して、0.01−30重量%中の0.1−15重量%のクレイを添加して得られたものであった。
次に、このドライブレンド物の約5gを微量型高せん断成形加工機に投入し、ギャップならびに内部帰還型スクリュー内径を、それぞれ1〜2ミリ、2.5φに設定し、190℃に加熱溶融して混練(スクリュー回転数:300,1000,2000rpm、混練時間:1〜2分)した後、T一ダイから押出した。
その結果、表面状態の良好な押出し物を得ることができた。
続いて熱プレスにて均一なフィルム(厚さ500μm)とした後、溶媒(テトラヒドロフラン)を用いてPLLA相を選択的に除去した。
この処理により得られた試料を液体窒素温度にて破断し、SEMによりその破断面を観察した結果を図4に示した。
300rpmで作製した試料は、当該明細書においては低せん断と定義しており、この低せん断下のものはクレイ添加量に依存せず、すぐにサイズが低減化してしまい、制御不能な領域である。これに対して、高せん断下条件(特に2000 rpm以上)ではフィラーの添加量とせん断条件とでPBS相内部でのクレイの分散状態(特に界面の分布)を制御することができ(クレイはPBS相に偏在し)、その結果、それらをパラメータとして自在に“孔”のサイズを制御できることを見出した。
【実施例2】
【0043】
PLLA/PBS=55/45ブレンド物にクレイを8wt%添加して、実施例1において作製した試料を液体窒素温度にて破断してSEMにより、その破断面を観察したのが図5である。
低せん断混練(スクリュー回転数300rpm)では、そのポーラス相サイズがクレイ添加2%のときからすでに同じであり、ずっと変化していないが、高せん断混練(スクリュー回転数1000,2000rpm)ではクレイ添加量に比例してポーラス相サイズが小さくなっていることが示されている。
この場合においても、300rpmで作製した試料は、当該明細書においては低せん断と定義しており、この低せん断下のものはクレイ添加量に依存せず、すぐにサイズが低減化してしまい、制御不能な領域です。これに対して、高せん断下条件(特に2000 rpm以上)ではフィラーの添加量とせん断条件とでPBS相内部でのクレイの分散状態(特に界面の分布)を制御することができ(クレイはPBS相に偏在し)、その結果、それらをパラメータとして自在に“孔”のサイズを制御できることを見出した。
【実施例3】
【0044】
PLLA/PBS:55/45ブレンドにクレイをそれぞれ0〜12%まで添加して、実施例1において作製した試料を液体窒素温度にて破断してSEMにより、その破断面を観察し、そこからポーラス相サイズの挙動をまとめたのが図6である。
図中、aは300rpmの場合を表す。bは1000rpmの場合を表す。cは2000rpmの場合を表す。
図6からも明らかなように、高せん断混練(スクリュー回転数2000rpm)では、
クレイを1%添加しただけでそのポーラス相サイズは30〜40μmにも増大する。これは、クレイを少量添加しただけで樹脂の粘度が大きく変化したことと、クレイ添加による組成高分子間における界面張力の変化に起因していると考えられる。
実際、その後はクレイ添加量を増やすにつれて急激にポーラス相サイズが小さくなる挙動が観測された。
また、この図からも明らかなように、低せん断混練(スクリュー回転数300rpm)ではクレイ添加2%までにポーラス相サイズが急激に小さくなるが、それ以上のクレイ添加はサイズに影響を与えない。
これに対して、高せん断混練(スクリュー回転数1000,2000rpm)の条件にするほど、クレイ添加によりポーラス相サイズを広範囲に制御できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】エラストマーや樹脂中にナノレベルのフィラーからなる充填物を均一に分散させた溶融混練物及び成形物を製造する本発明の装置の全体図。
【図2】本発明の溶融混練部のフィードバック型スクリュー及び溶融混練物の再循環を説明する詳細な図。
【図3】本発明の溶融混練部のフィードバック型スクリューの前端部にある間隙を説明する図である。
【図4】PLLA/PBS=60/40〜40/60のブレンドにクレイを0.1から15wt%添加した試料による共連続構造を示す典型的なSEM写真である。
【図5】PLLA/PBS/粘土=55/45/8の共連続構造を示す典型的なSEM写真である。
【図6】PLLA/PBS=55/45ブレンドにおいてクレイ添加量とせん断速度とをパラメータとしたときの、ポーラス相サイズの挙動を示した表である。
【符号の説明】
【0046】
図6
a:300rpmの場合を表す。
b:1000rpmの場合を表す。
c:2000rpmの場合を表す。
図1から3
10:溶融混練物製造装置
12:溶融混練部
14:成形部
16:原料投入部
18:シリンダー
20:フィードバック型スクリュー
22:ベアリング
24:シャフト
26:ヒーター
28:シール部
29:スクリューの先端
30:間隙を調節するための調節手段
32:間隙
35:押出部ヒーター
36:Tダイ前部末端部加熱ヒーター
38:Tダイ背後部末端加熱ヒーター
40:排出口
42:熱電対
44:孔
46:シリンダーとスクリュー間の間隙
48:スクリュー背後部
50:スクリュー前部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーである充填剤、並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーを、スクリューを備えたシリンダーにヒーターを有する溶融混練部の端部に設けられた原料投入部に投入し、前記スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1の条件下に処理して得られる溶融混練した樹脂又はエラストマーを、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの後端に移行させる循環を行うことを特徴とする充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方法。
【請求項2】
フィラーである充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーを、スクリューを備えたシリンダーにヒーターを有する溶融混練部の端部に設けられた原料投入部に投入し、前記スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1であり、加熱温度は、エラストマーもしくは非晶性ポリマーに対してはガラス転移点以上を目安に、結晶性ポリマーに対しては融点近傍を目安に温度条件を設定し、
処理して得られる溶融混練した非相溶性の樹脂若しくはエラストマー並びにフィラーである充填剤を、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端と該先端に対向して配置されているシール部との間に設けられた0.5から5mmに調節可能な部間隔に閉じ込めた後、スクリューの中央部に設けられているスクリューの中央部に設けられている内径1mmから5mmの孔を通して前記スクリューの後端に移行させることを特徴とする充填剤並びに非相溶性樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方法。
【請求項3】
前記充填剤は非相溶性の樹脂若しくはエラストマー100重量%に対して、0.001〜30重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂又はエラストマーの溶融混練方法。
【請求項4】
前記非相溶性樹脂又はエラストマーは、熱可塑性樹脂同士のブレンド物や熱可塑性樹脂と天然ゴム、合成ゴム、又は熱可塑性エラストマーとのブレンド物、さらには天然ゴム、合成ゴム、又は熱可塑性エラストマー同士のブレンド物であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方法。
【請求項5】
前記非相溶性熱可塑性樹脂同士のブレンド物は、ポリ乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、PBSにコハク酸を共重合したコポリマー(PBSA)又はポリ(ε・カプロラクトン)(PCL)或いはポリブチレンアジペートーブチレンテレフタレート共重合体(PBAT)から選ばれる生分解性の脂肪族ポリエステルやその共重合体のいずれかの組み合わせから成ることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂同士のブレンド物は生分解性の脂肪族ポリエステルやその共重合体同士のブレンド物としてPLLA/PBS(又はPBSA)ブレンドの組み合わせであることを特徴とする請求項5記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方法。
【請求項7】
前記非相溶性熱可塑性樹脂同士のブレンド物はPLLAの生分解性の脂肪族ポリエステルやその共重合体の70〜30重量%に対して、PBSの生分解性の脂肪族ポリエステルやその共重合体の30〜70重量%であることを特徴とする請求項5記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方法。
【請求項8】
前記充填剤は層状ケイ酸塩(クレイ)、合成マイカから選ばれる粘土微粒子、シリカ微粒子、又は籠状シリカから選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の
充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方法。
【請求項9】
前記充填剤は層状ケイ酸塩(クレイ)であることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方法。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマー及びそ
れらのブレンド物の溶融混練方法により得られる共連続構造としてメゾスコピックレベルで自在に制御された組成物であることを特徴とする溶融混練物。
【請求項11】
請求項1から9記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの溶融混練方
法に引き続き成形加工することを特徴とする充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラス
トマーの成形加工方法。
【請求項12】
前記充填剤は樹脂又は樹脂ブレンド物100重量%に対して、0.01−30重量%であることを特徴とする請求項11記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラスト
マーの成形加工方法。
【請求項13】
前記充填剤は層状ケイ酸塩(クレイ)、合成マイカから選ばれる粘土微粒子、球状または
籠状シリカ微粒子から選ばれるものであることを特徴とする請求項11項記載の充填剤
並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの成形加工方法。
【請求項14】
前記充填剤が層状ケイ酸塩(クレイ)であることを特徴とする請求項11〜13記載の充填剤並びに非相溶性の樹脂若しくはエラストマーの成形加工方法。
【請求項15】
請求項11〜14いずれか記載の成形加工方法で得られることを特徴とする樹脂成形物。
【請求項16】
前記樹脂成形物は、ロッド、フィルム、シート、ファイバーのいずれか1つの形状であ
ることを特徴とする請求項15記載の樹脂成形物。
【請求項17】
前記樹脂成形物は、その微視的構造としてPLLA相並びにPBS相(若しくはPBSA相)とが互いに連続相(いわゆる共連続構造)を形成していることを特徴とする請求項15記載の樹脂成形物。
【請求項18】
前記樹脂成形物は、その微視的構造としてPLLA相並びにPBS相(若しくはPBSA相)とが共連続構造を形成しており、その後、一方の相を溶媒等により除去することによりメゾポーラス構造を形成することを特徴とする請求項15記載の樹脂成形物。
【請求項19】
前記樹脂成形物は、そのメゾポーラス構造のサイズは、クレイ添加量、せん断速度及びスクリュー回転数をパラメータとして得られ、0.3〜100μmの間で自在に制御できることを特徴とする請求項15記載の樹脂成形物。
【請求項20】
前記樹脂成形物は、そのメゾポーラス構造が生分解性樹脂により構成されていることを
特徴とする請求項15記載の樹脂成形物。
【請求項21】
請求項15〜20記載の樹脂成形物を用いた物質透過膜又は分離膜材料。
【請求項22】
請求項15〜20記載の樹脂成形物を用いた物質徐放材料。
【請求項23】
請求項15〜20記載の樹脂組成物を用いた細胞培養用支持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−29114(P2009−29114A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120781(P2008−120781)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年5月10日 社団法人 高分子学会発行の「高分子学会予稿集 56巻1号[2007]」に発表
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】