説明

充放電装置

【課題】電流制御ループを主体として制御することで、共振防止用の抵抗を不要とし、損失を減少させる。
【手段】PID増幅器34は、ハーフブリッジ出力電流Iと電流基準Iとを比較増幅し、PWM回路10に入力する。PWM回路10は、PID増幅器34の出力と、PWMキャリア発生器38の出力とを比較してPWM信号G,Gを発生させ、スイッチング素子11,12を駆動する。PID増幅器35は、ハーフブリッジ出力電流Iと、総合制御部28からの電流基準IとPID増幅器36の出力V36の和とを比較増幅する。PID増幅器35の出力は、PWM回路27において、PWMキャリア発生器38の出力と比較してPWM信号G,Gを発生させ、スイッチング素子23,24を駆動する。このスイッチング素子23,24の駆動により、バイアス電源となるコンデンサ19の電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池や電気二重層コンデンサなど(以下、請求項の記載を含めて被試験バッテリーと総称する。)に電流を流して、充電特性や放電特性を試験するための充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来このような装置としては、例えば特許文献1に示すようなものが知られている。特許文献1に記載されている技術では、図5に示すように交流電源1から交流電源回生形直流電源2を経由して低圧回生形直流電源50を構成し、この低圧回生形直流電源50の下流に本発明の属する充放電装置60が接続される。なお、特許文献1には充放電装置60の部分のみ記載されている。
【0003】
低圧回生形直流電源50は、スイッチング素子3とスイッチング素子4から成るハーフブリッジの出力側から、リアクトル5、電流検出器6及びコンデンサ7で構成したDC/DCコンバータの出力電圧を電圧検出器8で検出する。前記電流検出器6の出力と電圧検出器8の出力を制御増幅器9に入力し、この制御増幅器9の出力をPWM回路10を介してスイッチング素子3とスイッチング素子4に与えて、これらスイッチング素子3(G),4(G)を駆動する。
【0004】
充放電装置60は、第1のスイッチング素子11(G)と第2のスイッチング素子12(G)からなる第1のハーフブリッジと、第3のスイッチング素子23(G)と第4のスイッチング素子24(G)からなる第2のハーフブリッジを備える。これら2つのハーフブリッジの間には、リアクトル13及び電流検出器14を介して被試験バッテリー17が接続されている。被試験バッテリー17と前記2つのハーフブリッジに間には、リアクトル22及びバイアス電源となるコンデンサ19が接続されている。被試験バッテリー17の両端には、直列に接続された抵抗15とコンデンサ16が接続され、スイッチングに伴うリプル電流を被試験バッテリー17に流さないように工夫されている。
【0005】
前記リアクトル22の出力は、コンデンサ19に抵抗18を直列に接続することでフィルタ効果を持たせ、バイアス電源のリプル電圧を抑制している。充放電電流は、電流検出器14の出力と総合制御回路28から出力されている電流基準Iとを増幅器20で比較増幅し、PWM回路21に入力するPWM信号に変換する。PWM回路21は、このPWM信号をに基づいてスイッチング素子11,12(G,G)を駆動して被試験バッテリー17の電流を制御する。
【0006】
一方、この充放電装置には、バイアス電源が設けられている。このバイアス電源は、被試験バッテリー17の電圧が低下したときにもスイッチング素子を導通可能として被試験バッテリー17の試験を可能とするためのものであり、これにより被試験バッテリー17の電圧がゼロでも放電させることができる。この従来技術では、バイアス電源電圧は、電圧検出器25で検出した電圧と総合制御回路28から出力されている電圧基準Vとを比較増幅器26で比較増幅し、PWM制御回路27を介してスイッチング素子23,24(G,G)を駆動して制御する。
【0007】
このような構成の従来技術では、第2のハーフブリッジが低圧回生形直流電源50の出力端に接続された平滑コンデンサ7の直流電圧をパルスに変換して、所望の安定した電圧としてコンデンサ19の端子間に蓄積するので、バイアス用に別の電源を必要としない利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−20858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のような従来技術では、スイッチング素子11,12からリアクトル13及びコンデンサ16に至る出力回路がLC共振回路を構成しているので、スイッチング素子をこの回路に示すように電圧モードで駆動すると、出力に振動が発生する。そのため、抵抗15をコンデンサ16に直列に接続してダンピング効果を持たせている。しかし、充放電電流が大きい試験装置では、抵抗15の損失がかなり大きくなり省エネに反する。特に、最近の自動車用のバッテリーは、60〜300A程度で充放電テストを行うので、抵抗の損失もかなり大きくなる。
【0010】
同様に、バイアス電源用コンデンサ19の直列抵抗18も電圧モードで制御しているので、振動防止用であり省エネに反する。さらに、充電電流が被試験バッテリー17を通ってバイアス電源に流入するので、このエネルギーをリアクトル22→スイッチング素子23を介してDC電源に回生しており、この回路の抵抗損とスイッチング損がかなりの量となる。また、DC電源のリプル電流もバッテリー電流に比例するので、低電圧大電流の場合、低圧回生形直流電源50のコンデンサ7のリプル電流耐量を大幅に増やす必要があるなど、不都合が多い。
【0011】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。すなわち、本発明の目的は、被試験バッテリーにスイッチングに伴うリプル電流を流さないために、コンデンサ16に直列に接続された抵抗15や、バイアス電源用コンデンサ19に直列に接続された抵抗18を不要として、これら抵抗15,18に起因する損失やその他のスイッチングに起因する損失の低減を図り、省エネで小形で経済的な充放電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の充放電装置は、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子を直列にした第1のハーフブリッジと、第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子を直列にした第2のハーフブリッジと、各スイッチング素子のオン・オフを制御する制御回路を備え、前記第1のハーフブリッジの出力側には第1のリアクトルを介して充放電対象となる被試験バッテリーを接続し、前記第2のハーフブリッジの出力側には第2のリアクトルとコンデンサから成るバイアス電源を接続し、前記被試験バッテリーとバイアス電源を直列にしてなる。
【0013】
特に、本発明において、前記制御回路は、
(1) 第1のリアクトルの電流Iと電流基準I、及びPWMキャリア周波数に従って、第1のハーフブリッジの第1及び第2のスイッチング素子を制御するPWM回路、
(2) バイアス電源電圧Vと電圧基準Vに基づいて補正された電流基準V36を得る増幅器、
(3) この増幅器によって得られた補正された電流基準V36と前記第2のリアクトルの電流Iとに従って、第2のハーフブリッジの第3及び第4のスイッチング素子を制御するPWM回路、
を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電流制御ループを主体としてバイアス電源を制御しているので、共振防止用の抵抗が不要となり損失が減少する。また、バイアス電圧制御は、電流基準による電流制御を基準としながら、電流基準をバイアス電圧で補正する構成とすることにより、並列運転が容易である。更に、充放電電流のPWMキャリアとバイアス電源用のキャリア位相を180゜とした場合には、バイアス電源のリプルを減少させ装置を小型化することができる。
【0015】
また、ユニットを並列にする場合は、ユニット毎のPWMキャリアの周波数位相を調整することにより、電源リプルを著しく減少させコンデンサを小型にすることができる。バッテリーの電圧が高い場合にバイアス電源を不動作とすれば、損失を少なくして、より高効率な充放電装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1の構成を示す回路図。
【図2】実施例1の動作を示すタイミングチャート。
【図3】本発明の実施例2の構成を示す回路図。
【図4】本発明の実施例3の動作を示すタイミングチャート。
【図5】従来技術の一例を示す回路図。
【図6】従来の並列運転用の充放電装置の構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る充放電装置の実施例を図面を参照して説明する。各実施例で同一または類似の構成部分には、共通の符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0018】
[構成]
図1は、実施例1の構成を示す回路図である。図1において、図5に記載された低圧回生形直流電源50の制御回路である電圧検出器8、制御増幅器9、PWM回路10は、図示を省略している。
【0019】
実施例1の構成上の特徴は、被試験バッテリー17と並列に接続されたフィルタコンデンサ16には、図5の従来技術で接続されていた振動防止用抵抗が存在しないことである。また、従来技術においてバイアス電源となるコンデンサ19と直列に接続された抵抗18も存在しない。そのため、実施例1では、次のような構成を採用している。
【0020】
第1のハーフブリッジ出力電流Iを電流検出器31で検出し、PID増幅器34に入力する。PID増幅器34では、このハーフブリッジ出力電流Iと総合制御部28から出力される電流基準Iとを比較増幅し、PWM回路10に入力する。PWM回路10では、PID増幅器34の出力と、PWMキャリア発生器38の出力とを比較することにより、PWM信号G,Gを発生させ、第1のハーフブリッジのスイッチング素子11,12を駆動する。
【0021】
バイアス電源の第2のハーフブリッジ出力電流Iを電流検出器32で検出し、第2のPID増幅器35に入力する。第2のPID増幅器35では、このハーフブリッジ出力電流Iと、総合制御部28からの電流基準Iと第3のPID増幅器36の出力V36を加算器39にて加算した和(I+V36)とを比較増幅する。第2のPID増幅器35の出力は、PWM回路27において、PWMキャリア発生器38の反転出力と比較することにより、PWM信号G,Gを発生させ、第2のハーフブリッジのスイッチング素子23,24を駆動する。この場合、PWM回路27に入力するPWMキャリア周波数は、反転増幅器37で反転し、第1のハーフブリッジ用のPWM回路10と第2のハーフブリッジ用のPWM回路27は、180゜位相がシフトしたPWM制御を行う。
【0022】
バイアス用のコンデンサ19の電圧Vは、電圧検出器25で検出し、第3のPID増幅器36に入力する。第3のPID増幅器36では、総合制御回路28から出力される電圧基準Vとこのコンデンサ19の出力電圧Vを比較増幅し、その出力V36を加算器39により電流基準Iを補正する。
【0023】
被試験バッテリー17に流入する電流Iは、電流検出器14により高精度に計測し、総合制御部28に入力する。総合制御部28では、高精度に電流を制御するために、この被試験バッテリー17の流入電流Iにより電流基準Iを微調している。被試験バッテリー17の電圧Vは電圧検出器33で検出し、この被試験バッテリー17の出力電圧Vに基づいて、総合制御部28では充電停止や放電完了を判断し、電流基準Iをオン・オフ又は調整する。この電流基準Iは、前記のように第1のPID増幅器34に入力し、第1のハーフブリッジ出力電流Iと比較して、PWM回路10で制御しハーフブリッジ出力電流Iを調整する。
【0024】
[作用]
図1に示すように、実施例1では、第1のハーフブリッジチョッパ出力電流Iの制御は、PID増幅器34を使用することにより、電圧制御に比較して高速に動作する電流制御ループを構成している。そのため、コンデンサ16の電圧は電流の積分となり一次遅れとなるので、リアクトル13及びコンデンサ16から成るLC共振回路が振動する心配は無い。従って、従来のようにコンデンサ16に振動を抑制するための抵抗15を直列に入れる必要はない。これはバイアス電源のコンデンサ19についても同じことが言える。
【0025】
このように、充放電電流Iとバイアス電源の電流Iは、共に同じ電流基準IでPID制御されているので、基本的にはコンデンサ19の直流電流はゼロであり、バイアス電源電圧は変化しない。ただし、電流検出器等のドリフトなどにより、僅かにバイアス電圧Vが変動するので、実施例1では、第3のPID増幅器36により電圧基準Vとの誤差を増幅してV36とし、電流基準Iを微少に補正することにより、バイアス電源電圧を安定に保っている。
【0026】
また、実施例1では、コンデンサ19に流れるリプル電流を小さくして、コンデンサを小形にするため、第1のハーフブリッジとバイアス電源用の第2のハーフブリッジは、キャリア周波数を反転増幅器37で極性を反転して、位相を180゜シフトしたPWM信号を発生している。この様子を図2(a)〜(d)を参照しながら説明する。なお、図2(d)は、実施例1の等価回路図、(a)〜(c)は等価回路図における各部のキャリア周波数、スイッチング素子の駆動信号、及び充電電流の波形図である。
【0027】
図2(a)は、第1のハーフブリッジの素子の駆動信号G,Gと図2(d)の充電電流iの波形で、この波形のリプル分がコンデンサ19に流れる。第1のハーフブリッジと第2のハーフブリッジのキャリア周波数が同相の場合のiの波形を図2(b)に示す。iのリプルとiのリプルの位相が180゜異なっているので、コンデンサ19には大きなリプル電流が流れる。
【0028】
図2(c)は、キャリア周波数を180゜シフトした場合のiの波形を示す。V:V:V=3:2:1にした場合は理想的で有り、この場合、図2(c)に示すように、iとiのリプルの位相が合っているので、コンデンサ19にはリプル電流はまったく流れない。ただし、これは理想的な場合で、それ以外ではリプル電流は図2(c)の場合より増加するが、キャリア周波数が同一位相の場合よりも減少する。なお、実施例1ではキャリア周波数を180゜シフトしたが、キャリア周波数は同相で、PID増幅器の出力側を極性反転しても同様な効果が得られ、結果的にキャリア周波数を反転した場合と同位相のPWM信号が得られる。
【実施例2】
【0029】
次に、本発明の実施例2について説明する。前記図5に示した従来技術や、本発明の実施例1に示すような充放電装置の1台の最大容量は、一般には、5V60A程度である。そのため、さらに容量を増加する場合は、これら充放電器を複数台並列に接続することが考えられる
【0030】
図6は、1台の総合制御部28及び被試験バッテリー17に対して、従来の電圧制御主体の方式の充放電装置を複数台並列に接続したものである。この従来技術において、親機は、自分の第2のハーフブリッジを電圧制御する場合に、バイアス用のコンデンサ19の出力電圧Vと総合制御部28からの基準電圧VとをPID増幅器36で比較する。このPID増幅器36の出力を電流基準とし、親機側にスイッチ40を切替えて、第2のPID増幅器35において、ハーフブリッジ出力電流Iと第3のPID増幅器36の出力とを比較増幅することで、電圧制御及び電流制御を行う。
【0031】
子機は、スイッチ40を子機側に切り換えて、親機のPID増幅器36から電流基準をもらって、第2のPID増幅器35において、ハーフブリッジ出力電流Iと第3のPID増幅器36の出力とを比較増幅することで、電圧制御及び電流制御を行う。
【0032】
この従来技術では、親機のPID増幅器36から電流基準を、切替スイッチ40により親機と子機とで切り替えて使用することから、親機と子機間の電流バランスは非常に良好である。すなわち、被試験バッテリー17に対して、親機と子機のバイアス電源となるコンデンサが並列に接続されていても、両方のコンデンサ19のバランスが取れているため、バイアス電流が均等に流れる利点がある。しかし、この従来技術では、親機と子機間に配線が一本必要で、さらに切替スイッチが必要となる欠点がある。
【0033】
これに対して、本発明の実施例2では、図3に示すように、総合制御部28及び被試験バッテリー17に対して、図1の充放電装置を複数台並列に接続する。この実施例2では、個々の充放電装置に対する制御は、前記実施例1と同様に電流制御が主体で、電圧制御はこの電流基準を補正するように制御する。このため、親機、子機の区別がなく配線本数も少ない。
【0034】
この実施例2では、図6のように、親機と子機間に切替スイッチを設けることなく、複数の充放電装置を被試験バッテリー17に対して単に並列に接続することになる。その場合、各充放電装置のバイアス電源となるコンデンサ19は共通電源となることから、複数のコンデンサ19間のバランスが崩れると、一方のコンデンサ19からの電流のみが流れ、他方のコンデンサ19の電流が流れないこととなる。
【0035】
そこで、複数台の充放電装置間の電流バランスを良くするために、第3のPID増幅器36のゲインは無限でなく、PID増幅器36の出力V36に対し電圧が垂下する特性とする。例えば、出力V36が電流基準Iの5%程度で飽和し、この時のバイアス電源の電圧Vが5%〜10%変わるようなゲインとする。一般に、バイアス電源電圧Vの精度はシビアでなく、バッテリー放電がゼロ電圧まで可能なら十分であるので、電圧精度5%〜10%で十分である。
【0036】
このような構成の実施例2では、PID増幅器36の出力V36に対し電圧が垂下する特性としたため、並列運転する複数の充放電装置間で大幅な電流基準Iの補正が行われることがない。その結果、並列運転時の電流バランスが向上し、切替スイッチを設けなくても、一方のコンデンサ19からの電流のみが流れ、他方のコンデンサ19の電流が流れなくなるような問題は生じない。
【実施例3】
【0037】
次に、本発明の実施例3について説明する。この実施例3では、総合制御部28において、被試験バッテリー17の出力電圧Vまたはバイアス電源となるコンデンサ19の出力電圧Vの電圧を監視する。そして、この監視している電圧VまたはVが設定値よりも高い場合に、前記実施例1の総合制御部28から出力する電圧基準Vを制御し、バイアス電圧をゼロ電圧以下になるように、強制的に、第4のスイッチング素子24をオン、第3のスイッチング素子23をオフする。この場合、スイッチング素子23,24自体をオン・オフする以外に、スイッチング素子24のゲートを強制的にオンし、スイッチング素子23のゲートを強制的にオフとしても良い。
【0038】
この実施例3の作用を図4(a)〜(d)により説明する。なお、図4(d)は実施例3の等価回路図、図4(a)〜(c)はPWMキャリア周波数、各スイッチング素子11,24の駆動信号G,G、及び等価回路中の直流電源50からの母線電流iの関係を示すタイミングチャートである。
【0039】
図4(a)は、バイアス電源を常に制御している場合の直流母線の電流iを示す。母線電流iは、時刻t〜tの電流が第1のハーフブリッジチョッパを通って、コンデンサ19に流入する。一方、時刻t〜tの間にコンデンサ19のエネルギーが直流母線iの負極性で流出するする。そのため、通電幅が広く抵抗分の損失が増加することと、スイッチング素子23,24のスイッチング損失が発生することと合わせて、効率が低下する。
【0040】
実施例2では、バッテリー電圧Vが設定値よりも高い場合は、バイアス電圧は不要なので、バイアス電圧をゼロ電圧以下になるように制御する。すなわち、スイッチング素子24をオンのままにしてあるので、母線電流iの通電幅も狭くなり、その回生も無くなるので、高効率な充放電となる。しかも、被試験負荷がバッテリーの場合、電圧が低くなる(1〜1.5V以下)のは、極めて短時間である。この状態を図(b)に示す。
【0041】
この充放電装置を並列にして電流容量をアップする場合、PWMのキャリア周波数の位相を充放電装置ごとに変えると、母線電流iのリプルは図4(c)に示すように、少なくなる。図4(c)は、充放電装置を2台並列に接続した場合のリプルの状態を示す。その結果、直流電源50のリプル電流が減少し、コンデンサの容量を減量させることができるので、電源を小形にすることができると同時に、損失も減少させることができるので省エネとなり、効率が向上する。なお、4台の充放電装置を並列に接続する場合には、各充放電装置のPWMキャリア周波数に90°の位相差を持たせるとよりリプルを減少することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…交流電源
2…交流電源回生形直流電源
50…回生形交流電源
60…充放電装置
11,12…スイッチング素子
13,22…リアクトル
14…電流検出器
15,18…抵抗
17…被試験バッテリー
16,19…コンデンサ
23,24…スイッチング素子
21,27…PWM回路
20,26…増幅器
28…総合制御部
31,32…電流検出器
25,33…電圧検出器
34,35,36…PID増幅器
37…反転回路
38…PWMキャリア発生器
39…加算器
40…切替スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子を直列にした第1のハーフブリッジと、第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子を直列にした第2のハーフブリッジと、各スイッチング素子のオン・オフを制御する制御回路を備え、
前記第1のハーフブリッジの出力側には第1のリアクトルを介して充放電対象となる被試験バッテリーを接続し、前記第2のハーフブリッジの出力側には第2のリアクトルとコンデンサから成るバイアス電源を接続し、前記被試験バッテリーとバイアス電源を直列にしてなる充放電装置において、
前記制御回路は、
(1) 第1のリアクトルの電流Iと電流基準I、及びPWMキャリア周波数に従って、第1のハーフブリッジの第1及び第2のスイッチング素子を制御するPWM回路、
(2) バイアス電源電圧Vと電圧基準Vに基づいて補正された電流基準V36を得る増幅器、
(3) この増幅器によって得られた補正された電流基準V36と電流基準Iとの和と前記第2のリアクトルの電流Iとに従って、第2のハーフブリッジの第3及び第4のスイッチング素子を制御するPWM回路、
を備えていることを特徴とする充放電装置。
【請求項2】
前記補正された電流基準V36を得る増幅器は、電流補正に従って電圧が垂下する特性を有することを特徴とする請求項1に記載の充放電装置。
【請求項3】
被試験バッテリー電圧の検出器を備え、
この電圧検出器によって得られた電圧が設定値より高い場合は、前記電圧基準Vに従って第4のスイッチング素子をオン、第3のスイッチング素子をオフとして、スイッチング動作を停止状態とすることを特徴とする請求項1に記載の充放電装置。
【請求項4】
被試験バッテリー電圧の検出器を備え、
この電圧検出器によって得られた電圧が設定値より高い場合は、前記電圧基準Vに従って第4のスイッチング素子のゲートを強制的にオン、第3のスイッチング素子のゲートを強制的にオフとして、スイッチング動作を停止状態とすることを特徴とする請求項1に記載の充放電装置。
【請求項5】
第1及び第2のスイッチング素子のPWMキャリア周波数と、第3及び第4のスイッチング素子のPWMキャリア周波数の位相差を180゜としたことを特徴とする請求項1に記載の充放電装置。
【請求項6】
請求項1の充放電装置を被試験バッテリー及びバイアス電源に対して複数台並列に接続し、各装置におけるスイッチング素子のPWMキャリア周波数を、並列した請求項1の充放電装置間で位相差を持たせたことを特徴とする充放電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−24298(P2011−24298A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165240(P2009−165240)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】