説明

充電器の電流制御装置

【課題】交流電源から整流器を介して充電する充電器では、当該充電器の接続される交流電源の電源電圧が瞬時低下したとき充電回路に過電流現象が発生する。
【解決手段】バッテリー電流を検出する電流検出器を設け、この電流検出器で検出された検出電流Idetと電流設定器において予め設定された電流指令Irefの偏差信号を比例積分する電流アンプで増幅する電流制御部を設け、この電流制御部の出力信号に基づきパルス幅変換部を介して前記スイッチング素子をオン・オフ制御するよう

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器の電流制御装置に係わり、特にバッテリーフォークリフト等の電気車に搭載するバッテリー充電器の過電流を防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8はバッテリーフォークリフト等の電気車に搭載される充電器の回路構成を示したもので、ACは交流電源、RF1は第1の整流器で、ダイオードブリッジよりなって交流を直流に変換する。C1は交流電圧ACを全波整流し直流に変換した電圧を平滑するための平滑コンデンサ、TR1はインバータで、トランジスタやIGBTなどの半導体素子により構成されて直流を交流に変換する。CS1は電流検出器で、インバータTR1電流を検出してインバータを構成する半導体素子を過電流から保護するために用いられる。
【0003】
インバータTR1によって交流に変換された電力は、トランスTFを経て第2の整流器RF2により交流を直流に変換され、平滑リアクトルDCLと平滑コンデンサC2よりなる平滑回路を経てバッテリーBを充電する。バッテリーBには、スイッチング素子T1のオンオフ比を変えることで定電圧、定電流制御される。
D2はフリーホイリングダイオードで、スイッチング素子T1がオフしたときリアクトルL1の電流をバッテリーBに戻すことでT1を過電圧から保護する。CS2はバッテリー電流を検出する電流検出器である。
【0004】
なお、図8のように、交流電源から整流器を介して所定の電圧と電流を取り出し、所定のタイミングでバッテリーに供給するものとしては、特許文献1が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−142381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、充電開始前の回路設定は、定電流制御での充電に対応していることから、充電開始前の充電電流は0であり、PWC制御回路の出力が最大デューティ比で出力される状態下に有る。この状態で定電流制御からの充電を開始すると、充電開始直後に大きな突入電流が生じるといった問題点を解決するために、充電開始時点の突入充電電流のピーク値を低減し、充電開始直後の突入電流を防止する突入電流防止スイッチを設けたものである。
【0007】
しかし、交流電源から整流器を介して所定の定電圧,定電流を取り出して充電する充電器では、当該充電器の接続される交流電源と同一の交流電源に容量の大きな外部負荷が接続されている場合、その外部負荷の電源投入時などで電源電圧が瞬時低下したとき充電回路に過電流現象が発生する。
【0008】
本発明が目的とするとこは、充電器の外部要因による過電流を防止する充電器の電流制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は、直流に変換された交流電圧をインバータにて交流電圧に変換し、変換された交流電圧を整流器にて直流に変換して平滑回路で平滑し、スイッチング素子で制御しながらバッテリーの充電電圧と充電電流を制御する充電器において、
前記平滑回路の検出電圧Vdetと予め設定された電圧指令Vrefの偏差信号を比例積分の電圧アンプで増幅し、この増幅された信号に基づきPWM制御部を介して前記インバータの出力電圧を制御すると共に、前記バッテリー電流を検出する電流検出器を設け、この電流検出器で検出された検出電流Idetと電流設定器において予め設定された電流指令Irefの偏差信号を電流アンプで増幅する電流制御部を設け、この電流制御部の出力信号に基づきパルス幅変換部を介して前記スイッチング素子をオン・オフ制御するよう構成したことを特徴としたものである。
【0010】
本発明の請求項2は、前記電流制御部は、前記電流検出器により検出された検出電流Idetを入力して平均電流Iavを算出する平均化部と、前記バッテリー電流の増・減の変化率をそれぞれ予め設定する変化率設定部と、前記平均電流Iavと前記電流設定部で設定された電流値と比較し、平均電流Iavが電流設定値より大の時には平均電流Iavと前記変化率設定部で設定された電流値との差信号を電流指令Irefとし、平均電流Iavが電流設定値より小の時には平均電流Iavと前記変化率設定部で設定された電流値との和信号を電流指令Irefとする比較手段よりなる設定電流切換部を備えたことを特徴としたものである。
【0011】
本発明の請求項3は、前記電流制御部は、前記検出電流Idetと電流指令Irefの偏差信号を入力し、入力された差信号極性により出力信号の極性切換機能を有する電流アンプと、電流アンプの出力側に接続される変化率設定部と、前記電流検出器により検出された検出電流Idetを入力して平均電流Iavを算出する平均化部と、平均電流Iavと前記変化率設定部の出力の和信号を前記パルス幅変換部に出力するよう構成したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、外部負荷の電源投入時などで電源電圧が瞬時低下したとき充電回路に発生する過電流現象は抑制されるものである。また、制御回路自体はインバータやスイッチング素子を直接制御するため、特許文献1のようにフィードバック信号を変換するフォトカプラや検出回路などが不要となり、小型化が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例を示す充電器の制御装置の構成図。
【図2】本発明による瞬時電圧低下時の電圧・電流のタイムチャート。
【図3】本発明の他の実施例を示す充電器の制御装置の構成図。
【図4】本発明の電流制御部の構成図。
【図5】電流制御部動作のフローチャート。
【図6】本発明による瞬時電圧低下時の電圧・電流のタイムチャート。
【図7】本発明の他の実施例による電流制御部の構成図。
【図8】従来の充電器の制御装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の第1の実施例を示す構成図を示したもので、図8と同一若しくは相当する部分に同一符号を付して説明を省略する。1は電圧制御部で、電圧設定部11、比例アンプ12、及び電圧アンプ13を有している。2は電流制御部で、電流設定部21、比例アンプ22、及び電流アンプ23を有している。3はパルス幅変換部である。
【0015】
電圧設定部11において電圧指令Vrefとして設定する。また、平滑コンデンサC2の検出電圧Vc2は、比例アンプ12で所定値に増幅された後、Vdetとして減算部14に出力される。減算部14では設定電圧Vrefと検出電圧Vdetの差演算が実行され、算出された差信号は比例積分の電圧アンプ13を介してPWM制御部4に出力され、差信号が0となるようインバータTR1が制御される。
【0016】
一方、電流検出器CS2によって検出されたバッテリー電流Id2は、比例アンプ22を介して検出電流Idetが減算部24に出力され、電流設定部21により設定された電流指令Irefとの差信号が求められる。差信号は比例積分の電流アンプ23を通ってパルス幅変換部3に出力され、このパルス幅変換部3により差信号が0となるようスイッチング素子T1のオン・オフの比率制御が実行される。
【0017】
図2は本発明のタイムチャートを示したもので、外部要因により時刻t1で瞬時電圧低下が発生し、時刻t2で復帰したとすると、平滑コンデンサC1,C2の電圧Vc1,Vc2も低下する。これに伴い、電圧制御部1の減算部14では電圧指令Vrefと検出電圧Vdetの差信号が発生し、電圧アンプ13では瞬時電圧低下の復帰する時刻t2まで電圧を持ち上げるべく100%の電圧を出力し、PWM制御部4を介してインバータTR1を制御する。
電流制御部2では、時刻t1での瞬時電圧低下により電流アンプ23の出力電流は電流指令以下となることから100%に振り切れるが、バッテリー電流Id2は
バッテリーへの供給電圧がVc2<VBとなりバッテリー電圧VBより低くなるため、瞬時電圧低下が復帰する時刻t2以降までは流れない。
【0018】
したがって、この第1の実施例によれば、外部負荷の電源投入時などで電源電圧が瞬時低下したとき充電回路に発生する過電流現象は抑制されるものである。また、制御回路自体は、インバータTR1やスイッチング素子T1を直接制御するため特許文献1のようなフィードバック信号を変換するフォトカプラや検出回路などを不要とし、小型化が可能となるものである。
【0019】
図3は第2の実施例を示す構成図で、図1で示す第1の実施例との相違点は電流制御部2aで、図4のように構成される。第1の実施例では、瞬時電圧低下が復帰したとき、電圧アンプ13と電流アンプ23は100%の出力状態となっていることから最大電圧、最大電流を出力するよう作用する。このため、バッテリー電流Id2は、図2で示す時刻t3のように過電流現象が完全には抑制されずにオーバーシュートが発生している。第2の実施例は、このオーバーシュートを除去するものである。
【0020】
図4において、25は平均化部で、比例アンプ22を介して出力される検出電流Idetの平均値が移動平均手段などによって求められる。26は正方向の変化率設定部、27は負方向の変化率設定部で、各設定部26,27の設定電流は増減電流が100%充電電流の正又は負の変化率10%程度に設定されている。28,29は切換部で、切換部28は電流設定部21により設定された電流指令Iref>Iav+ΔIで端子a1(増側)に切換わり、電流指令Iref<Iav−ΔIで端子a2(減側)に切換わる。また、切換部29は電流指令Irefに対して充電電流の平均値Iavが±ΔI以内とのきに端子b2側に切換る。そして、これら25〜29によって設定電流切換部が構成される。
【0021】
図5は設定電流切換部の動作フローを示したもので、バッテリー電流Id2は、比例アンプ22に所定値に増幅されて検出電流値Idetとなって平均化部25に入力される。平均化部25では、ステップS1おいて平均値Iavに変換され、ステップS2で平均値Iavと電流設定部21により設定された電流設定値と比較し、電流設定値との差が変化率設定値±ΔIより大きいか否かが比較される。ここで、|Iav−Iref|>±ΔIを超えたときには、ステップS3で切換部28をオンし、更にステップS4でIav−Iref>0か否かが判断される。この結果、平均値Iavが電流設定値より大きいときにはステップS5でIav−ΔIを電流指令Irefとして出力する。また、平均値Iavが電流指令Irefより小さいときにはステップS6でIav+ΔIを電流指令Irefとして出力する。
一方、ステップS2で、平均値Iavと電流設定値の差が変化率設定値±ΔIより少ない場合には切換部28,29をオフ(ステップS7)とし、S8で電流設定部21での設定値を電流指令Irefとする。
【0022】
図6は第2実施例のタイムチャートを示したもので、瞬時電圧低下が復帰した時刻t2後のt3で、電流指令IrefはIav+ΔIとなることから、バッテリー電流Id2が急増したときには直ちにIdet>Irefとなるため、電流アンプ23は電流増加を絞り始めるので電流増加が制限され、バッテリー電流Id2は過電流となることなく充電が継続される。
【0023】
したがって、この実施例によれば、瞬時電圧低下の復帰時におけるバッテリー電流Id2の増加は実施例1よりもより抑制され、外部要因に基づく過電流防止が可能となるものである。他は実施例1と同様である。
【0024】
図7は第3の実施例を示す電流制御部2bの構成図で、他は図3と同様である。30は変化率設定部で電流アンプ23の出力側に接続され、その出力±ΔIは加算部31で平均値Iavと加算された後、パルス幅変換部3に入力される。
図7の動作について説明する。
検出されたバッテリー電流Id2は、比例アンプ22に所定値に増幅されて検出電流値Idetとなって減算部24に出力されて電流指令Irefとの差演算が実行さ
れ、その差信号は電流アンプ23に入力される。電流アンプ23は、入力される差信号の極性により出力信号の極性を変える切換スイッチの機能を有し、検出電流値Idetが電流指令Irefよりも大きくなったときに電流アンプ23の出力は負となり、検出電流値Idetが電流指令Irefよりも小さくなったときに電流アンプ23の出力は正となる。したがって、電流アンプ23の出力が負の場合には、変化率設定部30で予め設定された変化率信号ΔIは負となり、パルス幅変換部3に入力され信号はIav−ΔIとなる。また、電流アンプ23の出力が正の場合には、変化率信号ΔIは正となり、パルス幅変換部3に入力され信号はIav+ΔIとなる。
【0025】
この実施例によれば、検出電流値Idetが急に大きく変化しても、パルス幅変換部3に入力され信号は±ΔI以下の変化となるため、バッテリー電流Id2の過電流は防止され、実施例2と同様の効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0026】
1… 電圧制御部
2… 電流制御部
3… パルス幅変換部
4… PWM制御部
11… 電圧設定部
12、22… 比例アンプ
13… 電圧アンプ
21… 電流設定部
23… 電圧アンプ
25… 平均化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流に変換された交流電圧をインバータにて交流電圧に変換し、変換された交流電圧を整流器にて直流に変換して平滑回路で平滑し、スイッチング素子で制御しながらバッテリーの充電電圧と充電電流を制御する充電器において、
前記平滑回路の検出電圧Vdetと予め設定された電圧指令Vrefの偏差信号を比例積分の電圧アンプで増幅し、この増幅された信号に基づきPWM制御部を介して前記インバータの出力電圧を制御すると共に、前記バッテリー電流を検出する電流検出器を設け、この電流検出器で検出された検出電流Idetと電流設定器において予め設定された電流指令Irefの偏差信号を電流アンプで増幅する電流制御部を設け、この電流制御部の出力信号に基づきパルス幅変換部を介して前記スイッチング素子をオン・オフ制御するよう構成したことを特徴とした充電器の電流制御装置。
【請求項2】
前記電流制御部は、前記電流検出器により検出された検出電流Idetを入力して平均電流Iavを算出する平均化部と、前記バッテリー電流の増・減の変化率をそれぞれ予め設定する変化率設定部と、前記平均電流Iavと前記電流設定部で設定された電流値と比較し、平均電流Iavが電流設定値より大の時には平均電流Iavと前記変化率設定部で設定された電流値との差信号を電流指令Irefとし、、平均電流Iavが電流設定値より小の時には平均電流Iavと前記変化率設定部で設定された電流値との和信号を電流指令Irefとする比較手段よりなる設定電流切換部を備えたことを特徴とした請求項1記載の充電器の電流制御装置。
【請求項3】
前記電流制御部は、前記検出電流Idetと電流指令Irefの偏差信号を入力し、入力された差信号極性により出力信号の極性切換機能を有する電流アンプと、電流アンプの出力側に接続される変化率設定部と、前記電流検出器により検出された検出電流Idetを入力して平均電流Iavを算出する平均化部と、平均電流Iavと前記変化率設定部の出力の和信号を前記パルス幅変換部に出力するよう構成したことを特徴とした請求項1記載の充電器の電流制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−100374(P2012−100374A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243618(P2010−243618)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】