説明

充電装置

【課題】充電装置において、セキュリティ性を向上させることにある。
【解決手段】充電装置30に複数の充電ケーブル41〜43が設けられる構成においても、正規の車両10に対してのみ充電を行うことができる。具体的には、正規の電子キー20を携帯するユーザは特定の給電プラグ41aを車両に接続する。このとき、特定の給電プラグ41aの送信アンテナ38aから電子キー20に要求信号が送信される。電子キー20は、受信した要求信号に対して応答信号を送信する。充電側制御部31は、受信した応答信号に含まれるIDコードの妥当性を確認したとき、特定の給電プラグ41aにのみ給電可能とし、特定の給電プラグ41a以外のその他の給電プラグ42a,43aへの給電を行わない。これにより、その他の給電プラグ42a,43aを利用した正規の電子キー20を携帯しない者による不正な充電が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載バッテリへ電力を供給する充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力により走行可能とされる電気自動車やハイブリッドカーが注目されている。これら車両は、車載バッテリを備え、車外に設けられる充電スタンド等の外部電源から充電ケーブルを介して同車載バッテリに電力が供給される。具体的には、充電ケーブルは、その一端が充電スタンドの本体に連結されるとともに、その他端には給電プラグが設けられている。この給電プラグが車両の外側面等に設けられるインレット(充電口)に接続されることで、充電スタンド及び車両は導通状態となる。この状態において、充電ケーブルを介して充電スタンドの本体からの電力を車載バッテリに充電することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、一般的に充電スタンドは、屋外に設けられるところ、同充電スタンドを通じて第三者により不正にその者の車両への充電が行われるおそれがある。このような不正の充電に対して、種々の対策が講じられている。例えば、特許文献2に示す構成においては、充電スタンドに正規の電子キーに関する情報を登録しておく。そして、電子キーと充電装置との間での無線信号を通じた認証が成立したときにのみ、充電装置から車両への充電を許可している。これにより、電子キーを携帯しない者による不正の充電が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−161898号公報
【特許文献2】特開2007−252016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、充電スタンドは、集合住宅や契約駐車場に設けられることを考慮して、複数の正規ユーザの車両への充電が可能とされる構成が検討されている。具体的には、単一の充電装置の本体に複数の充電ケーブルが設けられる。そして、充電装置において電子キーの認証が成立したとき、車両への充電が許可されて各充電ケーブルを通じた充電が可能となる。すなわち、正規の電子キーを携帯するユーザが充電を行う際には、充電装置において車両への充電が許可された状態となるため、任意の充電ケーブルを通じて車両への充電が可能となる。しかし、この状態においては、他の充電ケーブルを通じた充電も可能となる。従って、正規の電子キーを携帯しない者によって不正に充電が行われるおそれがあった。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セキュリティ性を向上させた充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、複数の充電ケーブルの先端にそれぞれ設けられた給電プラグを介して複数の車両に接続可能とされ、各充電ケーブルを介して各車両に電力を供給することにより各車載バッテリの充電を行う充電装置において、各給電プラグに設けられる送信アンテナを通じて要求信号を送信するとともに、特定の給電プラグの送信アンテナから送信される要求信号に応じて、ユーザに携帯される携帯機から送信される応答信号に含まれるIDコードの妥当性が確認されたとき、同特定の給電プラグにのみ給電可能とする制御装置を備えたことをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、充電装置に複数の充電ケーブルが設けられる構成においても、正規の車両に対してのみ充電を行うことができる。具体的には、正規の携帯機を携帯するユーザは特定の給電プラグを車両に接続する。特定の給電プラグの送信アンテナは、携帯機に要求信号を送信する。携帯機は、受信した要求信号に対してIDコードを含む応答信号を送信する。制御装置は、受信した応答信号に含まれるIDコードの妥当性を確認したとき、特定の給電プラグにのみ給電可能とし、特定の給電プラグ以外のその他の給電プラグへの給電を行わない。これにより、その他の給電プラグを利用した正規の携帯機を携帯しない者による不正な充電が規制される。従って、複数の給電プラグが利用される環境下においてもセキュリティ性を維持することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の充電装置において、前記給電プラグの前記車両への接続の有無を検知する検知センサを備え、前記制御装置は、前記検知センサを通じて前記車両に特定の給電プラグが接続されたことを認識したとき、同特定の給電プラグの送信アンテナを介して要求信号を送信することをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、給電プラグが車両に接続されたとき、その給電プラグの送信アンテナを介して要求信号が送信される。ここで、ユーザは、給電プラグを車両に接続するとき、その給電プラグを把持している。よって、ユーザが携帯する携帯機は送信アンテナからの要求信号を確実に受信することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の充電装置において、前記車両は、前記送信アンテナを通じて送信される要求信号と同一種類の要求信号を同車両の周辺に送信するとともに、その要求信号に対する前記携帯機からの前記応答信号に含まれるIDコードの妥当性を確認したとき、車両ドアを解錠可能とすることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、携帯機は、充電装置のみならず車両からの要求信号に対しても応答信号を返信する。車両は、携帯機からの応答信号に含まれるIDコードの妥当性を確認すると車両ドアを解錠可能とする。すなわち、電子キーシステムを構成する携帯機に新たな構成を追加することなく、携帯機は充電装置との間で通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、充電装置において、セキュリティ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両、電子キー及び充電装置の構成図。
【図2】車両の上面図。
【図3】車両、充電装置、電子キーから送信される各種信号のタイミングチャート。
【図4】充電制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる充電装置を具体化した一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示すように、電気自動車である車両10は、駐車場に備え付けられる充電装置30により充電が行われる。充電装置30は、その本体から延出する第1〜第3の充電ケーブル41〜43を備え、それぞれの先端には第1〜第3の給電プラグ41a〜43aが設けられている。各給電プラグ41a〜43aは、車両10の外面に設けられる充電口10aに挿し込まれる。これにより、充電ケーブル41〜43を介して充電装置30及び車両10は導通状態となる。充電ケーブル41〜43は、電力線の他、後述する各給電プラグ41a〜43aに設けられる送信アンテナ38aやプラグ検出スイッチ32からの信号を充電装置30の本体側に送信する信号線を備え、それら線が束ねられて外周が樹脂にて被覆されてなる。
【0016】
車両10は、車両側制御部11と、充電回路12と、バッテリユニット13と、モータ14とを備える。図1においては、第1の充電ケーブル41が車両10の充電口10aに挿し込まれている。充電回路12は、充電ケーブル41を通じて車両10に供給される交流電力を直流電力に変換して、その直流電力をバッテリユニット13に供給する。これにより、バッテリユニット13は充電される。車両側制御部11は、充電回路12を通じてバッテリユニット13への充電電力に係る制御を行う。また、車両側制御部11は、バッテリユニット13を通じて、モータ14への電力供給を制御する。モータ14に電力が供給されることで、モータ14の出力軸を介して駆動輪が駆動される。これにより、車両10は走行可能となる。また、バッテリユニット13は、バッテリ電圧を検出する電圧センサ13aを備え、同電圧センサ13aの検出結果は車両側制御部11に出力される。車両側制御部11は、電圧センサ13aの検出結果に基づきバッテリユニット13の蓄電量を認識する。
【0017】
また、車両側制御部11は、不揮発性のメモリ11aを備え、同メモリ11aには車両10に個別に設定されたキーIDコード、車両に固有のビークルIDコード等が記憶されている。
【0018】
車両10には、ユーザに携帯される電子キー20との間での通信を通じて車両ドアの施解錠が可能とされる電子キーシステムが搭載されている。すなわち、車両10は、送信回路18と、送信アンテナ18aと、受信アンテナ17aと、受信回路17と、ドアロック装置16と、ドアハンドルスイッチ19とを備えている。送信回路18は、車両側制御部11から入力される要求信号を所定周波数の電波に変調する。本実施形態では所定周波数は、LF(Low Frequency)帯の周波数である。送信アンテナ18aは、送信回路18により変調された要求信号を車両周辺に送信する。
【0019】
図2に示すように、送信回路18及び送信アンテナ18aは、車両ドアのドアハンドルに内蔵されている。要求信号は、車両10上方からみて、ドアハンドルを中心として車外側に半円状に設定される通信エリア50に送信される。また、各ドアハンドルには、ドアハンドルスイッチ19が設けられている。図1に示すように、ドアハンドルスイッチ19が操作されると、その旨の操作信号が車両側制御部11に出力される。
【0020】
ここで、図1の右下に示すように、電子キー20は、キー側制御部21と、送信回路28と、送信アンテナ28aと、受信アンテナ27aと、受信回路27とを備えている。キー側制御部21は、不揮発性のメモリ21aを備え、このメモリ21aには車両10のメモリ11aに記憶されるコードと同一のキーIDコード及びビークルIDコード等が記憶されている。受信アンテナ27aは、車両10から送信されてくる要求信号を受信する。受信回路27は、受信アンテナ27aにより受信された要求信号を復調して、この復調された要求信号をキー側制御部21に出力する。
【0021】
キー側制御部21は、受信回路27から要求信号が入力された旨認識したとき、メモリ21aに記憶されるキーIDコードを含む応答信号を生成するとともに、その応答信号を送信回路28に出力する。送信回路28は、キー側制御部21から入力された応答信号を所定周波数の電波に変調する。本実施形態では所定周波数はRF(Radio Frequency)帯の周波数である。送信アンテナ28aは、送信回路28により変調された応答信号を送信する。
【0022】
車両10の受信アンテナ17aは、電子キー20からの応答信号を受信する。受信回路17は、受信アンテナ17aを通じて受信された応答信号を復調して、この復調された応答信号を車両側制御部11に出力する。
【0023】
車両側制御部11は、入力された応答信号を認識し、同応答信号に含まれているキーIDコードと、メモリ11aに記憶されるキーIDコードとの照合を行う。車両側制御部11は、キーIDコードの照合が成立したとき、解錠許可状態となる。車両側制御部11は、解錠許可状態において、ドアハンドルスイッチ19が操作された旨の操作信号を受けると、ドアロック装置16を介して車両ドアを解錠する。
【0024】
ここで、正確には要求信号及び応答信号は、それぞれ単一の信号ではなく、複数の信号からなる。すなわち、要求信号は、図3の上段に示すように、ウェイク信号Swkと、ビークルID信号Sveと、チャレンジ信号Sccとからなる。また、応答信号は、図3の下段に示すように、アック信号Sacと、レスポンス信号Sreとからなる。
【0025】
車両10は、図3の上段に示すように、通信エリア50に電子キー20が存在するか否かを確認すべく、送信アンテナ18aからウェイク信号Swkを断続的に発信させる。このウェイク信号Swkは、待機状態にある電子キー20を起動状態とする指令信号であって、一定の時間間隔をおいて送信アンテナ18aから繰り返し発信される。
【0026】
電子キー20は、通信エリア50に進入してウェイク信号Swkを受信すると、待機状態から起動状態に動作状態が切り換わる。電子キー20は、図3の下段に示すように、正常に起動状態をとると、その旨を通知すべく車両10に向けてアック信号Sacを送信する。
【0027】
車両10は、アック信号Sacを受信すると、電子キー20が通信エリア50に存在すると判断する。そして、車両10は、車両を特定するビークルIDコードを含むビークルID信号Sveを送信する。
【0028】
電子キー20は、ビークルID信号Sveを受信すると、同ビークルID信号Sveに含まれるビークルIDコードの照合を行う(ビークルID照合)。具体的には、キー側制御部21は、ビークルID信号Sveに含まれるビークルIDコードと、メモリ21aに記憶されるビークルIDコードとの照合を通じて車両10が正規の車両であるか否かの判定を行う。キー側制御部21は、ビークルID照合が成立したとき正規の車両である旨判断し、ビークルID照合が成立しないとき正規の車両でない旨判断する。このように、ビークルID照合を行うことで、電子キー20の周囲に複数の車両が存在して、同複数の車両から要求信号を受信する状況になっても、電子キー20は自身に対応する正規車両のみとビークルID信号Sveの受信以降の通信を行うことができる。
【0029】
すなわち、電子キー20は、図3の下段に示すように、ビークルID照合が成立した事を認識すると、その旨を通知すべく車両10に向けてアック信号Sacを返信する。
車両10は、ビークルID信号Sveを発信した後に正常にアック信号Sacを受信すると、電子キー20においてビークルID照合が成立したと認識し、通信エリア50内に存在する電子キー20が自身とペアをなすものであると認識する。
【0030】
車両10は、ビークルID照合が成立したことを認識すると、次にチャレンジ信号Sccを送信する。チャレンジ信号Sccは、乱数として用いるチャレンジコードと、車両10に登録された電子キー20のキー番号とからなる。
【0031】
電子キー20は、車両10からチャレンジ信号Sccを受信すると、この時に受け付けたキー番号と自身に登録されたキー番号とを照らし合わせて番号照合を行い、自身が通信対象であるか否かを判断する。なお、この番号照合は、通信相手の電子キー20についてマスター又はサブのキー種を判定する照合である。
【0032】
この番号照合が成立した電子キー20は、自身のメモリ11aに記憶されたキーIDコードとレスポンスコードとを含ませたレスポンス信号Sreを車両10に送信する。レスポンスコードは、チャレンジコードを、暗号鍵を用いて暗号化したコードである。
【0033】
車両10は、レスポンス信号Sreを受信すると、レスポンス照合及びキーID照合を行う。具体的には、車両側制御部11は、チャレンジ信号Sccを発信する際、自身が持つ暗号鍵によってチャレンジコードを暗号化することにより、自らもレスポンスコードを生成する。そして、車両側制御部11は、電子キー20からレスポンス信号Sreを受信すると、レスポンス信号Sreのレスポンスコードと、自身が演算したレスポンスコードとの照合を行う(レスポンス照合)。車両10は、このレスポンス照合が成立することを確認すると、レスポンス信号Sreに含まれるキーIDコードと、メモリ11aに記憶されるキーIDコードとの照合を行う(キーID照合)。
【0034】
そして、車両10は、レスポンス照合及びキーIDコード照合が成立することを確認すると、これを以てID照合が成立したとして処理する。ID照合が成立した場合には、車両側制御部11は、解錠許可状態となる。車両側制御部11は、解錠許可状態において、ドアハンドルスイッチ19が操作された旨の操作信号を受けると、ドアロック装置16を介して車両ドアを解錠する。
【0035】
次に、充電装置30の構成について説明する。充電装置30及び電子キー20間では、上述した車両10及び電子キー20間での通信とほぼ同様の通信が行われる。
充電装置30は、上記給電プラグ41a〜43aを備える充電ケーブル41〜43に加えて、充電側制御部31と、プラグ検出スイッチ32と、受信回路37と、受信アンテナ37aと、送信回路38と、送信アンテナ38aと、スイッチ回路39とを備える。プラグ検出スイッチ32、送信アンテナ38aは各給電プラグ41a〜43aに設けられ、その他は充電装置30の本体に設けられる。
【0036】
充電側制御部31は、メモリ31aを備え、同メモリ31aには、車両10のメモリ11aに記憶されるコードと同一のキーIDコード及びビークルIDコード、並びに充電制御プログラム等が記憶されている。
【0037】
スイッチ回路39は、商用電源2から各充電ケーブル41〜43への電力供給を許可又は遮断する。スイッチ回路39は、同時に複数の充電ケーブルへの電力供給を許可することもできる。また、各プラグ検出スイッチ32は、各給電プラグ41a〜43aの充電口10aへの挿し込みを検出する。プラグ検出スイッチ32の検出結果は、充電ケーブル41〜43の信号線を介して充電側制御部31に出力される。なお、図1においては、プラグ検出スイッチ32及び充電側制御部31間の信号線は省略されている。
【0038】
充電側制御部31は、プラグ検出スイッチ32を通じて給電プラグ41a〜43aが充電口10aに挿し込まれたことを認識すると、受信回路37をスリープ状態から受信待機状態とするとともに、ウェイク信号Swkを生成して送信回路38に出力する。送信回路38は、充電側制御部31から入力されるウェイク信号SwkをLF帯の電波に変調して、その変調したウェイク信号Swkを充電ケーブル41〜43を通じて送信アンテナ38aに出力する。送信アンテナ38aは、給電プラグ41a〜43aを中心としてウェイク信号Swkを送信する。正確には、充電側制御部31は、プラグ検出スイッチ32を通じて充電口10aへの挿入が認識された給電プラグ41a〜43aに対応する送信アンテナ38aからウェイク信号Swkを送信する。図2に示される例においては、給電プラグ41aが充電口10aに挿入されている。このため、ウェイク信号Swkは給電プラグ41aを中心とした円形の通信エリア51に送信される。この通信エリア51は、給電プラグ41aを把持するユーザ、ひいては同ユーザが携帯する電子キー20を含むように設定される。
【0039】
通信エリア51に存在する電子キー20は、ウェイク信号Swkを受信する。電子キー20は、上述と同様に、ウェイク信号Swkに対してアック信号Sacを送信する。図2に示すように、電子キー20からのアック信号Sacは、LF帯に比べて信号到達距離が長いRF帯の電波であるため、通信エリア51外に存在する充電装置30の本体にまで到達する。従って、充電装置30の本体に設けられる受信アンテナ37aは電子キー20からのアック信号Sacを受信することができる。充電装置30の受信回路37は、受信アンテナ37aを介して受信したアック信号Sacを復調して、その復調したアック信号Sacを充電側制御部31に出力する。
【0040】
ここで、複数の給電プラグがそれぞれ車両に挿入されている場合、充電側制御部31は、それら給電プラグに対応する送信アンテナ38aから異なるタイミングでウェイク信号Swkを送信することで、何れの給電プラグの付近に電子キー20が存在するかを認識できる。例えば、第1の給電プラグ41a及び第2の給電プラグ42aがそれぞれ車両の充電口10aに挿入されている場合、第1の給電プラグ41a、第2の給電プラグ42aの順でそれぞれの送信アンテナ38aからウェイク信号Swkを繰り返し送信する。
【0041】
充電側制御部31は、アック信号Sacを受信したタイミングで何れの給電プラグ41a〜43aの付近に電子キー20が存在するかを認識する。また、充電側制御部31は、アック信号Sacの受信タイミングに基づき、車両10及び電子キー20間での通信に伴う電子キー20からのアック信号Sacであるか否かも判断する。すなわち、充電側制御部31は、ウェイク信号Swkを送信した直後に、アック信号Sacを受信した場合、自らが送信したウェイク信号Swkに対応するアック信号Sacであると認識する。充電側制御部31は、自らがウェイク信号Swkを送信した直後でないときアック信号Sacを受信した場合、車両10及び電子キー20間での通信に伴う電子キー20からのアック信号Sacである旨認識し、自身に関連する通信でないとして以降の処理を行わない。
【0042】
例えば、充電側制御部31は、第1の給電プラグ41aの送信アンテナ38aから送信されるウェイク信号Swkに対してアック信号Sacが返信された旨認識した場合、第1の給電プラグ41aの周辺に電子キー20が存在すると認識する。以降、上述した車両10及び電子キー20間での通信と同様にして、充電装置30及び電子キー20間でビークルID信号Sve、アック信号Sac、チャレンジ信号Scc及びレスポンス信号Sreのやり取りが行われる。そして、充電側制御部31は、受信したレスポンス信号Sreに基づきレスポンス照合及びキーID照合を行い、両照合が成立すると、スイッチ回路39を介して、周辺に電子キー20が存在する第1の給電プラグ41aにのみ給電を行う。これにより、第1の給電プラグ41aが接続された車両への充電が可能となる。図2に示す例では、第1の給電プラグ41aにのみ給電を行う。これにより、たとえ第2の給電プラグ42aが他車両に挿入されていても、その他車両に充電されることはない。なお、充電が開始された後、電子キー20が通信エリア51外となっても充電は継続される。
【0043】
充電側制御部31は、充電を行っていた第1の給電プラグ41aがプラグ検出スイッチ32を通じて充電口10aから引き抜かれた旨認識したとき、バッテリユニット13への充電が完了したと判断して、スイッチ回路39を通じて給電プラグ41aへの給電を遮断する。このとき、受信回路37が受信待機状態からスリープ状態に戻される。このように、第1の給電プラグ41aが充電口10aに挿入されている期間に限って、受信回路37を受信待機状態とすることで、充電装置30によって車両10及び電子キー20間の通信における応答信号を不用意に受信されることが抑制される。また、充電装置30の受信に係る消費電力を低減することができる。
【0044】
このスイッチ回路39における第1の給電プラグ41aへの給電が遮断された状態は、再度、充電装置30においてキーID照合及びレスポンス照合が成立しない限り継続される。従って、充電中に車両10の充電口10aに挿入された第1の給電プラグ41aが不正に引き抜かれて、他車両に挿入された場合であっても、ユーザが正規の電子キー20を携帯しない限り、他車両への充電が規制される。第2の給電プラグ42a及び第3の給電プラグ43aからのウェイク信号Swkに対するアック信号Sacが認識された場合も上記と同様である。
【0045】
メモリ31aには、複数の電子キーについてのキーIDコードと、その電子キーに対応する車両のビークルIDコードとが登録されている。例えば、充電装置30が集合住宅の駐車場に設置される場合、そのメモリ31aに住宅契約者の電子キー20のキーIDコードと、その電子キーに対応した車両のビークルIDコードとを登録する。ビークルIDコードが複数登録されている場合、充電装置30は、ウェイク信号Swkに対するアック信号Sacを受けた後、異なるビークルIDコードを含むビークルID信号Sveを連続的に送信する。そして、充電装置30は、特定のビークルID信号Sveに対するアック信号Sacが返信されたタイミングで通信対象となる電子キー20を認識する。
【0046】
次に、充電側制御部31が実行する充電制御プログラムについて説明する。当該プログラムは、図4のフローチャートに示される処理手順に従って実行される。当該プログラムは、プラグ検出スイッチ32を通じて給電プラグ41a〜43aの何れかの充電口10aへの挿込が認識されたとき開始される。このとき、スイッチ回路39を通じて各給電プラグ41a〜43aへの給電は遮断されている。
【0047】
まず、要求信号が送信される(S101)。そして、応答信号の受信の有無が判断される(S102)。応答信号の受信がない場合(S102でNO)、充電を開始することなく当該プログラムが終了される。これにより、電子キー20を携帯しないユーザによる充電を防止することができ、セキュリティ性を向上させることができる。
【0048】
応答信号、正確にはレスポンス信号の受信があった場合(S102でYES)、ID照合、すなわちキーID照合及びレスポンス照合が行われる(S103)。キーID照合及びレスポンス照合の少なくとも何れか一つが成立しない場合(S103でNO)、ユーザが携帯する電子キーは正規のものでないとして、充電を開始することなく当該プログラムが終了される。キーID照合及びレスポンス照合が成立する旨判断された場合(S103でYES)、スイッチ回路39を通じて当該プログラム開始時において充電口10aに挿入された給電プラグに電力を供給させることで充電を開始させる(S104)。これにより、正規の電子キー20を携帯するユーザによる充電が可能となる。また、このとき、正規の電子キー20から離れて位置する給電プラグを通じて充電することは依然として規制される。従って、正規の電子キー20を携帯するユーザが充電装置30付近に存在するのに便乗して、第三者が不正に充電を行うことが防止される。
【0049】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)充電装置30に複数の充電ケーブル41〜43が設けられる構成においても、正規の車両10に対してのみ充電を行うことができる。具体的には、正規の電子キー20を携帯するユーザは特定の給電プラグ41aを車両に接続する。このとき、特定の給電プラグ41aの送信アンテナ38aから電子キー20に要求信号が送信される。電子キー20は、受信した要求信号に対して応答信号を送信する。充電側制御部31は、受信した応答信号に含まれるIDコードの妥当性を確認したとき、特定の給電プラグ41aにのみ給電可能とし、特定の給電プラグ41a以外のその他の給電プラグ42a,43aへの給電を行わない。これにより、その他の給電プラグ42a,43aを利用した正規の電子キー20を携帯しない者による不正な充電が規制される。従って、複数の給電プラグが利用される環境下においてもセキュリティ性を維持することができる。
【0050】
(2)給電プラグ41a〜43aの何れかが車両10に接続されたことがプラグ検出スイッチ32を通じて認識されたとき、その給電プラグ41a〜43aの送信アンテナ38aを介して要求信号が送信される。ここで、ユーザは、給電プラグ41a〜43aを車両10に接続するとき、その給電プラグ41a〜43aを把持している。よって、ユーザが携帯する電子キー20は送信アンテナ38aからの要求信号を確実に受信することができる。
【0051】
また、送信アンテナ38aを給電プラグ41a〜43aに設けることで、給電プラグ41a〜43aを中心として形成される通信エリア51を小さく設定することができる。通信エリア51は、給電プラグ41a〜43aを把持するユーザを含むように設定されれば足りるからである。これにより、充電装置30は、給電プラグ41a〜43aを把持するユーザ以外の者が携帯する電子キー20と通信することが抑制される。
【0052】
(3)電子キー20は、充電装置30のみならず車両10からの要求信号に対しても応答信号を返信する。車両10は、電子キー20からの応答信号に含まれるIDコードの妥当性を確認すると車両ドアを解錠可能とする。すなわち、電子キーシステムを構成する電子キー20に新たな構成やプログラム等を追加することなく、電子キー20は充電装置30との間で通信を行うことができる。
【0053】
(4)給電プラグ41a〜43aは、地上に固定される充電装置30の本体に比べて、衝撃等が加わることが多い。よって、送信アンテナ38aのみを給電プラグに設け、送信回路38を充電装置30の本体に設けることで、衝撃等に伴う同送信回路38の不具合を抑制することができる。
【0054】
(5)近年、充電口に挿し込まれた給電プラグの充電中における不正な引き抜きを防止するロック構造が検討されている。本構成においても、給電プラグの挿し替えに伴う盗電を抑制できるものの、給電プラグを無理に引き抜くことやロック構造自体の破壊等により盗電されるおそれがある。その点、本例においては、正規の電子キー20を携帯しないユーザにより給電プラグが挿し込まれた場合であっても、そもそも給電プラグへの給電が行われないため、より確実に盗電を抑制できる。また、上記ロック構造を車両10に追加することなく、盗電を抑制できる。
【0055】
(6)充電装置30は、車両10と同様に電子キー20との間で通信を行う。よって、充電装置30は、車両10における電子キー20と通信を行う構成と同一の構成を備える。具体的には、充電装置30及び車両10では車両側制御部11及び充電側制御部31の一部、送信回路18,38、受信回路17,37等について共通の部品を使用できる。これにより、充電装置専用の部品を減らすことができ、充電装置30の製造に係るコストを低減することができる。また、充電装置30は、住宅ドアを施解錠する電子キーシステムにおける住宅側の装置と同一の部品を利用してもよい。
【0056】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、充電装置30には計3つの充電ケーブル41〜43が設けられていたが、充電ケーブルの数は2以上であればこれに限定されない。
【0057】
・上記実施形態においては、給電プラグ41a〜43aが充電口10aから引き抜かれたとき、給電プラグ41a〜43aへの給電が遮断されていた。しかし、給電プラグ41a〜43aへの給電を遮断するタイミングはこれに限らず、例えば、充電時間が一定時間を経過したときであってもよい。この場合、充電装置30はタイマを備え、同タイマを通じて充電開始から一定時間が経過したか否かの判断がされる。充電装置は、充電開始から一定時間が経過したとき給電プラグ41a〜43aへの給電を遮断する。
【0058】
・上記実施形態において、充電装置30は、電子キーシステムにおける電子キー及び車両間の通信と同様にして、電子キーとの間で通信を行っていた。しかし、充電装置30及び電子キー20間で電子キーシステムとは異なる種類の無線信号をやり取りしてもよい。この場合、電子キー20は、車両10からの要求信号と、充電装置30からの要求信号とを識別する。両要求信号に異なる情報を含ませることで両信号の識別が可能となる。電子キー20は、充電装置30からの要求信号に応じてIDコードを含む無線信号を返信する。この無線信号は、応答信号と異なる種類の信号である。充電装置30は、電子キーからのIDコードを含む無線信号に基づき、電子キー20が正規のものであるか否か判断する。本例においては、充電装置30にビークルIDコードを記憶させる必要がない。
【0059】
・上記実施形態においては、携帯機は車両との間で無線通信を行う電子キーであったが、充電装置30のみと通信を行って充電を可能とする専用の携帯機であってもよい。
・上記実施形態においては、充電装置30(給電プラグ41a〜43a)からの要求信号はLF帯の電波であって、電子キー20からの応答信号はRF帯の電波であった。しかし、充電装置30及び電子キー20間での通信が可能であれば、信号の周波数帯はこれらに限定されない。また、通信方式もこれに限定されない。例えば、携帯機を非接触式のICカードとして構成してもよい。この場合、給電プラグには、同ICカードに駆動電波を供給するとともに、同ICカードからの応答信号を受信するリーダが設けられる。ユーザは、ICカードを給電プラグに翳すことで、その給電プラグを通じた充電が可能となる。この場合、同ICカードを介して車両ドアの施解錠を可能としてもよい。
【0060】
・上記実施形態においては、充電装置30は、プラグ検出スイッチ32を通じて給電プラグ41a〜43aが充電口10aに挿入されたことを認識したとき、要求信号を送信していた。しかし、充電装置30は、充電中を除き、給電プラグから常に要求信号を送信してもよい。この場合、給電プラグ41a〜43aを挿入する前に充電装置30及び電子キー20間での通信を通じたID照合が行われる。よって、給電プラグの挿入後、迅速に充電を開始することができる。
【0061】
・上記実施形態においては、充電装置30は、プラグ検出スイッチ32を通じて給電プラグ41a〜43aが充電口10aに挿入されたことを認識していた。しかし、給電プラグ41a〜43aの挿入を認識できれば、プラグ検出スイッチ32を省略してもよい。この場合、例えば、スイッチ回路39に各充電ケーブル41〜43の導通状態を検出する電流センサを設ける。当該電流センサは、給電プラグ41a〜43aが充電口10aに挿入されたことを充電ケーブル41〜43の導通状態に基づき検出する。これにより、充電側制御部31は、電流センサを通じて給電プラグ41a〜43aの挿入を認識できる。また、充電側制御部31は、電流センサを通じて各充電ケーブル41〜43の導通状態が解除されることをもって給電プラグ41a〜43aの充電口10aからの引き抜きを認識することもできる。
【0062】
・上記実施形態においては、車両10は電気自動車であったが、ガソリン及び電気の双方で走行可能とされるハイブリッドカーであってもよい。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
【0063】
(イ)請求項2に記載の充電装置において、前記制御装置は、充電中において前記検知センサを通じて前記特定の給電プラグの接続が解除された旨認識したとき、前記特定の給電プラグへの電力供給を遮断する充電装置。
【0064】
同構成によれば、特定の給電プラグの接続が解除されたとき、同給電プラグへの電力供給が遮断される。従って、充電中に給電プラグが正規の車両から他車両に挿し替えられた場合においても、その周辺に正規の電子キーを携帯するユーザが存在しない限り、他車両への充電が行われることはない。
【0065】
(ロ)請求項1〜3、上記項(イ)の何れか一項に記載の充電装置において、
前記送信アンテナに変調した要求信号を送信する送信回路は充電装置の本体に設けられる充電装置。
【0066】
同構成によれば、送信アンテナのみを給電プラグに設け、送信回路を充電装置の本体に設けることで、衝撃等に伴う同送信回路の不具合を抑制することができる。
【符号の説明】
【0067】
10…車両、20…電子キー、30…充電装置、31…充電側制御部(制御装置)、32…プラグ検出スイッチ、38a…送信アンテナ、39…スイッチ回路、41〜43…充電ケーブル、41a〜43a…給電プラグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の充電ケーブルの先端にそれぞれ設けられた給電プラグを介して複数の車両に接続可能とされ、各充電ケーブルを介して各車両に電力を供給することにより各車載バッテリの充電を行う充電装置において、
各給電プラグに設けられる送信アンテナを通じて要求信号を送信するとともに、特定の給電プラグの送信アンテナから送信される要求信号に応じて、ユーザに携帯される携帯機から送信される応答信号に含まれるIDコードの妥当性が確認されたとき、同特定の給電プラグにのみ給電可能とする制御装置を備えた充電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の充電装置において、
前記給電プラグの前記車両への接続の有無を検知する検知センサを備え、
前記制御装置は、前記検知センサを通じて前記車両に特定の給電プラグが接続されたことを認識したとき、同特定の給電プラグの送信アンテナを介して要求信号を送信する充電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の充電装置において、
前記車両は、前記送信アンテナを通じて送信される要求信号と同一種類の要求信号を同車両の周辺に送信するとともに、その要求信号に対する前記携帯機からの前記応答信号に含まれるIDコードの妥当性を確認したとき、車両ドアを解錠可能とする充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−19624(P2012−19624A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155787(P2010−155787)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】