説明

光アシスト磁気ヘッド及びその製造方法と、偏向ミラーの製造方法

【課題】所望の結合効率を確保しながら調芯作業を簡略化することが可能な光アシスト磁気ヘッドを提供する。
【解決手段】一の面と、端面とを備え、ディスク状の記録媒体の回転に応じて、記録媒体に対して浮遊して相対移動するスライダと、一の面に固定され、所定の方向に光を出射する光源と、スライダに設けられ、所定方向に沿う厚み方向と、これに直交する幅方向の双方に直交する軸方向の一端に位置する光入射面で光源からの光を受け、軸方向の他端側に位置する記録媒体に向かって光を導く光導波路と、光源及び光入射面の双方に臨む位置に設けられ、幅方向に光学パワーPx、厚み方向に光学パワーPyをそれぞれ有し、光学パワーPxと光学パワーPyとがPx>Py≧0を満たし、光源からの光を光入射面に向けて反射及び集光させる反射面を備えた偏向ミラーと、を備えたことを特徴とする光アシスト磁気ヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光アシスト磁気ヘッドの技術に関し、特に、光源からの光をミラーにより偏向させて光導波路に導く構成を備えた光アシスト磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)に用いられる磁気記録方式は、記録密度を高くしようとすると磁気ビットの間隔が狭くなり、超常磁性効果等により極性が不安定になる。このため、高い保磁力を有する記録媒体が必要になるが、そのような記録媒体を使用すると記録時に必要な磁場も大きくなる。然るに、記録ヘッドによって発生する磁場は飽和磁束密度によって上限が決まるが、その値は材料限界に近付いており飛躍的な増大が望めないという実情がある。そこで、記録時局所的に加熱して磁気軟化を生じさせて、保磁力が小さくなった状態で記録し、その後、加熱を止めて自然冷却することにより、記録された磁気ビットの安定性を保証する記録方式が提案されている。この記録方式は熱アシスト磁気記録方式と呼ばれている。
【0003】
熱アシスト磁気記録方式では、記録媒体の加熱が瞬間的に行われることが望ましい。また、加熱する機構と、高速で回転する記録媒体とが接触することは許されない。そのため、加熱はレーザー光の微小スポットを記録媒体に照射して行われることが一般的であり、よって加熱に光を用いるこの方式は光アシスト磁気記録方式と呼ばれている。光アシスト磁気記録方式で超高密度記録を行う場合には、必要なスポット径は20nm程度になるが、通常の光学系では回折限界があるため、光をそこまで集光することはできない。そのため、入射光波長以下のサイズの光学的開口から発生する近接場光(「近視野光」と称する場合がある)を利用した光アシスト磁気ヘッドが使用される場合がある。光アシスト磁気記録方式の磁気ヘッドの大きさは小さいため、磁気ヘッドのスライダに設けられる光学部品も小さいサイズのものが要求され、実際には、数十μm〜数百μmのサイズのものが用いられる。
【0004】
光アシスト磁気ヘッドの例が特許文献1に開示されている。
【0005】
また、特許文献1に記載の光アシスト磁気ヘッドでは、表面反射型の偏向ミラーにより、半導体レーザー(LD:Laser Diode)から出射した光を90°偏向させて、光導波路に照射している。このような表面反射ミラーを用いることにより、LDをスライダに横置きすることが可能となり、ヘッドの薄型化が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−60408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光アシスト磁気ヘッドは、LD、光導波路、及び偏向ミラーが、設計された寸法通りに組み立てられた場合に、LDからの光が光導波路に導かれるように設計されている。この光導波路は、その厚みが数μm〜10μm、幅が数μm〜数百μmとミクロンオーダーである。そのため、このような厚みと幅を持つ光導波路に高い結合効率にて光を結合させるためには、照射スポット(以降では、単に「スポット」と呼ぶ)と光導波路の相対位置を正確にきめる必要がある。
【0008】
しかしながら、これらを組み立てる際に、各部の接合に用いられるハンダ等の寸法のばらつきにより、光源部からの光の光軸の位置に関して誤差が生じる場合がある。この誤差により、LD、光導波路、及び偏向ミラーの相対位置がずれて組み立てられた場合には結合効率の劣化が大きくなり、製品間の性能のばらつきが大きくなってしまうという問題がある。そのため、このような、相対位置のずれによる結合効率の劣化を防止するため調芯の作業が行われる。
【0009】
従来は、LDから光を照射し、この光を偏向ミラーで反射させ、光導波路から出射される光を測定しながら、この光のパワーが所定値以上となるように、LD、光導波路、及び偏向ミラーの位置を調整するアクティブ調芯が行われていた。しかしながら、アクティブ調芯を行う場合には、各ヘッドについてLDから光を照射し光導波路に導光させる必要がある。そのため、光アシスト磁気ヘッドを大量生産する場合には、生産コストが増大するという問題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、所望の結合効率を確保しながら調芯作業を簡略化することが可能な光アシスト磁気ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、一の面と、前記一の面の所定の方向の一端に設けられた端面とを備え、ディスク状の記録媒体の回転に応じて、前記記録媒体に対して浮遊して相対移動するスライダと、前記一の面に固定され、前記所定の方向に光を出射する光源と、前記スライダに設けられ、前記所定方向に沿う厚み方向と、これに直交する幅方向の双方に直交する軸方向の一端に位置する光入射面で前記光源からの光を受け、前記軸方向の他端側に位置する前記記録媒体に向かって前記光を導く光導波路と、前記光源及び前記光入射面の双方に臨む位置に設けられ、前記幅方向に光学パワーPx、前記厚み方向に光学パワーPyをそれぞれ有し、前記光学パワーPxと前記光学パワーPyとが以下に示す第1の条件を満たし、前記光源からの光を前記光入射面に向けて反射及び集光させる反射面を備えた偏向ミラーと、を備えたことを特徴とする光アシスト磁気ヘッドである。
[数1]

また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光アシスト磁気ヘッドであって、前記反射面は、前記厚み方向及び前記幅方向に前記第1の条件を満たす曲率を有する凹面であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の光アシスト磁気ヘッドであって、前記偏向ミラーは、前記光入射面の法線方向と略同一方向に臨む、前記反射面とは異なる面にマークを有し、前記スライダ、前記光源、及び前記光導波路の一体構造の所定の一部と前記マークとが所定の位置関係となるように、前記一体構造に前記偏向ミラーが固定されることで、前記反射面が前記位置に保持されることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の光アシスト磁気ヘッドであって、前記光入射面の前記厚み方向の長さをWy、前記光入射面における前記光の前記厚み方向のスポット径をLy、前記光源から前記所定方向に出射された光の光軸の前記軸方向の許容誤差をdz、前記光入射面に対する前記反射面の角度をθとしたとき、前記厚み方向のスポット径Lyが以下の条件を満たすように、前記反射面が前記位置に保持されていることを特徴とする。
[数2]

また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の光アシスト磁気ヘッドであって、前記光入射面の面積をSa、前記光入射面における前記光のスポットの面積をSb、前記光入射面と前記スポットとが重複する領域の面積をSa∩Sbとしたとき、前記光のスポットの面積Sbが以下の条件を満たすように、前記反射面が形成され前記位置に保持されていることを特徴とする。
[数3]

また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の光アシスト磁気ヘッドであって、前記光入射面の前記幅方向の長さをWx、前記光入射面における前記光の前記幅方向のスポット径をLx、前記光の照射位置の前記幅方向の許容誤差をdxとしたとき、前記幅方向のスポット径Lxが以下の条件を満たすように、前記反射面が形成され前記位置に保持されていることを特徴とする。
[数4]

また、請求項7に記載の発明は、一の面と、前記一の面の所定の方向の一端に設けられた端面とを備え、ディスク状の記録媒体の回転に応じて、前記記録媒体に対して浮遊して相対移動するスライダと、前記一の面に固定され、前記所定の方向に光を出射する光源と、前記スライダに設けられ、前記所定方向に沿う厚み方向と、これに直交する幅方向の双方に直交する軸方向の一端に位置する光入射面で前記光源からの光を受け、前記軸方向の他端側に位置する前記記録媒体に向かって前記光を導く光導波路と、の一体構造上に設けられ、前記光源及び前記光入射面の双方に臨む位置に設けられ、前記幅方向に所定の曲率を有し、前記光源からの光を前記光入射面に向けて反射させるとともに、前記幅方向に集光させる反射面を備えた偏向ミラーの製造方法であって、基板上に、直線状であり、かつ、断面がV状の溝を形成するV溝形成工程と、チューブ状の中空部材を、その内周面の上部が前記基板上に露出し、かつ、その軸方向が前記溝に沿うように、前記溝内に固定する中空部材固定工程と、前記中空部材の前記溝上に露出した部分を、前記軸方向に沿って研磨し、前記内周面の下部を露出させ、前記内周面を前記反射面として形成する反射面形成工程と、前記基板の前記反射面が露出した面に対して所定の角度を有し、前記軸方向と交わる面で、前記中空部材及び前記基板を切断する切断工程と、を備えたことを特徴とする偏向ミラーの製造方法である。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の光アシスト磁気ヘッドであって、一の面と、前記一の面の所定の方向の一端に設けられた端面とを備え、ディスク状の記録媒体の回転に応じて、前記記録媒体に対して浮遊して相対移動するスライダと、前記一の面に固定され、前記所定の方向に光を出射する光源と、前記スライダに設けられ、前記所定方向に沿う厚み方向と、これに直交する幅方向の双方に直交する軸方向の一端に位置する光入射面で前記光源からの光を受け、前記軸方向の他端側に位置する前記記録媒体に向かって前記光を導く光導波路と、前記光源及び前記光入射面の双方に臨む位置に設けられ、前記幅方向に所定の曲率を有し、前記光源からの光を前記光入射面に向けて反射させるとともに、前記幅方向に集光させる反射面を備えた偏向ミラーと、を備えた光アシスト磁気ヘッドの製造方法であって、基板上に、直線状であり、かつ、断面がV状の溝を形成するV溝形成工程と、チューブ状の中空部材を、その内周面の上部が前記基板上に露出し、かつ、その軸方向が前記溝に沿うように、前記溝内に固定する中空部材固定工程と、前記中空部材の前記溝上に露出した部分を、前記軸方向に沿って研磨し、前記内周面の下部を露出させ、前記内周面を前記反射面として形成する反射面形成工程と、前記基板の前記反射面が露出した面に対して所定の角度を有し、前記軸方向と交わる面で、前記中空部材及び前記基板を切断することで、前記偏向ミラーとして形成する切断工程と、前記スライダと、前記光源と、前記光導波路とを一体構造として形成する組み立て工程と、前記一体構造の所定の一部と前記切断により露出した前記溝とが所定の位置関係となるように前記偏向ミラーを固定する取り付け工程と、を備えたことを特徴とする光アシスト磁気ヘッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、光アシスト磁気ヘッドにおいては、幅方向の光学パワーPxと、厚み方向の光学パワーPyとが、[数1]に示された第1の条件を満たすように反射面が設計されている。このような構成とすることで、光入射面上において、厚み方向に沿った光源からの光の位置ズレが発生したとしても、この位置ズレを許容し、光源部からの光を光入射面に導くことが可能となる。これにより、厚み方向について位置合わせを行うことなく、所望の結合効率を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】情報記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2A】光アシスト磁気ヘッドの概略断面図である。
【図2B】光アシスト磁気ヘッドの偏向ミラー周辺の拡大断面図である。
【図3】偏向ミラーの周辺をz方向から見た平面図である。
【図4】光アシスト磁気ヘッドをy方向から見た側面図である
【図5】反射面の概略斜視図である。
【図6】xy平面内における光導波路入射面の寸法と照射スポットの寸法との関係を説明するための図である。
【図7】光アシスト磁気ヘッドの一態様を示した平面図である。
【図8A】第2の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図8B】第2の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図8C】第2の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図8D】第2の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図8E】第2の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図8F】第2の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図9A】第3の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図9B】第3の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図9C】第3の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図9D】第3の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図9E】第3の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図9F】第3の実施形態に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図10】偏向ミラーの一態様を示した拡大断面図である。
【図11A】変形例に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図11B】変形例に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図11C】変形例に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図11D】変形例に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図11E】変形例に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図11F】変形例に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図11G】変形例に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【図11H】変形例に係る偏向ミラーの製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、光アシスト式磁気記録ヘッドを搭載した光アシスト式磁気記録装置(例えばハードディスク装置、以下「情報記録装置」ともいう)の概略構成を示す。情報記録装置1は、例えば記録用の複数枚の回転可能なディスク(磁気記録媒体)3と、ヘッド支持部5と、トラッキング用アクチュエータ7と、光アシスト磁気ヘッド4と、図示しない駆動装置と、を筐体2内に備えている。なお、ディスク3は1枚であってもよい。ヘッド支持部5は、支軸6を支点として矢印Aの方向(トラッキング方向)に回動可能に設けられている。トラッキング用アクチュエータ7は、ヘッド支持部5に取り付けられている。光アシスト磁気ヘッド4は、ヘッド支持部5の先端に取り付けられている。図示しない駆動装置は、ディスク3を矢印Bの方向に回転させる。情報記録装置1は、光アシスト磁気ヘッド4がディスク3の上で浮上しながら相対的に移動しうるように構成されている。
【0015】
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態として、光アシスト磁気ヘッド4の構成について説明する。
【0016】
(光アシスト磁気ヘッド4)
図2Aに、光アシスト磁気ヘッド4の概略構成例を断面図で示す。光アシスト磁気ヘッド4は、ディスク3に対する情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドである。光アシスト磁気ヘッド4は、光源部20と、スライダ10と、偏向ミラー30とを有する。情報記録装置1は、ディスク3を矢印C方向に移動させ、光アシスト磁気ヘッド4がディスク3上で浮上しながら相対的に移動しうるように構成されている。なお、図2Aでは、ディスク3の回転方向(矢印C方向)をy方向、光アシスト磁気ヘッド4の厚み方向をz方向、y方向及びz方向の双方に直交する方向をx方向としている。
【0017】
スライダ10は、板状の形状をしており、ディスク3と対向する下面10bと、下面10bのz方向の反対側に位置する上面10aとを有する。また、スライダ10は、y方向の端部に端面10cを有する。なお、スライダ10が「基板」に相当する。また、上面10aが「一の面」に相当し、端面10cが、「一の面の所定の方向の一端に設けられた端面」に相当する。
【0018】
光源部20は半導体レーザー(以下、単に「LD」と称する)を有する。光源部20を構成しているLDから出射される光の波長は、可視光から近赤外の波長(波長帯としては、0.6μm〜2μm程度であり、具体的な波長としては、650nm、780nm、830nm、1310nm、1550nmなどが挙げられる)などがある。ここで、図2Bを参照する。図2Bは、光アシスト磁気ヘッド4の偏向ミラー30周辺の拡大断面図である。図2Bに示すように、光源部20は、光出射面20aと、底面20bと、光出射口21とを有している。光源部20は、スライダ10の上面10aに配置されている。このとき、底面20bと上面10aとが対向する。光出射面20aは、偏向ミラー30の反射面31を臨み、光出射面20a上には光出射口21が設けられている。光源部20は、光出射口21から偏向ミラー30の反射面31に向けて光を出射する。光源部20から出射された光は、偏向ミラー30の反射面31に到達する。
【0019】
偏向ミラー30は、光源部20からの光を偏向(反射)させて光導波路14の光導波路入射面14aに導く表面反射型の集光ミラーである。図2Bに示すように、偏向ミラーは、凹面状の反射面31を有する。偏向ミラー30は、光源部20からの光を反射面31で受けて、この光を反射面31で反射させることで90°偏向させて、光導波路入射面14aに導く。このとき、光源部20からの光は、反射面31の曲率により光導波路入射面14aに集光される。偏向ミラー30の具体的な構成については後述する。なお、光導波路入射面14aが「光入射面」に相当する。
【0020】
スライダ10は、端面10cに磁気ヘッド部13を有する。磁気ヘッド部13は、y方向に所定の厚みを有して形成されており、端面13aと、端面13bと、側面13cとを有している。端面13aは、端面10cの上面10a側の端部近傍に、端面10cからy方向に立ち上がるように設けられている。また、端面13bは、端面13aとはz方向の反対側に形成されている。また、側面13cは、端面10cと接合される側面とは反対側に設けられている。磁気ヘッド部13は、光導波路14と、図示しない磁気記録部と、図示しない磁気情報再生部とを有する。なお、磁気ヘッド部13が「ヘッド部」に相当する。
【0021】
光導波路14は、偏向ミラー30によって導かれた光を導光してディスク3に向けて射出する。光導波路14は、図示しないが、下部クラッド層、コア層、上部クラッド層を、光が導かれる方向とは直交する厚み方向(y方向)に沿って、この順番に積層させたものである。コア層は、各クラッド層(例えば、SiOで形成)よりも屈折率の高い素材(例えば、Ta)で形成されている。これにより、光導波路14に導かれた光は、コア層と、各クラッド層との間で全反射しながらディスク3に向かって導かれる。なお、光が導かれる方向(即ち、z方向)が、「軸方向」に相当する。
【0022】
図2Bに示すように、光導波路14は、磁気ヘッド部13の端面13aに光導波路入射面14aを有し、端面13aとは反対側の端面13b(ディスク3に対向する面)に光導波路出射面14bを有する。光導波路14の光導波路出射面14bには、近接場光発生素子としてのプラズモンプローブ15が設けられている。偏向ミラー30によって偏向させられた光は、光導波路入射面14aから入射し、光導波路出射面14bに向かって光導波路14内を進む。光導波路出射面14bに設けられているプラズモンプローブ15は、偏向ミラー30によって導かれた光を近接場光に変換してディスク3に向けて射出する。また、図示しない磁気記録部は、ディスク3の被記録部分に対して磁気情報の書き込みを行う。図示しない磁気情報再生部は、ディスク3に記録されている磁気情報の読み取りを行う。
【0023】
(偏向ミラー30)
次に、偏向ミラー30の具体的な構成について、図2B、図3、及び図4を参照しながら説明する。図3は、偏向ミラー30の周辺をz方向から見た平面図である。図4は、光アシスト磁気ヘッド4をy方向から見た側面図である。図2B、図3、及び図4に示すように、偏向ミラー30は、反射面31と、上面32と、下面33とを含んで構成されている。
【0024】
偏向ミラー30は、下面33と、磁気ヘッド部13の端面13aとが接合されることで、光源部20、スライダ10、磁気ヘッド部13、及び光導波路14を含む一体構造に固定される。このとき、反射面31が、光源部20の光出射口21と、光導波路入射面14aとを臨むように、偏向ミラー30が固定される。なお、下面33のy方向の側面13c側には、偏向ミラー30が固定されたときに側面13cの端面13a側の端部に沿うように、端部33aが設けられている。換言すると、端部33aが側面13cの端面13a側の端部に沿うように偏向ミラー30を固定することで、反射面31が、例えば、y方向に沿って光源部20側を向くように保持される。
【0025】
図3に示すように、上面32上の所定の位置に、アライメントマーク321が設けられている。アライメントマーク321は、光源部20、スライダ10、磁気ヘッド部13、及び光導波路14を含む一体構造に対して、偏向ミラー30の位置決めを行う際の基準として用いられる。アライメントマーク321と、一体構造の所定の位置とが所定の位置関係となるように、一体構造上に偏向ミラー30が設置される。これにより、偏向ミラー30は、設計時に特定された所定の位置に設置される。位置決めの具体的な方法については後述する。
【0026】
反射面31は、図2Bに示すように、yz平面上において、磁気ヘッド部13の端面13aと所定の角度θを成すように設けられている。光源部20からの光が反射面31により90°偏向されて、光導波路入射面14aに導かれる場合、θ=45°となる。
【0027】
ここで、図5を参照する。図5は、反射面31の概略斜視図である。図2B及び図5に示すように、光源部20から出射された光の光軸(y方向)と反射面31との交点において、yz平面内の反射面31に対する接線方向をy’方向とする。また、x方向とy’方向の双方に直交する方向、即ち、前述した交点における反射面31の法線方向をz’方向とする。即ち、反射面31が、光源部20からy方向に向けて出射された光をz方向に90°偏向させる場合、y’方向及びz’方向は、y方向及びz方向を、x方向を軸に略45°回転させた方向となる。
【0028】
反射面31は、xz’平面内において、所定の曲率を有し、y’z’平面内において曲率を有さない凹面として形成されている。また、反射面31は、y’z’平面内において曲率を有するように構成されてもよいが、その曲率が、xz’平面内における曲率よりも小さくなるように形成されている。即ち、反射面31のxz’平面内における曲率半径をRx、y’z’平面内における曲率半径をRyとしたとき、は、以下に示す条件を満たしている。
[数5]

【0029】
偏向ミラー30を形成する素材としては、例えば、ガラス(石英)、シリコン(Si)、または樹脂等を用いるとよい。反射面31には、金やアルミニウム等の金属反射膜が成膜されている。また、反射面31には、誘電体多層膜による反射膜を成膜してもよい。また、金属反射膜をメッキで反射膜に形成してもよい。反射面31は、表面反射面として機能する。
【0030】
ここで、光学パワーについて説明する。光学パワーとは、レンズ、ミラー、または他の光学系が、光を集光または発散させる程度(力)を示している。ここで、光学パワーをP、光学素子の焦点距離をfとしたとき、光学パワーPは、焦点距離fの逆数(即ち、P=1/f)で示される。光学パワーPが正の値の場合には、光は光軸方向に収束される(集光される)。また、光学パワーPが負の値の場合には、光は光軸方向から発散される。
【0031】
次に、偏向ミラー30の光学パワーについて説明する。前述したとおり、反射面31の曲率半径Rx及びRyは[数5]で示した条件を満たしている。このような構成から、反射面31は、x方向の光学パワーがy方向の光学パワーよりも高い。また、反射面31がy’z’平面内において曲率を有さない場合、反射面31のy方向の光学パワーは0となる。以上から、偏向ミラー30のx方向の光学パワーをPx、y方向の光学パワーをPyとした場合、光学パワーPx及びPyは、以下に示す条件を満たす。
[数1]

【0032】
偏向ミラー30は、スライダ10、磁気ヘッド部13、及び光源部20が設計された寸法通りに組み立てられた場合に、図2Bに示すように、光源部20からの光が光導波路入射面14aに導かれるように設計されている。しかしながら、スライダ10と光源部20との間を接合する際に、接合に使用されるハンダ等の厚さ方向のばらつきにより、光源部20からの光の光軸の位置に関してz方向に誤差が生じる場合がある。また、光源部20、スライダ10、磁気ヘッド部13、及び光導波路14を含む一体構造に偏向ミラー30を取り付ける際に、反射面31の位置に関してx方向及びy方向に誤差が生じる場合がある。このような誤差により、光導波路入射面14aに対する光源部20からの光のスポット位置にずれが生じる。以降では、このような誤差に伴う位置ズレを修正するための特徴的な構造について説明する。なお、以降の説明では、光源部20の光軸上における光出射面20aから反射面31まで距離をL1、光軸と反射面31との交点から光導波路入射面14aまでの距離をL2とする。また、光軸の位置に対するz方向の許容誤差を±dz、反射面31のx方向における設置位置の許容誤差を±dxとする。
【0033】
また、図6に示すように、スポット径Lyは、光導波路入射面14aのy方向の長さWyよりも長く形成されるように、光源部20からの光の放射角と、光源部20、反射面31、及び光導波路入射面14aの位置関係とが調整されている。具体的には、光軸の位置に関するz方向の許容誤差±dzに伴う、スポットQのy方向の位置の許容誤差をdyとしたとき、dy=dz×tanθとなる。この場合に、スポット径Lyと、長さWyは以下の関係が以下の関係を満たすように、長さL1、L2、及び光源部20からの光の放射角が設計されている。このような構成とすることで、許容誤差±dyの範囲でスポットQのy方向の位置ズレが生じたとしても、光導波路入射面14aに光源部20からの光を結合させることが可能となる。
[数2]

【0034】
また、近年では、ハイパワーLDが数多く量産されているため、20%程度の結合効率があれば、記録に必要な近接場光を得ることが可能である。ここで、光導波路入射面14aの面積をSa、スポットQの面積をSbとし、光導波路入射面14aとスポットQとが重なる部分の面積をSa∩Sbとする。本実施形態に係る光アシスト磁気ヘッドでは、面積Sa及びSbが、以下の条件を満たしている。このような構成とすることで、20%以上の結合効率を確保することが可能となる。
[数3]

【0035】
さらに、スポットQのx方向のスポット径Lxと、光導波路入射面14aのx方向の長さWxとが、以下の条件を満たすことが望ましい。このような構成とすることで、許容誤差を±dxの範囲で反射面31の位置ズレが生じたとしても、光導波路入射面14aに光源部20からの光を結合させることが可能となる。また、光源部20からの光がx方向に集光されるため、より高い結合効率を確保することが可能となる。
[数4]

【0036】
次に、本実施形態に偏向ミラー30の位置決めの方法について説明する。まず、スライダ10と、光源部20と、磁気ヘッド部13とを組み立てて一体構造を生成する。偏向ミラー30の下面33に接着剤を塗布し、磁気ヘッド部13の端面13a上に仮止めする。
【0037】
偏向ミラー30を端面13a上に仮止めしたら、下面33の端部33aが、側面13cの端面13a側の端部に沿うように、偏向ミラー30の位置を調整する。このとき、例えば、端部33aと側面13cとを、側面13cと対向するように配置した壁面に突き当てることで、偏向ミラー30の位置を調整するとよい。これにより、反射面31が、y方向に沿って光源部20側を向くように保持される。
【0038】
次に、端部33aが側面13cの端面13a側の端部に沿った状態で、アライメントマーク321と、一体構造の所定の位置とが所定の位置関係となるように、偏向ミラー30をx方向にスライドさせる。このとき、一体構造及び偏向ミラー30をz方向から見て、アライメントマーク321と一体構造の所定の位置との間の位置関係を確認しながら、偏向ミラー30の位置を調整する。このように、アライメントマーク321を基に偏向ミラー30の位置を調整することで、偏向ミラー30の位置決め精度を、許容誤差の範囲(即ち、dx、dy、及びdzの範囲)に収めることが可能となる。
【0039】
なお、一体構造の所定の位置としては、例えば、光導波路入射面14aを用いてもよいし、光出射口21を用いてもよい。また、スライダ10、光源部20、及び磁気ヘッド部13のいずれかに、位置合わせの基準となるアライメントマークを設けてもよい。なお、位置合わせの際には、アライメントマーク321と一体構造の所定の位置との双方の位置が特定可能であればよい。例えば、偏向ミラー30が透光性を有する素材で形成されている場合には、双方の位置を視覚的に確認すればよい。また、偏向ミラー30が透光性を有さない素材で形成されていたとしても、例えば、異なる複数の方向から偏向ミラー30及び一体構造をカメラで撮影し、撮影された画像を基に視覚的に隠れる部分の位置を特定すればよい。このように、偏向ミラー30の位置合わせを行うことで、光導波路入射面14aに対するスポットQのx方向の位置合わせが行われる。
【0040】
なお、数2に示す通り、スポットQのy方向のスポット径Lyが、光導波路入射面14aのy方向の長さWyより、スポットQのy方向の位置の許容誤差dyの2倍以上長い。このような構成により、y方向については、スポットQの位置が許容誤差±dyの範囲でずれたとしても、スポットQの一部が光導波路入射面14aと重なる。そのため、y方向については、スポットQの位置ズレが発生したとしても、光源部20からの光を光導波路14に導光させて、20%以上の結合効率を確保することが可能となる。偏向ミラー30の位置決めが完了したら、接着剤を硬化させて一体構造と偏向ミラー30とを接合する。
【0041】
なお、上記では、端部33aが側面13cの端面13a側の端部に沿うように偏向ミラー30を設置することで、反射面31が所定の方向を向くように保持していた。これに代えて、アライメントマークを用いて反射面31が所定の方向を向くように保持してもよい。この一例を示した光アシスト磁気ヘッド4の平面図を図7に示す。図7に示すように、磁気ヘッド部13の端面13a上には、アライメントマーク131が設けられている。下面33の反射面31側の端部を端部33bとしたとき、この例では、アライメントマーク131に端部33bの位置をあわせることで、反射面31が所定の方向を向くように保持される。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る光アシスト磁気ヘッド4では、偏向ミラー30を固定する際に、x方向についてアライメントマークによる視覚的な位置合わせを行えばよく、y方向については位置合わせを行う必要が無い。そのため、従来の光アシスト磁気ヘッドのように、偏向ミラー30を固定する際に、光源部20から光を照射し光導波路14に導光させるアクティブ調芯を行うことなく、所望の結合効率を確保することが可能となる。これにより、光アシスト磁気ヘッド4の生産コストを下げることが可能となる。
【0043】
(実施例1)
次に、実施例1として、光導波路入射面14aのx方向の長さWxとy方向の長さWyの関係が、Wx≧Wyの場合における、スポットQのスポット径Lx及びLyの関係について具体的な例をあげて説明する。
【0044】
この実施例では、光導波路入射面14aのx方向の長さWx=4μm、y方向の長さWy=6μm、面積Sa=24μmとした。また、光源部20の光軸の高さのばらつきに伴うスポットQのy方向の位置の許容誤差dy=±1μm、反射面31のx方向における設置位置の許容誤差dx=±0.2μmとした。この条件のもとで、スポットQのスポット径Lx及びLyを、0<Lx<10μm、8μm≦Ly≦15μmの範囲で調整し、各条件で結合効率を測定した。その結果、本実施例においては、Lx=3.6μm、Ly=8μmのときに、導波損失を加味したうえで20%以上の結合効率を確保できる。
【0045】
(実施例2)
次に、実施例2として、光導波路入射面14aのx方向の長さWxとy方向の長さWyの関係が、Wx=Wyの場合における、スポットQのスポット径Lx及びLyの関係について具体的な例をあげて説明する。
【0046】
この実施例では、光導波路入射面14aのx方向の長さWx=3μm、y方向の長さWy=3μm、面積Sa=9μmとした。また、光源部20の光軸の高さのばらつきに伴うスポットQのy方向の位置の許容誤差dy=±1μm、反射面31のx方向における設置位置の許容誤差dx=±0.2μmとした。この条件のもとで、スポットQのスポット径Lx及びLyを、0<Lx<7.5μm、5μm≦Ly≦7.5μmの範囲で調整し、各条件で結合効率を測定した。その結果、本実施例においては、Lx=2.6μm、Ly=5μmのときに、導波損失を加味したうえで20%以上の結合効率を確保できる。
【0047】
(実施例3)
次に、実施例1として、光導波路入射面14aのx方向の長さWxとy方向の長さWyの関係が、Wx≦Wyの場合における、スポットQのスポット径Lx及びLyの関係について具体的な例をあげて説明する。
【0048】
この実施例では、光導波路入射面14aのx方向の長さWx=5μm、y方向の長さWy=2μm、面積Sa=10μmとした。また、光源部20の光軸の高さのばらつきに伴うスポットQのy方向の位置の許容誤差dy=±1μm、反射面31のx方向における設置位置の許容誤差dx=±0.2μmとした。この条件のもとで、スポットQのスポット径Lx及びLyを、0<Lx<12.5μm、4μm≦Ly≦5μmの範囲で調整し、各条件で結合効率を測定した。その結果、本実施例においては、Lx=4.6μm、Ly=4μmのときに、導波損失を加味したうえで20%以上の結合効率を確保できる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る光アシスト磁気ヘッド4に依れば、光源部20からの光のスポットQのy方向のスポット径Lyが[数2]に示された条件を満たすように、長さL1、L2、反射面31の角度θ、及び光源部20からの光の放射角が設計されている。これにより、光源部20からの光の光軸の位置ズレに伴い、y方向についてスポットQの位置ズレが発生したとしても、この位置ズレを許容し、光源部20からの光を光導波路14に導光させることが可能となる。これにより、本実施形態に係る光アシスト磁気ヘッド4では、偏向ミラー30を固定する際に、x方向についてアライメントマークによる視覚的な位置合わせを行えばよく、y方向については位置合わせを行う必要が無い。そのため、従来の光アシスト磁気ヘッドのように、偏向ミラー30を固定する際に、光源部20から光を照射し光導波路14に導光させるアクティブ調芯を行うことなく、所望の結合効率を確保することが可能となる。これにより、光アシスト磁気ヘッド4の生産コストを下げることが可能となる。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として、偏向ミラー30の製造方法の一例について、図8A〜図8Fを参照しながら説明する。図8A〜図8Fは、それぞれ、本実施形態に係る製造方法の一例について、各工程を説明するための図である。
【0051】
まず、図8Aに示すように、板状の基板301を用意する。板状の基板には、例えば、ガラス基板、シリコン(Si)、または樹脂を用いる。次に、板状の基板301上に、ダイシング等により、直線状であり、かつ断面がV状の溝321(以降は、「V溝321」と呼ぶ)を設ける。なお、この工程が「V溝形成工程」に相当する。
【0052】
次に、図8Bに示すように、チューブ状の中空部材311を、その軸方向がV溝321に沿うように、V溝321上に固定する。中空部材311の材料としては、例えば、ガラス、樹脂、または金属部材等を用いるとよい。中空部材311は、例えば、接着剤等によりV溝321上に固定すればよい。接着剤としては、例えば、温度変化により硬化するものや、紫外線の照射により硬化するものを用いればよい。ここで、図8Cを参照する。図8Cは、図8Bにおいて、矢印VIIcの方向からみた図である。図8Cに示すように、中空部材311の内周面の上部が基板301の板面上に露出するように、V溝321の幅と中空部材311の幅とを調整しておく。例えば、中空部材311の内周面の2分の1が、基板301の板面上に露出するように調整するとよい。なお、この工程が「中空部材固定工程」に相当する。
【0053】
次に、図8Dに示すように、中空部材311の、基板301の板面上に露出した部分を研磨し、中空部材311の内周面の下部を露出させる。この露出した内周面の下部が反射面31に相当する。なお、露出した反射面31に、反射膜を成膜してもよい。反射膜としては、例えば、金やアルミニウム等の金属反射膜を成膜してもよいし、誘電体多層膜による反射膜を成膜してもよい。また、金属反射膜をメッキで反射膜に形成してもよい。なお、この工程が「反射面形成工程」に相当する。
【0054】
反射面31を形成したら、基板301を中空部材311の軸方向に沿って切断面c1でダイシング等により切断する。これにより、中空部材311と基板301との一体構造が、中空部材311ごとに個々の部材に分断される。ここで、図8Eを参照する。図8Eは、分断された個々の部材において、中空部材311及びV溝321の部分を、図8DにおけるVIIe−VIIe’で切断した断面図である。なお、図8Eにおいて、基板301は切断していない。図8Eに示すように、分断された部材を、VIIe−VIIe’断面上において、反射面31に対して所定の角度θを成す切断面c2でダイシング等により切断する。これにより、図8Fに示すように、個々の偏向ミラー30に分断される。なお、切断面c2のうち、反射面31側に延長させた部分の面が、VIIe−VIIe’断面上において反射面31と角度θをなす方が下面33に相当し、他方が上面32に相当する。なお、この工程が「切断工程」に相当する。
【0055】
なお、上記にて製造された偏向ミラー30を、スライダ10、光源部20、磁気ヘッド部13、及び光導波路14を含む一体構造に設置する場合には、上面32上に露出したV溝321をアライメントマーク321として用いればよい。具体的な一例として、上面32上に露出したV溝321の頂点と、一体構造の所定の位置とが所定の位置関係となるように、一体構造上に偏向ミラー30を設置すればよい。
【0056】
以上、本実施形態に係る偏向ミラー30の製造方法では、中空部材311の内周面を反射面31として形成する。中空部材311は、射出成型等により、その内周面を精度良く形成することが可能である。そのため、この内周面を反射面31として用いることで、精度の良い反射面31を容易に形成することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態に係る製造方法によれば、V溝321上に中空部材311を固定し、反射面31を形成する。これにより、V溝321と反射面31との間の位置決めが精度良く行われる。そのため、切断工程後に、上面32上に露出したV溝321をアライメントマーク321として利用することで、反射面31を精度よく位置決めすることが可能となる。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として、型を用いて樹脂製の基板上に反射面31を転写することで、偏向ミラー30を製造する方法について、図9A〜図9Fを参照しながら説明する。図9A〜図9Fは、それぞれ、本実施形態に係る製造方法の一例について、各工程を説明するための図である。
【0059】
まず、図9Aに示すように、平板状の基板501を用意する。基板501には、例えば、Si基板、SiO基板、またはガラス基板等を用いる。次に、基板501上にフォトレジストをスピナーやロールコーターを用いて成膜し、レジスト層502を形成する。フォトレジストは、ネガ型、ポジ型を特性によって使い分ける。
【0060】
次に、図9Bに示すように、レジスト層502をパターニングすることにより、偏向ミラー30の反射面31やアライメントマーク321を形成するためのパターン503を形成する。例えば、電子線描画装置にて、レジスト層502に電子線を照射し、現像液を用いて現像処理を行うことによりパターン503を形成する。
【0061】
次に、図9Cに示すように、パターン503をマスクとして基板501に異方性エッチングを行う。これにより、基板501に反射面31やアライメントマーク321を形成する。異方性エッチングとしては、例えばドライエッチング又はウェットエッチングなどを行ってもよい。異方性エッチングは、一方向に優先的に進行するエッチングであるため、基板501の厚さ方向に優先的に進行する。そのため、基板501の厚さ方向の形状制御を行うことができ、高いアスペクト比が得られる。また、異方性エッチングとしてボッシュプロセス法を用いることが好ましい。ボッシュプロセス法は、エッチングとエッチング側壁保護とを繰り返しながら行うエッチング方法である。ボッシュプロセス法を用いることにより、基板501を深堀し、より高いアスペクト比が得られる。
【0062】
次に、図9Dに示すように、基板501上のパターン503(即ち、レジスト)を除去する。レジストの除去には、例えば、アセトン、IPA(IsoPropyl Alcohol)、またはエタノール等を用いる。パターン503を除去したら、電気鋳造により基板501上に金属をメッキし反転型504を形成する。反転型504の材料としては、例えば、ニッケルを用いる。
【0063】
次に、図9Eに示すように、基板302を用意する。基板302には、例えば、樹脂等を用いる。次に、基板302を、80〜200℃程度に加熱し反転型504で押圧することで基板302に型を転写する。
【0064】
温度低下により基板302が固化したら、図9Fに示すように反転型504を離型する。これにより、反射面31やアライメントマーク321(図9Fには図示しない)が基板302上に形成される。次に、基板302を切断面c3でダイシング等により切断する。これにより、基板302が、個々の偏向ミラー30に分断される。
【0065】
なお、偏向ミラー30は、反射面31、アライメントマーク321、及び下面33が上述した通りに形成されていればよく、その他の部分の形状は製造方法によって適宜変更してもよい。例えば、図10は、偏向ミラー30の一態様を示した断面図である。図10に示すように、反射面31とは反対側の端面を端面34とした場合、磁気ヘッド部13上に偏向ミラー30を固定したときに、端面34と側面13cとが連続するように偏向ミラー30を形成してもよい。偏向ミラー30が、このような形状の場合には、例えば、本実施形態に係る製造方法において、基板302の底面を端面34として形成すればよい。
【0066】
以上、本実施形態に係る製造方法に依れば、第2の実施形態とは異なる方法で、偏向ミラー30を形成することが可能である。
【0067】
(変形例)
次に、第3の実施形態の変形例ついて、図11A〜図11Hを参照しながら説明する。図11A〜図11Hは、それぞれ、本実施形態に係る製造方法の一例について、各工程を説明するための図である。第3の実施形態では、樹脂製の基板302を用いて偏向ミラー30を製造する方法について説明した。変形例では、ガラス基板や金属基板を用いて偏向ミラー30を製造する方法について説明する。
【0068】
まず、図11Aに示すように、平板状の基板501を用意する。基板501には、例えば、Si基板、SiO基板、またはガラス基板等を用いる。次に、基板501上にレジストをスピナーやロールコーターを用いて成膜し、レジスト層502を形成する。フォトレジストは、ネガ型、ポジ型を特性に寄って使い分ける。
【0069】
次に、図11Bに示すように、レジスト層502をパターニングすることにより、偏向ミラー30の反射面31やアライメントマーク321を形成するためのパターン503を形成する。例えば、電子線描画装置にて、レジスト層502に電子線を照射し、現像液を用いて現像処理を行うことによりパターン503を形成する。
【0070】
次に、図11Cに示すように、パターン503をマスクとして基板501に異方性エッチングを行う。これにより、基板501に反射面31やアライメントマーク321を形成する。異方性エッチングとしては、例えばドライエッチング又はウェットエッチングなどを行ってもよい。異方性エッチングは、一方向に優先的に進行するエッチングであるため、基板501の厚さ方向に優先的に進行する。そのため、基板501の厚さ方向の形状制御を行うことができ、高いアスペクト比が得られる。また、異方性エッチングとしてボッシュプロセス法を用いることが好ましい。ボッシュプロセス法は、エッチングとエッチング側壁保護とを繰り返しながら行うエッチング方法である。ボッシュプロセス法を用いることにより、基板501を深堀し、より高いアスペクト比が得られる。
【0071】
次に、図11Dに示すように、基板501上のパターン503(即ち、レジスト)を除去する。レジストの除去には、例えば、アセトン、IPA、またはエタノール等を用いるとよい。パターン503を除去したら、電気鋳造により基板501上に金属をメッキし反転型504を形成する。反転型504の材料としては、例えば、ニッケル等を用いる。
【0072】
次に、図11Eに示すように、基板303を用意する。基板303には、例えば、SSi基板、またはSiO基板等を用いる。次に、基板303上にレジストをスピナーやロールコーターを用いて成膜し、レジスト層505を形成する。レジストとしてはポジ型、ネガ型などの特徴を有するものを使い分けて用いる。次に、レジスト層505が形成された基板303を反転型504で押圧し、レジスト層505に型を転写する。これにより、図11Fに示すように、基板303上に、偏向ミラー30の反射面31やアライメントマーク321を形成するためのパターン506が形成される。
【0073】
次に、図11Gに示すように、パターン506をマスクとして基板303に異方性エッチングを行う。これにより、基板303に反射面31やアライメントマーク321を形成する。異方性エッチングとしては、例えばドライエッチング又はウェットエッチングなどを行ってもよい。異方性エッチングは、一方向に優先的に進行するエッチングであるため、基板303の厚さ方向に優先的に進行する。そのため、基板303の厚さ方向の形状制御を行うことができ、高いアスペクト比が得られる。また、異方性エッチングとしてボッシュプロセス法を用いることが好ましい。ボッシュプロセス法は、エッチングとエッチング側壁保護とを繰り返しながら行うエッチング方法である。ボッシュプロセス法を用いることにより、基板303を深堀し、より高いアスペクト比が得られる。
【0074】
次に、図11Hに示すように、基板303上のパターン506(即ち、レジスト)を除去する。レジストの除去には、例えば、アセトン、IPA、またはエタノール等の溶剤を用いる。パターン506を除去したら、基板303を切断面c4でダイシング等により切断する。これにより、基板303が、個々の偏向ミラー30に分断される。
【0075】
以上のように、本実施形態に係る製造方法に依れば、ガラス基板や金属基板を用いて偏向ミラー30を製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1 情報記録装置
2 筐体
3 ディスク
4 光アシスト磁気ヘッド
5 ヘッド支持部
6 支軸
7 トラッキング用アクチュエータ
10 スライダ
10a 上面
10b 下面
10c 端面
13 磁気ヘッド部
13a 端面
13b 端面
13c 側面
131 アライメントマーク
14 光導波路
14a 光導波路入射面
14b 光導波路出射面
15 プラズモンプローブ
20 光源部
20a 光出射面
20b 底面
21 光出射口
30 偏向ミラー
31 反射面
32 上面
321 アライメントマーク
33 下面
33a 端部
33b 端部
34 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の面と、前記一の面の所定の方向の一端に設けられた端面とを備え、ディスク状の記録媒体の回転に応じて、前記記録媒体に対して浮遊して相対移動するスライダと、
前記一の面に固定され、前記所定の方向に光を出射する光源と、
前記スライダに設けられ、前記所定方向に沿う厚み方向と、これに直交する幅方向の双方に直交する軸方向の一端に位置する光入射面で前記光源からの光を受け、前記軸方向の他端側に位置する前記記録媒体に向かって前記光を導く光導波路と、
前記光源及び前記光入射面の双方に臨む位置に設けられ、前記幅方向に光学パワーPx、前記厚み方向に光学パワーPyをそれぞれ有し、前記光学パワーPxと前記光学パワーPyとが以下に示す第1の条件を満たし、前記光源からの光を前記光入射面に向けて反射及び集光させる反射面を備えた偏向ミラーと、
を備えたことを特徴とする光アシスト磁気ヘッド。
[数1]

【請求項2】
前記反射面は、前記厚み方向及び前記幅方向に前記第1の条件を満たす曲率を有する凹面であることを特徴とする請求項1に記載の光アシスト磁気ヘッド。
【請求項3】
前記偏向ミラーは、前記光入射面の法線方向と略同一方向に臨む、前記反射面とは異なる面にマークを有し、
前記スライダ、前記光源、及び前記光導波路の一体構造の所定の一部と前記マークとが所定の位置関係となるように、前記一体構造に前記偏向ミラーが固定されることで、前記反射面が前記位置に保持されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光アシスト磁気ヘッド。
【請求項4】
前記光入射面の前記厚み方向の長さをWy、前記光入射面における前記光の前記厚み方向のスポット径をLy、前記光源から前記所定方向に出射された光の光軸の前記軸方向の許容誤差をdz、前記光入射面に対する前記反射面の角度をθとしたとき、前記厚み方向のスポット径Lyが以下の条件を満たすように、前記反射面が前記位置に保持されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の光アシスト磁気ヘッド。
[数2]

【請求項5】
前記光入射面の面積をSa、前記光入射面における前記光のスポットの面積をSb、前記光入射面と前記スポットとが重複する領域の面積をSa∩Sbとしたとき、前記光のスポットの面積Sbが以下の条件を満たすように、前記反射面が形成され前記位置に保持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の光アシスト磁気ヘッド。
[数3]

【請求項6】
前記光入射面の前記幅方向の長さをWx、前記光入射面における前記光の前記幅方向のスポット径をLx、前記光の照射位置の前記幅方向の許容誤差をdxとしたとき、前記幅方向のスポット径Lxが以下の条件を満たすように、前記反射面が形成され前記位置に保持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の光アシスト磁気ヘッド。
[数4]

【請求項7】
一の面と、前記一の面の所定の方向の一端に設けられた端面とを備え、ディスク状の記録媒体の回転に応じて、前記記録媒体に対して浮遊して相対移動するスライダと、
前記一の面に固定され、前記所定の方向に光を出射する光源と、
前記スライダに設けられ、前記所定方向に沿う厚み方向と、これに直交する幅方向の双方に直交する軸方向の一端に位置する光入射面で前記光源からの光を受け、前記軸方向の他端側に位置する前記記録媒体に向かって前記光を導く光導波路と、
の一体構造上に設けられ、
前記光源及び前記光入射面の双方に臨む位置に設けられ、前記幅方向に所定の曲率を有し、前記光源からの光を前記光入射面に向けて反射させるとともに、前記幅方向に集光させる反射面を備えた偏向ミラーの製造方法であって、
基板上に、直線状であり、かつ、断面がV状の溝を形成するV溝形成工程と、
チューブ状の中空部材を、その内周面の上部が前記基板上に露出し、かつ、その軸方向が前記溝に沿うように、前記溝内に固定する中空部材固定工程と、
前記中空部材の前記溝上に露出した部分を、前記軸方向に沿って研磨し、前記内周面の下部を露出させ、前記内周面を前記反射面として形成する反射面形成工程と、
前記基板の前記反射面が露出した面に対して所定の角度を有し、前記軸方向と交わる面で、前記中空部材及び前記基板を切断する切断工程と、
を備えたことを特徴とする偏向ミラーの製造方法。
【請求項8】
一の面と、前記一の面の所定の方向の一端に設けられた端面とを備え、ディスク状の記録媒体の回転に応じて、前記記録媒体に対して浮遊して相対移動するスライダと、
前記一の面に固定され、前記所定の方向に光を出射する光源と、
前記スライダに設けられ、前記所定方向に沿う厚み方向と、これに直交する幅方向の双方に直交する軸方向の一端に位置する光入射面で前記光源からの光を受け、前記軸方向の他端側に位置する前記記録媒体に向かって前記光を導く光導波路と、
前記光源及び前記光入射面の双方に臨む位置に設けられ、前記幅方向に所定の曲率を有し、前記光源からの光を前記光入射面に向けて反射させるとともに、前記幅方向に集光させる反射面を備えた偏向ミラーと、
を備えた光アシスト磁気ヘッドの製造方法であって、
基板上に、直線状であり、かつ、断面がV状の溝を形成するV溝形成工程と、
チューブ状の中空部材を、その内周面の上部が前記基板上に露出し、かつ、その軸方向が前記溝に沿うように、前記溝内に固定する中空部材固定工程と、
前記中空部材の前記溝上に露出した部分を、前記軸方向に沿って研磨し、前記内周面の下部を露出させ、前記内周面を前記反射面として形成する反射面形成工程と、
前記基板の前記反射面が露出した面に対して所定の角度を有し、前記軸方向と交わる面で、前記中空部材及び前記基板を切断することで、前記偏向ミラーとして形成する切断工程と、
前記スライダと、前記光源と、前記光導波路とを一体構造として形成する組み立て工程と、
前記一体構造の所定の一部と前記切断により露出した前記溝とが所定の位置関係となるように前記偏向ミラーを固定する取り付け工程と、
を備えたことを特徴とする光アシスト磁気ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【公開番号】特開2013−45493(P2013−45493A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184452(P2011−184452)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】