説明

光ディスク装置及び光ディスク装置におけるデータ再生方法

【課題】データの再生を制御している間にサーボ外れが生じた場合でも、確実に、光ディスクの意図しない記録層のデータが消去されないようにすることができるようにする。
【解決手段】光源108は、高周波信号が重畳された駆動電流に応じた光強度で光ビームを出力する。その光ビームは光ディスク101の記録層に集光される。光強度制御部109は、データが再生されている間にサーボ外れが検出されたことを契機に、光ディスク101における再生耐力が最も低い特定の記録層に応じて、駆動電流における高周波信号の重畳量を調整し、光源108が出力する光ビームの光強度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置及び光ディスク装置におけるデータ再生方法に関し、特に、多層の記録層を有する光ディスク(多層光ディスク)に記録済みのデータを再生するための光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、規格化されている光ディスクにおいては、記録層を幾つも貼り合わせるいわゆる多層化により記録容量の向上が図られている。例えば3層、4層の多層ブルーレイディスクでは、従来の2層のブルーレイディスクに比べ、約2〜2.6倍の記録容量となっている。
【0003】
複数の記録層を持つディスクでは、材質や構造の違いなどから各記録層の光感度が異なる。このため、各記録層を最適な再生パワーで再生を行っている。ここで、各記録層の光感度の違いから、例えば光感度の低い記録層の再生パワーで光感度の高い記録層に焦光すると、記録層の物理状態が変化し、記録済みのデータが破壊されるおそれがある。
【0004】
従来の光ディスク装置では、各層に好適な再生条件を設定していても、結局のところ、一旦サーボ外れが生じると、例えば焦点が配置している記録層とは別の記録層に焦点が移動し、当該別の記録層に記録済みのデータが意図せず消去されてしまうおそれがあった。そのような対策として、従来の光ディスク装置では、上述したサーボ外れが生じた時に球面収差、再生パワーなどを変更することでデータの消去を防止する構成を採用していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−299982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の光ディスク装置においては、上述のような影響を与える光密度を多少変更することができるものの、実際のところは、実用的な仕様を満たせるほど大きく迅速に変更することはできなかった。このように十分に光密度を変更することができないと、従来の光ディスク装置においては、ある記録層に記録済みのデータの再生を制御している間に、上述のようなサーボ外れが生ずると、意図しない他の記録層のデータが消去されてしまう問題点があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、データの再生を制御している間にサーボ外れが生じた場合でも、確実に、光ディスクの意図しない記録層のデータが消去されないようにすることができ、かくして、信頼性の高い光ディスク装置及び光ディスク装置におけるデータ再生方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、本発明においては、複数の記録層が積層された多層光ディスクに記録済みのデータを少なくとも再生する光ディスク装置において、駆動電流に応じた光強度で光ビームを出力する光源と、高周波信号を重畳させた駆動電流を前記光源に供給し、前記光源が出力する光ビームの光強度を制御する光強度制御部と、前記多層光ディスクのいずれかの前記記録層に前記光ビームを集光する対物レンズと、前記多層光ディスクからの前記光ビームの反射光を受光する光検出器と、前記光検出器によって受光した反射光に基づいてエラー信号を生成するエラー信号生成部と、前記対物レンズを前記多層光ディスクに対して相対的に移動させるアクチュエータと、前記エラー信号に基づいて前記アクチュエータを制御し、前記光ビームの焦点を前記多層光ディスクの記録層に配置し、前記記録層に記録されたデータの再生を制御する制御部とを有し、前記光強度制御部は、前記エラー信号に基づいて前記光源に与える駆動電流を制御するオートパワーコントロール部と、前記制御部によってデータの再生が制御されている間に、前記エラー信号に基づいてサーボ外れが検出されたことを契機に、前記多層光ディスクにおける再生耐力の最も低い特定の記録層に合わせるように前記高周波信号の重畳量を調整する重畳量調整部とを備えることを特徴とする。ここで、再生耐力とは、記録層のデータの書き換わりにくさを表し、再生耐力が最も低い記録層とは、光ディスクの記録層のうち最も低い光強度の光ビームでデータが書き換わる記録層を表している。
【0009】
また、本発明においては、複数の記録層が積層された多層光ディスクに記録済みのデータを少なくとも再生する光ディスク装置におけるデータ再生方法において、高周波信号を重畳させた駆動電流を光源に供給し、前記光源が出力した光ビームを対物レンズによって前記多層光ディスクに集光し、前記多層光ディスクからの前記光ビームの反射光に基づいてエラー信号を生成するエラー信号生成ステップと、前記エラー信号に基づいてアクチュエータを駆動させ、前記対物レンズを前記多層光ディスクに対して相対的に移動させ、前記光ビームの焦点を前記多層光ディスクの記録層に配置し、前記記録層に記録されたデータの再生を制御する再生制御ステップと、前記データの再生を制御している間に、前記エラー信号に基づいてサーボ外れが検出されたことを契機に、前記多層光ディスクにおける再生耐力が最も低い特定の記録層に応じて前記高周波信号の重畳量を調整し、前記光源が出力する光ビームの光強度を制御する光強度制御ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、データの再生を制御している間にサーボ外れが生じた場合でも、確実に、光ディスクの意図しない記録層のデータが消去されないようにすることができ、かくして、信頼性の高い光ディスク装置及び光ディスク装置におけるデータ再生方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態による光ディスク装置等の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態における光強度制御部の構成例を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態における再生条件の一例を示す図である。
【図4】各再生条件における再生光の1周期分の波形の一例を示す図である。
【図5】サーボ外れを検出するサーボ制御部の構成例を示すブロック図である。
【図6】本実施の形態における光ディスク装置の再生方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】HFリカバリ処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0012】
100……光ディスク装置、101……光ディスク、105……エラー信号生成部、106……制御部、107……アクチュエータ駆動部、108……光源、109……光強度制御部、109A……オートパワーコントロール部(APC部)、109B……重畳量調整部、L0〜L2……記録層。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面について、本発明の一実施の形態について詳述する。
【0014】
(1)本実施の形態による光ディスク装置の概略構成
(1−1)概略構成
図1は、本実施の形態による光ディスク装置100及び光ディスク101の概略構成を示す。光ディスク101は、データを記録及び再生可能な複数の記録層が積層された円盤状の記録メディアである。光ディスク101は、記録面から光ビームが入射され、各記録層からの反射光に応じて、各記録層に記録済みのデータが再生される。
【0015】
光ディスク101は、例えば3つの記録層が形成されている。本実施の形態では、これら3つの記録層を、光ディスク101のディスク面側から、L2層、L1層及びL0層と呼ぶ。光ディスク101は、図示しないスピンドルモータによって回転された状態で、上述のようにL0,L1,L2層からデータが読み出される構成となっている。
【0016】
光ディスク装置100は、対物レンズ102、アクチュエータ103、光検出器104、エラー信号生成部105、制御部106、アクチュエータ駆動部107、光源108、光強度制御部109、収差補正機構110、収差補正機構制御部111及び光量計測部としてのパワーモニター(図示しせず)を備えている。パワーモニターは、光源108近傍に設けられており、光源108が出力する光ビームの光量(パワー)を計測する。
【0017】
光源108は、駆動電流に応じた光ビームを出力する。対物レンズ102は、光源108から出力された光ビームを集光し、その光ビームの焦点を光ディスク101のいずれかの記録層に配置する。アクチュエータ103は、対物レンズ102を光ディスク101の面に対して垂直方向及び水平方向に各々独立して移動させる。光検出器104は、光ディスク101からの反射光を受光する。
【0018】
エラー信号生成部105は、サーボ(以下、単に「サーボ信号」ともいう)を掛け、光検出器104によって検出された戻り光から光ディスク101上に形成された焦点と記録層とのずれを示すエラー信号(誤差信号)を生成する。エラー信号生成部105は、フォーカスエラー信号生成部(図示せず)及びトラッキングエラー信号生成部(図示せず)を有する。
【0019】
フォーカスエラー信号生成部は、光源108の出力に応じて、光ビームの焦点と、光ディスク101の記録面との相対変位を検出することによりフォーカスエラー信号を出力する機能を有する。トラッキングエラー信号生成部は、光源108の出力に応じて、光ビームの焦点と、光ディスク101の記録面上のトラックとの相対変位を検出することにより、トラッキングエラー信号を出力する機能を有する。アクチュエータ駆動部107は、制御部106の制御によって、対物レンズ102を移動させるためにアクチュエータ103を駆動する駆動信号を生成する。
【0020】
光強度制御部109は、光源108に与える駆動電流を制御することにより、光源108が出力する光ビームの光強度を制御する。この光強度制御部109は、その駆動電流に高周波信号を重畳させることにより光源108が出力する光ビームをパルス発光状態とする。この光強度制御部109に関する詳細については後述する。
【0021】
収差補正機構110は、光ディスク101上の焦点の収差を補正する機構である。収差補正機構制御部111は、この収差補正機構110を作動させ、対物レンズ102の収差を補正する。
【0022】
(1−2)光強度制御部の構成
図2は、本実施の形態における光強度制御部109の構成例を示す。光強度制御部109は、上述のように光源108に与える駆動電流に高周波信号を重畳させている機能ばかりでなく、次のように構成されている。
【0023】
光強度制御部109は、オートパワーコントロール部109A及び高周波重畳量調整部109Bを有する。なお、本実施の形態では、オートパワーコントロール部は「APC部」と省略し、高周波重畳量調整部は「HF重畳量調整部」と省略するとともに、高周波に相当する用語として「HF(High Frequency)」を用いる。
【0024】
APC部109Aは、光源108に与える駆動電流が所定の目標値としてのオートパワーコントロール目標値(以下「APC目標値」という)となるように制御する。本実施の形態では、このAPC目標値として、光ディスク101の種類に応じて、その各記録層L0,L1,L2に対応して3つ用意されている。
【0025】
さらにHF重畳量調整部109Bは、この駆動電流に高周波信号を重畳し、当該駆動電流を光源108に供給することにより、光源108から出力される光ビームをパルス発光状態とする。本実施の形態では、高周波信号の重畳量として、光ディスク101の種類及びその各記録層L0,L1,L2に応じて3つ用意されている。
【0026】
ここで、光源108のピークパワーは、上述したAPC目標値で表されたパワー成分と高周波信号の成分との合計に等しくなる。ここで、各記録層L0,L1,L2は、材料や構造の違いなどから光感度が異なり、各記録層に対応した光感度の光ビームのピークパワーは、他の記録層のデータの破壊(又は書き換え)に影響を与える場合がある。
【0027】
重畳量調整部109Bは、APC部109Aによって駆動電流に重畳される高周波信号の重畳量を調整する機能を有する。また、重畳量調整部109Bは、APC部109Aによって目標値として制御されるAPC目標値を調整する機能を有していても良い。重畳量調整部109Bに関する詳細については後述する。
【0028】
さらに重畳量調整部109Bは、上記HF重畳量及びAPC目標値の両方を調整する機能を有していても良い。本実施形態では、一例として、重畳量調整部109Bが主としてHF重畳量及びAPC目標値の両方を調整する形態を採用しているものとして説明する。
【0029】
(1−3)再生条件
図3は、本実施の形態における再生条件の一例を示す。まず、再生条件とは、光ディスク101の各記録層に記録済みのデータを再生する際の光ビームのパワーを表している。なお、図3では、光ビームのパワーを電力[mW]を用いて表している。このような再生条件として、本実施の形態では、上述した記録層L0,L1,L2に応じて、それぞれ、第1の再生条件、第2の再生条件及び第3の再生条件が用意されている。各再生条件は、APC目標値及びHF重畳量を含んでいる。なお、以下、具体的な数値を挙げるが、これらはあくまでも説明を分かり易くするための一例であり、本実施の形態はこれらの数値に限定されることはない。
【0030】
まず、第1の再生条件は、第1の記録層L0に記録済みのデータを再生するための再生条件である。第1の再生条件は、例えばAPC目標値が例えば1.2mWであり、HF重畳量が例えば1.0mWである。第2の再生条件は、第2の記録層L1に記録済みのデータを再生するための再生条件である。第2の再生条件は、APC目標値が例えば1.2mWであり、HF重畳量が例えば0.8mWである。第3の再生条件は、第3の記録層L2に記録済みのデータを再生するための条件である。第3の再生条件は、APC目標値が例えば1.1mWであり、HF重畳量が例えば1.0mWである。これらの数値を検証すると、次のようになる。
【0031】
図4は、各再生条件における再生光の1周期分の波形の一例を示す。図4に示す左側の波形は第1の再生条件に対応しており、中央の波形は第2の再生条件に対応しており、右側の波形は第3の再生条件に対応している。図示の例における各再生条件における最大値が、本実施形態で云う「ピークパワー」に相当する。
【0032】
このような数値例において各再生条件のピークパワーについて検討すると、次のようになる。まず、第1の再生条件においてピークパワーは2.2mWとなる。第2の再生条件においてピークパワーは2.0mWとなる。第3の再生条件においてピークパワーは2.1mWとなる。すると、このような一例の下では、再生耐力が最も低い記録層、即ち、最もデータの書き換わり易い記録層は第2の記録層L1となる。本実施の形態では、このように最もデータの書き換わり易い記録層を「最弱記録層」と呼んでいる。
【0033】
(1−4)サーボ外れを検出する構成
図5は、主として、サーボ外れを検出するサーボ制御部111の構成例を示す。なお、点線で図示したエラー信号生成部105は、サーボ制御部111の一部ではないが、説明の都合上、図示している。
【0034】
サーボ制御部111は、フォーカス制御部8及びトラッキング制御部11を備える。フォーカス制御部8は、上述したエラー信号生成部105のフォーカスエラー信号生成部からのフォーカスエラー信号に対して位相補償や低域補償等のフィルタ処理を実施し、その処理結果を上記アクチュエータ駆動部107に出力する。一方、トラッキング制御部11は、上述したエラー信号生成部105のトラッキングエラー信号生成部からのトラッキングエラー信号に対して位相補償や低域補償などのフィルタ処理を実施し、光ビームの焦点を光ディスク101のトラックに追従させるための制御信号を上記アクチュエータ駆動部107に出力する。
【0035】
層移動制御部13は、入力されたフォーカス誤差信号に基づいて、光ビームの焦点を現在追従している記録面から他の層の記録面に移動させる機能を有する。選択部14は、フォーカス制御部8及び層移動制御部13のいずれかの出力を選択する機能を有する。監視部15は、本実施の形態では上記光源108の全光量(PE)、フォーカシングエラー信号(FE)及びトラッキングエラー信号(TE)のいずれか、又はこれらいずれかの組み合わせを監視し、いわゆるサーボ外れを検出する。制御部111は、サーボ外れが検出されると、光強度制御部109に対し、サーボが外れたことを示す信号を出力する。なお、サーボ外れを検出する手法としては、上述のような手法に限られず、その他の手法を採用しても良いことは云うまでもない。
【0036】
(2)光ディスク装置の再生動作
光ディスク装置100は以上のような構成により、次のような再生動作を行う。
【0037】
(2−1)一般的な再生動作
制御部106は、光ディスク101のデータを再生するための制御にあたり、光強度制御部109を制御し、光源108に光ビームを出力させ、対物レンズ102などを経由して集光させた光ビームを光ディスク101の記録面から入射させる。光ビームは、光ディスク101の記録層において反射する。光検出器104は、反射した光ビームの戻り光を受光する。エラー信号生成部105は、受光された戻り光に基づいてエラー信号を生成し、制御部106は、そのエラー信号に応じて駆動信号を生成する。アクチュエータ駆動部107は、その駆動信号に応じてアクチュエータ103に電圧を与えることで対物レンズ102の位置を移動させ、焦点位置を補正する。このようにして焦点と記録層との位置ずれを、対物レンズ102の位置制御にフィードバックすることで焦点位置を制御している。
【0038】
制御部106は、アクチュエータ駆動部107を制御することによりアクチュエータ103を駆動し、対物レンズ102をフォーカス方向及びトラッキング方向の少なくとも一方に移動させることにより、光ビームの焦点を光ディスク101のある記録層に配置し、その記録層に記録されたデータの再生を制御している。APC部109Aは、エラー信号生成部105からのエラー信号に基づいて光源108に与える駆動電流を制御している。
【0039】
(2−2)サーボ外れ時の対応処理(HF重畳量調整処理)
図6は、データ再生時におけるサーボ外れに対応するための処理の一例を示す。なお、図示のフローチャートでは、主として、本実施の形態に関係する部分を中心として図示されている。
【0040】
光ディスク装置100においては、光ディスク101のある記録層に記録済みのデータを再生している間にわたり、エラー信号生成部105がサーボ信号を監視している(SP1)。具体的には、光ディスク装置100は、エラー信号生成部105が、光ビームの焦点と、光ディスク101の記録面との相対変位を検出することによりフォーカスエラー信号を生成している。一方、エラー信号生成部105は、光ビームの焦点と、光ディスク101の記録面上のトラックとの相対変位を検出することによりトラッキングエラー信号を生成している。本実施の形態では、一例として、トラッキングエラー信号を用いて説明する。
【0041】
次に、制御部106は、エラー信号生成部105からのトラッキングエラー信号に基づいていわゆるサーボ外れを検出する(SP2)。上述のようにサーボ外れの検出方法は、その代わりに、その他の様々な手法のいずれかを採用しても良い。
【0042】
次に、制御部106はHF重畳量調整処理を実施する(SP3)。このHF重畳量調整処理では、光強度制御部109の重畳量調整部109Bが、上述のようにデータの再生制御がされている間に、トラッキングエラー信号に基づいてサーボ外れが生じたことを契機に、光ディスク101における再生耐力が弱い特定の記録層(以下「最弱記録層」とも呼ぶ)に合わせるように高周波信号の重畳量を調整する。
【0043】
具体的に説明すると、まず、重畳量調整部109Bは、光源108によって出力される光ビームのパワーが、記録層にデータを記録する時における記録パワー未満となるように高周波信号の重畳量を調整する。
【0044】
またさらに、光強度制御部109は、上述した高周波信号とともに、最弱記録層に合わせてAPC目標値も調整するようにしても良い。即ち、本実施の形態では、一例として、光強度制御部109が、そのような高周波信号及びAPC目標値の両方を調整している。
【0045】
(2−3)HFリカバリ処理
図7は、HFリカバリ処理の手順の一例を示す。HFリカバリ処理は、上述のようにサーボ外れが生じている状態から、サーボ外れが生じていない状態に戻すための手順を含んでいる。
【0046】
HFリカバリ処理では、光強度制御部109が、サーボ外れが生じた後におけるフォーカスの現在位置(アドレス)に基づいて、フォーカスが留まっている光ディスク101の記録層(以下「現在の記録層」という)を特定し、現在の記録層が最弱記録層でない場合、当該現在の記録層に応じて、高周波信号の重畳量を再度設定する。また、光強度制御部109は、そのような場合、現在の記録層に応じて、上述のような高周波信号の重畳量とともに、APC目標値も再度設定するようにしても良い。以下では、一例として、これら高周波信号及びAPC目標値の両方が変更されるものとして説明する。
【0047】
制御部106は、エラー信号生成部105により、サーボ外れ後におけるHF重畳量の設定のまま、トラッキングサーボをONにする(SP11)。制御部106は、エラー信号生成部105からのトラッキングエラー信号に基づいて、トラッキングサーボが掛かっているか否かを判断する(SP12)。
【0048】
制御部106は、トラッキングサーボが掛かれば、上記サーボ外れが生じた後におけるフォーカスの現在位置を取得する(SP13)。ここで、フォーカスの現在位置は、その位置を示すアドレスとして取得される。これにより、制御部106は、当該フォーカスの現在位置に基づいて現在位置が最弱記録層であるか否かを判断する(SP14)。
【0049】
制御部106は、フォーカスの現在位置が最弱記録層である場合、HFリカバリ処理を終了する。即ち、制御部106は、上述した重畳量調整部109Bによる調整動作を規制することになる。これによりHF重畳量及びAPC目標値は変更されない。一方、制御部106は、現在位置が最弱記録層ではない場合、上述した重畳量調整部109Bによる調整動作を実行し、現在位置の記録層に応じてHF重畳量及びAPC目標値を変更する(SP15)。
【0050】
一方、上述したステップSP12においてトラッキングサーボが掛からなければ、制御部106は、HFリカバリ処理の実行要否設定を確認する(SP16)。このような確認を行うと、例えば完全にデフォーカスしている場合などサーボ外れが生じ、重畳量調整部109Bによる調整では却って時間が掛かる場合には、一旦フォーカスを停止し、光強度制御部109に最初からフォーカスをやり直させることができる。
【0051】
制御部106は、HFリカバリ処理の実行が必要な設定である場合、HF重畳量及びAPC目標値を変更する一方(SP17)、HFリカバリ処理の実行が不要な設定である場合、一旦フォーカスを停止する(SP19)。
【0052】
次に制御部106は、トラッキングサーボが掛かるか否かを確認する(SP18)。制御部106は、トラッキングサーボが掛かる場合には、上記ステップSP13から再度実行する一方、トラッキングサーボが掛からない場合には、現在、記録層ではない領域にフォーカスしている可能性があるため、一度フォーカスを停止し(SP19)、対物レンズ102を下方に配置させる。
【0053】
(3)本実施の形態の効果等
以上説明したように、上記実施の形態における光ディスク装置100は、光強度制御部109が重畳量調整部109Bを備えている。この重畳量調整部109Bは、データの再生が制御されている間に、トラッキングエラー信号(又はフォーカスエラー信号)に基づいてサーボ外れが検出されたことを契機に、光ディスク101における最弱記録層に合わせるように高周波信号の重畳量を調整する。
【0054】
このような構成によれば、光ディスク101のある記録層のデータを再生している間にいわゆるサーボ外れが生じた場合、光強度制御部109が高周波信号の重畳量を調整し、光源108に与えられるパワーが変化する。すると、光源108が出力する光ビームのパルス発光状態が変化して、そのパルスのピークパワーが低下する。これにより、上記サーボ外れが生じた場合にフォーカスを残し、光ディスク101における意図しない記録層に光ビームが当たっても、当該記録層での光密度が、当該記録層のデータ破壊を起こすパワー以下となる。このようにすると、光ディスク装置100は、データの再生を制御している間にサーボ外れが生じた場合でも、確実に、光ディスク101の意図しない記録層のデータが消去されないようにすることができ、信頼性を向上することができる。
【0055】
上記光ディスク装置100においては、光強度制御部109は、APC値に応じて光源108への駆動電流を自動的に制御するオートパワーコントロール部109Aを有する。一方、重畳量調整部109Bは、高周波信号の重畳量とともに、最弱記録層に合わせてAPC目標値も調整している。
【0056】
上記光ディスク装置100においては、重畳量調整部109Bは、光源108が出力する光ビームの光量が、記録層のデータ破壊を起こすパワー未満となるように、高周波信号の重畳量を調整する。当該記録層のデータ破壊を起こすパワーとしては、例えば、データを記録層に記録する時における記録パワーを挙げることができる。
【0057】
このような構成とすると、サーボ外れが生じた場合でも、光ビームの光量が、データ破壊を起こすパワー未満であるため、光ディスクのいずれの記録層において記録済みのデータが消去されないようにすることができる。
【0058】
上記光ディスク装置100においては、光強度制御部109は、サーボ外れが生じた後におけるフォーカスの現在位置に基づいて、フォーカスが留まっている光ディスク101における現在の記録層を特定し、現在の記録層が最弱記録層でない場合、現在の記録層に応じて高周波信号の重畳量を再度設定する。
【0059】
このような構成とすると、制御部106は、上述したサーボ外れが生じた後でも、その時点で光ビームの焦点が留まっているいずれかの記録層から続けてデータを再生することができる。
【0060】
上記光ディスク装置100においては、光強度制御部109は、サーボ外れが生じた後におけるフォーカスの現在位置に基づいて、フォーカスが留まっている光ディスク101における現在の記録層を特定し、現在の記録層が最弱記録層でない場合、現在の記録層に応じて高周波信号の重畳量とともに、APC目標値も再度設定している。
【0061】
このような構成とすると、制御部106は、上述したサーボ外れが生じた後でも、その時点で光ビームの焦点が留まっているいずれかの記録層から続けてデータを再生することができる。
【0062】
このような構成とすると、制御部106は、上述したサーボ外れが生じた後に何らかの理由により、フォーカスの焦点が最弱記録層に配置されている場合、重畳量調整部109Bが無駄に動作することを防止し、その最弱記録層からデータを再生できるようになる。
【0063】
(4)その他の実施形態
上記実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。例えば、上記実施形態では、各種プログラムの処理をシーケンシャルに説明したが、特にこれにこだわるものではない。従って、処理結果に矛盾が生じない限り、処理の順序を入れ替え又は並行動作するように構成しても良い。
【0064】
上記実施の形態におけるHFリカバリ処理では、全光量及び高周波信号の重畳量の少なくとも一方が適切でないため、トラッキングサーボが掛からない場合があるので、重畳量調整部109Bは、全光量及び高周波信号の重畳量を変更し、改めてトラッキングサーボを掛けるよう試みても良い。また、全光量及び高周波信号の重畳量を変更するのは、上述のように、例えばトラッキングサーボが掛からない場合に限られず、他の手段においてこれらの変更をできるか否かを判断し、その判断結果に応じて行われるようにしても良い。
【0065】
また、上記実施の形態では、全光量及び高周波信号の重畳量を変更する代わりに、高周波信号の周波数自体を変更することでも、上記実施の形態と同様な効果を発揮することができる。
【0066】
また、上記実施の形態では、HF重畳量調整部109Bが高周波信号の重畳をオフし、即ち、高周波信号の重畳量の設定値を0としても良い。上記実施形態では、HF重畳量調整部109Bにより調整される高周波信号の重畳量が、最弱記録層における高周波信号の重畳量の設定値以下であれば良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録層が積層された多層光ディスクに記録済みのデータを少なくとも再生する光ディスク装置において、
駆動電流に応じた光強度で光ビームを出力する光源と、
高周波信号を重畳させた駆動電流を前記光源に供給し、前記光源が出力する光ビームの光強度を制御する光強度制御部と、
前記多層光ディスクのいずれかの前記記録層に前記光ビームを集光する対物レンズと、
前記多層光ディスクからの前記光ビームの反射光を受光する光検出器と、
前記光検出器によって受光した反射光に基づいてエラー信号を生成するエラー信号生成部と、
前記対物レンズを前記多層光ディスクに対して相対的に移動させるアクチュエータと、
前記エラー信号に基づいて前記アクチュエータを制御し、前記光ビームの焦点を前記多層光ディスクの記録層に配置し、前記記録層に記録されたデータの再生を制御する制御部とを有し、
前記光強度制御部は、
前記エラー信号に基づいて前記光源に与える駆動電流を制御するオートパワーコントロール部と、
前記制御部によってデータの再生が制御されている間に、前記エラー信号に基づいてサーボ外れが検出されたことを契機に、前記多層光ディスクにおける再生耐力の最も低い特定の記録層に合わせるように前記高周波信号の重畳量を調整する重畳量調整部とを備える
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記光強度制御部は、
オートパワーコントロール目標値に応じて前記光源への駆動電流を自動的に制御するオートパワーコントロール部を有し、
前記重畳量調整部は、
前記高周波信号の重畳量とともに、前記特定の記録層に合わせて前記オートパワーコントロール目標値も調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記重畳量調整部は、
前記光源が出力する光ビームの光量が、前記記録層のデータ破壊を起こすパワー未満となるように、前記高周波信号の重畳量を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記光強度制御部は、
前記サーボ外れが生じた後におけるフォーカスの現在位置に基づいて、前記フォーカスが留まっている前記多層光ディスクにおける現在の記録層を特定し、前記現在の記録層が前記特定の記録層でない場合、前記現在の記録層に応じて前記高周波信号の重畳量を再度設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記光強度制御部は、
前記サーボ外れが生じた後におけるフォーカスの現在位置に基づいて、前記フォーカスが留まっている前記多層光ディスクにおける現在の記録層を特定し、前記現在の記録層が前記特定の記録層でない場合、前記現在の記録層に応じて前記高周波信号の重畳量とともに、前記オートパワーコントロール目標値も再度設定する
ことを特徴とする請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
複数の記録層が積層された多層光ディスクに記録済みのデータを少なくとも再生する光ディスク装置におけるデータ再生方法において、
高周波信号を重畳させた駆動電流を光源に供給し、前記光源が出力した光ビームを対物レンズによって前記多層光ディスクに集光し、前記多層光ディスクからの前記光ビームの反射光に基づいてエラー信号を生成するエラー信号生成ステップと、
前記エラー信号に基づいてアクチュエータを駆動させ、前記対物レンズを前記多層光ディスクに対して相対的に移動させ、前記光ビームの焦点を前記多層光ディスクの記録層に配置し、前記記録層に記録されたデータの再生を制御する再生制御ステップと、
前記データの再生を制御している間に、前記エラー信号に基づいてサーボ外れが検出されたことを契機に、前記多層光ディスクにおける再生耐力が最も低い特定の記録層に応じて前記高周波信号の重畳量を調整し、前記光源が出力する光ビームの光強度を制御する光強度制御ステップとを備える
ことを特徴とする光ディスク装置におけるデータ再生方法。
【請求項7】
前記光強度制御ステップでは、
前記高周波信号と合わせて、前記特定の記録層に合わせて前記オートパワーコントロール目標値も調整する
ことを特徴とする請求項6に記載の光ディスク装置におけるデータ再生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−134414(P2011−134414A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294528(P2009−294528)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】