説明

光ピックアップ、および光情報処理装置

【課題】複数の記録再生層を有する光ディスクを再生する光ピックアップにおいて、対物レンズシフトが発生した際に記録再生層以外の他層迷光の影響により発生するトラッキング誤差信号のオフセットを低減し、安定したトラッキング制御を実現する。
【解決手段】6つの領域に分割されている第1の回折素子41と非回折光の受光する4つの受光部51a、51b、51c、51dと1次回折光を受光する受光部51i、51j、51k、51lにより、サーボ信号と再生信号を検出する光ピックアップにおいて、複数の記録再生層を有する光ディスクからの記録再生層以外の他層迷光70、71、72が入射しない位置に受光部51k、51lを配置することにより、他層迷光の影響により発生するトラッキング誤差信号のオフセットを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップおよびそれを備えた光情報処理装置に関するものであり、より詳しくは、複数の記録再生を有する光ディスク等の光情報記録媒体に対し、光学的に情報を記録または再生する光ピックアップおよび光情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、多量の情報信号を高密度で記録することができるため、オーディオ、ビデオ、コンピュータ等の多くの分野において利用が進められている。最近は、BD(Blu-ray Disc)、DVD、CDなどの複数の光ディスクに対し、情報を記録再生する記録再生機器がある。
【0003】
このような記録再生機器の中で、ノートパソコン等の電子機器に組み込まれる場合には、薄型、小型の光ディスクドライブが必要であるほか、情報量の増加に伴い、光ディスクの多層化が検討されている。例えば、複数の光ディスクに対応した光ピックアップにおいて、複数の記録再生層を有する光ディスクに対応させた光ピックアップが、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
図8を用いて、特許文献1に開示された光ピックアップについて説明する。図8は、特許文献1に開示されたホログラム素子の分割パターン、光検出器の受光部パターン及び光ディスクからの反射光の受光領域を示す概略図である。図8(a)は、ホログラム素子100の分割領域を示す図である。点線は、ホログラム素子100上での光ディスクからの反射光のビーム径101を示している。図において、Y方向が光ディスクのトラック方向である。ホログラム素子100は、第1の領域102、第2の領域103、第3の領域104、第4の領域105、第5の領域106、第6の領域107及び第7の領域108の7つの領域に分割されている。第1の領域102、第2の領域103は、メイン領域として、メインプッシュプル信号の検出に用いられ、第3の領域104〜第6の領域107はサブ領域として対物レンズシフト信号の検出に用いられている。
【0005】
図8(b)は、光検出器200の受光部の配置を示す図である。ホログラム素子100で回折されない0次光は、4分割受光部201により受光され、フォーカス誤差信号、再生信号が検出される。メイン領域受光部群202は、4分割受光部201に対して、Y方向に配置される。メイン領域受光部群202は、受光部203と受光部204とを含み、受光部203と受光部204は、X方向に隣接して配置される。ホログラム素子100の第1の領域102で回折された光ビームは、受光部203により受光される。第2の領域103で回折された光ビームは、受光部204で受光される。一方、受光部205、受光部206は、4分割受光部201とメイン領域受光部群202との間に配置される。ホログラム素子100の第3領域104及び第4の領域105で回折された光ビームは、受光部205により受光される。第5の領域106及び第6の領域107で回折された光ビームは、受光部206により受光される。また、記録再生層を4層有する光ディスクにおける最小層間隔の関係にある2つの記録再生層の間で発生した他層迷光は、迷光207、208、209、210、211、212の図示したような位置に生じるが、それぞれの受光部と他層迷光は離れた位置に配置されるため、受光部には迷光は入らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−135151号公報(公開日:2008年 6月12日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の光ピックアップ装置における受光部の配置は、光ピックアップの厚み方向(Y方向)にトラッキング誤差信号検出用に受光部203〜受光部206が設けられているため、光ピックアップの薄型が困難であるという課題がある。また、複数記録再生層を有する光ディスクからの他層迷光は、最小層間隔の関係にある距離からの迷光だけでなく、層間隔の大きい別の層からの迷光も光検出器200に入射することになる。他層からの迷光は、層間距離が拡がった場合に受光する迷光サイズは大きくなる。
【0008】
図8において、ホログラム素子100の第1の領域102、第2の領域103で回折された迷光は、メイン領域受光部群202に入射していない。しかし、図中に記載されている記録再生層以外の層間隔が異なる別の層からの迷光を考慮にいれると、層間隔の大きい層からの迷光は、受光部上での迷光サイズが大きくなるため、メイン領域受光部群202に入射する可能があり、すべての迷光が入射しない位置に配置することは困難である。
【0009】
また、他層からの迷光が受光部に入射した場合に光ピックアップの対物レンズ位置がレンズシフトした時、受光部上で迷光位置がシフトするために、迷光の影響によりトラッキング誤差信号にオフセットが発生することになり、安定したトラッキング制御ができないという課題が発生する。
【0010】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の記録再生層を有する光ディスクを記録再生する光ピックアップにおいて、記録再生層以外からの他層の迷光が入射した場合でも、トラッキング誤差信号のオフセットが発生せず、安定したトラッキング制御が可能な光ピックアップおよび光情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係る光ピックアップは、複数の記録再生層を有する光記録媒体を記録再生する光ピックアップであって、光記録媒体の信号再生層からの反射光を非回折光と少なくとも6つの1次回折光である第1〜第6の光ビームとに分離する光分離手段と、前記第1の光ビームを受光する第1の受光領域と、前記第2の光ビームを受光する第2の受光領域と、前記第3の光ビーム及び前記第4の光ビームを受光する第3の受光領域と、前記第5の光ビーム及び前記第6の光ビームを受光する第4の受光領域と、前記非回折光を受光する第5の受光領域とからなる光検出器を備えており、前記第1の受光領域及び前記第2の受光領域は、前記第5の受光領域に対して光記録媒体のトラックに対応する方向に位置し、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域は、前記第5の受光領域の中心を通り、前記光記録媒体のトラックに対応する方向をX軸とした場合、それぞれがX軸からオフセットした位置に設けられていることを特徴としている。
【0012】
前記の構成によれば、本発明の光ピックアップにおける第1の受光領域及び第2の受光領域は、第5の受光領域に対して光記録媒体のトラックに対応する方向に位置し、第3の受光領域及び第4の受光領域は、第5の受光領域の中心を通り、光記録媒体のトラックに対応する方向をX軸とした場合、それぞれがX軸からオフセットした位置に設けられている。
【0013】
この構成により、記録再生層以外からの他層の迷光が入射した場合でも、トラッキング誤差信号のオフセットが発生しない。したがって、安定したトラッキング制御が可能になる。また、上述した各受光領域の配置により、光検出器の厚みを抑制できるため、光ピックアップを薄型化できる。以上のことから、本発明に係る光ピックアップは、薄型化を実現できるとともに、より安定したトラッキング制御が可能になるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る光ピックアップにおける前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域は、信号再生層以外の複数の記録再生層からの反射光の前記光分離手段の非回折光が入射しない位置に設けられていることが好ましい。
【0015】
前記の構成によれば、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域には、信号再生層以外の記録再生層からの反射光の前記光分離手段の非回折光が入射しない。非回折光が入射しないため、迷光を抑制できる。したがって、光ピックアップの薄型化を実現できるとともに、より安定したトラッキング制御が可能になるというさらなる効果を奏する。
【0016】
本発明に係る光ピックアップにおける前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域は、信号再生層以外の複数の記録再生層からの反射光が入射する位置に設けられているとともに、前記光検出器は、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域から所定の間隔を設けた位置に補助受光領域を有することが好ましい。
【0017】
前記の構成によれば、前記第3の受光領域及び第4の受光領域は、信号再生層以外の複数の記録再生層からの反射光が入射する位置に設けられている。また、光ピックアップは、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域から所定の間隔を設けた位置に補助受光領域を有する光検出器を備えている。したがって、光ピックアップの薄型化を実現できるとともに、より安定したトラッキング制御が可能になるというさらなる効果を奏する。
【0018】
本発明に係る光ピックアップにおける前記補助受光領域は、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域における前記第1の受光領域側または前記第2の受光領域側に設けられていることが好ましい。
【0019】
前記の構成によれば、前記補助受光領域は、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域における前記第1の受光領域側または前記第2の受光領域側に設けられている。したがって、光ピックアップの薄型化を実現できるとともに、より安定したトラッキング制御が可能になるというさらなる効果を奏する。
【0020】
本発明に係る光ピックアップにおける前記補助受光領域は、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域における前記第5の受光領域側に設けられていることが好ましい。
【0021】
前記の構成によれば、前記補助受光領域は、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域における前記第5の受光領域側に設けられている。したがって、光ピックアップの薄型化を実現できるとともに、より安定したトラッキング制御が可能になるというさらなる効果を奏する。
【0022】
また、前記光ピックアップを備えていることを特徴とする光情報処理装置も本発明に含まれる。この光情報処理装置には、例えば、光記録装置、光再生装置、または光記録再生装置が含まれる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る光ピックアップは、複数の記録再生層を有する光記録媒体を記録再生する光ピックアップであって、光記録媒体からの反射光を非回折光と少なくとも6つの1次回折光である第1〜第6の光ビームとに分離する光分離手段と、前記第1の光ビームを受光する第1の受光領域と、前記第2の光ビームを受光する第2の受光領域と、前記第3の光ビーム及び前記第4の光ビームを受光する第3の受光領域と、前記第5の光ビーム及び前記第6の光ビームを受光する第4の受光領域と、前記非回折光を受光する第5の受光領域とからなる光検出器を備えており、前記第1の受光領域及び前記第2の受光領域は、前記第5の受光領域に対して光記録媒体のトラックに対応する方向に位置し、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域は、前記第5の受光領域の中心を通り、前記光記録媒体のトラックに対応する方向をX軸とした場合、それぞれがX軸からオフセットした位置に設けられている。
【0024】
したがって、光ピックアップの薄型化を実現できるとともに、記録再生層以外からの他層の迷光が入射した場合でも、トラッキング誤差信号のオフセットが発生せず、より安定したトラッキング制御が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る実施形態1の光ピックアップの光路を示す系統図である。
【図2】本発明に係る実施形態1のホログラム素子40の構成を示し、(a)はホログラム素子40の側面図を示し、(b)は第1の回折素子41の分割パターンと回折素子面上のプッシュプルパターンを示し、(c)は第2の回折素子42の分割パターンと回折素子面上のプッシュプルパターンを示す。
【図3】本発明に係る実施形態1のホログラム素子40を採用した場合の第1の回折素子41の分割パターンと光検出器50の受光部パターンと、記録再生層以外の層からの反射光の受光部での領域を示している。
【図4】本発明に係る対物レンズシフトが発生した場合のトラッキング誤差信号を示し、(a)はトラッキング誤差信号のオフセットが発生した場合のトラッキング誤差信号を示し、(b)は実施形態1のトラッキング誤差信号を示す。
【図5】本発明に係る実施形態2のホログラム素子40を採用した場合の第1の回折素子41の分割パターンと光検出器50の受光部パターンと、記録再生層以外の層からの反射光の受光部での領域を示している。
【図6】本発明に係る実施形態3のホログラム素子40を採用した場合の第1の回折素子41の分割パターンと光検出器50の受光部パターンと、記録再生層以外の層からの反射光の受光部での領域を示している。
【図7】本発明に係る実施形態4のホログラム素子40を採用した場合の第1の回折素子41の分割パターンと光検出器50の受光部パターンと、記録再生層以外の層からの反射光の受光部での領域を示している。
【図8】従来技術の光ヘッド装置におけるホログラム素子と受光部の構成を示し、(a)はホログラム素子100の分割パターンを示し、(b)は光検出器200の受光部配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態1〕
本発明の光ピックアップ80は、BD、DVD、CDなどの複数の光ディスク(光記録媒体)に対し、ビーム(光ビーム)を照射することにより、情報を書き込んだり、読み出したりすることができる光情報記録再生装置に組み込まれるものである。
【0027】
本発明の実施形態について、図1〜図3に基づいて説明すると、以下の通りである。図1は、本実施形態の光ピックアップ80の光路を示す系統図である。
【0028】
図1に示されるように、光ピックアップ80において、第1の光源1から出射した光は、光結合素子4で90度方向に光路が曲げられ、光分離素子7に入射する。一方、第2の光源2及び第3の光源3から出射した光は、光結合素子4を透過した後、光分離素子7に入射する。
ここで、第1の光源1は、405nm帯(400〜415nm)の光を放射する半導体レーザである。また、第2の光源2は、660nm帯(650〜670nm)の光を放射し、第3の光源3は、785nm帯(770〜800nm)の光を放射する2波長半導体レーザである。光源波長は、この波長によるものではなく、再生する光ディスクに対応する波長の光源を適宜選択することが可能である。
【0029】
光結合素子4は、第1の光源1から放射される光の波長帯の直線偏光を反射し、第2の光源2及び第3の光源3から放射される波長帯の直線偏光を透過する素子である。例えば、ダイクロイックプリズム等があげられる。
【0030】
また、第1の光源1からの直線偏光を反射させるだけでなく、一定の比率透過させる構成を採用することにより、第1の光源1の透過光が光結合素子4から出射する位置にAPC(Auto Power Control)用の受光素子6を配置することにより、第1の光源1の光出力の制御が可能となる。また、第2の光源2及び第3の光源3からの直線偏光を一定の比率で反射させ、APC用受光素子6に入射させることにより、第1の光源1と同様に第2の光源2及び第3の光源3の光出力を制御することが可能である。光結合素子4で分離する比率としては、第1の光源1、第2の光源2、第3の光源3とも、(それぞれの光源からの出射光量):(APC用受光素子6への入射光量)=90〜95%:5〜10%程度に設定される。
【0031】
また、第2の光源2及び第3の光源3と光結合素子4との間に1/2波長板、3ビーム生成用の回折素子を配置してもよい。本実施形態では、1/2波長板と3ビーム生成用回折素子を一体化した複合素子5を配置している。
【0032】
これにより、光源から出射される直線偏光の偏光方向を回転させることができるため、光分離素子7へ入射する偏光方向を制御することが可能になるとともに、トラッキング誤差信号のための0次光(メインビーム)と±1次回折光(2つのサブビーム)を生成できる。
【0033】
ここで、第1の光源1と第2の光源2及び第3の光源3の配置は、本実施形態の構成に限定されるものではなく、入れ替えて配置しても良い。また、第1の光源1と光結合素子4との間に1/2波長板(図示せず)を配置しても良い。
【0034】
光結合素子4から出射した光は、光分離素子7により、光ディスクの方向へ反射される。光分離素子7は、第1の光源1、第2の光源2及び第3の光源3から出射される直線偏光(例えば、S偏光)を反射し、光ディスクで反射した直線偏光(P偏光)を透過するように設計がなされている。例えば、偏光ビームスプリッタがあげられる。
【0035】
光分離素子7で反射した光は、コリメータレンズ8で平行光になる。コリメータレンズ8は、ステッピングモータや圧電素子等で構成される駆動部9でZ軸方向に移動可能な構成となっている。そして、1/4波長板10により直線偏光から円偏光に変換される。そして、立上げミラー(図示せず)によって反射され、第1の光源1からの出射光は、第1の対物レンズ21を介して第1の光ディスクに集光される。また、第2の光源2及び第3の光源3から出射された光は、第2の対物レンズ22に介して、第2の光ディスク及び第3の光ディスクに集光される。
【0036】
アクチュエータ20の対物レンズホルダ23には、第1の対物レンズ21と第2の対物レンズ22とが取り付けられている。第1の対物レンズ21は、第1の光ディスクに集光するためのものである。第2の対物レンズ22は、第2の光ディスク、第3の光ディスクに集光するためのものである。なお、第1の光ディスク、第2の光ディスク及び第3の光ディスクは、カバー層が互いに異なる光ディスクである。第1の対物レンズ21と、第2の対物レンズ22とは、Y軸方向から見て、Z方向にオフセットされた位置になるように配置されている。また、第1の対物レンズ21及び第2の対物レンズ22は、同一のXZ平面内に取り付けられている。
【0037】
ここでは、第1の対物レンズ21と第2の対物レンズ22とがZ軸方向に配置されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、X軸方向に第1の対物レンズ21と第2に対物レンズ22が配置されてもよい。
【0038】
第1の光ディスクにて反射した反射光は、再び第1の対物レンズ21を介して、1/4波長板10で円偏光から直線偏光に変換される。第1の光ディスク及び第3の光ディスクで反射した反射光は、第2の対物レンズ22を介して、1/4波長板10で円偏光から直線偏光に変換される。
【0039】
そして、コリメータレンズ8を介して、光分離素子7を透過し、第1の光源1、第2の光源2及び第3の光源3とは異なる方向に導かれる。光分離素子7を透過した光は、検出レンズ30を介して、ホログラム素子40に入射する。
【0040】
ホログラム素子40は、トラッキング誤差信号検出のために、光を分割するためものであり、ホログラム素子40で非回折光と1次回折光に分離された光は、光検出器50に入射し、サーボ信号または光ディスクに記録されている情報再生信号(RF信号)が検出される。
【0041】
検出レンズ30は、凹面と円筒面から構成されるレンズである。円筒面は、光に非点収差を発生させるためのものである。レンズ面形状は、後述するサーボ検出方法または光検出器の受光面サイズ等から設計されるため、本実施形態に限定されるものでは無く、凸面または平面の採用も可能である。また、検出レンズ30は、複数のレンズから構成されてもよい。また、検出レンズ30は、Z軸方向に調整可能な構造となっており、レンズコバ部が調整用ガイドの機能を有する構成であってよい。
【0042】
光検出器50は、第1の光ディスクにて反射される反射光、第2の光ディスクにて反射される反射光及び第3の光ディスクにて反射された反射光を検出するためのものであり、第1の光ディスク、第2の光ディスク及び第3の光ディスクの記録再生時におけるフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号、及び再生信号が得られるようになっている。
【0043】
ここで第1の光源1として波長405nm程度のビームを出射する短波長光源を採用し、第1の対物レンズ21としてNA0.85程度の高NA対物レンズを採用している。これにより、第1の光ディスクのトラック上の情報を、高密度で記録再生することが可能になっている。しかしながら、光源1、及び第1の対物レンズ21は、この構成に限定されるものではない。
【0044】
また、このように第1の光源1として短波長光源を採用し、第1の対物レンズ21として高NA対物レンズを採用した場合、第1の光ディスクのカバー層の厚み誤差により大きな球面収差が発生することになる。そこで、本光ピックアップ80では、このカバー層の厚み誤差で生じる球面収差を補正するために、コリメータレンズ8を光軸方向に位置調整する駆動部9が設けられている構成になっていてもよい。あるいは、本光ピックアップ80は、コリメータレンズ8と第1の対物レンズ21との間に、2枚のレンズ群で構成されるビームエキスパンダ(図示せず)が配置された構成であってもよい。ビームエキスパンダが配置された構成では、2枚のレンズ群の間隔を調整するビームエキスパンダ駆動機構(図示せず)により、カバー層の厚み誤差で生じる球面収差を補正するようになっている。
【0045】
上述した光ピックアップ80の構成は、3つの波長の光源に対応した構成となっているが、2波長のみ、もしくは1波長のみに対応した構成でもよい。
【0046】
続いて、図2を用いて本実施形態のホログラム素子について説明する。図2(a)は、ホログラム素子40の構成を示している。ホログラム素子40は、第1の波長に対応した第1の回折素子41と第2の波長に対応した第2の回折素子42から構成されている。第1の回折素子41は、第1の波長のみを回折し、第2の回折素子42は、第2の波長のみを回折させることができ、波長選択性を有している。本実施形態のホログラム素子40では、第3の波長に対しても回折光を生成しない。
【0047】
図2(b)、(c)は、第1の回折素子41と第2の回折素子42の回折素子の分割パターンとそれぞれの回折素子面上のプッシュプルパターンを示している。図2(b)は、本実施形態における第1の回折素子41のホログラムの分割パターンと回折素子上のプッシュプルパターン60を示している。第1の回折素子41はトラッキング誤差信号を検出するため6分割されている。本実施形態では、プッシュプル信号を検出するため41aと41bとの2つ領域に分割され、対物レンズシフト信号を検出するために41c〜41fの4つの領域に分割されている。第1の回折素子41の格子ピッチは、光検出器50の受光部までの距離と受光部パターンとの位置から決定される。
【0048】
図2(c)は、第2の回折素子42のホログラムの分割パターンと回折素子上のプッシュプルパターン61を示している。本実施形態では、第1の回折素子41と同様に6分割され、プッシュプル信号を検出するため42aと42bの2つ領域に分割され、対物レンズシフト信号を検出するために42c〜42fの4つの領域に分割されている。
【0049】
分割パターンは、本実施形態に限定されるものでは無く、第1の回折素子41と第2の回折素子42の分割パターンとは異なっていてもよい。また、第1の回折素子41と第2の回折素子42のパターンは、それぞれのパターン中心が同じ位置になるように位置決めされ製造される。
【0050】
図3は、本実施形態のホログラム素子40を採用した場合の光検出器50の受光部パターンを示している。1例として、第1の光源1からの出射光を受光した状態を示している。本実施形態の光検出器50の受光部パターンは、第1の光源1と第2の光源2から出射し、複合素子5で生成されるメインビームは、それぞれの光源から出射した光を同じ受光部パターンで受光する構成となっている。
【0051】
本実施形態の光検出器50の受光部パターンは、第1の回折素子41の非回折光(0次回折光)を受光する4つの領域(受光部)51a、51b、51c、51dと、1次回折光を受光する4つの領域(受光部)51i、51j、51k、51lから構成されている。
【0052】
第1の回折素子41は、受光部51a〜51dの中心と第1の回折素子41のパターン中心とが一致し、Z軸方向にある間隔を持って配置されているが、図中、第1の回折素子41は、受光素子に対してY方向にオフセットした位置に配置して記載している。
【0053】
光検出器50の1次回折光を受光する4つの領域51i、51j、51k、51lは、ホログラム素子40により回折される回折方向に受光部形状が長いことが望ましい。これにより、製造公差、部品公差、光源の波長変動等の誤差要因が発生した場合でも、受光部から集光スポットがはみ出ることを防ぐことができ、安定したサーボ制御が可能となる。
【0054】
また、受光部51i、51j、51k、51lの受光部形状は、第1の回折素子41と第2の回折素子42の回折素子の分割パターンの分割線と平行な方向に長いことが望ましい。これにより、対物レンズがシフトした場合でも、他層迷光がシフトする方向と一致するため、迷光の影響を低減することが可能となる。
【0055】
図3を用いて、サーボ信号生成の動作を説明する。受光部51a〜51d,51i〜51lの出力信号をSa〜Sd,Si〜Slと表す。
【0056】
RF信号(RF)は非回折光を用いて検出する。
RF=Sa+Sb+Sc+Sd
DPD法によるトラッキング誤差信号(TES1)、Sa〜Sdの位相比較を行うことにより検出される。
【0057】
1ビームDPP法によるトラッキング誤差信号(TES2)は以下の演算式で検出される。
TES2=(Si−Sj)−α(Sk−Sl)
ここで、αは対物レンズシフトや光ディスクチルトによるオフセットをキャンセルするのに最適な係数に設定される。
【0058】
フォーカス誤差信号(FES)は非点収差法を用いて検出する。
FES=(Sa+Sc)−(Sb+Sd)
本実施形態において、第2の回折素子42で回折される第2の光源2からの光は、第1の光源1と同一の受光部パターンで受光するため、同じ演算によりサーボ信号を検出している。次に、第2の光源2から出射し、複合素子5のグレーティング面により3ビームが生成された場合のサーボ信号検出ついて説明する。
【0059】
3ビームによるサーボ検出には、受光部51a〜51h´の12個の受光領域で検出する。受光部51a〜51h´の出力信号をSa〜Sh´と表す。
RF信号(RF)は非回折光を用いて検出する。
RF=Sa+Sb+Sc+Sd
3ビーム法によりトラッキング誤差信号(TES3)は、以下の演算式で検出される。
TES3={(Sa+Sb−(Sc+Sd)}−α{(Se+Se´+Sf+Sf´)
−(Sg+Sg´+Sh+Sh´)}
ここで、αは対物レンズシフトや光ディスクチルトによるオフセットをキャンセルするのに最適な係数に設定される。
【0060】
フォーカス誤差信号(FES2)は非点収差法を用いて検出する。
FES2=(Sa+Sc)−(Sb+Sd)
3ビームによりサーボ信号を検出する場合は、受光領域51i〜51lにも光は入射するが、サーボ信号には用いない。
【0061】
第3の光源3から出射し、複合素子5のグレーティング面により3ビームを生成した場合のサーボ信号検出ついて説明する。
【0062】
3ビームによりサーボ検出は、受光部510a〜510h´の12個の受光領域で検出する。受光部510a〜510h´の出力信号をS0a〜S0h´と表す。
【0063】
RF信号(RF)は非回折光を用いて検出する。
RF=S0a+S0b+S0c+S0d
3ビーム法によりトラッキング誤差信号(TES4)は、以下の演算式で検出される。TES4={(S0a+S0b−(S0c+S0d)}−α{(S0e+S0e´
+S0f+S0f´)−(S0g+S0g´+S0h+S0h´)}
ここで、αは対物レンズシフトや光ディスクチルトによるオフセットをキャンセルするのに最適な係数に設定される。
【0064】
フォーカス誤差信号(FES3)は非点収差法を用いて検出する。
FES3=(S0a+S0c)−(S0b+S0d)
本実施形態では、第1の光源1、第2の光源2及び第3の光源3の3つの波長に対応したサーボ検出方法を示しているが、受光する受光領域は、本実施形態の構成のみに適用されるものではなく、各光源と受光領域の組合せが変わっても良い。
【0065】
続いて、複数の記録再生層からなる光ディスクを再生した際、必要な情報が記録されている記録再生層(信号再生層)以外の別の層からの迷光(以下、他層迷光)の影響について説明する。
【0066】
図3は、光ディスクの他層迷光(0次迷光70、1次迷光71、72)が、光検出器50に入射するときの領域を示している。0次迷光70は、第1の回折素子41の非回折光、1次迷光71、72は、第1の回折素子41の領域41aと41bとで回折された迷光を示している。
【0067】
この迷光の受光状態は、記録再生層と記録再生層以外の層との層間距離の違いとホログラム素子40での迷光のスポットサイズ等で変化する。ここでは、0次迷光70が最も大きくなる状態での受光状態を示している。
【0068】
光ディスクとしてBDを用いた場合では、層間距離は、10〜50μm程度に設定される。
【0069】
本実施形態の受光部パターンは、0次迷光70が、受光部51i〜51lに入射しないことが望ましい。これは、ホログラムの回折効率は、(0次効率):(1次効率)=10:1程度に設定されるため、受光部51i〜51lで受光される記録再生層の信号光はホログラム素子40の1次回折光を利用するのに対して、0次迷光70はホログラム素子40の非回折光である。このため、信号光に対して受光光量が大きいため、信号品質に影響を与えることが考えられる。これは、記録再生層以外の層の記録状態や、記録再生層からの反射光と他層迷光の干渉により、信号品質が悪化する。本実施形態のように、0次迷光70が入射しない位置に受光部51i〜51lを配置することで、他層迷光の影響を受けないことから、品質のよいトラッキング誤差信号の検出ができ、安定したトラッキング制御を行うことが可能となる。
【0070】
図4は、本願発明の受光部配置での対物レンズシフト(±200μm)が発生した場合のトラッキング誤差信号を示している。図4(a)は、受光部51kと51lに1次迷光71、72が入射した場合、図4(b)は入射しない場合のトラッキング誤差信号(TES2)を示している。
【0071】
図4から明らかなように、1次迷光71、72が受光部51kと51lに入射したとき、対物レンズシフトが発生した場合に、トラッキング誤差信号にオフセットが発生している。ここで、プッシュプル信号の信号振幅をAC、発生するオフセットをDCとした場合、オフセット量(=DC/AC)は、12.3%程度となる。安定したトラッキング制御を行うためには、オフセット量として、10%以下であることが望ましく、1次迷光71、71が入射した受光部の配置では、安定したトラッキング制御が困難である。
【0072】
一方、本実施形態では、51kと51lに記録再生層以外の層からの迷光は受光しない。図4(b)は、この場合のトラッキング誤差信号を示している。オフセット量は、2.5%となっているため、安定したトラッキング制御が可能となる。
【0073】
上述のオフセットの発生が小さいトラッキング誤差信号を得るための受光部配置は、以下の配置が望ましい。
【0074】
例えば、光学系の復路焦点距離を12mm、対物レンズの焦点距離1.1765mm、および層間隔が最大50μmのときの0次迷光サイズは、受光面上で半径0.55mm程度のサイズで光検出器に入射することになる。また、ホログラム素子40の第1の回折素子41で回折される回折光は、組立公差等を考慮に入れると設計位置に対して、±0.1mm程度の受光位置が変化するため、受光部51i〜51lとしては、それぞれ回折方向に0.2mm程度の長さが必要となる。よって、4つの受光部51a〜51dからなる4分割受光部の中心(以下、4分割受光部中心)と受光部51i〜51lそれぞれの受光部中心までの距離は、0次迷光サイズ半径0.55m+受光部51i〜51lの受光部の長さ0.1mmを加算した0.65mm以上離れていることが望ましい。4分割受光部中心から0.65mm以上離すことにより、0次迷光70が受光部51i〜51lに入射しないため、トラッキング誤差信号にオフセットを発生しない安定したトラッキング制御が可能となる。
【0075】
本実施形態では、受光部51iと51jとは、受光部中心から、X方向のオフセットした位置に配置されている。X方向は光ディスクのトラック方向に相当する方向であるが、検出レンズ30の円筒面によりプッシュプルパターンが90度方向に回転し、光検出器50に入射するため、本実施形態においても、90度方向に回転した方向をトラック方向としている。
【0076】
また、0次迷光70の迷光サイズは、対物レンズの焦点距離及び光学系の復路焦点距離により、光検出器50の受光部上で変化する。Y方向に受光部51i、51jを配置した場合、光学設計の変更により、対物レンズの焦点距離を短くする場合または光学系の復路焦点距離を長くする場合に、0次迷光70の迷光サイズは大きくなる。0次迷光70が大きくなった場合、Y方向の受光部領域が大きくなるため、光検出器50のチップサイズ、受光部をボンディングするパッケージの構成より光ピックアップ80の厚み方向(Y方向)の低減が困難となる。
【0077】
一方、本実施形態のように、X方向に配置した場合は、光ピックアップ80の厚み方向への増加を避けることができるため、光ピックアップ80の厚みを維持したまま、容易に光学設計を変更することができ、光検出器の受光部配置の自由度が向上することから、よりトラッキング誤差信号のオフセットの小さい光ピックアップ80を容易に提供することが可能となる。
また、光検出器50の受光面とホログラム素子40の第1の回折素子41までの距離を3.5mmとした場合、一般的に製造可能ホログラム素子40の第1の回折素子41及び第2の回折素子42の格子ピッチは1μm程度であるため、4分割受光部中心から受光部51i〜51lのそれぞれの受光部の中心までの距離は、1.4mm以下であることが望ましい。
【0078】
4分割受光部中心から受光部51i、51j中心までの距離と、4分割受光部中心から受光部51k、51l中心までの距離は、同じか、もしくは受光部51k、51lまでの距離が遠い方が望ましい。受光部51iから受光部51lまでの同じ距離にした場合は、第1の回折素子41及び第2の回折素子42の格子ピッチをほぼ同程度のピッチで製造することが可能であるため、第1の回折素子41と第2の回折素子42それぞれの回折素子内で分割された領域間のバラツキを抑えることが可能となり、受光部51i〜51lで受光される光量バラツキが抑えられ、より安定したトラッキング制御が可能となる。
【0079】
また受光部51k、51lが遠い場合においては、後述する補助受光部を0次迷光70の影響を受けない位置に配置することが可能となり、安定したトラッキング制御が可能となる。
【0080】
さらに、受光部51kと51lとは、1次迷光71、72が入射しない位置に配置することが望ましい。これは、0次迷光70が入射する場合よりも、信号品質の悪化は小さいが、影響があるためである。
【0081】
以上のように、受光部51kと51lとを他層迷光が入射しない位置に配置することにより、安定したトラッキング制御が可能な光ピックアップ80を提供することができる。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図5に基づいて説明する。
【0082】
図5は、本発明のホログラム素子40の第1の回折素子41の分割パターンと本発明の実施形態の受光部パターンを示している。
【0083】
なお、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0084】
本実施形態において、光検出器50の受光部パターンが異なる点が、実施形態1とは異なる。具体的には、本実施形態の受光部パターンは、第1の回折素子41の非回折光(0次回折光)を受光する4つ受光部51a、51b、51c、51dと第1の回折素子41の1次回折光を受光する4つの受光部51i、51j、51k、51lと、記録再生層以外の層からの迷光のみが入射する補助受光部51k´、51l´とから構成されている。
【0085】
第1の回折素子41は、受光部51a〜51dの中心と第1の回折素子41のパターン中心とが一致し、Z軸方向にある間隔を持って配置されているが、図中、第1の回折素子41は、受光素子に対して、Y方向にオフセットした位置に配置し記載している。
【0086】
受光部51a〜51d,51i〜51l、51k´、51l´の出力信号をSa〜Sd,Si〜Sl、Sk´、Sl´と表す。
【0087】
この分割パターンを採用した場合のTES信号(TES5)は、
TES5=(Si−Sj)−α{(Sk+Sk´)−(Sl+Sl´)}になる。
【0088】
ここで、αは対物レンズシフトや光ディスクチルトによるオフセットをキャンセルするのに最適な係数に設定される。
【0089】
ここで、受光部51k、51lは、1次迷光71、72の入射位置に配置されている。図4(a)に示すように受光部51k、51lに入射した場合は、トラッキング誤差信号にオフセットが生じる。オフセットは、1次迷光71、72が対物レンズシフト時に受光部51kと51lに均一に入射しないために発生する。
【0090】
オフセットを低減するため、本実施形態では、受光部51kと51lとの近傍に補助受光部51k´と51l´が設けられている。51k´と51l´とには、記録再生層からの信号光は入射せず、他層迷光のみが入射する。具体的には、受光部51k´は、受光部51lの受光部51a〜51dが配置される側の位置に設けられる。また、受光部51l´は、受光部51kの受光部51a〜51dが配置される側の位置に設けられる。補助受光部のサイズは、TES5の演算式により、対物レンズシフトに対して、変化するオフセット量が低減されるサイズが望ましい。本実施形態では、受光部51kに対して、51k´の面積は、50%程度に設定されている。受光部51lに対しても同様に、補助受光部51l´は、50%程度に設定されている。補助受光部のサイズは、これに限定されるものではなく、トラックオフセットの影響が小さくなるサイズに設定されればよい。
【0091】
受光部51kと受光部51lとは、X軸に対して、+Y方向及び−Y方向それぞれにオフセットした位置に配置されることが望ましい。これにより、対物レンズシフトが発生した際に受光部51k、51lそれぞれにほぼ同等に他層迷光が入射するため、トラッキング誤差信号に発生するオフセットのキャンセル効果が高い。結果として、オフセットの小さいサーボ信号を得ることができるため、安定したトラッキング制御が可能となる。
【0092】
本実施形態の構成によると、発生するトラッキング誤差信号のオフセットは、6.7%程度であり、安定したトラッキング制御が可能である。
【0093】
また、本実施形態では、補助受光部51k´と51l´は、受光部51a〜51dが配置されている側に設けているが、受光部51a〜51dが配置されている側とは反対方向に設けてもよい。この配置でも、同様の効果が得られるほか、0次迷光70から遠ざけることが可能であるため、他層迷光の影響をより避けることが可能となる。
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図6に基づいて説明する。
【0094】
図6は、本発明のホログラム素子40の第1の回折素子41の分割パターンと本発明の実施形態の受光部パターンを示している。
【0095】
なお、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0096】
本実施形態において、光検出器50の受光部パターンが異なる点が、実施形態1とは異なる。
具体的には、本実施形態の受光部パターンは、第1の回折素子41の非回折光(0次回折光)を受光する4つ受光部51a、51b、51c、51dと第1の回折素子41の1次回折光を受光する4つの受光部51i、51j、51k、51lと、他層迷光のみが入射する補助受光部51k´´、51l´´とから構成されている。
【0097】
第1の回折素子41は、受光部51a〜51dの中心と第1の回折素子41のパターン中心とが一致し、Z軸方向にある間隔を持って配置されているが、図中、第1の回折素子41は、受光素子に対して、Y方向にオフセットした位置に配置し記載している。
【0098】
受光部51a〜51d,51i〜51l、51k´´、51l´´の出力信号をSa〜Sd,Si〜Sl、Sk´´、Sl´´と表す。
【0099】
この分割パターンを採用した場合のTES信号(TES6)は、
TES6=(Si−Sj)−α{(Sk+Sk´´)−(Sl+Sl´´)}になる。
【0100】
ここで、αは対物レンズシフトや光ディスクチルトによるオフセットをキャンセルするのに最適な係数に設定される。
【0101】
ここで、受光部51k、51lに1次迷光71及び1次迷光72が入射位置に配置されている。図6に示すように受光部51k、51lに入射した場合は、トラッキング誤差信号にオフセットが生じる。オフセットは、1次迷光71、72が対物レンズシフト時に1次迷光が51kと51lとに均一に入射しないために発生する。
【0102】
本実施形態では、受光部51kと51lとの近傍に補助受光部51k´´と51l´´とが設けられている。51k´´と51l´´とには、記録再生層からの信号光は入射せず、記録再生層以外の層からの迷光のみが入射する。具体的には、受光部51k´´は、受光部51jと受光部51lとの間に設けられる。また、受光部51l´´は、受光部51iの受光部51kの間に設けられる。補助受光領域のサイズは、TES3の演算式により、対物レンズシフトに対して、変化するオフセット量が低減されるサイズが望ましい。
【0103】
本実施形態では、受光部51kに対して、51k´´の面積は、20%程度に設定されている。受光部51lに対しても同様に、補助受光部51l´´は、20%程度に設定されている。補助受光部のサイズは、これに限定されるものではなく、トラックオフセットの影響が小さくなるサイズに設定されればよい。
【0104】
本実施形態の構成によると、発生するTES6のオフセット量は、6.7%程度であり、安定したトラッキング制御が可能である。
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、図7に基づいて説明する。
【0105】
図7は、本発明のホログラム素子40の第1の回折素子41の分割パターンと本発明の実施形態の受光部パターンを示している。なお、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0106】
本実施形態において、光検出器50の受光部パターンが異なる点が、実施形態1とは異なる。
具体的には、本実施形態の受光部パターンは、第1の回折素子41の非回折光(0次回折光)を受光する4つ受光部51a、51b、51c、51dと第1の回折素子41の1次回折光を受光する4つの受光部51i、51j、51k、51lと、他層迷光のみが入射する補助受光部51k´、51k´´、51l´、51l´´とから構成されている。
【0107】
第1の回折素子41は、受光部51a〜51dの中心と第1の回折素子41のパターン中心とが一致し、Z軸方向にある間隔を持って配置されているが、図中、第1の回折素子41は、受光素子に対して、Y方向にオフセットした位置に配置し記載している。受光部51a〜51d,51i〜51l、51k´、51k´´、51l´、51l´´の出力信号をSa〜Sd,Si〜Sl、Sk´、Sl´、Sk´´、Sl´´と表す。
【0108】
この分割パターンを採用した場合のTES信号(TES7)は、
TES7=(Si−Sj)−α{(Sk++Sk´+Sk´´)−(Sl+Sl´+Sl´´)}になる。
【0109】
ここで、αは対物レンズシフトや光ディスクチルトによるオフセットをキャンセルするのに最適な係数に設定される。
【0110】
ここで、受光部51k、51lに1次迷光71及び1次迷光72が入射位置に配置されている。図7に示すように受光部51k、51lに入射した場合は、トラッキング誤差信号にオフセットが生じる。オフセットは、1次迷光が対物レンズシフト時に1次迷光が51kと51lに均一に入射しないために発生する。
【0111】
本実施形態では、受光部51kと51lの近傍に補助受光部51k´、51k´´、51l´、51l´´が設けられている。補助受光部51k´、51k´´、51l´、51l´´には、記録再生層からの信号光は入射せず、他層迷光のみが入射する。具体的には、受光部51k´は、受光部51lの受光部51a〜51dが配置される側の位置に設けられる。また、受光部51l´は、受光部51kの受光部51a〜51dが配置される側の位置に設けられる。また、受光部51k´´は、受光部51jと受光部51lとの間に設けられる。また、受光部51l´´は、受光部51iの受光部51kの間に設けられる。
【0112】
補助受光部のサイズは、TES7の演算式により、対物レンズシフトに対して、変化するオフセット量が低減されるサイズが望ましい。本実施形態では、51k´の面積は、受光部51kの50%程度に設定されている。51k´´の面積は、受光部51kの20%程度に設定されている。同様に、補助受光部51l´、51l´´は、それぞれ51lに対して、50%、20%程度に設定されている。
【0113】
補助受光部のサイズは、これに限定されるものではなく、トラックオフセットの影響が小さくなるサイズに設定されればよい。
【0114】
本実施形態の構成によると、発生するTES7のオフセットは、6.1%程度であり、安定したトラッキング制御が可能である。
【0115】
(付記事項)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の光ピックアップは、光情報記録媒体に対して光学的に情報を記録または再生する光ピックアップ一般において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0117】
80 光ピックアップ
1 第1の光源
2 第2の光源
3 第3の光源
4 光結合素子
5 複合素子
6 APC用受光素子
7 光分離素子
8 コリメータレンズ
9 駆動部
10 1/4波長板
20 アクチュエータ
21 第1の対物レンズ
22 第2の対物レンズ
23 レンズホルダ
30 検出レンズ
40 ホログラム素子(光分離手段)
50 光検出器
51a 受光部(第5の受光領域)
51b 受光部(第5の受光領域)
51c 受光部(第5の受光領域)
51d 受光部(第5の受光領域)
51i 受光部(第1の受光領域 第3の受光領域)
51j 受光部(第2の受光領域 第4の受光領域)
51k 受光部(第3の受光領域 第1の受光領域)
51l 受光部(第4の受光領域 第2の受光領域)
51k´ 補助受光部(補助受光領域)
51k´´ 補助受光部(補助受光領域)
51l´ 補助受光部(補助受光領域)
51l´´ 補助受光部(補助受光領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録再生層を有する光記録媒体を記録再生する光ピックアップであって、
光記録媒体の信号再生層からの反射光を非回折光と少なくとも6つの1次回折光である第1〜第6の光ビームとに分離する光分離手段と、前記第1の光ビームを受光する第1の受光領域と、前記第2の光ビームを受光する第2の受光領域と、前記第3の光ビーム及び前記第4の光ビームを受光する第3の受光領域と、前記第5の光ビーム及び前記第6の光ビームを受光する第4の受光領域と、前記非回折光を受光する第5の受光領域とからなる光検出器を備えており、
前記第1の受光領域及び前記第2の受光領域は、前記第5の受光領域に対して光記録媒体のトラックに対応する方向に位置し、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域は、前記第5の受光領域の中心を通り、前記光記録媒体のトラックに対応する方向をX軸とした場合、それぞれがX軸からオフセットした位置に設けられていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域は、上記信号再生層以外の複数の記録再生層からの反射光の前記光分離手段の非回折光が入射しない位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域は、信号再生層以外の複数の記録再生層からの反射光が入射する位置に設けられているとともに、前記光検出器は、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域から所定の間隔を設けた位置に補助受光領域を有することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
前記補助受光領域は、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域における前記第1の受光領域側または前記第2の受光領域側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ。
【請求項5】
前記補助受光領域は、前記第3の受光領域及び前記第4の受光領域における前記第5の受光領域側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光ピックアップを搭載したことを特徴とする光情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−198421(P2011−198421A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65961(P2010−65961)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】