説明

光ピックアップ装置及び光情報装置

【課題】光源が発した光ビームの光パワーを調整するための光ビーム透過調整手段でフォーカシングサーボを不安定にすることがなく、同一光ディスクで記録再生の線速度を切替える際に既存のデータを破壊することのない光ピックアップ装置及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】光ビーム透過調整手段100は、ビームスプリッタ101と、液晶素子102と、光ビーム透過調整制御回路103とによって構成される。液晶素子102は、印加される電圧に従って入射する光ビームの偏光方向を回転する。光ビーム透過調整制御回路103は、出力電圧を切替える際、電圧値を連続的に変化させつつ出力する。また、同一の光ディスクに対して記録または再生動作中に同一半径位置において光ピックアップ装置に対する光ディスクの線速度を高線速度から低線速度へ切替える前に連続的に透過率を減衰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置及び該光ピックアップ装置を備えた光情報装置に関するものである。より具体的には、本発明は、GaN系半導体を用いた青色発光の半導体レーザ等の短波長の半導体レーザを放射する光ピックアップ装置及び光情報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルバーサタイルディスク(DVD)は、デジタルデータをコンパクトディスク(CD)の約6倍の記録密度で記録することが可能であり、映画や音楽などの大容量のデジタルデータを書き込むことができる情報記録媒体として、いわゆる光ディスクとして知られている。
【0003】
近年は、記録対象となる情報の情報量が増大しているため、さらに容量の大きい情報記録媒体が求められている。
【0004】
光ディスクの情報記録媒体の容量を大きくするためには、情報の記録密度を高くする必要がある。これは一般に、データの書き込み時及び読み出し時に、光ディスクに放射されるレーザ光のスポット径を小さくすることによって実現される。そして、光のスポット径を小さくするためには、レーザ光の波長をより短くし、かつ、対物レンズの開口数(NA)を大きくすればよい。DVDでは、波長660nmの光源と、NA0.6の対物レンズとが使用されている。さらに、例えば波長405nmの青色レーザ光と、NA0.85の対物レンズとを使用することによって、現在のDVDのさらに5倍の記録密度で情報を記録することができる。
【0005】
青色レーザ等を用いてレーザ光の短波長化することに加え、さらに記録密度を高めるため、1枚の光ディスクに複数の記録層を設ける技術の開発も進んでいる。例えば、2層の記録層を有する光ディスクを得ることが可能になれば、上述のレーザ光の短波長化及びNAの大きな対物レンズの使用と併せて、記録密度は、1層の記録層を有するDVDの約10倍になる。
【0006】
しかしながら、青色レーザを光源とする光ディスク装置では、青色レーザにおける再生用の光パワーのマージンは極めて小さいため、光源の量子ノイズが問題となる。
【0007】
従って、光源の量子ノイズの問題を解決するため種々の対策が考案されている。
【0008】
例えば特許文献1に示す従来の光ディスク装置は、装填された光ディスクの記録層が1層の時には回転によって光軸上に強度フィルタを挿入し、記録層が複数層の時には透過フィルタを挿入することにより、例えば半導体レーザの量子ノイズを低く保つことができ、良質の再生が可能となっている。
【0009】
以下、図14、図15(a)、図15(b)を参照しながら、この光ピックアップ装置を説明する。
【0010】
図14は、従来の光ピックアップ装置の構成を示す構成説明図。GaN系の青色発光する半導体レーザ光源41が青色の光ビームを放射すると、光ビームは、光ビーム透過調整素子200に入射する。光ビーム透過調整素子200は、光ディスク50からのデータの読み出し時か、光ディスク50へのデータの書き込み時かに応じて所定の位置に回動され、強度フィルタの位置が調整されている。光ビーム透過調整素子200を透過した光ビームは、ビームスプリッタ42で反射され、コリメートレンズ43で平行光にされ、ミラー44で反射され、対物レンズ45を透過して、光ディスク50上に集光される。
【0011】
データの読み出し時には、集光された光ビームは、光ディスク50の記録層で反射され、逆の経路でビームスプリッタ42に至り、ビームスプリッタ42を透過して、マルチレンズ47を経てフォトダイオード48に入射する。フォトダイオード48は、いわゆる光検出器であり、入射した光の位置及び強度に基づいて電気信号を出力する。その電気信号に基づいて、データが再現される。
【0012】
一方、データの書き込み時には、集光された光ビームによって情報層上に光スポットが形成される。その結果、光スポットが形成された部分の記録層の状態、例えば結晶状態が書き込み対象のデータに応じて変化する。これにより光ディスク50には、記録層の状態の変化としてデータが書き込まれる。
【0013】
図15(a)は、光ビームが光ビーム透過調整素子200の光学フィルタを透過するときの斜視図であり、図15(b)は光ビームが光ビーム透過調整素子200の光学フィルタを透過しないときの斜視図である。光ビームは矢印によって示す方向に進行する。
【0014】
光ビーム透過調整素子200は、第1の透過素子201と、第2の透過素子202と、回転軸203と、支持手段204と、回転駆動手段205とを有する。第1の透過素子201には透過率を低下させる光学フィルタ201aが塗布されており、透過する光ビームの光パワーを減衰させる。一方、第2の透過素子202には光学フィルタは塗布されておらず、光ビームの光パワーを概ね維持した状態で光ビームを透過させる。支持手段204は、回転軸203周りに第1の透過素子201と第2の透過素子202とを回転可能に支持する。回転軸203は、第1の透過素子201および第2の透過素子202に平行である。回転駆動手段205は、第1の透過素子201と第2の透過素子202とを回転軸203周りに回転駆動する。
【0015】
光ビーム透過調整素子200は、回転駆動手段205を利用して回転軸203周りの回転駆動を行うことにより、光ビームが第1の透過素子201を透過するか(図15(a))、第2の透過素子202を透過するか(図15(b))を切り替えることができる。すなわち、光ビームが光学フィルタ201aを透過するか透過しないかを切り替えることができる。光ビームが光学フィルタ201aを透過する場合の光パワーは透過しない場合に比べて光パワーが低く抑えられる。
【0016】
また、記録時と再生時、または種類の異なる光ディスク、多層光ディスクの各記録面に対して、光結合効率可変素子を用いて光源の量子ノイズの問題を解決するための技術が特許文献2から特許文献6によって開示されている。
【特許文献1】特開2006−40432号公報
【特許文献2】特開2002−260272号公報
【特許文献3】特開2003−157566号公報
【特許文献4】特開2003−196880号公報
【特許文献5】特開2004−220744号公報
【特許文献6】特開2004−272962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、光ビーム透過調整素子200の第1の透過素子201および第2の透過素子202を回転により切替える構成によれば簡易な構成により半導体レーザの量子ノイズを低く保った状態で出力する光パワーを低減することを可能とする一方で、光学フィルタ切替え時すなわち光ビームの透過率切替え時にサーボ信号が不安定になるという問題を有していた。
【0018】
より具体的に説明すると、第1の透過素子201および第2の透過素子202を回転により切替えることによって、瞬時に透過率を切替えることとなり、光ピックアップ装置として出力する光パワーが瞬時に変化することとなる。従って、光ディスク50の記録層で反射されてフォトダイオード48に入射する光の強度が瞬時に変化する。すなわち、フォーカシングサーボにおけるフォーカシング誤差信号の感度が瞬時に変化してしまい、フォーカシングサーボが不安定となる。その結果、サーボの応答が遅くなり、装置としての商品性を低下させるという問題点があった。
【0019】
また、同一の光ディスクに対して記録または再生動作中に外乱振動や急激な温度変化などサーボを不安定な状態にする種々の要因により、同一半径位置において光ピックアップ装置に対する光ディスクの線速度を高線速度から低線速度へ切替える際、光ビーム透過調整手段の透過率が低下する前に光ディスクの線速度が遅くなってしまうと既に記録されているデータを破壊してしまう可能性がある。
【0020】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、光源が発した光ビームの光パワーを調整するための光ビーム透過調整手段でフォーカシングサーボを不安定にすることがなく、同一光ディスクで記録再生の線速度を切替える際に既存のデータを破壊することのない光ピックアップ装置、及び情報処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の光ピックアップ装置を提供する。
【0022】
本発明の第1態様によれば、所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
前記光ビームの透過量を調整する光ビーム透過調整手段と、
前記光ビーム透過調整手段を透過した前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を備え、
前記光ビーム透過調整手段により透過率を変化させることにより任意の光パワーを選択的に出力する光ピックアップ装置において、
前記光源が発する光ビームの光パワーを一定に保ちつつ前記光ビーム透過調整手段の透過率を連続的に変化させることを特徴とする光ピックアップ装置を提供する。
【0023】
本発明の第2態様によれば、前記光ビーム透過調整手段は、液晶素子と、ビームスプリッタ素子と、透過率を連続的に変化させる光ビーム透過調整制御回路とを具備することを特徴とする第1態様の光ピックアップ装置を提供する。
【0024】
本発明の第3態様によれば、前記光ビーム透過調整制御回路は、再生中に透過率を増加させてから、記録を開始することを特徴とする第1または2態様の光ピックアップ装置を提供する。
【0025】
本発明の第4態様によれば、前記光ビーム透過調整制御回路は、複数記録層を持つ情報記録媒体に対して記録または再生する層に従って透過率を連続的に変化させることを特徴とする第1または2態様の光ピックアップ装置を提供する。
【0026】
本発明の第5態様によれば、前記情報記録媒体は円盤状であって、前記光ビーム透過調整制御回路は、記録または再生する線速度が異なる複数の記録領域を持つ前記円盤状情報記録媒体に対して記録または再生する記録領域の切替えに従って連続的に透過率を変化させることを特徴とする第1または2態様の光ピックアップ装置を提供する。
【0027】
本発明の第6態様によれば、前記情報記録媒体は円盤状であって、前記光ビーム透過調整制御回路は、同一の情報記録媒体に対する記録または再生動作中の線速度の変化に従って透過率を変化させることを特徴とする第1または2態様の光ピックアップ装置を提供する。
【0028】
本発明の第7態様によれば、前記情報記録媒体は円盤状であって、前記光ビーム透過調整制御回路は、同一の情報記録媒体の同一の半径位置に対する記録または再生動作中の線速度の変化に従って透過率を変化させることを特徴とする第1または2態様の光ピックアップ装置を提供する。
【0029】
本発明の第8態様によれば、前記情報記録媒体は円盤状であって、前記光ビーム透過調整制御回路は、同一の情報記録媒体の同一の半径位置に対する記録または再生動作中の線速度の切替えに従って連続的に透過率を変化させることを特徴とする第1または2態様の光ピックアップ装置を提供する。
【0030】
本発明の第9態様によれば、前記情報記録媒体は円盤状であって、前記光ビーム透過調整制御回路は、同一の情報記録媒体に対して記録または再生動作中の線速度の高線速度から低線速度への切替えの前に透過率を低下させることを特徴とする第5から8のいずれかの態様の光ピックアップ装置を提供する。
【0031】
本発明の第10態様によれば、所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
前記光源から出射した光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、
前記情報記録媒体上に集光された光スポットの収差補正液晶素子とを備えた光ピックアップ装置と、
前記収差補正液晶素子を制御する収差補正制御回路からなり、
前記収差補正制御回路は収差補正量を連続的に変化させることを特徴とする光情報装置を提供する。
【0032】
本発明の第11態様によれば、前記収差補正液晶素子は球面収差を補正し、前記収差補正制御回路は、複数記録層を持つ情報記録媒体に対して記録または再生する層に従って補正する球面収差量を連続的に変化させることを特徴とする第10態様の光情報装置を提供する。
【0033】
本発明の第12態様によれば、前記収差補正液晶素子はコマ収差を補正し、前記情報記録媒体は円盤状であって、前記収差補正制御回は、前記円盤状情報記録媒体に対して記録または再生する半径位置に従って補正するコマ収差量を連続的に変化させることを特徴とする第10態様の光情報装置を提供する。
【0034】
本発明の第13態様によれば、第1から9態様のいずれか1つの光ピックアップ装置と、
前記情報記録媒体を回転するモータと、
前記光ピックアップ装置から得られる信号を受け、前記信号に基づいて前記モータ及び前記光ピックアップ装置を制御および駆動する電気回路とを具備する光情報装置を提供する。
【0035】
本発明の第14態様によれば、所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
液晶素子とビームスプリッタ素子とを備え前記光ビームの透過量を調整する光ビーム透過調整手段と、
前記光ビーム透過調整手段を透過した前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を備え、
前記光ビーム透過調整手段により透過率を変化させることにより任意の光パワーを選択的に出力する光ピックアップ装置と、
同一の情報記録媒体に対する記録または再生動作中の線速度の変化に従って透過率を変化させる光ビーム透過調整制御回路と、
前記情報記録媒体を回転するモータと、
前記光ピックアップ装置から得られる信号を受け、前記信号に基づいて前記モータ及び前記光ピックアップ装置を制御および駆動する電気回路とを具備することを特徴とする光情報装置を提供する。
【0036】
本発明の第15態様によれば、所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
液晶素子とビームスプリッタ素子とを備え前記光ビームの透過量を調整する光ビーム透過調整手段と、
前記光ビーム透過調整手段を透過した前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を備え、
前記光ビーム透過調整手段により透過率を変化させることにより任意の光パワーを選択的に出力する光ピックアップ装置と、
同一の情報記録媒体の同一半径位置に対する記録または再生動作中の線速度の変化に従って透過率を変化させる光ビーム透過調整制御回路と、
前記情報記録媒体を回転するモータと、
前記光ピックアップ装置から得られる信号を受け、前記信号に基づいて前記モータ及び前記光ピックアップ装置を制御および駆動する電気回路とを具備することを特徴とする光情報装置を提供する。
【0037】
本発明の第16態様によれば、所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
液晶素子とビームスプリッタ素子とを備え前記光ビームの透過量を調整する光ビーム透過調整手段と、
前記光ビーム透過調整手段を透過した前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を備え、
前記光ビーム透過調整手段により透過率を変化させることにより任意の光パワーを選択的に出力する光ピックアップ装置と、
同一の情報記録媒体の同一半径位置に対する記録または再生動作中の線速度の切替えに従って透過率を連続的に変化させる光ビーム透過調整制御回路と、
前記情報記録媒体を回転するモータと、
前記光ピックアップ装置から得られる信号を受け、前記信号に基づいて前記モータ及び前記光ピックアップ装置を制御および駆動する電気回路とを具備することを特徴とする光情報装置を提供する。
【0038】
本発明の第17態様によれば、所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
液晶素子とビームスプリッタ素子とを備え前記光ビームの透過量を調整する光ビーム透過調整手段と、
前記光ビーム透過調整手段を透過した前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を備え、
前記光ビーム透過調整手段により透過率を変化させることにより任意の光パワーを選択的に出力する光ピックアップ装置と、
同一の情報記録媒体に対して記録または再生動作中の線速度の高線速度から低線速度への切替えの前に透過率を低下させる光ビーム透過調整制御回路と、
前記情報記録媒体を回転するモータと、
前記光ピックアップ装置から得られる信号を受け、前記信号に基づいて前記モータ及び前記光ピックアップ装置を制御および駆動する電気回路とを具備することを特徴とする光情報装置を提供する。
【0039】
本発明の第18態様によれば、第10から17態様のいずれかの光情報装置と、
情報を入力するための入力装置あるいは入力端子と、
前記入力装置から入力された情報や前記光情報装置から再生された情報に基づいて演算を行う演算装置と、
前記入力装置から入力された情報や前記光情報装置から再生された情報や、前記演算装置によって演算された結果を表示あるいは出力するための出力装置あるいは出力端子とを備えたコンピュータを提供する。
【0040】
本発明の第19態様によれば、第10から17態様のいずれかの光情報装置と、
前記光情報装置から得られる情報信号を画像に変換する情報から画像へのデコーダとを有する光ディスクプレーヤを提供する。
【0041】
本発明の第20態様によれば、第10から17態様のいずれかの光情報装置と、
前記光情報装置から得られる情報信号を画像に変換する情報から画像へのデコーダとを有するカーナビゲーションシステムを提供する。
【0042】
本発明の第21態様によれば、第10から17態様のいずれかの光情報装置と、
画像情報を前記光情報装置によって記録する情報に変換する画像から情報へのエンコーダとを有する光ディスクレコーダを提供する。
【0043】
本発明の第22態様によれば、第10から17態様のいずれかの光情報装置と、
外部との情報の送受信を行う入出力端子を備えた光ディスクサーバを提供する。
【発明の効果】
【0044】
本発明の第1態様によれば、光ビーム透過調整手段により透過率が連続的に変化するので、光ピックアップ装置として出力する光パワーが瞬時に変化することは無く、フォーカシングサーボにおけるフォーカシング誤差信号の感度が瞬時に変化しないのでフォーカシングサーボが不安定になることはない。その結果、安定したサーボ応答性が得られ、装置としての商品性が向上する。
【0045】
本発明の第2態様によれば、光ビーム透過調整制御回路により任意の電圧を液晶素子に供給することにより、任意の透過率に連続的に変化させることが簡易に実現することができる。
【0046】
本発明の第3態様によれば、安定したサーボ状態を保ったまま再生動作から記録動作への移行が可能となる。
【0047】
本発明の第4態様によれば、複数記録層を持つ情報記録媒体の任意の記録層によって光源の光パワーと透過率を最適に選ぶことにより、光源の光パワーを最小限に保ちつつ光源の量子ノイズを低く抑えることができる。さらに、透過率を連続的に変化させることにより任意の記録層から他の記録層への層間ジャンプを安定したサーボ状態を保ったまま行うことができる。
【0048】
また、第4態様の光ピックアップ装置は2層、4層、8層の記録層をもつ情報記録媒体に対して好適に用いることができる。
【0049】
本発明の第5態様によれば、記録または再生する線速度が異なる複数の記録領域を持つ情報記録媒体に対して、任意の記録領域によって光源の光パワーと透過率を最適に選ぶことにより、光源の光パワーを最小限に保ちつつ光源の量子ノイズを低く抑えることができる。さらに、透過率を連続的に変化させることにより任意の記録領域から他の記録領域へのランダムアクセスを安定したサーボ状態を保ったまま行うことができる。
【0050】
本発明の第6から第8態様によれば、同一の情報記録媒体に対して記録または再生動作中に同一半径位置において光ピックアップ装置に対する情報記録媒体の線速度を変化させるときに安定したサーボ状態を保ったまま線速度を変化させることができる。
【0051】
本発明の第9態様によれば、同一の情報記録媒体に対して記録または再生動作中に同一半径位置において光ピックアップ装置に対する情報記録媒体の線速度の変化で、特に高線速度から低線速度へ切替える前に連続的に透過率を減衰させることにより既存のデータを破壊しないようにすることができる。
【0052】
本発明の第10態様によれば、収差補正手段により収差補正量が連続的に変化するので、情報記録媒体の記録面上に集光される光ビームの収差が瞬時に変化することは無く、フォーカシングサーボが不安定になることはない。その結果、安定したサーボ応答性が得られ、装置としての商品性が向上する。
【0053】
本発明の第11態様によれば、複数記録層を持つ情報記録媒体の任意の記録層によって最適な球面収差補正量に連続的に変化させることにより任意の記録層から他の記録層への層間ジャンプを安定したサーボ状態を保ったまま行うことができる。
【0054】
本発明の第12態様によれば、円盤状情報記録媒体に対して記録または再生する半径位置によって最適なコマ収差補正量に連続的に変化させることにより任意の半径位置から他の半径位置へのランダムアクセスを安定したサーボ状態を保ったまま行うことができる。
【0055】
本発明の第1ないし第12態様の光ピックアップ装置は光情報装置として好適に用いることができる。
【0056】
本発明の第14ないし第16態様によれば、同一の情報記録媒体に対して記録または再生動作中に同一半径位置において光ピックアップ装置に対する情報記録媒体の線速度を変化させるときに安定したサーボ状態を保ったまま線速度を変化させることができる。
【0057】
本発明の第17態様によれば、同一の情報記録媒体に対して記録または再生動作中に同一半径位置において光ピックアップ装置に対する情報記録媒体の線速度の変化で、特に高線速度から低線速度へ切替える前に連続的に透過率を減衰させることにより既存のデータを破壊しないようにすることができる。
【0058】
また、第10ないし第17態様の光情報装置は、コンピュータ、光ディスクプレーヤ、カーナビゲーションシステム、光ディスクレコーダ、光ディスクサーバなどの種々の装置に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明の第一実施形態に係わる光ピックアップ装置について図面を参照しながら説明する。
【0060】
図1は、第一実施形態による光ピックアップ装置の構成説明図、図2は第一実施形態による光ピックアップ装置の液晶素子に印加される電圧と光ビーム透過調整手段の透過率との関係を示した説明図、図3(a)は第一実施形態による光ビーム透過調整制御回路の出力電圧と光ビーム透過調整手段の透過率の変化を説明するためのタイミングチャート図、図3(b)は第一実施形態による光ディスクの線速度が変化するときの光ビーム透過調整手段の透過率の変化を説明するためのタイミングチャート図である。
【0061】
図1において、光ピックアップ装置11は光源1と、光ビーム透過調整手段100と、ビームスプリッタ2と、コリメートレンズ3と、ミラー4と、対物レンズ5と、アクチュエータコイル6と、マルチレンズ7と、フォトダイオード8とを備える。
【0062】
また、光ピックアップ装置11はターンテーブル362やモータ364、回転制御回路10、信号処理回路12、サーボ回路13を備えた光情報装置に組み込まれて動作する。
【0063】
光源1は、GaN系の青色発光する半導体レーザである。光源1はまた、光ディスク14の記録層に対して、データの読み出しおよび書き込みのためのコヒーレント光を放射する。
【0064】
光ビーム透過調整手段100は、光透過率を変化させて、光源1が放射する光ビームの量子ノイズを低く保った状態で光パワーを変化させる光学手段である。
【0065】
ここで、光ビーム透過調整手段100の詳細な構成を説明する。光ビーム透過調整手段100はビームスプリッタ101と、液晶素子102と、光ビーム透過調整制御回路103によって構成される。液晶素子102は印加される電圧に従って入射する光ビームの偏光方向を回転する。偏光方向の回転角度によってビームスプリッタ101を透過する光と反射する光とに分岐されるので、透過率を調整することができる。液晶素子102に印加される電圧と、ビームスプリッタ101を透過する光透過率の関係は例えば図2で表される。
【0066】
光ビーム透過調整制御回路103は出力電圧を切替える際、電圧値を連続的に変化させつつ出力する。例えば、光ビーム透過調整手段100の透過率を図2に示すT1からT2に変化させるとき光ビーム透過調整制御回路103は出力電圧を図3(a)に示すようにV1からV2に連続的に変化させつつ出力する。その結果、光ビーム透過調整手段100の透過率は図2の特性に基づいてT1からT2に連続的に変化する。
【0067】
まず、光ピックアップ装置11の再生動作について説明する。光源1は、所定の光パワーを有する光ビームを発する。このとき光ビーム透過調整手段100の光ビーム透過調整制御回路103は、例えばV1の電圧を出力している。従って、光ビーム透過調整手段100の透過率はT1となっている。光ビーム透過調整手段100を透過し、出射された光ビームは、ビームスプリッタ2で反射され、コリメートレンズ3で平行光にされ、ミラー4で反射される。その後、対物レンズ5は、光ビームを光ディスク14の記録層に集光する。光ビームは光ディスク14の記録層の状態に応じた反射率で反射される。記録層で反射した光ビームは、再び対物レンズ5を透過し、ミラー4で反射され、コリメートレンズ3を透過し、マルチレンズ7を透過してフォトダイオード8に集光される。その結果、フォトダイオード8は光量信号を生成して出力する。信号処理回路12は光量信号に基づいて、書き込まれたデータの内容を示す再生信号、フォーカスエラー信号等を生成する。また、フォーカスエラー信号に基づいてサーボ回路13からアクチュエータ駆動信号がアクチュエータコイル6に供給され、対物レンズ5の光ディスク14の記録層に対するフォーカシングサーボが行われている。
【0068】
このとき信号処理回路12が生成する再生信号の信号振幅は光ビーム透過調整手段の透過率T1に応じて減衰され、再生動作に必要十分な大きさでかつ量子ノイズが十分小さく抑えられた状態で生成されている。
【0069】
次に再生動作中から記録動作に移行するときの動作について説明する。光ディスク14の記録層での光ビームの強度を記録動作に必要十分な大きさにするため光ビーム透過調整手段100の透過率をT1からT2に変化させる。この際、光ビーム透過調整制御回路103は出力電圧をV1からV2へ連続的に変化させながら出力するので、透過率もT1からT2へ連続的に変化する。従って光ピックアップ装置11として出力する光パワーが瞬時に変化することは無く、光ディスク14の記録層からの反射光によって得られるフォーカスエラー信号の感度が瞬時に変化しないのでフォーカシングサーボが不安定になることはない。その結果、安定したサーボ応答性が得られ、装置としての商品性が向上する。
【0070】
また、同一の光ディスクに対する線速度が変化するときの動作について説明する。例えば、同一の光ディスクに対して記録または再生動作中に外乱振動や光ディスクの汚れ、急激な温度変化などサーボを不安定な状態にする種々の要因により、同一半径位置において光ピックアップ装置に対する光ディスク14の線速度を高線速度(S2)から低線速度(S1)へ切替えることにより記録または再生動作を継続することができる。
【0071】
特にこの場合の課題について特許文献2から特許文献6には開示されておらず、特許文献2から特許文献6の構成であれば、光ビーム透過調整手段100の透過率を低下させずに光ディスク14の線速度を低線速度(S1)に低下させることとなり、光ディスク14の記録面上でのエネルギー密度が増大し、既に記録されているデータを破壊してしまう可能性がある。
【0072】
上記のような課題を解決するために本第一実施形態に構成される光ビーム透過調整制御回路は以下のような動作を行う。
【0073】
この際、図3(b)に示すように、まず光ビーム透過調整制御回路103は出力電圧をV2からV1へ連続的に変化させながら出力することにより、光ビーム透過調整手段100の透過率をT2からT1に連続的に低下させる。光ビーム透過調整手段の透過率が低下し光ディスク14上に照射される光パワーが減衰された後に光ディスク14の線速度を回転制御回路10によってモータ364を制御し高線速度(S2)から低線速度(S1)への切替えを行う。従って、既に記録されているデータを破壊してしまうことがなく十分な信頼性を確保することができる。
【0074】
本第一実施形態では、光ビーム透過調整制御回路103により任意の電圧を液晶素子102に供給することにより、任意の透過率に連続的に変化させることが簡易に実現することができる。
【0075】
ここで用いた、光ビーム透過調整手段100の透過率T1およびT2は、透過率の増減を述べるために便宜的に用いた記号であり、その値は各種ピックアップ装置の構成や記録あるいは再生の対象となる光ディスクの種類によって適宜決定される。光ビーム透過調整制御回路103の出力電圧を1およびV2も同様であり、使用される液晶素子の特性に基づいて適宜決定される値である。光ディスク14の線速度S1およびS2も同様であるが、例えば標準速とN倍速の関係であってもよい。
【0076】
本第一実施形態では、再生動作中から記録動作に移行するときの光ビーム透過調整手段100の透過率を連続的に変化させるために光ビーム透過調整制御回路103が出力電圧を連続的に変化させるようにしたが、光ピックアップ装置11が出力する光ビームの強度を変化させる動作であればいずれの動作であっても同様の効果を実現することができる。
【0077】
例えば、複数記録層を有する光ディスクに対して任意の記録層から他の記録層への層間ジャンプを行う際、光ディスク14の任意の記録層によって光源の光パワーと透過率を最適に選ぶことにより、光源の光パワーを最小限に保ちつつ光源の量子ノイズを低く抑えることができる。さらに、透過率を連続的に変化させることにより任意の記録層から他の記録層への層間ジャンプを安定したサーボ状態を保ったまま行うことができる。
【0078】
あるいは、記録または再生する線速度が異なる複数の記録領域を持つ光ディスク14に対して、任意の記録領域によって光源の光パワーと透過率を最適に選ぶことにより、光源の光パワーを最小限に保ちつつ光源の量子ノイズを低く抑えることができる。さらに、透過率を連続的に変化させることにより任意の記録領域から他の記録領域へのランダムアクセスを安定したサーボ状態を保ったまま行うことができる。
【0079】
更に、同一の光ディスク14に対して記録または再生動作中に外乱振動や光ディスク14の汚れ、急激な温度変化などサーボを不安定な状態にする種々の要因により、同一半径位置において光ピックアップ装置11に対する光ディスク14の線速度を高線速度から低線速度へ切替える際、既に記録されているデータを破壊してしまうことがなく十分な信頼性を確保することができる。
【0080】
本第一実施形態では、液晶素子102は偏光方向を回転させるタイプのものを用いているが、透過する光ビームを直線偏光から楕円偏光に変換するタイプのものがあり、これを用いても同様の効果を得ることができる。
【0081】
またビームスプリッタ101の代わりに偏光フィルタを用いても同様の効果が得られる。
【0082】
さらに、印加電圧を加えない状態では透過光の一部が回折し、結果的に0次光透過率が低くなっているが、印加電圧を増大させるとともに透過光の回折が減少し結果的に0次光透過率が高くなっていく回折型偏光選択素子を用いれば、一つの素子で光ビーム透過調整手段を構成することができ、装置の簡素化による信頼性の向上および小型化が実現されることは言うまでもない。
【0083】
本第一実施形態では、光ビーム透過調整制御回路103が光ピックアップ装置11に搭載されているとして説明したが、光ピックアップ装置11が内蔵される光情報装置に搭載されていても同様の効果を得ることができる。
【0084】
また、光ビーム透過調整制御回路103は集積回路上に構成されたものであれば、装置の小型化が実現できることは言うまでもない。
【0085】
以下、本発明の第二実施形態に係わる光ピックアップ装置について図面を参照しながら説明する。
【0086】
図4は、第二実施形態による光ピックアップ装置の構成説明図、図5は第二実施形態による光ピックアップ装置の球面収差補正用液晶素子の電極パターンを示す説明図、図6は第二実施形態による光ピックアップ装置の球面収差補正用液晶素子に印加される最大電位差と収差補正手段の球面収差補正量との関係を示した説明図、図7は第二実施形態による球面収差補正制御回路の出力電圧と球面収差補正量の変化を説明するためのタイミングチャート図である。
【0087】
図4において図1と異なる点は光ビーム透過調整手段100が収差補正手段110に置き換わっている点である。
【0088】
収差補正手段110は、透過する光ビームを球面収差の発生パターンに合わせて位相変化させ、発生する球面収差を打ち消すように補正する光学手段である。
【0089】
ここで、収差補正手段110の詳細な構成を説明する。収差補正手段110は球面収差補正用液晶素子112と、収差補正制御回路113によって構成される。球面収差補正用液晶素子112は図5に示される電極パターンで構成され、透過する光ビームに対して、各領域ごとに印加される電圧を変えて、発生する球面収差を反転した形の位相差分布を与える。その結果、発生する球面収差を打ち消すように補正することができる。このとき、各電極領域に印加する最大電圧と最小電圧の間の電圧は抵抗分割によって作り出すようにすれば外部から与える電位は基準電位と最大電位および最小電位の3端子でよい。球面収差補正用液晶素子112に印加される最大電位から最小電位の最大電位差と、球面収差補正量の関係は例えば図6で表される。
【0090】
収差補正制御回路113は球面収差補正用液晶素子112に印加する最大電位差すなわち電圧を切替える際、電圧値を連続的に変化させつつ出力する。例えば、収差補正手段110の球面収差補正量を図6に示すR1からR2に変化させるとき収差補正制御回路113は出力電圧を図7に示すようにV1からV2に連続的に変化させつつ出力する。その結果、収差補正手段110の球面収差補正量は図6の特性に基づいてR1からR2に連続的に変化する。
【0091】
従って、収差補正手段110により球面収差補正量が連続的に変化するので、光ディスク14の記録面上に集光される光ビームの球面収差が瞬時に変化することは無く、フォーカシングサーボが不安定になることはない。その結果、安定したサーボ応答性が得られ、装置としての商品性が向上する。さらに、光ディスク14が複数記録層を持つ光ディスクの任意の記録層によって最適な球面収差補正量に連続的に変化させることにより任意の記録層から他の記録層への層間ジャンプを安定したサーボ状態を保ったまま行うことができる。
【0092】
なお、本第二実施形態では収差補正手段を球面収差を補正する手段としたが、これをコマ収差を補正する手段としても同様の効果を得ることができる。この場合は、球面収差補正用液晶素子112を図8に示す電極パターンによって構成されるコマ収差補正用液晶素子122に置き換えることによって実現される。この場合も、収差補正制御回路113は同様に動作し、コマ収差補正用液晶素子122に印加する最大電位差すなわち電圧を切替える際、電圧値を連続的に変化させつつ出力する。例えば、収差補正手段110のコマ収差補正量を図9に示すR1からR2に変化させるとき収差補正制御回路113は出力電圧を図10に示すようにV1からV2に連続的に変化させつつ出力する。その結果、収差補正手段110のコマ収差補正量は図10の特性に基づいてR1からR2に連続的に変化する。従って、光ディスク14に対して記録または再生する半径位置によって最適なコマ収差補正量に連続的に変化させることにより任意の半径位置から他の半径位置へのランダムアクセスを安定したサーボ状態を保ったまま行うことができる。
【0093】
ここで用いた、収差補正手段110の収差補正量R1およびR2は、収差補正量の増減を述べるために便宜的に用いた記号であり、その値は各種ピックアップ装置の構成や記録あるいは再生の対象となる光ディスクの種類によって適宜決定される。収差補正制御回路113の出力電圧をV1およびV2も同様であり、使用される液晶素子の特性に基づいて適宜決定される値である。
【0094】
本第二実施形態では、収差補正制御回路113が光ピックアップ装置15に搭載されているとして説明したが、光ピックアップ装置15が内蔵される光情報装置に搭載されていても同様の効果を得ることができる。
【0095】
また、収差補正制御回路113は集積回路上に構成されたものであれば、装置の小型化が実現できることは言うまでもない。
【0096】
次に図1または図4の光ピックアップ装置を用いた光情報装置の一例について説明する。図11(a)は、図1または図4の光ピックアップ装置を用いた光情報装置の概略構成を示す斜視図である。図11(b)は、図11(a)の光情報装置において光ピックアップ装置を駆動させる機構を示す概略図、図11(c)は、図11(a)の光情報装置の駆動系の概略構成を示すブロック図である。
【0097】
光情報装置350は、光ピックアップ装置300を図11(a)に示すように光ディスクのトラッキング方向へ移動可能に搭載される。光ピックアップ装置300は、図11(b)に示すように、光ディスクのトラッキング方向へ延在して配置される2本のガイドレール310によって支持されており、また、片側のガイドレール310に平行に設けられたリードスクリュー311に連接する。リードスクリュー311は、モータ312によって軸中心に回転することができ、当該リードスクリュー311の回転によって光ピックアップ装置300がトラッキング方向へ移動する。
【0098】
図11(a),図11(b),図11(c)において光ディスク370,371,372は、ターンテーブル362に乗せられ、モータ364によって回転される。図1または図4の光ピックアップ装置300は、前記光ディスクの所望の情報の存在するトラックのところまで粗動される。
【0099】
光ピックアップ装置300は、また、光ディスク370,371,372との位置関係に対応して、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を電気回路366へ送る。電気回路366はこの信号に対応して、光ピックアップ装置300へ、対物レンズ326,344を微動させるためにアクチュエータを駆動させる信号を送る。この信号によって、光ピックアップ装置300は、光ディスク370,371,372に対してフォーカスサーボと、トラッキングサーボを行い、光ピックアップ装置300によって、情報の再生、または記録や消去を行う。
【0100】
光情報装置は、光ピックアップ装置として、図1または図4の光ピックアップ装置を用いるので、単一の光ピックアップ装置によって、記録密度の異なる複数の光ディスクに対応することができる。
【0101】
図11(a)に記した光情報装置350は、種々の装置に搭載することができる。図11(a)の光情報装置を搭載したコンピュータや、光ディスクプレーヤ、光ディスクレコーダは、異なる種類の光ディスクを安定に記録あるいは再生できるので、広い用途に使用することができる。図12は、図11(a)の光情報装置を搭載したコンピュータの構成を示す概略図である。
【0102】
図12において、図11(a)の光情報装置350と、情報の入力を行うためのキーボードあるいはマウス、タッチパネルなどの入力装置471と、入力装置471から入力された情報や、光情報装置350から読み出した情報などに基づいて演算を行う中央演算装置(CPU)などの演算装置472と、前記演算装置によって演算された結果などの情報を表示するブラウン管や液晶表示装置、プリンタなどの出力装置473を備えたコンピュータ470を構成する。
【0103】
また、コンピュータ470は、光情報装置350に記録する情報を取り込んだり、光情報装置150によって読み出した情報を外部に出力する有線または無線の入出力端子を搭載してもよい。これによって、ネットワーク、すなわち、複数の機器、例えば、コンピュータ、電話、テレビチューナ、などと情報をやりとりし、これら複数の機器から共有の情報サーバ(光ディスクサーバ)、として利用することが可能となる。異なる種類の光ディスクを安定に記録あるいは再生できるので、広い用途に使用できる効果を有するものとなる。
【0104】
さらに、複数の光ディスクを光情報装置350に出し入れするチェンジャーを具備することにより、多くの情報を記録・蓄積できる効果を得ることができる。
【0105】
また、図13(a)に図11(a)に示す光情報装置を搭載した光ディスクプレーヤの概略構成を示す。図13(a)において、図11(a)の光情報装置350と、前記光情報装置から得られる情報信号を画像に変換する情報から画像への変換装置(例えばデコーダ481)を有する光ディスクプレーヤ480を構成する。また、本構成はカーナビゲーションシステムとしても利用できる。また、液晶モニターなどの表示装置482を加えた構成としてもよい。
【0106】
図13(b)に図11(a)に示す光情報装置を搭載した光ディスクレコーダの概略構成を示す。図13(b)において、図11(a)の光情報装置350と、画像情報を光情報装置によって光ディスクへ記録する情報に変換する画像から情報への変換装置(例えばエンコーダ492)を有する光ディスクレコーダを構成する。望ましくは、前記光情報装置から得られる情報信号を画像に変換する情報から画像への変換装置(デコーダ491)も搭載することにより、既に記録した部分を再生することも可能となる。情報を表示するブラウン管や液晶表示装置などの出力装置493を備えてもよい。
【0107】
なお、上述した図11(a)の光情報装置350を用いた機器において、出力装置を図示しているが、これらの装置に出力端子を搭載して、出力装置を別構成とする商品形態があり得ることはいうまでもない。また、上記各装置には入力装置は図示していないが、キーボードやタッチパネル、マウス、リモートコントロール装置など入力装置も具備した商品形態も可能であり、また、入力装置は別構成として、入力端子のみを搭載することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明にかかる光ピックアップ装置は基材厚や対応波長、記録密度などの異なる複数種類の光ディスクに対して記録再生が可能であり、さらに、この光ピックアップ装置を用いた光情報装置は、CD、DVD、BDなど多くの規格の光ディスクを扱うことができる。従って、コンピュータ、光ディスクプレーヤ、光ディスクレコーダ、カーナビゲーションシステム、編集システム、光ディスクサーバ、AVコンポーネントなど、情報を記録、再生するあらゆるシステムに応用展開可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】第一実施形態による光ピックアップ装置の構成説明図である。
【図2】第一実施形態による光ピックアップ装置の液晶素子に印加される電圧と光ビーム透過調整手段の透過率との関係を示した説明図である。
【図3】(a)は、第一実施形態による光ビーム透過調整制御回路の出力電圧と光ビーム透過調整手段の透過率の変化を説明するためのタイミングチャート図であり、(b)は、第一実施形態による光ディスクの線速度が変化するときの光ビーム透過調整手段の透過率の変化を説明するためのタイミングチャート図である。
【図4】第二実施形態による光ピックアップ装置の構成説明図である。
【図5】第二実施形態による光ピックアップ装置の球面収差補正用液晶素子の電極パターンを示す説明図である。
【図6】第二実施形態による光ピックアップ装置の球面収差補正用液晶素子に印加される電圧と収差補正手段の球面収差補正量との関係を示した説明図である。
【図7】第二実施形態による球面収差補正制御回路の出力電圧と球面収差補正量の変化を説明するためのタイミングチャート図である。
【図8】第二実施形態による光ピックアップ装置のコマ収差補正用液晶素子の電極パターンを示す説明図である。
【図9】第二実施形態による光ピックアップ装置のコマ収差補正用液晶素子に印加される電圧と収差補正手段のコマ収差補正量との関係を示した説明図である。
【図10】第二実施形態によるコマ収差補正制御回路の出力電圧とコマ収差補正量の変化を説明するためのタイミングチャート図である。
【図11】(a)は、図1または図4の光ヘッド装置を用いた光情報装置の概略構成を示す斜視図であり、(b)は、図11(a)の光情報装置において光ヘッド装置を駆動させる機構を示す概略図であり、(c)は、図11(a)の光情報装置の駆動系の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図11(a)の光情報装置を搭載したコンピュータの構成を示す概略図である。
【図13】(a)は、図11(a)に示す光情報装置を搭載した光ディスクプレーヤの概略構成を示す図であり、(b)は、図11(a)に示す光情報装置を搭載した光ディスクレコーダの概略構成を示す図である。
【図14】従来の光ピックアップ装置の構成を示す構成説明図である。
【図15】(a)は、従来の光ピックアップ装置の光ビーム透過調整手段光学フィルタを透過するときの斜視図であり、(b)は、従来の光ピックアップ装置の光ビーム透過調整手段光学フィルタを透過しないときの斜視図である。
【符号の説明】
【0110】
1 光源
2 ビームスプリッタ
3 コリメートレンズ
4 ミラー
5 対物レンズ
6 アクチュエータコイル
7 マルチレンズ
8 フォトダイオード
10 回転制御回路
11 光ピックアップ装置
12 信号処理回路
13 フォーカシングサーボ回路
14 光ディスク
100 光ビーム透過調整手段
101 ビームスプリッタ
102 液晶素子
103 光ビーム透過調整制御回路
112 球面収差補正用液晶素子
113 収差補正制御回路
122 コマ収差補正用液晶素子
362 ターンテーブル
364 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
前記光ビームの透過量を調整する光ビーム透過調整手段と、
前記光ビーム透過調整手段を透過した前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を備え、
前記光ビーム透過調整手段により透過率を変化させることにより任意の光パワーを選択的に出力する光ピックアップ装置において、
前記光源が発する光ビームの光パワーを一定に保ちつつ前記光ビーム透過調整手段の透過率を連続的に変化させることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記光ビーム透過調整手段は、液晶素子と、ビームスプリッタ素子と、透過率を連続的に変化させる光ビーム透過調整制御回路とを具備することを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記光ビーム透過調整制御回路は、再生中に透過率を増加させてから、記録を開始することを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記光ビーム透過調整制御回路は、複数記録層を持つ情報記録媒体に対して記録または再生する層に従って透過率を連続的に変化させることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記情報記録媒体は円盤状であって、
前記光ビーム透過調整制御回路は、記録または再生する線速度が異なる複数の記録領域を持つ前記円盤状情報記録媒体に対して記録または再生する記録領域の切替えに従って連続的に透過率を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記情報記録媒体は円盤状であって、
前記光ビーム透過調整制御回路は、同一の情報記録媒体に対する記録または再生動作中の線速度の変化に従って透過率を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
前記情報記録媒体は円盤状であって、
前記光ビーム透過調整制御回路は、同一の情報記録媒体の同一の半径位置に対する記録または再生動作中の線速度の変化に従って透過率を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
前記情報記録媒体は円盤状であって、
前記光ビーム透過調整制御回路は、同一の情報記録媒体の同一の半径位置に対する記録または再生動作中の線速度の切替えに従って連続的に透過率を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
前記情報記録媒体は円盤状であって、
前記光ビーム透過調整制御回路は、同一の情報記録媒体に対して記録または再生動作中の線速度の高線速度から低線速度への切替えの前に透過率を低下させることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項10】
所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
前記光源から出射した光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、
前記情報記録媒体上に集光された光スポットの収差補正液晶素子とを備えた光ピックアップ装置と、
前記収差補正液晶素子を制御する収差補正制御回路からなり、
前記収差補正制御回路は収差補正量を連続的に変化させることを特徴とする光情報装置。
【請求項11】
前記収差補正液晶素子は球面収差を補正し、
前記収差補正制御回路は、複数記録層を持つ情報記録媒体に対して記録または再生する層に従って補正する球面収差量を連続的に変化させることを特徴とする請求項10記載の光情報装置。
【請求項12】
前記収差補正液晶素子はコマ収差を補正し、
前記情報記録媒体は円盤状であって、
前記収差補正制御回は、前記円盤状情報記録媒体に対して記録または再生する半径位置に従って補正するコマ収差量を連続的に変化させることを特徴とする請求項10記載の光情報装置。
【請求項13】
請求項1から9記載のいずれか1つに記載の光ピックアップ装置と、
前記情報記録媒体を回転するモータと、
前記光ピックアップ装置から得られる信号を受け、前記信号に基づいて前記モータ及び前記光ピックアップ装置を制御および駆動する電気回路とを具備する光情報装置。
【請求項14】
所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
液晶素子とビームスプリッタ素子とを備え前記光ビームの透過量を調整する光ビーム透過調整手段と、
前記光ビーム透過調整手段を透過した前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を備え、
前記光ビーム透過調整手段により透過率を変化させることにより任意の光パワーを選択的に出力する光ピックアップ装置と、
同一の情報記録媒体に対する記録または再生動作中の線速度の変化に従って透過率を変化させる光ビーム透過調整制御回路と、
前記情報記録媒体を回転するモータと、
前記光ピックアップ装置から得られる信号を受け、前記信号に基づいて前記モータ及び前記光ピックアップ装置を制御および駆動する電気回路とを具備することを特徴とする光情報装置。
【請求項15】
所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
液晶素子とビームスプリッタ素子とを備え前記光ビームの透過量を調整する光ビーム透過調整手段と、
前記光ビーム透過調整手段を透過した前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を備え、
前記光ビーム透過調整手段により透過率を変化させることにより任意の光パワーを選択的に出力する光ピックアップ装置と、
同一の情報記録媒体の同一半径位置に対する記録または再生動作中の線速度の変化に従って透過率を変化させる光ビーム透過調整制御回路と、
前記情報記録媒体を回転するモータと、
前記光ピックアップ装置から得られる信号を受け、前記信号に基づいて前記モータ及び前記光ピックアップ装置を制御および駆動する電気回路とを具備することを特徴とする光情報装置。
【請求項16】
所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
液晶素子とビームスプリッタ素子とを備え前記光ビームの透過量を調整する光ビーム透過調整手段と、
前記光ビーム透過調整手段を透過した前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を備え、
前記光ビーム透過調整手段により透過率を変化させることにより任意の光パワーを選択的に出力する光ピックアップ装置と、
同一の情報記録媒体の同一半径位置に対する記録または再生動作中の線速度の切替えに従って透過率を連続的に変化させる光ビーム透過調整制御回路と、
前記情報記録媒体を回転するモータと、
前記光ピックアップ装置から得られる信号を受け、前記信号に基づいて前記モータ及び前記光ピックアップ装置を制御および駆動する電気回路とを具備することを特徴とする光情報装置。
【請求項17】
所定の光パワーを有する光ビームを発する光源と、
液晶素子とビームスプリッタ素子とを備え前記光ビームの透過量を調整する光ビーム透過調整手段と、
前記光ビーム透過調整手段を透過した前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を備え、
前記光ビーム透過調整手段により透過率を変化させることにより任意の光パワーを選択的に出力する光ピックアップ装置と、
同一の情報記録媒体に対して記録または再生動作中の線速度の高線速度から低線速度への切替えの前に透過率を低下させる光ビーム透過調整制御回路と、
前記情報記録媒体を回転するモータと、
前記光ピックアップ装置から得られる信号を受け、前記信号に基づいて前記モータ及び前記光ピックアップ装置を制御および駆動する電気回路とを具備することを特徴とする光情報装置。
【請求項18】
請求項10から17のいずれかに記載の光情報装置と、
情報を入力するための入力装置あるいは入力端子と、
前記入力装置から入力された情報や前記光情報装置から再生された情報に基づいて演算を行う演算装置と、
前記入力装置から入力された情報や前記光情報装置から再生された情報や、前記演算装置によって演算された結果を表示あるいは出力するための出力装置あるいは出力端子とを備えたコンピュータ。
【請求項19】
請求項10から17のいずれかに記載の光情報装置と、
前記光情報装置から得られる情報信号を画像に変換する情報から画像へのデコーダとを有する光ディスクプレーヤ。
【請求項20】
請求項10から17のいずれかに記載の光情報装置と、
前記光情報装置から得られる情報信号を画像に変換する情報から画像へのデコーダとを有するカーナビゲーションシステム。
【請求項21】
請求項10から17のいずれかに記載の光情報装置と、
画像情報を前記光情報装置によって記録する情報に変換する画像から情報へのエンコーダとを有する光ディスクレコーダ。
【請求項22】
請求項10から17のいずれかに記載の光情報装置と、
外部との情報の送受信を行う入出力端子を備えた光ディスクサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−317293(P2007−317293A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145083(P2006−145083)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】