説明

光ピックアップ装置

【課題】トラッキングエラーの補正によるビームの追従性を確保すると共に装置のコンパクト化かつ低コスト化を促進する。
【解決手段】回折格子11を、第1の格子領域11aと第2の格子領域11bとに分け、それぞれの格子を同一形状かつ格子ピッチが同一となる溝12により形成し、第1の格子領域の溝に対して第2の格子領域の溝を格子ピッチ方向に所定量ずれて配設する。第1及び第2のレーザ光のそれぞれの0次光(メインビーム)と±1次光(サブビーム)との各ビームを異なる回折状態で光ディスクに照射することができ、異なるトラックピッチの光ディスクに対してそれぞれに対応した各サブビームを照射することができ、トラックピッチが大きく異なる光ディスクをアクセスの対象とする光ピックアップ装置において1枚の回折格子で対応でき、装置のコンパクト化かつ低コスト化を促進し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータ、ノートブック型コンピュータ等の電子機器に搭載される光ピックアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ、ノートブック型コンピュータ等の電子機器としての光ディスク装置に用いられる光ピックアップ装置において、光ディスクの種類(CD、DVD)に対応させて2種類の波長のレーザ光を出射できるレーザ光源を用いたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、光ピックアップ装置による光ディスクに対する情報の記録または再生において、上記レーザ光を回折格子によりメインビーム(0次光)と2つのサブビーム(±1次光)とに回折すると共に、それらの光ディスクからの反射光を受光してトラッキング制御を行うようにしているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−43326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、市販されている光ディスクには少なからず偏心があり、光ピックアップ装置ではその偏心によるトラッキングエラーを補正してビームを追従させる制御を行う必要がある。その追従制御に対する上記偏心の影響は光ディスクの内周側の方が大きいため、追従制御をより一層高精度に行うことが求められている。追従制御を高精度に行うためには、例えば光ディスクの種類別に対応可能な回折格子を複数用いることで対応可能であるが、複数の回折格子を用いることにより、装置の大型化かつ高コスト化となるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、トラッキングエラーの補正によるビームの追従性を確保すると共に装置のコンパクト化かつ低コスト化を促進し得るように構成された光ピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光ピックアップ装置は、光ディスクの種類に対応して異なる波長の第1及び第2のレーザ光を互いに平行に出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射された前記第1及び第2のレーザ光をそれぞれ0次光と±1次光とに回折してトラッキング制御に用いるビームを生成する回折格子とを有し、前記回折格子は、第1のレーザ光を回折する第1の格子領域と、格子が前記第1の格子領域と同一の形状でありかつ前記第1の格子領域に対して格子ピッチ方向に偏倚して配設された第2の格子領域とを有する単板からなり、前記第1の格子領域と前記第2の格子領域との両方により前記第2のレーザ光を回折する構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単板に突条または溝を形成して回折格子を構成し、突条または溝の形状及び格子ピッチを同一としかつ一方に対して他方を格子ピッチ方向にずらして第1格子領域と第2格子領域とを設けることができる。第1の格子領域により第1のレーザ光を回折し、両格子領域で第2のレーザ光を回折することにより、第1及び第2のレーザ光の各0次光(メインビーム)と±1次光(サブビーム)との回折を異ならせることができ、一方を基準に他方を位相シフトさせることにより、異なるトラックピッチの2種類の光ディスクに対して各トラックピッチに対応した各サブビームを照射することができる。これにより、トラックピッチが異なるCDとDVDとを対象とする光ピックアップ装置において1枚の回折格子で対応でき、装置のコンパクト化かつ低コスト化を促進し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用された光ピックアップ装置の各光学素子のレイアウトを示す斜視図。
【図2】(a)は非点収差生成素子の一例を模式化して示す斜視図、(b)は光ディスクが光ピックアップ装置に近い場合の受光状態を示す図、(c)は遠い場合の受光状態を示す図。
【図3】受光器を示す正面図。
【図4】集積プリズムの構成を示す模式的斜視図。
【図5】本発明に基づく回折格子を示す正面図。
【図6】回折格子の要部斜視図。
【図7】(a)はCD系の各ビームの配置を示し、(b)はDVD系の各ビームの配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、光ディスクの種類に対応して異なる波長の第1及び第2のレーザ光を互いに平行に出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射された前記第1及び第2のレーザ光をそれぞれ0次光と±1次光とに回折してトラッキング制御に用いるビームを生成する回折格子とを有し、前記回折格子は、第1のレーザ光を回折する第1の格子領域と、格子が前記第1の格子領域と同一の形状でありかつ前記第1の格子領域に対して格子ピッチ方向に偏倚して配設された第2の格子領域とを有する単板からなり、前記第1の格子領域と前記第2の格子領域との両方により前記第2のレーザ光を回折する構成とする。
【0011】
これによると、単板に突条または溝を形成して回折格子を構成し、突条または溝の形状及び格子ピッチを同一としかつ一方に対して他方を格子ピッチ方向にずらして第1格子領域と第2格子領域とを設けることができる。第1の格子領域により第1のレーザ光を回折し、両格子領域で第2のレーザ光を回折することにより、第1及び第2のレーザ光の各0次光(メインビーム)と±1次光(サブビーム)との回折を異ならせることができ、一方を基準に他方を位相シフトさせることにより、異なるトラックピッチの2種類の光ディスクに対して各トラックピッチに対応した各サブビームを照射することができる。これにより、トラックピッチが異なるCDとDVDとを対象とする光ピックアップ装置において1枚の回折格子で対応でき、装置のコンパクト化かつ低コスト化を促進し得る。
【0012】
また、第2の発明は、CD用の前記±1次光の前記0次光に対するトラック方向の偏倚は略1.5トラックであり、DVD用の前記±1次光の前記0次光に対するトラック方向の偏倚は、DVD±R/RWで略2.5トラックであり、DVD−RAMで略1.5トラックである構成とする。
【0013】
これによると、異なる種類の光ディスクの各トラックピッチの違いに対して、同一形状かつ同一格子ピッチの各格子領域間で容易に調整可能な位相シフトで、それぞれのトラッキング制御に用いることができるビームを生成することができる。
【0014】
また、第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記第1のレーザ光がCD用であり、前記第2のレーザ光がDVD用である構成とする。
【0015】
これによると、トラッキングピッチとしてはCDとDVDとの2種類に大きく分けることができ、第1及び第2のレーザ光をCD用とDVD用とに分けることができる。光ディスクの種類としてCDとDVDとがあり、それぞれ1回のみ書き込み可能なリードオンリータイプ(CD±R、DVD±R)と繰り返し書き込み可能なリライタブルタイプ(CD−RW、DVD±RW)とがあり、さらにDVDには記録型DVD規格の一つであるDVD−RAMがあるが、それらの全てのタイプに対応し得る。
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明による光ピックアップ装置の一例として各光学素子のレイアウトを示す斜視図である。この光ピックアップ装置は、パーソナルコンピュータ、ノートブック型コンピュータ等の電子機器に搭載され、光ディスクとしてのCD±R、CD±RW、DVD±R、DVD±RW、DVD−RAMの各ディスクへアクセスして読み書きするものである。また、CD−ROM、DVD−ROMに対しても対応可能である。
【0018】
図1に示される光ピックアップ装置は、異なる波長の第1及び第2のレーザ光L1・L2を平行に出射するレーザ光源としての2波長レーザダイオード1を有する。その2波長レーザダイオード1の出射光の光軸上には、2波長レーザダイオード1側から、各レーザ光をそれぞれ0次光(メインビーム)と±1次光(サブビーム)とに回折する回折格子ブロック2と、ビームスプリッタ3aを内蔵する集積プリズム3と、波長板4と、コリメータレンズ5と、立ち上げミラー6と、サブ受光器7とが、この順に配設されている。
【0019】
立ち上げミラー6は、コリメータレンズ5を通過した平行光の光軸に対して45度後傾しかつ偏光分離膜が形成された反射面を有する。これにより、2波長レーザダイオード1から出射されたレーザ光の一部は立ち上げミラー6を通過してサブ受光器7に至り、他は反射面6aにより90度向きを変えられる。なお、サブ受光器7は、2波長レーザダイオード1から出射されるレーザ光の出力の制御に用いられる。
【0020】
反射面6aで90度向きを変えられた反射光の光軸上には、光ディスクDに対峙する対物レンズ8が配設されている。対物レンズ8は、光ディスクDの記録ピットに焦点が合いかつ回転により記録ピットが振れても追従可能に、フォーカシング及びトラッキング制御されるようになっている。それらの制御については公知のアクチュエータにより行うことができ、説明を省略する。
【0021】
また、集積プリズム3の側方にはメインの受光器9が配設されている。光ディスクDの記録面で反射した光は、立ち上げミラー6からコリメータレンズ5・波長板4・集積プリズム3の順に戻り、波長板4を2回通過することにより偏光し、ビームスプリッタ3aにより受光器9の方へ反射される。集積プリズム3には、上記したビームスプリッタ3aの受光器9側に、ビームスプリッタ3aと平行する非点収差生成素子3bが設けられている。
【0022】
図2に、非点収差生成素子3bの一例を模式化して示す。図では、ビームスプリッタ3aで反射して受光器9に向かうレーザ光L2の光軸C1を中心とする収束光の任意の位置の円形断面をLaで示している。光軸C1上には円筒レンズで示される非点収差生成素子3bと、受光器9とが配設されている。非点収差生成素子3bは、図では説明上円筒レンズで示しているが、具体的にはフレネルミラーであってよい。
【0023】
受光器9には、図3に示されるように、レーザ光の0次光及び±1次光を受光する各光検出部9a・9b・9c・9d・9e・9fが配設されている。例えば、DVD用のレーザ光の0次光を光検出部9aで、その±1次光を両側の各光検出部9b・9cで、CD用のレーザ光の0次光を光検出部9dで、その±1次光を両側の各光検出部9e・9fで、それぞれ検出する。
【0024】
図2では光検出部9aを代表して示して説明する。光検出部9aにはレーザ光L2の0次光を受光する各受光素子A〜Dが田の字状に配置され、かつ非点収差生成素子3bの軸(円筒の中心軸)方向に対して相対的に田の字が45度傾くようにされている。図2(a)のレーザ光L2は、非点収差生成素子3bを通過することにより、非点収差生成素子3bの軸と同方向の成分が光検出部9aの手前の焦点F1に収束し、非点収差生成素子3bの軸と直交する方向の成分が光検出部9aの奥の焦点F2に収束する。このような収束となるレーザ光L2のスポットSPが円形断面となる位置に光検出部9aが配置されている。
【0025】
上記光検出部9aはフォーカスエラー制御に用いられる。各受光素子A〜Dの検出信号出力をA〜Dで表すと、フォーカスエラー信号FESは、FES=(A+C)−(B+D)となる。
【0026】
光ディスクDが光ピックアップ装置に近い場合、両焦点F1・F2が光ディスクDから離れるため、焦点F1は受光器9に近づき、焦点F2は受光器9から遠ざかる。この場合には、図2(b)に示されるように、スポットSPの図における上下方向の寸法が短くかつ左右方向の寸法が長くなり、フォーカスエラー信号FESは、FES>0となる。逆に、光ディスクDが光ピックアップ装置に遠い場合、両焦点F1・F2が光ディスクDに近付くため、焦点F1は受光器9aから遠ざかり、焦点F2は受光器9aに近付く。この場合には、図2(c)に示されるように、スポットSPの図における上下方向の寸法が長くかつ左右方向の寸法が短くなり、フォーカスエラー信号FESは、FES<0となる。このフォーカスエラー信号FESが、0または所定の許容範囲内に収まるようにフォーカシング制御を行う。
【0027】
なお、上記DVD用のフォーカスエラー信号FESの求め方は、DVD−ROM、DVD±R/RWに適用し得るものであり、DVD−RAM用フォーカスエラー信号FESは、FES={(A+C)−(B+D)}+Kt×{(E+I+G+K)−(H+L+F+J)}である。ここで、Ktは、動作設定に応じて定まる定数である。また、CD用フォーカスエラー信号FESは、FES=(a+c)−(b+d)である。
【0028】
また、DVD用のトラッキングエラー信号TESは、DVD−ROMの場合には、受光素子X・Yで検出した信号の位相差を変換した電圧をph(X,Y)として、TES=(A,D)−ph(B,C)であり、DVD±R/RW、DVD−RAMの場合には、TES={(A+B)−(C+D)}−Kt×{(E+I+F+J)−(G+K+H+L)}である。CD用のトラッキングエラー信号TESは、CD±R/RW、CD−ROMの場合には、TES={(a+b)−(c+d)}−Kt×{(e+f)−(g+h)}である。なお、CD−ROMの場合には、TES=ph(a,d)−ph(b,c)で求めるようにしてもよく、この場合には、例えばピットの高さが規格に入っていないような粗悪ディスクを再生するような場合でもトラッキングエラー信号TESを好適に出力できる。
【0029】
なお、図3で上下方向に並べられた各光検出部9a〜9c・9d〜9fの各並びが図の上下方向の線に対して左右にずれているが、これは0次光が光ディスクDの記録面のトラック上に位置した場合にそのトラックに対して左右方向に位置する各トラック上に±1次光がそれぞれ位置するようにされているためである。それに対して、同じトラック上に位置させる場合には各並びは図の上下方向に配置される。
【0030】
図4を参照して集積プリズム3の構成について説明する。本図示例の集積プリズム3は大中小3つのブロック31・32・33から構成されている。大ブロック31は平面視で台形形状に形成され、その台形形状における斜面に、中ブロック32と小ブロック33とがこの順に積層状態に重ね合わされている。大ブロック31と中ブロック32との間にビームスプリッタ3aが設けられ、中ブロック32と小ブロック33との間に非点収差生成素子3bが設けられている。2波長レーザダイオード1から出射されるレーザ光の光軸に対して各合わせ面は45度傾いている。
【0031】
2波長レーザダイオード1から出射され光ディスクDで反射してビームスプリッタ3aに戻って来た反射光は非点収差生成素子3bに向かい、非点収差生成素子3bで反射して大ブロック31と中ブロック32との合わせ面に戻るようになり、合わせ面の対応する部分には反射鏡3cが設けられている。反射鏡3cで反射したレーザ光は集積プリズム3から外に出て受光器9に至る。
【0032】
次に図5を参照して、回折格子について説明する。図5及び図6に示されるように、回折格子ブロック2の2波長レーザダイオード1に対峙する面に回折格子11が凹状の溝12により形成されている。回折格子11は、2波長レーザダイオード1から出射される第1のレーザ光L1と第2のレーザ光L2の一部とを回折する第1の格子領域11aと、第2のレーザ光L2の残りを第1の格子領域11aに対してトラッキング方向に所定量ずらして回折する第2の格子領域11bとにより構成されている。
【0033】
両格子領域11a・11bは、両レーザ光L1・L2の並列方向となる図5における左右に、両レーザ光L1・L2の並列方向に直交する分割線DLで分割されている。また、溝12は、両格子領域11a・11bで同一断面形状に形成されていると共に、両レーザ光L1・L2の並列方向となる左右方向線(分割線DLに直交する線)に対して所定の格子角度θの傾きで延在するように配設されている。
【0034】
光ディスクのトラッキングピッチにおいて、CD−R/RWには容量の違いによりピッチが異なり、650MBの場合には1.6μmであるが、700MBの場合には1.5μmであり、平均の1.55μmをCDに対するトラックピッチとすることができる。したがって、回折格子11の格子ピッチ(溝12のピッチ)と上記格子角度θとを設計する場合には、0次光に対する±1次光のトラッキング方向のずれは、1.5トラックずらすとすると2.325(=1.55×1.5)μmとなる。
【0035】
また、DVD±R/RWのトラッキングピッチは0.74μmであり、DVD−RAMの場合には1.23μmである。DVD±R/RWの場合の0次光に対する±1次光のトラッキング方向のずれは、2.5トラックずらすとすると、1.85(=0.74×2.5)μmとなる。DVD−RAMの場合の0次光に対する±1次光のトラッキング方向のずれは、1.5トラックずらすとすると、1.845(=1.23×1.5)μmとなる。これらにより、DVDの上記した大別される2種類については略同一のずれとして取り扱うことができる。
【0036】
同じ回折格子を用いた場合に、CD用レーザ光の波長λ1に対するDVD用レーザ光の波長λ2の比(λ2/λ1)が0.84倍となる。したがって、CDにおける±1次光のトラッキング方向のずれ(2.325μm)は、DVD±R/RWでは1.953(=2.325×0.84)となる。これは、DVDのトラックピッチの0.74μmから計算すると、2.64トラックのずれとなる。同様に、DVD−RAMでは、そのトラックピッチ1.23μmから計算すると、1.588(=1.953/1.23)となる。
【0037】
したがって、CDを基準とした場合に、DVD±R/RWのトラックずれを2.64から2.5にするとよい。その調整を上記図5に示されるように回折格子11の両格子領域11a・11bの各格子(溝12)のずれにより行うことができる。
【0038】
図7(a)に示されるように、CD系の各ビームの配置において0次光13aと±1次光13bとは、進行方向(ディスクの回転に伴う移動方向)に20μm離れ、図7(b)に示されるように、DVD系の0次光14aと±1次光14bとは進行方向に17μm離れることにより、CD系での1.5トラック(1.5T)のずれに対して、DVD±R/RWでは略2.5トラック(2.5T)のずれとなる。なお、DVD−RAMでは、同じ0次光14aと±1次光14bとを用いて、トラックピッチの違いから略1.5トラックのずれとなる。
【0039】
このような関係を実現するためには、回折格子11の具体的な形状として図5・6を参照して説明すると、深さDdを140〜170μm、格子ピッチ(溝12のピッチ)Dpを7.72μm、格子角度θを6.6度、両格子領域11a・11bの各格子(溝12)同士の位相シフト量(ピッチ方向の偏倚)Dsを1.3μmにするとよい。
【0040】
このように形成された部分共用方式の回折格子11を用いることにより、2波長レーザ光の一方の位相をシフトさせることができ、上記例ではDVD系をシフトさせるようにしている。なお、CD系をシフトさせることもでき、その場合には回折格子11において図5の分割線DL2で示されるように、CD用のレーザ光L1を左右に二分割する位置が分割線DL2になるように格子を形成する。そして、DVD系に対してCD系の波長比分の伸びが約1.19倍となるように格子ピッチDpを設定する。
【0041】
なお、CD系のみの場合には0.5トラックのずれとしていたものに対して、回折格子11を共用するべくCD系でのトラックずれを1.5トラックとしたことにより650MBと700MBとのトラックピッチのピッチずれが3倍に拡大される。そのため、CD系の方を基準として、実施形態で示したようにDVD系の位相シフトをずらす方式の方が、CD側での読み書き特性に対する悪影響が少なくなるため、DVD系の位相シフトをずらす方式の方が有効となる。
【0042】
上記実施形態では、回折格子を溝12により形成したが、溝12に限られるものではなく、突条により形成してもよい。また、2波長レーザダイオード1のレーザ光出射面と回折格子11との距離は1.0〜1.2mmの範囲内であれば問題無いが、1.1mmにするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明にかかる光ピックアップ装置は、1枚の回折格子で異なる種類の光ディスクに対応でき、装置のコンパクト化かつ低コスト化を促進し得る効果を有し、レーザ光を回折して制御に用いる光学装置等として有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 2波長レーザダイオード
2 回折格子ブロック
9 受光器
9a〜9f 光検出部
11 回折格子
11a 第1の格子領域
11b 第2の格子領域
12 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの種類に対応して異なる波長の第1及び第2のレーザ光を互いに平行に出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射された前記第1及び第2のレーザ光をそれぞれ0次光と±1次光とに回折してトラッキング制御に用いるビームを生成する回折格子とを有し、
前記回折格子は、第1のレーザ光を回折する第1の格子領域と、格子が前記第1の格子領域と同一の形状でありかつ前記第1の格子領域に対して格子ピッチ方向に偏倚して配設された第2の格子領域とを有する単板からなり、
前記第1の格子領域と前記第2の格子領域との両方により前記第2のレーザ光を回折することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
CD用の前記±1次光の前記0次光に対するトラック方向の偏倚は略1.5トラックであり、
DVD用の前記±1次光の前記0次光に対するトラック方向の偏倚は、DVD±R/RWで略2.5トラックであり、DVD−RAMで略1.5トラックであることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記第1のレーザ光がCD用であり、前記第2のレーザ光がDVD用であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−256387(P2012−256387A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127832(P2011−127832)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】