光ピックアップ
【課題】対物レンズと光記録媒体との衝突を防止する衝突防止部材を備え、小型化・薄型化に対応し易い光ピックアップを提供する。
【解決手段】光ピックアップには、光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズ(図示せず)と、前記対物レンズを保持するレンズホルダ31と、前記対物レンズに対して突出するようにレンズホルダ31に固定配置されて、光記録媒体と前記対物レンズとの衝突を防止する衝突防止部材40と、が備えられる。レンズホルダ31には、衝突防止部材40の前記対物レンズに対する突出方向と略平行な方向に延びて衝突防止部材40が挿入保持される貫通孔34a、34bが設けられ、且つ、衝突防止部材40の前記突出方向の位置決めを行う当て面が設けられていない。
【解決手段】光ピックアップには、光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズ(図示せず)と、前記対物レンズを保持するレンズホルダ31と、前記対物レンズに対して突出するようにレンズホルダ31に固定配置されて、光記録媒体と前記対物レンズとの衝突を防止する衝突防止部材40と、が備えられる。レンズホルダ31には、衝突防止部材40の前記対物レンズに対する突出方向と略平行な方向に延びて衝突防止部材40が挿入保持される貫通孔34a、34bが設けられ、且つ、衝突防止部材40の前記突出方向の位置決めを行う当て面が設けられていない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体に記録される情報の読み取りや光記録媒体への情報の書き込みを行う際に用いられる光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルーレイディスク(BD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)等の光ディスク(光記録媒体の一例)に記録される情報を読み取ったり、それらに情報を書き込んだりする際に光ピックアップが利用されている。光ピックアップには、光源と、光源から出射される光を光ディスクの情報記録面に集光する対物レンズと、情報記録面で反射された戻り光を受光する受光素子と、が備えられる。
【0003】
光ピックアップにおいて情報の読み取り等を行う場合には、対物レンズによって集光される光スポットの位置が常に光ディスクの情報記録面上にあるように制御(フォーカシング制御)する必要があるとともに、前記光スポットが常に光ディスクのトラックに追随するように制御(トラッキング制御)する必要がある。このため、光ピックアップにおいては、対物レンズはレンズホルダに搭載され、このレンズホルダを動かすアクチュエータによってフォーカス方向やトラック方向に移動可能とされるのが通常である。なお、フォーカス方向は光ディスクに接離する方向であり、トラック方向は光ディスクの半径方向に平行な方向である。
【0004】
ところで、光ピックアップにおいては、従来、対物レンズと光ディスクとの衝突を防止するために、レンズホルダに衝突防止部材を設けることがある(例えば、特許文献1〜4参照)。この衝突防止部材によって、対物レンズと光ディスクとの衝突によって光ディスクに記録される情報が使えなくなったり、対物レンズが損傷して光ピックアップが使用できなくなったりするという事態を防止できる。なお、レンズホルダに設けられる衝突防止部材は、例えば特許文献1〜3に示されるように成型品とされることもあるし、例えば特許文献4に示されるようにシート品(シート部材)とされることもある。
【0005】
ここで、特許文献4に示されるようなシート部材からなる衝突防止部材を備える従来の光ピックアップの構成について、図10及び図11を参照しながら説明する。図10は、従来の光ピックアップが備える対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図である。図11は、図10のX−X位置における断面の一部を示す図である。図11では、理解を容易とするために光ディスクDも併せて示している。
【0006】
従来の光ピックアップが備える対物レンズアクチュエータ100は、ベース101と、対物レンズ110を保持するレンズホルダ102と、を備える。ベース101上には、レンズホルダ102を挟んで対称配置となるように一対の永久磁石103が立設されている。また、ベース101には、図示しない光源(光ピックアップの光源)から出射された光が対物レンズ110へと至るように貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0007】
レンズホルダ102には、対物レンズ110を保持するためのレンズ保持部102aが形成されている。また、レンズホルダ102の対向する2つの側壁(永久磁石103とは対向しない外側壁)には、片側に3本ずつ、両側で計6本となるワイヤ104の各一端が固定されている。各ワイヤ104の他端は、ベース101上に立設される回路基板105に固定され、これにより、レンズホルダ102はワイヤ104によって揺動可能に片持ち支持された状態となっている。
【0008】
なお、その一端がレンズホルダ102に固定されるワイヤ104は、一部がベース101上に固定配置されるゲルホルダ106のゲル材充填部106aに挿通された状態で、他端を回路基板105に固定されている。ゲル材充填部106aに充填されるゲル材は、レンズホルダ102の駆動に応じてワイヤ104に生じた振動を減衰する役目を果たす。
【0009】
更に、レンズホルダ102には、レンズホルダ102の内部側壁に沿って対物レンズ110の光軸を取り巻くように配置される図示しないフォーカスコイルと、レンズホルダ102の外部側壁(永久磁石103と対向する側壁)の対称位置に、それぞれ2つずつ配置される4つのトラックコイル111と、が取り付けられている。これらのコイルには、ワイヤ104を介して電流が供給されるようになっている。
【0010】
フォーカスコイルに電流が流れると、永久磁石103によって作られる磁界との電磁気的な作用によって、電流が流れる向き及び電流の大きさに応じて、対物レンズ110はレンズホルダ102と共にフォーカス方向Fに移動する。同様に、トラックコイル111に電流が流れると、その向き及び大きさに応じて、対物レンズ110はレンズホルダ102と共にトラック方向Tに移動する。
【0011】
レンズホルダ102のレンズ保持部102a外の上面102bには、シート部材からなる衝突防止部材112が配置される。平面形状略矩形に設けられるシート状の衝突防止部材112は、その厚み方向に平行な側面の1つ(側面112a;図11参照)が光ディスクDに対向するように固定部113に挿入され、側面(上面)112aに対向する側面(下面)112bがレンズホルダ102の上面102bに当接した状態で保持される(図11参照)。衝突防止部材112の上面112a(先端)は、対物レンズ110の先端よりも高い位置となっている(図11参照)。このため、対物レンズ110よりも衝突防止部材112が先に光ディスクDに衝突し、対物レンズ110と光ディスクDとが直接衝突しないようになっている。
【0012】
この従来例のように衝突防止部材112をシート部材で構成すると、成型品(例えば球面形状に加工し易いこと等が望まれ、そのような材料で形成される)で衝突防止部材を構成する場合に比べて、磨耗し難い材料(耐摩耗性の材料)を選択しやすい。このため、衝突防止部材112と光ディスクDとが接触した場合に、衝突防止部材112の磨耗によって光ディスクDが汚れる可能性を低く抑えることが可能となる。また、シート部材からなる衝突防止部材112を、厚み方向に平行な側面112aが光ディスクDと対向するように配置しているため、衝突防止部材112と光ディスクDとの接触面積を比較的小さなものとできる。このため、衝突防止部材112と光ディスクDとの接触時の摩擦力を小さくでき、光ディスクDに損傷が発生する可能性を低く抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−197982号公報
【特許文献2】特開2004−139694号公報
【特許文献3】特開2008−293551号公報
【特許文献4】特開2010−97626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献4に示される従来の光ピックアップにおいては、次のような問題点が存在する。近年の光ピックアップの小型化・薄型化の流れはBD対応の光ピックアップにおいても例外ではなく、BD対応の光ピックアップにおいても小径の対物レンズを使用することが要求されることがある。BD対応の光ピックアップに小径の対物レンズ(大きな開口数(例えば0.85)が要求される)を使用する場合、対物レンズの先端と光ディスクとの間隔であるワーキングディスタンスが非常に短くなる(例えば0.3mm程度)。
【0015】
シート部材で構成される衝突防止部材112の加工による外形の寸法公差は例えば±0.08mmと大きい。また、レンズホルダ102における、レンズ載置面102cと衝突防止部材載置面102bと(いずれも図11参照)の間の高さlにも寸法公差(例えば±0.03mm)が存在する。すなわち、ワーキングディスタンスについて非常に短い距離が想定されているにもかかわらず、衝突防止部材112を取り付けるにあたって非常に大きな寸法公差が存在し、従来の構成では、衝突防止部材112を設けるにあたっての設計余裕が無い状態となっている。
【0016】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、対物レンズと光記録媒体との衝突を防止する衝突防止部材を備え、小型化・薄型化に対応し易い光ピックアップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、光源と、前記光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズと、前記対物レンズを保持するレンズホルダと、前記対物レンズに対して突出するように前記レンズホルダに固定配置されて、前記光記録媒体と前記対物レンズとの衝突を防止する衝突防止部材と、を備える光ピックアップにおいて、前記レンズホルダには、前記衝突防止部材の前記対物レンズに対する突出方向と略平行な方向に延びて前記衝突防止部材が挿入保持される貫通孔が設けられ、且つ、前記衝突防止部材の前記突出方向の位置決めを行う当て面が設けられていないことを特徴としている。
【0018】
本構成によれば、衝突防止部材をレンズホルダに取り付ける際の寸法公差(衝突防止部材の突出方向、換言すると高さ方向の寸法公差)は、衝突防止部材の外形寸法公差に影響されず、衝突防止部材をレンズホルダに取り付ける際に用いる治具の寸法公差(治具精度)のみによって決まるようにできる。治具の寸法公差は比較的小さなものとできるために、本構成は小型化・薄型化に対応した光ピックアップに対して好適である。
【0019】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記衝突防止部材は、前記突出方向の両端部のうち、前記光記録媒体と対向しない側の端部側が前記レンズホルダに接着固定されていることとしてもよい。本構成によれば、治具で位置調整した衝突防止部材の固定を、例えば紫外線硬化型の接着剤(UV接着剤)等を用いて容易に固定できる。
【0020】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記衝突防止部材はシート部材であるのが好ましい。衝突防止部材をシート部材とすることにより、衝突防止部材を構成する材料として耐摩耗性の材料を選択し易く、衝突防止部材が光記録媒体に接触した場合に、光記録媒体が汚れる可能性を低減できる。
【0021】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記衝突防止部材は、前記シート部材の厚み方向に平行な側面の1つが前記光記録媒体と対向するように配置されているのが好ましい。本構成によれば、例えば、同じシート部材を用いて厚み方向に垂直な面が光記録媒体に対向する構成を採用する場合に比べて、光記録媒体との接触面積を小さなものとできる。このために、衝突防止部材が光記録媒体に衝突した場合における、光記録媒体の損傷を低減できる。
【0022】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記衝突防止部材は、前記衝突防止部材が配置される位置を基準として、前記厚み方向が前記光記録媒体の回転方向と略平行となるように前記レンズホルダに配置されているのが好ましい。本構成によれば、衝突防止部材と光記録媒体とが衝突したとしても、両者の接触時間を比較的短時間とでき、光記録媒体に損傷が発生する可能性を低減できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、対物レンズと光記録媒体との衝突を防止する衝突防止部材を備え、小型化・薄型化に対応し易い光ピックアップを提供できる。本発明は、例えば、小径の対物レンズを備える、BD対応の光ピックアップのように、ワーキングディスタンスが狭い光ピックアップに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の光ピックアップの構成を示す概略平面図
【図2】本実施形態の光ピックアップの光学構成を示す概略平面図
【図3】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダの構成を示す概略斜視図
【図4】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに衝突防止部材が取り付けられる前の状態を示す概略斜視図
【図5】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに、衝突防止部材を取り付ける際に使用される治具の構成を示す概略斜視図
【図6】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに、治具を用いて衝突防止部材を取り付ける手順を説明するための図
【図7】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに衝突防止部材が接着固定された状態を示す概略斜視図
【図8】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに取り付けられた衝突防止部材と、対物レンズ及び光ディスクとの関係を示す模式図
【図9】本実施形態の光ピックアップの変形例を示す図
【図10】従来の光ピックアップが備える対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図
【図11】図10のX−X位置における断面の一部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明が適用された光ピックアップの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本実施形態の光ピックアップの構成を示す概略平面図で、図1(a)は光ピックアップの上面図、図1(b)は光ピックアップの側面図である。なお、図1(b)は、図1(a)に示す矢印Aに沿って見た図である。また、図1(b)には、理解を容易とするために、光ディスクDも併せて示している。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の光ピックアップ1は、ピックアップベース10と、ピックアップベース10上に固定配置される対物レンズアクチュエータ30と、を備えた構成となっている。なお、本実施形態の光ピックアップは、BD、DVD、CDといった3種類の規格の光ディスクDに対して情報の読み取りや書き込みを行うことが可能となっており、BD対応の第1の対物レンズ17とDVD及びCD対応の第2の対物レンズ23とを備える構成となっている。
【0028】
ピックアップベース10の左右の端部には軸受け部10a、10bが設けられている。ピックアップベース10は、この軸受け部10a、10bによって、光ディスクDの再生や記録を行う装置である光ディスク装置に設けられるガイドシャフトGS(図1(a)に破線で示す)に摺動可能に支持されることになる。光ディスク装置に設けられるガイドシャフトGSは光ディスクDの半径方向(ラジアル方向)に延びるように配置される。このため、ガイドシャフトGSに対して摺動可能とされる光ピックアップ1は、回転する光ディスクDの所望のアドレスにアクセスして、情報の読み取りや書き込みを行うことができる。
【0029】
図2は、本実施形態の光ピックアップの光学構成を示す概略平面図である。第1のレーザダイオード(LD)11から出射された第1の波長のレーザ光は、回折素子12によって主光と2つの副光とに分けられる。回折素子12を出射したレーザ光は偏光ビームスプリッタ13によって反射され、1/4波長板14及びコリメートレンズ15を通過する。その後、第1の立ち上げミラー16によって反射されて、第1の立ち上げミラー16の上方にある第1の対物レンズ17へと至る。第1の立ち上げミラー16はダイクロイックミラーであり、第1のLD11から出射される第1の波長のレーザ光を反射するようになっている。
【0030】
第1の対物レンズ17は、入射したレーザ光を光ディスクDの情報記録面RS(図1(b)参照)に集光する機能を有する。第1の対物レンズ17によって情報記録面RSに集光されたレーザ光は情報記録面RSで反射される。この反射光(戻り光)は、第1の対物レンズ17を通過後、第1の立ち上げミラー16で反射され、コリメートレンズ15、1/4波長板14、偏光ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ18を順に透過し、センサーレンズ19によって非点収差を与えられてフォトディテクタ(受光素子)20に集光する。フォトディテクタ20は受光した光信号を電気信号に変換する光電変換手段として機能する。
【0031】
なお、第1のLD11は、本実施形態ではBD対応のレーザ光源であり、波長405nm帯のレーザ光を出射する。また、コリメートレンズ15は、球面収差を補正できるようにする等の目的で、公知のレンズ駆動装置によって光軸方向(図2の矢印M方向)に移動できるようになっている。
【0032】
第2のレーザダイオード(LD)21は、第2の波長のレーザ光と第3の波長のレーザ光とを切り換えて出射できるようになっている。第2のLD21から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ18によって反射され、偏光ビームスプリッタ13を透過後、1/4波長板14及びコリメートレンズ15を通過する。また、ダイクロイックミラーとして構成される第1の立ち上げミラー16も透過する。そして、第2の立ち上げミラー22によって反射されて、第2の立ち上げミラー22の上方にある第2の対物レンズ23へと至る。
【0033】
第2の対物レンズ23は、入射したレーザ光を光ディスクDの情報記録面RS(図1(b)参照)に集光する機能を有する。第2の対物レンズ23で情報記録面RSに集光された後に反射された反射光(戻り光)は、第2の対物レンズ23を通過後、第2の立ち上げミラー22で反射され、第1の立ち上げミラー16、コリメートレンズ15、1/4波長板14、偏光ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ18、センサーレンズ19を順に透過してフォトディテクタ20に集光する。
【0034】
なお、第2のLD21は、本実施形態ではDVD及びCD対応のレーザ光源であり、波長650nm帯のレーザ光(DVD用;第2の波長のレーザ光)と波長780nm帯のレーザ光(CD用;第3の波長のレーザ光)とを切り換えて出射可能となっている。すなわち、第2のLD21は2種類の光源を含む構成となっている。このようなレーザ光源は、例えばモノリシックタイプ或いはハイブリッドタイプの2波長レーザであってよい。
【0035】
以上で説明した光学部品11〜23は、いずれもピックアップベース10上に搭載されるが、第1の対物レンズ17及び第2の対物レンズ23は、ピックアップベース10上に配置される対物レンズアクチュエータ30に搭載された状態で、ピックアップベース10に搭載されることになる。
【0036】
対物レンズアクチュエータ30は、図10で示した対物レンズアクチュエータ100と同様に、対物レンズ17、23を保持するレンズホルダを備え、このレンズホルダはワイヤによって片持ち支持される。そして、図10で示した対物レンズアクチュエータ100と同様に、磁石が作る磁界と、コイルを流れる電流との電磁気的な作用を利用して、レンズホルダとともに対物レンズ17、23をフォーカス方向とトラック方向とに移動できる構成となっている。
【0037】
図3は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダの構成を示す概略斜視図であり、図3(a)は対物レンズが搭載された状態を斜め上から見た図、図3(b)は対物レンズが搭載されていない状態を斜め下から見た図である。光ピックアップ1(対物レンズアクチュエータ30)のレンズホルダ31には、2つの対物レンズ17、23を横並び(本実施形態ではタンジェンシャル方向に横並びとなっている(図1参照))で保持できるように、2つのレンズ保持部31a、31bが設けられている。
【0038】
第1の対物レンズ17は第1のレンズ保持部31aに、第2の対物レンズ23は第2のレンズ保持部31bに、上側からレンズ保持部31a、31b内に設けられるレンズ載置面(図11に示すレンズ載置面102cと同様の構成である)に載置される。レンズ載置面に載置された対物レンズ17、23は接着剤等で固定される。
【0039】
レンズホルダ31には、第1のレンズ保持部31aと第2のレンズ保持部31bとの間に、レンズホルダ31を上下方向に貫通する、平面視略矩形状の2つの貫通孔34a、34bが設けられている。2つの貫通孔34a、34bの並び方向は、2つの対物レンズ17、23の並び方向と略直交する方向である。これら2つの貫通孔34a、34bには、対物レンズ17、23と光ディスクDとの衝突を防止する後述の衝突防止部材が挿入される。各貫通孔34a、34bのサイズは、後述するように衝突防止部材を挿入した場合に、その内面に衝突防止部材が引っ掛かって挿入し難いということがないように、衝突防止部材の外形よりも、やや大き目とされている。
【0040】
なお、レンズホルダ31には、その他、上述の電磁力作用を得るために使用されるフォーカスコイル32やトラックコイル33等が取り付けられる。
【0041】
図4は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに衝突防止部材が取り付けられる前の状態を示す概略斜視図である。図4に示すように、対物レンズ17、23と光ディスクDとの衝突を防止する衝突防止部材40(2つある)は、平面形状略矩形のシート部材である。衝突防止部材40は、光ディスクDとの衝突時に傷及び汚れをなるべく発生しない材質とするのが好ましい。
【0042】
具体的には、例えばポリカーボネート等で形成される光ディスクDの表面層(情報記録面RSを保護する層)よりも柔らかい材質であることが好ましい。また、光ディスクDとの衝突時に削れないような耐磨耗性を有する材質が好ましい。これらの条件を満たす材質の一例として、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)が挙げられ、本実施形態のシート状の衝突防止部材40は超高分子量ポリエチレンで形成されている。
【0043】
図4において、レンズホルダ31は斜め下から見た場合を想定(図3(b)に同じ)した図である。すなわち、本実施形態においては、衝突防止部材40はレンズホルダ31の裏(下)側から貫通孔34a、34bに挿入して取り付ける構成となっている。2つの衝突防止部材40の各々は、その厚み方向に平行な側面の1つが光ディスクDと対向するようにその姿勢(図4の姿勢)を決められ、貫通孔34a、34bに挿入される(図4の破線矢印方向に挿入)。
【0044】
衝突防止部材40をレンズホルダ31に取り付けるに際しては、図5に示すような治具が使用される。なお、図5は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに、衝突防止部材を取り付ける際に使用される治具の構成を示す概略斜視図である。
【0045】
図5に示すように、治具50の台座51には、レンズホルダ31を支持する支持台52が固定状態で載置されている。支持台52の上面52aには、略円柱形状の第1の凸部53と、第1の凸部53を挟むように対称位置に配置される略四角柱状の一対の第2の凸部54a、54bとが設けられている。なお、正確には第1の凸部53と一対の第2の凸部54a、54bとは一直線上に並んでおらず、図5において、第1の凸部53は一対の第2の凸部54a、54bよりも手前側にある。また、第1の凸部53と一対の第2の凸部54a、54bの支持台52の上面52aからの突出量は同一となっている。
【0046】
支持台52の上方には、レンズホルダ31の端部側を押さえつけるために使用される一対のホルダ押さえ部55a、55bと、レンズホルダ31の貫通部34a、34bに挿入されたシート状の衝突防止部材40を押さえつけるために使用される一対の衝突防止部材押さえ部56a、56bと、が設けられている。一対のホルダ押さえ部55a、55bと、一対の衝突防止部材押さえ部56a、56bとは、支持台52に対して上下方向に移動可能に設けられている。
【0047】
図6は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに、治具を用いて衝突防止部材を取り付ける手順を説明するための図で、図6(a)は取り付け途中における、治具、レンズホルダ、及び衝突防止部材の関係を示す概略斜視図、図6(b)は図6(a)の状態の側面図である。なお、ここで説明する手順は一例であり、その手順は本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更して構わない。
【0048】
図6に示すように、レンズホルダ31に衝突防止部材40を取り付けるに際しては、レンズホルダ31を裏向けて支持台52上に載せる。この際、2つの衝突防止部材40の各々を、レンズホルダ31の裏側から貫通孔41a、41bに挿入しておく。そして、第2のレンズ保持部31bのレンズ載置面LS(図6(b)に一点鎖線で示す)が支持台52の第1の凸部53の上面と当接するように載置する。
【0049】
本実施形態では、レンズホルダ31の端部側(図6(b)の左右方向の端部側)がレンズ載置面LSと同一面となる構成であるために、この同一面についても一対の第2の凸部54a、54bで支持するように構成している。すなわち、本実施形態では、レンズホルダ31は第1の凸部53と一対の第2の凸部54a、54bとによって3点支持された状態となる。なお、第2の凸部54a、54bは、場合によっては設けない構成としてもよい。また、前述の3点支持された状態で、レンズホルダ31が動かないようにホルダ押さえ部55a、55bでレンズホルダ31を上から押さえつけて固定する。
【0050】
次に、シート状の衝突防止部材40を、その厚み方向に平行な側面40aの一つが支持台52の上面52aに当接するように、衝突防止部材押さえ部56a、56bで上(支持台上面52aに当接する側面に対向する側面40b(図4参照))側から押さえつける。図6は、この段階の状態を示している。
【0051】
衝突防止部材40を衝突防止部材押さえ部56a、56bで押さえつけることにより、衝突防止部材40の厚み方向に平行な側面40aが、第1の凸部53(第2の凸部54a、54b)の支持台上面52aからの突出量に応じて決まる量だけ、レンズホルダ31に対して突出(図6では下方に突出)することになる。
【0052】
第1の凸部53の支持台上面52aからの突出量は、衝突防止部材40が所望の衝突防止機能を発揮する(後にレンズホルダ31に取り付けられる対物レンズ17、23に対して所定量突出する)ように予め決められている。本実施形態では、前記所望の衝突防止機能を得られる位置に衝突防止部材40が配置された場合における、レンズ載置面LSから、衝突防止部材40の光ディスクDに対向する側面40aまでの高さが、第1の凸部53の支持台上面52aからの突出量h(図6(b)参照)となっている。
【0053】
衝突防止部材40を衝突防止部材押さえ部56a、56bで押さえつけると、図7に示すように、レンズホルダ31の裏面側から、紫外線硬化型の接着剤(UV接着剤)57を衝突防止部材40がレンズホルダ31に着固定されるように適当な位置に注入する。そして、紫外線を照射してUV接着剤を硬化させた後に治具による押さえを解除する。これにより、衝突防止部材40のレンズホルダ31への取り付けが完了する。なお、図7は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに衝突防止部材が接着固定された状態を示す概略斜視図である。
【0054】
図8は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに取り付けられた衝突防止部材と、対物レンズ及び光ディスクとの関係を示す模式図である。図8に示すように、レンズホルダ31に配置される衝突防止部材40は、対物レンズ17、23の先端部より所定の高さtだけ高くなっている(突出している)。このために、衝突防止部材40の存在により対物レンズ17、23と光ディスクDとの衝突を防止できる。
【0055】
一方、衝突防止部材40は光ディスクDと衝突することがある。しかし、衝突防止部材40はシート部材としているために、耐摩耗性の材料を選択し易く、接触により光ディスクDの汚れを防止できる。また、シート状の衝突防止部材40の厚み方向dに平行な側面40aが光ディスクDと対向する構成となっているために、例えば、同じシート部材を用いて厚み方向に垂直な面が光ディスクDに対向する構成とする場合に比べて、光ディスクDとの接触面積を小さなものとできる。このために、光ディスクDの損傷を低減できる。
【0056】
更に、衝突防止部材40が配置される位置を基準とした場合に、衝突防止部材40の厚み方向dと光ディスクDの回転方向とがほぼ平行な関係となっている。このために、衝突防止部材40と光ディスクDとが衝突したとしても、両者の接触時間を比較的短時間とできる。この点からも、衝突防止部材40と光ディスクDとが接触しても光ディスクDに損傷が発生する可能性が低減されている。
【0057】
ところで、以上の説明からわかるように、本実施形態の光ピックアップ1におけるレンズホルダ31には、衝突防止部材40の突出方向(例えば図8における上下方向)の位置決めを行う当て面が設けられない構成となっている。すなわち、衝突防止部材40の突出方向(上下方向、高さ方向)の位置決めは、治具50で行うのみの構成となっている。
【0058】
本実施形態の構成の場合、衝突防止部材40をレンズホルダ31に取り付ける際の寸法公差(上下方向、高さ方向の寸法公差)は、治具精度のみよって決まることになり、非常に小さいもの(例えば±0.03mm)とできる。すなわち、従来の構成の場合に問題となった、シート状の衝突防止部材40の外形寸法公差(例えば±0.08mm)は、衝突防止部材40をレンズホルダ31に取り付ける際の寸法公差として考慮する必要がない。このために、ワーキングディスタンスが非常に小さい光ピックアップであっても、シート状の衝突防止部材40を厚み方向dに平行な側面が光ディスクDと対向するように配置した構成を実現することが可能である。
【0059】
以上に示した実施形態は本発明の一例であり、本発明の光ピックアップは以上に示した構成に限定されるものではない。
【0060】
例えば、以上に示した実施形態では、衝突防止部材40を2つ備える構成としたがこの構成に限られる趣旨ではない。衝突防止部材40の数は適宜変更可能であり、1つ、或いは3つ以上であっても構わない。また、衝突防止部材40をレンズホルダ31に配置する場合の位置についても、適宜変更して構わない。要は、衝突防止部材40は、光ディスクDと対物レンズ17、23とが衝突する可能性が低くなるように配置されればよく、以上に示した実施形態の構成に限定されない。レンズホルダ31の形状についても、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【0061】
また、以上に示した実施形態では、シート状の衝突防止部材40の形状を平面形状略矩形としたが、この形状に限定されず、例えば、平面形状略台形等、その他の形状に適宜変更して構わない。また、衝突防止部材はシート部材でなく、場合によっては成形品(例えば円柱形状等)であっても構わない。この場合でも、レンズホルダと衝突防止部材とのいずれにも、衝突防止部材の突出方向(上下方向)の位置決めを行う当て面が設けられない構成を採用し、小型化・薄型化に対応した光ピックアップの提供が可能となる。
【0062】
また、以上に示した実施形態では、衝突防止部材40の厚み方向dと光ディスクDの回転方向とが略平行となる構成とした。この構成が好ましいが、必ずしも両者が略平行の関係になくても構わない。
【0063】
また、以上に示した実施形態では、光ピックアップ1が2つの対物レンズ17、23を備える構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、光ピックアップが備える対物レンズが1つ、或いは、3つ以上であっても適用可能である。
【0064】
また、以上に示した実施形態においては、対物レンズアクチュエータ30の構成として、レンズホルダ31がワイヤに片持ち支持される構成(ワイヤ支持方式の対物レンズアクチュエータ)とした。しかし、対物レンズアクチュエータの構成は、この構成に限定されない。例えば、図9(断面図)に示すような、いわゆる軸摺動型の対物レンズアクチュエータ60等としてもよい。この場合にも、本実施形態と同様の構成で衝突防止部材を設けることによって、同様の効果が得られる。
【0065】
なお、図9に示す対物レンズアクチュエータ60は、ベース61と、摺動軸62と、衝突防止部材66を有するとともに対物レンズ65を保持するレンズホルダ63と、フォーカスコイル64と、図示しないトラックコイル(レンズホルダ63の側面に取り付けられる)と、を備える。そして、この対物レンズアクチュエータ60では、図示しない永久磁石の磁界と、コイル(フォーカスコイル及びトラックコイル)を流れる電流と、の間における電磁力作用によって、レンズホルダ63が摺動軸62に対して上下方向或いは回転方向に摺動する。
【0066】
その他、以上に示した実施形態では、光ピックアップは、BD、DVD及びCDに対応するものとしたが、当然、これ以外の光ディスク(1種類の場合も複数種類の場合も含む)に対応する光ピックアップでも、本発明は適用できる。光ピックアップが対応する光ディスクの種類が1つである場合には、光源や対物レンズの数は1つでよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、小型化・薄型化に対応する光ピックアップに好適である。
【符号の説明】
【0068】
1 光ピックアップ
11 第1の光源
17 第1の対物レンズ
18 第2の光源
19 第2の対物レンズ
31 レンズホルダ
34a、34b 貫通孔
40 衝突防止部材
D 光ディスク(光記録媒体)
RS 情報記録面
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体に記録される情報の読み取りや光記録媒体への情報の書き込みを行う際に用いられる光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルーレイディスク(BD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)等の光ディスク(光記録媒体の一例)に記録される情報を読み取ったり、それらに情報を書き込んだりする際に光ピックアップが利用されている。光ピックアップには、光源と、光源から出射される光を光ディスクの情報記録面に集光する対物レンズと、情報記録面で反射された戻り光を受光する受光素子と、が備えられる。
【0003】
光ピックアップにおいて情報の読み取り等を行う場合には、対物レンズによって集光される光スポットの位置が常に光ディスクの情報記録面上にあるように制御(フォーカシング制御)する必要があるとともに、前記光スポットが常に光ディスクのトラックに追随するように制御(トラッキング制御)する必要がある。このため、光ピックアップにおいては、対物レンズはレンズホルダに搭載され、このレンズホルダを動かすアクチュエータによってフォーカス方向やトラック方向に移動可能とされるのが通常である。なお、フォーカス方向は光ディスクに接離する方向であり、トラック方向は光ディスクの半径方向に平行な方向である。
【0004】
ところで、光ピックアップにおいては、従来、対物レンズと光ディスクとの衝突を防止するために、レンズホルダに衝突防止部材を設けることがある(例えば、特許文献1〜4参照)。この衝突防止部材によって、対物レンズと光ディスクとの衝突によって光ディスクに記録される情報が使えなくなったり、対物レンズが損傷して光ピックアップが使用できなくなったりするという事態を防止できる。なお、レンズホルダに設けられる衝突防止部材は、例えば特許文献1〜3に示されるように成型品とされることもあるし、例えば特許文献4に示されるようにシート品(シート部材)とされることもある。
【0005】
ここで、特許文献4に示されるようなシート部材からなる衝突防止部材を備える従来の光ピックアップの構成について、図10及び図11を参照しながら説明する。図10は、従来の光ピックアップが備える対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図である。図11は、図10のX−X位置における断面の一部を示す図である。図11では、理解を容易とするために光ディスクDも併せて示している。
【0006】
従来の光ピックアップが備える対物レンズアクチュエータ100は、ベース101と、対物レンズ110を保持するレンズホルダ102と、を備える。ベース101上には、レンズホルダ102を挟んで対称配置となるように一対の永久磁石103が立設されている。また、ベース101には、図示しない光源(光ピックアップの光源)から出射された光が対物レンズ110へと至るように貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0007】
レンズホルダ102には、対物レンズ110を保持するためのレンズ保持部102aが形成されている。また、レンズホルダ102の対向する2つの側壁(永久磁石103とは対向しない外側壁)には、片側に3本ずつ、両側で計6本となるワイヤ104の各一端が固定されている。各ワイヤ104の他端は、ベース101上に立設される回路基板105に固定され、これにより、レンズホルダ102はワイヤ104によって揺動可能に片持ち支持された状態となっている。
【0008】
なお、その一端がレンズホルダ102に固定されるワイヤ104は、一部がベース101上に固定配置されるゲルホルダ106のゲル材充填部106aに挿通された状態で、他端を回路基板105に固定されている。ゲル材充填部106aに充填されるゲル材は、レンズホルダ102の駆動に応じてワイヤ104に生じた振動を減衰する役目を果たす。
【0009】
更に、レンズホルダ102には、レンズホルダ102の内部側壁に沿って対物レンズ110の光軸を取り巻くように配置される図示しないフォーカスコイルと、レンズホルダ102の外部側壁(永久磁石103と対向する側壁)の対称位置に、それぞれ2つずつ配置される4つのトラックコイル111と、が取り付けられている。これらのコイルには、ワイヤ104を介して電流が供給されるようになっている。
【0010】
フォーカスコイルに電流が流れると、永久磁石103によって作られる磁界との電磁気的な作用によって、電流が流れる向き及び電流の大きさに応じて、対物レンズ110はレンズホルダ102と共にフォーカス方向Fに移動する。同様に、トラックコイル111に電流が流れると、その向き及び大きさに応じて、対物レンズ110はレンズホルダ102と共にトラック方向Tに移動する。
【0011】
レンズホルダ102のレンズ保持部102a外の上面102bには、シート部材からなる衝突防止部材112が配置される。平面形状略矩形に設けられるシート状の衝突防止部材112は、その厚み方向に平行な側面の1つ(側面112a;図11参照)が光ディスクDに対向するように固定部113に挿入され、側面(上面)112aに対向する側面(下面)112bがレンズホルダ102の上面102bに当接した状態で保持される(図11参照)。衝突防止部材112の上面112a(先端)は、対物レンズ110の先端よりも高い位置となっている(図11参照)。このため、対物レンズ110よりも衝突防止部材112が先に光ディスクDに衝突し、対物レンズ110と光ディスクDとが直接衝突しないようになっている。
【0012】
この従来例のように衝突防止部材112をシート部材で構成すると、成型品(例えば球面形状に加工し易いこと等が望まれ、そのような材料で形成される)で衝突防止部材を構成する場合に比べて、磨耗し難い材料(耐摩耗性の材料)を選択しやすい。このため、衝突防止部材112と光ディスクDとが接触した場合に、衝突防止部材112の磨耗によって光ディスクDが汚れる可能性を低く抑えることが可能となる。また、シート部材からなる衝突防止部材112を、厚み方向に平行な側面112aが光ディスクDと対向するように配置しているため、衝突防止部材112と光ディスクDとの接触面積を比較的小さなものとできる。このため、衝突防止部材112と光ディスクDとの接触時の摩擦力を小さくでき、光ディスクDに損傷が発生する可能性を低く抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−197982号公報
【特許文献2】特開2004−139694号公報
【特許文献3】特開2008−293551号公報
【特許文献4】特開2010−97626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献4に示される従来の光ピックアップにおいては、次のような問題点が存在する。近年の光ピックアップの小型化・薄型化の流れはBD対応の光ピックアップにおいても例外ではなく、BD対応の光ピックアップにおいても小径の対物レンズを使用することが要求されることがある。BD対応の光ピックアップに小径の対物レンズ(大きな開口数(例えば0.85)が要求される)を使用する場合、対物レンズの先端と光ディスクとの間隔であるワーキングディスタンスが非常に短くなる(例えば0.3mm程度)。
【0015】
シート部材で構成される衝突防止部材112の加工による外形の寸法公差は例えば±0.08mmと大きい。また、レンズホルダ102における、レンズ載置面102cと衝突防止部材載置面102bと(いずれも図11参照)の間の高さlにも寸法公差(例えば±0.03mm)が存在する。すなわち、ワーキングディスタンスについて非常に短い距離が想定されているにもかかわらず、衝突防止部材112を取り付けるにあたって非常に大きな寸法公差が存在し、従来の構成では、衝突防止部材112を設けるにあたっての設計余裕が無い状態となっている。
【0016】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、対物レンズと光記録媒体との衝突を防止する衝突防止部材を備え、小型化・薄型化に対応し易い光ピックアップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、光源と、前記光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズと、前記対物レンズを保持するレンズホルダと、前記対物レンズに対して突出するように前記レンズホルダに固定配置されて、前記光記録媒体と前記対物レンズとの衝突を防止する衝突防止部材と、を備える光ピックアップにおいて、前記レンズホルダには、前記衝突防止部材の前記対物レンズに対する突出方向と略平行な方向に延びて前記衝突防止部材が挿入保持される貫通孔が設けられ、且つ、前記衝突防止部材の前記突出方向の位置決めを行う当て面が設けられていないことを特徴としている。
【0018】
本構成によれば、衝突防止部材をレンズホルダに取り付ける際の寸法公差(衝突防止部材の突出方向、換言すると高さ方向の寸法公差)は、衝突防止部材の外形寸法公差に影響されず、衝突防止部材をレンズホルダに取り付ける際に用いる治具の寸法公差(治具精度)のみによって決まるようにできる。治具の寸法公差は比較的小さなものとできるために、本構成は小型化・薄型化に対応した光ピックアップに対して好適である。
【0019】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記衝突防止部材は、前記突出方向の両端部のうち、前記光記録媒体と対向しない側の端部側が前記レンズホルダに接着固定されていることとしてもよい。本構成によれば、治具で位置調整した衝突防止部材の固定を、例えば紫外線硬化型の接着剤(UV接着剤)等を用いて容易に固定できる。
【0020】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記衝突防止部材はシート部材であるのが好ましい。衝突防止部材をシート部材とすることにより、衝突防止部材を構成する材料として耐摩耗性の材料を選択し易く、衝突防止部材が光記録媒体に接触した場合に、光記録媒体が汚れる可能性を低減できる。
【0021】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記衝突防止部材は、前記シート部材の厚み方向に平行な側面の1つが前記光記録媒体と対向するように配置されているのが好ましい。本構成によれば、例えば、同じシート部材を用いて厚み方向に垂直な面が光記録媒体に対向する構成を採用する場合に比べて、光記録媒体との接触面積を小さなものとできる。このために、衝突防止部材が光記録媒体に衝突した場合における、光記録媒体の損傷を低減できる。
【0022】
上記構成の光ピックアップにおいて、前記衝突防止部材は、前記衝突防止部材が配置される位置を基準として、前記厚み方向が前記光記録媒体の回転方向と略平行となるように前記レンズホルダに配置されているのが好ましい。本構成によれば、衝突防止部材と光記録媒体とが衝突したとしても、両者の接触時間を比較的短時間とでき、光記録媒体に損傷が発生する可能性を低減できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、対物レンズと光記録媒体との衝突を防止する衝突防止部材を備え、小型化・薄型化に対応し易い光ピックアップを提供できる。本発明は、例えば、小径の対物レンズを備える、BD対応の光ピックアップのように、ワーキングディスタンスが狭い光ピックアップに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の光ピックアップの構成を示す概略平面図
【図2】本実施形態の光ピックアップの光学構成を示す概略平面図
【図3】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダの構成を示す概略斜視図
【図4】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに衝突防止部材が取り付けられる前の状態を示す概略斜視図
【図5】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに、衝突防止部材を取り付ける際に使用される治具の構成を示す概略斜視図
【図6】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに、治具を用いて衝突防止部材を取り付ける手順を説明するための図
【図7】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに衝突防止部材が接着固定された状態を示す概略斜視図
【図8】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに取り付けられた衝突防止部材と、対物レンズ及び光ディスクとの関係を示す模式図
【図9】本実施形態の光ピックアップの変形例を示す図
【図10】従来の光ピックアップが備える対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図
【図11】図10のX−X位置における断面の一部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明が適用された光ピックアップの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本実施形態の光ピックアップの構成を示す概略平面図で、図1(a)は光ピックアップの上面図、図1(b)は光ピックアップの側面図である。なお、図1(b)は、図1(a)に示す矢印Aに沿って見た図である。また、図1(b)には、理解を容易とするために、光ディスクDも併せて示している。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の光ピックアップ1は、ピックアップベース10と、ピックアップベース10上に固定配置される対物レンズアクチュエータ30と、を備えた構成となっている。なお、本実施形態の光ピックアップは、BD、DVD、CDといった3種類の規格の光ディスクDに対して情報の読み取りや書き込みを行うことが可能となっており、BD対応の第1の対物レンズ17とDVD及びCD対応の第2の対物レンズ23とを備える構成となっている。
【0028】
ピックアップベース10の左右の端部には軸受け部10a、10bが設けられている。ピックアップベース10は、この軸受け部10a、10bによって、光ディスクDの再生や記録を行う装置である光ディスク装置に設けられるガイドシャフトGS(図1(a)に破線で示す)に摺動可能に支持されることになる。光ディスク装置に設けられるガイドシャフトGSは光ディスクDの半径方向(ラジアル方向)に延びるように配置される。このため、ガイドシャフトGSに対して摺動可能とされる光ピックアップ1は、回転する光ディスクDの所望のアドレスにアクセスして、情報の読み取りや書き込みを行うことができる。
【0029】
図2は、本実施形態の光ピックアップの光学構成を示す概略平面図である。第1のレーザダイオード(LD)11から出射された第1の波長のレーザ光は、回折素子12によって主光と2つの副光とに分けられる。回折素子12を出射したレーザ光は偏光ビームスプリッタ13によって反射され、1/4波長板14及びコリメートレンズ15を通過する。その後、第1の立ち上げミラー16によって反射されて、第1の立ち上げミラー16の上方にある第1の対物レンズ17へと至る。第1の立ち上げミラー16はダイクロイックミラーであり、第1のLD11から出射される第1の波長のレーザ光を反射するようになっている。
【0030】
第1の対物レンズ17は、入射したレーザ光を光ディスクDの情報記録面RS(図1(b)参照)に集光する機能を有する。第1の対物レンズ17によって情報記録面RSに集光されたレーザ光は情報記録面RSで反射される。この反射光(戻り光)は、第1の対物レンズ17を通過後、第1の立ち上げミラー16で反射され、コリメートレンズ15、1/4波長板14、偏光ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ18を順に透過し、センサーレンズ19によって非点収差を与えられてフォトディテクタ(受光素子)20に集光する。フォトディテクタ20は受光した光信号を電気信号に変換する光電変換手段として機能する。
【0031】
なお、第1のLD11は、本実施形態ではBD対応のレーザ光源であり、波長405nm帯のレーザ光を出射する。また、コリメートレンズ15は、球面収差を補正できるようにする等の目的で、公知のレンズ駆動装置によって光軸方向(図2の矢印M方向)に移動できるようになっている。
【0032】
第2のレーザダイオード(LD)21は、第2の波長のレーザ光と第3の波長のレーザ光とを切り換えて出射できるようになっている。第2のLD21から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ18によって反射され、偏光ビームスプリッタ13を透過後、1/4波長板14及びコリメートレンズ15を通過する。また、ダイクロイックミラーとして構成される第1の立ち上げミラー16も透過する。そして、第2の立ち上げミラー22によって反射されて、第2の立ち上げミラー22の上方にある第2の対物レンズ23へと至る。
【0033】
第2の対物レンズ23は、入射したレーザ光を光ディスクDの情報記録面RS(図1(b)参照)に集光する機能を有する。第2の対物レンズ23で情報記録面RSに集光された後に反射された反射光(戻り光)は、第2の対物レンズ23を通過後、第2の立ち上げミラー22で反射され、第1の立ち上げミラー16、コリメートレンズ15、1/4波長板14、偏光ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ18、センサーレンズ19を順に透過してフォトディテクタ20に集光する。
【0034】
なお、第2のLD21は、本実施形態ではDVD及びCD対応のレーザ光源であり、波長650nm帯のレーザ光(DVD用;第2の波長のレーザ光)と波長780nm帯のレーザ光(CD用;第3の波長のレーザ光)とを切り換えて出射可能となっている。すなわち、第2のLD21は2種類の光源を含む構成となっている。このようなレーザ光源は、例えばモノリシックタイプ或いはハイブリッドタイプの2波長レーザであってよい。
【0035】
以上で説明した光学部品11〜23は、いずれもピックアップベース10上に搭載されるが、第1の対物レンズ17及び第2の対物レンズ23は、ピックアップベース10上に配置される対物レンズアクチュエータ30に搭載された状態で、ピックアップベース10に搭載されることになる。
【0036】
対物レンズアクチュエータ30は、図10で示した対物レンズアクチュエータ100と同様に、対物レンズ17、23を保持するレンズホルダを備え、このレンズホルダはワイヤによって片持ち支持される。そして、図10で示した対物レンズアクチュエータ100と同様に、磁石が作る磁界と、コイルを流れる電流との電磁気的な作用を利用して、レンズホルダとともに対物レンズ17、23をフォーカス方向とトラック方向とに移動できる構成となっている。
【0037】
図3は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダの構成を示す概略斜視図であり、図3(a)は対物レンズが搭載された状態を斜め上から見た図、図3(b)は対物レンズが搭載されていない状態を斜め下から見た図である。光ピックアップ1(対物レンズアクチュエータ30)のレンズホルダ31には、2つの対物レンズ17、23を横並び(本実施形態ではタンジェンシャル方向に横並びとなっている(図1参照))で保持できるように、2つのレンズ保持部31a、31bが設けられている。
【0038】
第1の対物レンズ17は第1のレンズ保持部31aに、第2の対物レンズ23は第2のレンズ保持部31bに、上側からレンズ保持部31a、31b内に設けられるレンズ載置面(図11に示すレンズ載置面102cと同様の構成である)に載置される。レンズ載置面に載置された対物レンズ17、23は接着剤等で固定される。
【0039】
レンズホルダ31には、第1のレンズ保持部31aと第2のレンズ保持部31bとの間に、レンズホルダ31を上下方向に貫通する、平面視略矩形状の2つの貫通孔34a、34bが設けられている。2つの貫通孔34a、34bの並び方向は、2つの対物レンズ17、23の並び方向と略直交する方向である。これら2つの貫通孔34a、34bには、対物レンズ17、23と光ディスクDとの衝突を防止する後述の衝突防止部材が挿入される。各貫通孔34a、34bのサイズは、後述するように衝突防止部材を挿入した場合に、その内面に衝突防止部材が引っ掛かって挿入し難いということがないように、衝突防止部材の外形よりも、やや大き目とされている。
【0040】
なお、レンズホルダ31には、その他、上述の電磁力作用を得るために使用されるフォーカスコイル32やトラックコイル33等が取り付けられる。
【0041】
図4は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに衝突防止部材が取り付けられる前の状態を示す概略斜視図である。図4に示すように、対物レンズ17、23と光ディスクDとの衝突を防止する衝突防止部材40(2つある)は、平面形状略矩形のシート部材である。衝突防止部材40は、光ディスクDとの衝突時に傷及び汚れをなるべく発生しない材質とするのが好ましい。
【0042】
具体的には、例えばポリカーボネート等で形成される光ディスクDの表面層(情報記録面RSを保護する層)よりも柔らかい材質であることが好ましい。また、光ディスクDとの衝突時に削れないような耐磨耗性を有する材質が好ましい。これらの条件を満たす材質の一例として、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)が挙げられ、本実施形態のシート状の衝突防止部材40は超高分子量ポリエチレンで形成されている。
【0043】
図4において、レンズホルダ31は斜め下から見た場合を想定(図3(b)に同じ)した図である。すなわち、本実施形態においては、衝突防止部材40はレンズホルダ31の裏(下)側から貫通孔34a、34bに挿入して取り付ける構成となっている。2つの衝突防止部材40の各々は、その厚み方向に平行な側面の1つが光ディスクDと対向するようにその姿勢(図4の姿勢)を決められ、貫通孔34a、34bに挿入される(図4の破線矢印方向に挿入)。
【0044】
衝突防止部材40をレンズホルダ31に取り付けるに際しては、図5に示すような治具が使用される。なお、図5は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに、衝突防止部材を取り付ける際に使用される治具の構成を示す概略斜視図である。
【0045】
図5に示すように、治具50の台座51には、レンズホルダ31を支持する支持台52が固定状態で載置されている。支持台52の上面52aには、略円柱形状の第1の凸部53と、第1の凸部53を挟むように対称位置に配置される略四角柱状の一対の第2の凸部54a、54bとが設けられている。なお、正確には第1の凸部53と一対の第2の凸部54a、54bとは一直線上に並んでおらず、図5において、第1の凸部53は一対の第2の凸部54a、54bよりも手前側にある。また、第1の凸部53と一対の第2の凸部54a、54bの支持台52の上面52aからの突出量は同一となっている。
【0046】
支持台52の上方には、レンズホルダ31の端部側を押さえつけるために使用される一対のホルダ押さえ部55a、55bと、レンズホルダ31の貫通部34a、34bに挿入されたシート状の衝突防止部材40を押さえつけるために使用される一対の衝突防止部材押さえ部56a、56bと、が設けられている。一対のホルダ押さえ部55a、55bと、一対の衝突防止部材押さえ部56a、56bとは、支持台52に対して上下方向に移動可能に設けられている。
【0047】
図6は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに、治具を用いて衝突防止部材を取り付ける手順を説明するための図で、図6(a)は取り付け途中における、治具、レンズホルダ、及び衝突防止部材の関係を示す概略斜視図、図6(b)は図6(a)の状態の側面図である。なお、ここで説明する手順は一例であり、その手順は本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更して構わない。
【0048】
図6に示すように、レンズホルダ31に衝突防止部材40を取り付けるに際しては、レンズホルダ31を裏向けて支持台52上に載せる。この際、2つの衝突防止部材40の各々を、レンズホルダ31の裏側から貫通孔41a、41bに挿入しておく。そして、第2のレンズ保持部31bのレンズ載置面LS(図6(b)に一点鎖線で示す)が支持台52の第1の凸部53の上面と当接するように載置する。
【0049】
本実施形態では、レンズホルダ31の端部側(図6(b)の左右方向の端部側)がレンズ載置面LSと同一面となる構成であるために、この同一面についても一対の第2の凸部54a、54bで支持するように構成している。すなわち、本実施形態では、レンズホルダ31は第1の凸部53と一対の第2の凸部54a、54bとによって3点支持された状態となる。なお、第2の凸部54a、54bは、場合によっては設けない構成としてもよい。また、前述の3点支持された状態で、レンズホルダ31が動かないようにホルダ押さえ部55a、55bでレンズホルダ31を上から押さえつけて固定する。
【0050】
次に、シート状の衝突防止部材40を、その厚み方向に平行な側面40aの一つが支持台52の上面52aに当接するように、衝突防止部材押さえ部56a、56bで上(支持台上面52aに当接する側面に対向する側面40b(図4参照))側から押さえつける。図6は、この段階の状態を示している。
【0051】
衝突防止部材40を衝突防止部材押さえ部56a、56bで押さえつけることにより、衝突防止部材40の厚み方向に平行な側面40aが、第1の凸部53(第2の凸部54a、54b)の支持台上面52aからの突出量に応じて決まる量だけ、レンズホルダ31に対して突出(図6では下方に突出)することになる。
【0052】
第1の凸部53の支持台上面52aからの突出量は、衝突防止部材40が所望の衝突防止機能を発揮する(後にレンズホルダ31に取り付けられる対物レンズ17、23に対して所定量突出する)ように予め決められている。本実施形態では、前記所望の衝突防止機能を得られる位置に衝突防止部材40が配置された場合における、レンズ載置面LSから、衝突防止部材40の光ディスクDに対向する側面40aまでの高さが、第1の凸部53の支持台上面52aからの突出量h(図6(b)参照)となっている。
【0053】
衝突防止部材40を衝突防止部材押さえ部56a、56bで押さえつけると、図7に示すように、レンズホルダ31の裏面側から、紫外線硬化型の接着剤(UV接着剤)57を衝突防止部材40がレンズホルダ31に着固定されるように適当な位置に注入する。そして、紫外線を照射してUV接着剤を硬化させた後に治具による押さえを解除する。これにより、衝突防止部材40のレンズホルダ31への取り付けが完了する。なお、図7は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに衝突防止部材が接着固定された状態を示す概略斜視図である。
【0054】
図8は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズホルダに取り付けられた衝突防止部材と、対物レンズ及び光ディスクとの関係を示す模式図である。図8に示すように、レンズホルダ31に配置される衝突防止部材40は、対物レンズ17、23の先端部より所定の高さtだけ高くなっている(突出している)。このために、衝突防止部材40の存在により対物レンズ17、23と光ディスクDとの衝突を防止できる。
【0055】
一方、衝突防止部材40は光ディスクDと衝突することがある。しかし、衝突防止部材40はシート部材としているために、耐摩耗性の材料を選択し易く、接触により光ディスクDの汚れを防止できる。また、シート状の衝突防止部材40の厚み方向dに平行な側面40aが光ディスクDと対向する構成となっているために、例えば、同じシート部材を用いて厚み方向に垂直な面が光ディスクDに対向する構成とする場合に比べて、光ディスクDとの接触面積を小さなものとできる。このために、光ディスクDの損傷を低減できる。
【0056】
更に、衝突防止部材40が配置される位置を基準とした場合に、衝突防止部材40の厚み方向dと光ディスクDの回転方向とがほぼ平行な関係となっている。このために、衝突防止部材40と光ディスクDとが衝突したとしても、両者の接触時間を比較的短時間とできる。この点からも、衝突防止部材40と光ディスクDとが接触しても光ディスクDに損傷が発生する可能性が低減されている。
【0057】
ところで、以上の説明からわかるように、本実施形態の光ピックアップ1におけるレンズホルダ31には、衝突防止部材40の突出方向(例えば図8における上下方向)の位置決めを行う当て面が設けられない構成となっている。すなわち、衝突防止部材40の突出方向(上下方向、高さ方向)の位置決めは、治具50で行うのみの構成となっている。
【0058】
本実施形態の構成の場合、衝突防止部材40をレンズホルダ31に取り付ける際の寸法公差(上下方向、高さ方向の寸法公差)は、治具精度のみよって決まることになり、非常に小さいもの(例えば±0.03mm)とできる。すなわち、従来の構成の場合に問題となった、シート状の衝突防止部材40の外形寸法公差(例えば±0.08mm)は、衝突防止部材40をレンズホルダ31に取り付ける際の寸法公差として考慮する必要がない。このために、ワーキングディスタンスが非常に小さい光ピックアップであっても、シート状の衝突防止部材40を厚み方向dに平行な側面が光ディスクDと対向するように配置した構成を実現することが可能である。
【0059】
以上に示した実施形態は本発明の一例であり、本発明の光ピックアップは以上に示した構成に限定されるものではない。
【0060】
例えば、以上に示した実施形態では、衝突防止部材40を2つ備える構成としたがこの構成に限られる趣旨ではない。衝突防止部材40の数は適宜変更可能であり、1つ、或いは3つ以上であっても構わない。また、衝突防止部材40をレンズホルダ31に配置する場合の位置についても、適宜変更して構わない。要は、衝突防止部材40は、光ディスクDと対物レンズ17、23とが衝突する可能性が低くなるように配置されればよく、以上に示した実施形態の構成に限定されない。レンズホルダ31の形状についても、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【0061】
また、以上に示した実施形態では、シート状の衝突防止部材40の形状を平面形状略矩形としたが、この形状に限定されず、例えば、平面形状略台形等、その他の形状に適宜変更して構わない。また、衝突防止部材はシート部材でなく、場合によっては成形品(例えば円柱形状等)であっても構わない。この場合でも、レンズホルダと衝突防止部材とのいずれにも、衝突防止部材の突出方向(上下方向)の位置決めを行う当て面が設けられない構成を採用し、小型化・薄型化に対応した光ピックアップの提供が可能となる。
【0062】
また、以上に示した実施形態では、衝突防止部材40の厚み方向dと光ディスクDの回転方向とが略平行となる構成とした。この構成が好ましいが、必ずしも両者が略平行の関係になくても構わない。
【0063】
また、以上に示した実施形態では、光ピックアップ1が2つの対物レンズ17、23を備える構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、光ピックアップが備える対物レンズが1つ、或いは、3つ以上であっても適用可能である。
【0064】
また、以上に示した実施形態においては、対物レンズアクチュエータ30の構成として、レンズホルダ31がワイヤに片持ち支持される構成(ワイヤ支持方式の対物レンズアクチュエータ)とした。しかし、対物レンズアクチュエータの構成は、この構成に限定されない。例えば、図9(断面図)に示すような、いわゆる軸摺動型の対物レンズアクチュエータ60等としてもよい。この場合にも、本実施形態と同様の構成で衝突防止部材を設けることによって、同様の効果が得られる。
【0065】
なお、図9に示す対物レンズアクチュエータ60は、ベース61と、摺動軸62と、衝突防止部材66を有するとともに対物レンズ65を保持するレンズホルダ63と、フォーカスコイル64と、図示しないトラックコイル(レンズホルダ63の側面に取り付けられる)と、を備える。そして、この対物レンズアクチュエータ60では、図示しない永久磁石の磁界と、コイル(フォーカスコイル及びトラックコイル)を流れる電流と、の間における電磁力作用によって、レンズホルダ63が摺動軸62に対して上下方向或いは回転方向に摺動する。
【0066】
その他、以上に示した実施形態では、光ピックアップは、BD、DVD及びCDに対応するものとしたが、当然、これ以外の光ディスク(1種類の場合も複数種類の場合も含む)に対応する光ピックアップでも、本発明は適用できる。光ピックアップが対応する光ディスクの種類が1つである場合には、光源や対物レンズの数は1つでよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、小型化・薄型化に対応する光ピックアップに好適である。
【符号の説明】
【0068】
1 光ピックアップ
11 第1の光源
17 第1の対物レンズ
18 第2の光源
19 第2の対物レンズ
31 レンズホルダ
34a、34b 貫通孔
40 衝突防止部材
D 光ディスク(光記録媒体)
RS 情報記録面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズと、
前記対物レンズを保持するレンズホルダと、
前記対物レンズに対して突出するように前記レンズホルダに固定配置されて、前記光記録媒体と前記対物レンズとの衝突を防止する衝突防止部材と、
を備える光ピックアップにおいて、
前記レンズホルダには、前記衝突防止部材の前記対物レンズに対する突出方向と略平行な方向に延びて前記衝突防止部材が挿入保持される貫通孔が設けられ、且つ、前記衝突防止部材の前記突出方向の位置決めを行う当て面が設けられていないことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
前記衝突防止部材は、前記突出方向の両端部のうち、前記光記録媒体と対向しない側の端部側が前記レンズホルダに接着固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記衝突防止部材はシート部材であることを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
前記衝突防止部材は、前記シート部材の厚み方向に平行な側面の1つが前記光記録媒体と対向するように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ。
【請求項5】
前記衝突防止部材は、前記衝突防止部材が配置される位置を基準として、前記厚み方向が前記光記録媒体の回転方向と略平行となるように前記レンズホルダに配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ。
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズと、
前記対物レンズを保持するレンズホルダと、
前記対物レンズに対して突出するように前記レンズホルダに固定配置されて、前記光記録媒体と前記対物レンズとの衝突を防止する衝突防止部材と、
を備える光ピックアップにおいて、
前記レンズホルダには、前記衝突防止部材の前記対物レンズに対する突出方向と略平行な方向に延びて前記衝突防止部材が挿入保持される貫通孔が設けられ、且つ、前記衝突防止部材の前記突出方向の位置決めを行う当て面が設けられていないことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
前記衝突防止部材は、前記突出方向の両端部のうち、前記光記録媒体と対向しない側の端部側が前記レンズホルダに接着固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記衝突防止部材はシート部材であることを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
前記衝突防止部材は、前記シート部材の厚み方向に平行な側面の1つが前記光記録媒体と対向するように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ。
【請求項5】
前記衝突防止部材は、前記衝突防止部材が配置される位置を基準として、前記厚み方向が前記光記録媒体の回転方向と略平行となるように前記レンズホルダに配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−64278(P2012−64278A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208784(P2010−208784)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
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