説明

光ファイバ、光通信モジュール

【課題】光ファイバ素線の復元力に抗して布線形状を維持しつつ、小型の電子機器の内部空間においても光伝送手段として組込みが可能な光ファイバを提供する。
【解決手段】光ファイバ10は、コア11と、このコア11を取り巻くクラッド12とからなる光ファイバ裸線13を有する。更にこの光ファイバ裸線13の周りには、樹脂被膜14が形成され、これら光ファイバ裸線13と樹脂被膜14とから、光ファイバ素線15を構成している。コア11は、直径が50μm以上、62.5μm以下に形成され、少なくとも石英を含む材料がら形成されている。光ファイバ素線15は、周囲を第一金属被膜16で覆われている。また、第一金属被膜16の周囲は、更に第二金属被膜17で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ、およびこの光ファイバを用いて発光素子と受光素子とを結合してなる光通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サーバなどの高速通信機器、ゲーム機などの映像情報機器、あるいは携帯電話など小型電子機器においては、高機能化に伴って機器内部での情報信号の伝達速度が飛躍的に高められている。このため、より一層、高速かつ確実に信号をやり取りするために、従来のメタル配線に代えて光ファイバなどを用いた光配線が検討されつつある。
【0003】
また、これらの機器では、電子基板の高密度実装、及び配線の集積化が進んでおり、基板内や基板間を接続する光送受信モジュールにも省スペース化や薄型化の要求が強い。このため、光送受信部の薄型化に加え、光伝送路となる光ファイバの薄型化と、高密度実装された部品間を屈曲して配線された光ファイバの布線形状の保持が必要となる。
【0004】
しかしながら、従来、光ファイバを布線するにあたって、光ファイバの布線形状の保持は困難であった。即ち、光ファイバは従来のメタル配線と異なり塑性変形しにくく、布線時に光ファイバを布線形状に合わせて屈曲させても、自らの反発力で安定な布線形状(例えば、直線形状)に戻ろうとする力が強いためである。このため、光ファイバを所定の布線形状に合わせて布線しても、時間の経過とともに光ファイバが意図しない場所で浮き上がり、機器の使用上、障害となることがあった。
【0005】
このような課題に対応するために、例えば、特許文献1には、光ファイバを所定の布線形状に曲げた状態で、粘着層を有する樹脂シートで光ファイバを挟み込むことによって、光ファイバを布線形状で固定する光ファイバシートが記載されている。
しかしながら、特許文献1に示された発明では、光ファイバシートは光ファイバの形状反発力を抑えて所望の布線形状に保持できるものの、一度作製すると光ファイバの布線の変更を行うことは極めて困難であり、製造上の自由度が低く、かつ製造コストが高いという課題があった。
【0006】
また、図6に示すように、例えば特許文献2には、光ファイバ101と金属線102と並列させて樹脂チューブ103を被せ、金属線102の形状保持力(塑性変形力)によって光ファイバ101の布線形状を維持する発明が記載されている。
しかしながら、特許文献2に示された発明では、光ファイバ101と金属線102と並列させて更に樹脂チューブ103を被せるという構造ゆえ、その外径が大きくなることは避けられず、小型、薄型化が進んだ電子機器に布線することには制約があった。
【0007】
また、図7に示すように、例えば特許文献3には、光ファイバ110を取り巻くようにスパイラル状の金属チューブ111を配し、この金属チューブ111の形状保持力によって光ファイバ110の布線形状を維持する発明が記載されている。
しかしながら、特許文献3に示された発明では、光ファイバ110の周りにスパイラル状の金属チューブ111が取り巻くという構造ゆえ、特許文献2と同様に、その外径が大きくなることは避けられず、小型、薄型化が進んだ電子機器に布線することには制約があった。
【0008】
また、図8に示すように、例えば特許文献4には、直径が5.6μm以下、または10μmの光ファイバコア120を有する樹脂被膜121の光ファイバ素線122の周りに、厚みが5〜15μmの第一金属被膜123、更にこの第一金属被膜123の周りに、厚みが5〜50μmの第二金属被膜124とを形成した光ファイバ125を、コイル状に巻回させた光ファイバコイル式センサが記載されている。
しかしながら、特許文献4に示された発明では、光ファイバコア120の直径が小さすぎるため、例えば、光ファイバ125の両端に信号送受信用の発光素子や受光素子を接続する際に、集光レンズが必須となる。このため、各種情報機器の信号送受信手段として特許文献4に示された光ファイバを用いた場合には、集光レンズ等を付加するために、製造コストの増加や小型、薄型化の障害となる。
【0009】
更に、図9に示すように、例えば特許文献5には、光ファイバ130の周りに信号伝達や給電のための金属コート部131を備えた、金属コート光ファイバケーブル132が記載されている。
しかしながら、特許文献5に示された発明では、光ファイバ130を取り巻く金属コート部131は、信号伝達や給電を目的として形成されているものであり、光ファイバ130の布線形状の保持などの機能は備えていない。
【特許文献1】特開2001−255417号公報
【特許文献2】特開2001−116964号公報
【特許文献3】特開2005−114862号公報
【特許文献4】特開2005−208025号公報
【特許文献5】特開昭62−108412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、光ファイバ素線の復元力に抗して布線形状を維持しつつ、小型の電子機器の内部空間においても光伝送手段として組込みが可能な光ファイバを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、布線した光ファイバが復元力によって浮き上がり、信号伝送に不具合が生じることの無い光通信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の光ファイバは、少なくとも石英を含む光ファイバコアおよび該光ファイバコアを被覆する樹脂被膜からなる光ファイバ素線と、前記光ファイバ素線を覆う第一金属被膜と、前記第一金属被膜を覆う第二金属被膜とを有する光ファイバであって、前記光ファイバコアの直径が50μm以上、62.5μm以下であり、前記光ファイバを屈曲させた際に、第一金属被膜および/または第二金属被膜によって前記光ファイバ素線の屈曲状態を保持する構造であることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の光ファイバは、請求項1において、前記第一金属被膜の厚みは、0.1μm以上、5μm以下の範囲であることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の光ファイバは、請求項1または2において、前記第二金属被膜の厚みは、50μm以上、95μm以下の範囲であることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の光ファイバは、請求項1ないし3いずれか1項において、前記第一金属被膜は、Cu,Ni,Sn,CrおよびZnから選択される単一元素、または少なくとも2つ以上の元素からなる合金であることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の光ファイバは、請求項1ないし4いずれか1項において、前記第二金属被膜は、Cu,Ni,Cr,Zn,Ag,およびAuから選択される単一元素、または少なくとも2つ以上の元素からなる合金であることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の光通信モジュールは、プリント基板と、発光素子と受光素子の一方又は両方を側面に実装してなるサブマウント基板と、前記発光素子と受光素子との間に、これらの素子と光結合可能に設けられた光ファイバとを有してなり、前記発光素子及び前記受光素子は、前記サブマウント基板を介して、それらの発光及び受光方向が前記プリント基板と平行となるように前記プリント基板上に実装され、且つ前記サブマウント基板の発光素子及び受光素子と、これらに隣接した前記光ファイバの端部とが、樹脂により覆われている光通信モジュールであって、前記光ケーブルは、少なくとも石英を含む光ファイバコアおよび該光ファイバコアを被覆する樹脂被膜からなる光ファイバ素線と、前記光ファイバ素線を覆う第一金属被膜と、前記第一金属被膜を覆う第二金属被膜とを有し、前記光ファイバコアの直径が50μm以上、62.5μm以下であり、前記光ファイバを屈曲させた際に、第一金属被膜および/または第二金属被膜によって前記光ファイバ素線の屈曲状態を保持する構造であることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の光ファイバ素線は、少なくとも石英を含む光ファイバコアおよび該光ファイバコアを被覆する樹脂被膜からなる光ファイバ素線であって、前記光ファイバコアの直径が50μm以上、62.5μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ファイバによれば、50μm以上、62.5μm以下の比較的直径が太く、従って屈曲に対して反発力(復元力)が強いコアを備えていても、第一金属被膜と第二金属被膜の2層の金属被膜によって光ファイバ素線が覆われているので、これら第一金属被膜および第二金属被膜の塑性変形性、およびコアの反発力を上回る弾性限界応力により、光ファイバ素線を屈曲させたままの状態で保持することが可能になる。
【0014】
このため、例えば、光ファイバを小型の電子機器内の光伝送体として、基板上などに屈曲させて布線(配線)した場合でも、光ファイバが屈曲前の形状に復元しようとして基板から浮き上がったり、基板上で予期せぬ方向に屈曲して伝送障害を引き起こすといった不具合を確実に防止することができる。
【0015】
また、光ファイバ10を、例えば基板上に布線する工程においても、光ファイバ10を所定の布線形状に屈曲させた後、反発力によって元の形状に復元しないように押さえるなどの手順を踏まなくても、光ファイバ10は布線形状に保持されたままであるので、光ファイバ10の布線工程を大幅に容易にすることが可能となる。
【0016】
そして、このような構成の光ファイバによれば、50μm以上、62.5μm以下の比較的直径が太く、情報伝達量に優れたコアを備えているため、例えば、光ファイバの両端に信号送受信用の発光素子や受光素子を接続する際に、集光レンズ等を設ける必要が無い。このため、光ファイバを布線する機器の薄型化、小型化に寄与することができる。
【0017】
また、本発明の光通信モジュールによれば、発光素子および受光素子とを光結合する光ファイバが、50μm以上、62.5μm以下の比較的直径が太く、従って屈曲に対して反発力(復元力)が強いコアを備えていても、第一金属被膜と第二金属被膜の2層の金属被膜によって光ファイバ素線が覆われているので、これら第一金属被膜および第二金属被膜の塑性変形性、およびコアの反発力を上回る弾性限界応力により、光ファイバ素線を屈曲させたままの状態で保持することが可能になる。
【0018】
このため、光ファイバをプリント基板に対し略水平かつ接近して布線しても、布線した曲げ状態に光ファイバが保持され、光ファイバ素線の反発力によってプリント基板から浮き上がったり、基板上で予期せぬ方向に屈曲して伝送障害を引き起こすといった不具合を確実に防止することができる。これにより、光通信モジュールの厚みを、実装されたプリント基板から数ミリ以内に抑えることが可能となり、小型化、薄型化に対応した信頼性の高い光通信モジュールを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る光ファイバの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0020】
図1は、本発明の光ファイバの構成を示す断面図である。光ファイバ10は、コア(光ファイバコア)11と、このコア11を取り巻くクラッド12とからなる光ファイバ裸線13を有する。更にこの光ファイバ裸線13の周りには、樹脂被膜14が形成され、これら光ファイバ裸線13と樹脂被膜14とから、光ファイバ素線15を構成している。
【0021】
コア11は、直径が50μm以上、62.5μm以下に形成され、石英を主体とした材料から形成されている。光ファイバ素線15は、周囲を第一金属被膜16で覆われている。また、第一金属被膜16の周囲は、更に第二金属被膜17で覆われている。
【0022】
このような構成の光ファイバ10によれば、50μm以上、62.5μm以下の比較的直径が太く、従って屈曲に対して反発力(復元力)が強いコア11を備えていても、第一金属被膜16と第二金属被膜17の2層の金属被膜によって光ファイバ素線15が覆われているので、これら第一金属被膜16および第二金属被膜17の塑性変形性、およびコア11の反発力を上回る弾性限界応力により、光ファイバ素線15を屈曲させたままの状態で保持することが可能になる。
【0023】
このため、例えば、光ファイバ10を小型の電子機器内の光伝送体として、基板上などに屈曲させて布線(配線)した場合でも、光ファイバ10が屈曲前の形状に復元しようとして基板から浮き上がったり、基板上で予期せぬ方向に屈曲して伝送障害を引き起こすといった不具合を確実に防止することができる。
【0024】
また、光ファイバ10を、例えば基板上に布線する工程においても、光ファイバ10を所定の布線形状に屈曲させた後、反発力によって元の形状に復元しないように押さえるなどの手順を踏まなくても、光ファイバ10は布線形状に保持されたままであるので、光ファイバ10の布線工程を大幅に容易にすることが可能となる。
【0025】
そして、このような構成の光ファイバ10によれば、50μm以上、62.5μm以下の比較的直径が太く、情報伝達量に優れたコア11を備えているため、例えば、光ファイバ10の両端に信号送受信用の発光素子や受光素子を接続する際に、集光レンズ等を設ける必要が無い。このため、光ファイバ10を布線する機器の薄型化、小型化に寄与することができる。
【0026】
光ファイバ裸線13は、コア11の直径がシングルモードファイバよりも大きく、発光素子や受光素子との光結合が容易であることが好ましい。光ファイバ裸線13には、外径62.5μmのコア11、外径125μmのクラッド12を有するGI光ファイバ裸線を用いることも可能である。
【0027】
樹脂被膜14は、耐熱性および化学的安定性に優れ、かつ金属被膜の被覆処理に対する耐久性の面から、例えば、ポリイミドを用いるのが好ましい。また、樹脂被膜14には、紫外線硬化樹脂や、シリコーン樹脂を用いることもできる。樹脂被膜14は、一層だけでなく、光ファイバ裸線13の外側に形成された2層以上複層からなる樹脂被膜であってもよい。こうした樹脂被膜14の厚みは、例えば5〜40μm程度に形成されていれば良い。
【0028】
第一金属被膜16は、例えば、Cuを主成分として形成されている。他にも、第一金属被膜16を構成する材料としては、Cu,Ni,Sn,CrおよびZnから選択される単一元素、または少なくとも2つ以上の元素からなる合金が挙げられる。
【0029】
第一金属被膜16の形成に無電解めっきを用いる場合、一般的に無電解めっきが可能な金属として、Cu、Ni、Snを用いる必要があるが、他の形成方法ではこの限りではない。しかし、真空蒸着、スパッタリングでは、無電解めっきより被膜の厚みを増加させることが現実的に困難であることから、厚みが薄くとも剛性が高いCr、Zn、Cu−Zn合金、CuーNi合金が好ましく挙げられる。
【0030】
第一金属被膜16の厚みは、0.1μm以上、5μm以下の範囲が好ましく、特に好ましくは1μm程度である。こうした第一金属被膜16の形成方法の一例としては、無電解めっきを用いて形成される。処理薬液は、還元剤としてホルマリンが添加された無電解銅めっき浴薬液(商品名:OPCカッパー(奥野製薬工業製))を用い、薬液温度を30℃に保持し、所定の膜厚になるまでめっき処理を行なった。
【0031】
また、第一金属被膜16の形成には、こうした無電解めっきの他に、真空蒸着、またはスパッタリングを用いることもでき、更に、これらの方法を2つ以上を組み合わせて第一金属被膜16を形成しても良い。この第一金属被膜16は、後述する第二金属被膜17の下地層の役割も果たしている。従って、厚みが0.1μm以下では第二金属被膜17の厚みが不均一になりやすく、好ましくない。また、5μm以上では、成膜に時間が掛かり、生産性が悪く製造コストが高くなる。
【0032】
第二金属被膜17は、例えば、Cuを主成分として形成されている。他にも、第二金属被膜17を構成する材料としては、Cu,Ni,Cr,Zn,Ag,およびAuから選択される単一元素、または少なくとも2つ以上の元素からなる合金が挙げられる。Cu−Zn合金、Cu−Ni合金を用いることもできる。第二金属被膜17は、色合いなどを考慮し、実際の布線作業者が好ましいと考える金属を用いることができるが、光ファイバ素線15を曲げ状態のまま保持するのに必要な剛性を持っていることが望ましい。剛性が高く、色合いが良いなどの要因から、前述した金属は好適である。
【0033】
第二金属被膜17の厚みは、50μm以上、95μm以下の範囲が好ましく、特に好ましくは60μm程度である。こうした第二金属被膜17の形成方法の一例としては、無電解めっきを用いて形成される。処理薬液として、硫酸銅めっき浴薬液(硫酸銅5水和物1に対し硫酸4の重量比で混合し、塩素イオンを50ppm添加した薬液に、添加剤(商品名:カバークリーム、メルテックス製)を加えたもの)を用い、薬液中で第二金属被膜17に電流密度2.5A/dmの電流を流し、所定の厚みになるまでめっき処理を行なう。
【0034】
なお、薬液は上述したもの以外にも、一般的に電解銅めっきに用いられる青化銅浴、またはピロ燐酸銅浴を用いることもできる。こうした第二金属被膜17は、第一金属被膜16を下地層として、効率的に金属被膜の厚みを増加することができ、光ファイバ素線15の曲げ状態を保持するのに必要とされる厚みに、比較的短時間で到達することが可能である。なお、第二金属被膜17の厚みが50μm未満であると、塑性力の不足によって光ファイバ素線15の曲げ状態を保持できない虞がある。また、第二金属被膜17の厚みが95μmを越えると、第二金属被膜17が硬くなりすぎて、光ファイバ10を屈曲させた際に第二金属被膜17にクラックが入る虞がある。
【0035】
なお、第二金属被膜17の周囲に、更に絶縁樹脂からなる絶縁被膜などを形成することも好ましい。この絶縁被膜としては、例えば、第一金属被膜16や第二金属被膜17の塑性変形を妨げない程度に柔らかく、かつ絶緑性を有していればよい。こうした第二金属被膜17を覆う絶縁樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、スチレンゴムなどが好ましく挙げられる。
【0036】
次に、本発明の光通信モジュールについて説明する。図2は、本発明の光通信モジュールの構成を示す模式図である。
本発明の光通信モジュール20は、プリント基板21と、発光素子22、受光素子23の一方又は両方を実装してなるサブマウント基板24とを備えている。また、この発光素子22と受光素子23との間に、これらの素子と光結合可能に設けられた光ファイバ25を有している。
【0037】
発光素子22および受光素子23は、サブマウント基板24を介して、それらの発光及び受光方向がプリント基板21に対して平行になるように、プリント基板21上に実装されている。また、発光素子22および受光素子23と、これらに隣接した光ファイバ25の端部とが、樹脂26により覆われている。樹脂26は、例えば、UV硬化型樹脂が好ましく挙げられる。
【0038】
このような光通信モジュール20の発光素子22と受光素子23との間を光結合させる(光信号を伝播させる)光ファイバ25は、図3に示すように、コア(光ファイバコア)31と、このコア31を取り巻くクラッド32とからなる光ファイバ裸線33を有する。更にこの光ファイバ裸線33の周りには、樹脂被膜34が形成され、これら光ファイバ裸線33と樹脂被膜34とから、光ファイバ素線35を構成している。
【0039】
コア31は、直径が50μm以上、62.5μm以下に形成され、少なくとも石英を含む材料がら形成されている。光ファイバ素線35は、周囲を第一金属被膜36で覆われている。また、第一金属被膜36の周囲は、更に第二金属被膜37で覆われている。また、第二金属被膜37の周囲は、絶縁樹脂、例えば、スチレンゴムからなる絶縁被膜38が形成されているのが好ましい。この絶縁被膜38は、例えば、厚みが100μm程度に形成される
【0040】
このような構成の光通信モジュール20によれば、発光素子22および受光素子23とを光結合する光ファイバ25が、50μm以上、62.5μm以下の比較的直径が太く、従って屈曲に対して反発力(復元力)が強いコア31を備えていても、第一金属被膜36と第二金属被膜37の2層の金属被膜によって光ファイバ素線35が覆われているので、これら第一金属被膜36および第二金属被膜37の塑性変形性、およびコア31の反発力を上回る弾性限界応力により、光ファイバ素線35を屈曲させたままの状態で保持することが可能になる。
【0041】
このため、光ファイバ25をプリント基板21に対し略水平かつ接近して布線しても、布線した曲げ状態に光ファイバ25が保持され、光ファイバ素線35の反発力によってプリント基板21から浮き上がったり、基板上で予期せぬ方向に屈曲して伝送障害を引き起こすといった不具合を確実に防止することができる。これにより、光通信モジュール20の厚みを、実装されたプリント基板21から5mm以内に抑えることが可能となり、小型化、薄型化に対応した信頼性の高い光通信モジュール20を提供することが可能になる。
【実施例】
【0042】
本発明の光ファイバの効果を検証した。検証にあたって、本発明の光ファイバ(実施例)、および従来の光ファイバ(比較例)の形状保持力を測定した。
まず、形状保持力の測定方法を述べる。図4(a)に示すように、外径30mmのSUS製マンドレルMを用い、全長1mの光ファイバFの中央部を、このマンドレルMに略垂直に一周、無理のない力で巻きつけた。この状態でマンドレルMを抜き、光ファイバFを所定時間放置した。
【0043】
そして、図4(b)に示すように、所定時間放置直後の光ファイバFにおけるリング状の屈曲部分の最大内径r1を基準として、24時間経過後、および48時問経過後の最大内径r2をそれぞれ測定し、下記の式(a)に従い歪開放率Pを規定した。
P=((r2−r1)/r1)×100(%)・・・・(a)
歪開放率が5%以下であり、24時間経過後の最大内径と48時間後の最大内径とが概ね変化が無けれぱ、形状保持力は良好であると定義される。
【0044】
表1にそれぞれ示す本発明の実施例1〜18、および従来の比較例1〜5の光ファイバを用意した。
【0045】
【表1】

【0046】
表中に示す記号は以下の通りである。
「光ファイバ裸線の型名」 A1:GIファイバ
「樹脂被膜構造の材質」 B1:ポリイミド
B2:シリコーン
B3:アクリル系UV樹脂
【0047】
実施例1〜18までは、GI光ファイバ素線に対し、第一の金属被膜、あるいは第二金属被膜の、金属種、厚みを変えて、光ファイバを作成した本発明例である。また、比較例1は、第二金属被膜の厚みが、好ましい範囲より少ない50μm未満である従来の光ファイバを示している。比鮫例2は、第一金属被膜の厚みが、好ましい範囲より小さく0.1μm未満である従来の光ファイバを示している。比較例3は、第二金属被膜の厚みが、好ましい範囲より厚い150μmである従来の光ファイバを示している。更に、比較例4は、第一の金属被膜、および第二金属被膜の厚みが、好ましい範囲よりいずれも厚い、5μm,95μmである従来の光ファイバを示している。比較例5は、第一金属被膜、第二金属被膜のいずれも形成されていない、従来の光ファイバ(光ファイバ素線)を示している。比較例6は、第一金属被膜のみ形成された従来の光ファイバを示している。
【0048】
そして、実施例1〜18、および比較例1〜6における歪開放率、および、光ファイバのプリント基板からの浮き上がりを示す、光送受信モジュールが占める最大高さを測定した。なお、光送受信モジュールの形状は、図2に示すものと同様である。
表1の評価項目に示す検証結果によれば、形状保持力は、実施例1〜18までは、いずれも歪開放率が5%未満と良好な特性を示した。一方、比較例1、比較例5、比較例6は、歪開放率が大きく、布線形状を十分に維持することができなかった。比較例2、比較例3、比較例4は、歪開放率が5%未満であるものの、比較例2は、同様の金属から金属被膜が成っている実施例2と比較して、光ファイバの中間部の厚みが30μmしかなく、第二金属被膜の厚みにばらつきが生じていた。比較例3は、同様の金属から金属被膜が成っている実施例3と比較して、電解めっきに要する時間が3倍もかかってしまい生産性に課題がある。比較例4は、屈曲してまっすぐに戻す、という動きを3回繰り返すと、金属被膜と光ファイパ素線が一緒に割れてしまい、使用できなくなるという不具合が生じた。
【0049】
次に、実施例1〜18、および比較例1〜6の光ファイバを用いて、布線性を検証した。布線性の検証方法は、図5に示すように、光ファイバFを50cmの長さに揃えた。これを用い、光送受信モジュール51を作製した。別途、評価用基板として、平坦な未加工のガラスエポキシ基板52(30cm角、厚さ1.6mm)の外周部分に、電子部品を模擬した10mm角(高さ2mm)のアクリルブロック53を、それぞれ10mmの問隔を開けて一列に並べ、両面テープで接着した。
【0050】
また、光送受信モジュール51を、光ファイバFの中央部を曲げ半径(内径)が15mmとなるように指で90度曲げて(図5中のR部分参照)、ガラスエポキシ基板52とアクリルブロック53に沿って布線されるように変形し、この状態で24時間放置した。その後、光ファイバFのガラスエポキシ基板52からの浮き上がり量を測定するとともに、パルスパターン発生器で光送信部に2.5GHzの電気信号を入力し、光受信部からの出力をビットエラーレート測定器に接統してエラー率を測定した。
【0051】
布線性は、実施例1〜18までは、光ファイバの浮き上がりが少なく、光送受信モジュールの最大高さが5mm未満と少なく良好であった。更に、表には示さないが、いずれも2.5GHzの入力信号をエラーフリーで伝送することができた。一方、比較例1、比較例5、比較例6は、光ファイバが最初の布線状態から動き、アクリルブロックに接触、あるいは乗り上げて、基板からの浮き上がり最大高さは5mmを超えてしまった。また、比較例2、比較例3は、光ファイバの浮き上がりは少ないものの、形状保持力の項で述べたように、布線時の取り扱いの不便さ、生産性の低さ、繰り返し屈曲強度の低さの点で難があった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の光ファイバの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の光通信モジュールの一例を示す平面図および断面図である。
【図3】本発明の光通信モジュールのに用いた光ファイバの一例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例における検証方法を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例における検証方法を示す説明図である。
【図6】従来の光ファイバを示す斜視図である。
【図7】従来の光ファイバを示す断面図である。
【図8】従来の光ファイバを示す断面図である。
【図9】従来の光ファイバを示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 光ファイバ、11 コア、12 クラッド、13 光ファイバ裸線、14 樹脂被膜、15 光ファイバ素線、16 第一金属被膜、17 第二金属被膜。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英系光ファイバコアと該光ファイバコアを被覆する樹脂被膜からなる光ファイバ素線、前記光ファイバ素線を覆う第一金属被膜、及び前記第一金属被膜を覆う第二金属被膜とを少なくとも備えてなる光ファイバであって、
前記光ファイバコアの直径が50μm以上、62.5μm以下であり、
前記光ファイバを屈曲させた際に、第一金属被膜および/または第二金属被膜によって前記光ファイバ素線を曲げた状態を保持する構造であることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記第一金属被膜の厚みは、0.1μm以上、5μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記第二金属被膜の厚みは、50μm以上、95μm以下の範囲であることを特徴とする請求項2記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記第一金属被膜は、Cu,Ni,Sn,CrおよびZnから選択される単一元素からなる金属、または少なくとも2つ以上の元素からなる合金であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記第二金属被膜は、Cu,Ni,Cr,Zn,Ag,およびAuから選択される単一元素からなる金属、または少なくとも2つ以上の元素からなる合金であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の光ファイバ。
【請求項6】
プリント基板と、発光素子と受光素子の一方又は両方を側面に実装してなるサブマウント基板と、前記発光素子と受光素子との間に、これらの素子と光結合可能に設けられた光ファイバとを有してなり、前記発光素子及び前記受光素子は、前記サブマウント基板を介して、それらの発光及び受光方向が前記プリント基板と平行となるように前記プリント基板上に実装され、且つ前記サブマウント基板の発光素子及び受光素子と、これらに隣接した前記光ファイバの端部とが、樹脂により覆われている光通信モジュールであって、
前記光ケーブルは、石英系光ファイバコアと該光ファイバコアを被覆する樹脂被膜からなる光ファイバ素線、前記光ファイバ素線を覆う第一金属被膜、及び前記第一金属被膜を覆う第二金属被膜とを少なくとも備えてなり、前記光ファイバコアの直径が50μm以上、62.5μm以下であり、前記光ファイバを屈曲させた際に、第一金属被膜および/または第二金属被膜によって前記光ファイバ素線を曲げた状態を保持する構造であることを特徴とする光通信モジュール。
【請求項7】
石英系光ファイバコアおよび該光ファイバコアを被覆する樹脂被膜からなる光ファイバ素線であって、
前記光ファイバコアの直径が50μm以上、62.5μm以下であることを特徴とする光ファイバ素線。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−292660(P2008−292660A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136576(P2007−136576)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】