説明

光ファイバアセンブリ及びそれに用いられるスリーブ

【課題】光ファイバアッセンブリであって、気密性をより向上させることである。
【解決手段】光ファイバアセンブリ10は、貫通路12を有するスリーブ14と、スリーブ14の一端側から貫通路12に挿入され、他端側に突出した光ファイバ心線16と、スリーブ14の他端側における貫通路12の開口を封止材で封止して形成される封止部18と、を備え、貫通路12は、一端側に開口され、光ファイバ心線16の光ファイバ被覆部20が挿入される光ファイバ被覆部挿入路22と、光ファイバ被覆部挿入路22と連通し、光ファイバ24が挿入される第一光ファイバ挿入路26と、第一光ファイバ挿入路26と連通し、第一光ファイバ挿入路26の口径より大きく形成され、光ファイバ24が挿入される第二光ファイバ挿入路28と、を有し、封止部18は、封止材が第二光ファイバ挿入路28内に入り込んで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバアセンブリ及びそれに用いられるスリーブに関し、特に、光ファイバ心線を光モジュールに接続する光ファイバアセンブリ及びそれに用いられるスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
光変調器等の光モジュールは、光モジュール内に置かれた光素子等を保護するため気密性が要求される。そのため、光モジュールに光ファイバ心線を接続する光ファイバアセンブリでは、フェルール等のスリーブに光ファイバ心線を貫通させた先端の開口は、封止材で封止されている。
【0003】
特許文献1には、フェルール先端が気密性シールされた光ファイバアセンブリであるファイバテイルアセンブリ(Fiber Tail Assembly:FTA)が記載されている。
【特許文献1】米国特許7,103,257 B2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スリーブから突出した光ファイバ心線に曲げ等の応力が負荷されると、封止材で封止された部分が変形等して気密性が低下する場合がある。図5は、従来の光ファイバアセンブリ50の構成を示す断面図である。図5に示すように、スリーブに挿入された光ファイバ心線52の光ファイバ56に曲げ等の応力が負荷された場合には、封止材で封止した封止部分58に変形や割れ等が生じる可能性がある。そのため、光ファイバアセンブリ50における封止部分58の気密性が低下する場合がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、気密性をより向上させた光ファイバアセンブリ及びそれに用いられるスリーブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光ファイバアセンブリは、光ファイバ心線を光モジュールに接続する光ファイバアセンブリであって、一端側と他端側とが貫通した貫通路を有するスリーブと、前記スリーブの一端側から前記貫通路に挿入され、他端側に突出した光ファイバ心線と、前記スリーブの他端側における前記貫通路の開口を封止材で封止して形成される封止部と、を備え、前記貫通路は、前記一端側に開口され、前記光ファイバ心線の光ファイバ被覆部が挿入される光ファイバ被覆部挿入路と、前記光ファイバ被覆部挿入路と連通し、前記光ファイバ被覆部挿入路の口径より小さく形成され、前記光ファイバ心線から露出した光ファイバが挿入される第一光ファイバ挿入路と、前記他端側に開口され、前記第一光ファイバ挿入路と連通し、前記第一光ファイバ挿入路の口径より大きく形成され、前記光ファイバが挿入される第二光ファイバ挿入路と、を有し、前記封止部は、前記封止材が前記第二光ファイバ挿入路内に入り込んで形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る光ファイバアセンブリにおいて、前記貫通路は、前記光ファイバ被覆部挿入路と前記第一光ファイバ挿入路との間に、前記第一光ファイバ挿入路側が前記光ファイバ被覆部挿入路側より小径となるように収斂したテーパ路を有していることが好ましい。
【0008】
本発明に係るスリーブは、光ファイバ心線を光モジュールに接続する光ファイバアセンブリに用いられ、一端側と他端側とが貫通した貫通路を有し、前記一端側から前記貫通路に挿入され、前記他端側に突出される光ファイバ心線が配置され、前記他端側に形成される前記貫通路の開口が封止材で封止されるスリーブであって、前記貫通路は、前記一端側に開口され、前記光ファイバ心線の光ファイバ被覆部が挿入される光ファイバ被覆部挿入路と、前記光ファイバ被覆部挿入路と連通し、前記光ファイバ被覆部挿入路の口径より小さく形成され、前記光ファイバ心線から露出した光ファイバが挿入される第一光ファイバ挿入路と、前記他端側に開口され、前記第一光ファイバ挿入路と連通し、前記第一光ファイバ挿入路の口径より大きく形成され、前記光ファイバが挿入される第二光ファイバ挿入路と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るスリーブにおいて、前記貫通路は、前記光ファイバ被覆部挿入路と前記第一光ファイバ挿入路との間に、前記第一光ファイバ挿入路側が前記光ファイバ被覆部挿入路側より小径となるように収斂したテーパ路を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記構成における光ファイバアセンブリ及びそれに用いられるスリーブによれば、スリーブの中に封止材を入り込ませて封止できるので気密性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。図1は、光ファイバアセンブリ10の構成を示す断面図である。光ファイバアセンブリ10は、一端側と他端側とが貫通した貫通路12を有するスリーブ14と、スリーブ14の一端側から貫通路12に挿入され、他端側に突出した光ファイバ心線16と、スリーブ14の他端側における貫通路12の開口を封止材で封止して形成される封止部18と、を備えている。光ファイバ心線16には、例えば、偏波面保存光ファイバ(PANDAファイバ)等が用いられる。
【0012】
スリーブ14は、一端側と他端側とが貫通した貫通路12を有している。図2は、スリーブ14の構成を示す断面図である。貫通路12は、一端側に開口され、光ファイバ心線16の光ファイバ被覆部20が挿入される光ファイバ被覆部挿入路22と、光ファイバ被覆部挿入路22と連通し、光ファイバ被覆部挿入路22の口径より小さく形成され、光ファイバ心線16から露出した光ファイバ24が挿入される第一光ファイバ挿入路26と、他端側に開口され、第一光ファイバ挿入路26と連通し、第一光ファイバ挿入路26の口径より大きく形成され、露出した光ファイバ24が挿入される第二光ファイバ挿入路28と、を有している。
【0013】
光ファイバ被覆部挿入路22は、スリーブ14の一端側に開口され、光ファイバ心線16の外皮で被覆された光ファイバ被覆部20が挿入される。光ファイバ被覆部挿入路22は、例えば、光ファイバ心線16の挿入方向に対して垂直方向の断面が略円形状に形成される。光ファイバ被覆部挿入路22は、光ファイバ心線16の光ファイバ被覆部20より大きい口径で形成される。
【0014】
第一光ファイバ挿入路26は、光ファイバ被覆部挿入路22と連通し、光ファイバ被覆部挿入路22の口径より小さくスリーブ14に形成される。第一光ファイバ挿入路26には、光ファイバ心線16から口出しにより外皮が除去されて露出した光ファイバ24が挿入される。第一光ファイバ挿入路26は、例えば、光ファイバ24の挿入方向に対して垂直方向の断面が略円形状に形成される。第一光ファイバ挿入路26は、露出した光ファイバ24が挿入可能であり、加熱されて溶融した封止材の入り込みが抑制される口径で形成される。例えば、光ファイバ心線16に偏波面保存光ファイバを用いる場合には、加熱されて溶融された封止材が第一光ファイバ挿入路26を経て光ファイバ被覆部挿入路22まで入り込むと光ファイバアセンブリ10の光学特性が劣化するからである。
【0015】
第二光ファイバ挿入路28は、スリーブ14の他端側に開口され、第一光ファイバ挿入路26と連通し、第一光ファイバ挿入路26の口径より大きく形成される。第二光ファイバ挿入路28には、光ファイバ心線16から口出しされて露出した光ファイバが挿入される。第二光ファイバ挿入路28は、例えば、光ファイバ24の挿入方向に対して垂直方向の断面が略円形状に形成される。第二光ファイバ挿入路28は、加熱されて溶融した封止材が入り込み可能な口径で形成される。第二光ファイバ挿入路28は、例えば、第一光ファイバ挿入路26の口径の1.5倍の口径で形成される。
【0016】
テーパ路30は、第一光ファイバ挿入路26と光ファイバ被覆部挿入路22との間に設けられ、第一光ファイバ挿入路26側が光ファイバ被覆部挿入路22側より小径となるように収斂して形成される。
【0017】
スリーブ14は、金属材料や無機材料で形成されることが好ましい。金属材料には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、コバール等が用いられる。無機材料には、ジルコニア等が用いられる。貫通孔は、例えば、一般的な機械加工等で形成される。
【0018】
再び、図1に戻り、封止部18は、スリーブ14の他端側における貫通路12の開口を封止材で封止して形成される。また、封止部18は、封止材が第二光ファイバ挿入路28内に入り込んで形成される。封止材は、第二光ファイバ挿入路28内に充填されることが好ましい。封止材が第二光ファイバ挿入路28内に入り込むことにより、光ファイバ24が第二光ファイバ挿入路28内に一体的に固定保持される。例えば、スリーブ14の他端部から突出した光ファイバ24がスリーブ14に対して相対的に揺動した場合でも、第二光ファイバ挿入路28内において光ファイバ24の揺動を規制できるからである。封止材には、錫系合金等の半田や酸化鉛等の低融点ガラス等が用いられる。封止材は、加熱されて溶融状にされ、第二光ファイバ挿入路28内へ注入等される。
【0019】
光ファイバ心線16の光ファイバ被覆部20は、スリーブ14と接着剤32等で接着されて固定される。接着剤32には、例えば、エポキシ樹脂接着剤等の熱硬化性樹脂接着剤が用いられる。なお、光ファイバ心線16の光ファイバ被覆部20に光ファイバ部品等と接続するためのコネクタを取り付けてもよい。
【0020】
図3は、スリーブ14の他端側から突出した光ファイバ24がスリーブ14に対して相対的に揺動した状態を示す断面図である。スリーブ14の他端側から突出した光ファイバ24は、スリーブ14に対して相対的に揺動した場合でも、第二光ファイバ挿入路28内に入り込んだ封止材で固定保持されているので揺動が抑えられる。それにより、封止部18の変形や割れ等が抑制される。また、封止部18は、封止材が第二光ファイバ挿入路28に入り込んで形成されているので、スリーブ14の他端側で封止部18に変形や割れ等が生じた場合でも、スリーブ14の他端側とスリーブ14の一端側とが連通することによる気密性の低下が抑えられる。
【0021】
次に、光ファイバアセンブリ10を光モジュールである光変調器に適用した構成について説明する。
【0022】
図4は、光ファイバアセンブリ10を取り付けた光変調器40における要部を示す断面図である。金属製のハウジング42内に固定された基板上に、例えば、バルク型変調素子であるLiNbO等の光素子44が搭載されている。ハウジング42には、光ファイバアセンブリ10のスリーブ14を挿入する挿入孔46が設けられている。光ファイバアセンブリ10のスリーブ14は、ハウジング42に設けられた挿入孔46に挿入され、ハウジング42に半田48で固定されている。光ファイバアセンブリ10のスリーブ14の他端側から突出した光ファイバ24の先端部は、ガラスキャピラリ49に挿通固定される。ガラスキャピラリ49の成端された先端面は、光素子側にUV硬化型接着剤で接着される。
【0023】
例えば、ハウジング42と、光ファイバアセンブリ10のスリーブ14と、の間で生じる熱伸縮により、光ファイバアセンブリ10のスリーブ14の他端側から突出した光ファイバ24に曲げ変形等が生じた場合でも、光ファイバアセンブリ10におけるスリーブ14の第二光ファイバ挿入路28に封止材が入り込んで封止部18が形成されているのでハウジング42内の気密性が保たれ光素子44等が保護される。
【0024】
以上、上記構成の光ファイバアセンブリによれば、スリーブの第二光ファイバ挿入路に封止材が入り込んで封止部が形成されているので、スリーブの他端側から突出した光ファイバに曲げ変形等が生じてもスリーブの他端側と一端側とがスリーブ内で連通することを抑制できる。
【0025】
上記構成の光ファイバアセンブリによれば、光変調器等の光モジュールに適用した場合でも、スリーブの第二光ファイバ挿入路に封止材が入り込んで封止部が形成されているので、スリーブの他端側から突出した光ファイバに曲げ変形等が生じてもスリーブの他端側と一端側とがスリーブ内で連通することを抑制でき、ハウジング内の気密性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態において、光ファイバアセンブリの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態において、スリーブの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態において、スリーブの他端側から突出した光ファイバがスリーブに対して相対的に揺動した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態において、光ファイバアセンブリを取り付けた光変調器における要部を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態において、従来の光ファイバアセンブリの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 光ファイバアセンブリ
12 貫通路
14 スリーブ
16 光ファイバ心線
18 封止部
20 光ファイバ被覆部
22 光ファイバ被覆部挿入路
24 光ファイバ
26 第一光ファイバ挿入路
28 第二光ファイバ挿入路
30 テーパ路
32 接着剤
40 光変調器
42 ハウジング
44 光素子
46 挿入孔
48 半田
49 ガラスキャピラリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線を光モジュールに接続する光ファイバアセンブリであって、
一端側と他端側とが貫通した貫通路を有するスリーブと、
前記スリーブの一端側から前記貫通路に挿入され、他端側に突出した光ファイバ心線と、
前記スリーブの他端側における前記貫通路の開口を封止材で封止して形成される封止部と、
を備え、
前記貫通路は、
前記一端側に開口され、前記光ファイバ心線の光ファイバ被覆部が挿入される光ファイバ被覆部挿入路と、
前記光ファイバ被覆部挿入路と連通し、前記光ファイバ被覆部挿入路の口径より小さく形成され、前記光ファイバ心線から露出した光ファイバが挿入される第一光ファイバ挿入路と、
前記他端側に開口され、前記第一光ファイバ挿入路と連通し、前記第一光ファイバ挿入路の口径より大きく形成され、前記光ファイバが挿入される第二光ファイバ挿入路と、
を有し、
前記封止部は、前記封止材が前記第二光ファイバ挿入路内に入り込んで形成されることを特徴とする光ファイバアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバアセンブリであって、
前記貫通路は、
前記光ファイバ被覆部挿入路と前記第一光ファイバ挿入路との間に、前記第一光ファイバ挿入路側が前記光ファイバ被覆部挿入路側より小径となるように収斂したテーパ路を有していることを特徴とする光ファイバアセンブリ。
【請求項3】
光ファイバ心線を光モジュールに接続する光ファイバアセンブリに用いられ、一端側と他端側とが貫通した貫通路を有し、前記一端側から前記貫通路に挿入され、前記他端側に突出される光ファイバ心線が配置され、前記他端側に形成される前記貫通路の開口が封止材で封止されるスリーブであって、
前記貫通路は、
前記一端側に開口され、前記光ファイバ心線の光ファイバ被覆部が挿入される光ファイバ被覆部挿入路と、
前記光ファイバ被覆部挿入路と連通し、前記光ファイバ被覆部挿入路の口径より小さく形成され、前記光ファイバ心線から露出した光ファイバが挿入される第一光ファイバ挿入路と、
前記他端側に開口され、前記第一光ファイバ挿入路と連通し、前記第一光ファイバ挿入路の口径より大きく形成され、前記光ファイバが挿入される第二光ファイバ挿入路と、
を有することを特徴とするスリーブ。
【請求項4】
請求項3に記載のスリーブであって、
前記貫通路は、
前記光ファイバ被覆部挿入路と前記第一光ファイバ挿入路との間に、前記第一光ファイバ挿入路側が前記光ファイバ被覆部挿入路側より小径となるように収斂したテーパ路を有していることを特徴とするスリーブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−91923(P2010−91923A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263899(P2008−263899)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】