光ファイバケーブル
【課題】 光ファイバテープ心線をシースから分離して取り出せることができると共に、蝉による断線の確率を低くすることができる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】 支持線14にシース15を施して支持線部12を形成し、光ファイバ心線30を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線40にシース17を施して断面縦長のケーブル部11を形成し、支持線部12とケーブル部11とを首部13で連結し、ケーブル部11のシース17における長辺側側面21のそれぞれに、2本以上のノッチ19,19と、切断面同士が接着された1本以上の切り込み部18とが形成され、ノッチ19を、短辺側側面22と平行に引いた直線24上に光ファイバテープ心線40が存在しない位置に形成し、切り込み部18を、短辺側側面22と平行に引いた直線23上に光ファイバテープ心線40が存在する位置に形成した。
【解決手段】 支持線14にシース15を施して支持線部12を形成し、光ファイバ心線30を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線40にシース17を施して断面縦長のケーブル部11を形成し、支持線部12とケーブル部11とを首部13で連結し、ケーブル部11のシース17における長辺側側面21のそれぞれに、2本以上のノッチ19,19と、切断面同士が接着された1本以上の切り込み部18とが形成され、ノッチ19を、短辺側側面22と平行に引いた直線24上に光ファイバテープ心線40が存在しない位置に形成し、切り込み部18を、短辺側側面22と平行に引いた直線23上に光ファイバテープ心線40が存在する位置に形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下管路内や電柱間に架設し、電柱からビル、マンション、宅内等に引き込む光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)等の用途で、高速、大容量通信を行うため、複数の光ファイバを積層して収容したテープ積層型光ファイバケーブルが、空中及び地下に広く布設されている。
【0003】
図19は、従来のテープ積層型光ファイバケーブルの断面図である。図19に示すように光ファイバケーブル100は、光ファイバテープ心線(ファイバテープユニット)101を収容するケーブル部102と、ケーブル部102を支持する支持線部103とからなり、ケーブル部102と支持線部103とは互いに平行に首部104を介して一体に結合されている。
【0004】
ケーブル部102は、積層された2枚の光ファイバテープ心線101,101の両側に一対のテンションメンバ(抗張力体)105,105が添設され、光ファイバテープ心線101及びテンションメンバ105が一括してPE、難燃性PEまたはPVC等の熱可塑性樹脂のケーブルシース106で被覆されてなる。ケーブル部102の両側面(図中左右方向)には、ケーブルシース106を破断してケーブル部102から光ファイバテープ心線101を取り出す際に使用するノッチ107が形成されている。テンションメンバ105は、導電性金属線、またはガラス繊維、プラスチック等の非導電性金属線で形成されている。
【0005】
支持線部103は、鋼線等の金属線で形成された支持線108と、支持線108を被覆する支持線側シース109とからなる。支持線側シース109及び首部104は、ケーブルシース106と同様に熱可塑性樹脂で形成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−271870号公報
【特許文献2】特開2003−315640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年のFTTHの需要拡大に伴い、多心の光ファイバケーブルから単心の光ファイバ心線を分岐させるために、光ファイバケーブル100を布設した後、ケーブルの中間(架空)で分岐させて光ファイバテープ心線101を取り出す工法(以下、「中間後分岐処理」と称する)が適用されるようになっている。
【0008】
中間後分岐処理において、光ファイバケーブル100から光ファイバテープ心線101を取り出す方法について図20、図21(図19中の支持線部103及び首部104を省略する)に基づいて説明する。
【0009】
図20に示すように、光ファイバテープ心線101を取り出すには、ケーブルシース106を分割して取り出す。この際、ケーブルシース106の両側のノッチ107,107に、工具(ディタッチャ)111の爪112を挿入し、ケーブルシース106を上下方向に引き裂くべく、爪112でケーブルシース106を中心から互いに反対方向に力を加える。すると、ケーブルシース106がノッチ107から裂けて2つに分割される。
【0010】
しかしながら、図21に示すように、シース106を2つに分割すると、片方のシース106bから光ファイバテープ心線101が分離せずに残ってしまい、光ファイバテープ心線101を取り出すことができないという問題がある。
【0011】
光ファイバテープ心線101が一方のシース106b内に残ってしまう理由は、両ノッチ107,107間に光ファイバテープ心線101が位置するので、ケーブルシース106を分割させる際に、両ノッチ107,107内に挿入された爪112が、シース106を光ファイバテープ心線101側に押し込み、ケーブルシース106と光ファイバテープ心線101とを密着させてしまうためである。
【0012】
また、近年、蝉が産卵管をノッチ107に突き刺すことにより光ファイバケーブル100の断線事故が多発している。これは、蝉の産卵管がノッチ107に誘導されてケーブルシース107に突き刺さり、ノッチ107の内側にテープ心線101が存在するため、光ファイバテープ心線101を傷つける、或いは破損させることにより発生している。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、光ファイバテープ心線をケーブルシースから分離して取り出せることができ、かつ、蝉による断線の確率を低くすることができる光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、支持線にシースを施して支持線部を形成し、光ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線にシースを施して断面縦長のケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結した光ファイバケーブルにおいて、上記ケーブル部のシースにおける長辺側側面のそれぞれに、2本以上のノッチと、切断面同士が接着された1本以上の切り込み部とが形成され、上記ノッチは、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在しない位置に形成され、上記切り込み部は、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在する位置に形成されている光ファイバケーブルである。
【0015】
請求項2の発明は、上記切り込み部が、上記ケーブル部のシースの長辺側側面から内部にかけて一旦切り込んで、その切り込みを再度接合させて形成された請求項1記載の光ファイバケーブルである。
【0016】
請求項3の発明は、上記ノッチ及び上記切り込み部が、各長辺側側面で左右対称に形成されている請求項1または2記載の光ファイバケーブルである。
【0017】
請求項4の発明は、支持線にシースを施して支持線部を形成し、光ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線にシースを施して断面縦長のケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結した光ファイバケーブルにおいて、上記ケーブル部のシースにおける長辺側側面のそれぞれに、2本以上のノッチと、1本以上の空隙部とが形成され、上記ノッチは、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在しない位置に形成され、上記空隙部は、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在する位置に形成されている光ファイバケーブルである。
【0018】
請求項5の発明は、上記空隙部が、上記長辺側側面に切り込みを入れた際に空気を取り込んで形成されている請求項4記載の光ファイバケーブルである。
【0019】
請求項6の発明は、上記ノッチ及び上記空隙部は、各長辺側側面で左右対称に形成されている請求項4または5記載の光ファイバケーブルである。
【0020】
請求項7の発明は、上記ケーブル部が、複数の光ファイバテープ心線を有する請求項1〜6いずれかに記載の光ファイバケーブルである。
【0021】
請求項8の発明は、上記複数の光ファイバテープ心線が、上記光ファイバ心線が互いに1/2心ずれて重ね合わせられている請求項7記載の光ファイバケーブルである。
【0022】
請求項9の発明は、上記複数の光ファイバテープ心線の間に、介在が縦添えされている請求項7または8記載の光ファイバケーブルである。
【0023】
請求項10の発明は、上記光ファイバテープ心線と上記シースとの間に、介在が縦添えされている請求項1〜9いずれかに記載の光ファイバケーブルである。
【0024】
請求項11の発明は、上記介在が、テープ状に形成されている請求項9または10記載の光ファイバケーブルである。
【0025】
請求項12の発明は、上記介在が、ポリエステル系材料で形成されている請求項11記載の光ファイバケーブルである。
【0026】
請求項13の発明は、上記介在が、繊維形状に形成されている請求項9または10記載の光ファイバケーブルである。
【0027】
請求項14の発明は、上記介在が、アラミド繊維で形成されている請求項13記載の光ファイバケーブルである。
【0028】
請求項15の発明は、上記光ファイバ心線が、その外側に形成され着色紫外線硬化樹脂からなる着色層と、その着色層の外周に形成され紫外線硬化樹脂からなり層厚0.4mm以上に形成されたオーバーコート層とを有する請求項1〜14いずれかに記載の光ファイバケーブルである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、光ファイバテープ心線をケーブルシースから分離して取り出せることができると共に、蝉による断線の確率を低くすることができるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0031】
本実施の形態の光ファイバケーブルは、複数本の光ファイバ心線を並列に連結してなる光ファイバテープ心線を備えるものであり、まず、光ファイバ心線及び光ファイバテープ心線について説明する。
【0032】
図2に示すように、光ファイバ心線30は、ガラス系材料で形成された光ファイバ(光ファイバ裸線)31と、光ファイバ31を被覆する一次被覆層32と、一次被覆層32を被覆する二次被覆層33と、二次被覆層33を被覆する着色層34と、着色層34を被覆するオーバコート層35とからなる。各層は、それぞれ光ファイバ31を中心とする同心円筒形状に形成されている。一次被覆層32及び二次被覆層33は、光ファイバ31を衝撃や外傷から保護するための層である。着色層34は、光ファイバを識別するための着色を施す層である。オーバコート層35は、光ファイバ心線30を複数本並列に連結して形成してなる光ファイバテープ心線から、1本の光ファイバ心線を分離させる際、その取扱い(ハンドリング)を容易にするために、ある程度の太さの直径を有する心線を形成するべく設けられる層である。オーバコート層35は、その直径(外径)が0.4mm以上に形成されるのが好ましい。一次被覆層32、二次被覆層33、着色層34及びオーバコート層35はいずれも紫外線硬化樹脂で形成されており、例えば、オーバコート層35は、一次被覆層32より軟性でかつ二次被覆層33より硬性な紫外線硬化樹脂で形成される。
【0033】
図3に示すように、光ファイバテープ心線40は、図2の光ファイバ心線30を4本並列に連結して形成されるものである。各光ファイバ心線30を並列に並べ、その周囲を連結材41で一括に覆って連結している。光ファイバテープ心線40は、光ファイバ心線30に沿って紫外線硬化樹脂からなる連結材41を被覆しており、凹凸(図3中、凸部42、凹部43)が形成されたタイプのものである。他に、図4に示すように、各光ファイバ30間の一部を紫外線硬化樹脂からなる連結材44で埋めて連結したタイプの光ファイバテープ心線45を用いてもよい。
【0034】
本実施の形態の光ファイバケーブルについて説明する。
【0035】
図1に示すように、光ファイバケーブル10は、光ファイバテープ心線40を収容するケーブル部11と、ケーブル部11を支持するための支持線部12と、ケーブル部11と支持線部12とを連結する首部13とからなる。
【0036】
支持線部12は、支持線(抗張力体)14とその外周を覆う支持線側シース15とで構成される。
【0037】
ケーブル部11は、積層された2枚の光ファイバテープ心線40と、光ファイバテープ心線40に沿って配置される少なくとも一本(図1では2本)のテンションメンバ(抗張力体)16,16との周囲がケーブルシース17で覆われて形成されている。ケーブル部11では、複数の光ファイバ心線30が並ぶ方向において、光ファイバテープ心線40の両側にそれぞれテンションメンバ16、16が配置されている。テンションメンバ16,16を設けることで、テンションメンバ16,16に張力を分散させ、光ファイバテープ心線40に張力を掛けないようにしている。ケーブルシース17は、複数の光ファイバ心線30が並ぶ方向を縦方向(上下方向)とすると、その断面が略縦長長方形に形成されている。以後、光ファイバテープ心線40に平行である側のケーブルシース17表面を長辺側側面21とし、光ファイバテープ心線40に垂直である側(首部13が接続されている側)のケーブルシース17表面を短辺側側面22とする。
【0038】
首部13は、ケーブル部11と支持線部12とを連結する部材であり、ケーブル部11長手方向に所定間隔ごとに(間欠的に)設けられている。ただし首部13は、ケーブル部11長手方向に連続して設けてもよい。
【0039】
光ファイバケーブル10は、光ファイバテープ心線40、支持線14、テンションメンバ16の周囲にシースとなる樹脂を押し出し成形により形成されるもので、支持線側シース15とケーブルシース17と首部13とは、同じ材料で形成される。
【0040】
さらに、本実施の形態の光ファイバケーブル10は、ケーブル部11の両長辺側側面21に、切り込み部18とノッチ19が形成されている。
【0041】
本実施の形態の光ファイバケーブル10では、ケーブルシース17の長辺側側面21,21のそれぞれに、2本以上のノッチ19と、1本以上の切り込み部18とを形成し、上記ノッチ19は、短辺側側面22と平行に引いた直線(図中、破線24)上に光ファイバテープ心線40が存在しない位置に形成され、切り込み部18は短辺側側面22と平行に引いた直線(図中破線23)上に光ファイバテープ心線40が存在する位置に形成されている。
【0042】
切り込み部18は、切断面を接合して形成されたものであり、具体的には、ケーブルシース17を形成する際に、光ファイバテープ心線40の左右の長辺側側面21,21から内部にかけてケーブルシース17を一旦切り込んで成形すると共に、その切り込みを再度接合させて成形させた部分であり、分離可能に形成されている。したがって、切り込み部18は、その切断面が粗く結合して形成されている。ここで、光ファイバケーブル長手方向に連続する切り込みによって形成される切り込み面同士が再度結合させてできた面を切り込み部の切断面とし、「切断面が粗く結合」とは切り込み面同士の接着力が小さいこと、すなわち樹脂が硬化する際に、切断面同士が完全に(十分に密着して)接着していないことを意味する。
【0043】
ケーブル部11の両長辺側に2本ずつ形成されるノッチ19,19は、ケーブル部11長手方向に連続して形成されるV溝(断面三角形状の溝)である。本実施の形態では、2本のノッチ19,19は切り込み部18の上下に1本ずつ形成されている。
【0044】
また、切り込み部18とノッチ19,19は、長辺側側面で左右対称となるように形成されている。すなわち、各切り込み部18及びノッチ19,19が、それぞれ長辺側側面21,21から同じ距離でかつ、一方の短辺側側面22からの距離が同じ位置に、同じ形状に形成されている。また、切り込み部18は、ノッチ19,19の深さと等しいかまたは深く形成され、例えば、ノッチ19の深さ及び幅を0.5mmとし、切り込み部18の深さを0.5〜0.9mmとするのがよい。
【0045】
次に、光ファイバケーブル10の製造方法について説明する。
【0046】
図5に示すように、製造装置50は、光ファイバテープ心線40を送り出す光ファイバテープ心線送出装置51,51と、支持線14を送り出す支持線送出装置52と、テンションメンバ16,16を送り出すテンションメンバ送出装置53,53と、送り出されたこれらの線材をそれぞれ所定の位置に集合させる集合ダイス54と、集合された線材にシースを施すための樹脂を被覆する押し出しヘッド55と、ケーブル部11に支持線部12に対する余長をつける余長形成用プーリー56と、樹脂を冷却して硬化させる冷却水槽57と、光ファイバケーブル10を引き取る引取装置58と、光ファイバケーブル10を巻き取る巻取装置(ドラム)59とで構成される。
【0047】
各送出装置51,52、53から送り出された光ファイバテープ心線40,40、支持線14、及びテンションメンバ16,16(以上、線材)は、集合ダイス54で集合されると共に、各々が所定の位置に配置されるようにガイドされる。押し出しヘッド55では、各線材を通すと共に、線材の周囲に形成された型に加熱された樹脂が押し出される。これにより、支持線部12及びケーブル部11が形成され、同時に首部13も形成される。このときケーブルシース17には切り込み部18及びノッチ19が形成される。樹脂が施された線材は、余長形成用プーリー56に巻き取られてケーブル部11に余長が形成され、冷却装置57で樹脂が冷却されて硬化されて、光ファイバケーブル10が得られる。得られた光ファイバケーブル10は、巻取装置59でドラムに巻き取られる。
【0048】
ここで、押し出しヘッド55において、切り込み部18を形成する方法について図6に基づいて説明する。押し出しヘッド55では、支持線側シース15,ケーブルシース17、及び首部13が同時に形成されるが、ケーブル部11の形成について説明する。
【0049】
図6に示すように、押し出しヘッド55は、光ファイバテープ心線40を挿通させる光ファイバテープ心線挿通路61と、ケーブルシース17を形成するための材料である樹脂を注入する樹脂注入路62と、光ファイバテープ心線挿通路61と樹脂注入路62に連通し、断面がケーブルシース17の形状に形成された樹脂押出孔63とが設けられている。さらに、樹脂押出孔63の内壁には、鋭利な突起状の切り込み形成手段64が設けられ、切り込み形成手段64は、光ファイバテープ心線40が通る経路の両側に設けられている。
【0050】
押し込みヘッド55では、集合ダイス54から送られる光ファイバテープ心線40を通しながら、光ファイバテープ心線40の周囲にシースとなる樹脂を押し出してケーブル部11を形成する。
【0051】
具体的には、樹脂押出孔63では、光ファイバテープ心線40の周囲に加熱された樹脂が樹脂注入路62から注入され、その樹脂が光ファイバテープ心線40と共に押し出される。この間、樹脂押出孔63の区間aを通っている光ファイバテープ心線40の両側の樹脂には、切り込み形成手段64により、切り込み(切断面)が形成される。樹脂押出孔63内で、かつ、区間aを通った後の区間bでは、樹脂は切り込み形成手段64から開放され、樹脂の注入圧力により切り込みを塞ぐように再度接着する。そこで、切り込みが完全に接着する前に区間bを通過し終えるように、押し込みヘッド55を設計することで、固化が不完全な状態のまま区間bを通過し終える。区間cは樹脂押出孔63内での樹脂圧から開放され、樹脂の切り込みの硬化が進展しない。この状態で、樹脂(シース)の切り込みが徐々に冷やされ、その後冷却装置57にて冷却されることで、樹脂は固化してシースを形成する。これにより、切り込みによって形成された切断面が互いに完全に接着しない状態で硬化して、切り込み部18として形成される。
【0052】
光ファイバケーブル10は、光ファイバケーブル10を敷設した後に、中間後分岐処理を行うべく架空でケーブル部11内から光ファイバテープ心線40を取り出すことがある。光ファイバテープ心線40の取り出す際の光ファイバケーブル10の作用について説明する。ただし、図7、図8では支持線部及び首部を省略している。
【0053】
図7に示すように、架空の光ファイバケーブル10において、ファイバ分離用工具71の爪部72をノッチ19,19に挿入する。爪部72を挿入した後、互いに反対方向(図7中、矢印方向)に工具を引く。
【0054】
図8に示すように、ファイバ分離用工具71で互いに反対方向に引かれる力により、長辺側側面21の中央に形成された切り込み部18からケーブルシース17が切り裂けて、2つのシース17a,17aに分割される。切り込み部18からケーブルシース17が裂ける理由は、切り込み部18が、その切断面の結合が粗いため、反対方向(図7中、矢印方向)に力を加えると分離し易い部分となっており、かつ、光ファイバケーブル10では、深さの最も深い切り込み部18が、切り込み部18から短辺側側面22と平行に引いた線23(図1参照)上に光ファイバテープ心線40が収容されているので、切り込み部18が形成された箇所のシース厚さが、端側のノッチ19,19が形成されたシース厚さより薄くなっているためである。
【0055】
したがって、本光ファイバケーブル10は、光ファイバテープ心線40をケーブルシース17から分離して取り出せることができる。
【0056】
さらに、光ファイバケーブル10では、光ファイバテープ心線40の左右にノッチが形成されていないので、蝉の産卵管がノッチに誘導されてシースに突き刺さり、光ファイバテープ心線40を傷つけるといったことがない。また、長辺側側面21に形成されたノッチ19の内側には光ファイバテープ心線40が存在しないので、長辺側側面21のノッチ19に誘導されて蝉の産卵管が突き刺されても、産卵管は光ファイバテープ心線40に接触することがなく、光ファイバケーブル10の断線の確率を低くすることができる。
【0057】
以上、説明してきた光ファイバケーブル10では、4心の光ファイバテープ心線40を2層に積層してケーブルシース17内に収容したものであるが、収容する光ファイバ心線30の本数(光ファイバテープ心線40の枚数)はいくつでもよい。
【0058】
例えば、図9に示すように、ケーブルシース17内に4心の光ファイバテープ心線40を一層のみ収容してもよく、図10に示すように、4心の光ファイバテープ心線を並列に3枚並べて2層に積層してもよい(合計6枚)。また、ケーブルシース17の長辺側側面に形成されるノッチ19の本数もいくつでもよい(図10では各4本)。ただし、ノッチ19,19は、光ファイバテープ心線40の左右のケーブルシース17表面には形成されない。
【0059】
また、本実施の形態では、2枚の光ファイバテープ心線40は、それらが各々有する光ファイバ心線が互いに1/2心ずれて重ね合わせられているが、光ファイバテープ心線40,40同士の積層方法は、これに限定されない。
【0060】
次に、光ファイバケーブルの他の実施の形態について説明する。
【0061】
図11に示すように、基本的な構成部分は、上述した図1の光ファイバケーブル10とほぼ同様であり、同一構成部分には、図1の場合と同一の符号を付してある。本実施の形態の光ファイバケーブル80が、図1の光ファイバケーブル10と異なる点は、切り込み部18の代わりに空隙部81が形成されている点である。
【0062】
光ファイバケーブル80は、光ファイバテープ心線40の両側に、ケーブルシース17内に空気を取り込んで成形された空隙部81が形成されている。光ファイバテープ心線40の両側に形成される空隙部81,81は、左右対称に形成されるのが好ましい。すなわち、両空隙部81,81が、それぞれ長辺側側面21,21から同じ距離でかつ、一方の短辺側側面22からの距離が同じ位置に、同じ形状に形成されるのが好ましい。
【0063】
図11では、空隙部81の断面形状が略長方形に示されているが、空隙部81の断面形状はどんな形状でもよい。例えば、空隙部81は、円形、楕円形に形成されてもよく、或いは、多数の気泡で形成されていてもよい。空隙部81の存在により、少なくとも、ケーブルシース17の長辺側側面21から光ファイバテープ心線40までにおける樹脂密度(ケーブルシース17内における単位断面積当りの樹脂の占める割合)が、ケーブルシース17の他の部分より小さければよい。すなわち、図8で説明した中間後分岐処理をする際に、ノッチ19に分離用工具71の爪部72を挿入して、ケーブルシース17が分割される方向に力を加えたとき、空隙部81からケーブルシース17が裂ける程度の空気が存在していればよい。
【0064】
空隙部81は、光ファイバテープ心線40の両側の樹脂に切り込みを入れると共に空気を取り込んで形成される。具体的には、図6で説明した切り込みを形成する工程において、樹脂押出孔63に連通する図示しない空気注入路(ノズル)を設け、ケーブルシース17の押出成形中に、樹脂押出孔63に空気を注入させる。すると、樹脂が切り込まれた箇所に空気が集まると共に、樹脂が徐々に硬化して空隙部81が形成される。
【0065】
或いは、空気注入路を設けなくとも、押し出しヘッド55内に光ファイバテープ心線40が送り込まれる時に、空気が樹脂押出孔63内に侵入し、切り込み形成手段64で樹脂を切り込むと、その切り込まれた樹脂に空隙部81を形成することができる。例えば、図6に示した樹脂押出孔63内に、切り込み形成手段64として、樹脂押出方向において段階的に形状が変化した突起を設け、樹脂を押出成形してケーブルシース17を形成しても空隙部81を形成することができる。
【0066】
本実施の形態の光ファイバケーブル80も図1の実施の形態の光ファイバケーブル10と同様の作用効果を有する。
【実施例】
【0067】
次に、本発明の実施の形態について、実施例に基づいて説明するが、本発明の実施の形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例1として、図1に示した構造の光ファイバケーブルを作製した。各部材を形成する材料及び寸法は以下の通りである。
【0069】
光ファイバケーブル10の全体の寸法は高さ約9mm、幅約3.3mmである。
【0070】
光ファイバテープ心線40は、長径(幅)2.05mm、短径(厚さ)0.52mmであり、光ファイバテープ心線40を構成する各光ファイバ心線30の各層の外径については、光ファイバ31の外径が約0.125μmm、二次被覆層33の外径が約0.245μm、着色層34の外径が約0.255μm、オーバーコート層35の外径が約0.50μmである。
【0071】
支持線14及びテンションメンバ16は、それぞれ亜鉛めっき鋼線で形成され、支持線14の直径は2.3mm,テンションメンバ16の直径は、0.4mmである。
【0072】
支持線側シース15、ケーブルシース17及び首部13は低密度ポリエチレン樹脂を用いて形成した。また、首部13は、ケーブル長手方向に連続的に形成した。ノッチ19は深さ0.5mm、幅0.5mmに形成した。
【0073】
実施例2として、図12に示される構造の光ファイバケーブル92を作製した。光ファイバケーブル92の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例2の光ファイバケーブル92は、図1に示した光ファイバケーブル10の光ファイバテープ心線40を繊維形状の介在92aで覆ったものである。その繊維形状の介在92aはアラミド繊維で形成されるのが好ましい。
【0074】
実施例3として、図13に示される構造の光ファイバケーブル93を作製した。光ファイバケーブル93の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例3の光ファイバケーブル93は、図1に示した光ファイバケーブル10の光ファイバテープ心線40の両側に、テープ状の介在93a,93aを縦添えしたものである。テープ状の介在93aは離形性の良好なポリエステル系の材料で形成されるのが好ましい。
【0075】
実施例4として、図14に示される構造の光ファイバケーブル94を作製した。光ファイバケーブル94の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例4の光ファイバケーブル94は、図1に示した光ファイバケーブル10の光ファイバテープ心線40の片側に、テープ状の介在93aを縦添えしたものである。
【0076】
実施例5として、図15に示した構造の光ファイバケーブル95を作製した。光ファイバケーブル95の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例5の光ファイバケーブル95は、図1に示した光ファイバケーブル10の光ファイバテープ心線40の両側に、光ファイバテープ心線40より幅の広いテープ状の介在95aを縦添えし、それらテープ状の介在95aの幅方向(図中上下方向)両端部を曲げて光ファイバテープ心線40を覆ったものである。
【0077】
実施例6として、図16に示した構造の光ファイバケーブル96を作製した。光ファイバケーブル96の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例6の光ファイバケーブル96は、図1に示した光ファイバケーブル10の2枚の光ファイバテープ心線40、40の間に、テープ状の介在93aを縦添えしたものである。
【0078】
実施例7として、図17に示した構造の光ファイバケーブル97を作製した。光ファイバケーブル97の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例7の光ファイバケーブル97は、図1に示した光ファイバケーブル10の2枚の光ファイバテープ心線40,40の間に、繊維形状の介在97aを縦添えしたものである。
【0079】
実施例8として、図18に示される構造の光ファイバケーブル98を作製した。光ファイバケーブル98の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例8の光ファイバケーブル98は、図1に示した光ファイバケーブル10の一方の光ファイバテープ心線40を繊維形状の介在98aで覆ったものである。
【0080】
比較例1は、図19に示した従来の光ファイバケーブルである。
【0081】
実施例1〜実施例8及び比較例1の光ファイバケーブルを、図7及び図8で説明したようにケーブルシース17から光ファイバテープ心線40を取り出す取り出し試験(中間後分岐試験)を行った。取り出し試験では、ケーブルシース17から光ファイバテープ心線40を完全に取り出せた場合を合格としている。この結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示すように、実施例1の光ファイバケーブルは、その合格率が96%であり、実施例2〜実施例8の光ファイバケーブルは、光ファイバテープ心線の周囲に介在を設けることで、ケーブルシース17内に光ファイバテープ心線40が滑り易い状態で収容され、実施例1よりも取り出し性が良好となり、いずれもその合格率が100%であった。以上、実施例1〜実施例8の光ファイバケーブルは、光ファイバテープ心線の取り出し性に大変優れるものである。
【0084】
これに対して、比較例1の光ファイバケーブルは、その合格率が4%であり、光ファイバテープ心線の取り出し性が悪い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の好適な実施の形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図2】光ファイバ心線を示す断面図である。
【図3】光ファイバテープ心線を示す断面図である。
【図4】光ファイバテープ心線を示す断面図である。
【図5】図1の光ファイバケーブルの製造装置を示す模式図である。
【図6】図5の押出ヘッドの簡略断面図である。
【図7】図1の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図8】図1の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図9】図1の光ファイバケーブルの第一の変形例を示す断面図である。
【図10】図1の光ファイバケーブルの第二の変形例を示す断面図である。
【図11】他の実施の形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図12】実施例2の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図13】実施例3の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図14】実施例4の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図15】実施例5の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図16】実施例6の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図17】実施例7の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図18】実施例8の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図19】従来の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図20】図19の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図21】図19の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0086】
10 光ファイバケーブル
11 ケーブル部
12 支持線部
13 首部
14 支持線
15 支持線側シース
16 テンションメンバ
17 ケーブルシース
18 切り込み部
19 ノッチ
30 光ファイバ心線
40 光ファイバテープ心線
41,44 連結材
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下管路内や電柱間に架設し、電柱からビル、マンション、宅内等に引き込む光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)等の用途で、高速、大容量通信を行うため、複数の光ファイバを積層して収容したテープ積層型光ファイバケーブルが、空中及び地下に広く布設されている。
【0003】
図19は、従来のテープ積層型光ファイバケーブルの断面図である。図19に示すように光ファイバケーブル100は、光ファイバテープ心線(ファイバテープユニット)101を収容するケーブル部102と、ケーブル部102を支持する支持線部103とからなり、ケーブル部102と支持線部103とは互いに平行に首部104を介して一体に結合されている。
【0004】
ケーブル部102は、積層された2枚の光ファイバテープ心線101,101の両側に一対のテンションメンバ(抗張力体)105,105が添設され、光ファイバテープ心線101及びテンションメンバ105が一括してPE、難燃性PEまたはPVC等の熱可塑性樹脂のケーブルシース106で被覆されてなる。ケーブル部102の両側面(図中左右方向)には、ケーブルシース106を破断してケーブル部102から光ファイバテープ心線101を取り出す際に使用するノッチ107が形成されている。テンションメンバ105は、導電性金属線、またはガラス繊維、プラスチック等の非導電性金属線で形成されている。
【0005】
支持線部103は、鋼線等の金属線で形成された支持線108と、支持線108を被覆する支持線側シース109とからなる。支持線側シース109及び首部104は、ケーブルシース106と同様に熱可塑性樹脂で形成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−271870号公報
【特許文献2】特開2003−315640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年のFTTHの需要拡大に伴い、多心の光ファイバケーブルから単心の光ファイバ心線を分岐させるために、光ファイバケーブル100を布設した後、ケーブルの中間(架空)で分岐させて光ファイバテープ心線101を取り出す工法(以下、「中間後分岐処理」と称する)が適用されるようになっている。
【0008】
中間後分岐処理において、光ファイバケーブル100から光ファイバテープ心線101を取り出す方法について図20、図21(図19中の支持線部103及び首部104を省略する)に基づいて説明する。
【0009】
図20に示すように、光ファイバテープ心線101を取り出すには、ケーブルシース106を分割して取り出す。この際、ケーブルシース106の両側のノッチ107,107に、工具(ディタッチャ)111の爪112を挿入し、ケーブルシース106を上下方向に引き裂くべく、爪112でケーブルシース106を中心から互いに反対方向に力を加える。すると、ケーブルシース106がノッチ107から裂けて2つに分割される。
【0010】
しかしながら、図21に示すように、シース106を2つに分割すると、片方のシース106bから光ファイバテープ心線101が分離せずに残ってしまい、光ファイバテープ心線101を取り出すことができないという問題がある。
【0011】
光ファイバテープ心線101が一方のシース106b内に残ってしまう理由は、両ノッチ107,107間に光ファイバテープ心線101が位置するので、ケーブルシース106を分割させる際に、両ノッチ107,107内に挿入された爪112が、シース106を光ファイバテープ心線101側に押し込み、ケーブルシース106と光ファイバテープ心線101とを密着させてしまうためである。
【0012】
また、近年、蝉が産卵管をノッチ107に突き刺すことにより光ファイバケーブル100の断線事故が多発している。これは、蝉の産卵管がノッチ107に誘導されてケーブルシース107に突き刺さり、ノッチ107の内側にテープ心線101が存在するため、光ファイバテープ心線101を傷つける、或いは破損させることにより発生している。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、光ファイバテープ心線をケーブルシースから分離して取り出せることができ、かつ、蝉による断線の確率を低くすることができる光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、支持線にシースを施して支持線部を形成し、光ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線にシースを施して断面縦長のケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結した光ファイバケーブルにおいて、上記ケーブル部のシースにおける長辺側側面のそれぞれに、2本以上のノッチと、切断面同士が接着された1本以上の切り込み部とが形成され、上記ノッチは、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在しない位置に形成され、上記切り込み部は、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在する位置に形成されている光ファイバケーブルである。
【0015】
請求項2の発明は、上記切り込み部が、上記ケーブル部のシースの長辺側側面から内部にかけて一旦切り込んで、その切り込みを再度接合させて形成された請求項1記載の光ファイバケーブルである。
【0016】
請求項3の発明は、上記ノッチ及び上記切り込み部が、各長辺側側面で左右対称に形成されている請求項1または2記載の光ファイバケーブルである。
【0017】
請求項4の発明は、支持線にシースを施して支持線部を形成し、光ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線にシースを施して断面縦長のケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結した光ファイバケーブルにおいて、上記ケーブル部のシースにおける長辺側側面のそれぞれに、2本以上のノッチと、1本以上の空隙部とが形成され、上記ノッチは、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在しない位置に形成され、上記空隙部は、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在する位置に形成されている光ファイバケーブルである。
【0018】
請求項5の発明は、上記空隙部が、上記長辺側側面に切り込みを入れた際に空気を取り込んで形成されている請求項4記載の光ファイバケーブルである。
【0019】
請求項6の発明は、上記ノッチ及び上記空隙部は、各長辺側側面で左右対称に形成されている請求項4または5記載の光ファイバケーブルである。
【0020】
請求項7の発明は、上記ケーブル部が、複数の光ファイバテープ心線を有する請求項1〜6いずれかに記載の光ファイバケーブルである。
【0021】
請求項8の発明は、上記複数の光ファイバテープ心線が、上記光ファイバ心線が互いに1/2心ずれて重ね合わせられている請求項7記載の光ファイバケーブルである。
【0022】
請求項9の発明は、上記複数の光ファイバテープ心線の間に、介在が縦添えされている請求項7または8記載の光ファイバケーブルである。
【0023】
請求項10の発明は、上記光ファイバテープ心線と上記シースとの間に、介在が縦添えされている請求項1〜9いずれかに記載の光ファイバケーブルである。
【0024】
請求項11の発明は、上記介在が、テープ状に形成されている請求項9または10記載の光ファイバケーブルである。
【0025】
請求項12の発明は、上記介在が、ポリエステル系材料で形成されている請求項11記載の光ファイバケーブルである。
【0026】
請求項13の発明は、上記介在が、繊維形状に形成されている請求項9または10記載の光ファイバケーブルである。
【0027】
請求項14の発明は、上記介在が、アラミド繊維で形成されている請求項13記載の光ファイバケーブルである。
【0028】
請求項15の発明は、上記光ファイバ心線が、その外側に形成され着色紫外線硬化樹脂からなる着色層と、その着色層の外周に形成され紫外線硬化樹脂からなり層厚0.4mm以上に形成されたオーバーコート層とを有する請求項1〜14いずれかに記載の光ファイバケーブルである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、光ファイバテープ心線をケーブルシースから分離して取り出せることができると共に、蝉による断線の確率を低くすることができるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0031】
本実施の形態の光ファイバケーブルは、複数本の光ファイバ心線を並列に連結してなる光ファイバテープ心線を備えるものであり、まず、光ファイバ心線及び光ファイバテープ心線について説明する。
【0032】
図2に示すように、光ファイバ心線30は、ガラス系材料で形成された光ファイバ(光ファイバ裸線)31と、光ファイバ31を被覆する一次被覆層32と、一次被覆層32を被覆する二次被覆層33と、二次被覆層33を被覆する着色層34と、着色層34を被覆するオーバコート層35とからなる。各層は、それぞれ光ファイバ31を中心とする同心円筒形状に形成されている。一次被覆層32及び二次被覆層33は、光ファイバ31を衝撃や外傷から保護するための層である。着色層34は、光ファイバを識別するための着色を施す層である。オーバコート層35は、光ファイバ心線30を複数本並列に連結して形成してなる光ファイバテープ心線から、1本の光ファイバ心線を分離させる際、その取扱い(ハンドリング)を容易にするために、ある程度の太さの直径を有する心線を形成するべく設けられる層である。オーバコート層35は、その直径(外径)が0.4mm以上に形成されるのが好ましい。一次被覆層32、二次被覆層33、着色層34及びオーバコート層35はいずれも紫外線硬化樹脂で形成されており、例えば、オーバコート層35は、一次被覆層32より軟性でかつ二次被覆層33より硬性な紫外線硬化樹脂で形成される。
【0033】
図3に示すように、光ファイバテープ心線40は、図2の光ファイバ心線30を4本並列に連結して形成されるものである。各光ファイバ心線30を並列に並べ、その周囲を連結材41で一括に覆って連結している。光ファイバテープ心線40は、光ファイバ心線30に沿って紫外線硬化樹脂からなる連結材41を被覆しており、凹凸(図3中、凸部42、凹部43)が形成されたタイプのものである。他に、図4に示すように、各光ファイバ30間の一部を紫外線硬化樹脂からなる連結材44で埋めて連結したタイプの光ファイバテープ心線45を用いてもよい。
【0034】
本実施の形態の光ファイバケーブルについて説明する。
【0035】
図1に示すように、光ファイバケーブル10は、光ファイバテープ心線40を収容するケーブル部11と、ケーブル部11を支持するための支持線部12と、ケーブル部11と支持線部12とを連結する首部13とからなる。
【0036】
支持線部12は、支持線(抗張力体)14とその外周を覆う支持線側シース15とで構成される。
【0037】
ケーブル部11は、積層された2枚の光ファイバテープ心線40と、光ファイバテープ心線40に沿って配置される少なくとも一本(図1では2本)のテンションメンバ(抗張力体)16,16との周囲がケーブルシース17で覆われて形成されている。ケーブル部11では、複数の光ファイバ心線30が並ぶ方向において、光ファイバテープ心線40の両側にそれぞれテンションメンバ16、16が配置されている。テンションメンバ16,16を設けることで、テンションメンバ16,16に張力を分散させ、光ファイバテープ心線40に張力を掛けないようにしている。ケーブルシース17は、複数の光ファイバ心線30が並ぶ方向を縦方向(上下方向)とすると、その断面が略縦長長方形に形成されている。以後、光ファイバテープ心線40に平行である側のケーブルシース17表面を長辺側側面21とし、光ファイバテープ心線40に垂直である側(首部13が接続されている側)のケーブルシース17表面を短辺側側面22とする。
【0038】
首部13は、ケーブル部11と支持線部12とを連結する部材であり、ケーブル部11長手方向に所定間隔ごとに(間欠的に)設けられている。ただし首部13は、ケーブル部11長手方向に連続して設けてもよい。
【0039】
光ファイバケーブル10は、光ファイバテープ心線40、支持線14、テンションメンバ16の周囲にシースとなる樹脂を押し出し成形により形成されるもので、支持線側シース15とケーブルシース17と首部13とは、同じ材料で形成される。
【0040】
さらに、本実施の形態の光ファイバケーブル10は、ケーブル部11の両長辺側側面21に、切り込み部18とノッチ19が形成されている。
【0041】
本実施の形態の光ファイバケーブル10では、ケーブルシース17の長辺側側面21,21のそれぞれに、2本以上のノッチ19と、1本以上の切り込み部18とを形成し、上記ノッチ19は、短辺側側面22と平行に引いた直線(図中、破線24)上に光ファイバテープ心線40が存在しない位置に形成され、切り込み部18は短辺側側面22と平行に引いた直線(図中破線23)上に光ファイバテープ心線40が存在する位置に形成されている。
【0042】
切り込み部18は、切断面を接合して形成されたものであり、具体的には、ケーブルシース17を形成する際に、光ファイバテープ心線40の左右の長辺側側面21,21から内部にかけてケーブルシース17を一旦切り込んで成形すると共に、その切り込みを再度接合させて成形させた部分であり、分離可能に形成されている。したがって、切り込み部18は、その切断面が粗く結合して形成されている。ここで、光ファイバケーブル長手方向に連続する切り込みによって形成される切り込み面同士が再度結合させてできた面を切り込み部の切断面とし、「切断面が粗く結合」とは切り込み面同士の接着力が小さいこと、すなわち樹脂が硬化する際に、切断面同士が完全に(十分に密着して)接着していないことを意味する。
【0043】
ケーブル部11の両長辺側に2本ずつ形成されるノッチ19,19は、ケーブル部11長手方向に連続して形成されるV溝(断面三角形状の溝)である。本実施の形態では、2本のノッチ19,19は切り込み部18の上下に1本ずつ形成されている。
【0044】
また、切り込み部18とノッチ19,19は、長辺側側面で左右対称となるように形成されている。すなわち、各切り込み部18及びノッチ19,19が、それぞれ長辺側側面21,21から同じ距離でかつ、一方の短辺側側面22からの距離が同じ位置に、同じ形状に形成されている。また、切り込み部18は、ノッチ19,19の深さと等しいかまたは深く形成され、例えば、ノッチ19の深さ及び幅を0.5mmとし、切り込み部18の深さを0.5〜0.9mmとするのがよい。
【0045】
次に、光ファイバケーブル10の製造方法について説明する。
【0046】
図5に示すように、製造装置50は、光ファイバテープ心線40を送り出す光ファイバテープ心線送出装置51,51と、支持線14を送り出す支持線送出装置52と、テンションメンバ16,16を送り出すテンションメンバ送出装置53,53と、送り出されたこれらの線材をそれぞれ所定の位置に集合させる集合ダイス54と、集合された線材にシースを施すための樹脂を被覆する押し出しヘッド55と、ケーブル部11に支持線部12に対する余長をつける余長形成用プーリー56と、樹脂を冷却して硬化させる冷却水槽57と、光ファイバケーブル10を引き取る引取装置58と、光ファイバケーブル10を巻き取る巻取装置(ドラム)59とで構成される。
【0047】
各送出装置51,52、53から送り出された光ファイバテープ心線40,40、支持線14、及びテンションメンバ16,16(以上、線材)は、集合ダイス54で集合されると共に、各々が所定の位置に配置されるようにガイドされる。押し出しヘッド55では、各線材を通すと共に、線材の周囲に形成された型に加熱された樹脂が押し出される。これにより、支持線部12及びケーブル部11が形成され、同時に首部13も形成される。このときケーブルシース17には切り込み部18及びノッチ19が形成される。樹脂が施された線材は、余長形成用プーリー56に巻き取られてケーブル部11に余長が形成され、冷却装置57で樹脂が冷却されて硬化されて、光ファイバケーブル10が得られる。得られた光ファイバケーブル10は、巻取装置59でドラムに巻き取られる。
【0048】
ここで、押し出しヘッド55において、切り込み部18を形成する方法について図6に基づいて説明する。押し出しヘッド55では、支持線側シース15,ケーブルシース17、及び首部13が同時に形成されるが、ケーブル部11の形成について説明する。
【0049】
図6に示すように、押し出しヘッド55は、光ファイバテープ心線40を挿通させる光ファイバテープ心線挿通路61と、ケーブルシース17を形成するための材料である樹脂を注入する樹脂注入路62と、光ファイバテープ心線挿通路61と樹脂注入路62に連通し、断面がケーブルシース17の形状に形成された樹脂押出孔63とが設けられている。さらに、樹脂押出孔63の内壁には、鋭利な突起状の切り込み形成手段64が設けられ、切り込み形成手段64は、光ファイバテープ心線40が通る経路の両側に設けられている。
【0050】
押し込みヘッド55では、集合ダイス54から送られる光ファイバテープ心線40を通しながら、光ファイバテープ心線40の周囲にシースとなる樹脂を押し出してケーブル部11を形成する。
【0051】
具体的には、樹脂押出孔63では、光ファイバテープ心線40の周囲に加熱された樹脂が樹脂注入路62から注入され、その樹脂が光ファイバテープ心線40と共に押し出される。この間、樹脂押出孔63の区間aを通っている光ファイバテープ心線40の両側の樹脂には、切り込み形成手段64により、切り込み(切断面)が形成される。樹脂押出孔63内で、かつ、区間aを通った後の区間bでは、樹脂は切り込み形成手段64から開放され、樹脂の注入圧力により切り込みを塞ぐように再度接着する。そこで、切り込みが完全に接着する前に区間bを通過し終えるように、押し込みヘッド55を設計することで、固化が不完全な状態のまま区間bを通過し終える。区間cは樹脂押出孔63内での樹脂圧から開放され、樹脂の切り込みの硬化が進展しない。この状態で、樹脂(シース)の切り込みが徐々に冷やされ、その後冷却装置57にて冷却されることで、樹脂は固化してシースを形成する。これにより、切り込みによって形成された切断面が互いに完全に接着しない状態で硬化して、切り込み部18として形成される。
【0052】
光ファイバケーブル10は、光ファイバケーブル10を敷設した後に、中間後分岐処理を行うべく架空でケーブル部11内から光ファイバテープ心線40を取り出すことがある。光ファイバテープ心線40の取り出す際の光ファイバケーブル10の作用について説明する。ただし、図7、図8では支持線部及び首部を省略している。
【0053】
図7に示すように、架空の光ファイバケーブル10において、ファイバ分離用工具71の爪部72をノッチ19,19に挿入する。爪部72を挿入した後、互いに反対方向(図7中、矢印方向)に工具を引く。
【0054】
図8に示すように、ファイバ分離用工具71で互いに反対方向に引かれる力により、長辺側側面21の中央に形成された切り込み部18からケーブルシース17が切り裂けて、2つのシース17a,17aに分割される。切り込み部18からケーブルシース17が裂ける理由は、切り込み部18が、その切断面の結合が粗いため、反対方向(図7中、矢印方向)に力を加えると分離し易い部分となっており、かつ、光ファイバケーブル10では、深さの最も深い切り込み部18が、切り込み部18から短辺側側面22と平行に引いた線23(図1参照)上に光ファイバテープ心線40が収容されているので、切り込み部18が形成された箇所のシース厚さが、端側のノッチ19,19が形成されたシース厚さより薄くなっているためである。
【0055】
したがって、本光ファイバケーブル10は、光ファイバテープ心線40をケーブルシース17から分離して取り出せることができる。
【0056】
さらに、光ファイバケーブル10では、光ファイバテープ心線40の左右にノッチが形成されていないので、蝉の産卵管がノッチに誘導されてシースに突き刺さり、光ファイバテープ心線40を傷つけるといったことがない。また、長辺側側面21に形成されたノッチ19の内側には光ファイバテープ心線40が存在しないので、長辺側側面21のノッチ19に誘導されて蝉の産卵管が突き刺されても、産卵管は光ファイバテープ心線40に接触することがなく、光ファイバケーブル10の断線の確率を低くすることができる。
【0057】
以上、説明してきた光ファイバケーブル10では、4心の光ファイバテープ心線40を2層に積層してケーブルシース17内に収容したものであるが、収容する光ファイバ心線30の本数(光ファイバテープ心線40の枚数)はいくつでもよい。
【0058】
例えば、図9に示すように、ケーブルシース17内に4心の光ファイバテープ心線40を一層のみ収容してもよく、図10に示すように、4心の光ファイバテープ心線を並列に3枚並べて2層に積層してもよい(合計6枚)。また、ケーブルシース17の長辺側側面に形成されるノッチ19の本数もいくつでもよい(図10では各4本)。ただし、ノッチ19,19は、光ファイバテープ心線40の左右のケーブルシース17表面には形成されない。
【0059】
また、本実施の形態では、2枚の光ファイバテープ心線40は、それらが各々有する光ファイバ心線が互いに1/2心ずれて重ね合わせられているが、光ファイバテープ心線40,40同士の積層方法は、これに限定されない。
【0060】
次に、光ファイバケーブルの他の実施の形態について説明する。
【0061】
図11に示すように、基本的な構成部分は、上述した図1の光ファイバケーブル10とほぼ同様であり、同一構成部分には、図1の場合と同一の符号を付してある。本実施の形態の光ファイバケーブル80が、図1の光ファイバケーブル10と異なる点は、切り込み部18の代わりに空隙部81が形成されている点である。
【0062】
光ファイバケーブル80は、光ファイバテープ心線40の両側に、ケーブルシース17内に空気を取り込んで成形された空隙部81が形成されている。光ファイバテープ心線40の両側に形成される空隙部81,81は、左右対称に形成されるのが好ましい。すなわち、両空隙部81,81が、それぞれ長辺側側面21,21から同じ距離でかつ、一方の短辺側側面22からの距離が同じ位置に、同じ形状に形成されるのが好ましい。
【0063】
図11では、空隙部81の断面形状が略長方形に示されているが、空隙部81の断面形状はどんな形状でもよい。例えば、空隙部81は、円形、楕円形に形成されてもよく、或いは、多数の気泡で形成されていてもよい。空隙部81の存在により、少なくとも、ケーブルシース17の長辺側側面21から光ファイバテープ心線40までにおける樹脂密度(ケーブルシース17内における単位断面積当りの樹脂の占める割合)が、ケーブルシース17の他の部分より小さければよい。すなわち、図8で説明した中間後分岐処理をする際に、ノッチ19に分離用工具71の爪部72を挿入して、ケーブルシース17が分割される方向に力を加えたとき、空隙部81からケーブルシース17が裂ける程度の空気が存在していればよい。
【0064】
空隙部81は、光ファイバテープ心線40の両側の樹脂に切り込みを入れると共に空気を取り込んで形成される。具体的には、図6で説明した切り込みを形成する工程において、樹脂押出孔63に連通する図示しない空気注入路(ノズル)を設け、ケーブルシース17の押出成形中に、樹脂押出孔63に空気を注入させる。すると、樹脂が切り込まれた箇所に空気が集まると共に、樹脂が徐々に硬化して空隙部81が形成される。
【0065】
或いは、空気注入路を設けなくとも、押し出しヘッド55内に光ファイバテープ心線40が送り込まれる時に、空気が樹脂押出孔63内に侵入し、切り込み形成手段64で樹脂を切り込むと、その切り込まれた樹脂に空隙部81を形成することができる。例えば、図6に示した樹脂押出孔63内に、切り込み形成手段64として、樹脂押出方向において段階的に形状が変化した突起を設け、樹脂を押出成形してケーブルシース17を形成しても空隙部81を形成することができる。
【0066】
本実施の形態の光ファイバケーブル80も図1の実施の形態の光ファイバケーブル10と同様の作用効果を有する。
【実施例】
【0067】
次に、本発明の実施の形態について、実施例に基づいて説明するが、本発明の実施の形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例1として、図1に示した構造の光ファイバケーブルを作製した。各部材を形成する材料及び寸法は以下の通りである。
【0069】
光ファイバケーブル10の全体の寸法は高さ約9mm、幅約3.3mmである。
【0070】
光ファイバテープ心線40は、長径(幅)2.05mm、短径(厚さ)0.52mmであり、光ファイバテープ心線40を構成する各光ファイバ心線30の各層の外径については、光ファイバ31の外径が約0.125μmm、二次被覆層33の外径が約0.245μm、着色層34の外径が約0.255μm、オーバーコート層35の外径が約0.50μmである。
【0071】
支持線14及びテンションメンバ16は、それぞれ亜鉛めっき鋼線で形成され、支持線14の直径は2.3mm,テンションメンバ16の直径は、0.4mmである。
【0072】
支持線側シース15、ケーブルシース17及び首部13は低密度ポリエチレン樹脂を用いて形成した。また、首部13は、ケーブル長手方向に連続的に形成した。ノッチ19は深さ0.5mm、幅0.5mmに形成した。
【0073】
実施例2として、図12に示される構造の光ファイバケーブル92を作製した。光ファイバケーブル92の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例2の光ファイバケーブル92は、図1に示した光ファイバケーブル10の光ファイバテープ心線40を繊維形状の介在92aで覆ったものである。その繊維形状の介在92aはアラミド繊維で形成されるのが好ましい。
【0074】
実施例3として、図13に示される構造の光ファイバケーブル93を作製した。光ファイバケーブル93の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例3の光ファイバケーブル93は、図1に示した光ファイバケーブル10の光ファイバテープ心線40の両側に、テープ状の介在93a,93aを縦添えしたものである。テープ状の介在93aは離形性の良好なポリエステル系の材料で形成されるのが好ましい。
【0075】
実施例4として、図14に示される構造の光ファイバケーブル94を作製した。光ファイバケーブル94の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例4の光ファイバケーブル94は、図1に示した光ファイバケーブル10の光ファイバテープ心線40の片側に、テープ状の介在93aを縦添えしたものである。
【0076】
実施例5として、図15に示した構造の光ファイバケーブル95を作製した。光ファイバケーブル95の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例5の光ファイバケーブル95は、図1に示した光ファイバケーブル10の光ファイバテープ心線40の両側に、光ファイバテープ心線40より幅の広いテープ状の介在95aを縦添えし、それらテープ状の介在95aの幅方向(図中上下方向)両端部を曲げて光ファイバテープ心線40を覆ったものである。
【0077】
実施例6として、図16に示した構造の光ファイバケーブル96を作製した。光ファイバケーブル96の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例6の光ファイバケーブル96は、図1に示した光ファイバケーブル10の2枚の光ファイバテープ心線40、40の間に、テープ状の介在93aを縦添えしたものである。
【0078】
実施例7として、図17に示した構造の光ファイバケーブル97を作製した。光ファイバケーブル97の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例7の光ファイバケーブル97は、図1に示した光ファイバケーブル10の2枚の光ファイバテープ心線40,40の間に、繊維形状の介在97aを縦添えしたものである。
【0079】
実施例8として、図18に示される構造の光ファイバケーブル98を作製した。光ファイバケーブル98の各部材のサイズは実施例1と同じである。実施例8の光ファイバケーブル98は、図1に示した光ファイバケーブル10の一方の光ファイバテープ心線40を繊維形状の介在98aで覆ったものである。
【0080】
比較例1は、図19に示した従来の光ファイバケーブルである。
【0081】
実施例1〜実施例8及び比較例1の光ファイバケーブルを、図7及び図8で説明したようにケーブルシース17から光ファイバテープ心線40を取り出す取り出し試験(中間後分岐試験)を行った。取り出し試験では、ケーブルシース17から光ファイバテープ心線40を完全に取り出せた場合を合格としている。この結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示すように、実施例1の光ファイバケーブルは、その合格率が96%であり、実施例2〜実施例8の光ファイバケーブルは、光ファイバテープ心線の周囲に介在を設けることで、ケーブルシース17内に光ファイバテープ心線40が滑り易い状態で収容され、実施例1よりも取り出し性が良好となり、いずれもその合格率が100%であった。以上、実施例1〜実施例8の光ファイバケーブルは、光ファイバテープ心線の取り出し性に大変優れるものである。
【0084】
これに対して、比較例1の光ファイバケーブルは、その合格率が4%であり、光ファイバテープ心線の取り出し性が悪い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の好適な実施の形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図2】光ファイバ心線を示す断面図である。
【図3】光ファイバテープ心線を示す断面図である。
【図4】光ファイバテープ心線を示す断面図である。
【図5】図1の光ファイバケーブルの製造装置を示す模式図である。
【図6】図5の押出ヘッドの簡略断面図である。
【図7】図1の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図8】図1の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図9】図1の光ファイバケーブルの第一の変形例を示す断面図である。
【図10】図1の光ファイバケーブルの第二の変形例を示す断面図である。
【図11】他の実施の形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図12】実施例2の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図13】実施例3の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図14】実施例4の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図15】実施例5の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図16】実施例6の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図17】実施例7の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図18】実施例8の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図19】従来の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図20】図19の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図21】図19の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0086】
10 光ファイバケーブル
11 ケーブル部
12 支持線部
13 首部
14 支持線
15 支持線側シース
16 テンションメンバ
17 ケーブルシース
18 切り込み部
19 ノッチ
30 光ファイバ心線
40 光ファイバテープ心線
41,44 連結材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持線にシースを施して支持線部を形成し、光ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線にシースを施して断面縦長のケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結した光ファイバケーブルにおいて、
上記ケーブル部のシースにおける長辺側側面のそれぞれに、2本以上のノッチと、切断面同士が接着された1本以上の切り込み部とが形成され、
上記ノッチは、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在しない位置に形成され、
上記切り込み部は、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在する位置に形成されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
上記切り込み部は、上記ケーブル部のシースの長辺側側面から内部にかけて一旦切り込んで、その切り込みを再度接合させて形成された請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
上記ノッチ及び上記切り込み部は、各長辺側側面で左右対称に形成されている請求項1または2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
支持線にシースを施して支持線部を形成し、光ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線にシースを施して断面縦長のケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結した光ファイバケーブルにおいて、
上記ケーブル部のシースにおける長辺側側面のそれぞれに、2本以上のノッチと、1本以上の空隙部とが形成され、
上記ノッチは、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在しない位置に形成され、
上記空隙部は、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在する位置に形成されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項5】
上記空隙部は、上記長辺側側面に切り込みを入れた際に空気を取り込んで形成されている請求項4記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
上記ノッチ及び上記空隙部は、各長辺側側面で左右対称に形成されている請求項4または5記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
上記ケーブル部が、複数の光ファイバテープ心線を有する請求項1〜6いずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
上記複数の光ファイバテープ心線は、上記光ファイバ心線が互いに1/2心ずれて重ね合わせられている請求項7記載の光ファイバケーブル。
【請求項9】
上記複数の光ファイバテープ心線の間に、介在が縦添えされている請求項7または8記載の光ファイバケーブル。
【請求項10】
上記光ファイバテープ心線と上記シースとの間に、介在が縦添えされている請求項1〜9いずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項11】
上記介在が、テープ状に形成されている請求項9または10記載の光ファイバケーブル。
【請求項12】
上記介在が、ポリエステル系材料で形成されている請求項11記載の光ファイバケーブル。
【請求項13】
上記介在が、繊維形状に形成されている請求項9または10記載の光ファイバケーブル。
【請求項14】
上記介在が、アラミド繊維で形成されている請求項13記載の光ファイバケーブル。
【請求項15】
上記光ファイバ心線は、その外側に形成され着色紫外線硬化樹脂からなる着色層と、その着色層の外周に形成され紫外線硬化樹脂からなり層厚0.4mm以上に形成されたオーバーコート層とを有する請求項1〜14いずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項1】
支持線にシースを施して支持線部を形成し、光ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線にシースを施して断面縦長のケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結した光ファイバケーブルにおいて、
上記ケーブル部のシースにおける長辺側側面のそれぞれに、2本以上のノッチと、切断面同士が接着された1本以上の切り込み部とが形成され、
上記ノッチは、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在しない位置に形成され、
上記切り込み部は、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在する位置に形成されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
上記切り込み部は、上記ケーブル部のシースの長辺側側面から内部にかけて一旦切り込んで、その切り込みを再度接合させて形成された請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
上記ノッチ及び上記切り込み部は、各長辺側側面で左右対称に形成されている請求項1または2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
支持線にシースを施して支持線部を形成し、光ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線にシースを施して断面縦長のケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結した光ファイバケーブルにおいて、
上記ケーブル部のシースにおける長辺側側面のそれぞれに、2本以上のノッチと、1本以上の空隙部とが形成され、
上記ノッチは、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在しない位置に形成され、
上記空隙部は、短辺側側面と平行に引いた直線上に上記光ファイバテープ心線が存在する位置に形成されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項5】
上記空隙部は、上記長辺側側面に切り込みを入れた際に空気を取り込んで形成されている請求項4記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
上記ノッチ及び上記空隙部は、各長辺側側面で左右対称に形成されている請求項4または5記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
上記ケーブル部が、複数の光ファイバテープ心線を有する請求項1〜6いずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
上記複数の光ファイバテープ心線は、上記光ファイバ心線が互いに1/2心ずれて重ね合わせられている請求項7記載の光ファイバケーブル。
【請求項9】
上記複数の光ファイバテープ心線の間に、介在が縦添えされている請求項7または8記載の光ファイバケーブル。
【請求項10】
上記光ファイバテープ心線と上記シースとの間に、介在が縦添えされている請求項1〜9いずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項11】
上記介在が、テープ状に形成されている請求項9または10記載の光ファイバケーブル。
【請求項12】
上記介在が、ポリエステル系材料で形成されている請求項11記載の光ファイバケーブル。
【請求項13】
上記介在が、繊維形状に形成されている請求項9または10記載の光ファイバケーブル。
【請求項14】
上記介在が、アラミド繊維で形成されている請求項13記載の光ファイバケーブル。
【請求項15】
上記光ファイバ心線は、その外側に形成され着色紫外線硬化樹脂からなる着色層と、その着色層の外周に形成され紫外線硬化樹脂からなり層厚0.4mm以上に形成されたオーバーコート層とを有する請求項1〜14いずれかに記載の光ファイバケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2007−65596(P2007−65596A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255214(P2005−255214)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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