説明

光ファイバ保持部材

【課題】各V溝の形状が高精度に均一でなくても、上部プレートで各光ファイバを押さえる力をほぼ一定にすることができ、光ファイバコネクタの結合精度を良好に保つこと。
【解決手段】上部プレート20の外周面21aには、下部プレートの各V溝に対向するように溝22a、22b、22c、22dが平行に形成される。溝22a、22b、22c、22dに直交する側面である外周面21bから所定長さのスリット24a、24b、24c、24d、24eが形成される。スリット24aは、溝22aに平行な側面である外周面21cと溝22aとの間に形成される。スリット24bは、溝22aと溝22bとの間に形成される。スリット24cは、溝22bと溝22cとの間に形成される。スリット24dは、溝22cと溝22dとの間に形成される。スリット24eは、外周面21cの反対側面である外周面21dと溝22dとの間に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバを所定の間隔で整列保持するための光ファイバ保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信などに使われる光ファイバを、光導波路、レーザダイオード(LD)、フォトダイオード(PD)などに接続したり、複数本の光ファイバ同士を光学的に接続したりするために、光ファイバコネクタを使用することがある。光ファイバコネクタは、光ファイバと光ファイバ保持部材とから構成される。
【0003】
従来の光ファイバ保持部材は、複数本の光ファイバを、V溝が所定のピッチで設けられた下部プレートと、上部プレートとの間に挟んで保持する構造を有する(特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、従来の光ファイバ保持部材は、被覆された光ファイバの被覆を除去して露出させた裸ファイバを下部プレートのV溝に配列させ、上部プレートを下部プレートに取り付けることにより光ファイバを上部プレートによって押さえて位置決めする。この状態で、下部プレートと上部プレートとの間の隙間に接着剤を充填し、光ファイバを下部プレートに仮止めする。その後、上部プレートを外し、接着剤をV溝全体に充填し、再び上部プレートを下部プレートに取り付ける。これにより、光ファイバ、下部プレートおよび上部プレートが互いに固定され、光ファイバコネクタが完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−213721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術は、上部プレートの剛性が強いため、各V溝の形状が高精度に均一ではない場合、上部プレートで各光ファイバを押さえる力が、光ファイバ毎に異なってしまう。そして、上部プレートの押さえる力が強すぎると当該光ファイバは歪んでしまい、上部プレートの押さえる力が弱すぎると当該光ファイバは位置が安定しない状態で仮止めされてしまい、光ファイバコネクタの結合精度が落ちてしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、各V溝の形状が高精度に均一でなくても、上部プレートで各光ファイバを押さえる力をほぼ一定にすることができ、光ファイバコネクタの結合精度を良好に保つことができる光ファイバ保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光ファイバ保持部材は、光ファイバ保持用の複数のV溝を並列に配列した下部プレートと、前記複数のV溝に載置された光ファイバを押さえる上部プレートと、からなる光ファイバ保持部材であって、前記上部プレートには、前記光ファイバを押さえる部分の両側に所定深さのスリットが形成される、構成を採る。
【0009】
本発明の光ファイバコネクタは、上記光ファイバ保持部材の前記複数のV溝に光ファイバを載置させ、接着剤により前記光ファイバ保持部材に前記光ファイバを固定する構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上部プレートの各光ファイバを押さえる部分の両側に所定深さのスリットを形成することにより、各V溝の形状が高精度に均一でなくても、上部プレートで各光ファイバを押さえる力をほぼ一定にすることができ、光ファイバコネクタの結合精度を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光ファイバコネクタを示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1に係るファイバ保持部材の下部プレートの平面図、(a)正面図、(b)左側面図、(c)底面図
【図3】本発明の実施の形態1に係るファイバ保持部材の上部プレートの平面図、(a)正面図、(b)左側面図、(c)底面図
【図4】図1のA部の拡大図
【図5】本発明の実施の形態2に係る光ファイバコネクタを示す斜視図(組立前)
【図6】本発明の実施の形態2に係るファイバ保持部材の下部プレートの平面図、(a)正面断面図、(b)底面図、(c)右側面図
【図7】本発明の実施の形態3に係る光ファイバコネクタを示す斜視図
【図8】本発明の実施の形態3に係るファイバ保持部材の下部プレートの平面図、(a)正面断面図、(b)底面図、(c)右側面図
【図9】本発明の実施の形態3に係るファイバ保持部材の上部プレートの平面図、(a)正面図、(b)左側面図、(c)底面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
〔光ファイバ保持部材の構成〕
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバコネクタを示す斜視図である。図1に示すように、光ファイバコネクタ1は、光ファイバ保持部材2と、複数の光ファイバ3と、から構成される。光ファイバ保持部材2は、下部プレート10と、上部プレート20と、から構成される。
【0014】
光ファイバ保持部材2は、ほぼその外形がほぼ直方体であり、例えば、PEI(ポリエーテルイミド)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル),PC(ポリカーボネート),EP(エポキシ樹脂)等の樹脂材料により形成される。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態1に係るファイバ保持部材2の下部プレート10の平面図であり、図2(a)、(b)、(c)は、それぞれ、下部プレート10の正面図、左側面図、底面図である。
【0016】
下部プレート10は、ほぼその外形がほぼ直方体であり、上部プレート20に対向する外周面11aには、光ファイバ3を載置するためのV溝12a、12b、12c、12dが所定のピッチで平行に形成される。
【0017】
また、V溝12a、12b、12c、12dと平行な側面である外周面11b、11cには、上部プレート20の爪部23a、23b、23c、23d(図3,図4参照)と嵌合する凸部13a、13bが形成される。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態1に係るファイバ保持部材2の上部プレート20の平面図であり、図3(a)、(b)、(c)は、それぞれ、上部プレート20の正面図、左側面図、底面図である。
【0019】
上部プレート20は、ほぼその外形がほぼ直方体であり、下部プレート10に対向する外周面21aには、下部プレート10の各V溝12a、12b、12c、12dに対向するように溝22a、22b、22c、22dが平行に形成される。
【0020】
また、外周面21aの四方角部には、下部プレート10の凸部13a、13bと嵌合する爪部23a、23b、23c、23dが形成される。
【0021】
また、溝22a、22b、22c、22dに直交する側面である外周面21bから所定長さのスリット24a、24b、24c、24d、24eが形成される。スリット24aは、溝22aに平行な側面である外周面21cと溝22aとの間に形成される。スリット24bは、溝22aと溝22bとの間に形成される。スリット24cは、溝22bと溝22cとの間に形成される。スリット24dは、溝22cと溝22dとの間に形成される。スリット24eは、外周面21cの反対側面である外周面21dと溝22dとの間に形成される。すなわち、上部プレート20には、各光ファイバ3を押さえる部分の両側に所定深さのスリットが形成される。
【0022】
スリット24a、24b、24c、24d、24eが形成されることにより、上部プレート20本体のスリット間部分25a、25b、25c、25dがそれぞれ独立に撓み、板バネとしての機能を持つことになる。
【0023】
そして、図4に示すように、下部プレート10に光ファイバ3を載置し、上部プレート20を下部プレート10に取り付けた際に、スリット間部分25a、25b、25c、25dの付勢により、各光ファイバ3は、ほぼ均一な力で押さえつけられる。
【0024】
〔光ファイバコネクタの組み付け工程〕
次に、光ファイバコネクタ1の組み付け工程について説明する。
【0025】
まず、被覆を除去して露出させた光ファイバ3を、下部プレート10のV溝12a、12b、12c、12dそれぞれに載置する。
【0026】
次に、上部プレート20の爪部23a、23b、23c、23dを下部プレート10の凸部13a、13bに嵌合させることにより、上部プレート20を下部プレート10に取り付ける。このとき、スリット間部分25a、25b、25c、25dが各光ファイバ3をほぼ均一の力で押さえる。
【0027】
次に、下部プレート10のV溝12a、12b、12c、12dと上部プレート20の溝22a、22b、22c、22dとの間に接着剤を挿入し、各光ファイバ3を下部プレート10に仮止めする。
【0028】
次に、上部プレート20を下部プレート10から外し、下部プレート10のV溝12a、12b、12c12dに接着剤を流して、各光ファイバ3を下部プレート10に固定する。
【0029】
次に、再び、上部プレート20を下部プレート10に取り付けることにより、各光ファイバ3を上部プレート20にも固定する。これにより、光ファイバ3、下部プレート10および上部プレート20が互いに固定され、光ファイバコネクタ1が完成する。
【0030】
〔本実施の形態の効果〕
以上のように、本実施の形態によれば、上部プレート20の各光ファイバ3を押さえる部分の両側に所定深さのスリットを形成することにより、下部プレート10のV溝12a、12b、12c、12dの形状が高精度に均一でなくても、上部プレート20で各光ファイバ3を押さえる力をほぼ一定にすることができるので、光ファイバコネクタ1の結合精度を良好に保つことができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、上部プレートの片側にスリットを形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、上部プレートの両側にスリットを形成しても良い。
【0032】
(実施の形態2)
〔光ファイバ保持部材の構成〕
図5は、本発明の実施の形態2に係る光ファイバコネクタを示す斜視図である。図5に示すように、光ファイバコネクタ1aは、光ファイバ保持部材2aと、複数の光ファイバ3と、から構成される。光ファイバ保持部材2aは、下部プレート10aと、上部プレート20aと、から構成される。
【0033】
光ファイバ保持部材2aは、ほぼその外形がほぼ直方体であり、例えば、PEI(ポリエーテルイミド)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル),PC(ポリカーボネート),EP(エポキシ樹脂)等の樹脂材料により形成される。
【0034】
図6は、本発明の実施の形態2に係るファイバ保持部材2aの下部プレート10aの平面図であり、図6(a)、(b)、(c)は、それぞれ、下部プレート10aの正面断面図、底面図、右側面図である。なお、図6に示す下部プレート10aにおいて、図2に示した下部プレート10と共通する部分には、図2と同一符号を付して説明を省略する。下部プレート10aは、下部プレート10に対して、光進行方向制御部30が追加された構成を採る。
【0035】
外周面11aと平行な、光進行方向制御部30の外周面31aには、凹部32が形成される。凹部32は、外周面31aに対して所定の角度を有する全反射面32aを有する。全反射面32aは、入射したレーザ光を全反射させる。
【0036】
また、光ファイバ3の端面と対向する面である、光進行方向制御部30の外周面31bには、円形状の4個の第1のレンズ33(凸レンズ)が形成される。各第1のレンズ33は、各光ファイバ3に対向する位置に整列配置される。各第1のレンズ33は、対応する各光ファイバ3から出射されたレーザ光を、集束光になるように屈折させ、全反射面32aに向けてそれぞれ出射する。あるいは、各第1のレンズ33は、全反射面32aで反射されたレーザ光を、集束光になるように屈折させ、各光ファイバ3に向けてそれぞれ出射する。
【0037】
また、外周面31aの反対面である外周面31cには、円形状の4個の第2のレンズ34(凸レンズ)が形成される。第2のレンズ34は、第1のレンズ33と同ピッチの位置に整列配置される。各第2のレンズ34は、入射したレーザ光を、集束光になるように屈折させ、全反射面32aに向けてそれぞれ出射する。あるいは、各第2のレンズ34は、全反射面32aで反射されたレーザ光を、集束光になるように屈折させ、出射する。
【0038】
なお、光ファイバ保持部材2aの上部プレート20aは、実施の形態1で説明した光ファイバ保持部材2の上部プレート20と同一形状であるので、説明を省略する。
【0039】
〔本実施の形態の効果〕
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、さらに、光ファイバ3から出射されたレーザ光、あるいは、光ファイバ3に入射するレーザ光の進行方向を制御することができる。
【0040】
(実施の形態3)
〔光ファイバ保持部材の構成〕
図7は、本発明の実施の形態3に係る光ファイバコネクタを示す斜視図である。図7に示すように、光ファイバコネクタ1bは、光ファイバ保持部材2bと、複数の光ファイバ3と、から構成される。光ファイバ保持部材2bは、下部プレート10bと、上部プレート20bと、から構成される。また、図7では、光ファイバ3を下部プレート10bに固定するための接着剤4が露出する。
【0041】
光ファイバ保持部材2bは、ほぼその外形がほぼ直方体であり、例えば、PEI(ポリエーテルイミド)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル),PC(ポリカーボネート),EP(エポキシ樹脂)等の樹脂材料により形成される。
【0042】
図8は、本発明の実施の形態3に係るファイバ保持部材2bの下部プレート10bの平面図であり、図8(a)、(b)、(c)は、それぞれ、下部プレート10bの正面断面図、底面図、右側面図である。なお、図8に示す下部プレート10bにおいて、図6に示した下部プレート10aと共通する部分には、図6と同一符号を付して説明を省略する。下部プレート10bは、下部プレート10aに対して、外周面11aに傾斜面41が形成された構成を採る。
【0043】
図9は、本発明の実施の形態3に係るファイバ保持部材2bの上部プレート20bの平面図であり、図9(a)、(b)、(c)は、それぞれ、上部プレート20bの正面図、左側面図、底面図である。なお、図9に示す上部プレート20bにおいて、図3に示した上部プレート10と共通する部分には、図3と同一符号を付して説明を省略する。上部プレート20bは、上部プレート10に対して、長さLのみが異なる。上部プレート20bの長さLは、下部プレート10bの外周面11aにおける傾斜面41が始まるまでの長さとほぼ同一である。
【0044】
〔本実施の形態の効果〕
以上のように、本実施の形態によれば、上部プレート20bを下部プレート10bに取り付けた際に、光ファイバ3の一部が露出して下部プレート10bに載置された状態となるので、実施の形態2の効果に加え、さらに、図7に示すように、接着剤4により、光ファイバ3を容易に下部プレート10bに固定することができる。
【0045】
なお、上記各実施の形態では、光ファイバ保持部材に固定される光ファイバが4本の場合について説明したが、本発明はこれに限られず、光ファイバ保持部材に固定される光ファイバの本数に制限はない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る光ファイバ保持部材は、マルチチャンネルの光通信に使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1、1a、1b 光ファイバコネクタ
2、2a、2b 光ファイバ保持部材
3 光ファイバ
4 接着剤
10、10a、10b 下部プレート
11a、11b、11c 外周面
12a、12b、12c、12d V溝
13a、13b 凸部
20、20a、20b 上部プレート
21a、21b、21c、21d 外周面
22a、22b、22c、22d 溝
23a、23b、23c、23d 爪部
24a、24b、24c、24d、24e スリット
25a、25b、25c、25d スリット間部分(板バネ)
30 光進行方向制御部
31a 外周面
32 凹部
32a 全反射面
33 第1のレンズ
34 第2のレンズ
41 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ保持用の複数のV溝を並列に配列した下部プレートと、前記複数のV溝に載置された光ファイバを押さえる上部プレートと、からなる光ファイバ保持部材であって、
前記上部プレートには、前記光ファイバを押さえる部分の両側に所定深さのスリットが形成される、
ことを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項2】
前記下部プレートに、
前記光ファイバの端面に対向する位置に第1のレンズと、
前記第1のレンズに入射する光、あるいは、前記第1のレンズから出射される光を全反射させる全反射面と、
入射した光を前記反射面に出射する、あるいは、前記反射面で反射された光を出射する第2のレンズと、
を形成する、
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバ保持部材。
【請求項3】
前記上部プレートの長さを前記下部プレートの前記光ファイバが載置される部分の長さよりも短くする、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光ファイバ保持部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバ保持部材の前記複数のV溝に光ファイバを載置させ、接着剤により前記光ファイバ保持部材に前記光ファイバを固定したことを特徴とする光ファイバコネクタ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−47942(P2012−47942A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189441(P2010−189441)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】