説明

光ファイバ装着チューブ、その製造方法及びその使用方法

本発明は光ファイバ装着チューブ、及びその製造方法と使用方法に関するものである。光ファイバ装着チューブは、チューブの内部に展開された光ファイバ・チューブ、ダクト内に少なくとも1本以上の光ファイバを持つ光ファイバ・チューブ、坑道環境に適合するように通常は金属材料で構成されるダクトに関するものである。本発明はまた、チューブ内に液体を加圧注入し、加圧注入された液体の流れの中で光ファイバ・チューブを推進することによってチューブ内に光ファイバ・チューブを展開することにも関するものである。本発明は坑道に展開されたチューブ内に挿入された光ファイバを用いて坑道内と地面との通信も提供する。ある実施例においては、この通信は地面の無線通信システムと組み合わされる。また別の実施例では、チューブをコイル状チューブとして、光ファイバ・チューブをコイル状チューブの中に挿入し、このチューブをリールに巻き取ったり、坑道に展開したりすることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に油田での作業に関するものであり、具体的には坑道内での作業で用いられる光ファイバを装着したコイル状のチューブを使用した装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイル状チューブの作業は石油採掘産業界で一般的に、たとえば坑道内の望みの位置に液体を注入したり、油田用機器を操作したりするために使用されている。コイル状チューブの利点の1つは、リールに巻き取られた形で供給されるため、ある特別な目的でチューブを坑道内に挿入する際に展開が容易であり、坑道から引き上げる際にも容易に巻き戻すことができることである。コイル状のチューブを巻き取ったリールは、チューブの保管、移動が容易であり、リールに巻き取られたチューブはトレーラ、フラット(平床式トレーラ)、トラック等で容易に移動することができる。コイル状のチューブは、坑道内で様々なタイプの搬送手段が使用されるようになるに従ってその利用が増えており、結果として各種ダウンホール(地面に掘った穴)機器用のニーズ及びコイル状チューブの応用機会が増加している。コイル状チューブを用いた従来型のダウンホール用電気機械的装置における本質的な欠点はダウンホール装置への供給動力が無いこととダウンホール装置から地面へのテレメトリーが無いことであった。
【0003】
様々な坑道内ツールで測定されたデータを地面へ伝送したり、様々な操作を行わせるために地面から坑道へコマンド(指令)を送ったりするために、坑道と地面間の通信手段としてコイル状のチューブに装着した電線を使用する通常の方法は既によく知られている。しかし、コイル状チューブ内の電線の使用には、コイル状チューブ内への電線ケーブルの挿入や電線ケーブルが占有する空間のためにコイル状チューブ内の液体容量が減少するといった兵站面での問題があった。
【0004】
コイル状チューブに電線を追加することにより、コイル状チューブ全体の重量は著しく増加する。コイル状チューブへの電線の挿入は、電線がコイル状チューブ内で「鳥の巣」のように固まってしまう傾向があるため難しい。この問題及びコイル状チューブの内径に対して電線ケーブルの外径が比較的大きいことにより、コイル状チューブを通して液体が流れるのが妨げられるため、コイル状チューブにスムーズに液体を流す作業が坑道作業のかなりの部分を占めるという状況が頻繁に生じていた。さらに、酸、セメント、プロパント(支持材)ベアリング破砕液のような、コイル状チューブを通して日常的に流される液体は、電線ケーブルの構造や性能に悪影響を与えることがある。また、コイル状チューブの内部を流れ下る液体は、液体とケーブル表面の間に生ずる摩擦力によって電線ケーブルに流体抵抗を発生させる。
【0005】
電線ケーブルまたはその他の電気的ケーブルをコイル状チューブに挿入することは、その重量と曲げ抵抗がケーブルとコイル状チューブとの間に大きな摩擦力を発生させるため、難しく、面倒な作業である。コイル状チューブへの電線の挿入方法については特許文献1及び特許文献2で議論されており、本発明でも参照されている。これらの文献で説明されている方法はケーブルとコイル状チューブ間の大きな摩擦力を克服してケーブルをコイル状チューブの中に挿入するために、地面に大がかりな挿入装置を必要とする。そのような大きなサイズの装置を使用することは、場所によっては(特に沖合での作業では)著しく困難となることがある。
【0006】
様々な用途及び作業において光ファイバの使用が増加しつつある。光ファイバは、伝送媒体として用いられる場合、小型、軽量、広帯域、高速伝送等を始めとして電線ケーブルをしのぐ多くの利点を提供する。地下油田操業における光ファイバの利用のために解決が要求される重要な問題は、自由水素イオンが地下油田では一般的に見られる温度上昇により光ファイバの性能劣化を生じさせることである。電線ケーブルに代わって光ファイバを使用することは、本明細書で全体が参照されている特許文献3で記述されているような方法で知られている。この特許は第1の金属チューブの内部に含まれる光ファイバの周囲に水素吸収材または掃気ジェルを追加することを示唆している。またこの特許は挿入される電線ケーブルには大きな引張り強度が要求され、この強度は第2の金属チューブの内側に第1の金属チューブをしっかりと取り付けることで得ることができることも示唆している。これらの対策はどちらもケーブルのコストと重量を著しく増やす要因となる。本明細書で全体が参照されている特許文献4では、坑道内に遠隔測定装置を配置する方法として、その中に光ファイバセンサーと光ファイバ・ケーブルが挿入されている導管を用い、その導管内の液流によって導管に沿ってケーブルを推進する方法が示されている。本明細書で全体が参照されている特許文献5では、最初にコイル状チューブの中に中空の導管を挿入した後、続いてその導管の内部に単一の光ファイバを挿入することによりセンサーを配置するという方法が提案されている。これらの特許はいずれも、光ファイバを含む導管やケーブルをチューブの中に液流を用いて挿入する方法については提案も示唆もしていない。
【0007】
光ファイバをチューブの中に挿入する方法は、チューブの中にポンプで押し込むか、チューブから引っ張りだすかのいずれかが考えられる。本明細書で全体が参照されている特許文献6は、坑道内での応用として液体を用いて光ファイバを導管に通し、同時に光ファイバと導管の間をシール(密閉)する方法を提案している。これらの方法を用いてコイル状チューブの中に光ファイバを挿入するためには、1)コイル状チューブの巻きをほどくこと、2)コイル状チューブを展開すること(坑道内または地面で)、及び3)光ファイバを展開することが必要である。単一の光ファイバをチューブの中に挿入するそのようなプロセスは、運用上の観点から見れば時間とコストがかかる。さらに、これらの方法はチューブの中に単一の光ファイバを挿入するための方法であって、チューブの中に複数の光ファイバ・ケーブルを挿入する場合は役に立たない。また、これらの方法は光ファイバの引き上げや再利用については充分な考慮が払われていない。
【0008】
しかし、複数の光ファイバの使用は、単一の光ファイバ・ケーブルを使用する場合に比べて多くの利点を提供できる。複数の光ファイバの利用は、光ファイバのいずれかが損傷を受けたり切断されたりした場合に運用上の冗長性を提供する。複数の光ファイバは単一光ファイバの場合より大きな情報伝送容量を提供し、異なったタイプの情報伝送を別々の光ファイバに分離できる柔軟性を可能とする。これらの利点は、アクセスが限られたり、環境条件が異常に厳しい場所でのダウンホール用途、あるいは双方向の(上方と下方)情報伝送が要求されたりする場合においては特に重要である。また複数光ファイバの利用により、個別の光ファイバを特殊な装置やセンサーのために使用することも可能となる。センサーによっては(Fabry-Perot装置のような)専用の光ファイバを必要とすることがあるが、このような場合には複数光ファイバの使用が有効である。またこのような構成は分離された光ファイバ・ケーブルが要求されるデジタル・テレメトリー(遠隔計測)用センサーでも有効である。たとえば、Fiber-Bragg装置を用いたセンサーはデジタル光テレメトリー情報を運ぶための光ファイバとは独立した光ファイバを要求する。
【0009】
議論を明確にするために、ここで用いられている「ダクト(duct)」という用語は、光ファイバ・ケーブルを収容する小口径のチューブまたは中空のキャリヤを意味するものとする。「光ファイバ(optical fiber)」は光エネルギーを伝達することができるファイバまたは導波路を意味するものとする。「光ファイバ・チューブ(fiber optic tube)」と「光ファイバ・テザー(fiber optic tether)」は、ダクト内に配置された単一光ファイバの組合せと複数の光ファイバとを区別するために使用される。「光ファイバ・ケーブル(fiber optic cable)」は1つまたは複数の光ファイバから構成されるケーブル、ワイヤ、電線、またはスリックラインを意味するものとする。「チューブ(tubular、またはtubing)」は、一般に任意の種類の円形中空容器であり、ここでは油田等の応用領域でケーシング、ドリルパイプ、メタルチューブ、コイル状チューブ、及びその他同様の用途で用いられる導管を指すものとする。
【0010】
光ファイバ・チューブの製造方法は様々な方法が知られている。例を2つ挙げれば、本明細書で全体が参照されている特許文献7で示されているレーザー溶接法と、特許文献8で示されているタングステン不活性ガス溶接(TIG)法がある。どちらの特許も液流により巻き取られたチューブ内にそのようなチューブを挿入する方法については提案も示唆もしていない。
【0011】
従って、チューブ内に配置された光ファイバを使用した装置、その製造方法、及びその使用方法に対する需要、特に坑道内での応用が可能な装置とその使用方法に対する需要が存在することは明らかであろう。
【0012】
【特許文献1】米国特許第5、573、225号
【特許文献2】米国特許第5、699、996号
【特許文献3】米国特許第6、690、866号
【特許文献4】米国特許第6、557、63号
【特許文献5】英国特許第2362909号
【特許文献6】米国特許広報2003/0172752号
【特許文献7】米国特許第4、852、790号
【特許文献8】米国特許第4、366、362号
【発明の開示】
【0013】
本発明は光ファイバを装着したチューブ、その製造法、及びその使い方に関するものである。広い意味で、本発明にはその内部に光ファイバ・チューブを配置したチューブも含まれる。多くの実施例において、光ファイバ・チューブは金属材料を含み、場合によっては複数の光ファイバを含むこともある。また多くの実施例において、光ファイバ・チューブは、光ファイバや内部のファイバが製造中に水素や水分に曝されないように不活性窒素環境の中で製造される。特にチューブはコイル状チューブが多い。他の実施例の場合、本発明はチューブの内部へ液体を押し込む手段、ポンプで注入された液体の流れがチューブの中をチューブに沿って推進することによってチューブ内部にポンプの圧力で注入された液体の中で光ファイバ・チューブを展開させる光ファイバ装着チューブの製造方法に関する。チューブがコイル状チューブである場合、光ファイバ・チューブはコイル状チューブの中で展開され、同時にチューブはリールに巻き取られるか、または坑道の内部に展開される。また別の実施例においては、本発明は、その中に少なくとも1本の光ファイバを配置した光ファイバ装着チューブを展開し、液流によってチューブ内に展開された光ファイバ・チューブ、及び光ファイバ・チューブに装着された少なくとも1本以上の光ファイバを用いて特定の属性情報を伝送する手段から構成される坑道内での通信方法を提供している。実施例によっては、少なくとも1つ以上の光ファイバが伝送情報をセンスする。この方法はまた坑道内に配置された少なくとも1本以上の光ファイバが属性情報をセンスし、このセンスされた情報は光ファイバ・チューブに装着された光ファイバを通して地面に伝送される。他の実施例では、坑道内に複数のセンサーが設置され、それらの各センサーはコイル状チューブ内に配置されている複数の光ファイバ内の別々のファイバを通して伝送される。多くの実施例において、コイル状チューブが巻き戻されて坑道から引き上げられた時に地面のコンピュータに光信号が容易に伝送されるように、光ファイバは耐圧隔壁を介して無線通信装置に付加されている。実施例によっては、本発明は坑道内に展開され、光ファイバ・チューブを介して信号の受信、センスされた情報を送信するために地面のコンピュータとの通信する装置を提供する。
【0014】
典型的な例として、すなわち坑道内での応用で有効な光ファイバ装着コイル状チューブの例として、特別な実施例と応用領域が提示されているが、本発明はこの実施例には限定されず、光ファイバ装着チューブの使用が望ましいいかなる応用にも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は光ファイバを装着したチューブ、その製造方法、及びその使用方法に関するものである。本発明の光ファイバ装着チューブは、チューブ内に展開された1つまたは複数の光ファイバ・チューブを含む。実施例はコイル状チューブのようにリールに巻かれたチューブに1本または複数の光ファイバ・チューブを挿入する方法を含む。別の実施例では、坑道内に展開されたコイル状チューブの中に1本または複数の光ファイバ・チューブを挿入する方法を提供している。
【0016】
本発明において、追加の構造や保護素子を使用することなく液流の中で光ファイバ・チューブをポンプで押し込むことによって、光ファイバ・チューブがチューブ内で展開されるという予期せぬ認識がある。ケーブルをポンプの力でチューブの中に押し込む方法は、一般にケーブルが本質的に圧縮強度を持っていないために実現性に欠けると考えられている。さらに、光ファイバ・ケーブルの専門家は、光ファイバ・チューブを坑道内で使用するためには保護構造を追加する必要があることを示唆している。従って、保護被覆を施すか、外装で包み込むことで追加レイヤ内にチューブを封入することなく、光ファイバ・チューブをチューブの中に直接挿入することを考えることは、非直観的ではあるが有効である。同様に、光ファイバ・チューブを液体ポンピングによって直接展開することを考えることも非直観的アイデアとして有効である。
【0017】
本発明の光ファイバ装着チューブの利点は、光ファイバ・チューブが圧縮に対してある程度の強度を確保しており、ケーブルまたは光ファイバ単独の場合よりも、コイル状チューブに似た機械的性質を持っていることである。従って、コイル状チューブの内部に光ファイバ・チューブを使用することにより、他の転送メカニズムで説明される「たるみ制御」の問題の多くを回避できる。さらに、光ファイバ・チューブの断面積はコイル状チューブの内部断面積に比べて比較的小さいため、光ファイバ・チューブが展開や巻き戻しの過程でコイル状チューブの機械的挙動に与える可能性がある物理的影響が制限される。光ファイバ・チューブの比較的小さな直径はその軽量さと併せて、ポンピング作用に対する耐性を強めることになるため、コイル状チューブ内で電線を挿入する時に一般的に発生する「鳥の巣(bird-nesting)」や束状化を回避できるという利点がある。さらに、本発明では「たるみ制御」問題を回避することができるため、光ファイバ装着チューブは電線を装着したコイル状チューブよりも迅速に坑道にチューブを展開したり、坑道からチューブを引き上げたりすることができるという利点もある。
【0018】
図1において、光ファイバ装着チューブ200は光ファイバ・チューブ211をその中に含んだチューブ105で示されている。図1では光ファイバ・チューブ211は、その中に光ファイバ201を含む収容ダクト203の形で示されている。他の実施例では、光ファイバ・ダクト203の中に複数の光ファイバ201が含まれるケースが考えられる。光ファイバ201と1つまたは複数の掘削装置またはセンサー209との間の物理的接続と光接続の両方のために、上面終端301と底面終端207が装備される。光ファイバはマルチ・モード、シングル・モードのどちらでも構わない。掘削装置またはセンサー209のタイプとしては、たとえば、ゲージ(計器)、バルブ(弁)、試料採取(サンプル)装置、温度センサー、圧力センサー、分布型温度センサー、分布型圧力センサー、流量制御装置、流量測定装置、油/水/ガス流量測定装置、スケール検知器、アクチュエータ、ロック(鍵)、解放機構、イクイプメント・センサー(たとえば振動センサー)、砂検知センサー、水検知センサー、データ・レコーダ、粘性センサー、密度センサー、沸点センサー、組成センサー、比抵抗アレイデバイス及びセンサー、音響デバイス及びセンサー、その他のテレメトリー装置、近赤外線センサー、ガンマ線検知器、H2S検知器、CO2検知器、ダウンホール・メモリ・ユニット、ダウンホール・コントローラ、穿孔装置、成形炸薬、点火ヘッド、ロケータ、及びその他の装置が含まれる。
【0019】
図2Aでは図1の光ファイバ装着チューブ200の断面図が示されている。光ファイバ・チューブ211は、チューブ105と、内部に光ファイバ201を収容したダクト203から構成されている。図2Bは本発明の別の実施例の断面図であり、光ファイバ装着チューブ200は、1つ以上の光ファイバチューブ211を有し、光ファイバチューブ211はチューブ105内に収容され、一つ以上の光ファイバ201が、少なくとも1つの光ファイバチューブ211においてダクト203内に収容されている。
【0020】
光ファイバ・チューブ211の内部には、光ファイバ201とダクト203の間にある空間を満たすために窒素ガスのような不活性ガスが充填される。ある実施例においては、局所的な座屈に対する光ファイバ・チューブの脆弱性を低減するために加圧液体が注入される場合がある。さらに実施例においては、製造中に水分や水素への露出を避け、油田での作業中に水素成分による光ファイバの暗化を最小限に抑えるために窒素のような不活性ガスで密閉環境を満たすようにレーザー溶接技術が使用される場合がある。空間を充填するために窒素ガスを使用する方法には、空間に緩衝材、ジェル、またはシーラー(密封材)を必要とする他のテクニックに比較して低コストで使い易いという利点がある。ある実施例においては、米国特許第4、852、790号に記述されているように、光ファイバ201の周囲に金属帯を巻きつけた後、レーザー溶接技術を用いてその金属帯で収容ダクト203を形成することも可能である。この方法は既知の従来技術で製造されたその他の光ファイバ・ケーブルに比べて、コスト及び重量が著しく低減された光ファイバ・ケーブル211の実現が可能である。光ファイバ・チューブ200の輸送中に光ファイバ201からの水素イオンの放出を維持するために、光ファイバ・チューブのどちらかの端部にパラジウムやタンタルを含む微量のジェルをオプションで挿入することもできる。
【0021】
本発明における光ファイバ・チューブ211内のダクト203の内部での使用に適した材料はチューブに剛性を与え、油田での作業時に遭遇する流体に対する耐性があり、掘削環境でしばしば見られる高温や高圧に耐えられるものでなければならない。通常、光ファイバ・チューブ211内のダクト203は金属材料で製造される。ある実施例では、ダクト203はInconelTM、ステンレス鋼、またはHasetlyTM等の金属材料が使用されている。本発明では、光ファイバ・チューブは任意の方法で製造されたものが使用可能であるが、レーザー溶接によって生成され、光ファイバに悪影響を与える高温領域はTIGのような他の方法で生成される高温領域よりも通常は小さく、溶接中に光ファイバに損傷を与える可能性が低いため、レーザー溶接された光ファイバ・チューブの使用が望ましい。
【0022】
光ファイバ・チューブの寸法は小さい(たとえば、米国カリフォルニア州のK-Tube社から市販されている製品の直径は0.5mmから3.5mmである)が、複数の光ファイバを収容するには十分な内部空間を持っている。そのような光ファイバ・チューブのサイズの小ささは、流体を収容するチューブの容量を著しく減らすことがなく、チューブの内部に展開されるべきその他のデバイスや機器に対する障害物を生成することがないため、本発明において特に有効である。
【0023】
実施例によっては、光ファイバ・チューブ211は0.071インチから0.125インチ(3.175mm)の外径を持ち、1つまたは複数の光ファイバ201を含むダクト203を内部に収容している。望ましい実施例の場合、標準的な光ファイバが使用され、ダクト203の厚みは0.020インチ(0.508mm)以下である。ここで引用された光ファイバ、保護チューブの直径、及び保護チューブの厚みは代表的な数値であるが、保護チューブの内径は光ファイバを密に封じ込めるために必要な数値以上であっても構わないのである。
【0024】
本発明のある実施例において、光ファイバ・チューブ211はダクト内部に複数の光ファイバを含む光ファイバ・チューブを含むケースも考えられる。用途によっては、特殊なダウンホール装置が独自の光ファイバを装着したり、装置のグループのそれぞれが光ファイバ・チューブの内部に独自に設計された光ファイバを装着したりする場合がある。その他の用途において、一連の装置が単一の光ファイバを用いる場合もある。
【0025】
図3には、掘削作業のための典型的な装置構成が示されている。この場合、本発明におけるチューブ105の利用のためにはコイル状チューブ15が適している。地上の制御装置として、支持構造体29上の注入システム20、リール・スタンド12上のコイル状チューブ巻取り機10、フラット、トレーラ、トラック、またはその他の装置が含まれる。チューブは注入ヘッド19を用いて坑井の中に展開され、または坑井から引き上げられる。さらに装置の中にはリール10上でコイル状チューブ15をガイドして均等に巻き取りが行われるようにするメカニズム13も含まれる。コイル状チューブ15は坑道内に縦方向にチューブを注入するためにチューブに曲げ半径を与えるチューブ・ガイド・アーチ18を通して供給される。チューブ・ガイド・アーチ18を通って供給されたチューブは、チューブをしっかりとつかみ、坑井の中に送り込むための注入ヘッド19に供給される。注入装置の下に設置されたストリッパ装置21は坑井内の圧力下で坑口装置内にチューブを供給する際に坑井内に充分な圧力を保持するためにチューブの周囲にダイナミック及びスタティックなシーリング(密閉)を維持する装置である。コイル状チューブは次に爆発予防(BOP: Blowout Preventor)装置23、T型流路分岐25、及び坑口マスターバルブまたはツリーバルブ27を通して坑井に注入される。コイル状チューブ・リール10に巻き取られていたコイル状チューブ15が掘削孔8に注入されたり、引き上げられたりする時にコイル状チューブリール10が回転する。
【0026】
光ファイバ・チューブ211をコイル状チューブ15内に挿入する方法は様々である。ある実施例の場合、リール10にホースを取り付け、そのホースの一方の端にYジョイントが取り付けられる。この構成において、光ファイバ・チューブ211がYジョイントの1つの足に導入され、他の足には液体が加圧注入される。液体の引っ張り力が光ファイバ211に働き、ホースをチューブに押し込んだり、リール10に巻き戻したりする働きを行う。テザーの外径が0.125インチ(3.175mm)である望ましい実施例の場合、1分あたり1〜5バレル(1秒あたり2.65〜13.25リッター)と小さなポンプ流量でも、コイル状チューブがリールに巻き取られている状態でもコイル状チューブの全長にわたってテザーを推進させるのに充分であることが知られている。
【0027】
本発明の実施方法及び装置においては、チューブ105内に光ファイバ・チューブ211を押し込むためにガスまたは水のような流体を使用することができる。通常は、光ファイバ・チューブ211は加圧流体内でストレスがかからない状態で挿入される。流体がチューブ内に加圧注入されると、光ファイバ・チューブは搬送用ピグ、プレースメント、または制限用アンカーのような外部装置を使用することなくチューブの内部で自動的に適切な位置に落ち着くことができる。特別な実施例の場合、コイル状チューブがリール上に巻き取られた状態のまま、流体が加圧注入され、光ファイバ・チューブがコイル状チューブの中に展開される。このような実施例は、光ファイバ・チューブを製造現場やその他の油田から離れた場所でコイル状チューブの内部に展開することができるため、兵站面での(資材供給面での)利点がある。このように、本発明の光ファイバ装着チューブは単一の装置として輸送及び現場での展開が容易であるため、コスト低減及び運用の単純化が可能である。
【0028】
本発明の光ファイバ装着チューブ200は、展開補助液流をコイル状チューブを通して地下の構造体に供給するような、一般的な掘削作業で使用することができる。本発明の利点の1つは光ファイバ・チューブ211がコイル状チューブの中に加圧注入される様々な坑井処理液への露出に耐性があること、特に本発明の光ファイバ・チューブはプロパントや砂による磨耗、及び酸のような腐食性液体への露出に耐えられることである。光ファイバ・チューブは、劣化に遭遇する機会を減らして寿命を延ばせるように、滑らかな外径を持った丸いチューブとして成形されることが望ましい。
【0029】
本発明の光ファイバ装着チューブは、掘削特性の決定や坑道からの情報の伝達を始めとした様々な坑道作業の実行のために有効である。掘削特性の決定の中には、この実施例のみにとどまらず、光ファイバを用いたセンシング、別のセンサーを用いたセンシング、掘削装置による位置測定、掘削装置による地下組成の確認等が含まれる。本発明の光ファイバ装着チューブは、電気-光コンバータと組み合わされ、坑道内部に配置され光ファイバ211を通じて地上装置とリンクされる光ファイバによる温度センサーや圧力センサーのようなセンサーを構成することも可能である。センスされた坑道の条件は光ファイバ・チューブ211を通して伝送される。電気的センサーによってセンスされたデータは、純デジタルまたは波長、強度または偏光変調を用いてアナログまたはデジタルの光信号に変換され、光ファイバ・チューブ211内の光ファイバに入力される。また、別の方法として、光ファイバ201はある属性を直接センスする方法もある。たとえば光ファイバ201が分布型温度センサーとして動作する場合や、光ファイバ201がFiber-Bragg格子を構成し、歪み、応力、伸び、圧力等を直接センスする場合である。
【0030】
センサーからの情報、または光ファイバ201でセンスされた属性情報は光ファイバ211を通して地上に伝達される。同様に、信号やコマンドも地上から光ファイバ201を通して坑道内のセンサーや装置に伝達される。本発明のある実施例においては、地上の通信手段として、本明細書で全体が参照されている米国特許10/926、522号で記述されているような無線テレメトリーも含まれる。さらに実施例では、リールが回転中でも複雑な光信号収集装置を用いることなく光信号が伝達されるように無線テレメトリー装置がリールに装着された構成をとることも可能である。さらに実施例では、リールが回転していない時に地上光ファイバ・ケーブルが装着できるように、リールに装着された無線装置が追加の光コネクタを装着する構成をとることも可能である。
【0031】
本明細書で記述された本発明の実施例は一部の例を示したのみであり、それらの変形や要素の追加によって、本明細書で開示された発明の本質から逸脱することなく機器の性能を高めることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による装置の実施例である。
【図2A】本発明の実施例の断面図である。
【図2B】本発明の他の実施例の断面図である。
【図3】コイル状チューブ動作にかかわる典型的な構成を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの内部に収容された光ファイバ・チューブを有する光ファイバ装着チューブ。
【請求項2】
前記光ファイバ・チューブが複数の光ファイバを有する請求項1記載のチューブ。
【請求項3】
前記光ファイバ・チューブが金属材料から成るダクトを含む請求項1記載のチューブ。
【請求項4】
前記チューブがコイル状チューブである請求項1記載のチューブ。
【請求項5】
前記コイル状チューブがリール上に巻き取られる請求項4記載のチューブ。
【請求項6】
前記コイル状チューブが坑道内に展開される請求項4記載のチューブ。
【請求項7】
前記光ファイバ・チューブが内部的に加圧される請求項1記載のチューブ。
【請求項8】
前記光ファイバ・チューブがさらに不活性ガスを収容する請求項1記載のチューブ。
【請求項9】
前記光ファイバ・チューブがさらにジェルを収容する請求項1記載のチューブ。
【請求項10】
液体をチューブ内に加圧注入し、チューブ内で加圧注入された液体の中に光ファイバを展開し、少なくとも1つ以上のファイバを有するチューブが配置され、加圧注入された流体の流れがチューブに沿って光ファイバ・チューブを推進する光ファイバ装着チューブの製造方法。
【請求項11】
前記チューブがコイル状チューブである請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
流体が前記コイル状チューブの内部に加圧注入され、一方で前記チューブが少なくとも部分的にリール上に巻き取られる請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
流体が前記コイル状チューブの内部に加圧注入され、一方で前記チューブが坑道内に展開される請求項11記載の製造方法。
【請求項14】
不活性ガス雰囲気の中で少なくとも1本以上の光ファイバが前記光ファイバ・チューブの中に配置される請求項10記載の製造方法。
【請求項15】
坑道内に光ファイバ装着チューブを展開し、前記チューブは少なくとも1本以上の光ファイバを内部に有する光ファイバ・チューブを含み、液体の流れを用いてチューブ内に光ファイバ・チューブを配置し、坑道内の属性を決定し、決定された属性を光ファイバ装着チューブ内に含まれる光ファイバのうち少なくとも1本を通して伝達する通信方法。
【請求項16】
属性が少なくとも1本以上の光ファイバによって決定される場合の請求項15記載の通信方法。
【請求項17】
坑道内に少なくとも1つ以上のセンサーを含み、このセンサーが属性を決定する請求項15記載の通信方法。
【請求項18】
決定された属性が坑道から地面へ伝達される請求項15記載の通信方法。
【請求項19】
坑道内部に装置を展開し、前記光ファイバ装着チューブ内にある光ファイバの少なくとも1本を通して信号を伝達する請求項15記載の通信方法。
【請求項20】
前記チューブがコイル状チューブであり、このチューブを坑道の中に展開する工程でリールからコイル状チューブをとる請求項15記載の通信方法。
【請求項21】
前記コイル状チューブを坑道から引き出す工程でリール上にコイル状チューブを巻き取る請求項20記載の通信方法。
【請求項22】
装置が前記チューブの上に乗って坑道内に運ばれる請求項21記載の通信方法。
【請求項23】
少なくとも1本以上の光ファイバを通して地面から信号を伝達する手段から成る請求項15記載の通信方法。
【請求項24】
無線通信を含む請求項15記載の通信方法。
【請求項25】
前記光ファイバ・チューブがリール上に巻き取られ、無線装置がリール上に装着された請求項24記載の通信方法。
【請求項26】
前記光ファイバ・チューブ内に1本以上の光ファイバが配置され、坑道内に複数のセンサーを展開し、それらのセンサーのうち少なくとも2つ以上のセンサーが属性を決定し、決定された各属性が光ファイバ・チューブ内の異なった光ファイバで伝達する請求項15記載の通信方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−534862(P2007−534862A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509053(P2007−509053)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051329
【国際公開番号】WO2005/103437
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(500177204)シュラムバーガー ホールディングス リミテッド (51)
【Fターム(参考)】