光ファイバ
【課題】照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを効率よく結合させて低損失で伝送させ、広い視野に照射することのできる、いわゆる低損失で高比屈折率差の光ファイバ及び光ファイババンドルを提供する。
【解決手段】本発明の光ファイバ10は、中空ガラス管4と、その内部に配置された、光の伝搬する横断面が円形状のガラスコア1及び該ガラスコア1の外周を覆うガラス薄層2を有する光ファイバ本体50から成る。中空ガラス管4は横断面が正方形の貫通孔5を有しており、光ファイバ本体50は、4個の接触部61〜64で中空ガラス管4の内周面と接するように該中空ガラス管4の貫通孔5内に配置されている。このような構成により、接触部61〜64以外の前記光ファイバ本体50と中空ガラス管4の間には、長手方向に延びる4つの空隙部3が形成される。
【解決手段】本発明の光ファイバ10は、中空ガラス管4と、その内部に配置された、光の伝搬する横断面が円形状のガラスコア1及び該ガラスコア1の外周を覆うガラス薄層2を有する光ファイバ本体50から成る。中空ガラス管4は横断面が正方形の貫通孔5を有しており、光ファイバ本体50は、4個の接触部61〜64で中空ガラス管4の内周面と接するように該中空ガラス管4の貫通孔5内に配置されている。このような構成により、接触部61〜64以外の前記光ファイバ本体50と中空ガラス管4の間には、長手方向に延びる4つの空隙部3が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用光源の光、ハイパワー光源の光(露光、光殺菌、蛍光観察、光触媒、分光光源、ガス分析、液晶封止、植物育成用LEDなどの光源の光)、樹脂硬化用UV光源の光、インク硬化用光源の光、歯科用樹脂硬化用光源の光などを効率よく結合させて低損失で伝搬させ、広い視野に照射することができる光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信の発展、普及に伴い開発された多くの光部品、光デバイス、光伝送方式などの光技術が光ファイバ通信以外の分野に色々と応用されるようになって来た。例えば照明用光源の光、ハイパワーの光、樹脂硬化用UV光、信号伝送用光、エキシマレーザの光、などを伝送させる光ファイバ及び光ファイバを束ねた光ファイババンドルが実用化されている。
【0003】
これらの用途に要求される光ファイバの特性は、光ファイバの入射端へ上記光を効率よく結合させること、光ファイバの入射端から出射端まで上記光をできる限り減衰させないで伝搬して出射端から明るく出射させることである。このような要求に対して、光ファイバの材料として、石英系ガラス材料、多成分系ガラス材料、プラスチック系材料を用いることが提案されている。
【0004】
その中でも光ファイバの出射端から照明光をできる限り明るく出射させる光ファイバとして、図12に示すような石英系ガラス材料で構成した光ファイバ20が製品化されている。この光ファイバ20は、光の減衰を少なくするためにコア21にSiO2ガラスを用い、その外周のクラッド22にF(フッ素)を添加したSiO2ガラスを用いて構成されている。また、図13に示すように、上記光ファイバ20を複数本束ねてバンドル構造に形成した光ファイババンドル201が製品化されている。上記光ファイバは特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-121662号公報
【特許文献2】特開2003-161849号公報
【特許文献3】特開2004-354660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを伝搬させるための石英系ガラス材料で構成した光ファイバには次のような課題が存在する。
(1)コアの屈折率nwとクラッドとの屈折率ncとの間の比屈折率差Δ《Δ=[(nw-nc)/nw]×100%》が0.2%程度と極めて小さいため開口角度が23°程度と小さくなり、上記光源の光を光ファイバ内に効率よく結合させて伝搬させることが出来ない。
(2)比屈折率差が小さいので出射端から放射される光の広がりが狭く、出射側を広い範囲にわたって照射することが難しい。
(3)光ファイバを曲げるとコア内の上記光がクラッドに漏れてしまい、光ファイバ内の光パワーの変動が生じたり、光ファイバの曲げによる損失が増加したりする。
(4)光ファイバのコアとクラッドがガラスからなる脆性材料で構成されているので、機械的曲げ強度が弱く、小さい曲率半径で自在に曲げることが難しい。
【0007】
本発明は前記した従来の問題点を解決するために成されたものであり、その目的は、照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを効率よく結合させて低損失で伝送させ、広い視野に照射することのできる、いわゆる低損失で高比屈折率差の光ファイバ及び光ファイババンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
中空ガラス管と、
前記中空ガラス管の内部に配置された横断面が円形状のガラスコアを有する光ファイバ本体と、
を有する光ファイバであって、
前記光ファイバ本体は、前記中空ガラス管の内周面に少なくとも2個の接触部で接し、該接触部以外の前記光ファイバ本体と前記中空ガラス管の間は、長手方向に延びる空隙部であることを特徴とする。
この場合、前記中空ガラス管の内部には1個の光ファイバ本体が配置されていてもよく、複数個の光ファイバ本体が配置されていてもよい。
【0009】
上記光ファイバにおいては、前記中空ガラス管が、内部に横断面が四角形状又は三角形状の貫通孔や、横断面が楕円状の貫通孔を有しており、前記貫通孔に前記光ファイバ本体が配置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記中空ガラス管の横断面の外形が円形状又は四角形状であることもよい構成である。
【0011】
さらに、前記中空ガラス管は内部に複数個の貫通孔を有し、各貫通孔内に前記光ファイバ本体が配置されているとよい。この場合、貫通孔内には1個の光ファイバ本体が配置されていてもよく、複数の光ファイバ本体が配置されていてもよい。
上記光ファイバにおいては、前記ガラスコアをSiO2ガラスから構成することができる。
【0012】
また、上記光ファイバにおいては、前記光ファイバ本体が、前記ガラスコアの外周に形成された前記ガラスコアよりも屈折率の低いガラスから成る薄層を有し、該薄層が前記中空ガラス管の内周面に接するように構成することが好ましい。
前記薄層は、FかB2O3を添加したSiO2ガラスから構成するとよい。
【0013】
前記中空ガラス管は、SiO2ガラスか、FかB2O3を添加したSiO2ガラスから構成するとよい。
また、前記中空ガラス管は、補強部材が被覆されていることが好ましい。
【0014】
本発明の光ファイババンドルは、上記した光ファイバを複数本束ねてバンドル状に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は下記に示すような効果を有している。
まず、本発明に係る光ファイバでは、断面円形状のガラスコアを有する光ファイバ本体を、中空ガラス管の内周面に少なくとも2個の接触部で接するように該中空ガラス管の内部に配置し、前記接触部以外の中空ガラス管と光ファイバ本体との間は長手方向に延びる空隙部となるようにした。このため、光が伝搬するガラスコアの外周の大部分が空隙部(クラッド層)となり、例えば、SiO2ガラスからガラスコアを形成し、空隙部が空気層である場合は、該ガラスコアと空隙部との比屈折率差が約30%になる。この値は、従来の光ファイバよりも約1桁大きい値である。
【0016】
また、本発明の別の態様に係る光ファイバでは、断面円形状のガラスコアと、その外周に形成された該ガラスコアよりも屈折率の低いガラスから成る薄層とから光ファイバ本体を構成し、この光ファイバ本体を、中空ガラス管の内周面に少なくとも2個の接触部で接するように該中空ガラス管の内部に配置した。前記接触部以外の中空ガラス管と光ファイバ本体との間は長手方向に延びる空隙部となるようにした。このため、光が伝搬するガラスコアが屈折率の低い薄層(第1のクラッド層)で囲まれ、さらに、薄層の外周の大部分が空隙部(第2のクラッド層)となる。
【0017】
別の態様に係る光ファイバでは、ガラスコアが直接的に接触するのは薄層であるため、例えばガラスコアをSiO2ガラスから形成し、薄層をFが添加されたSiO2ガラスから形成した場合のガラスコアと薄層との間の比屈折率差は従来の光ファイバと同じになる。しかし、上述したように、クラッド層が薄層と空隙部から構成され、しかもクラッド層の大部分を空隙部が占有する(つまり、空隙部がクラッド層の支配的構成となる。)ことから、ガラスコアとクラッド層の間の比屈折率差は、SiO2ガラスの屈折率と空隙部(空気層)の屈折率から近似的に求めることができる。このため、別の態様の光ファイバにおいてもガラスコアとクラッド層の間の比屈折率差は約30%となり、従来の光ファイバよりも約1桁大きい値となる。
【0018】
このように本発明の光ファイバは、ガラスコアとクラッド層の間の比屈折率差が大きいため、光ファイバの開口角度が180°に近い値となるので、照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを極めて効率よく結合させて光ファイバ内を伝搬させることが可能となる。また、出射端から広い拡がりをもって光を出射させることができるため、光ファイバの出射端側を広く照らすことが可能となる。
【0019】
なお、中空ガラス管の内周面と光ファイバ本体との接触部は線接触に近いため、空隙部に比して無視できるほど小さい。
【0020】
本発明の光ファイバは、その内部に少なくとも2つの空隙部が設けられているので、機械的な曲げに強い。また、大きな比屈折率差を有するので、曲げたときにおける光ファイバ内を伝搬している光のクラッド層への漏洩やガラスコア内の光強度の変動が従来の光ファイバに比して圧倒的に少ない。さらに、従来の光ファイバは、ガラスコアとクラッド層の熱膨張係数の差のため、温度変動により応力が発生し、この応力に依存して光ファイバ内の光パワー変動が生じるが、本発明の光ファイバでは光ファイバ本体と中空ガラス管との間の空隙部で上記応力を緩和させることができる。このため、光ファイバ内の光パワー変動を低減することが可能となる。
【0021】
中空ガラス管内部の貫通孔の横断面を四角形状又は三角形状とすると、光ファイバ本体は複数点(2〜4点)で中空ガラス管の内周面に線接触し、大部分が空隙部(第二のクラッド層)で囲まれた状態で前記中空ガラス管内に配置される。このため、ガラスコアとクラッド層との比屈折率差が極めて大きくなり、光ファイバの開口角度を180°に近い値とすることができる。従って、照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを更に効率よく結合させて光ファイバ内を伝搬させることが可能となる。また、空隙部が大きくなることにより、曲げに対する機械的強度をさらに大きくすることができ、曲げによる光損失の漏洩や光強度変動を一層低減することができる。
【0022】
中空ガラス管の横断面の外形を円形状又は四角形状にすると、光ファイバが対称性を有する形状となるため、製造し易く、且つ取り扱い易くすることができる。また、曲げに対する機械的強度が強くなる。さらに、光ファイバを任意の方向に曲げてもガラスコア内を伝搬する光のクラッド層への漏洩やガラスコア内の光強度の変動を少なくすることができる。
【0023】
中空ガラス管の内部に複数個の貫通孔を設け、各貫通孔の内部に光ファイバ本体を配置した構造にすることにより、照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを複数のガラスコア内に大量に閉じ込めて光ファイバ内を伝搬させることが可能となる。すなわち、高強度の光パワーが伝搬可能となる。
【0024】
また、上述の光ファイバを複数本束ねてバンドル状に構成して光ファイババンドルとすることにより、この光ファイババンドル内にさらに高強度の光パワーを結合させて光伝搬させることが可能となる。
【0025】
本発明においては、ガラスコアをSiO2ガラスとすることにより、波長のより短い紫外域波長帯の光源の光から近赤外領域波長帯の光源の光を低損失で伝搬させることができる。これにより、本発明の光ファイバ或いは光ファイババンドルを種々の用途、例えば紫外伝送用、照明用、樹脂硬化用UV伝送用、蛍光分析用、医療用レーザメス、エキシマレーザ用ガイド、分光分析用ガイド、信号伝送用、ソフトレーザガイド、ハイパワー光用ガイド、植物育成用LEDの光伝送用、半導体の露光装置用、光殺菌用、光触媒用、液晶封止用、ガス分析用などに適用することが可能となる。
【0026】
また、中空ガラス管内部の貫通孔の横断面を楕円状にすると、接触部以外の光ファイバ本体と中空ガラス管の間に設けられる空隙部を広く取ることができるので、より機械的な曲げに強い光ファイバを実現することが可能となる。
【0027】
ガラスコアをSiO2ガラスから形成し、薄層をFかB2O3を添加したSiO2ガラスから形成することにより、薄層の屈折率をガラスコアの屈折率よりも0.2%程度低くすることができる。これによりガラスコア内に光を閉じ込め、接触部以外のガラスコアと中空ガラス管との間に設けられた空隙部で更にガラスコアへの光の閉じ込めを強くすることができる。
【0028】
さらに、ガラスコアをSiO2ガラスから形成すると共に、薄層をFかB2O3を添加したSiO2ガラスから形成し、中空ガラス管をSiO2ガラス、或いはFかB2O3を添加したSiO2ガラスから形成すると、光ファイバの全ての材料をSiO2系ガラスで構成することができる。従って、光ファイバを製造する上で、軟化温度、熱膨張係数のミスマッチングによる構造の変形、応力の発生などを緩和させることができる。
【0029】
中空ガラス管の外周を補強部材で被覆すると、光ファイバの機械的な曲げに対する強度をより一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図2】本発明の第2実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図3】本発明の第3実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図4】本発明の第4実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図5】本発明の第5実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図6】本発明の第6実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図7】本発明の第7実施例に係る光ファイバの横断面図。
【図8】本発明の第8実施例に係る光ファイバの横断面図。
【図9】本発明の第9実施例に係る光ファイババンドルの横断面図。
【図10】本発明の第10実施例に係る光ファイババンドルの横断面図。
【図11】本発明の第11実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図12】従来の光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図13】従来の光ファイバを束ねて構成した光ファイババンドルを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0032】
図1に本発明の光ファイバの第1実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この光ファイバ10は、横断面が正方形状である貫通孔5を有する中空ガラス管4と、前記貫通孔5に配置された光ファイバ本体50とから構成されている。光ファイバ本体50は、横断面が円形状のガラスコア1の外周を該ガラスコア1よりも低屈折率のガラス薄層2(第1のクラッド層)で保護された構造を有しており、その薄層2の外周が4箇所の接触部(61,62,63,64)で中空ガラス管4の内周面と接触している。接触部61〜64は中空ガラス管4の一端部から他端部まで線状に延びており、このような構成により、光ファイバ本体50の外周は、中空ガラス管4の内周面と線接触する接触部61〜64を除いて空隙部3(第2のクラッド層)で覆われた構造となっている。
【0033】
なお、この中空ガラス管4は横断面の外形が円形状である。また、この実施例ではガラスコア1にSiO2ガラスを用い、ガラス薄層2にFを添加したSiO2ガラスを用いた。そして中空ガラス管4にはSiO2ガラスを用いた。
【0034】
ガラスコア1を取り囲むクラッド層として作用するのは、ガラスコア1の外周に形成された低屈折率のガラス薄層2と、上記空隙部3である。本実施例に係る光ファイバ10のクラッド層は、大部分を第2のクラッド層である空隙部3(つまり、空気層)が占めるため、SiO2ガラスから成るガラスコア1とクラッド層との間の比屈折率差Δは約30%になり、従来の光ファイバの比屈折率差Δより約一桁大きい値となる。このため、光ファイバの開口角度が180°に近い値となり、光ファイバの一方の入射端から入射する光を非常に効率よく結合させてガラスコア1内に強く閉じ込めて伝搬させることができる。
【0035】
また本実施例の光ファイバ10は機械的な曲げに強い。さらに本実施例の光ファイバ10を曲げても光ファイバ10内を伝搬している光のクラッド層への漏洩やガラスコア1内の光強度の変動が従来の光ファイバに比して圧倒的に少ない。
【0036】
従来の光ファイバは、ガラスコア1とクラッド層との熱膨張係数の差のため、温度変動により応力が発生し、この応力に依存する光ファイバ内の光パワー変動が生じるが、本実施例の光ファイバ10ではガラスコア1と中空ガラス管4との間の空隙部3で上記応力を緩和させることができるので、光ファイバ10内の光パワー変動を低減することができる。
【0037】
本実施例ではガラスコア1にSiO2ガラスを用い、ガラス薄層2にFを添加したSiO2ガラスを用いた。そして中空ガラス管4にはSiO2ガラスを用いたため、比屈折率差Δが極めて大きなマルチモード用の光ファイバとなる。ガラスコア1の直径は10μmから150μmの範囲が好ましいが、200μm程度までは許容できる範囲である。ガラス薄層2の厚みは、ガラスコア1を光学的に保護することが狙いであるので、2μmから20μmの範囲であれば十分である。中空ガラス管4の直径は100μmから300μmの範囲が実用的な曲げに耐えるので好ましい。ただし、それよりも大きくても実際の使用に際してはその外周に高分子材料が被覆されて曲げ易くなるので、使用することができる。ガラス薄層2にはB2O3を添加したSiO2ガラスを用いてもよい。中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面は正方形状の他に、長方形状でもよい。この場合にはガラスコア1が上記長方形状の空間内に2点で接するように配置される。
【0038】
なお、中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面を正方形状に加工する方法として、SiO2ガラスロッドの中心部を研削するという方法を用いることができる。また、それ以外の方法として、ゾルゲル法を用いて横断面の内側が正方形状で、外形が円形状の金属の型内にガラス原料の液体を流し込み、乾燥後に型から取り出して加熱処理するという方法を用いることができる。
【0039】
ガラスコア1にSiO2ガラスを用いたのは、紫外線領域から近赤外線領域まで低損失で伝搬させることができる光ファイバを実現するためである。上記SiO2ガラス以外に、屈折率制御用の添加物(GeO2、 P2O5、TiO2、Nなど)を含んだSiO2ガラスや、多成分系のガラスなどを用いてもよい。
【0040】
中空ガラス管4は、ガラスコア1の材質に近いものが熱膨張係数、軟化温度のミスマッチングを少なくする上で好ましい。例えば、SiO2ガラス以外にFやBを添加したSiO2ガラスを用いることもできる。またSiO2ガラスの内面にFやBを添加したSiO2ガラス層を形成しておいてもよい。また屈折率制御用の添加物(B2O3、GeO2、 P2O5、TiO2など)を含んだSiO2ガラス、あるいは多成分系のガラスを用いてもよい。
【0041】
上記光ファイバ10の具体的な作製方法について述べる。まずSiO2ガラスロッドの中心部に横断面が正方形状である貫通孔が形成されるように研削加工し、さらに該SiO2ガラスロッドの外形横断面が円形状となるように研削加工した。次に新たなSiO2ガラスロッドを用意し、外形横断面が円形状となるように研削加工し、その外周に気相化学反応を利用してFを添加したSiO2ガラス層を形成した。そしてこのFを添加したSiO2ガラス層で覆われたSiO2ガラスロッドを上記貫通孔が形成されたSiO2ガラスロッド内の貫通孔内に挿入して光ファイバ母材を作製した。この光ファイバ母材を光ファイバ線引き装置の高温(約2000℃)の線引き用電気炉内に一定速度で挿入しながらその先端部を延伸して巻き取りドラムに所望速度で巻き取りながら光ファイバ10を作製した。
【0042】
次に、本実施例の光ファイバ10の試作例について述べる。SiO2ガラスから成るガラスコア1の直径を50μm、Fを添加したSiO2ガラス薄層2(屈折率1.442)の厚みを10μm、SiO2ガラスから成る中空ガラス管4の直径を150μmの光ファイバを試作した。この試作例に、波長248nmのエキシマレーザ光を光ファイバ10内に80%近い高結合効率(従来の光ファイバでは50%程度の結合効率)で結合させて光損失を測定した。その結果、光損失は72dB/kmであり、低損失特性であった。また波長1.3μmの半導体レーザ光を用いて損失を測定した結果は、0.8dB/kmであった。
【0043】
上記試作例の光ファイバ10の許容曲げ半径は10mm程度であることがわかった。この値は従来の光ファイバの半分程度であった。
【0044】
なお、上記実施例において、中空ガラス管4内の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層を形成しておいてもよい。
【実施例2】
【0045】
図2に本発明の光ファイバの第2実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この光ファイバ10は、図1の実施例とほぼ同様の構成であるが、異なるところは、横断面の外形が円形状の中空ガラス管4の内側に横断面が長方形の貫通孔5が設けられており、光ファイバ本体50が上記貫通孔5内に2個の接触部61,63で接するように配置されているという点である。
【0046】
図1の実施例と同様に、ガラスコア1に対して第1のクラッド層として作用するのは、ガラスコア1の外周に形成された低屈折率のガラス薄層2であり、空隙部3が第2のクラッド層となる。この第2のクラッド層がクラッド層の支配的構成となって、この光ファイバ10の一方の入射端から入射した光をガラスコア1内に強く閉じ込めて伝搬する。本実施例は、図1の実施例に比して空隙部3の断面積が広く、低屈折率のガラス薄層2の外周が上記横断面長方形状の貫通孔5内に4点ではなく2点(接触部61,63)で接するので、この光ファイバ10の一方の入射端から入射した光をガラスコア1内により強く閉じ込めて伝搬することができる。
この実施例においても中空ガラス管4内の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層を形成しておいてもよい。
【実施例3】
【0047】
図3に本発明の光ファイバの第3実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この光ファイバ10は、図1の実施例とほぼ同様の構成であるが、中空ガラス管4の横断面の外形が正方形状である点が異なる。この中空ガラス管4はSiO2ガラスロッドを研削加工により横断面の外形が四角形状となるようにし、その内部に横断面が正方形状である貫通孔5を研削した。
【0048】
なお、本実施例においては、中空ガラス管4の横断面の外形は正方形の四隅が丸まった構造でもよい。これは光ファイバ母材を高温(約2000℃)の線引き用電気炉内に一定速度で挿入しながらその先端部を延伸して光ファイバにする際に、横断面の外形が正方形状の中空ガラス管4の四隅が溶融延伸されて丸くなるからである。
また、中空ガラス管4の横断面の外形は正方形に限らず長方形状でもよい。この場合も中空ガラス管4の外形の四隅が丸まった構造であってもよい。
また中空ガラス管4内の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層が形成されていてもよい。
【実施例4】
【0049】
図4に本発明の光ファイバの第4実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この実施例の光ファイバ10は、第3実施例とほぼ同様の構成であるが、中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面が長方形に構成されており、その貫通孔5内に低屈折率のガラス薄層2で円形状の高屈折率からなるガラスコア1を保護してなる光ファイバ本体50が2個の接触部61,63で接するように配置されている点が異なる。
【0050】
この実施例においても中空ガラス管4の横断面の外形は正方形以外に長方形でもよく、更に四隅が丸まった構造であってもよい。また、中空ガラス管4内の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層が形成されていてもよい。
【実施例5】
【0051】
図5に本発明の光ファイバの第5実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この実施例の光ファイバ10は、横断面円形状の中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面が楕円形状に構成されており、その楕円形状の貫通孔5内に低屈折率のガラス薄層2で保護された円形状の高屈折率からなるガラスコア1が2個の接触部61,63で接するように配置された構成である。この構成も空隙部3の断面積を大きくできるという特徴がある。上記中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面を楕円形状に加工するには研削加工を行うとよい。また、中空ガラス管4の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層が形成されていてもよい。
【実施例6】
【0052】
図6に本発明の光ファイバの第6実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この実施例の光ファイバ10は、中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面が三角形状(あるいは3つの隅が丸まった略三角形状)に構成されており、その貫通孔5内に光ファイバ本体50が3点の接触部(61,62,63)で接するように配置されている点が第1実施例と異なる。なお、本実施例においても、中空ガラス管4内の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層が形成されていてもよい。
【実施例7】
【0053】
図7に本発明の光ファイバの第7実施例を示す。この図は第7実施例に係る光ファイバ10の横断面の概略図を示したものである。第7実施例に係る光ファイバ10は、ガラス管7の中に、横断面が正方形状の5個の貫通孔51〜55を形成し、これら貫通孔51〜55内にそれぞれ1個の光ファイバ本体501〜505を配置した構成を有している。前記光ファイバ本体501〜505は、低屈折率のガラス薄層2で保護された横断面が円形状の高屈折率のガラスコア1から成る。
このように、本実施例の光ファイバ10は光の伝搬するガラスコア1を5つ有するため、光ファイバを複数本束ねて成る光ファイババンドルと同等の機能を有する。
【0054】
この実施例ではガラス管7には直径が250μmのSiO2ガラスを用い、光を伝搬するガラスコア1には直径が50μmのSiO2ガラスを用い、それらの外周のガラス薄層2(厚みは5μm)にはFを添加したSiO2ガラス(波長0.633μmでの屈折率1.443)を用いた。貫通孔51〜55は横断面がそれぞれ60μm角の正方形になるように形成した。
【0055】
この光ファイバ10の製造方法について述べる。まずSiO2ガラスからなるガラスロッドを用意し、このガラスロッド内に横断面が正方形状である5個の貫通孔51〜55を、研削加工で形成して中空ガラス管4を作製した。もう一方で新たにSiO2ガラスからなるガラスロッドを5本用意し、横断面の外径が円形となるように研削加工した上で、これらの外周に気相化学反応を利用してFを添加したSiO2ガラス層を形成した。これらのFを添加したSiO2ガラス層で覆われたSiO2ガラスからなるガラスロッドを上記中空ガラス管4のそれぞれの貫通孔51〜55内に挿入して光ファイバ母材を作製した。そして、この光ファイバ母材を高温(約2000℃)の線引き用電気炉内に一定速度で挿入しながらその先端部を延伸して光ファイバ10を作製した。なお、ガラス管7にはSiO2ガラス以外にFやBを添加したSiO2ガラスを用いてもよい。
【実施例8】
【0056】
図8に本発明の光ファイバの第8実施例を示す。この図は第8実施例に係る光ファイバの横断面の概略図を示したものである。この実施例の光ファイバ10は、第7実施例とほぼ同様の構成であるが、異なるところは、ガラス管7の中に、9個の貫通孔51〜59が図8に示すごとく形成されている点である。各貫通孔51〜59にはそれぞれ1個の光ファイバ本体501〜509が配置されている。このように貫通孔の数が多ければより高出力のパワーの光伝送を実現することができる。
なお、上記貫通孔の数は5個や9個に限られず6個や7個でもよく、これより少なくても多くてもよい。
【実施例9】
【0057】
図9に本発明の第9実施例に係る光ファイババンドルを示す。この図は第9実施例に係る光ファイババンドル100の横断面の概略図を示したものである。この光ファイババンドル100は、図1に示した光ファイバ(図9では、符号101〜107を付している。)を7本束ね、高分子材料から成る被覆部材8で覆った、いわゆる高密度光ファイババンドル構造を有している。被覆部材8は、例えば一次被覆材料としてのシリコン樹脂,UV硬化樹脂などと、その上を覆う二次被覆材料としてのナイロンとから構成することができる。なお、光ファイバの本数は7本よりも少なくてもよく、多くてもよい。
【実施例10】
【0058】
図10に本発明の第10実施例に係る光ファイババンドルを示す。この図は光ファイババンドルの横断面の概略図を示したものである。第10実施例に係る光ファイババンドル100は、第9実施例の高密度光ファイババンドルの外周を補強部材9で被覆したものである。補強部材9は高分子材料、金属材料などで構成することができる。
【実施例11】
【0059】
図11に本発明の第11実施例に係る光ファイバを示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この光ファイバ10は、中空ガラス管4内に横断面が長方形状の貫通孔5を設け、その貫通孔5内に2個の光ファイバ本体50を空隙部3を介して並べて設けた構造を有している。この光ファイバ10は横幅の広い領域に光を照射するのに適している。
【0060】
なお、本発明は上記実施例に限定されない。
ガラスコアの外周には薄層を設けなくても良い。この構成では、光ファイバ本体がガラスコアのみで構成されることになり、該ガラスコアの外周が2個以上の接触部で中空ガラス管の内周面に接する。
【0061】
第1〜第9実施例及び第11実施例の光ファイバの外周には光ファイバの保護用の高分子重合体材料や金属材料などから成る補強部材が被覆されていてもよい。
第1〜第8実施例及び第11実施例の光ファイバ、第9及び第10実施例の光ファイババンドルの空隙部3内には不活性ガスが含まれるようにし、光ファイバの両端を封止するようにしてもよい。
【0062】
ガラスコア1内の屈折率分布は平坦分布や、中心部から径方向に低くなる勾配分布(例えばグレーデッド型屈折率分布)、階段状の分布を持っていてもよい。
第7及び第8実施例の光ファイバにおいて、ガラス管7の貫通孔に配置する光ファイバ本体50は、図1の構造以外に図2から図6の構造でもよい。
第2実施例及び第4実施例は、薄層2で覆われたガラスコア1から成る光ファイバ本体50を中空ガラス管4内の貫通孔5内に1個だけ配置した例であるが、第11実施例のように空隙部3を介して複数個並べて配置してもよい。このように光ファイバ本体50を複数設けると、横幅の広い領域に光を照射することができる。第1〜第4、第7〜第11実施例の貫通孔5の横断面の4つの角は直角である必要は無く、丸まっていてもよい。
第6実施例の中空ガラス管4内の三角形の貫通孔5の3つの角も丸まっていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…ガラスコア
2…ガラス薄層
3…空隙部
4…中空ガラス管
5、51〜59…貫通孔
61〜64…接触部
7…ガラス管
8…補強部材
10、20…光ファイバ
21…コア
22…クラッド
50、501〜509…光ファイバ本体
100、101〜107、201…光ファイババンドル
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用光源の光、ハイパワー光源の光(露光、光殺菌、蛍光観察、光触媒、分光光源、ガス分析、液晶封止、植物育成用LEDなどの光源の光)、樹脂硬化用UV光源の光、インク硬化用光源の光、歯科用樹脂硬化用光源の光などを効率よく結合させて低損失で伝搬させ、広い視野に照射することができる光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信の発展、普及に伴い開発された多くの光部品、光デバイス、光伝送方式などの光技術が光ファイバ通信以外の分野に色々と応用されるようになって来た。例えば照明用光源の光、ハイパワーの光、樹脂硬化用UV光、信号伝送用光、エキシマレーザの光、などを伝送させる光ファイバ及び光ファイバを束ねた光ファイババンドルが実用化されている。
【0003】
これらの用途に要求される光ファイバの特性は、光ファイバの入射端へ上記光を効率よく結合させること、光ファイバの入射端から出射端まで上記光をできる限り減衰させないで伝搬して出射端から明るく出射させることである。このような要求に対して、光ファイバの材料として、石英系ガラス材料、多成分系ガラス材料、プラスチック系材料を用いることが提案されている。
【0004】
その中でも光ファイバの出射端から照明光をできる限り明るく出射させる光ファイバとして、図12に示すような石英系ガラス材料で構成した光ファイバ20が製品化されている。この光ファイバ20は、光の減衰を少なくするためにコア21にSiO2ガラスを用い、その外周のクラッド22にF(フッ素)を添加したSiO2ガラスを用いて構成されている。また、図13に示すように、上記光ファイバ20を複数本束ねてバンドル構造に形成した光ファイババンドル201が製品化されている。上記光ファイバは特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-121662号公報
【特許文献2】特開2003-161849号公報
【特許文献3】特開2004-354660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを伝搬させるための石英系ガラス材料で構成した光ファイバには次のような課題が存在する。
(1)コアの屈折率nwとクラッドとの屈折率ncとの間の比屈折率差Δ《Δ=[(nw-nc)/nw]×100%》が0.2%程度と極めて小さいため開口角度が23°程度と小さくなり、上記光源の光を光ファイバ内に効率よく結合させて伝搬させることが出来ない。
(2)比屈折率差が小さいので出射端から放射される光の広がりが狭く、出射側を広い範囲にわたって照射することが難しい。
(3)光ファイバを曲げるとコア内の上記光がクラッドに漏れてしまい、光ファイバ内の光パワーの変動が生じたり、光ファイバの曲げによる損失が増加したりする。
(4)光ファイバのコアとクラッドがガラスからなる脆性材料で構成されているので、機械的曲げ強度が弱く、小さい曲率半径で自在に曲げることが難しい。
【0007】
本発明は前記した従来の問題点を解決するために成されたものであり、その目的は、照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを効率よく結合させて低損失で伝送させ、広い視野に照射することのできる、いわゆる低損失で高比屈折率差の光ファイバ及び光ファイババンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
中空ガラス管と、
前記中空ガラス管の内部に配置された横断面が円形状のガラスコアを有する光ファイバ本体と、
を有する光ファイバであって、
前記光ファイバ本体は、前記中空ガラス管の内周面に少なくとも2個の接触部で接し、該接触部以外の前記光ファイバ本体と前記中空ガラス管の間は、長手方向に延びる空隙部であることを特徴とする。
この場合、前記中空ガラス管の内部には1個の光ファイバ本体が配置されていてもよく、複数個の光ファイバ本体が配置されていてもよい。
【0009】
上記光ファイバにおいては、前記中空ガラス管が、内部に横断面が四角形状又は三角形状の貫通孔や、横断面が楕円状の貫通孔を有しており、前記貫通孔に前記光ファイバ本体が配置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記中空ガラス管の横断面の外形が円形状又は四角形状であることもよい構成である。
【0011】
さらに、前記中空ガラス管は内部に複数個の貫通孔を有し、各貫通孔内に前記光ファイバ本体が配置されているとよい。この場合、貫通孔内には1個の光ファイバ本体が配置されていてもよく、複数の光ファイバ本体が配置されていてもよい。
上記光ファイバにおいては、前記ガラスコアをSiO2ガラスから構成することができる。
【0012】
また、上記光ファイバにおいては、前記光ファイバ本体が、前記ガラスコアの外周に形成された前記ガラスコアよりも屈折率の低いガラスから成る薄層を有し、該薄層が前記中空ガラス管の内周面に接するように構成することが好ましい。
前記薄層は、FかB2O3を添加したSiO2ガラスから構成するとよい。
【0013】
前記中空ガラス管は、SiO2ガラスか、FかB2O3を添加したSiO2ガラスから構成するとよい。
また、前記中空ガラス管は、補強部材が被覆されていることが好ましい。
【0014】
本発明の光ファイババンドルは、上記した光ファイバを複数本束ねてバンドル状に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は下記に示すような効果を有している。
まず、本発明に係る光ファイバでは、断面円形状のガラスコアを有する光ファイバ本体を、中空ガラス管の内周面に少なくとも2個の接触部で接するように該中空ガラス管の内部に配置し、前記接触部以外の中空ガラス管と光ファイバ本体との間は長手方向に延びる空隙部となるようにした。このため、光が伝搬するガラスコアの外周の大部分が空隙部(クラッド層)となり、例えば、SiO2ガラスからガラスコアを形成し、空隙部が空気層である場合は、該ガラスコアと空隙部との比屈折率差が約30%になる。この値は、従来の光ファイバよりも約1桁大きい値である。
【0016】
また、本発明の別の態様に係る光ファイバでは、断面円形状のガラスコアと、その外周に形成された該ガラスコアよりも屈折率の低いガラスから成る薄層とから光ファイバ本体を構成し、この光ファイバ本体を、中空ガラス管の内周面に少なくとも2個の接触部で接するように該中空ガラス管の内部に配置した。前記接触部以外の中空ガラス管と光ファイバ本体との間は長手方向に延びる空隙部となるようにした。このため、光が伝搬するガラスコアが屈折率の低い薄層(第1のクラッド層)で囲まれ、さらに、薄層の外周の大部分が空隙部(第2のクラッド層)となる。
【0017】
別の態様に係る光ファイバでは、ガラスコアが直接的に接触するのは薄層であるため、例えばガラスコアをSiO2ガラスから形成し、薄層をFが添加されたSiO2ガラスから形成した場合のガラスコアと薄層との間の比屈折率差は従来の光ファイバと同じになる。しかし、上述したように、クラッド層が薄層と空隙部から構成され、しかもクラッド層の大部分を空隙部が占有する(つまり、空隙部がクラッド層の支配的構成となる。)ことから、ガラスコアとクラッド層の間の比屈折率差は、SiO2ガラスの屈折率と空隙部(空気層)の屈折率から近似的に求めることができる。このため、別の態様の光ファイバにおいてもガラスコアとクラッド層の間の比屈折率差は約30%となり、従来の光ファイバよりも約1桁大きい値となる。
【0018】
このように本発明の光ファイバは、ガラスコアとクラッド層の間の比屈折率差が大きいため、光ファイバの開口角度が180°に近い値となるので、照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを極めて効率よく結合させて光ファイバ内を伝搬させることが可能となる。また、出射端から広い拡がりをもって光を出射させることができるため、光ファイバの出射端側を広く照らすことが可能となる。
【0019】
なお、中空ガラス管の内周面と光ファイバ本体との接触部は線接触に近いため、空隙部に比して無視できるほど小さい。
【0020】
本発明の光ファイバは、その内部に少なくとも2つの空隙部が設けられているので、機械的な曲げに強い。また、大きな比屈折率差を有するので、曲げたときにおける光ファイバ内を伝搬している光のクラッド層への漏洩やガラスコア内の光強度の変動が従来の光ファイバに比して圧倒的に少ない。さらに、従来の光ファイバは、ガラスコアとクラッド層の熱膨張係数の差のため、温度変動により応力が発生し、この応力に依存して光ファイバ内の光パワー変動が生じるが、本発明の光ファイバでは光ファイバ本体と中空ガラス管との間の空隙部で上記応力を緩和させることができる。このため、光ファイバ内の光パワー変動を低減することが可能となる。
【0021】
中空ガラス管内部の貫通孔の横断面を四角形状又は三角形状とすると、光ファイバ本体は複数点(2〜4点)で中空ガラス管の内周面に線接触し、大部分が空隙部(第二のクラッド層)で囲まれた状態で前記中空ガラス管内に配置される。このため、ガラスコアとクラッド層との比屈折率差が極めて大きくなり、光ファイバの開口角度を180°に近い値とすることができる。従って、照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを更に効率よく結合させて光ファイバ内を伝搬させることが可能となる。また、空隙部が大きくなることにより、曲げに対する機械的強度をさらに大きくすることができ、曲げによる光損失の漏洩や光強度変動を一層低減することができる。
【0022】
中空ガラス管の横断面の外形を円形状又は四角形状にすると、光ファイバが対称性を有する形状となるため、製造し易く、且つ取り扱い易くすることができる。また、曲げに対する機械的強度が強くなる。さらに、光ファイバを任意の方向に曲げてもガラスコア内を伝搬する光のクラッド層への漏洩やガラスコア内の光強度の変動を少なくすることができる。
【0023】
中空ガラス管の内部に複数個の貫通孔を設け、各貫通孔の内部に光ファイバ本体を配置した構造にすることにより、照明用光源の光、ハイパワー光源の光、樹脂硬化用UV光源の光などを複数のガラスコア内に大量に閉じ込めて光ファイバ内を伝搬させることが可能となる。すなわち、高強度の光パワーが伝搬可能となる。
【0024】
また、上述の光ファイバを複数本束ねてバンドル状に構成して光ファイババンドルとすることにより、この光ファイババンドル内にさらに高強度の光パワーを結合させて光伝搬させることが可能となる。
【0025】
本発明においては、ガラスコアをSiO2ガラスとすることにより、波長のより短い紫外域波長帯の光源の光から近赤外領域波長帯の光源の光を低損失で伝搬させることができる。これにより、本発明の光ファイバ或いは光ファイババンドルを種々の用途、例えば紫外伝送用、照明用、樹脂硬化用UV伝送用、蛍光分析用、医療用レーザメス、エキシマレーザ用ガイド、分光分析用ガイド、信号伝送用、ソフトレーザガイド、ハイパワー光用ガイド、植物育成用LEDの光伝送用、半導体の露光装置用、光殺菌用、光触媒用、液晶封止用、ガス分析用などに適用することが可能となる。
【0026】
また、中空ガラス管内部の貫通孔の横断面を楕円状にすると、接触部以外の光ファイバ本体と中空ガラス管の間に設けられる空隙部を広く取ることができるので、より機械的な曲げに強い光ファイバを実現することが可能となる。
【0027】
ガラスコアをSiO2ガラスから形成し、薄層をFかB2O3を添加したSiO2ガラスから形成することにより、薄層の屈折率をガラスコアの屈折率よりも0.2%程度低くすることができる。これによりガラスコア内に光を閉じ込め、接触部以外のガラスコアと中空ガラス管との間に設けられた空隙部で更にガラスコアへの光の閉じ込めを強くすることができる。
【0028】
さらに、ガラスコアをSiO2ガラスから形成すると共に、薄層をFかB2O3を添加したSiO2ガラスから形成し、中空ガラス管をSiO2ガラス、或いはFかB2O3を添加したSiO2ガラスから形成すると、光ファイバの全ての材料をSiO2系ガラスで構成することができる。従って、光ファイバを製造する上で、軟化温度、熱膨張係数のミスマッチングによる構造の変形、応力の発生などを緩和させることができる。
【0029】
中空ガラス管の外周を補強部材で被覆すると、光ファイバの機械的な曲げに対する強度をより一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図2】本発明の第2実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図3】本発明の第3実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図4】本発明の第4実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図5】本発明の第5実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図6】本発明の第6実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図7】本発明の第7実施例に係る光ファイバの横断面図。
【図8】本発明の第8実施例に係る光ファイバの横断面図。
【図9】本発明の第9実施例に係る光ファイババンドルの横断面図。
【図10】本発明の第10実施例に係る光ファイババンドルの横断面図。
【図11】本発明の第11実施例に係る光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図12】従来の光ファイバを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【図13】従来の光ファイバを束ねて構成した光ファイババンドルを示し、(a)は横断面図、(b)は外観図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0032】
図1に本発明の光ファイバの第1実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この光ファイバ10は、横断面が正方形状である貫通孔5を有する中空ガラス管4と、前記貫通孔5に配置された光ファイバ本体50とから構成されている。光ファイバ本体50は、横断面が円形状のガラスコア1の外周を該ガラスコア1よりも低屈折率のガラス薄層2(第1のクラッド層)で保護された構造を有しており、その薄層2の外周が4箇所の接触部(61,62,63,64)で中空ガラス管4の内周面と接触している。接触部61〜64は中空ガラス管4の一端部から他端部まで線状に延びており、このような構成により、光ファイバ本体50の外周は、中空ガラス管4の内周面と線接触する接触部61〜64を除いて空隙部3(第2のクラッド層)で覆われた構造となっている。
【0033】
なお、この中空ガラス管4は横断面の外形が円形状である。また、この実施例ではガラスコア1にSiO2ガラスを用い、ガラス薄層2にFを添加したSiO2ガラスを用いた。そして中空ガラス管4にはSiO2ガラスを用いた。
【0034】
ガラスコア1を取り囲むクラッド層として作用するのは、ガラスコア1の外周に形成された低屈折率のガラス薄層2と、上記空隙部3である。本実施例に係る光ファイバ10のクラッド層は、大部分を第2のクラッド層である空隙部3(つまり、空気層)が占めるため、SiO2ガラスから成るガラスコア1とクラッド層との間の比屈折率差Δは約30%になり、従来の光ファイバの比屈折率差Δより約一桁大きい値となる。このため、光ファイバの開口角度が180°に近い値となり、光ファイバの一方の入射端から入射する光を非常に効率よく結合させてガラスコア1内に強く閉じ込めて伝搬させることができる。
【0035】
また本実施例の光ファイバ10は機械的な曲げに強い。さらに本実施例の光ファイバ10を曲げても光ファイバ10内を伝搬している光のクラッド層への漏洩やガラスコア1内の光強度の変動が従来の光ファイバに比して圧倒的に少ない。
【0036】
従来の光ファイバは、ガラスコア1とクラッド層との熱膨張係数の差のため、温度変動により応力が発生し、この応力に依存する光ファイバ内の光パワー変動が生じるが、本実施例の光ファイバ10ではガラスコア1と中空ガラス管4との間の空隙部3で上記応力を緩和させることができるので、光ファイバ10内の光パワー変動を低減することができる。
【0037】
本実施例ではガラスコア1にSiO2ガラスを用い、ガラス薄層2にFを添加したSiO2ガラスを用いた。そして中空ガラス管4にはSiO2ガラスを用いたため、比屈折率差Δが極めて大きなマルチモード用の光ファイバとなる。ガラスコア1の直径は10μmから150μmの範囲が好ましいが、200μm程度までは許容できる範囲である。ガラス薄層2の厚みは、ガラスコア1を光学的に保護することが狙いであるので、2μmから20μmの範囲であれば十分である。中空ガラス管4の直径は100μmから300μmの範囲が実用的な曲げに耐えるので好ましい。ただし、それよりも大きくても実際の使用に際してはその外周に高分子材料が被覆されて曲げ易くなるので、使用することができる。ガラス薄層2にはB2O3を添加したSiO2ガラスを用いてもよい。中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面は正方形状の他に、長方形状でもよい。この場合にはガラスコア1が上記長方形状の空間内に2点で接するように配置される。
【0038】
なお、中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面を正方形状に加工する方法として、SiO2ガラスロッドの中心部を研削するという方法を用いることができる。また、それ以外の方法として、ゾルゲル法を用いて横断面の内側が正方形状で、外形が円形状の金属の型内にガラス原料の液体を流し込み、乾燥後に型から取り出して加熱処理するという方法を用いることができる。
【0039】
ガラスコア1にSiO2ガラスを用いたのは、紫外線領域から近赤外線領域まで低損失で伝搬させることができる光ファイバを実現するためである。上記SiO2ガラス以外に、屈折率制御用の添加物(GeO2、 P2O5、TiO2、Nなど)を含んだSiO2ガラスや、多成分系のガラスなどを用いてもよい。
【0040】
中空ガラス管4は、ガラスコア1の材質に近いものが熱膨張係数、軟化温度のミスマッチングを少なくする上で好ましい。例えば、SiO2ガラス以外にFやBを添加したSiO2ガラスを用いることもできる。またSiO2ガラスの内面にFやBを添加したSiO2ガラス層を形成しておいてもよい。また屈折率制御用の添加物(B2O3、GeO2、 P2O5、TiO2など)を含んだSiO2ガラス、あるいは多成分系のガラスを用いてもよい。
【0041】
上記光ファイバ10の具体的な作製方法について述べる。まずSiO2ガラスロッドの中心部に横断面が正方形状である貫通孔が形成されるように研削加工し、さらに該SiO2ガラスロッドの外形横断面が円形状となるように研削加工した。次に新たなSiO2ガラスロッドを用意し、外形横断面が円形状となるように研削加工し、その外周に気相化学反応を利用してFを添加したSiO2ガラス層を形成した。そしてこのFを添加したSiO2ガラス層で覆われたSiO2ガラスロッドを上記貫通孔が形成されたSiO2ガラスロッド内の貫通孔内に挿入して光ファイバ母材を作製した。この光ファイバ母材を光ファイバ線引き装置の高温(約2000℃)の線引き用電気炉内に一定速度で挿入しながらその先端部を延伸して巻き取りドラムに所望速度で巻き取りながら光ファイバ10を作製した。
【0042】
次に、本実施例の光ファイバ10の試作例について述べる。SiO2ガラスから成るガラスコア1の直径を50μm、Fを添加したSiO2ガラス薄層2(屈折率1.442)の厚みを10μm、SiO2ガラスから成る中空ガラス管4の直径を150μmの光ファイバを試作した。この試作例に、波長248nmのエキシマレーザ光を光ファイバ10内に80%近い高結合効率(従来の光ファイバでは50%程度の結合効率)で結合させて光損失を測定した。その結果、光損失は72dB/kmであり、低損失特性であった。また波長1.3μmの半導体レーザ光を用いて損失を測定した結果は、0.8dB/kmであった。
【0043】
上記試作例の光ファイバ10の許容曲げ半径は10mm程度であることがわかった。この値は従来の光ファイバの半分程度であった。
【0044】
なお、上記実施例において、中空ガラス管4内の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層を形成しておいてもよい。
【実施例2】
【0045】
図2に本発明の光ファイバの第2実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この光ファイバ10は、図1の実施例とほぼ同様の構成であるが、異なるところは、横断面の外形が円形状の中空ガラス管4の内側に横断面が長方形の貫通孔5が設けられており、光ファイバ本体50が上記貫通孔5内に2個の接触部61,63で接するように配置されているという点である。
【0046】
図1の実施例と同様に、ガラスコア1に対して第1のクラッド層として作用するのは、ガラスコア1の外周に形成された低屈折率のガラス薄層2であり、空隙部3が第2のクラッド層となる。この第2のクラッド層がクラッド層の支配的構成となって、この光ファイバ10の一方の入射端から入射した光をガラスコア1内に強く閉じ込めて伝搬する。本実施例は、図1の実施例に比して空隙部3の断面積が広く、低屈折率のガラス薄層2の外周が上記横断面長方形状の貫通孔5内に4点ではなく2点(接触部61,63)で接するので、この光ファイバ10の一方の入射端から入射した光をガラスコア1内により強く閉じ込めて伝搬することができる。
この実施例においても中空ガラス管4内の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層を形成しておいてもよい。
【実施例3】
【0047】
図3に本発明の光ファイバの第3実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この光ファイバ10は、図1の実施例とほぼ同様の構成であるが、中空ガラス管4の横断面の外形が正方形状である点が異なる。この中空ガラス管4はSiO2ガラスロッドを研削加工により横断面の外形が四角形状となるようにし、その内部に横断面が正方形状である貫通孔5を研削した。
【0048】
なお、本実施例においては、中空ガラス管4の横断面の外形は正方形の四隅が丸まった構造でもよい。これは光ファイバ母材を高温(約2000℃)の線引き用電気炉内に一定速度で挿入しながらその先端部を延伸して光ファイバにする際に、横断面の外形が正方形状の中空ガラス管4の四隅が溶融延伸されて丸くなるからである。
また、中空ガラス管4の横断面の外形は正方形に限らず長方形状でもよい。この場合も中空ガラス管4の外形の四隅が丸まった構造であってもよい。
また中空ガラス管4内の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層が形成されていてもよい。
【実施例4】
【0049】
図4に本発明の光ファイバの第4実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この実施例の光ファイバ10は、第3実施例とほぼ同様の構成であるが、中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面が長方形に構成されており、その貫通孔5内に低屈折率のガラス薄層2で円形状の高屈折率からなるガラスコア1を保護してなる光ファイバ本体50が2個の接触部61,63で接するように配置されている点が異なる。
【0050】
この実施例においても中空ガラス管4の横断面の外形は正方形以外に長方形でもよく、更に四隅が丸まった構造であってもよい。また、中空ガラス管4内の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層が形成されていてもよい。
【実施例5】
【0051】
図5に本発明の光ファイバの第5実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この実施例の光ファイバ10は、横断面円形状の中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面が楕円形状に構成されており、その楕円形状の貫通孔5内に低屈折率のガラス薄層2で保護された円形状の高屈折率からなるガラスコア1が2個の接触部61,63で接するように配置された構成である。この構成も空隙部3の断面積を大きくできるという特徴がある。上記中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面を楕円形状に加工するには研削加工を行うとよい。また、中空ガラス管4の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層が形成されていてもよい。
【実施例6】
【0052】
図6に本発明の光ファイバの第6実施例を示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この実施例の光ファイバ10は、中空ガラス管4内の貫通孔5の横断面が三角形状(あるいは3つの隅が丸まった略三角形状)に構成されており、その貫通孔5内に光ファイバ本体50が3点の接触部(61,62,63)で接するように配置されている点が第1実施例と異なる。なお、本実施例においても、中空ガラス管4内の貫通孔5の内面にFを添加したSiO2ガラス層が形成されていてもよい。
【実施例7】
【0053】
図7に本発明の光ファイバの第7実施例を示す。この図は第7実施例に係る光ファイバ10の横断面の概略図を示したものである。第7実施例に係る光ファイバ10は、ガラス管7の中に、横断面が正方形状の5個の貫通孔51〜55を形成し、これら貫通孔51〜55内にそれぞれ1個の光ファイバ本体501〜505を配置した構成を有している。前記光ファイバ本体501〜505は、低屈折率のガラス薄層2で保護された横断面が円形状の高屈折率のガラスコア1から成る。
このように、本実施例の光ファイバ10は光の伝搬するガラスコア1を5つ有するため、光ファイバを複数本束ねて成る光ファイババンドルと同等の機能を有する。
【0054】
この実施例ではガラス管7には直径が250μmのSiO2ガラスを用い、光を伝搬するガラスコア1には直径が50μmのSiO2ガラスを用い、それらの外周のガラス薄層2(厚みは5μm)にはFを添加したSiO2ガラス(波長0.633μmでの屈折率1.443)を用いた。貫通孔51〜55は横断面がそれぞれ60μm角の正方形になるように形成した。
【0055】
この光ファイバ10の製造方法について述べる。まずSiO2ガラスからなるガラスロッドを用意し、このガラスロッド内に横断面が正方形状である5個の貫通孔51〜55を、研削加工で形成して中空ガラス管4を作製した。もう一方で新たにSiO2ガラスからなるガラスロッドを5本用意し、横断面の外径が円形となるように研削加工した上で、これらの外周に気相化学反応を利用してFを添加したSiO2ガラス層を形成した。これらのFを添加したSiO2ガラス層で覆われたSiO2ガラスからなるガラスロッドを上記中空ガラス管4のそれぞれの貫通孔51〜55内に挿入して光ファイバ母材を作製した。そして、この光ファイバ母材を高温(約2000℃)の線引き用電気炉内に一定速度で挿入しながらその先端部を延伸して光ファイバ10を作製した。なお、ガラス管7にはSiO2ガラス以外にFやBを添加したSiO2ガラスを用いてもよい。
【実施例8】
【0056】
図8に本発明の光ファイバの第8実施例を示す。この図は第8実施例に係る光ファイバの横断面の概略図を示したものである。この実施例の光ファイバ10は、第7実施例とほぼ同様の構成であるが、異なるところは、ガラス管7の中に、9個の貫通孔51〜59が図8に示すごとく形成されている点である。各貫通孔51〜59にはそれぞれ1個の光ファイバ本体501〜509が配置されている。このように貫通孔の数が多ければより高出力のパワーの光伝送を実現することができる。
なお、上記貫通孔の数は5個や9個に限られず6個や7個でもよく、これより少なくても多くてもよい。
【実施例9】
【0057】
図9に本発明の第9実施例に係る光ファイババンドルを示す。この図は第9実施例に係る光ファイババンドル100の横断面の概略図を示したものである。この光ファイババンドル100は、図1に示した光ファイバ(図9では、符号101〜107を付している。)を7本束ね、高分子材料から成る被覆部材8で覆った、いわゆる高密度光ファイババンドル構造を有している。被覆部材8は、例えば一次被覆材料としてのシリコン樹脂,UV硬化樹脂などと、その上を覆う二次被覆材料としてのナイロンとから構成することができる。なお、光ファイバの本数は7本よりも少なくてもよく、多くてもよい。
【実施例10】
【0058】
図10に本発明の第10実施例に係る光ファイババンドルを示す。この図は光ファイババンドルの横断面の概略図を示したものである。第10実施例に係る光ファイババンドル100は、第9実施例の高密度光ファイババンドルの外周を補強部材9で被覆したものである。補強部材9は高分子材料、金属材料などで構成することができる。
【実施例11】
【0059】
図11に本発明の第11実施例に係る光ファイバを示す。同図(a)は横断面図、(b)は外観図である。この光ファイバ10は、中空ガラス管4内に横断面が長方形状の貫通孔5を設け、その貫通孔5内に2個の光ファイバ本体50を空隙部3を介して並べて設けた構造を有している。この光ファイバ10は横幅の広い領域に光を照射するのに適している。
【0060】
なお、本発明は上記実施例に限定されない。
ガラスコアの外周には薄層を設けなくても良い。この構成では、光ファイバ本体がガラスコアのみで構成されることになり、該ガラスコアの外周が2個以上の接触部で中空ガラス管の内周面に接する。
【0061】
第1〜第9実施例及び第11実施例の光ファイバの外周には光ファイバの保護用の高分子重合体材料や金属材料などから成る補強部材が被覆されていてもよい。
第1〜第8実施例及び第11実施例の光ファイバ、第9及び第10実施例の光ファイババンドルの空隙部3内には不活性ガスが含まれるようにし、光ファイバの両端を封止するようにしてもよい。
【0062】
ガラスコア1内の屈折率分布は平坦分布や、中心部から径方向に低くなる勾配分布(例えばグレーデッド型屈折率分布)、階段状の分布を持っていてもよい。
第7及び第8実施例の光ファイバにおいて、ガラス管7の貫通孔に配置する光ファイバ本体50は、図1の構造以外に図2から図6の構造でもよい。
第2実施例及び第4実施例は、薄層2で覆われたガラスコア1から成る光ファイバ本体50を中空ガラス管4内の貫通孔5内に1個だけ配置した例であるが、第11実施例のように空隙部3を介して複数個並べて配置してもよい。このように光ファイバ本体50を複数設けると、横幅の広い領域に光を照射することができる。第1〜第4、第7〜第11実施例の貫通孔5の横断面の4つの角は直角である必要は無く、丸まっていてもよい。
第6実施例の中空ガラス管4内の三角形の貫通孔5の3つの角も丸まっていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…ガラスコア
2…ガラス薄層
3…空隙部
4…中空ガラス管
5、51〜59…貫通孔
61〜64…接触部
7…ガラス管
8…補強部材
10、20…光ファイバ
21…コア
22…クラッド
50、501〜509…光ファイバ本体
100、101〜107、201…光ファイババンドル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空ガラス管と、
前記中空ガラス管の内部に配置された横断面が円形状のガラスコアを有する光ファイバ本体と、
を有する光ファイバであって、
前記光ファイバ本体は、前記中空ガラス管の内周面に少なくとも2個の接触部で接し、該接触部以外の前記光ファイバ本体と前記中空ガラス管の間は、長手方向に延びる空隙部であることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバにおいて、
前記中空ガラス管は内部に横断面が四角形状又は三角形状の貫通孔を有し、該貫通孔に前記光ファイバ本体が配置されていることを特徴とする光ファイバ。
【請求項3】
請求項1に記載の光ファイバにおいて、
前記中空ガラス管は内部に横断面が楕円状の貫通孔を有し、該貫通孔に前記光ファイバ本体が配置されていることを特徴とする光ファイバ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバにおいて、
前記中空ガラス管の横断面の外形が円形状又は四角形状であることを特徴とする光ファイバ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ファイバにおいて、
前記中空ガラス管は内部に複数個の貫通孔を有し、該それぞれの貫通孔内に前記光ファイバ本体が配置されていることを特徴とする光ファイバ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光ファイバにおいて、前記ガラスコアはSiO2ガラスからなることを特徴とする光ファイバ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光ファイバにおいて、
前記光ファイバ本体は、前記ガラスコアの外周に形成された前記ガラスコアよりも屈折率の低いガラスから成る薄層を有し、該薄層が前記中空ガラス管の内周面に接することを特徴とする光ファイバ。
【請求項8】
請求項7に記載の光ファイバにおいて、前記薄層はFかB2O3を添加したSiO2ガラスからなることを特徴とする光ファイバ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光ファイバにおいて、前記中空ガラス管はSiO2ガラスか、FかB2O3を添加したSiO2ガラスからなることを特徴とする光ファイバ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の光ファイバにおいて、前記中空ガラス管は補強部材で被覆されていることを特徴とする光ファイバ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の光ファイバを複数本束ねてバンドル状に構成したことを特徴とする光ファイババンドル。
【請求項1】
中空ガラス管と、
前記中空ガラス管の内部に配置された横断面が円形状のガラスコアを有する光ファイバ本体と、
を有する光ファイバであって、
前記光ファイバ本体は、前記中空ガラス管の内周面に少なくとも2個の接触部で接し、該接触部以外の前記光ファイバ本体と前記中空ガラス管の間は、長手方向に延びる空隙部であることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバにおいて、
前記中空ガラス管は内部に横断面が四角形状又は三角形状の貫通孔を有し、該貫通孔に前記光ファイバ本体が配置されていることを特徴とする光ファイバ。
【請求項3】
請求項1に記載の光ファイバにおいて、
前記中空ガラス管は内部に横断面が楕円状の貫通孔を有し、該貫通孔に前記光ファイバ本体が配置されていることを特徴とする光ファイバ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバにおいて、
前記中空ガラス管の横断面の外形が円形状又は四角形状であることを特徴とする光ファイバ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ファイバにおいて、
前記中空ガラス管は内部に複数個の貫通孔を有し、該それぞれの貫通孔内に前記光ファイバ本体が配置されていることを特徴とする光ファイバ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光ファイバにおいて、前記ガラスコアはSiO2ガラスからなることを特徴とする光ファイバ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光ファイバにおいて、
前記光ファイバ本体は、前記ガラスコアの外周に形成された前記ガラスコアよりも屈折率の低いガラスから成る薄層を有し、該薄層が前記中空ガラス管の内周面に接することを特徴とする光ファイバ。
【請求項8】
請求項7に記載の光ファイバにおいて、前記薄層はFかB2O3を添加したSiO2ガラスからなることを特徴とする光ファイバ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光ファイバにおいて、前記中空ガラス管はSiO2ガラスか、FかB2O3を添加したSiO2ガラスからなることを特徴とする光ファイバ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の光ファイバにおいて、前記中空ガラス管は補強部材で被覆されていることを特徴とする光ファイバ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の光ファイバを複数本束ねてバンドル状に構成したことを特徴とする光ファイババンドル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−93520(P2012−93520A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240124(P2010−240124)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(392017004)湖北工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(392017004)湖北工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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