説明

光ポンピング方式の面発光レーザー

【課題】光ポンピング用ビームをレーザーチップに垂直に入射させ得る垂直外部共振器型面発光レーザーを提供する。
【解決手段】第2波長の光を放出するポンプレーザー34と前記ポンプレーザ励起により第1波長の光を放出させるレーザーチップ32と、レーザーチップ32から発生した第1波長の光をレーザーチップ32に再び反射する外部ミラー38と、レーザーチップ32と外部ミラー38との間に配置されたものであって、ポンプレーザー34から放出された第2波長の光をレーザーチップ32に反射させ、レーザーチップ32から放出された第1波長の光を透過させる波長選択性ミラー36と、波長選択性ミラー36とレーザーチップ32との間に配置されたものであって、第1波長の光を外部ミラー38と波長選択性ミラー36との間の光路上にフォーカシングし、第2波長の光をレーザーチップ32上にフォーカシングする光学素子35と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ポンピング方式の面発光レーザーに係り、さらに詳細には、光ポンピング用ビームをレーザーチップに垂直に入射させ得る垂直外部共振器型面発光レーザー(Vertical External Cavity Surface Emitting Laser:VECSEL)に関する。
【背景技術】
【0002】
VECSELは、垂直共振器型面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)の上部ミラーを外部ミラーに代替して利得領域を拡大させることによって、数〜数十W以上の高出力を得させるレーザー素子である。
【0003】
図1は、従来の光ポンピング方式のVECSELの概略的な断面図である。図1を参照して従来の光ポンピング方式のVECSEL10の構造を説明すれば、レーザー発振のためのレーザーチップ13が熱拡散器12を介してヒートシンク11に付着されており、レーザーチップ13と所定間隔離れて外部ミラー16が配置されている。そして、レーザーチップ13に光ポンピング用ビームを提供するためのポンプレーザー14が斜めに配置されている。レーザーチップ13は、分散ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector:DBR)層13a及び活性層13bが順次に積層された構造である。活性層13bは、例えば、多重量子ウェル構造であり、光ポンピング用ビームにより励起されて、所定の波長を有する光を放出する。また、ポンプレーザー14は、レーザーチップ13の発振波長より短波長の光をレンズ15を介してレーザーチップ13に入射させて、レーザーチップ13内の活性層13bを励起させる役割を担う。
【0004】
また、レーザーチップ13と外部ミラー16との間に特定の波長光のみを通過させるフィルタ17と、光の周波数を2倍にするSHG(Second Harmonic Generation:第二高調波発生)結晶18とをさらに配置できる。SHG結晶18を使用する場合、例えば、レーザーチップ13から放出される赤外線領域の光を可視光線領域の波長を有するレーザービームに出力できる。
【0005】
このような構造で、ポンプレーザー14から放出された光ビームが、レンズ15を介してレーザーチップ13に入射すれば、レーザーチップ13内の活性層13bが励起されつつ、特定の波長の光を放出する。このように発生した光は、レーザーチップ13内のDBR層13aと外部ミラー16との間で反射を繰り返しつつ活性層13bを往復する。このような過程を通じて、レーザーチップ13内で増幅された光の一部は、外部ミラー16を介してレーザービームとして外部に出力される。
【0006】
ところが、前述した構造の従来のVECSEL10の場合、レーザーチップ13を発振させるためのポンプレーザー14が斜めに配列されているため、全体的な部品を配列し難い。また、光ポンピング用ビームをヒートシンク11により遮断させないためには、ヒートシンク11の上面に形成された開口を大きくする必要があるが、この場合、熱拡散器12も大きくならなければならないため、製造コストが上昇する。さらに、ポンプレーザー14から放出された光ポンピング用ビームがレーザーチップ13に斜めに入射するため、レーザーチップ13の発振効率が低下するという問題がある。
【0007】
一方、SHG結晶18の光波長変換効率が入射する光のエネルギー密度に比例する特性があり、図2に示すように、レーザーチップ13から遠ざかるほど、ビームの半径が広くなるので、可能な限りSHG結晶18は、レーザーチップ13に近く配置されることが望ましい。しかし、フィルタ17及びポンプレーザー14の存在によって、SHG結晶18をレーザーチップ13に密着させ得ない。したがって、SHG結晶18の効率性も低下せざるを得ない。
【0008】
図3は、SHG結晶18の効率性を向上させるための従来のVECSELの構造を概略的に示す。図3に示すように、従来のVECSEL20の場合、レーザーチップ21で発生した光は、フィルタ23を経た後、第1外部ミラー24により反射されて第2外部ミラー25に向かう。その後、第2外部ミラー25により反射された光は、第1外部ミラー24を介してレーザーチップ21に再び入射する。SHG結晶26は、第1外部ミラー24と第2外部ミラー25との間に配置され、SHG結晶26により波長が変換された光は、第1外部ミラー24を介して外部に出力される。このとき、第1外部ミラー24及び第2外部ミラー25を何れも凹面鏡に構成することによって、SHG結晶26の位置で光を収斂させれば、SHG結晶26の効率を向上させうる。
【0009】
しかし、従来のVECSEL20の場合、外部ミラーをさらに一つ使用するだけでなく、二つの外部ミラーを斜めに配置せねばならないので、さらに配列し難くなる。したがって、全体的なレーザーシステムのサイズが大きくならざるを得ない。さらに、レーザービームが斜めに出力されるという問題もある。また、ポンプレーザー22及びレンズ27が斜めに配列されることによって発生する前述した問題は、全く解決されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものである。したがって、本発明の目的は、光ポンピング用ビームをレーザーチップに垂直に入射させることによって、高い発振効率を有し、かつ配列し易いVECSELを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、レーザーチップから発生した光ビームをSHG結晶にフォーカシングすることによって、SHG結晶の光変換効率を向上させたVECSELを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を解決するための本発明に係る面発光レーザーは、光ポンピング方式により第1波長の光を放出させるレーザーチップと、前記レーザーチップから所定距離ほど離隔されて位置し、前記レーザーチップから発生した第1波長の光を前記レーザーチップに再び反射する外部ミラーと、前記レーザーチップを発振させるための第2波長の光を放出するポンプレーザーと、前記レーザーチップと前記外部ミラーとの間に配置されたものであって、前記ポンプレーザーから放出された第2波長の光を前記レーザーチップに反射させ、前記レーザーチップから放出された第1波長の光を透過させる波長選択性ミラーと、前記波長選択性ミラーと前記レーザーチップとの間に配置されたものであって、第1波長の光を前記外部ミラーと前記波長選択性ミラーとの間の光路上にフォーカシングし、第2波長の光を前記レーザーチップ上にフォーカシングする光学素子と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る面発光レーザーは、前記外部ミラーと前記波長選択性ミラーとの間で第1波長の光がフォーカシングされる位置に配置されたものであって、前記レーザーチップから放出された第1波長の光の周波数を2倍に変更して、第3波長の光にするSHG結晶をさらに備え得る。
【0014】
ここで、前記波長選択性ミラーは、第1波長の光のみを通過させる複屈折フィルタであり、前記波長選択性ミラーのレーザーチップ側の表面には、第1波長の光に対して反射防止特性を有し、第2波長の光に対して反射特性を有するコーティング層が形成されている。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記波長選択性ミラーのSHG結晶側の表面には、第1波長の光に対して反射防止特性を有し、第3波長の光に対して反射特性を有するコーティング層が形成されることによって、第3波長の光を光路に対して垂直方向に外部に出力する。
【0016】
この場合、前記SHG結晶の両側の表面には、第1波長及び第3波長の光に対して何れも反射防止特性を有するコーティング層が形成されることが望ましい。
【0017】
また、前記外部ミラーは、凹状の反射面を有し、前記外部ミラーの凹状の反射面には、第1波長及び第3波長の光に対して何れも反射特性を有するコーティング層が形成されていることが望ましい。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、前記波長選択性ミラーのSHG結晶側の表面には、第1波長の光に対して反射防止特性を有するコーティング層が形成され得る。
【0019】
この場合、前記SHG結晶の波長選択性ミラー側の表面には、第1波長の光に対して反射防止特性を有し、第3波長の光に対して反射特性を有するコーティング層が形成されており、外部ミラー側の表面には、第1波長及び第3波長の光に対して何れも反射防止特性を有するコーティング層が形成される。
【0020】
また、前記外部ミラーは、凹状の反射面を有し、前記外部ミラーの凹状の反射面には、第1波長の光に対して反射特性を有し、第3波長の光に対して反射防止特性を有するコーティング層が形成されることによって、第3波長の光を前記外部ミラーを通じて外部に出力する。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記波長選択性ミラーは、第1波長の光に対して反射防止特性を有し、第2波長の光に対して反射特性を有するコーティング層がレーザーチップ側の表面に形成されているビームスプリッタであることを特徴とする。この場合、前記外部ミラーは、平坦な反射面を有し、前記外部ミラーの平坦な反射面には、第1波長の光の一部を透過させて外部に出力し、残りの一部を前記レーザーチップに向って反射するように、コーティング層が形成されている。
【0022】
一方、本発明に係る面発光レーザーは、前記レーザーチップから発生する熱を外部に放出するために、前記レーザーチップの底面に配置されたヒートシンクをさらに備え得る。また、本発明に係る面発光レーザーは、前記レーザーチップから発生する熱を前記ヒートシンクに伝達するために、前記レーザーチップの上面に配置された熱拡散器をさらに備え得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の望ましい実施形態に係る面発光レーザー、特に、VECSELは、波長選択性ミラーを利用して光ポンピング用光をレーザーチップに垂直に入射させるため、高い発振効率が得られ、小さなサイズの熱拡散器を使用できる。さらに、ポンプレーザーがレーザーチップに向って精密に配列されなくてもよいので、配列が比較的に容易である。したがって、製造コストを低減させ、かつレーザー装置の全体的なサイズを縮小させることも可能である。
【0024】
また、本発明の望ましい実施形態によれば、レーザーチップから発生した光を簡単な方法でSHG結晶にフォーカシングすることによって、SHG結晶の光変換効率を最適化することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態に係るVECSELの構造を示す断面図である。図4に示すように、ヒートシンク31上にレーザーチップ32が搭載されており、レーザーチップ32上には、透明な熱拡散器33が配置され得る。熱拡散器33は、レーザーチップ32から発生する熱をヒートシンク31に伝達することによって、ヒートシンク31を介して熱を外部に放出させるものであって、ダイアモンドのように、透光性及び熱伝導度に優れた物質を使用する。本発明の一実施形態に係るVECSEL30で、レーザーチップ32は、光ポンピング方式により活性化されて、第1波長の光を放出させるものであって、公知のように、DBR層32a及び活性層32bが順次に積層された構造である。活性層32bは、例えば、多重量子ウェル構造を有し、光ポンピング用光により励起されて所定の波長を有する光を放出する。
【0027】
外部ミラー38は、レーザーチップ32と対向する位置に所定距離ほど離隔されて配置されている。外部ミラー38は、レーザーチップ32から発生した第1波長の光を、レーザーチップ32に再び反射させる役割を担う。望ましくは、外部ミラー38により反射される光を収斂させるために、外部ミラー38は、凹状の反射面38aを有することが望ましい。
【0028】
レーザーチップ32を発振させるための第2波長の光を放出するポンプレーザー34は、レーザーチップ32から放出される第1波長の光路に対してほぼ垂直に配置されている。一般的に、ポンプレーザー34の発振波長は、レーザーチップ32の発振波長に比べて短いものを使用せねばならない。例えば、レーザーチップ32から発振される光の波長(すなわち、第1波長)が1064nmであれば、ポンプレーザー34から発振される光の波長(すなわち、第2波長)は、約808nmであることが適当である。
【0029】
ポンプレーザーから放出される光ポンピング用光が、レーザーチップに直接に入射される従来の技術とは異なり、本発明に係るVECSEL30では、波長選択性ミラー36を介して光ポンピング用光がレーザーチップ32に入射する。図4に示すように、波長選択性ミラー36は、レーザーチップ32と外部ミラー38との間に配置されており、側面に垂直に配置されたポンプレーザー34と対向している。波長選択性ミラー36は、ポンプレーザー34から放出された第2波長の光をレーザーチップ32に反射させ、レーザーチップ32から放出された第1波長の光を透過させる役割を担う。例えば、波長選択性ミラー36は、第1波長の光に対して反射防止特性を有し、第2波長の光に対して反射特性を有するコーティング層をガラスの表面に形成することによって製作され得る。さらに望ましくは、ガラスの代りに、第1波長の光のみを通過させる複屈折フィルタを用いて波長選択性ミラー36を製作することが望ましい。一般的に、レーザーチップ32から放出される光は、第1波長を中心波長とする比較的に広域のスペクトルを有するので、さらに高品質のレーザービームを出力するためには、複屈折フィルタを用いて第1波長の光のみを濾過するか、少なくともスペクトルの帯域幅を狭める必要がある。
【0030】
また、波長選択性ミラー36とレーザーチップ32との間の光路には、ポンプレーザー34から放出された第2波長の光ポンピング用光をレーザーチップ32上にフォーカシングする光学素子35が配置されている。例えば、光学素子35として凸レンズを使用でき、その外に複数のレンズから構成されたレンズ群のように、他の種類の光学素子を使用しても良い。光学素子35は、また、レーザーチップ32から放出された第1波長の光を、外部ミラー38と波長選択性ミラー36との間の光路上にフォーカシングする役割を行う。この場合、レーザーチップ32から放出された第1波長の光ビームの半径は、図5に示すグラフの通りである。すなわち、レーザーチップ32から放出された光は、若干の発散性を有するので、ビームの半径が次第に大きくなり、光学素子35により収斂されて、外部ミラー38と波長選択性ミラー36との間の所定の位置でビームの半径が最小となる。
【0031】
図4及び図5に示すように、レーザーチップ32から放出された第1波長の光ビームの半径が最小となる外部ミラー38と波長選択性ミラー36との間の位置にSHG結晶37を配置できる。前述したように、SHG結晶37は、レーザーチップ32から放出された第1波長の光の周波数を2倍に変更して、第3波長の光にする役割を行う。例えば、レーザーチップ32から放出された光の波長(すなわち、第1波長)が1064nmである場合、SHG結晶37により変更された光の波長(すなわち、第3波長)は、532nmになる。したがって、SHG結晶37を利用すれば、赤外線領域の波長を可視光線領域の波長に変えて出力できる。一般的に、SHG結晶37の光波長の変換効率は、入射光のエネルギー密度に比例する特性を有する。したがって、本発明の望ましい実施形態のように、第1波長のビームの半径が最小となる位置にSHG結晶37を配置することによって、SHG結晶37の光波長の変換効率を最適にすることができる。
【0032】
一方、本発明の望ましい実施形態によれば、レーザーチップ32から放出された第1波長の光と、ポンプレーザー34から放出された第2波長の光と、SHG結晶37で変化した第3波長が光とがそれぞれ所定の光路に沿って進行できるように、波長選択性ミラー36、SHG結晶37及び外部ミラー38の表面には、それぞれ適切なコーティング層が形成されている。例えば、波長選択性ミラー36のレーザーチップ側の表面36aには、第1波長の光に対しては反射防止(Anti−Reflection:AR)特性を有し、第2波長の光に対しては高反射(High−Reflection:HR)特性を有するコーティング層が形成されており、波長選択性ミラー36のSHG結晶側の表面36bには、第1波長の光に対して反射防止ARの特性を有し、第3波長の光に対して高反射HRの特性を有するコーティング層が形成され得る。そして、SHG結晶37の両側面37a,37bには、第1波長及び第3波長の光に対して何れも反射防止ARの特性を有するコーティング層が形成され、外部ミラー38の凹状の反射面38aには、第1波長及び第3波長の光に対して何れも高反射HRの特性を有するコーティング層が形成され得る。このようなコーティング層は、屈折率のそれぞれ異なる複数の材料を複数層に積層して形成され得るが、公知の技術によって材料の種類及び積層の厚さなどを適切に選択することによって、必要とする光学的な特性(例えば、反射される光の波長、透過される光の波長、反射率、透過率など)が容易に得られる。
【0033】
このような構造のVECSEL30で、ポンプレーザー34から放出された第2波長の光ポンピング用光は、波長選択性ミラー36で反射された後、光学素子35を介してレーザーチップ32上にフォーカシングされる。それにより、レーザーチップ32の活性層32bが励起されつつ、第1波長の光を放出する。レーザーチップ32から放出された第1波長の光は、光学素子35を通過した後、波長選択性ミラー36を透過してSHG結晶37に入射する。SHG結晶37に入射した光は、波長が1/2に短くなった第3波長に変換される。このとき、第1波長の光が全て第3波長に変換されるのではないため、SHG結晶37から出射される光は、第1波長の光と第3波長の光とが混合された状態である。前記第1波長及び第3波長の光は、外部ミラー38により反射されて、再びSHG結晶37に入射し、第1波長の光の一部が第3波長の光に変換される。その後、第1波長及び第3波長の光は、SHG結晶37から出射されて波長選択性ミラー36に入射する。前述したように、波長選択性ミラー36のSHG結晶側の表面は、第1波長の光は透過させ、第3波長の光は反射する性質を有する。したがって、第3波長の光は、波長選択性ミラー36により側面に反射されて、レーザービームとして外部に出力される。また、第1波長の光は、波長選択性ミラー36を透過してレーザーチップ32に入射した後、DBR層32aにより反射されて再び外部ミラー38に向かって進む。
【0034】
図6は、本発明の他の実施形態に係るVECSELの構造を示す断面図である。図6に示すように、本発明の他の実施形態に係るVECSELは、図4に示すVECSELと同じ構造を有するが、コーティング層の光学的な特性を異ならせることによって、外部ミラー38を介してレーザービームを外部に放出させている。すなわち、ヒートシンク31、レーザーチップ32、熱拡散器33、ポンプレーザー34、光学素子35、波長選択性ミラー36、SHG結晶37及び外部ミラー38の構造及び配置は、図4のVECSELと関連して説明したものと同じである。
【0035】
例えば、図6のVECSELで、波長選択性ミラー36のレーザーチップ側の表面36aには、第1波長の光に対しては反射防止ARの特性を有し、第2波長の光に対しては高反射HRの特性を有するコーティング層が形成されており、波長選択性ミラー36のSHG結晶側の表面36bには、第1波長の光に対して反射防止ARの特性を有するコーティング層が形成され得る。そして、SHG結晶37の波長選択性ミラー側の表面37aには、第1波長の光に対して反射防止ARの特性を有し、第3波長の光に対して高反射HRの特性を有するコーティング層が形成されており、外部ミラー側の表面37bには、第1波長及び第3波長の光に対して何れも反射防止ARの特性を有するコーティング層が形成されている。また、外部ミラー38の凹状の反射面38aには、第1波長の光に対して高反射HRの特性を有し、第3波長の光に対して反射防止ARの特性を有するコーティング層が形成されている。
【0036】
図6のVECSELで、ポンプレーザー34から放出された第2波長の光ポンピング用光は、波長選択性ミラー36で反射された後、光学素子35を介してレーザーチップ32上にフォーカシングされる。それにより、レーザーチップ32の活性層32bが励起されつつ第1波長の光を放出する。レーザーチップ32から放出された第1波長の光は、光学素子35を通過した後、波長選択性ミラー36を透過してSHG結晶37に入射する。SHG結晶37に入射した光は、波長が1/2に短くなった第3波長に変換される。前述したように、第1波長の光が全て第3波長に変換されるのではないため、SHG結晶37から出射される光は、第1波長の光と第3波長の光とが混合された状態である。その後、SHG結晶37から出射された第1波長及び第3波長の光は、外部ミラー38に入射される。コーティング層により、外部ミラー38の反射面38aは、第1波長の光に対しては高反射の特性を有し、第3波長の光に対しては透過特性を有する。したがって、第1波長の光は反射されて、SHG結晶37に入射し、第3波長の光は、レーザービームとして外部に出力される。SHG結晶37に再入射した第1波長の光の一部は、再び第3波長の光に変換される。一方、SHG結晶37の波長選択性ミラー側の表面37aには、第1波長の光に対して反射防止ARの特性を有し、第3波長の光に対して高反射HRの特性を有するコーティング層が形成されている。したがって、第1波長の光は、SHG結晶37及び波長選択性ミラー36を透過してレーザーチップ32に入射し、第3波長の光は、SHG結晶37の波長選択性ミラー側の表面37aで反射されて、外部ミラー38を介して外部に出力される。
【0037】
図7は、本発明にさらに他の実施形態に係るVECSELの構造を示す断面図である。前述した実施形態のVECSELと比較すると、図7に示すVECSELは、SHG結晶を使用しないという点で異なり、他の構造は全て同じである。図7のVECSELの場合には、SHG結晶を使用しないため、SHG結晶の位置に光を収斂させる必要はない。したがって、外部ミラー38の反射面38aが平坦に形成されていても関係ない。また、SHG結晶を使用しないため、レーザーチップ32から発生した第1波長の光が、そのままレーザービームとして外部に出力される。このために、外部ミラー38の反射面38aには、第1波長の光の一部を透過させて外部に出力し、残りの一部をレーザーチップ32に向って反射する特性を有するコーティング層が形成されることが望ましい。また、波長選択性ミラー36としては、第1波長の光に対して反射防止特性を有し、第2波長の光に対して反射特性を有するコーティング層が形成されているビームスプリッタを使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、光ポンピング方式の面発光レーザーに関連した技術分野に好適に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来の光ポンピング方式のVECSELの構造を示す断面図である。
【図2】従来のVECSELの共振器の内部でビーム半径のサイズの変化を表すグラフである。
【図3】従来のさらに他のVECSELの構造を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るVECSELの構造を示す断面図である。
【図5】本発明に係るVECSELの共振器の内部でビーム半径のサイズの変化を表すグラフである。
【図6】本発明の他の実施形態に係るVECSELの構造を示す断面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態に係るVECSELの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
30 VECSEL、
31 ヒートシンク、
32 レーザーチップ、
32a DBR層、
32b 活性層、
33 熱拡散器、
34 ポンプレーザー、
35 光学素子、
36 波長選択性ミラー、
36a レーザーチップ側の表面、
36b SHG結晶側の表面、
37 SHG結晶、
37a,37b SHG結晶の両側面、
38 外部ミラー、
38a 凹状の反射面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ポンピング方式により第1波長の光を放出させるレーザーチップと、
前記レーザーチップから所定距離ほど離隔されて位置し、前記レーザーチップから発生した第1波長の光を前記レーザーチップに再び反射する外部ミラーと、
前記レーザーチップを発振させるための第2波長の光を放出するポンプレーザーと、
前記レーザーチップと前記外部ミラーとの間に配置されたものであって、前記ポンプレーザーから放出された第2波長の光を前記レーザーチップに反射させ、前記レーザーチップから放出された第1波長の光を透過させる波長選択性ミラーと、
前記波長選択性ミラーと前記レーザーチップとの間に配置されたものであって、第1波長の光を前記外部ミラーと前記波長選択性ミラーとの間の光路上にフォーカシングし、第2波長の光を前記レーザーチップ上にフォーカシングする光学素子と、を備えることを特徴とする面発光レーザー。
【請求項2】
前記外部ミラーと前記波長選択性ミラーとの間で第1波長の光がフォーカシングされる位置に配置されたものであって、前記レーザーチップから放出された第1波長の光の周波数を2倍に変更して、第3波長の光にするSHG結晶をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザー。
【請求項3】
前記波長選択性ミラーは、第1波長の光のみを通過させる複屈折フィルタであり、前記波長選択性ミラーのレーザーチップ側の表面には、第1波長の光に対して反射防止特性を有し、第2波長の光に対して反射特性を有するコーティング層が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の面発光レーザー。
【請求項4】
前記波長選択性ミラーのSHG結晶側の表面には、第1波長の光に対して反射防止特性を有し、第3波長の光に対して反射特性を有するコーティング層が形成されることによって、第3波長の光を光路に対して垂直方向に外部に出力することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の面発光レーザー。
【請求項5】
前記SHG結晶の両側の表面には、第1波長及び第3波長の光に対して何れも反射防止特性を有するコーティング層が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の面発光レーザー。
【請求項6】
前記外部ミラーは、凹状の反射面を有し、前記外部ミラーの凹状の反射面には、第1波長及び第3波長の光に対して何れも反射特性を有するコーティング層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の面発光レーザー。
【請求項7】
前記波長選択性ミラーのSHG結晶側の表面には、第1波長の光に対して反射防止特性を有するコーティング層が形成されたことを特徴とする請求項2項または請求項3に記載の面発光レーザー。
【請求項8】
前記SHG結晶の波長選択性ミラー側の表面には、第1波長の光に対して反射防止特性を有し、第3波長の光に対して反射特性を有するコーティング層が形成されており、外部ミラー側の表面には、第1波長及び第3波長の光に対して何れも反射防止特性を有するコーティング層が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の面発光レーザー。
【請求項9】
前記外部ミラーは、凹状の反射面を有し、前記外部ミラーの凹状の反射面には、第1波長の光に対して反射特性を有し、第3波長の光に対して反射防止特性を有するコーティング層が形成されることによって、第3波長の光を前記外部ミラーを通じて外部に出力することを特徴とする請求項8に記載の面発光レーザー。
【請求項10】
前記波長選択性ミラーは、第1波長の光に対して反射防止特性を有し、第2波長の光に対して反射特性を有するコーティング層がレーザーチップ側の表面に形成されているビームスプリッタであることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザー。
【請求項11】
前記外部ミラーは、平坦な反射面を有し、前記外部ミラーの平坦な反射面には、第1波長の光の一部を透過させて外部に出力し、残りの一部を前記レーザーチップに向って反射するように、コーティング層が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の面発光レーザー。
【請求項12】
前記レーザーチップから発生する熱を外部に放出するために、前記レーザーチップの底面に配置されたヒートシンクをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3、請求項5、請求項6、請求項8ないし請求項11のうち何れか1項に記載の面発光レーザー。
【請求項13】
前記レーザーチップから発生する熱を前記ヒートシンクに伝達するために、前記レーザーチップの上面に配置された熱拡散器をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の面発光レーザー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−344973(P2006−344973A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158778(P2006−158778)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】