説明

光モジュール及びこれを用いた画像形成装置

【課題】10Gbpsを越える高速データ伝送を可能とする光モジュール、及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】発光素子1と受光素子2a、2bと光導波路とで構成された光変調素子5と、光伝送媒体7とが光結合され、少なくとも発光素子1と受光素子2a、2bと光変調素子5とが単一の筐体11、12に収納された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子と光変調素子とを単一の筐体に収容した光モジュール及びこれを用いて画像情報を伝送する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光モジュールに関する従来技術としては、特許文献1に開示される「光モジュール」がある。
【0003】
特許文献1に開示される発明では、光モジュールは、半導体発光デバイスと、半導体受光デバイスと、光ファイバと、駆動素子とを備える。半導体発光デバイスは、第1の面及び第2の面を有する。第1の面の反射率は第2の面の反射率よりも小さい。半導体受光デバイスは、光入射面及び光出射面を有する。光入射面は半導体発光デバイスの第1の面と光学的に結合されている。光出射面は、光入射面に入射した光が出射する。光ファイバは、半導体受光デバイスを介して半導体発光デバイスの第1の面から光を受ける。駆動素子は、半導体発光デバイスを駆動する。
【特許文献1】特開2004−152991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この光モジュールは半導体発光デバイスを直接変調する方式であり、100Gbps以上の高速伝送に対応することは困難である。
また、伝送媒体となる光ファイバが発光素子及び受光素子を有するパッケージ内で電気リード線と機械的にも固定一体化されているため、電気配線を有する回路基板と光ファイバ部との脱着が困難である。脱着を行うためには光ファイバ部を中継するコネクタ部を設ける必要があり、コネクタ部での光伝送損失が発生したり、フェルールのような高価な部材を使用しなければならず、光学素子を高精度にアライメントする必要があり、光モジュールとしてのコストアップの要因となっていた。
【0005】
近年、情報伝達の分野では伝達すべき情報量が増大しており、特に画像情報を扱うデジタル画像機器では機器内又は機器間ではG(ギガ)bpsの高速データ伝送が必要となっている。
【0006】
具体的には、フルカラー画像を画素密度1200dpi、プリント速度100枚/分以上を非圧縮(画像圧縮を行うと画像伸長(復元)の際に劣化が生ずるが、1200dpi以上の高画素密度では画像の劣化が著しいため画像圧縮を行わないことが好適である。)での画像情報のデータ伝送を行う場合、伝送速度は10Gbpsとなり、印刷レベルの高画質である2400dpiでは40Gbpsにも達する。
【0007】
データ伝送の手段として、電気伝送から光伝送への移行が検討されている。電気信号から光信号へ変換する変換部と光信号を発生させる光源としての半導体レーザと、この半導体レーザ素子を駆動させるドライバ素子と、発光した光を伝送媒体である光ファイバへカップリングする光結合部とを有する各素子がパッケージされた光モジュールが従来からある。
光伝送は電気信号を光信号に変換して伝達することによって、伝達する情報量の増大を図ることができるとともに、電気信号では問題となる電磁ノイズの発生による誤動作、電磁波の放射による近接基板や周辺機素子、周囲環境に対する悪影響を防止できるメリットがある。
【0008】
しかしながら、従来の光モジュールでは、半導体レーザ素子を変調駆動して発光のON/OFFを制御しているため、その応答速度は10Gbpsが限界とされ、それ以上の高速データ伝送が困難であった。
【0009】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、10Gbpsを越える高速データ伝送を可能とする光モジュール、及びこれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、発光素子と受光素子と光導波路とで構成された光変調素子と、光伝送媒体とが光結合され、少なくとも発光素子と受光素子と光変調素子とが単一の筐体に収納されたことを特徴とする光モジュールを提供するものである。このような構成とすることにより、10Gbpsを超える高速データ伝送を実現できる。
【0011】
本発明の第1の態様においては、光変調素子は、発光素子が発する光信号を電気光学効果によって変調することが好ましい。電気光学効果を利用した光変調素子を用いることにより、発光素子に波長変動が生じても変調特性が劣化せず、安定した光変調を行える。これに加えて、光変調素子は、LT結晶又はKTN結晶の電気光学効果を利用した素子であるか、又は、光変調素子は、有機材料の電気光学効果を利用した素子であることがより好ましい。LT結晶又はKTN結晶からなる光変調素子を用いれば、温度環境変動に対して安定した信頼性の高い光モジュールとできる。一方、有機材料からなる光変調素子を用いれば、他の光学素子との一体化形成が可能となり、製造や実装のコストの安価な光モジュールとできる。
【0012】
本発明の第1の態様の上記のいずれの構成においても、光導波路は、マルチモード光導波路であることが好ましい。マルチモード光導波路を用いることで他の光学素子との光結合の精度を緩和し、安価に製造することが可能となる。また、光変調素子は、入射側の光導波路一つに対して複数のマッハツェンダ干渉部が並列に形成されていることが好ましい。このような構成とすれば、複数の高速データ伝送を簡単な構成で実現できる。
【0013】
本発明の第1の態様の上記のいずれの構成においても、光変調素子と該光変調素子を駆動するドライバICとが単一の回路基板に形成されていることが好ましく、これに加えて、ドライバICは、回路基板の光変調素子が実装された面とは反対側の面に実装されていることが好ましい。これらの場合には、ドライバICと光変調信号生成用ICとの間の電気回路線路中に、接離可能な接続部を有することがより好ましい。このような構成とすれば、実装する素子間を一つの電気回路パターンで形成できるため、耐ノイズ性が高く、インピーダンス不整合によって光変調特性を劣化させることのない、信頼性の高い光モジュールとできる。また、ドライバICを光変調素子と反対側の面に実装することで、これらを近接させることが可能となり、耐ノイズ性が一層高く、インピーダンス不整合による光変調特性の劣化をより低減した信頼性の高い光モジュールとできる。さらに、ドライバICと光変調信号生成用ICとの間の電気回路線路中に接離可能な接続部を設けることで、温度変化や経時変化によって光軸精度が劣化する光コネクタを用いる必要が無くなり、メンテナンスが不要で信頼性の高い光モジュールとできる。
又は、光変調素子を駆動するドライバICと光変調信号生成用ICとの間の電気回路線路中に、接離可能な接続部を有することが好ましい。ドライバICと光変調信号生成用ICとの間の電気回路線路中に接離可能な接続部を設けることで、温度変化や経時変化によって光軸精度が劣化する光コネクタを用いる必要が無くなり、メンテナンスが不要で信頼性の高い光モジュールとできる。
又は、光変調素子を駆動するドライバICと該光変調素子との間の電気回路線路中に、接離可能な接続部を有することが好ましい。このような構成とすれば、ドライバICの放熱性を向上させることが可能となり、信頼性の高い光モジュールとできる。
【0014】
本発明の第1の態様の上記のいずれの構成においても、光伝送媒体が光信号を双方向に伝送することが好ましい。このような構成とすれば、光伝送媒体の数を増やすことなく簡単な構成で高速データ伝送が可能となる。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として。本発明の第1の態様の上記のいずれかの構成にかかる光モジュールと樹脂製光伝送媒体とを介して画像情報を伝送することを特徴とする画像形成装置を提供するものである。このような構成とすれば、電磁ノイズに対して強く伝送品質が劣化することなく、また画像データ伝送線の本数を電気ケーブルと比して大幅に削減し、かつ高速かつ高画質での画像形成が可能な画像形成装置とできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、10Gbpsを越える高速データ伝送を可能とする光モジュール、及びこれを用いた画像形成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1に、本実施形態にかかる光モジュールの構成を示す。光モジュール10は、半導体レーザからなる発光素子1と、発光素子1に隣接した受光素子2a、2bとがベース基板8に配置されている。また、ベース基板8には光導波路からなる光変調素子5と、カップリングレンズ3、4a、4b、6a、6bが配置され、各々が光学的に結合されている。
【0018】
光変調素子の短辺側の一端には発光素子1又は受光素子2a、2bがカップリングレンズ3、4a、4b(カップリングレンズ3は発光素子1用のレンズ、カップリングレンズ4a、4bは各々受光素子2a、2b用のレンズ)が各々配置され、他端には伝送媒体となる光ファイバ7aがカップリングレンズ6a、6bを介して光学的に結合されている。光モジュール10は、伝送媒体を二つ並列に配置した構成であり、光変調素子5内の光伝送経路については後述する。
【0019】
ベース基板8は、上記の光学素子群のほか光変調素子5を駆動するためのドライバIC9が実装され、また各素子への電気配線パターンが形成されている。
各素子が実装されたベース基板8は、筐体上部11と筐体下部12とで包囲密封されて収納されている。なお、高湿度環境での使用の場合は、防錆及び光変調素子5の劣化を防ぐために筐体上部11と筐体下部12との間にパッキンなどの部材を配置した上で密封封止することが好ましい。
【0020】
図2に、ベース基板8の拡大図を示す。ベース基板8は単一の材料からなり、一側面に外部からの電気信号(光変調信号を生成する電気信号)とを接続するための電気配線パターンがベース基板8の凸部8aの表面に形成されており、パターン部分8bは筐体の外部に露出している。
なお、筐体上部11、筐体下部12の材質は駆動用ドライバIC9や光変調素子5に接続される電極パターンの外部からの電磁ノイズに対して耐性を持たせるため、磁気シールド可能な部材、鉄系金属板金、パーマロイ材料が好適である。
【0021】
図3に、基板への実装及び接続の状態を示す。基板31には光変調素子5を駆動するためのドライバIC9へ変調する電気信号を出力する変調信号生成用IC33が実装され、コネクタ32を介してドライバIC9と変調信号生成用IC33とが電気的に接続されている。
コネクタ32は、光モジュール10のベース基板8の凸部8aが電気的に接続される圧接部を備えた凹部32aを有しており、光モジュール10の凸部8aを凹部32aへ挿入嵌合することにより機械的に圧接されて電気的に接続される。この接続部分は単なる挿入嵌合だけでよいため、光伝送特性に関係することはない。
【0022】
なお、上記構成では、光伝送媒体中でコネクタを設ける場合に必要となる光コネクタ(光結合するための光軸合わせをμmオーダーで高精度に行う必要があり、電気コネクタに比較して高価)を使用する必要がない。光コネクタを用いる構成では、光軸合わせ高精度に実施したとしても、温度変化や経時により次第に光軸精度が劣化するため、メンテナンスが必須となり、信頼性確保のためにもコストがかかるといった不具合もある。その点、本実施形態にかかる光モジュールのように、電気回路線路中に接離可能な接続部を設けた構成ではこのような不具合が生じない。
【0023】
図3に示す構成では、変調信号生成用IC33と光モジュール内のドライバIC9の間を電気コネクタで接離しているが、ドライバIC9の発熱が多く放熱性を向上させる必要がある場合にはドライバIC9を基板31に実装し、別途放熱板を設置したり空冷を施すなどしても良い。ドライバIC9の温度上昇が非常に大きくなると、光モジュール10内全体が影響を受けるため、光学素子の特性や取り付け精度の劣化が問題となる場合にはドライバIC9を基板31に実装することが好ましい。この場合には、ドライバIC9と光変調素子5との電気回路線路中に接離可能な電気コネクタを配置する。
【0024】
図4に、光変調素子5の拡大図を示す。光変調素子5は、光変調部と合波・分波部の光導波路とからなる。図中の矢印は光の導波方向を示している。光変調素子5は電気光学効果(材料に電界を印加することによって材料の屈折率が変化する効果)を利用して光変調素子5へ入射した光を高速に光変調する素子であり、熱拡散のなどの方法によって光変調素子5の基となる光学結晶5kの表面に光導波路を形成する。
光導波路はY字状に分岐することによって光路を二つに分けてマッハツェンダ構成を形成し、一方の光路に他方に対して光の位相が反転するような電界をかけることによって出力側で干渉を発生させ、光を変調する。
【0025】
光変調素子5の材料としては、LN(ニオブ酸リチウム)、LT(タンタル酸リチウム)又はKTN(カリウム、タンタル、ニオブを含む結晶)のいずれかの光学結晶を薄板状に形成したものからなる。LTは温度変化及び経時変化による特性の劣化がLNと比較して少ないため、50℃を越える高温環境で使用される場合に好適である。さらに、KTNは電気光学定数(電界を印加することによって変化する材料の屈折率の変化量の係数。電気光学定数が大きいと屈折率を変化させる距離が短くて済むため、光変調素子の短縮化が可能となる。)がLNやLTの32pm/Vに対して約20倍であり、変調駆動電圧の低減や素子の小型化を図るためには好適である。
【0026】
また、光変調素子5は有機材料を用いて形成することも可能である。有機材料の中でも有機高分子材料は作製プロセスが常温であるため、カップリングレンズのような他の光学素子との一体化、ベース基板との一体化形成が可能となり、かつ無機光学結晶(上記LN、LT、KTN)のような高温プロセス装置が必要ないといったメリットがある。
【0027】
また、ベース基板8の材料は、光変調素子5の材料に合わせて適宜設定することが可能であり、光変調素子5の材料がLN、LT、KTNなどの無機光学結晶の場合、電気絶縁性が高く、かつ熱膨張係数が近い、セラミック(アルミナ)基板やシリコン基板が好適である。また、光変調素子5の材料が有機材料の場合は、電気絶縁性が高くかつ熱膨張係数が近い同種の有機材料が好適である(ベース基板と光変調素子部とを一体形成することが安価に制作できるため、より好適である。)。なお、光変調素子5にいずれの材料を用いた場合でもベース基板8の材料として不適であるのは、アルミ合金、亜鉛合金材料である。
以下に、熱膨張係数の例を示す。LN:0.3×10-5/℃、アルミナセラミック:0.7×10-5/℃、シリコン:0.4×10-5/℃、アルミ合金:2.4×10-5/℃、亜鉛合金:4.0×10-5/℃、有機高分子(ポリイミド):4.5×10-5/℃である。ベース基板8と光変調素子5との熱膨張係数の差は1.0×10-5/℃以内とすることが好ましい。熱膨張係数の差が上記の値よりも大きいと、光変調素子5に変形や歪が生じ、消光比や減衰特性すなわち光伝送特性が劣化する。また、電気光学効果を利用した光変調素子は発光素子から入射される波長依存性が低いため、波長のばらつきが小さく、温度変動にともなう波長の変動の際にも光変調特性が劣化しないというメリットがある。
【0028】
電気光学効果ではなく電界吸収効果を利用する光変調素子もあるが、電界吸収効果を利用する場合には、波長のばらつきに対する余裕度が低くなるため、発光光源波長を厳密に管理する必要が生じる。また、変調された光の波長が変動する「波長チャープ」が発生する恐れがある。
【0029】
本実施形態の光変調素子5は、短辺側の略中央端部に配置された発光素子1からの光束がカップリングレンズ3で集光され光導波路部5aに入射され、第1のY分岐部5bで二つの光路に分岐させられる。各々分岐させられた光路は、第2のY分岐部5cにおいてさらにマッハツェンダ干渉部を形成している。
マッハツェンダ干渉部の一方の光導波路上には光の導波方向と平行に電極パターン5dが形成されている。電極パターン5dに変調用の駆動電圧を印加することにより、Y合流部5eに変調信号を伴う光信号が出力される。出力された光信号は、別の光導波路5fと合流部5gで合流し、光結合された伝送媒体7aへ導波される。伝送媒体7aは、矢印で示すように光変調信号を両方向に伝送(導波)するいわゆる一芯双方向の光伝送を行っている。
【0030】
なお、上記のY分岐部や合流部の角度は1〜10°の範囲で形成され、具体的な角度は適宜設定される。図4に示す構成では、全ての分岐箇所が同じ角度となっている。上記角度範囲のうち、5〜10°の範囲では、光変調素子5の全長(光の導波方向の長辺方向)を短くできるため好ましい。分岐や合流の角度が10°以上となると分岐時に光散乱が多くなって減衰量が大きくなる。このため、高出力の発光素子が必要となり、消費電力が増大してしまう。逆に、1°未満では光変調素子が非常に長くなり、材料の歩留まりが低く非常に高価となる。最も安定して結晶成長を確保できる4インチウエハのサイズを考慮した場合、光変調素子の全長は50mm以下であることが好ましい。
【0031】
伝送媒体7aへの光信号の送信は、発光素子1からの光信号が上記の経路で矢印Aに示す方向へ導波することによってなされ、光信号の受信は、伝送媒体7aからの光信号が矢印Bの方向に導波し、受光素子2aで受光することによってなされる。したがって、合流部5gと光導波路端5jとの間は送信信号と受信信号とが双方向に導波する部分となる。また、送信側の光導波路(5dの経路)は、シングルモード光導波路又はマルチモード光導波路であり、受信側の光導波路(5fの経路)はマルチモード光導波路としている。光変調素子5の変調特性として光損失が小さく、かつ高い消光比が求められ、100m以上の長距離を接続する場合、送信側はシングルモード光導波路が好適である。
一方、100m以下の接続のような比較的短距離の場合、マルチモード光導波路でも対応可能であり、その場合には光変調素子と光結合するアライメント(機械的な位置調整)精度を緩和して安価な組立が可能となるというメリットがある。
また、受信側の光導波路5fは、マルチモード光導波路で形成されている。受光素子2aへの光量を確保するために伝送媒体7aから光導波路5jに入射する際に光損失を極力抑える必要があるため、光導波路5fがマルチモード光導波路であることは必須である。なお、光導波路をシングルモードにするかマルチモードにするかは光導波路の幅に応じて適宜設定可能であり、使用波長に対応して設計された所望の光導波路を熱拡散法などで形成する。また、マルチモード光導波路の場合、光結合の際の光量が確保できれば必ずしも上記カップリングレンズ3、4a、4b、6a、6bは設けなくても良い。これらを備えない構成とすることによって、部品点数を削減し低コストで製造できるようになる。
【0032】
図4は、送受信可能な伝送媒体と光変調部とが2列に並列して形成された構成であり、複数の伝送信号を扱う場合でも発光素子は一つで済み、複数の伝送信号を扱う変調信号は複数のマッハツェンダ干渉部に設けられた電極パターンに各々伝送信号を印加すれば良く、波長多重方式(一つの伝送媒体に波長の異なる光信号を重ねて伝送する方式)よりも構成が簡単である。波長多重方式は、波長が異なる発光素子を複数配置する必要があり、波長の変動も伝送特性に影響を及ぼすため、発光素子自体の波長安定性が求められ、発光素子部が高価となる。これに対し、本実施形態の構成では、発光素子は一つだけでよいため、構成が簡単で低コストである。
【0033】
また、発光素子1としては波長390〜780nmの端面発光レーザダイオードが好適である。780nm以上では可視性が低いため光結合時の作業性が悪く好ましくない(波長650nm以下の光は確実に視認できるためより好適である)。また、波長390nm未満の光は、LN、LT、KTN材質の光損傷が問題となり消光比が劣化するため好ましくない。
端面発光レーザダイオードを用いることにより、発光素子1からのレーザビームが反射ミラーなどを介さずに直接カップリングレンズ3へ入射させられるため、光の減衰が生じず効率が良くなる。
【0034】
図8に、ベース基板8の光変調素子1が実装されている面とは反対側に変調駆動用ICが実装されている状態を示す。図8(a)が光変調素子側からみたベース基板全体概要図であり、図8(b)は断面図である。駆動用IC9は10Gbps以上の電気信号を1〜5Vの高電圧で光変調素子へ印加するため、接続する配線パターンはノイズ対策及びインピーダンス整合を行う必要があり、光変調素子5と駆動用IC9とは近接して配置する必要がある。図2に示したようにベース基板8上に光変調素子5と隣接して配置するよりも、より近接されられるため好適である。
【0035】
図5は、図4に示した光変調素子を一単位(二つの伝送媒体に対応できるように光変調部を二つ有する)として、光変調素子を複数配置した例である。同じ光変調素子を単純に複数配置すればよいため、多数本の伝送媒体への対応展開性に優れ、さらに複数配置した光変調素子の光導波路を単一の基板上に一体的に形成することにより、別々の基板を隣接配置して固定するよりも組立生産効率が向上し、低コストでの製造が可能となる。
【0036】
図6に、本実施形態にかかる光モジュールを搭載した画像形成装置の構成を示す。この画像形成装置は、フルカラー画像をプリント出力する画像形成装置であり、装置内に各色に相当する四つの感光体20Y、20M、20C、20K(以下、符号に対して添え字Y、M、C、Kを適宜付し、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:ブラックの各色に対応する構成要素として区別する)が並設されたタンデム型のカラー画像形成装置である。
【0037】
装置上部から順に、光走査装置105、現像装置106、感光体103、中間転写ベルト21、定着装置114、給紙カセット111がレイアウトされている。なお、不図示のスキャナ装置は光走査装置105の上部または離れた位置に別途配設されている。
【0038】
中間転写ベルト21には各色に対応した感光体20Y、20M、20C、20Kが並列順に等間隔で配設されている。感光体20Y、20M、20C、20Kは同一径であり、その周囲には電子写真プロセスを行うための部材が配設されている。感光体20Yを例に説明すると、不図示の帯電チャージャ、光走査装置105から画像情報に基づいて出射されたレーザビームLY、現像装置106Y、不図示の転写チャージャ、不図示のクリーニング装置などが順に配設されている。他の感光体20M、20C、20Kについても同様である。すなわち、本実施形態においては、感光体20Y、20M、20C、20Kを各色ごとに設定された被走査面とするものであり、各々に対して光走査装置105からレーザビームLY、LM、LC、LKが照射される。
【0039】
帯電チャージャによって一様に帯電させられた感光体20Yが図中の矢印A方向に回転することによってレーザビームLYは副走査をし、感光体20Y上に静電潜像が形成される。また、光走査装置105によるレーザビームLYの照射位置よりも感光体の回転方向の下流側には感光体20Yにトナーを供給する現像器106Yが配設され、イエローのトナーが供給される。同様に感光体20M、20C、20KにはそれぞれM、C、Kの単色トナー像が形成される。各感光体20は、現像器106の配設位置よりもさらに回転方向下流側で中間転写ベルト21と接している。中間転写ベルト21は、複数のローラ102a、102b、102cによって巻き付けられ、不図示のモータの駆動によって図中矢印B方向に移動搬送される。中間転写ベルト21の任意の場所は搬送によって、感光体20Y、20M、20C、20Kの順に移動する。中間転写ベルト21には、感光体20Y、20M、20C、20Kで現像された各色の単色画像が順次重ね合わせて転写され、カラー画像が形成される。その後、給紙トレイ111から転写紙が図中矢印C方向へ搬送され、中間転写ベルト21上のカラー画像が転写紙に転写される。カラー画像が形成された転写紙は、定着器114によって定着処理が施され、フルカラー画像が定着した状態で排紙される。
【0040】
図1に示した光モジュールは、上記画像形成装置の画像を読みとるスキャナ部(図6では不図示)のスキャナコントロール部の各々の基板に実装される。また、システムコントロール部と画像処理部の各々の基板にも実装され、樹脂製の光ファイバ又は樹脂製の光導波路シートからなる光伝送媒体で接続される。画像形成装置内は光導波路シート、画像形成装置間は光ファイバで接続することが好ましい。
樹脂製の光ファイバは、石英製に比べて屈曲性に優れているため、最小曲率半径も小さく装置内に配置された各ユニット間や隣接したコントロール基板間のような狭い空間内で接続する場合にレイアウトの制約が少なく好ましい。また、樹脂製の光導波路シートの場合、屈曲性は光ファイバよりも一層優れるため、特に画像形成装置内のコントロール基板間のような基板面に対して垂直方向に近接した(10cm以下)短距離を接続する場合に好適である。
【0041】
図7に、コントロール基板に光モジュールを実装し、画像形成装置内及び画像形成装置間を光伝送媒体で接続した状態を示す。画像形成装置内は、画像データ入力手段を構成するスキャナコントロール部61とシステムコントロール部62とが光モジュール10と樹脂製の光導波路シート64を介して接続されている。同様に、画像データ出力手段を構成する画像処理部63は、樹脂製の光導波路シート65を介してシステムコントロール部62と接続されている。光モジュール10の送信側はスキャナコントロール部61から入力された画像情報に応じた電気信号を光信号に変換し、受信側はシステムコントロール部62が入力された光信号を電気信号に変換する。光伝送媒体は、電磁ノイズ対策が不必要でありケーブル径も細いため、装置内の2m以上のレイアウトにも好適である。
さらに、他の画像形成装置と光ファイバ66で接続することで、他の画像形成装置と協働して画像処理部の画像データを処理する画像形成システムとすることができる(複数台の画像形成装置を連結することにより複数枚の画像を同時に形成し、プリント速度を向上させられる。光によって画像情報を伝送するため距離や連結する台数に制約が無く拡張性が高い。)。
【0042】
例示する構成では、伝送媒体である光ファイバ66によって画像形成装置間の接続している。電気ケーブルによる接続では10Gbpsの高速伝送をしようとすると電磁ノイズの放射によって他の機器を誤動作させたり、他の機器からの電磁ノイズを受けて伝送エラーが発生し、プリント速度や画質が劣化したりする。さらに、伝送距離も最大で2mであり、画像形成装置としての拡張性が低いという問題もある。すなわち、電気ケーブルによる装置間の接続では、伝送品質を劣化させることなく100m離れた画像形成装置同士を接続するという要求には対応できない。
また、電気ケーブルによるシリアル伝送では、伝送に差動伝送方法を用いるため、一つの信号を送るためには正負反転した2系統の伝送信号を一組とする必要があり、接地線も含めると少なくとも4本の配線が必要となる。これに対し、光伝送では差動伝送する必要が無いため伝送線(伝送媒体)は一本で良く、画像形成装置の画像データ伝送線の本数を大幅に削減できる。
【0043】
このように、本実施形態にかかる光モジュールは、光伝送媒体を介して情報を高速で送受信することが可能である。よって、これを画像形成装置に適用すれば、他の画像形成装置と協働して高速かつ高画質に画像を形成できるようになる。
【0044】
なお、実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれに限定されることはなく様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の好適な実施の形態にかかる光モジュールの構成を示す図である。
【図2】光モジュールのベース基板の拡大図である。
【図3】光モジュールの基板への実装状態を示す図である。
【図4】光変調素子の構成を示す図である。
【図5】光変調素子を二つ並列に配置する場合の構成例を示す図である。
【図6】本発明の好適な実施の形態にかかる光モジュールを適用した画像形成装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の好適な実施の形態にかかる光モジュールを用いて二台の画像形成装置を連結した状態を示す図である。
【図8】ベース基板への駆動用ICの実装例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 発光素子
2a、2b 受光素子
3、4a、4b、6a、6b カップリングレンズ
5 光変調素子
5a 光導波路部
5b 第1のY分岐部
5c 第2のY分岐部
5d 電極パターン
5e Y合流部
5f 光導波路
5g 合流部
5j 光導波路端
7a、7b 伝送媒体
8 ベース基板
9 駆動用IC
10 光モジュール
11 筐体上部
12 筐体下部
31 基板
32 コネクタ
32a 凹部
33 変調信号生成用IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と受光素子と光導波路とで構成された光変調素子と、光伝送媒体とが光結合され、少なくとも前記発光素子と前記受光素子と前記光変調素子とが単一の筐体に収納されたことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記光変調素子は、前記発光素子が発する光信号を電気光学効果によって変調することを特徴とする請求項1記載の光モジュール。
【請求項3】
前記光変調素子は、LT結晶又はKTN結晶の電気光学効果を利用した素子であることを特徴とする請求項2記載の光モジュール。
【請求項4】
前記光変調素子は、有機材料の電気光学効果を利用した素子であることを特徴とする請求項2記載の光モジュール。
【請求項5】
前記光導波路は、マルチモード光導波路であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の光モジュール。
【請求項6】
前記光変調素子は、入射側の前記光導波路一つに対して複数のマッハツェンダ干渉部が並列に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の光モジュール。
【請求項7】
前記光変調素子と該光変調素子を駆動するドライバICとが単一の回路基板に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の光モジュール。
【請求項8】
前記ドライバICは、前記回路基板の前記光変調素子が実装された面とは反対側の面に実装されていることを特徴とする請求項7記載の光モジュール。
【請求項9】
前記ドライバICと光変調信号生成用ICとの間の電気回路線路中に、接離可能な接続部を有することを特徴とする請求項7又は8記載の光モジュール。
【請求項10】
前記光変調素子を駆動するドライバICと光変調信号生成用ICとの間の電気回路線路中に、接離可能な接続部を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の光モジュール。
【請求項11】
前記光変調素子を駆動するドライバICと該光変調素子との間の電気回路線路中に、接離可能な接続部を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の光モジュール。
【請求項12】
前記光伝送媒体が光信号を双方向に伝送することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の光モジュール。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項記載の光モジュールと樹脂製光伝送媒体とを介して画像情報を伝送することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−212531(P2007−212531A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29677(P2006−29677)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】