光モジュール
【課題】低コスト且つ簡便な方法で、円筒状部材内にフェルールが挿入される時の円筒状部材の摩耗を抑制することができる光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール1は、光ファイバを保持するフェルール3を有する光コネクタ4と、フェルール3と嵌合する円筒状のフェルール受容部9を有する金属スリーブ5とを備えている。フェルール受容部9の先端面近傍の内壁面には、金属スリーブ5の周方向に延びる環状溝部10が形成されている。環状溝部10には、フェルール3がフェルール受容部9内に挿入される際に弾性力によりフェルール3の中心軸を金属スリーブ5の中心軸に一致させるための略リング状のフェルール姿勢アシスト部材11が収容されている。フェルール姿勢アシスト部材11は、フェルール3を保持する3つの保持部12と、各保持部12同士を繋ぐように設けられた弾性変形可能な3つの梁部13とからなっている。
【解決手段】光モジュール1は、光ファイバを保持するフェルール3を有する光コネクタ4と、フェルール3と嵌合する円筒状のフェルール受容部9を有する金属スリーブ5とを備えている。フェルール受容部9の先端面近傍の内壁面には、金属スリーブ5の周方向に延びる環状溝部10が形成されている。環状溝部10には、フェルール3がフェルール受容部9内に挿入される際に弾性力によりフェルール3の中心軸を金属スリーブ5の中心軸に一致させるための略リング状のフェルール姿勢アシスト部材11が収容されている。フェルール姿勢アシスト部材11は、フェルール3を保持する3つの保持部12と、各保持部12同士を繋ぐように設けられた弾性変形可能な3つの梁部13とからなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信等で使用される光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光モジュールとしては、例えば特許文献1に記載されているように、スリーブ(円筒状部材)の内壁面を低摩擦係数の材料で被覆することにより、スリーブ内にフェルールが挿入される時のスリーブ内壁面の摩耗を抑制するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−107807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、スリーブの内壁面を低摩擦係数の材料で被覆するために、スリーブの内壁面に低摩擦材料の樹脂を塗布する等の手間がかかり、コストアップとなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、低コスト且つ簡便な方法で、円筒状部材内にフェルールが挿入される時の円筒状部材の摩耗を抑制することができる光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光ファイバを保持するフェルールと、フェルールと嵌合する円筒状部材とを備えた光モジュールにおいて、円筒状部材におけるフェルールが挿入される側の端面近傍の内壁面には、円筒状部材の周方向に延びる環状溝部が設けられ、環状溝部には、フェルールが円筒状部材内に挿入される際に弾性力によりフェルールの中心軸を円筒状部材の中心軸に一致させるためのフェルール姿勢アシスト部材が収容されていることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の光モジュールにおいては、円筒状部材におけるフェルールが挿入される側の端面近傍の内壁面に設けられた環状溝部に、フェルール姿勢アシスト部材が収容されている。このため、フェルールが円筒状部材に対して傾いた状態で円筒状部材内に挿入されても、フェルールの先端がフェルール姿勢アシスト部材に接触し、フェルール姿勢アシスト部材の弾性力によってフェルールの中心軸がスリーブの中心軸に一致するようになる。そして、その状態で、フェルールが円筒状部材に嵌合されることになる。従って、円筒状部材の摩耗を抑えるために、特に円筒状部材の内壁面に低摩擦材料の樹脂等を塗布する必要は無い。これにより、低コスト且つ簡便な方法で、円筒状部材内にフェルールが挿入される時の円筒状部材の摩耗を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、フェルール姿勢アシスト部材は、フェルールを保持する少なくとも3つの保持部と、各保持部同士を繋ぐように設けられた弾性変形可能な少なくとも3つの梁部とを有する。このような構成では、フェルール姿勢アシスト部材は弾性変形可能な少なくとも3つの梁部を有しているので、各梁部を弾性変形させることでフェルール姿勢アシスト部材を縮径した状態で、フェルール姿勢アシスト部材を円筒状部材内に挿入して環状溝部に収容することができる。また、フェルール姿勢アシスト部材が少なくとも3つの保持部を有しているので、フェルール姿勢アシスト部材によりフェルールを安定して保持することができる。
【0009】
また、好ましくは、フェルール姿勢アシスト部材の内径は、円筒状部材の内径よりも小さく且つフェルールの外径よりも小さい。この場合には、フェルールが円筒状部材に対して傾いた状態で円筒状部材内に挿入されるときに、フェルールの先端がフェルール姿勢アシスト部材に接触しやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コスト且つ簡便な方法で、円筒状部材内にフェルールが挿入される時の円筒状部材の摩耗を抑制することができる。これにより、例えば円筒状部材が金属で形成され、フェルールがセラミックで形成されている場合、円筒状部材の金属が摩耗してフェルールに付着することでフェルールの外形寸法が変化するといった不具合を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係わる光モジュールの一実施形態を示す斜視図(一部断面を含む)である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】金属スリーブの斜視図(一部断面を含む)である。
【図4】フェルール姿勢アシスト部材の斜視図である。
【図5】フェルール姿勢アシスト部材の正面図及び側面図である。
【図6】フェルール姿勢アシスト部材に外力がかかる様子を示す側面図である。
【図7】金属スリーブのフェルール受容部内にフェルール姿勢アシスト部材を挿入する状態を示す斜視図(一部断面を含む)である。
【図8】フェルール受容部の環状溝部にフェルール姿勢アシスト部材が収容された状態を示す斜視図(一部断面を含む)である。
【図9】従来一般の光モジュールの一例を示す斜視図(一部断面を含む)である。
【図10】フェルール及び金属スリーブの中心軸がずれた状態で、フェルールが金属スリーブ内に挿入される様子を示す概略断面図である。
【図11】フェルールが金属スリーブのフェルール受容部内に挿入される状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係わる光モジュールの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係わる光モジュールの一実施形態を示す斜視図(一部断面を含む)であり、図2は、図1のII−II線断面図である。
【0014】
各図において、本実施形態の光モジュール1は、レーザダイオードやフォトダイオード等の光素子を有するモジュール本体2と、光素子と光学的に結合される光ファイバを保持するフェルール3を有する光コネクタ4と、モジュール本体2に連結された金属スリーブ5と、この金属スリーブ5に固定されたレセプタクル6とを備えている。レセプタクル6には、光コネクタ4のハウジング7を係止する1対のラッチレバー8が設けられている。
【0015】
金属スリーブ5は、セラミック製のフェルール3と協働し、光コネクタ4の粗い寸法精度(誤差)を吸収して光ファイバを光素子に対して整列させるものである。金属スリーブ5は、図1及び図3に示すように、フェルール3と嵌合する円筒状のフェルール受容部9を有している。フェルール受容部9の内径とフェルール3の外径との内外径精度(公差)は、約1μm以下である。フェルール受容部9の先端部(金属スリーブ5におけるフェルール3が挿入される側の端部)の内壁面には、面取り9aが形成されている。
【0016】
フェルール受容部9の先端面近傍の内壁面には、金属スリーブ5の周方向に延びる環状溝部10が面取り9aに隣接して形成されている。環状溝部10の側面10aは、金属スリーブ5の中心軸に対して45度の角度で傾斜している。なお、金属スリーブ5の中心軸に対する側面10aの角度としては、30度〜90度の範囲内であれば良い。
【0017】
このような環状溝部10には、略リング状のフェルール姿勢アシスト部材11が収容されている。フェルール姿勢アシスト部材11は、フェルール3がフェルール受容部9内に挿入される際に弾性力によりフェルール3の中心軸をフェルール受容部9(金属スリーブ5)の中心軸に一致させるための弾性部材である。具体的には、フェルール姿勢アシスト部材11は、熱可塑性を有する樹脂材料(例えばPPSやポリカーボネート等)で形成されている。
【0018】
フェルール姿勢アシスト部材11は、図4及び図5に示すように、フェルール3の外周面と接触しフェルール3を保持する3つの保持部12と、各保持部12同士を繋ぐように設けられた弾性変形可能な3つの梁部13とからなっている。各保持部12は、等間隔で配置され、環状溝部10に嵌合するように梁部13に対して外側に突出した形状をなしている。
【0019】
梁部13は、保持部12の一側部から隣接する保持部12の他側部に向かうように、フェルール姿勢アシスト部材11の周方向に対してクロス状に延びている。これにより、梁部13がフェルール姿勢アシスト部材11の周方向に延びる場合に比べて梁部13が長くなるため、梁部13はバネとしての機能を十分発揮することが可能となる。
【0020】
フェルール姿勢アシスト部材11の内径は、フェルール受容部9の内径よりも小さく、且つフェルール3の外径よりも小さくなっている。図6に示すように、フェルール姿勢アシスト部材11に外側からの外力が加わると、梁部13が内側に弾性変形し、フェルール姿勢アシスト部材11の外径がフェルール3の外径(≒フェルール受容部9の内径)よりも小さくなる。フェルール姿勢アシスト部材11への外力の付加を解除すると、梁部13のバネ力によってフェルール姿勢アシスト部材11は元の状態(形状)に戻る。
【0021】
また、フェルール姿勢アシスト部材11の内側にフェルール3を挿通させると、梁部13が外側に弾性変形して、保持部12が外側に押し広げられる。フェルール3がフェルール姿勢アシスト部材11から抜去されると、梁部13のバネ力によってフェルール姿勢アシスト部材11は元の状態に戻る。
【0022】
このようなフェルール姿勢アシスト部材11を金属スリーブ5のフェルール受容部9に装着する際には、図7に示すように、フェルール姿勢アシスト部材11をフェルール受容部9の先端のフェルール挿入口からフェルール受容部9内に挿入する。このとき、フェルール姿勢アシスト部材11を治具等でつまんでフェルール姿勢アシスト部材11に外力を与えることで、上述したように梁部13の弾性変形によりフェルール姿勢アシスト部材11が縮径されるため、フェルール姿勢アシスト部材11をフェルール受容部9内に容易に挿入することができる。
【0023】
そして、フェルール受容部9内における環状溝部10の位置でフェルール姿勢アシスト部材11をフリーにすると、図8に示すように、梁部13の弾性変形が開放されてフェルール姿勢アシスト部材11の外径が広がり、保持部12が環状溝部10に嵌まり込むようになる。このとき、環状溝部10の手前側(フェルール挿入口側)及び奥側にはフェルール受容部9の壁が存在しているので、金属スリーブ5の軸方向に対するフェルール姿勢アシスト部材11の動きが規制され、フェルール姿勢アシスト部材11が金属スリーブ5内から抜け出ることは無い。
【0024】
その後、図1に示すように、フェルール3が金属スリーブ5のフェルール挿入口からフェルール受容部9内に挿入される。
【0025】
ここで、比較例として、従来一般の光モジュールの一例を図9に示す。同図に示す光モジュール50では、金属スリーブ5のフェルール受容部9に上記の環状溝部10は形成されておらず、またフェルール受容部9に上記のフェルール姿勢アシスト部材11は装着されていない。光モジュール50の他の構造は、上記の光モジュール1と同様である。
【0026】
このような光モジュール50において、フェルール3を金属スリーブ5のフェルール受容部9内に挿入する際に、図10に示すように、両者の中心軸がずれていると、フェルール3が金属スリーブ5に対して傾いた状態でフェルール受容部9内に挿入されることとなる。
【0027】
このとき、上述したようにフェルール受容部9の内径とフェルール3の外径との公差は1μm程度と極めて小さいため、フェルール3の先端がフェルール受容部9の内壁面に当たり、フェルール3の姿勢を金属スリーブ5に揃えようとするモーメントがフェルール3に発生し、このモーメントによってフェルール受容部9とフェルール3との接触点で摩擦が生じることとなる(図10参照)。このため、金属スリーブ5が摩耗し、金属スリーブ5の金属がフェルール3に付着することで、フェルール3の外形寸法が変化し、結果的に金属スリーブ5とフェルール3との所望の嵌合特性が得られないことがある。
【0028】
これに対し本実施形態では、金属スリーブ5におけるフェルール受容部9の先端近傍の内壁面に環状溝部10を形成し、この環状溝部10内に略リング状のフェルール姿勢アシスト部材11を収容したので、図11に示すように、フェルール3がフェルール受容部9内に挿入される際に、フェルール3が金属スリーブ5に対して傾いた状態(モーメントMが生じた状態)となっていても、フェルール3の先端が最初にフェルール姿勢アシスト部材11に当たるようになる。
【0029】
このとき、フェルール姿勢アシスト部材11は、梁部13の弾性変形によりフェルール3を受け止め、梁部13の弾性力によりフェルール3を支えて押し戻そうとする。すると、フェルール3には、フェルール姿勢アシスト部材11によってモーメントMに拮抗する力Pが働くようになる。このため、フェルール3の中心軸が金属スリーブ5の中心軸に略一致するように、フェルール姿勢アシスト部材11によりフェルール3が押されることとなる。つまり、フェルール3の先端がフェルール受容部9の内壁面(金属部分)に接触する前に、フェルール3に生じたモーメントMがキャンセルされる。これにより、金属スリーブ5とフェルール3との接触による金属スリーブ5の摩耗を抑制することができる。
【0030】
以上のように本実施形態によれば、フェルール姿勢アシスト部材11を設けることにより、金属スリーブ5の摩耗を抑制するために金属スリーブ5の内壁面に樹脂コーティングを施す必要が無くなる。従って、低コストで且つ簡単な方法で、フェルール受容部9内にフェルール3が挿入される際の金属スリーブ5の摩耗を抑制することができる。従って、金属スリーブ5の摩耗に起因したフェルール3の外形寸法の変動を防止し、金属スリーブ9とフェルール3との所望の嵌合特性を得ることが可能となる。また、光モジュール1の製造工数や製造リードタイムの削減を図ることもできる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、フェルール姿勢アシスト部材11を、3つの保持部12と可撓性を有する3つの梁部10とからなる略リング状構造としたが、保持部12及び梁部13の数としては、特にそれには限られない。ただし、フェルール3を安定して保持するためには、保持部12は3つ以上あるのが望ましい。また、フェルール姿勢アシスト部材11の形状としては、特に略リング状に限られず、例えば梁部13の数を保持部12の数よりも少なくしたC型形状であっても良い。
【符号の説明】
【0032】
1…光モジュール、3…フェルール、5…金属スリーブ(円筒状部材)、9…フェルール受容部、10…環状溝部、11…フェルール姿勢アシスト部材、12…保持部、13…梁部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信等で使用される光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光モジュールとしては、例えば特許文献1に記載されているように、スリーブ(円筒状部材)の内壁面を低摩擦係数の材料で被覆することにより、スリーブ内にフェルールが挿入される時のスリーブ内壁面の摩耗を抑制するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−107807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、スリーブの内壁面を低摩擦係数の材料で被覆するために、スリーブの内壁面に低摩擦材料の樹脂を塗布する等の手間がかかり、コストアップとなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、低コスト且つ簡便な方法で、円筒状部材内にフェルールが挿入される時の円筒状部材の摩耗を抑制することができる光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光ファイバを保持するフェルールと、フェルールと嵌合する円筒状部材とを備えた光モジュールにおいて、円筒状部材におけるフェルールが挿入される側の端面近傍の内壁面には、円筒状部材の周方向に延びる環状溝部が設けられ、環状溝部には、フェルールが円筒状部材内に挿入される際に弾性力によりフェルールの中心軸を円筒状部材の中心軸に一致させるためのフェルール姿勢アシスト部材が収容されていることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の光モジュールにおいては、円筒状部材におけるフェルールが挿入される側の端面近傍の内壁面に設けられた環状溝部に、フェルール姿勢アシスト部材が収容されている。このため、フェルールが円筒状部材に対して傾いた状態で円筒状部材内に挿入されても、フェルールの先端がフェルール姿勢アシスト部材に接触し、フェルール姿勢アシスト部材の弾性力によってフェルールの中心軸がスリーブの中心軸に一致するようになる。そして、その状態で、フェルールが円筒状部材に嵌合されることになる。従って、円筒状部材の摩耗を抑えるために、特に円筒状部材の内壁面に低摩擦材料の樹脂等を塗布する必要は無い。これにより、低コスト且つ簡便な方法で、円筒状部材内にフェルールが挿入される時の円筒状部材の摩耗を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、フェルール姿勢アシスト部材は、フェルールを保持する少なくとも3つの保持部と、各保持部同士を繋ぐように設けられた弾性変形可能な少なくとも3つの梁部とを有する。このような構成では、フェルール姿勢アシスト部材は弾性変形可能な少なくとも3つの梁部を有しているので、各梁部を弾性変形させることでフェルール姿勢アシスト部材を縮径した状態で、フェルール姿勢アシスト部材を円筒状部材内に挿入して環状溝部に収容することができる。また、フェルール姿勢アシスト部材が少なくとも3つの保持部を有しているので、フェルール姿勢アシスト部材によりフェルールを安定して保持することができる。
【0009】
また、好ましくは、フェルール姿勢アシスト部材の内径は、円筒状部材の内径よりも小さく且つフェルールの外径よりも小さい。この場合には、フェルールが円筒状部材に対して傾いた状態で円筒状部材内に挿入されるときに、フェルールの先端がフェルール姿勢アシスト部材に接触しやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コスト且つ簡便な方法で、円筒状部材内にフェルールが挿入される時の円筒状部材の摩耗を抑制することができる。これにより、例えば円筒状部材が金属で形成され、フェルールがセラミックで形成されている場合、円筒状部材の金属が摩耗してフェルールに付着することでフェルールの外形寸法が変化するといった不具合を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係わる光モジュールの一実施形態を示す斜視図(一部断面を含む)である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】金属スリーブの斜視図(一部断面を含む)である。
【図4】フェルール姿勢アシスト部材の斜視図である。
【図5】フェルール姿勢アシスト部材の正面図及び側面図である。
【図6】フェルール姿勢アシスト部材に外力がかかる様子を示す側面図である。
【図7】金属スリーブのフェルール受容部内にフェルール姿勢アシスト部材を挿入する状態を示す斜視図(一部断面を含む)である。
【図8】フェルール受容部の環状溝部にフェルール姿勢アシスト部材が収容された状態を示す斜視図(一部断面を含む)である。
【図9】従来一般の光モジュールの一例を示す斜視図(一部断面を含む)である。
【図10】フェルール及び金属スリーブの中心軸がずれた状態で、フェルールが金属スリーブ内に挿入される様子を示す概略断面図である。
【図11】フェルールが金属スリーブのフェルール受容部内に挿入される状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係わる光モジュールの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係わる光モジュールの一実施形態を示す斜視図(一部断面を含む)であり、図2は、図1のII−II線断面図である。
【0014】
各図において、本実施形態の光モジュール1は、レーザダイオードやフォトダイオード等の光素子を有するモジュール本体2と、光素子と光学的に結合される光ファイバを保持するフェルール3を有する光コネクタ4と、モジュール本体2に連結された金属スリーブ5と、この金属スリーブ5に固定されたレセプタクル6とを備えている。レセプタクル6には、光コネクタ4のハウジング7を係止する1対のラッチレバー8が設けられている。
【0015】
金属スリーブ5は、セラミック製のフェルール3と協働し、光コネクタ4の粗い寸法精度(誤差)を吸収して光ファイバを光素子に対して整列させるものである。金属スリーブ5は、図1及び図3に示すように、フェルール3と嵌合する円筒状のフェルール受容部9を有している。フェルール受容部9の内径とフェルール3の外径との内外径精度(公差)は、約1μm以下である。フェルール受容部9の先端部(金属スリーブ5におけるフェルール3が挿入される側の端部)の内壁面には、面取り9aが形成されている。
【0016】
フェルール受容部9の先端面近傍の内壁面には、金属スリーブ5の周方向に延びる環状溝部10が面取り9aに隣接して形成されている。環状溝部10の側面10aは、金属スリーブ5の中心軸に対して45度の角度で傾斜している。なお、金属スリーブ5の中心軸に対する側面10aの角度としては、30度〜90度の範囲内であれば良い。
【0017】
このような環状溝部10には、略リング状のフェルール姿勢アシスト部材11が収容されている。フェルール姿勢アシスト部材11は、フェルール3がフェルール受容部9内に挿入される際に弾性力によりフェルール3の中心軸をフェルール受容部9(金属スリーブ5)の中心軸に一致させるための弾性部材である。具体的には、フェルール姿勢アシスト部材11は、熱可塑性を有する樹脂材料(例えばPPSやポリカーボネート等)で形成されている。
【0018】
フェルール姿勢アシスト部材11は、図4及び図5に示すように、フェルール3の外周面と接触しフェルール3を保持する3つの保持部12と、各保持部12同士を繋ぐように設けられた弾性変形可能な3つの梁部13とからなっている。各保持部12は、等間隔で配置され、環状溝部10に嵌合するように梁部13に対して外側に突出した形状をなしている。
【0019】
梁部13は、保持部12の一側部から隣接する保持部12の他側部に向かうように、フェルール姿勢アシスト部材11の周方向に対してクロス状に延びている。これにより、梁部13がフェルール姿勢アシスト部材11の周方向に延びる場合に比べて梁部13が長くなるため、梁部13はバネとしての機能を十分発揮することが可能となる。
【0020】
フェルール姿勢アシスト部材11の内径は、フェルール受容部9の内径よりも小さく、且つフェルール3の外径よりも小さくなっている。図6に示すように、フェルール姿勢アシスト部材11に外側からの外力が加わると、梁部13が内側に弾性変形し、フェルール姿勢アシスト部材11の外径がフェルール3の外径(≒フェルール受容部9の内径)よりも小さくなる。フェルール姿勢アシスト部材11への外力の付加を解除すると、梁部13のバネ力によってフェルール姿勢アシスト部材11は元の状態(形状)に戻る。
【0021】
また、フェルール姿勢アシスト部材11の内側にフェルール3を挿通させると、梁部13が外側に弾性変形して、保持部12が外側に押し広げられる。フェルール3がフェルール姿勢アシスト部材11から抜去されると、梁部13のバネ力によってフェルール姿勢アシスト部材11は元の状態に戻る。
【0022】
このようなフェルール姿勢アシスト部材11を金属スリーブ5のフェルール受容部9に装着する際には、図7に示すように、フェルール姿勢アシスト部材11をフェルール受容部9の先端のフェルール挿入口からフェルール受容部9内に挿入する。このとき、フェルール姿勢アシスト部材11を治具等でつまんでフェルール姿勢アシスト部材11に外力を与えることで、上述したように梁部13の弾性変形によりフェルール姿勢アシスト部材11が縮径されるため、フェルール姿勢アシスト部材11をフェルール受容部9内に容易に挿入することができる。
【0023】
そして、フェルール受容部9内における環状溝部10の位置でフェルール姿勢アシスト部材11をフリーにすると、図8に示すように、梁部13の弾性変形が開放されてフェルール姿勢アシスト部材11の外径が広がり、保持部12が環状溝部10に嵌まり込むようになる。このとき、環状溝部10の手前側(フェルール挿入口側)及び奥側にはフェルール受容部9の壁が存在しているので、金属スリーブ5の軸方向に対するフェルール姿勢アシスト部材11の動きが規制され、フェルール姿勢アシスト部材11が金属スリーブ5内から抜け出ることは無い。
【0024】
その後、図1に示すように、フェルール3が金属スリーブ5のフェルール挿入口からフェルール受容部9内に挿入される。
【0025】
ここで、比較例として、従来一般の光モジュールの一例を図9に示す。同図に示す光モジュール50では、金属スリーブ5のフェルール受容部9に上記の環状溝部10は形成されておらず、またフェルール受容部9に上記のフェルール姿勢アシスト部材11は装着されていない。光モジュール50の他の構造は、上記の光モジュール1と同様である。
【0026】
このような光モジュール50において、フェルール3を金属スリーブ5のフェルール受容部9内に挿入する際に、図10に示すように、両者の中心軸がずれていると、フェルール3が金属スリーブ5に対して傾いた状態でフェルール受容部9内に挿入されることとなる。
【0027】
このとき、上述したようにフェルール受容部9の内径とフェルール3の外径との公差は1μm程度と極めて小さいため、フェルール3の先端がフェルール受容部9の内壁面に当たり、フェルール3の姿勢を金属スリーブ5に揃えようとするモーメントがフェルール3に発生し、このモーメントによってフェルール受容部9とフェルール3との接触点で摩擦が生じることとなる(図10参照)。このため、金属スリーブ5が摩耗し、金属スリーブ5の金属がフェルール3に付着することで、フェルール3の外形寸法が変化し、結果的に金属スリーブ5とフェルール3との所望の嵌合特性が得られないことがある。
【0028】
これに対し本実施形態では、金属スリーブ5におけるフェルール受容部9の先端近傍の内壁面に環状溝部10を形成し、この環状溝部10内に略リング状のフェルール姿勢アシスト部材11を収容したので、図11に示すように、フェルール3がフェルール受容部9内に挿入される際に、フェルール3が金属スリーブ5に対して傾いた状態(モーメントMが生じた状態)となっていても、フェルール3の先端が最初にフェルール姿勢アシスト部材11に当たるようになる。
【0029】
このとき、フェルール姿勢アシスト部材11は、梁部13の弾性変形によりフェルール3を受け止め、梁部13の弾性力によりフェルール3を支えて押し戻そうとする。すると、フェルール3には、フェルール姿勢アシスト部材11によってモーメントMに拮抗する力Pが働くようになる。このため、フェルール3の中心軸が金属スリーブ5の中心軸に略一致するように、フェルール姿勢アシスト部材11によりフェルール3が押されることとなる。つまり、フェルール3の先端がフェルール受容部9の内壁面(金属部分)に接触する前に、フェルール3に生じたモーメントMがキャンセルされる。これにより、金属スリーブ5とフェルール3との接触による金属スリーブ5の摩耗を抑制することができる。
【0030】
以上のように本実施形態によれば、フェルール姿勢アシスト部材11を設けることにより、金属スリーブ5の摩耗を抑制するために金属スリーブ5の内壁面に樹脂コーティングを施す必要が無くなる。従って、低コストで且つ簡単な方法で、フェルール受容部9内にフェルール3が挿入される際の金属スリーブ5の摩耗を抑制することができる。従って、金属スリーブ5の摩耗に起因したフェルール3の外形寸法の変動を防止し、金属スリーブ9とフェルール3との所望の嵌合特性を得ることが可能となる。また、光モジュール1の製造工数や製造リードタイムの削減を図ることもできる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、フェルール姿勢アシスト部材11を、3つの保持部12と可撓性を有する3つの梁部10とからなる略リング状構造としたが、保持部12及び梁部13の数としては、特にそれには限られない。ただし、フェルール3を安定して保持するためには、保持部12は3つ以上あるのが望ましい。また、フェルール姿勢アシスト部材11の形状としては、特に略リング状に限られず、例えば梁部13の数を保持部12の数よりも少なくしたC型形状であっても良い。
【符号の説明】
【0032】
1…光モジュール、3…フェルール、5…金属スリーブ(円筒状部材)、9…フェルール受容部、10…環状溝部、11…フェルール姿勢アシスト部材、12…保持部、13…梁部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを保持するフェルールと、前記フェルールと嵌合する円筒状部材とを備えた光モジュールにおいて、
前記円筒状部材における前記フェルールが挿入される側の端面近傍の内壁面には、前記円筒状部材の周方向に延びる環状溝部が設けられ、
前記環状溝部には、前記フェルールが前記円筒状部材内に挿入される際に弾性力により前記フェルールの中心軸を前記円筒状部材の中心軸に一致させるためのフェルール姿勢アシスト部材が収容されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記フェルール姿勢アシスト部材は、前記フェルールを保持する少なくとも3つの保持部と、前記各保持部同士を繋ぐように設けられた弾性変形可能な少なくとも3つの梁部とを有することを特徴とする請求項1記載の光モジュール。
【請求項3】
前記フェルール姿勢アシスト部材の内径は、前記円筒状部材の内径よりも小さく且つ前記フェルールの外径よりも小さいことを特徴とする請求項1または2記載の光モジュール。
【請求項1】
光ファイバを保持するフェルールと、前記フェルールと嵌合する円筒状部材とを備えた光モジュールにおいて、
前記円筒状部材における前記フェルールが挿入される側の端面近傍の内壁面には、前記円筒状部材の周方向に延びる環状溝部が設けられ、
前記環状溝部には、前記フェルールが前記円筒状部材内に挿入される際に弾性力により前記フェルールの中心軸を前記円筒状部材の中心軸に一致させるためのフェルール姿勢アシスト部材が収容されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記フェルール姿勢アシスト部材は、前記フェルールを保持する少なくとも3つの保持部と、前記各保持部同士を繋ぐように設けられた弾性変形可能な少なくとも3つの梁部とを有することを特徴とする請求項1記載の光モジュール。
【請求項3】
前記フェルール姿勢アシスト部材の内径は、前記円筒状部材の内径よりも小さく且つ前記フェルールの外径よりも小さいことを特徴とする請求項1または2記載の光モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−64800(P2011−64800A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213436(P2009−213436)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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