説明

光伝送装置及び光伝送システム

【課題】 ファイバフューズによる送信系、中継系、及び受信系の光伝送装置における損傷を最小限に抑える。
【解決手段】 本発明は、受信系の光伝送装置では、励起光発生手段と合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。また、伝送路と前記合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。送信系の光伝送装置では、合波手段と伝送路の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。また、合波手段と前記伝送路の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。中継系の光伝送装置では、励起光発生手段と合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送装置及び光伝送システムに係り、特に、高パワーの信号光や励起光を伝送する光伝送装置及び光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光伝送システムは、図26に示すように、送信系1、中継系2及び受信系3から構成されており、送信系1で生成した信号光を伝送路4及び中継系2を介して伝送して受信系3にて受信する。希土類添加光ファイバ増幅器やラマン分布増幅等の光増幅を利用した線形中継系を配置することで、長距離の光伝送が可能である。
【0003】
図27は従来の受信系の一例を示している。信号光をラマン分布増幅により増幅して伝送する光伝送システムにおける受信系の構成例を示している。正常動作時は、励起光発生部31により後方ラマン光増幅用の励起光を発生し、励起光と信号光を合波する合波部32を介して励起光を伝送路4へ送信してラマン分布増幅を起こす。そして、伝送路4でラマン分布増幅された信号光を受信系の光伝送装置の信号光受信部33により受信することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】羽島 他監修「光通信工学(1)」コロナ社、pp. 3-4.
【非特許文献2】増田 他"電子情報通信学会論文誌B, vol. sJ89-B, no.3, pp. 207-315."
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、励起光発生部から合波部を介して伝送路までの経路は1W以上の高パワーの励起光が伝搬する場合があり、ファイバフューズが発生する可能性がある。このファイバフューズ(FF)現象は、数Wの光が伝播されているとき一点が局所的に加熱されると、発生箇所から光源側へ向かって青白い閃光が進んでいく現象であり、1987年にKashapらにより発見された(文献1:R. Kashyap and K. J. Blow, "Observation of catastrophic self-propelled self-focusing in optical fibers, " Electron. Lett., vol.24, no.1, pp.47-49,1988.)。ラマン増幅を用いた光伝送システムの場合、光コネクタ端面の汚れなどにより発生する可能性がある。
【0006】
閃光が伝搬した領域のコア部は損傷(規則的に若しくは不規則的に溶融/空洞化)を受け使用不可能になる。さらに、ファイバフューズは高パワー光発生源の方向へ伝搬するため、通過する光デバイスや光源等へも損傷を与えることがある。
【0007】
励起光発生部31と合波部32の間でファイバフューズが発生した場合は、図28に示したような発生点より光源側に向けてファイバフューズが伝搬するため、伝播した光ファイバだけでなはなく励起光発生部にまで損傷を与えてしまう。また、図29に示すように、合波部32と伝送路4との間でファイバフューズが伝搬した光ファイバだけではなく、合波部32にまで損傷を与えてしまう。送信系1及び中継系2においても同様に、ファイバフューズが伝搬した光ファイバ4、合波部13,22、励起光発生部11,21または光増幅部23に損傷を与えてしまう(図30〜図36参照)。
【0008】
以上のべたように、従来の光伝送装置は、発生したファイバフューズの伝搬を停止することができないため、励起光発生部や合波部を損傷し、光伝送システムへ与える被害が甚大になるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、ファイバフューズによる送信系、中継系、及び受信系の光伝送装置における損傷を最小限に抑えることが可能な光伝送装置及び光伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図1は、本発明の原理構成図である。
【0011】
本発明(請求項1)は、伝送路から伝送した信号光を受信する信号光受信手段130と、後方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段110と、該励起光と該信号光を合波する合波手段140と、を備え、該励起光を該伝送路に送信する光伝送装置であって、
励起光発生手段110と合波手段140の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段120を具備する。
【0012】
本発明(請求項2)は、伝送路から伝送した信号光を受信する信号光受信手段と、後方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段と、を備え、該励起光を該伝送路に送信する光伝送装置であって、
伝送路と合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。
【0013】
本発明(請求項3)は、信号光を生成して伝送路へ送信する信号光送信手段を備える光伝送装置であって、
信号光送信手段と伝送路の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。
【0014】
本発明(請求項4)は、信号光を生成する信号光送信手段と、前方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段を備え、該信号光と励起光を伝送路に送信する光伝送装置であって、
励起光発生手段と合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。
【0015】
本発明(請求項5)は、信号光を生成する信号光送信手段と、前方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段を備え、該信号光と該励起光を伝送路に送信する光伝送装置であって、
合波手段と伝送路の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。
【0016】
本発明(請求項6)は、前段の伝送路から伝送した信号光を増幅して後段の伝送路へ送出する光増幅手段と、後方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段と、を備え、該励起光を該前段の伝送路へ送信する光伝送装置であって、
励起光発生手段と合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。
【0017】
本発明(請求項7)は、前段の伝送路から伝送した信号光を増幅して後段の伝送路へ送出する光増幅手段と、後方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段と、を備え、該励起光を該前段の伝送路へ送信する光伝送装置であって、
前段の伝送路と合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。
【0018】
本発明(請求項8)は、前段の伝送路から伝送した信号光を増幅して後段の伝送路へ送出する光増幅手段と、前段ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段と、を備え、該励起光と該信号光を該後段の伝送路へ送信する光伝送装置であって、
励起光発生手段と合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。
【0019】
本発明(請求項9)は、前段の伝送路から伝送した信号光を増幅して後段の伝送路へ送出する光増幅手段と、ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号を合波する合波手段と、備え、該励起光と該信号光を該後段の伝送路へ送信する光伝送装置であって、
合波手段と後段の伝送路との間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。
【0020】
また、本発明(請求項10)は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光伝送装置のファイバフューズ停止手段として、空孔構造光ファイバまたはコア拡大型光ファイバを用いる。
【0021】
本発明(請求項11)は、信号光を生成する信号光送信手段と、該信号光を伝送する伝送路と、該伝送路から伝送した信号光を受信する受信手段を備え、該伝送路中に光コネクタが設置されている光伝送システムであって、
光コネクタの前後に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。
【0022】
本発明(請求項12)は、信号光を生成する信号光送信手段と、該信号光を伝送する伝送路と、該伝送路から伝送した信号光を受信する受信手段を備え、該伝送路中にファイバ融着点を収納するクロージャが設置されている光伝送システムであって、
クロージャ内にファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する。
【0023】
また、本発明(請求項13)は、請求項11または12に記載の光伝送システムのファイバフューズ停止手段として、空孔構造光ファイバまたはコア拡大型光ファイバを用いる。
【発明の効果】
【0024】
上記のように本発明によれば、ファイバフューズが発生しても、光源側へ伝播する途中でファイバフューズ停止手段により抑圧することが可能になるため、励起光発生手段や合波手段、分波手段、及び光増幅手段の損傷を防ぐことができ、伝送路の損傷を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の原理構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における受信系の光伝送装置の構成図(正常動作時)である。
【図3】コア拡大型光ファイバの端面図の例である。
【図4】各種光ファイバのファイバフューズ伝搬閾値である。
【図5】空孔構造光ファイバの端面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その1)である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その2)である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における送信系の光伝送装置の構成図(正常動作時)(その1)である。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その1)である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における送信系の光伝送装置の構成図(正常動作時)(その2)である。
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その2)である。
【図12】本発明の第2の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その3)である。
【図13】本発明の第3の実施の形態における中継系の光伝送装置の構成図(正常動作時)(その1)である。
【図14】本発明の第3の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その1)である。
【図15】本発明の第3の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その2)である。
【図16】本発明の第3の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その3)である。
【図17】本発明の第3の実施の形態における中継系の光伝送装置の構成図(正常動作時)(その2)である。
【図18】本発明の第3の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その1)である。
【図19】本発明の第3の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その2)である。
【図20】本発明の第3の実施の形態におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その3)である。
【図21】従来の伝送路中にコネクタが設置されている場合のシステム構成例である。ず2
【図22】本発明の第4の実施の形態における伝送路中に光コネクタが設置されている場合のシステム構成図である。
【図23】本発明の第4の実施の形態におけるファイバフューズ停止部の構成図である。
【図24】従来の伝送路中にクロージャが設置されている場合のシステム構成例である。
【図25】クロージャの構成図である。
【図26】光伝送システムの構成図である。
【図27】従来の受信系の光伝送装置の構成図(正常動作時)である。
【図28】従来の受信系におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その1)である。
【図29】従来の受信系におけるファイバフューズ発生時の状態を示す図(その2)である。
【図30】従来の送信系の光伝送装置の構成図(正常動作時)である。
【図31】従来の送信系のファイバフューズ発生時の状態を示す図(その1)である。
【図32】従来の送信系のファイバフューズ発生時の状態を示す図(その2)である。
【図33】従来の中継系の光伝送装置の構成図(正常動作時)である。
【図34】従来の中継系のファイバフューズ発生時の状態を示す図(その1)である。
【図35】従来の中継系のファイバフューズ発生時の状態を示す図(その2)である。
【図36】従来の中継系のファイバフューズ発生時の状態を示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面と共に本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
[第1の実施の形態]
図2は、本発明の第1の実施の形態における受信系の光伝送装置の構成であり、正常動作時を示している。
【0028】
同図に示す受信系100は、励起光発生部110、ファイバフューズ(FF)停止部120、受信部130、合波部140、FF停止部150を有する。
【0029】
当該受信系100において、励起光発生部110と合波部140の間と、伝送路4と合波部140の間に、ファイバフューズ伝搬を停止するファイバフューズ(FF)停止部120,150を配置している。
【0030】
このFF停止部120,150としては、空孔構造光ファイバ(HAF: Hall-assisted optical fiber)(例えば、文献2:K. Takenaga et al., "Fiber Fuse Phenomenon in Hole-Assisted Fibers," ECOC2008, P.1. 14, 2008.)やコア拡大型(TEC: Thermally diffused Expanded Core)光ファイバ(文献3:柳、他,「ファイバ・ヒューズ遮断部品の開発」,信学技報 OPE2004-178, pp. 21-26, 2004)等を用いることができる。コア拡大型光ファイバの例を図3に示す。
【0031】
図3は、TEC光ファイバの光伝播方向に対して平行な断面図の一例を示したものであり、通常の光ファイバと異なり一部のコアが拡大している。ファイバフューズの伝搬パワー閾値は、図4に示したとおりモードフィールド径(MFD)に比例する。通常の光ファイバではMFDは7〜11μm程度であり、ファイバフューズ伝搬パワー閾値は0.9〜1.6W程度となる。一方、TEC光ファイバの場合は、MFDを20〜30μmとすることが可能であるため、TEC光ファイバをFF停止部120,150として用いることで伝搬閾値を4W程度まで向上することができる。従って、想定する光伝送装置内を伝搬する全光パワーよりもファイバフューズ伝搬パワー閾値が高くなるようにTEC光ファイバのMFDを大きく設定することによりファイバフューズの伝搬を停止することができる。
【0032】
図5は、HAFの光伝搬方向に対して垂直な断面図の一例を示したものであり、通常の光ファイバと異なりコアの近くに複数の空孔を配置している。これまでHAFの空孔の間隔を狭くすることでファイバフューズ伝搬が遮断できることが報告されている(文献3)が、HAFの空孔の間隔の設定だけではファイバフューズ伝搬の遮断には十分ではない。
【0033】
ファイバフューズ伝搬は、光ファイバ内の光パワー吸収による温度上昇が起因している。この温度がある閾値(約1300K)を超えると光ファイバを構成する材料の光減衰係数が急激に増加し、加速度的に温度上昇が起きてファイバフューズ伝搬が生じることが報告されている(文献4:「光ファイバにおけるファイバヒューズ伝搬機構の検討」信学技報 EMD2003-35, pp. 43-46, 2003)。
【0034】
HAFの空孔は断熱効果を有するための内側と外側を熱的に遮断することができる。従って、想定される最大パワーの光を伝搬させた時に上昇する温度を、光減衰係数が変化する閾値以下に抑えるように、熱吸収に関与する光ファイバ材料の容量を十分に少なくするように空孔の位置、幅及び数を設定することにより、ファイバフューズ伝搬を停止することができる。
【0035】
HAFをファイバフューズ停止部120,150として用いる場合は、ファイバフューズ伝搬パワー閾値を数W以上に設定することが可能である。
【0036】
従って、想定する光伝送装置内を伝送する全光パワーが4W程度であれば、TEC光ファイバ、HAFのどちらもファイバフューズ停止部120,150として適用することができる。
【0037】
励起光発生部110と合波部140の間でファイバフューズが発生した場合は、図6に示すように、発生点(同図(a))より光源側に向けてファイバフューズが伝搬する(同図(b))が、FF停止部120によりファイバフューズを停止する(同図(c))ことができるため、励起光発生部110の損傷を防ぐことができる。また、図7に示すように、合波部140と伝送路4との間でファイバフューズが発生した場合(同図(a))は、FF停止部150によりファイバフューズを停止する(同図(c))ことができるため合波部140の損傷を防ぐことができる。
【0038】
[第2の実施の形態]
本実施の形態では、送信系について説明する。
【0039】
図8は、本発明の第2の実施の形態における送信系の光伝送装置の構成(その1)を示す。同図に示す送信系200は、送信機210と伝送路4との間にファイバフューズ伝搬を停止するファイバフューズ停止部220を配置している。
【0040】
送信機210と伝送路4の間でファイバフューズが発生した場合は、図9に示すように、発生点(同図(a))より送信機210側に向けてファイバフューズが伝搬するが(同図(b))、FF停止部220によりファイバフューズを停止する(同図(c))ことができるため、送信機210の損傷を防ぐことができる。
【0041】
図10は、本発明の第2の実施の形態における送信系の光伝送装置の構成(その2)を示す。同図に示す送信系200は、図8の構成に励起光発生部230、FF停止部240、合波手段250が付加された構成である。同図に示すように、前方ラマン増幅用の励起光発生部230を有している場合は、励起光発生部230と合波部250の間、及び伝送路4と合波部250の間に、ファイバフューズが発生した場合は、図11に示すように、ファイバフューズ停止部240,220によりファイバフューズを停止して励起光発生部230の損傷を防ぐことができる。また、合波部250と伝送路4との間でファイバフューズが発生した場合は、FF停止部220によりファイバフューズを停止して合波部250の損傷を防ぐことができる。
【0042】
[第3の実施の形態]
本実施の形態では、光伝送装置の中継系について説明する。
【0043】
図13は、本発明の第3の実施の形態における中継系の光伝送装置の構成を示す。
【0044】
同図に示す中継系の光伝送装置300は、励起光発生部310、ファイバフューズ(FF)停止部320、330,360、合波部340、光増幅部350を有する。
【0045】
同図に示す中継系300は、後方ラマン分布増幅と希土類添加ファイバ増幅器を併用する線形中継系において、FF停止部320,330,360を用いた例である。
【0046】
これにより、図14に示すように、前段の伝送路4aと合波部340との間にファイバフューズが発生した場合(同図(a))でもFF停止部330を配置することで、ファイバフューズによる合波部340の損傷を防ぐことができる。
【0047】
また、図15に示すように、合波部340と励起光発生部310の間に、FF停止部320を配置することで、ファイバフューズによる励起光発生部310の損傷を防ぐことができる。
【0048】
さらに、図16に示すように、光増幅部350と後段の伝送路4bの間にFF停止部360を配置することにより、ファイバフューズによる光増幅部350の損傷を防ぐことができる。
【0049】
図17は、本発明の第3の実施の形態における中継系の光伝送装置の構成(その2)を示す。同図に示す中継系の光伝送装置300は、前方ラマン分布増幅と希土類添加ファイバ増幅器を併用する線形中継系において、FF停止部320,330,360を用いた構成である。
【0050】
図18に示すように、前段の伝送路4aと光増幅部350との間にFF停止部330を配置することで、ファイバフューズによる光増幅部350の損傷を防ぐことができる。
【0051】
また、図19に示すように、合波部340と励起光発生部310の間にFF停止部320を配置することで、ファイバフューズによる励起光派生部310の損傷を防ぐことができる。
【0052】
さらに、図20に示すように、合波部340と後段の伝送路4bの間にFF停止部360を配置することにより、ファイバフューズによる合波部340の損傷を防ぐことができる。
【0053】
[第4の実施の形態]
本実施の形態では、伝送路中に光コネクタが設置されている場合について説明する。
【0054】
伝送路は、通常、数10kmの伝送ファイバにより構成されるが、その伝送路中に光コネクタが設置されている場合がある。まず、従来は、図21に示すように、光コネクタ5が、局舎内に設置された受信系の光伝送装置3から2〜10kmであるとしている。
【0055】
励起光の減衰係数を0.3dB/kmであると仮定すると、2〜10kmの伝送路区間により、励起光は0.6〜3dBの減衰を受ける。この減衰量はファイバフューズの観点から、十分大きな値ではなく、光コネクタ5において、ファイバフューズが発生する可能性がある。
【0056】
図22は、本発明の第4の実施の形態における伝送路中に光コネクタが設置されている場合の構成を示す。
【0057】
本実施の形態では、光コネクタ5におけるファイバフューズを抑圧するため、光コネクタ5の前後に、FF停止部410,420を設置している。但し、励起光などの高パワー光の入力が、片方向に限られる場合は、FF停止部は片方向のみに設置すればよい。
【0058】
図23は、本発明の第4の実施の形態におけるファイバフューズ停止部の構成を示す。FF停止部410,420は、伝送路ファイバ4と光コネクタ5の間に設置したHAFまたはTECファイバ、及びHAFまたはTEC光ファイバと伝送路ファイバとの間の融着点a,bから構成される。
【0059】
[第5の実施の形態]
本実施の形態では、伝送路中にクロージャが設定されている場合のシステムについて説明する。
【0060】
伝送路中には、通常数km(例えば2km)おきに、ファイバ融着点を収納するクロージャが設置されている。図24に示す従来のシステムの受信系3には励起光発生部31を有する伝送装置が設置されている局舎から近い順に、クロージャ6a,6b,6cなどとしている。
【0061】
図25は、クロージャの構成を示す。同図(a)は従来技術であり、同図(b)は、本発明のクロージャの構成を示す。従来技術では、1本の伝送ファイバに対し、1箇所の融着点がクロージャ内に収納されている。一方、本発明では、FF停止部であるHAFまたは、TEC光ファイバを伝送ファイバに融着している。従って、クロージャ6内には、HAF7と2箇所の融着点p、qが収容されている。
【0062】
従来技術では、伝送路4中にある地点でファイバフューズが発生した場合、ファイバフューズは局舎に向かって阻止されずに伝播して、伝送ファイバ4を焼損する。一方、本実施の形態による構成では、数kmおきのクロージャ内に設置されたHAFなどのFF停止部により、ファイバフューズが停止し、ファイバフューズの延焼を阻止できる。
【0063】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、受信系、中継系、送信系の光伝送装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 送信系の光伝送装置
2 中継系の光伝送装置
3 受信系の光伝送装置
4 伝送路
5 光コネクタ
6 クロージャ
7 HAF(Hall-assisted optical fiber)
100 受信系の光伝送装置
110 励起光発生手段、励起光発生部
120 ファイバフューズ停止手段、ファイバフューズ停止部
130 信号光受信手段、受信部
140 合波手段、合波部
150 ファイバフューズ停止部
200 送信系の光伝送装置
210 送信機
220,240 ファイバフューズ停止部
230 励起光発生部
250 合波部
300 中継系の光伝送装置
310 励起光発生部
320,330,360 ファイバフューズ停止部
340 合波部
350 光増幅部
410,420 ファイバフューズ停止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路から伝送した信号光を受信する信号光受信手段と、後方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段と、を備え、該励起光を該伝送路に送信する光伝送装置であって、
前記励起光発生手段と前記合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項2】
伝送路から伝送した信号光を受信する信号光受信手段と、後方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段と、を備え、該励起光を該伝送路に送信する光伝送装置であって、
前記伝送路と前記合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項3】
信号光を生成して伝送路へ送信する信号光送信手段を備える光伝送装置であって、
前記信号光送信手段と前記伝送路の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項4】
信号光を生成する信号光送信手段と、前方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段を備え、該信号光と励起光を伝送路に送信する光伝送装置であって、
前記合波手段と前記伝送路の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項5】
信号光を生成する信号光送信手段と、前方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段を備え、該信号光と該励起光を伝送路に送信する光伝送装置であって、
前記合波手段と前記伝送路の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項6】
前段の伝送路から伝送した信号光を増幅して後段の伝送路へ送出する光増幅手段と、後方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段と、を備え、該励起光を該前段の伝送路へ送信する光伝送装置であって、
前記励起光発生手段と前記合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項7】
前段の伝送路から伝送した信号光を増幅して後段の伝送路へ送出する光増幅手段と、後方ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段と、を備え、該励起光を該前段の伝送路へ送信する光伝送装置であって、
前記前段の伝送路と前記合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項8】
前段の伝送路から伝送した信号光を増幅して後段の伝送路へ送出する光増幅手段と、前段ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号光を合波する合波手段と、を備え、該励起光と該信号光を該後段の伝送路へ送信する光伝送装置であって、
前記励起光発生手段と前記合波手段の間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項9】
前段の伝送路から伝送した信号光を増幅して後段の伝送路へ送出する光増幅手段と、前記ラマン光増幅用の励起光を発生する励起光発生手段と、該励起光と該信号を合波する合波手段と、備え、該励起光と該信号光を該後段の伝送路へ送信する光伝送装置であって、
前記合波手段と前記後段の伝送路との間に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項10】
前記ファイバフューズ停止手段として、
空孔構造光ファイバまたはコア拡大型光ファイバを用いる
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光伝送装置。
【請求項11】
信号光を生成する信号光送信手段と、該信号光を伝送する伝送路と、該伝送路から伝送した信号光を受信する受信手段を備え、該伝送路中に光コネクタが設置されている光伝送システムであって、
前記光コネクタの前後に、ファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項12】
信号光を生成する信号光送信手段と、該信号光を伝送する伝送路と、該伝送路から伝送した信号光を受信する受信手段を備え、該伝送路中にファイバ融着点を収納するクロージャが設置されている光伝送システムであって、
前記クロージャ内にファイバフューズの伝搬を停止するファイバフューズ停止手段を具備する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項13】
前記ファイバフューズ停止手段として、
空孔構造光ファイバまたはコア拡大型光ファイバを用いる
請求項11または12に記載の光伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2011−39118(P2011−39118A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183793(P2009−183793)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】