説明

光信号発生回路

【課題】送信データに応じて通信用LD310が発生する光の強度および消光比の変動を抑えることができる光信号発生回路30を提供する。
【解決手段】例えば、本発明の一態様は、PONシステム10に用いられ、送信すべきデータに応じた光信号を発生する光信号発生回路30であって、光信号を発生させる通信用LD310と、通信用LD310の近傍に設けられたダミーLD311と、送信すべきデータに応じて通信用LD310を発光させ、通信用LD310が発光していないときにダミーLD311を発光させることによりダミーLD311を発熱させるドライバ回路32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PON(Passive Optical Network)システムに用いられ、送信すべきデータに応じた光信号を発生する光信号発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の非特許文献には、光ファイバを用いた高速光アクセスシステムであるPONシステムについて開示されている。PONシステムでは、複数ユーザで装置や光ファイバ等の設備を共有することができるため、1ユーザ当たりの導入コストを低く抑えることができる等のメリットがある。
【0003】
PONシステムでは、送信データを示す電気信号が光信号に変換されて光ファイバを介して送信され、光ファイバを介して送信された光信号を電気信号に変換して受信データを取得する。送信データを示す電気信号に対応する光信号の発生には、LD(Laser Diode)が用いられる場合が多い。
【0004】
【非特許文献1】ITU−T勧告G.984.1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LDは、ジャンクションの温度が上昇すると、一般的に発光量が低下する特性がある。LDの発光量が低下すると、1のデータを示す光の強度と0のデータを示す光の強度との比である消光比が小さくなり、受信側でデータを正しく判別できない場合がある。また、LDのジャンクションの温度が上昇すると、発光を開始するのに必要な電流の閾値が増加する場合がある。発光を開始するのに必要な電流の閾値が増加すると、これまで流していた電流ではもはやLDが発光しなくなり、データを正しく伝送することができなくなる。
【0006】
これを防止するために、LD近傍の温度を温度センサにより測定し、測定された温度において適切な消光比となり、かつ、適切な強度の光を発生させることができる電流をLDに供給することも考えられる。しかし、LDのジャンクションの位置と温度センサによって温度が測定される位置とは物理的に離れており、温度センサで測定された温度が必ずしもLDのジャンクションの温度をあらわしているとは限らない。そのため、LDのジャンクションが高温となっているにもかかわらず、LDに適切な電流が供給されずに、LDが適切に発光しない場合がある。
【0007】
このような問題は、局側の装置(OLT:Optical Line Terminal)にも存在するが、OLTではデータを送信する頻度がユーザ側の装置(ONU:Optical Network Unit)よりも多く、LDの発光頻度が多い。そのため、LDのジャンクションの温度はほとんど変化せず、LDのジャンクションの温度はほぼ一定となり、LDの温度上昇に伴うLDと温度センサ近傍との温度差も少ない。そのため、その一定の温度において適切に発光する電流をLDに供給すれば、適切な消光比および強度の光信号を各ユーザ宅へ届けることができる。
【0008】
しかし、ONU側では、OLTから指定された期間においてデータを送信する必要があり、ONUのLDは、その期間に送信すべきデータに応じて発光し、それ以外の期間には発光しない。そのため、発光によりLDのジャンクションの温度が上昇しても、OLTから指定された期間外の期間にLDのジャンクションの温度が下がってしまい、LDの温度変化は大きくなってしまう。
【0009】
ONUからOLTへ送信するデータ量が少ない場合には、ONUのLDの発光時間は短く、LDの温度上昇も少ない。しかし、ONUからOLTへ送信するデータ量が多くなり、OLTから指定された期間が長くなると、ONUのLDの発光時間が長くなり、LDの温度上昇幅が大きくなる。そのため、LDのジャンクションの温度変化が大きくなり、送信される光信号の乱れが大きくなる。
【0010】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、送信データに応じてLDが発生する光の強度および消光比の変動を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では、送信すべきデータに応じた光信号を発生させるLDの近傍に発熱部材を配置し、当該LDが発光していないときに発熱部材を発熱させる。
【0012】
例えば、本発明の一態様は、PON(Passive Optical Network)システムに用いられ、送信すべきデータに応じた光信号を発生する光信号発生回路であって、光信号を発生させる通信用LD(Laser Diode)と、通信用LDの近傍に設けられた発熱部材と、送信すべきデータに応じて通信用LDを発光させ、通信用LDが発光していないときに発熱部材を発熱させる制御手段とを備えることを特徴とする光信号発生回路を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光信号発生回路によれば、送信データに応じてLDが発生する光の強度および消光比の変動を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るPONシステム10の構成を示すシステム構成図である。PONシステム10は、OLT12および複数のONU20を備える。
【0016】
OLT12は、PSTN(Public Switched Telephone Network)やインターネット等の通信回線11に接続され、幹線ファイバ13、光スプリッタ14、およびそれぞれの支線ファイバ15を介して、それぞれのONU20から受信した光信号に基づくデータを電気信号に変換して通信回線11へ送る。
【0017】
また、OLT12は、通信回線11から受信した電気信号に基づくデータを光信号に変換し、幹線ファイバ13、光スプリッタ14、およびそれぞれの支線ファイバ15を介して各ONU20へ同報配信する。1つの光スプリッタ14には、例えば最大32台のONU20が接続される。
【0018】
それぞれのONU20は、幹線ファイバ13、光スプリッタ14、および支線ファイバ15を介して、OLT12から同報配信された光信号に基づくデータを電気信号に変換する。そして、ONU20は、電気信号に変換されたデータの中で、自身に割り当てられたLLID(Logical Link IDentifier)が付されたデータを取り出して、汎用コンピュータや電話機等のユーザ装置16へ送る。
【0019】
また、それぞれのONU20は、ユーザ装置16から受け取ったデータを、予めOLT12より指定されたタイミングで光信号に変換して、幹線ファイバ13、光スプリッタ14、および支線ファイバ15を介して、OLT12へ送る。それぞれのONU20から異なるタイミングで送信された光信号は、光スプリッタ14において時分割多重化されてOLT12に送られる。
【0020】
図2は、ONU20の機能構成の一例を示すブロック図である。ONU20は、OE(Opto-Electric)変換器200、AGC(Automatic Gain Control)201、クロック抽出部202、PONフレーム終端部203、ユーザインターフェイス(I/F)204、WDM(Wavelength Division Multiplexing)フィルタ205、CPU(Central Processing Unit)206、メモリ207、メッセージ受信バッファ209、電流制御値算出部210、メッセージ送信バッファ212、PONフレーム生成部213、および光信号発生回路30を備える。光信号発生回路30は、LD−CAN31およびドライバ回路32を有する。
【0021】
WDMフィルタ205は、支線ファイバ15を介して受信した光信号を波長分離してOE変換器200へ送る。また、WDMフィルタ205は、光信号発生回路30から受け取った光信号を支線ファイバ15へ送出する。WDMフィルタ205から出力された光信号は、OE変換器200によって電気信号に変換され、AGC201によって振幅が一定となるように制御され、クロック抽出部202によってリタイミングされてPONフレーム終端部203へ送られる。
【0022】
PONフレーム終端部203は、クロック抽出部202から受け取ったデータの中から、自身に割り当てられたLLIDが付されたフレームを抽出し、抽出したフレームにおいてオーバーヘッドとユーザデータとを分離し、ユーザデータをユーザインターフェイス204を介してユーザ装置16へ送る。また、PONフレーム終端部203は、分離したオーバーヘッドの中のメッセージをメッセージ受信バッファ209へ送ると共に、当該オーバーヘッドに含まれているグラント値をPONフレーム生成部213へ送る。
【0023】
PONフレーム生成部213は、ユーザインターフェイス204を介してユーザ装置16から入力されたデータを、所定のオーバーヘッドを加えて組み立てる。そして、PONフレーム生成部213は、組み立てたフレームを、PONフレーム終端部203から受け取ったグラント値で示されるタイミングでドライバ回路32へ送る。グラント値の詳細はITU−T勧告G.984.3に記述されている。
【0024】
LD−CAN31は、流れる電流に応じて発光するLD(Laser Diode)を有する。ドライバ回路32は、PONフレーム生成部213および電流制御値算出部210からの信号に応じてLD−CAN31に流れる電流を制御することにより、送信すべきデータに応じた光信号をLD−CAN31に発生させる。LD−CAN31が発生させた光信号は、WDMフィルタ205を介して支線ファイバ15へ送出される。CPU206およびメモリ207は対になってONU20内の各ブロックの監視制御を行う。
【0025】
ここで、LD−CAN31内のLDの特性について説明する。例えば図3に示すように、LDのジャンクションの温度が高い場合(例えば45℃)における、LDに流れる電流の増加に対する発光量の増加量は、低温時(例えば25℃)のLDに流れる電流の増加に対する発光量の増加量よりも低くなる。そのため、低温時(例えば25℃)には、LDに入力されるモジュレーション電流の振幅がIM1であれば十分な消光比(PER)の光信号が出力できるが、高温時(例えば45℃)には、モジュレーション電流の振幅がIM2でなければ、低温時と同等の十分な消光比の光信号が出力できない。
【0026】
また、数百ピコ秒単位での高速な点消灯を実現するためには、LDに予め閾値電流を流しておく必要があるが、高温時(例えば45℃)の閾値電流IB2は、低温時(例えば25℃)の閾値電流IB1よりも大きい。そのため、高温時には、バイアス電流としてより多くの電流をLDに流しておく必要がある。
【0027】
そこで、例えば図4に示すような温度補償テーブル2100を電流制御値算出部210に予め格納し、電流制御値算出部210は、図示しない温度センサによってLD−CAN31の温度を測定し、測定した温度に応じたモジュレーション電流およびバイアス電流の制御値をドライバ回路32に提供する。ドライバ回路32は、電流制御値算出部210から提供された制御値に応じたモジュレーション電流およびバイアス電流をLD−CAN31に流す。
【0028】
図4に示す例において、温度補償テーブル2100には、温度2101毎に、当該温度2101において最適な応答特性が得られるバイアス電流の制御値(C)2102および最適な消光比が得られるモジュレーション電流の制御値(C)2103が格納されている。バイアス電流制御値2102およびモジュレーション電流制御値2103は、それぞれ、ドライバ回路32が有するバイアス電流用の直流電流源およびモジュレーション電流用の直流電流源に入力されるディジタル値である。
【0029】
なお、測定した温度が温度補償テーブル2100に登録されている温度と一致しない場合、電流制御値算出部210は、温度補償テーブル2100に登録されている温度の中で、最も近い温度に対応するモジュレーション電流およびバイアス電流の制御値を出力するようにしてもよく、温度補償テーブル2100に登録されている温度の中で、最も近い温度に対応するモジュレーション電流およびバイアス電流の制御値と、2番目に近い温度に対応するモジュレーション電流およびバイアス電流の制御値とを直線近似して、測定した温度に対応するモジュレーション電流およびバイアス電流の制御値を算出して出力するようにしてもよい。
【0030】
図5は、光信号発生回路30の回路構成の一例を示す回路図である。LD−CAN31は、通信用LD310、ダミーLD311、および遮光部材312を有する。通信用LD310は、ドライバ回路32によって制御された電流に基づき送信すべきデータに応じた光信号を発生させる。ダミーLD311は、通信用LD310と同一のLDであり、光を透過しない遮光部材312に囲まれている。同一のLDとは、例えば通信用LD310と同一のメーカ、同一の型番、あるいは同一のロットのLD等を意味する。
【0031】
図6は、LD−CAN31の構造の一例を示す図である。図6(b)は、LD−CAN31の上面図を示し、図6(a)は、図6(b)におけるLD−CAN31のA−A断面図を示す。
【0032】
通信用LD310およびダミーLD311は、レンズ313、筐体314、および基板315を有するCAN内に配置され、基板315上に互いに近接して配置される。ダミーLD311が発する光は遮光部材312によって遮られ、LD−CAN31の外部へ放射されないようになっている。このように、通信用LD310とダミーLD311とは同一の基板315上に互いに近接して配置されるため、通信用LD310が発光していないときにダミーLD311を発光させれば、通信用LD310のジャンクションの温度を常温よりも高く保つことができる。
【0033】
図5に戻って説明を続ける。ドライバ回路32は、スイッチング素子320、スイッチング素子321、インバータ322、スイッチング素子323、スイッチング素子324、直流電流源325、直流電流源326、およびインバータ327を有する。直流電流源325は、電流制御値算出部210から供給されたモジュレーション電流制御値Cに応じたモジュレーション電流Iを、スイッチング素子320またはスイッチング素子321のいずれか一方に流す。本実施形態において、スイッチング素子320、スイッチング素子321、スイッチング素子323、およびスイッチング素子324は、NPNトランジスタである。
【0034】
PONフレーム生成部213から供給されるモジュレーション信号は、送信すべきデータに応じてHまたはLを示す信号であり、モジュレーション信号がHの場合に、スイッチング素子320がONとなり、通信用LD310には、直流電流源325よって制御されたモジュレーション電流Iが流れ、モジュレーション信号がLの場合には、スイッチング素子321がONとなり、ダミーLD311には、直流電流源325よって制御されたモジュレーション電流Iが流れる。
【0035】
直流電流源326は、電流制御値算出部210から供給されたバイアス電流制御値Cに応じたバイアス電流Iを、スイッチング素子323またはスイッチング素子324のいずれか一方に流す。PONフレーム生成部213から供給されるバイアス制御信号は、OLT12から割り当てられたデータ送信期間にHとなる信号であり、バイアス制御信号がHの場合に、スイッチング素子323がONとなり、通信用LD310には、直流電流源326よって制御されたバイアス電流Iが流れ、バイアス制御信号がLの場合には、スイッチング素子324がONとなり、ダミーLD311には、直流電流源326よって制御されたバイアス電流Iが流れる。
【0036】
バイアス制御信号およびモジュレーション信号の信号レベルの組み合わせ毎に、通信用LD310およびダミーLD311のそれぞれに流れる電流の関係を図示すると、例えば図7のようになる。なお、バイアス制御信号がLの場合(即ち、OLT12から割り当てられたデータ送信期間以外の期間)にはデータが送信されないため、モジュレーション信号がHになることはない。
【0037】
次に、通信用LDおよびダミーLDに流れる電流の関係を、図8を用いて詳細に説明する。PONフレーム生成部213から供給されるバイアス制御信号は、OLT12から割り当てられたデータ送信期間にHとなり、通信用LD310には、例えば図8(a)に示すように、当該期間に直流電流源326よって制御されたバイアス電流Iが流れる。
【0038】
なお、送信すべきデータの最初のビットから光信号が高速に立ち上がるように、PONフレーム生成部213は、OLT12から割り当てられたデータ送信期間の所定期間前からバイアス制御信号をHにするようにしてもよい。
【0039】
また、ダミーLD311には、例えば図8(b)に示すように、OLT12から割り当てられたデータ送信期間以外の期間に、直流電流源326よって制御されたバイアス電流Iが流れる。
【0040】
また、PONフレーム生成部213から供給されるモジュレーション信号は、OLT12から割り当てられたデータ送信期間において、送信すべきデータに応じてHまたはLになり、通信用LD310には、例えば図8(c)に示すように、送信すべきデータが例えば1のときに、直流電流源325よって制御されたモジュレーション電流Iが流れる。
【0041】
また、ダミーLD311には、例えば図8(d)に示すように、送信すべきデータが例えば0のときまたは送信すべきデータが存在しないとき(OLT12から割り当てられたデータ送信期間以外の期間)に、直流電流源325よって制御されたモジュレーション電流Iが流れる。
【0042】
これらを総合すると、通信用LD310に流れるトータルの電流は、例えば図8(e)のようになり、ダミーLD311に流れるトータルの電流は、例えば図8(f)のようになる。図8(e)および(f)を参照すると、通信用LD310およびダミーLD311に流れる電流の合計は、それぞれの時点において一定(I+I)となっている。
【0043】
このように、ドライバ回路32は、通信用LD310が発光している場合にダミーLD311に電流を流さず、通信用LD310に電流が流れていない場合(データ送信期間以外の期間)には通信用LD310が発光するときに通信用LD310に流れる電流(バイアス電流I+モジュレーション電流I)をダミーLD311に流す。
【0044】
通信用LD310とダミーLD311とは同一の基板315上に近接して配置されているので、データ送信期間以外の期間においても、ダミーLD311に流れる電流によってダミーLD311は発熱し、通信用LD310のジャンクションの温度を高く保つことができる。これにより、通信用LD310が発生する光の強度および消光比の変動を抑えることができる。
【0045】
また、ドライバ回路32は、データ送信期間において通信用LD310が発光していない場合にダミーLD311にモジュレーション電流Iを流す。これにより、0を示すデータが連続した場合であっても、ダミーLD311に流れるモジュレーション電流Iによる発熱によって、ダミーLD311は、通信用LD310のジャンクションの温度を高く保つことができ、通信用LD310のジャンクションの温度の変動をさらに少なくすることができる。
【0046】
なお、図8では、LD−CAN31の温度が一定であることを前提としている。LD−CAN31の温度が変化した場合、電流制御値算出部210がその温度に応じたモジュレーション電流Iおよびバイアス電流Iの制御値を算出してドライバ回路32に供給し、ドライバ回路32は、制御値に応じたモジュレーション電流Iおよびバイアス電流Iを、通信用LD310およびダミーLD311に流す。
【0047】
図9は、ONU20における光信号の送信動作の一例を示すフローチャートである。例えば電源を投入されることにより、ONU20は、本フローチャートに示す動作を開始する。
【0048】
まず、PONフレーム生成部213は、モジュレーション信号およびバイアス制御信号をLにする(S100)。そして、電流制御値算出部210は、LD−CAN31の温度を測定し(S101)、温度補償テーブル2100を参照して、測定した温度に対応するモジュレーション電流の制御値Cおよびバイアス電流の制御値Cを算出し、算出した制御値をドライバ回路32に提供する(S102)。
【0049】
次に、電流制御値算出部210は、OLT12から割り当てられたデータ送信期間か否かを判定する(S103)。データ送信期間ではない場合(S103:No)、PONフレーム生成部213は、ステップS108に示す処理を実行する。
【0050】
データ送信期間である場合(S103:Yes)、PONフレーム生成部213は、バイアス制御信号をHにし(S104)、送信すべきデータに応じてモジュレーション信号をHまたはLにする(S105)。そして、PONフレーム生成部213は、データ送信期間が終了したか否かを判定する(S106)。データ送信期間が終了していない場合(S106:No)、PONフレーム生成部213は、再びステップS105を繰り返す。
【0051】
データ送信期間が終了した場合(S106:Yes)、PONフレーム生成部213は、バイアス制御信号をLにし(S107)、ONU20の電源がOFFになったか否かを判定する(S108)。ONU20の電源がOFFになっていない場合(S108:No)、PONフレーム生成部213は、再びステップS100に示した処理を実行する。ONU20の電源がOFFになった場合(S108:Yes)、ONU20は、本フローチャート示した光信号の送信動作を終了する。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0053】
上記説明から明らかなように、本実施形態の光信号発生回路30によれば、送信データに応じて通信用LD310が発生する光の強度および消光比の変動を抑えることができる。
【0054】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0055】
例えば、上記した実施の形態において、LD−CAN31内には、ダミーLD311に代えて、チップ抵抗等のような、発生する熱の制御が可能な発熱素子を設けてもよい。この場合、ドライバ回路32は、通信用LD310が発光していないときに、発熱素子を発熱させる。通信用LD310が発光していないときに発熱素子に発熱させる熱量は、通信用LD310のジャンクションの温度が、通信用LD310が発光し続けたときの温度を維持するのに必要な熱量であることが好ましい。
【0056】
また、図5に示した回路構成において、ダミーLD311の代わりに発熱素子としてチップ抵抗を設けた場合、当該チップ抵抗の抵抗値は、通信用LD310が発光している際に通信用LD310が消費している電力をPとした場合に、例えば、モジュレーション電流I+バイアス電流Iが当該チップ抵抗に流れているときに当該電力Pと同程度の電力消費となる抵抗値にしてもよい。
【0057】
ダミーLD311の代わりに発熱素子としてチップ抵抗を設けた場合、例えば、図10に示すように、当該チップ抵抗316は、通信用LD310の近傍に設けられることが好ましい。なお、ダミーLD311に代えてチップ抵抗316を設けた場合、チップ抵抗は発光しないため、遮光部材312は不要となる。発熱素子として安価なチップ抵抗を用いることで、LD−CAN31のコストを低く抑えることができる。
【0058】
また、上記した実施形態では、数百ピコ秒単位での高速な点消灯が求められる高速光通信システム用の光信号発生回路30を例に説明したが、本発明はこれに限られず、比較的低速な光通信システムにおいても各実施形態の光信号発生回路30を適用することができる。しかし、この場合、高速な点消灯が不要であるため、バイアス電流が不要となる。
【0059】
例えば、上記した実施形態におけるLD−CAN31を、比較的低速な光通信システムに用いた場合、通信用LD310およびダミーLD311に流れる電流は、例えば図11に示すようになる。本例において、通信用LD310は、モジュレーション信号がHのときにモジュレーション電流Iで発光し、ダミーLD311は、通信用LD310が発光していないときにモジュレーション電流Iで発光する。
【0060】
また、上記した実施形態において、通信用LD310は、ダミーLD311と共に、レンズ313、筐体314、および基板315を有するCAN内に配置されるが、本発明はこれに限られない。例えば、通信用LD310が基板の一方の面に配置され、ダミーLD311が当該基板の他方の面に、当該基板と垂直な直線が通信用LD310およびダミーLD311を通るように配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係るPONシステム10の構成を示すシステム構成図である。
【図2】ONU20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】LDの特性を説明するための概念図である。
【図4】電流制御値算出部210が保持する温度補償テーブル2100のデータ構造の一例を示す図である。
【図5】光信号発生回路30の回路構成の一例を示す回路図である。
【図6】LD−CAN31の構造の一例を示す断面図(a)および上面図(b)である。
【図7】バイアス制御信号およびモジュレーション信号の信号レベルの組み合わせ毎に、通信用LD310およびダミーLD311のそれぞれに流れる電流を示す図である。
【図8】通信用LD310およびダミーLD311に流れる電流の関係を詳細に説明するための概念図である。
【図9】ONU20における光信号の送信動作の一例を示すフローチャートである。
【図10】LD−CAN31の構造の他の例を示す断面図(a)および上面図(b)である。
【図11】他の例において通信用LD310およびダミーLD311に流れる電流の関係を詳細に説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0062】
10・・・PONシステム、11・・・通信回線、12・・・OLT、13・・・幹線ファイバ、14・・・光スプリッタ、15・・・支線ファイバ、16・・・ユーザ装置、20・・・ONU、200・・・OE変換器、201・・・AGC、202・・・クロック抽出部、203・・・PONフレーム終端部、204・・・ユーザインターフェイス、205・・・WDMフィルタ、206・・・CPU、207・・・メモリ、209・・・メッセージ受信バッファ、210・・・電流制御値算出部、212・・・メッセージ送信バッファ、213・・・PONフレーム生成部、30・・・光信号発生回路、31・・・LD−CAN、310・・・通信用LD、311・・・ダミーLD、312・・・遮光部材、313・・・レンズ、314・・・筐体、315・・・基板、316・・・チップ抵抗、32・・・ドライバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PON(Passive Optical Network)システムに用いられ、送信すべきデータに応じた光信号を発生する光信号発生信回路であって、
光信号を発生させる通信用LD(Laser Diode)と、
前記通信用LDの近傍に設けられた発熱部材と、
送信すべきデータに応じて前記通信用LDを発光させ、前記通信用LDが発光していないときに前記発熱部材を発熱させる制御手段と
を備えることを特徴とする光信号発生回路。
【請求項2】
請求項1に記載の光信号発生回路であって、
前記通信用LDと前記発熱部材とは、同一基板に取り付けられていることを特徴とする光信号発生回路。
【請求項3】
請求項2に記載の光信号発生回路であって、
前記通信用LDと前記発熱部材とは、同一のCAN内に配置されていることを特徴とする光信号発生回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の光信号発生回路であって、
前記発熱部材は、
前記通信用LDと同一のLDであるダミーLDであり、
前記光信号発生回路は、さらに、
前記ダミーLDが発生する光を、当該光信号発生回路の外部へ漏らさないようにする遮光部材を備え、
前記制御手段は、
前記通信用LDが発光していない場合に、当該通信用LDが発光していたときに当該通信用LDに流していた電流と同量の電流を、前記ダミーLDに流すことを特徴とする光信号発生回路。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の光信号発生回路であって、
前記発熱部材は、
前記通信用LDが発光していない場合に、当該通信用LDのジャンクションの温度が、当該通信用LDが発光し続けたときの温度となるのに必要な熱量を発生させることを特徴とする光信号発生回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−56911(P2010−56911A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219950(P2008−219950)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】