説明

光偏向素子および光偏向素子アレイ

【課題】低い電圧駆動においても容易に反射板の大きい偏向角を達成し得る安定した動作の光偏向素子を提供する。
【解決手段】光偏向素子300は、支持基板301と、反射板302と、駆動制御部303a,303bと、連結部308a,308bと、永久磁石320a,320bとから構成されている。駆動制御部303aと駆動制御部303bは、反射板302を間に挟んで配置されている。駆動制御部303a,303bは支持基板301に接続され、さらにそれぞれ連結部308a,308bによって反射板302に接続されている。反射板302の表面には、光ビームを反射するための反射面309が形成されている。永久磁石320a,320bは、駆動制御部303a,303bを含む空間に磁場を形成するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームの方向を制御する光偏向素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信回線の通信容量を飛躍的に向上させる手段として、1本の光ファイバーに波長の異なる複数の光信号を多重化して伝送するいわゆるWDM(Wavelength Division Multiplex)方式がある。これらの多重化された光信号を効率良く切り替えるデバイスとして、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を応用した光偏向素子がある。このような光偏向素子の一例が特開2008−96620号公報に開示されている。
【0003】
この光偏向素子は、図10に示すように、第1および第2の支点101、102と、これらの支点の間に配置された第1〜第3の平板103〜105と、前記支点および平板の間に配置され、隣接する支点あるいは平板同士を接続するばね106〜109と、平板103〜105に対向する位置に形成された電極110〜113とから構成される。平板104は、その表面に反射面が形成されており、反射板として機能する。
【0004】
ここで、平板103〜105と電極110〜113の間のいずれかに静電引力を発生させることにより、平板104(反射板)を所望の方向に向けることが可能である。従って平板104(反射板)に入射する光信号を所望の出力ポート(光ファイバー)に向けて反射させることにより、光信号を効率良く切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−96620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、WDM方式で伝送される光信号に含まれる各々の波長成分について個別に経路切り替えを行うには、波長多重された光を各々の波長の光に分離した後に、所望の光だけを切り替える必要がある。この切り替えは分光器と光偏向素子から構成されるWSS(Wavelength Selective Switch)により行われる。
【0007】
ここで、WSSを構成する入出力ポート数が増大した場合には、反射板をより大きい角度に偏向させる必要がある。つまり、WSSに実装可能なポート数は光スイッチを構成する反射板の最大偏向角によって制約を受けるため、より多くのポートを実装するには光スイッチの反射板をより大きい角度に偏向させる必要がある。
【0008】
しかしながら図10に示される従来の光偏向素子は、平板103〜105に対向する位置に電極110〜113が配置されているため、反射板の偏向角が増大すると、平板103〜105が電極110〜113に当たってしまい、それ以上偏向させることができない。但し、平板を電極から離れた位置に設置すれば可能となるが、平板と電極の距離を遠ざけると駆動力である静電引力が急激に減少してしまう。また、素子内部や駆動回路の静電耐圧の制約等があるため、高い駆動電圧により静電引力の低下を防ぐことも難しい。一方、柔らかいばねを用いると、平板と電極とを離した位置でも低駆動電圧での駆動が可能となるが、ノイズ等の外乱にも敏感に反応してしまい、安定した動作が困難になってしまう恐れがある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、低い電圧駆動においても容易に反射板の大きい偏向角を達成し得る安定した動作の光偏向素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ひとつには、光偏向素子に向けられている。本発明の光偏向素子は、光ビームを反射する反射面を有する反射板と、該反射板を間に挟むように配置された前記反射板の偏向の制御を行うための第1及び第2の駆動制御部と、該第1及び第2の駆動制御部と前記反射板とをそれぞれ接続している第1及び第2の連結部と、前記第1及び第2の駆動制御部を支持している支持基板と、前記第1及び第2の駆動制御部を含む空間に磁場を形成する磁場発生手段とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、ひとつには、光偏向素子アレイに向けられている。本発明の光偏向素子アレイは、光ビームを反射する反射面を有する反射板と、該反射板を間に挟むように配置された前記反射板の偏向の制御を行うための第1及び第2の駆動制御部と、該第1及び第2の駆動制御部と前記反射板とをそれぞれ接続している第1及び第2の連結部と、前記第1及び第2の駆動制御部を支持している支持基板と、前記第1及び第2の駆動制御部を含む空間に磁場を形成する磁場発生手段とを備えた光偏向素子を、前記反射板が一列に並ぶように複数個配列して構成したことを特微とする。
【0012】
本発明は、ひとつには、光偏向素子の駆動方法に向けられている。本発明の光偏向素子の駆動方法は、前記第1及び第2の駆動制御部に独立に電流を流して前記反射板を偏向させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低い電圧駆動においても容易に反射板の大きい偏向角を達成し得る安定した動作の光偏向素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光偏向素子を示す斜視図である。
【図2】図1に示された光偏向素子の要部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図1と図2に示された駆動制御部を拡大して示している。
【図4】図3に示された駆動制御部内の一方の駆動制御ユニットを示している。
【図5】図4においてばねが変形した様子を斜めから見た図である。
【図6】図1〜図3に示された連結部とは異なる形状の連結部を有する駆動制御部の変形例を示している。
【図7】第1の偏向軸に対して紙面表側から見て時計回りに偏向された反射板と、そのときにばねを流れる電流とを示している。
【図8】第2の偏向軸に対して紙面表側から見て反時計回りに偏向された反射板と、そのときにばねを流れる電流とを示している。
【図9】図1に示す光偏向素子を複数個並べて構成した光偏向素子アレイを破断して示す斜視図である。
【図10】従来例に係る静電駆動型の光偏向素子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
<発明の実施の形態1>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光偏向素子を示す斜視図である。図2は、図1に示された光偏向素子の要部を拡大して示す斜視図である。
【0017】
本発明の実施の形態に係る光偏向素子300は、支持基板301と、反射板302と、駆動制御部303a,303bと、連結部308a,308bと、磁場発生手段としての永久磁石320a,320bとから構成されている。
【0018】
駆動制御部303aと駆動制御部303bは、反射板302の偏向の制御を行うためのものであり、反射板302を間に挟んで対向する位置に配置されている。
【0019】
駆動制御部303a,303bは支持基板301に接続され、駆動制御部303aはさらに連結部308aによって反射板302に接続され、駆動制御部303bはさらに連結部308bによって反射板302に接続されている。
【0020】
反射板302と連結部308a,308bは単結晶シリコンで構成され、支持基板301は単結晶シリコンあるいはSOI(Silicon on Insulator)基板から構成される。また反射板302の表面には、光ビームを反射するための反射面309が形成されている。反射面309は、アルミニウムや金等の反射率の高い薄膜で構成される。
【0021】
永久磁石320a,320bは、駆動制御部303a,303bを含む空間に磁場を形成するためのものであり、支持基板301を間に挟んで対向する位置に、反射板302と駆動制御部303a,303bの並びに整列するように配置されている。
【0022】
駆動制御部303a,303bは、それぞれ2個の駆動制御ユニットから構成されている。駆動制御部303aと303bの構成は同じなので、ここでは駆動制御部303aについて説明する。
【0023】
駆動制御部303aは、図3に示すように、互いに並列に配置された2個の駆動制御ユニット324a,324bから構成されている。
【0024】
駆動制御ユニット324aは、導電性の弾性体としてのばね305aと、支持部325aと、配線310a,311aから構成されている。
【0025】
ばね305aはアルミニウムや銅等の導電体で構成され、望ましくはその表面に酸化シリコン等の絶縁膜が形成されている。ばね305aの両端はそれぞれ支持基板301と支持部325aに接続されている。支持部325aは単結晶シリコンで構成され、その一端が支持基板301に接続されている。言い換えれば、ばね305aは、支持基板301から延出し、支持部325aは、支持基板301から延出し、ばね305aの端部を支持している。ばね305aの中央部付近には連結部308aの端部が接続されている。
【0026】
配線310a,311aはアルミニウムや銅等の導電体で構成され、支持基板301および支持部325aの表面に、酸化シリコン等の絶縁膜を挟んで形成されている。また望ましくはこれらの配線の表面には酸化シリコン等の絶縁膜から構成される保護膜が形成されている。配線310a,311aの一端は、ばね305aに電気的に接続され、他端は電流源(図示せず)に接続されている。
【0027】
以上は駆動制御ユニット324aの構成だが、駆動制御ユニット324bもこれと同じ構成であり、導電性のばね305bと、支持部325bと、配線310b、311bから構成されている。
【0028】
本発明の実施の形態の作用を説明する前に、駆動制御ユニットの作用について、駆動制御ユニット324aを例に挙げて説明する。まず図4のように、駆動制御ユニットの周囲に磁場330を形成する。磁場330は一様であり、その方向は、非偏向時の反射板302の反射面309に平行かつばね305aの延出方向に対して非平行である。この状態で配線310a,311aに電流を流すと、ばね305aを流れる電流312aと磁場330の相互作用によって、ばね自身に駆動力(ローレンツカ)が発生し、この駆動力によってばね305aが紙面の上下方向に、ばね305aの復元力が駆動力に釣り合う位置まで変形する。図5は、図4においてばね305aが変形した様子を斜めから見た図である。
【0029】
この駆動力は磁場330に垂直な電流成分にのみ発生し、その方向は電流と磁場の両方に垂直で、電流のべクトルから磁場のべクトルに向けて右ねじを回した時にねじの進む向きに作用する。従って図4の場合、駆動力は紙面の裏側から表側に向かう向きに発生する。駆動力の大きさは電流312aの大きさに比例し、電流を逆方向に流すと駆動力の向きも反転する。従って、ばね305aに流す電流の大きさや向きを制御することにより、ばね305aを紙面に垂直な方向に沿って所望の向きに所望の大きさだけ変形させることができる。ばね305aの中央部付近には連結部308aの一端が接続されており、ばねを変形させることによって連結部308aおよびそれに接続されている反射板302も同様に変位する。なお、ばねに電流を流す際、同じ大きさの電流312bや312cが配線310aにも流れ、この部分にも駆動力が発生するが、配線310aは変形しにくい構成要素である支持部325aに形成されているため、駆動には影響しない。
【0030】
以上は駆動制御ユニット324aの例であるが、他の駆動制御ユニットの作用もこれと同じである。
【0031】
以上の駆動制御部の作用を元に、本発明の実施の形態に係る光偏向素子の作用を図7と図8を使用して説明する。以下説明のため、連結部308aに接続されている2つの駆動制御ユニットを構成するばねを、ばね305a,305bと呼称し、連結部308bに接続されている2つの駆動制御ユニットを構成するばねを、ばね305c、305dと呼称することにする。本発明の実施の形態に係る光偏向素子を駆動する際には、まず全ての駆動制御ユニットの周囲を含む空間に磁場330を形成する。
【0032】
反射板302を、2つの連結部308a,308bを結ぶ直線に垂直な第1の偏向軸306の周りに偏向させたい場合には、ばね305aとばね305bに同じ方向に電流を流し、他の2つのばねには、これと反対の方向に電流を流せばよい。言い換えれば、同一駆動制御部303a,303b内の駆動制御ユニット324a,324b間では互いに同一方向となり駆動制御部303a,303b間では互いに反対の方向の配列となるように電流を流せばよい。例えば反射板302を第1の偏向軸306に対して紙面表側から見て時計回りに偏向させたい場合、図7に示すようにばね305a〜305dに電流を矢印331a〜331dの方向に流せばよい。この場合、前述の駆動制御部の作用に従い、各々のばねに駆動力332a〜332dが矢印の向きに発生する。これらの駆動力によって、反射板302に接続されている2つの連結部308a,308bは互いに反射板302の主面に対して逆方向に変位する。この動作に伴い、これらの連結部に接続されている反射板302が、第1の偏向軸306の周りに時計回りに偏向する。反射板を第1の偏向軸306の周りに反時計回りに偏向させたい場合は、これと逆の方向に電流を流せばよい。
【0033】
反射板302を、第1の偏向軸306に垂直な第2の偏向軸307の周りに偏向させたい場合には、図8に示すように、ばね305aとばね305cに同じ方向に電流を流し、他の2つのばねには、これと反対の方向に電流を流せばよい。言い換えれば、同一駆動制御部303a,303b内の駆動制御ユニット324a,324b間では互いに反対方向となり駆動制御部303a,303b間では互いに同一の方向の配列となるように電流を流せばよい。図8は反射板302を第2の偏向軸に対して紙面表側から見て反時計回りに偏向させたい場合の例であり、ばね305a〜305dに電流を矢印333a〜333dの方向に流すことにより、各々のばねに駆動力334a〜334dが矢印の向きに発生する。これらの駆動力によって、反射板302に接続されている2つの連結部308a,308bは、いずれも第2の偏向軸307に対して同じ方向(図8の例でば紙面表側から見て反時計回り)に回転する。この動作に伴い、これらの連結部に接続されている反射板302が、第2の偏向軸307に対して反時計回りに偏向する。反射板を第2の偏向軸307の周りに時計回りに偏向させたい場合は、これと逆の方向に電流を流せばよい。
【0034】
反射板302を第1の偏向軸306と第2の偏向軸307のまわりに同時に偏向させたい場合は、第1の偏向軸306のまわりに偏向させるための電流と第2の偏向軸307のまわりに偏向させるための電流を足し合わせた電流を各々のばねに流せば良い。例えば図7に示す偏向動作に必要な電流の大きさをI1、図8に示す偏向動作に必要な電流の大きさをI2とすると、これらの偏向動作を同時に行うには、矢印331aの方向を電流の+方向とした場合、ばね305aにI1+I2、ばね305bにI1一I2、ばね305cに一I1+I2、ばね305dに一I1一I2の電流を流せば良い。
【0035】
各々のばねに発生する駆動力は、それらのばねに流れる電流の大きさと比例関係にあるため、反射板302の偏向角を変えたい場合は、ばねに流れる電流の大きさを変えればよい。また以上の説明から自明なように、反射板302を第1の偏向軸306のまわりに偏向させる際には、第2の偏向軸307まわりの偏向動作は発生しない。逆に第2の偏向軸307のまわりに偏向させる際には、第1の偏向軸306まわりの偏向動作は発生しない。本発明の実施の形態においては、可動部の動作を妨害する構成要素が存在しないため、素子の安定性を損なうことなく、低い駆動電圧によって容易に反射板の大きい偏向角を達成することができる。
【0036】
また反射板を偏向軸周りに作用する偶力によって駆動するため、反射板の沈み込み等の余分な動作が発生せず、駆動力の全てを反射板の偏向動作に使用することができる。また、駆動力はばねを流れる電流に比例して増大するため、反射板の角度制御が容易である。
【0037】
また、反射板の直下に電極等の構成要素を挟んで空間を形成する必要が無いため、従来の半導体集積回路の製法が適用しやすい。
【0038】
本発明の実施の形態は、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、様々な変形が可能である。
【0039】
まず反射板302として矩形の反射板を採用した例を示したが、反射板の形状はこれに限定されず、用途に応じて円形、三角形、多角形等どのような形状の反射板を採用しても良い。また支持基板301の形状は図1の例に限定されず、4つの支持部やばねの端部が固定できれば、どのような形状でも良い。
【0040】
また連結部308a,308bの形状は図1の例に限定されず、外力によって変形しにくく、かつ反射板302を各々のばねに接続できれば、どのような形状でも良く、例えば図6のように、ばね305aと305bを各々異なる連結部308a−1、308a−2によって反射板302に接続しても良い。
【0041】
また連結部308a,308bの一端を各々のばねの中央部付近に接続する例を示したが、中央部以外の部分に接続しても良い。
【0042】
また支持部の形状は図3の例に限定されず、外力によって変形しにくく、かつばねの一端を支持できれば、どのような形状でも良い。
【0043】
また図1〜図3等に示されているばねの外観は説明のために設定したものであり、これに限定されずどのような形状のばねを使用しても良い。
【0044】
また、ばねの材料としてアルミニウムや銅を使用する例を示したが、導電性と良好な弾性特性を有する材料であれば、金、銀、あるいはこれらの材料を含む合金、あるいはカーボンナノチューブやカーボンナノファイバー、あるいはドーピングされた単結晶シリコンや多結晶シリコン等他の材料を使用しても良く、また例えばアルミニウムの表面にTiやTINを積層したもののように、複数種類の導電材料でばねを構成しても良い。
【0045】
また、ばねや配線の表面に形成する絶縁膜の材料として、酸化シリコンを使用する例を示したが、これに限定されず窒化シリコン等の他の無機材料やポリイミド、パリレン等の樹脂材料等、他の絶縁材料を使用しても良い。
【0046】
また第1の偏向軸306のまわりに偏向させるための電流と第2の偏向軸307のまわりに偏向させるための電流を足し合わせた電流を各々の駆動用配線に流すことにより反射板302を所望の方向に偏向させる例を示したが、各々のばねを、互いに絶縁された2本の導体線によって構成しておき、これらの導体線のうち一方に第1の偏向軸306のまわりに偏向させるための電流を流し、他方に第2の偏向軸307のまわりに偏向させるための電流を流しても良い。
【0047】
また反射面309を反射板302の一方の面に形成する例を示したが、反射板302の表と裏の両面に形成しても良い。こうすることで、反射面309を構成する反射膜の残留応力が相殺され、反射面309の平坦性がさらに向上する。
【0048】
また全ての構成要素が第1の偏向軸306や第2の偏向軸307に対して対称に配置されている例を示したが、用途によってはこれに限定されず、例えば反射板302や駆動制御部303a,303bおよびこれらの駆動制御部の構成要素を、これらの偏向軸に対して非対称な位置に配置しても良いし、非対称な形状を採用しても良い。
【0049】
<発明の実施の形態2>
図9は、図1に示す光偏向素子を複数個並べて光偏向素子アレイを構成した例を破断して示す斜視図である。
【0050】
光偏向素子338a〜338eを構成する反射板302a〜302eは、各々の反射板の4辺のうち連結部が接続されていない辺同士を対向させて1列に配置されている。光偏向素子338a〜338eの構成は発明の実施の形態1と同一だが、各々の光偏向素子338a〜338eに属する支持体は、共通の支持基板339に接続されている。
【0051】
本実施形態の作用は発明の実施の形態1と同じであり、各々の光偏向素子を構成する駆動制御部は個別に制御され、これにより各々の反射板302a〜302eを個別に所望の方向に向けることができる。反射板302a〜302eの表面には反射面が形成されており、これらの反射面に入射する複数の入射光を個別に所望の方向に向けて反射することができる。本発明の実施の形態においても、発明の実施の形態1と同様の効果が得られることに加え、隣接する反射板が互いに接近して配置されているため、複数の入射光が互いに接近している場合においても、これらを互いに干渉させることなく、各々異なる方向に向けて反射することができる。
【0052】
本発明の実施の形態は、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、様々な変形が可能である。
【0053】
本実施形態に係る光偏向素子アレイは発明の実施の形態1で説明した光偏向素子をアレイ状に配置したものであり、発明の実施の形態1で説明した様々な変形例は本実施形態においても適用可能である。
【0054】
また光偏向素子アレイが5個の光偏向素子から構成される例を示したが、光偏向素子の数はこれに限定されず、これと異なる個数の光偏向素子で構成しても良い。
【0055】
また同一形状の光偏向素子によってアレイを構成する例を示したが、アレイに含まれる光偏向素子の一部について、構成要素の寸法や形状、材料等が他の光偏向素子と異なっても良い。
【符号の説明】
【0056】
101,102…支点、103〜105…平板、106〜109…ばね、110〜113…電極、300…光偏向素子、301…支持基板、302…反射板、302a〜302e…反射板、303a,303b…駆動制御部、305a〜305d…ばね、306,307…偏向軸、308a,308b…連結部、308a−1,308a−2…連結部、309…反射面、310a,310b,311a,311b…配線、312a,312b…電流、320a,320b…永久磁石、324a,324b…駆動制御ユニット、325a,325b…支持部、330…磁場、331a〜331d…矢印、332a〜332d…駆動力、333a〜333d…矢印、334a〜334d…駆動力、338a〜338e…光偏向素子、339…支持基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを反射する反射面を有する反射板と、
該反射板を間に挟むように配置された前記反射板の偏向の制御を行うための第1及び第2の駆動制御部と、
該第1及び第2の駆動制御部と前記反射板とをそれぞれ接続している第1及び第2の連結部と、
前記第1及び第2の駆動制御部を支持している支持基板と、
前記第1及び第2の駆動制御部を含む空間に磁場を形成する磁場発生手段とを備えていることを特徴とする光偏向素子。
【請求項2】
前記第1及び第2の駆動制御部は、それぞれ、互いに並列に配置された2個の駆動制御ユニットからなり、各駆動制御ユニットは、前記支持基板から延出した導電性の弾性体と、前記支持基板から延出し前記弾性体の端部を支持している支持部とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光偏向素子。
【請求項3】
前記第1及び第2の連結部は、それぞれ、前記第1及び第2の駆動制御部の2個の前記駆動制御ユニットの前記弾性体の中央部付近と連結されていることを特徴とする請求項2に記載の光偏向素子。
【請求項4】
前記弾性体は、ばねであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の光偏向素子。
【請求項5】
前記磁場は一様であり、その方向は、非偏向時の前記反射板の前記反射面に平行かつ前記弾性体の延出方向に対して非平行であることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかひとつに記載の光偏向素子。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれかひとつに記載の前記光偏向素子を、前記反射板が一列に並ぶように複数個配列して構成したことを特徴とする光偏向素子アレイ。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6のいずれかひとつに記載の前記光偏向素子および光偏向素子アレイの駆動方法において、前記第1及び第2の駆動制御部に独立に電流を流して前記反射板を偏向させることを特徴とする光偏向素子および光偏向素子アレイの駆動方法。
【請求項8】
同一駆動制御部内の駆動制御ユニット間では互いに同一方向となり前記第1及び第2の駆動制御部間では互いに反対の方向の配列となるように前記電流を前記第1及び第2の駆動制御部に流して前記反射板を偏向させることを特徴とする請求項7に記載の光偏向素子および光偏向素子アレイの駆動方法。
【請求項9】
同一駆動制御部内の駆動制御ユニット間では互いに反対方向となり前記第1及び第2の駆動制御部間では互いに同一の方向の配列となるように前記電流を前記第1及び第2の駆動制御部に流して前記反射板を偏向させることを特徴とする請求項7に記載の光偏向素子および光偏向素子アレイの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−232403(P2011−232403A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100151(P2010−100151)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】