説明

光再生装置

【課題】 ジャンプ動作時において生じるサーボ外れを抑制し、これにより、光ヘッドのアクセス動作を円滑に行い得る、光再生装置を提供する。
【解決手段】 ジャンプ動作が開始されると、S101にて、当該ジャンプが収束ビームの右側側縁をジャンプさせるもの(Rジャンプ)であるか、左側側縁をジャンプさせるもの(Lジャンプ)であるかが判別される。ここで、Lジャンプであると判別されると、S102にて、Rドライバ20bのサーボのゲインGrが通常動作時の設定値G0のα倍に増加される。そして、S103にて、Lドライバ20aのサーボがOFFとされるとともに、Lドライバ20aから左側側縁のコイル205aに対しジャンプパルスとブレーキパルスが印加され、左側側縁における層間ジャンプ(N層ジャンプ:Nは自然数)が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録層が積層方向に配列された記録媒体に対し前記積層方向に垂直な方向から扁平ビームを入射して情報を再生する光再生装置に関するものであり、特に、平面光導波路ホログラムを積層したカード型光記録媒体を再生する光再生装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
平面光導波路ホログラムを積層したカード型光記録媒体の再生装置として、たとえば、特許文献1に記載の装置が知られている。
【0003】
ここで、カード型光記録媒体には、所定の情報をホログラムパターンとして保持する複数の記録層が積層して配列されている。所定の記録層にビームを入射すると、この記録層に形成されたホログラムパターンによってビームが散乱され、この散乱光がカード型光記録媒体の上面または下面から出射される。そして、出射された散乱光を、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子によって受光することで、当該記録層に保持された情報が再生される。
【0004】
かかる再生装置には、記録層のビーム入射口に扁平ビームを入射させるための光ヘッドが配備されており、さらに、当該光ヘッドには、記録層に対する扁平ビームの積層方向のズレを補正するためのアクチュエータが配備されている。積層方向のズレ量に応じたエラー信号に従って、アクチュエータを駆動することで、再生対象の記録層のビーム入射口に扁平ビームが位置付けられる。
【0005】
再生すべき記録層を変更する場合には、前記アクチュエータに駆動信号を印加して、目標記録層の方向に扁平ビームを移動させる。たとえば、移動の際に横切った記録層数をカウントし、目標記録層までの移動量に応じたカウント値に達したタイミングでアクチュエータを停止させる。これにより、収束ビームを目標記録層位置に位置づけることができる。
【特許文献1】特開2000−155960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる光再生装置では、扁平ビームの両側縁を記録層の積層方向に個別に移動させることができるよう、光ヘッドの両側縁を個別に駆動するための駆動機構が設けられている。したがって、扁平ビームを積層方向にアクセスさせる際には、それぞれの駆動機構によって、光ヘッドの両側縁が個別に駆動されることとなる。この場合、一方の側縁のジャンプ動作が完了した状態で、他方の側縁のみジャンプ動作が行われる場合が生じる。このとき、ジャンプが完了した方の側縁は、対応する駆動機構によってサーボが掛けられ、これにより、ジャンプ完了時の層から外れないよう位置づけられる。
【0007】
しかし、このように他方の側縁側にてジャンプが行われると、その反動によって、ジャンプ完了状態にある方の側縁に変位力が加わり、この側縁にて振動が生じる。図14は、かかる振動をサーボ信号の振幅によって示したものである。この図では、光ヘッドの左側側縁のみにてジャンプが行われている。
【0008】
このとき、右側側縁は、対応する駆動機構によって、サーボが掛けられることによりジャンプ完了時の層から外れないよう制御される。しかし、左側側縁におけるジャンプの影響が右側側縁に大きく現れると、サーボ外れが生じ、右側側縁の引き込み位置が、他の層に流れてしまう惧れがある。この場合、右側側縁のジャンプを再度行って右側側縁を元の層に復帰させる等の処理動作が必要となる。
【0009】
そこで、本発明は、ジャンプ動作時において生じるサーボ外れを抑制し、これにより、光ヘッドのアクセス動作を円滑に行い得る、光再生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み本発明は、それぞれ以下の特徴を有する。
【0011】
第1の発明は、複数の記録層が積層方向に配列された記録媒体に対し前記積層方向に垂直な方向から扁平ビームを入射して情報を再生する光再生装置において、前記扁平ビームの幅方向両側縁を個別に前記積層方向に変位させることによって前記記録層に対する前記扁平ビームの積層方向の位置ずれを補正するサーボ手段と、前記扁平ビームの幅方向側縁を前記積層方向に移動させる走査手段とを有し、前記サーボ手段は、前記走査手段によって前記扁平ビームの幅方向側縁が前記積層方向に移動されることに応じて、サーボのゲインを増加させることを特徴とする。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に係る光再生装置において、前記サーボ手段は、前記扁平ビームの幅方向側縁のうち、一方の側縁が前記走査手段によって前記積層方向に移動されるとき、他方の側縁に対するサーボのゲインを増加させることを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、第2の発明に係る光再生装置において、前記サーボ手段は、前記一方の側縁の移動が終了したことに応じて、前記他方の側縁に対するサーボのゲインを元のゲインに復帰させることを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、第2の発明に係る光再生装置において、前記サーボ手段は、前記一方の側縁に対するサーボの引き込みが開始してから所定時間が経過したタイミングにて、前記他方の側縁に対するサーボのゲインを元のゲインに復帰させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、扁平ビームのジャンプ動作時に、サーボ手段のゲインを増加させるようにしたことにより、一方の側縁におけるジャンプの影響を他方の側縁が受け難くなり、よって、当該他方の側縁においてサーボ外れが生じ難くなる。これにより、光ヘッドのアクセス動作を円滑かつ迅速に行うことができるようになる。
【0016】
また、第3の発明のように、一方の側縁の移動が終了したことに応じて、他方の側縁に対するサーボのゲインを元のゲインに復帰させるようにすれば、一方の側縁の移動による反力によって他方の側縁にサーボ外れが生じることを抑制できる。
【0017】
さらに、第4の発明のように、一方の側縁に対するサーボの引き込みが開始してから所定時間が経過したタイミングにて、他方の側縁に対するサーボのゲインを元のゲインに復帰させるようにすれば、サーボの引き込みの開始からサーボ引き込みの終了までの間に一方の側縁において生じる微小振動が他方の側縁に影響することも抑制することができる。
【0018】
この他、本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、本発明の一実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、実施の形態に係る光カード100の上面図である。
【0021】
光カード100は、複数の記録層を積層した積層構造を透明基板内に内包した構成を有している。それぞれの記録層は平面光導波路として形成されており、その導波路内に、記録情報に応じたパターンのホログラムが形成されている。かかるホログラムは、図中のデータ領域101に対応する位置に形成されている。
【0022】
また、各記録層には、当該記録層が初期位置から何層目に当たるかを示すアドレス情報がアドレスマーク102として記録されている。図示の如く、アドレスマーク102はデータ領域101の左右に2組配されており、各組のアドレスマークにはそれぞれ同一のアドレス情報が記録されている。
【0023】
一組のアドレスマーク102は7つの領域からなっており、これら各領域にはアドレス情報に応じて選択的にホログラムが形成されている。すなわち、ホログラムが形成されている領域と形成されていない領域の組み合わせによってアドレス情報が保持されている。たとえば、ホログラムが形成されている領域を“1”とし、形成されていない領域を“0”としてアドレスを2進数にて保持させれば、一組のアドレスマーク102によって0から27(=128)のアドレスを各記録層に付することができる。
【0024】
なお、後述の光再生装置には、これら各領域に対向するようにして7つの光センサが2組配されている。各領域のうち、ホログラムが形成された領域からは対応する光センサに散乱光が導かれ、電気信号が出力される。何れの光センサから電気信号が出力されたかを検出することで、レーザ光が入射されている記録層のアドレス(記録層番号)が識別される。
【0025】
さらに、各記録層には、記録層に対する入射レーザ光の積層方向のずれを検出するためのサーボマーク103が配されている。サーボマーク103の配置領域には、上記アドレスマーク102と同様、ホログラムが形成されており、入射ビームは、当該ホログラムによって散乱され、対応するセンサに導かれる。
【0026】
図示の如く、サーボマーク103は、アドレスマーク102よりもさらに側縁に位置するようにして、データ領域101の左右に配されている。サーボマーク103の配置位置は、ビーム入射口側から見て左右に並ぶように設定されている。
【0027】
なお、アドレスマーク102とサーボマーク103は、上記の如くホログラムにて構成される他、当該領域にグレーティングを形成することにより構成するようにしても良い。
【0028】
図2は、ビーム入射口104側から見た光カード100の側面図である。図示のとおり、光カード100の記録層は、コア105とクラッド106を積層して形成されている。ビームは、コア105に入射され、コア105内に形成されたホログラムによって散乱される。コア105内に、上述のデータ領域101、アドレスマーク102、サーボマーク103が配され、それぞれホログラムが形成されている。
【0029】
図3は、コア105に対するビームの入射状態を示す図である。なお、同図は、光カード100をビーム入射側から見たときの状態を示すものである。また、サーボマークは、同図に示すコア105の入り口よりもさらに奥に配されている。同図では、サーボマークの配置を点線にて示してある。
【0030】
再生時には、コア105に対して、同図点線に示すような断面の段差ビームが入射される。ここで、段差ビームの中央部aがコア105に対し積層方向に位置ずれなく入射されているとき、左右の段差部b1、b2は、ほぼ同量だけコア105に入射され、それぞれ左右のサーボマークによって同じ量だけ散乱される。よって、このときサーボマークによって散乱される散乱光を、たとえば図4に示す如く、一対の光センサS1、S2によって受光すると、センサS1、S2の出力差はゼロとなる。
【0031】
これに対し、段差ビームの中央部aがコアに対し積層方向にずれている場合は、段差部b1がコアに入射される光量と、段差部b2がコアに入射される光量の間に差が生じ、それぞれのサーボマークによって散乱される光量に差が生じる。このため、センサS1、S2の出力差はゼロとならず、ズレの方向および大きさに応じた正負の値を持つようになる。
【0032】
かかる差信号をエラー信号として、光ヘッドの左右両端部にサーボを掛けることで、段差ビームの中央部aを、コア105に対し、積層方向にズレなく位置づけることができる。
【0033】
図5および図6に、光ヘッド200の構成を示す。なお、図5は上面図、図6は図5のA−A’断面図である。
【0034】
光ヘッド200は、レーザ光を光カードに入射させるための光学系と、記録層に対するレーザ光の位置を調整するためのアクチュエータから構成されている。
【0035】
シャーシ201には、支持部202が配されており、この支持部202に、2組の板バネ204を介して、レンズホルダー203が装着されている。かかるレンズホルダー203には、レーザ光を扁平ビームに収束して記録層に入射させるシリンドリカルレンズ306が装着されている。また、レンズホルダー203の両端部には、それぞれ一定方向に巻回されたコイル205a、205bが固着されている。
【0036】
なお、シリンドリカルレンズ306は、コア105に対する入射ビームの断面形状が図3に示すような段差形状となるよう、面形状の曲率ないし屈折率が調整されている。
【0037】
さらに、シャーシ201には、コイル205aを挟むようにして磁石206a、207aが配されている。同様に、コイル205bを挟むようにして磁石206b、207bが配されている。各コイルを挟む2つの磁石を対としたとき、一対の磁石は、コイルを挟む対向面が同一の極性を有するように配置されている。したがって、各コイルに電流を流入すると、上方向または下方向の駆動力が各コイルに発生する。この駆動力により、レンズホルダー203の左右端が駆動される。
【0038】
また、シャーシ201には、断面楕円状の出射ビームの長軸が水平になるようにして、半導体レーザ301が配置されている。半導体レーザ301から出射されたレーザ光は、コリメータ302によって並行光とされる。そして、ビームエキスパンダ303によって水平方向に拡張される。しかる後、ミラー304によって上方に反射される。しかる後、レーザ光は、レンズホルダー203に配されたミラー305によって側方に反射される。そして、シリンドリカルレンズ306によって上下方向に収束され、図3に示すような断面形状にて光カード100の記録層に収束される。
【0039】
図7および図8に、光ヘッド200を装着した装置本体の構成を示す。図7は装置本体の上面図、図8はそのA−A’断面図である。
【0040】
光ヘッド200は、シャーシ201の底面がベース401上に載置されるようにして、ベース401上に装着されている。ベース401上にはフレーム402が植設されており、このフレーム402には、光カード100の側縁を支持する一対のガイド403が形成されている。ガイド403は、光カード100を挿入しやすいようにその前端部にテーパが形成されている。また、ガイド403のギャップは、光カード100の厚みよりも少許だけ大きく設定されている。
【0041】
また、フレーム402には、光カード100の下面側のデータ領域101に臨む位置にCCD404が装着されている。データ領域101によって散乱され光カード100の下面から出射されたビームは、CCD404によって受光され、電気信号に変換される。変換された電気信号は、再生回路に供給され、所定の情報に再生される。
【0042】
また、フレーム402には、上記一組のアドレスマーク102を構成する7つのホログラム形成領域に対向する位置に7つの光センサ405a、405bが配されている。それぞれの光センサ405a、405bは、対応するホログラム形成領域にホログラムが形成されている場合に、その散乱光を受光して電気信号を出力する。
【0043】
さらに、フレーム402には、一組のサーボマーク103を構成する2つのホログラム形成領域に対向する位置に2つの光センサ406a、406bが配されている。それぞれの光センサ406a、406bは、対応するホログラム形成領域からの散乱光を受光して電気信号を出力する。
【0044】
シリンドリカルレンズ306によって収束されたビームのうち、コア105内に進入したビームは、コア105内に配されたデータ領域101、2組のアドレスマーク102および2組のサーボマーク103によって散乱され、光カード100の下面から出射される。このうち、ホログラム101によって散乱されたビームは、上記の如くCCD404によって受光される。
【0045】
また、2組のアドレスマーク102によって散乱されたビームは、上記の如く光センサ405a、405bによって受光され電気信号に変換される。変換された電気信号は、アドレスデコーダに供給されアドレス情報(層番号)として再生される。上記の如く、アドレスマーク102によってアドレス情報が2進数(ホログラムが形成されている領域が“1”、形成されていない領域が“0”)として保持されている場合、アドレスデコーダは、7つの光センサ405a、405bからの電気信号の有無から7桁の2進数を取得し、これを10進数に変換する処理を行い、当該記録層のアドレス情報(記録層番号)を再生する。
【0046】
さらに、2組のサーボマーク103によって散乱されたビームは、上記の如く光センサ406a、406bによって受光され電気信号に変換される。そして、変換された電気信号の差をとることによって、上記の如く、記録層(コア)に対する収束ビームの積層方向のズレが検出され補正される。
【0047】
図9に、本実施の形態に係る光再生装置の構成例を示す。
【0048】
図において、10a、10bは、光センサ406a、406bを構成する各センサからのセンサ出力を減算してエラー信号を生成出力するエラー信号生成回路、20aは、エラー信号生成回路10aからのエラー信号に応じてビーム収束位置を記録層に位置づけるサーボ信号を生成し、位相補償を施した後に、これをコイル205aに供給するLドライバ、20bは、エラー信号生成回路10bからのエラー信号に応じてビーム収束位置を記録層に位置づけるサーボ信号を生成し、位相補償を施した後に、これをコイル205bに供給するRドライバである。
【0049】
30aは、光センサ405aからの検出出力からアドレス情報を生成するLアドレスデコーダ、30bは、光センサ405bからの検出出力からアドレス情報を生成するRアドレスデコーダ、40は、CCD404からのCCD再生信号を処理して情報を再生する再生信号処理回路、50は、各部を制御するコントローラである。
【0050】
なお、Lドライバ20aおよびRドライバ20bは、上記サーボ動作の他、コントローラ50からの指令に応じて、光ヘッド200の左右端を、それぞれ記録層の積層方向に走査またはジャンプさせるためのバイアス信号を、対応するコイル205aおよびコイル205bに供給する。
【0051】
図10に、収束ビームの各側縁を積層方向にジャンプさせる際の処理フローを示す。なお、本処理フローは、収束ビームの側縁のうち何れか一方をジャンプさせる場合を例に挙げたものである。
【0052】
ジャンプ動作が開始されると、S101にて、当該ジャンプが収束ビームの右側側縁をジャンプさせるもの(Rジャンプ)であるか、左側側縁をジャンプさせるもの(Lジャンプ)であるかが判別される。ここで、Lジャンプであると判別されると、S102にて、Rドライバ20bのサーボのゲインGrが通常動作時の設定値G0のα倍に増加される。そして、S103にて、Lドライバ20aのサーボがOFFとされるとともに、Lドライバ20aから左側側縁のコイル205aに対しジャンプパルスとブレーキパルスが印加され、左側側縁における層間ジャンプ(N層ジャンプ:Nは自然数)が実行される。
【0053】
しかして、左側側縁における層間ジャンプが終了すると(S104:YES)、Lドライバ20aにおけるサーボ引き込み動作が開始され、これに応じて、Rドライバ20bのサーボのゲインGrが通常動作時の設定値G0に戻される。具体的には、Lドライバ20aからコイル205aにブレーキパルスが印加された後、Lドライバ20aにてサーボ引き込みが開始された(S104:YES)ことに応じて、Rドライバ20bのサーボのゲインGrが通常動作時の設定値G0に戻される。しかして、左側側縁の層間ジャンプが終了する。
【0054】
一方、S101にて、当該ジャンプ動作がRジャンプであると判別されると、S106〜S109にて、Lドライバ20aのサーボのゲインを増加させながら、Rドライバ20bにおける層間ジャンプを行う処理が実行される。
【0055】
すなわち、Lドライバ20aのサーボのゲインGlが通常動作時の設定値G0のα倍に増加された後(S106)、Rドライバ20bのサーボがOFFとされ、さらにRドライバ20bから右側側縁のコイル205bに対しジャンプパルスとブレーキパルスが印加される(S107)。しかして、右側側縁にて層間ジャンプ(N層ジャンプ:Nは自然数)が行われると(S108:YES)、Rドライバ20bにおけるサーボ引き込み動作が開始され、これに応じて、Lドライバ20aのサーボのゲインGlが通常動作時の設定値G0に戻される。具体的には、Rドライバ20bからコイル205bにブレーキパルスが印加された後、Rドライバ20bにてサーボ引き込みが開始された(S108:YES)ことに応じて、Lドライバ20aのサーボのゲインGlが通常動作時の設定値G0に戻される。しかして、右側側縁の層間ジャンプが終了する。
【0056】
図11は、左側側縁にて層間ジャンプが行われたときに右側側縁にて生じる振動をサーボ信号の振幅によって示したものである。同図(a)は、右側側縁のサーボのゲインを通常時よりも高めた場合を示し、同図(b)は、右側側縁のサーボのゲインを通常時のまま一定とした場合を示している。
【0057】
同図(a)に示す如く、本実施形態のように、一方の側縁にて層間ジャンプが行われている際に他方の側縁のサーボのゲインを増加させると、一方の側縁における層間ジャンプによる影響が、他方の側縁に及び難くなる。よって、他方の側縁におけるサーボ外れが生じ難くなり、円滑な層間ジャンプ動作を行うことができる。
【0058】
図12に、上記図10の層間ジャンプの処理フローを利用して、収束ビームを目標層へアクセスさせる際の処理フローを示す。図中、S101〜S109は、上記図10の層間ジャンプの処理フローである。
【0059】
目標層へのアクセス動作が開始されると、まず、S201にて、光カードの第1層に対する収束ビームの引き込み動作が行われる。この引き込み動作は、たとえば、収束ビームを第1層からさらに外れた初期位置から第1層方向に移動させつつ、光センサ406a、406bの出力を監視し、光センサ406a、406bから出力が現れたタイミングにて、出力が現れた光センサ406aまたは406bに対応するLドライバ20aまたはRドライバ20bのサーボをONとすることにより行われる。
【0060】
しかして、第1層に対する収束ビームの引き込み動作が終了すると、次に、S202にて、Lドライバ20aとRドライバ20bの何れにて層間ジャンプを行うかが選択される。ここで、まずLドライバ20aが選択されると、S101からS102に進む処理フローが設定され、これにより、上記図10にて説明した如く、Rドライバ20bのゲインGrを高めつつ、Lドライバ20aにて層間ジャンプ(N層分)を行う処理が実行される。
【0061】
しかして、S101〜S105にて、Lドライバ20aによる層間ジャンプが行われると、S203からS202に進み、次に、Rドライバ20bにて層間ジャンプを行う処理が選択される。これにより、S101からS106に進む処理フローが設定され、上記図10にて説明した如く、Lドライバ20aのゲインGlを高めつつ、Rドライバ20bにて層間ジャンプ(N層分)を行う処理が実行される。
【0062】
以降、同様にして、Lドライバ20aによる層間ジャンプとRドライバ20bによる層間ジャンプが交互に行われる。そして、左右両側縁が目標層にアクセスされたことが、目標層のアドレスを読み取ることにより検出されると(S203:YES)、アクセス動作が終了される。
【0063】
なお、S103、S107においては、1回の層間ジャンプにおけるジャンプ層数を、目標層との差分に応じて適宜変化させるようにしても良い。但し、ジャンプ層数をあまり大きくすると、層に対する収束ビームの傾きが大きくなるため、サーボが掛からなくなったり、アドレスが読み取れなくなったりするといった問題が生じる惧れがある。よって、ジャンプ層数は、数層程度以内に留めておくのが好ましい。
【0064】
また、Lドライバ20aによる層間ジャンプとRドライバ20bによる層間ジャンプを交互に繰り返した結果、何れか一方の側縁が目標層に引き込まれたときは、それ以降、他方の側縁が目標層に引き込まれるまで、層間ジャンプが繰り返される。このとき、S202では、当該他方の側縁に対応するドライバが選択され続けることとなる。
【0065】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は、かかる実施の形態に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0066】
たとえば、上記実施形態における層間ジャンプの処理フローでは、層間ジャンプが終了したタイミング、すなわち、Lドライバ20aまたはRドライバ20bからコイル205aまたは205bにブレーキパルスが印加された後、Lドライバ20aまたはRドライバ20bにてサーボ引き込みが開始されたタイミングにて、Rドライバ20bまたはLドライバ20aのサーボのゲインGrまたはGlを通常動作時の設定値G0に復帰させるようにしたが、図13に示す如く、Lドライバ20aまたはRドライバ20bにてサーボ引き込みが開始された後、一定の時間ΔTが経過したタイミングにて(S110、S120:YES)、Rドライバ20bまたはLドライバ20aのサーボのゲインGrまたはGlを通常動作時の設定値G0に復帰させるようにしても良い。ここで、時間ΔTは、サーボ引き込み開始からサーボ引き込み終了までに要する程度の時間(数msec程度)に設定すれば良い。
【0067】
こうすると、時間ΔTの分だけジャンプ時間が遅延するが、反面、サーボの引き込みの開始からサーボ引き込みの終了までの間に一方の側縁において生じる微小振動が他方の側縁に影響することを抑制できるといった効果を奏することができる。
【0068】
この他、光学系やアクチュエータ、記録媒体の構成、それに用いるビームの断面形状等についても、上記実施の形態に示されたものに限定されるものではない。本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施の形態に係る光カード100の上面図
【図2】実施の形態に係る光カード100の側面図
【図3】実施の形態に係るビーム入射状態を説明する図
【図4】実施の形態に係るエラー信号の生成方法を説明する図
【図5】実施の形態に係る光ヘッド200の上面図
【図6】実施の形態に係る光ヘッド200の断面図
【図7】実施の形態に係る光再生装置本体の上面図
【図8】実施の形態に係る光再生装置本体の断面図
【図9】実施の形態に係る光再生装置の回路構成を示す図
【図10】実施の形態に係る層間ジャンプ時の処理フローチャート
【図11】実施の形態に係る層間ジャンプ時における振動の影響を示す図
【図12】実施の形態に係るアクセス動作時の処理フローチャート
【図13】実施の形態に係る層間ジャンプ時の処理フローチャートの改良を示す図
【図14】従来例に係る層間ジャンプ時における振動の影響を示す図
【符号の説明】
【0070】
200 光ヘッド
20a Lドライバ
20b Rドライバ
50 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録層が積層方向に配列された記録媒体に対し前記積層方向に垂直な方向から扁平ビームを入射して情報を再生する光再生装置において、
前記扁平ビームの幅方向両側縁を個別に前記積層方向に変位させることによって前記記録層に対する前記扁平ビームの積層方向の位置ずれを補正するサーボ手段と、
前記扁平ビームの幅方向側縁を前記積層方向に移動させる走査手段とを有し、
前記サーボ手段は、前記走査手段によって前記扁平ビームの幅方向側縁が前記積層方向に移動されることに応じて、サーボのゲインを増加させる、
ことを特徴とする光再生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記サーボ手段は、前記扁平ビームの幅方向側縁のうち、一方の側縁が前記走査手段によって前記積層方向に移動されるとき、他方の側縁に対するサーボのゲインを増加させる、
ことを特徴とする光再生装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記サーボ手段は、前記一方の側縁の移動が終了したことに応じて、前記他方の側縁に対するサーボのゲインを元のゲインに復帰させる、
ことを特徴とする光再生装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記サーボ手段は、前記一方の側縁に対するサーボの引き込みが開始してから所定時間が経過したタイミングにて、前記他方の側縁に対するサーボのゲインを元のゲインに復帰させる、
ことを特徴とする光再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−79768(P2006−79768A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264739(P2004−264739)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】