光半導体モジュール
【課題】DFBレーザを有する光半導体モジュールとして、広域な温度範囲で高い通信速度で動作するものの歩留まりを向上する。
【解決手段】光半導体モジュールは、DFBレーザ1と、光信号を伝送する光伝送路(例えば、光ファイバ2)を有する。光半導体モジュールは、更に、DFBレーザ1からの出射光(レーザ光3)を光伝送路に結合させる光学系4であって、出射光を光伝送路の入射端面2aに集束させるレンズ41を含む光学系4を有する。光半導体モジュールは、更に、DFBレーザ1の出力を検出する検出部5と、検出部5による検出結果に応じてDFBレーザ1の出力を制御する制御部(APC駆動回路6)を有する。光学系4は、想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度(例えば−40℃)での結合効率が低くなるように構成されている。
【解決手段】光半導体モジュールは、DFBレーザ1と、光信号を伝送する光伝送路(例えば、光ファイバ2)を有する。光半導体モジュールは、更に、DFBレーザ1からの出射光(レーザ光3)を光伝送路に結合させる光学系4であって、出射光を光伝送路の入射端面2aに集束させるレンズ41を含む光学系4を有する。光半導体モジュールは、更に、DFBレーザ1の出力を検出する検出部5と、検出部5による検出結果に応じてDFBレーザ1の出力を制御する制御部(APC駆動回路6)を有する。光学系4は、想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度(例えば−40℃)での結合効率が低くなるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
分布帰還形のレーザーダイオード(以下、DFB(Distributed Feedback)レーザ)は、広域な温度範囲(例えば−40℃〜85℃)で単一モードにて動作する光通信用の光源として広く用いられている。
【0003】
特許文献1にも記載されているように、DFBレーザでは、最大利得波長λGとブラッグ波長λBの差、すなわちΔλ=λB−λGが重要なパラメータとなる。Δλは、離調量、或いはデチューニングと呼ばれる。
【0004】
なお、特許文献2には、緩和振動に起因する半導体レーザの特性劣化を抑制するために、温度が上昇すると半導体レーザの平均光出力を増大させる制御を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−129970号公報
【特許文献2】特開2005−203536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DFBレーザにおいては、温度変化に伴うλG及びλBの変化量は、λGの方がλBよりも大きい。これにより、低温(例えば−40℃)では、Δλがプラス側に大きくなって緩和振動が低下するため、所望の高い通信速度(例えば2.488Gbps以上)での動作ができなくなる場合がある。また、高温(例えば85℃)では Δλがマイナス側に(その絶対値が)大きくなることにより、スロープ効率が低下する。
【0007】
このような低温と高温でのトレードオフが存在するため、広域な温度範囲(例えば−40℃〜85℃)で光出力一定制御(Auto Power Control:以下、APC)によって所望の高い通信速度(例えば2.488Gbps以上)で動作可能な高性能のDFBレーザを高い歩留まりで製造することは困難だった。なお、良品と不良品は、例えば常温(例えば25℃)でのΔλの値により判別される。このような高性能のDFBレーザにおいては、許容されるΔλが極めて狭い範囲に限られることから、歩留が大きく低下する。
【0008】
このため、DFBレーザを有する光半導体モジュールとして、広域な温度範囲で高い通信速度で動作するものの歩留まりを向上することが困難だった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、DFBレーザと、
光信号を伝送する光伝送路と、
前記DFBレーザからの出射光を前記光伝送路に結合させる光学系であって、前記出射光を前記光伝送路の入射端面に集束させるレンズを含む光学系と、
前記DFBレーザの出力を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に応じて前記DFBレーザの出力を制御する制御部と、
を有し、
前記光学系は、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、前記想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなるように構成されていることを特徴とする光半導体モジュールを提供する。
【0010】
この光半導体モジュールによれば、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなるので、DFBレーザの出力の検出結果に応じてDFBレーザの出力を制御することによって、低温での駆動電流を高くして緩和振動周波数を大きくすることができる。このため、低温でも容易に高速動作を実現することができる。
よって、DFBレーザを有する光半導体モジュールとして、広域な温度範囲で高い通信速度で動作するものの歩留まりを向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、DFBレーザを有する光半導体モジュールとして、広域な温度範囲で高い通信速度で動作するものの歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る光半導体モジュールの波長フィルタの透過率と波長との関係の一例を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る光半導体モジュールのDFBレーザのピーク波長の温度依存性の一例を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る光半導体モジュールの波長フィルタの透過率の温度依存性の一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る光半導体モジュールと比較例に係る光半導体モジュールの緩和振動周波数のΔλ依存性の一例を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
【図7】第3の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
【図8】第3の実施形態に係る光半導体モジュールのプラスチックレンズの最適結合位置の温度依存性の一例を示す図である。
【図9】第3の実施形態に係る光半導体モジュールのプラスチックレンズの結合位置と結合効率との関係の一例を示す図である。
【図10】第3の実施形態に係る光半導体モジュールのレンズの結合効率の温度依存性の一例を示す図である。
【図11】第4の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
【図12】第4の実施形態に係る光半導体モジュールの非球面レンズの結合位置と結合効率との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態を説明する前に、本発明者が認識した課題について、より詳細に説明する。
【0014】
上述のように、DFBレーザでは、最大利得波長λGとブラッグ波長λBの差Δλが重要なパラメータとなり、温度が変化した時のそれぞれの変化量は、λBよりもλGの方が大きい。例えば、25℃でのΔλの値が0、λBの温度変動が0.1nm/℃、λBの温度変動が0.45nm/℃のDFBレーザの場合、−40℃では、Δλ=+22.75nmとなり、85℃では、Δλ=−21nmとなる。
【0015】
つまり、低温側では、Δλの値がプラス側に大きくなる。そして、λBとλGの乖離が大きくなるほど(Δλがプラス側に大きくなるほど)、緩和振動の低下が生じる。伝送速度2.488Gbps用のDFBレーザでは、緩和振動周波数が5GHz未満になると、アイバターンのマスクマージンが減少し伝送エラーが発生しやすくなるため、緩和振動周波数が5GHz以上であることが望ましい。
【0016】
一方、高温側では、Δλがマイナス側に大きくなる。そして、λBとλGの乖離が大きくなるほど(Δλがマイナス側に大きくなるほど)、スロープ効率が低下する。
【0017】
ここで、DFBレーザの25℃でのΔλがプラス側であっても、想定使用温度範囲の下限温度(例えば−40℃)では、変調電流を増大させることによって、5GHz以上の緩和振動周波数を得ることが可能である。
【0018】
しかし、DFBレーザの出力をフィードバック制御により自動調節するAPC(Auto Power Control)制御を行う場合、変調電流を増大させると、想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)でのスロープ効率が低下する結果、変調電流が駆動回路に対して予め定められている最大値を上回ったり、光出力が飽和のために不足したりして、高温での動作が困難になる場合がある。
【0019】
また、上記のようにDFBレーザでは、低温側での緩和振動と高温側でのスロープ効率との間にトレードオフの関係があり、この想定使用温度範囲内の何れの温度でも所望の通信速度(例えば2.488Gbps以上)を得るためには、Δλ(例えば常温でのΔλ)の許容範囲が限定され、その結果として歩留が低下するという課題があった。
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態では、低温(例えば−40℃)で所望の伝送速度(例えば2.488Gbps以上)の動作を容易に実現できるようにするために、低温時に光伝送路(例えば光ファイバ)との結合効率が低下する光学系を採用する。
ここで、低温で結合効率を小さくするためには、DFBレーザの波長が低温ほど短くなることを利用して、DFBレーザと光伝送路との間に、短波長で透過率が低下する(反射率が大きくなる)波長フィルタを挿入することが挙げられる。
或いは、プラスチックのように温度によって屈折率が大きく変化する材質により構成されたレンズを用いて、低温でのDFBレーザと光伝送路の結合効率が小さくなるようにしてもよい。
【0022】
このような光学系を採用するとともに、光伝送路に入射する光出力が一定になるように動作させて低温でのDFBレーザの駆動電流を大きくすることにより、緩和振動周波数を大きくすることができる。これにより、想定使用温度範囲内の何れの温度でも所望の通信速度(例えば2.488Gbps以上)で動作可能な光半導体モジュールの歩留まりを向上させることができる。
【0023】
ここで、DFBレーザの緩和振動周波数は、動作速度を決めるパラメータであり、以下の式(1)により表される。
【0024】
【数1】
【0025】
式(1)において、Gthはしきい値利得レベル、Iは駆動電流、Ithはしきい値電流、τは自然放出光による電子寿命時間、Igは利得が正になるキャリア密度に対応する電流値、である。
【0026】
上記の式(1)に示される通り、DFBレーザの駆動電流が大きくなるほど、緩和振動周波数は大きくなる。また、駆動電流としきい値電流の差分(I−Ith)を変調電流と定義する。この変調電流は、緩和振動周波数の2乗と比例し、変調電流が大きくなるほど、緩和振動周波数も大きくなる。
【0027】
以下、より具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0028】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
【0029】
本実施形態に係る光半導体モジュールは、DFBレーザ1と、光信号を伝送する光伝送路(例えば、光ファイバ2)と、DFBレーザ1からの出射光(レーザ光3)を光伝送路に結合させる光学系4であって、出射光を光伝送路の入射端面2aに集束させるレンズ41を含む光学系4と、DFBレーザ1の出力を検出する検出部5と、検出部5による検出結果に応じてDFBレーザ1の出力を制御する制御部(APC駆動回路6)と、を有し、光学系4は、想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度(例えば−40℃)での結合効率が低くなるように構成されている。
本実施形態では、DFBレーザ1のピーク波長が、約0.1nm/℃の温度依存性を持ち、低温になるほど短くなることを利用する。
以下、詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、光半導体モジュールは、光源としてのDFBレーザ1と、光伝送路20を構成する光ファイバ2、21と、DFBレーザ1から出射されるレーザ光3を光伝送路20の光ファイバ2に結合させる光学系4とを有している。
【0031】
光学系4は、レンズ41と、波長フィルタ42と、を有している。レンズ41は、DFBレーザ1と、光ファイバ2の入射端面2aと、の間に配置されている。波長フィルタ42は、このレンズ41と入射端面2aとの間に配置されている。
【0032】
レンズ41は、例えば、球面レンズである。より具体的には、レンズ41は、例えば球形のレンズ(球レンズ)である。また、本実施形態の場合、レンズ41の材質は、例えば、ガラスである。なお、本実施形態の場合、レンズ41は、非球面レンズであっても良い。
【0033】
DFBレーザ1から出射したレーザ光3は、レンズ41及び波長フィルタ42をこの順に介して光ファイバ2に結合する。
なお、波長フィルタ42は、DFBレーザ1とレンズ41との間に配置しても良い。この場合、DFBレーザ1から出射したレーザ光は、波長フィルタ42及びレンズ41をこの順に介して光ファイバ2に結合する。
【0034】
DFBレーザ1から出射したレーザ光3は、光ファイバ2の入射端面2a(DFBレーザ1側の端面)より、光ファイバ2内に入射し、光伝送路20内を伝送される。
【0035】
検出部5は、例えば、ファイバカプラ7とフォトダイオード(PD)8と光ファイバ9とにより構成されている。ファイバカプラ7は、光伝送路20の途中に挿入されている。すなわち、ファイバカプラ7は、光ファイバ2と光ファイバ21との間に挿入されている。更に、ファイバカプラ7は、更に別の光ファイバ9の一端にも接続され、この光ファイバ9の他端はフォトダイオード8と接続されている。ファイバカプラ7は、光ファイバ2を伝送される光の一部(例えば10%)をフォトダイオード8側の光ファイバ9に入射させ、残りの一部(例えば90%)の光を光ファイバ21に透過させることができる。すなわち、ファイバカプラ7は、該一部の光を光伝送路2から分岐させてフォトダイオード8に入射させる。フォトダイオード8は、ファイバカプラ7により分岐された光の強度を検出し、検出結果をAPC駆動回路6に入力する。
また、ファイバカプラ7を透過した光は、ファイバカプラ7の先(光ファイバ2の延長上)に設けられた光ファイバ21に入射される。光ファイバ21は、ファイバカプラ7から入射された光を伝送する。
【0036】
APC駆動回路6は、検出部5から入力される検出結果に基づいて、光ファイバ2に入射する光出力が一定となるように、DFBレーザ1の出力を制御する。すなわち、APC駆動回路6は、光量一定制御(APC動作)を行う。
このように、検出部5は、DFBレーザ1の出力を検出し(実際には、検出部5は、例えば、光ファイバ2に入射される光の一部(例えば10%)を検出するため、検出部5が検出するのはDFBレーザ1の出力と正の相関がある値である)、APC駆動回路6は検出部5による検出結果に応じてDFBレーザ1の出力を制御する。
なお、光出力が一定となるような制御には、厳密に一定となるような制御のみならず、所定の目標範囲内に収まるような制御も含まれる。
【0037】
光送信機としての光半導体モジュールでは、光源としてのDFBレーザ1からの光出力が定められているため、図1に示すように光出力モニタ用の検出部5を光伝送路20の途中に挿入して、APC動作を行う。
【0038】
波長フィルタ42は、短波側の波長の透過率が低くなる特性を持つ。
すなわち、波長フィルタ42は、光半導体モジュールの想定使用温度範囲の下限温度(例えば−40℃)でのDFBレーザ1のピーク波長に対して損失が大きく、該想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)でのDFBレーザ1のピーク波長に対して損失が小さいという特性を持つ。
より具体的には、波長フィルタ42は、低温になるほど、DFBレーザ1のピーク波長に対する損失が大きくなり、従って、低温になるほど透過率が低下する。
【0039】
本実施形態では、このような特性の波長フィルタ42を用いることにより、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなるように、光学系4が構成されている。
【0040】
例えば、85℃では、光ファイバ2に入射する光出力は、波長フィルタ42がない場合とほぼ同等になるが、−40℃では、波長フィルタ42での損失が生じる。このため、光ファイバ2に入射した光の光出力の検出結果に基づきAPC動作を行うと、−40℃では、波長フィルタ42で生じた損失の分、変調電流が大きくなり、その結果、緩和振動周波数を大きくすることができる。
【0041】
以下、DFBレーザ1の25℃でのピーク波長λp=1.31umの場合について、より具体的に説明する。
【0042】
図2は波長フィルタ42の透過率と波長との関係の一例を示す図、図3はDFBレーザ1のピーク波長の温度依存性の一例を示す図、図4は波長フィルタ42の透過率の温度依存性の一例を示す図である。図2の縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。図2は25℃での特性の一例を示す。波長フィルタ42は、温度変化に応じて透過率が変化するが、予め温度変動を考慮して25℃での透過率が設計されるので、以下では、説明を簡単にするため、波長フィルタ42に温度依存性がないものとする。図3の縦軸はピーク波長(nm)、横軸は温度(℃)である。図4の縦軸は透過率(%)、横軸は温度(℃)である。
【0043】
図2に示すように、波長フィルタ42は、例えば、波長が1310nm以下になると、波長が短くなるほど透過率が低下するという特性を持つ。
DFBレーザ1のピーク波長λpの温度依存性は、0.1nm/℃であるため、図3に示すように、例えば、−40℃でλp=1303.5nm、85℃でλp=1316nmとなる。
【0044】
また、図2に示される透過率特性と図3に示されるピーク波長λpの温度依存特性から、各温度での波長フィルタ42の透過率は、図4に示すようになる。
すなわち、図4に示すように、例えば、−40℃での透過率は59%、85℃での透過率は96%となる。光ファイバ2に入射した光出力をモニタし、APC動作を行うと、−40℃では、波長フィルタ42がない場合と比較して、光ファイバ2に結合する光が小さくなるので、変調電流が69%大きくなる。
【0045】
図5は本実施形態に係る光半導体モジュールと比較例に係る光半導体モジュールの緩和振動周波数のΔλ依存性の一例を示す図である。図5の縦軸は緩和振動周波数(GHz)、横軸は変調電流の平方根であり、横軸の値が大きいほど、変調電流が大きいことを意味する。図5には、Δλ=0、Δλ=5、Δλ=10のそれぞれの場合について、緩和振動周波数と、変調電流の平方根と、の関係を示している。
【0046】
図5において、先ず、比較例として、−40℃での変調電流(Imod)が15mAの場合(横軸の値が約3.8)について説明する。この場合、Δλ=0では、緩和振動周波数fr=5.6GHzが得られ、2.488Gbpsでの動作が可能である。しかし、Δλ=5nmでは、fr=4.8GHz、Δλ=10nmでは、fr=4GHzとなり、何れも2.488Gbpsでの動作に必要な5GHzを下回っていた。
【0047】
これに対して、本実施形態では、上記のような波長フィルタ42を用いることにより、−40℃での変調電流が25mAとなるため(横軸の値が約5.0)、Δλ=5nmでは、fr=6.4GHz、Δλ=10nmでも、fr=5.6GHzといずれも5GHz を超える緩和振動周波数を得ることができた。
【0048】
以上のような第1の実施形態に係る光半導体モジュールによれば、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなる。よって、DFBレーザ1の出力の検出結果に応じてDFBレーザ1の出力を一定に制御することによって、低温での駆動電流を高くして緩和振動周波数を大きくすることができる。このため、低温でも容易に高速動作を実現することができる。
よって、DFBレーザ1を有する光半導体モジュールとして、広域な温度範囲で高い通信速度で動作するものの歩留まりを向上することができる。
具体的には、例えば、−40℃でのDFBレーザ1の駆動電流を高くすることで、−40℃の緩和振動周波数を高くすることができ、−40℃以上85℃以下の温度範囲で、2.488Gbps以上で動作する光半導体モジュールを歩留よく製造することができる。
【0049】
光学系4は、DFBレーザ1と光ファイバ2との間に配置された波長フィルタ42を有し、波長フィルタ42は、想定使用温度範囲の上限温度におけるDFBレーザ1の出射波長の透過率が、下限温度におけるDFBレーザ1の出射波長の透過率よりも低くなる特性を持つ。DFBレーザ1の波長は、低温ほど短くなるので(図3)、このような波長フィルタ42を用いることにより、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度での結合効率を低くすることができる。
【0050】
なお、レンズ41がガラスにより構成される場合、レンズ41を球形にする方がレンズ41の加工が容易である。また、レンズ41が球形の方が、結合位置が変わった時の結合率の変化が小さいので、光ファイバ2と結合する際の調整がしやすくなる。
【0051】
〔第2の実施形態〕
図6は第2の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
本実施形態では、上記の第1の実施形態と比べて、検出部5の配置及び構成が異なる。すなわち、本実施形態では、DFBレーザ1を基準として、検出部5は、光ファイバ2の入射端面2aと反対側に配置されている。また、検出部5は、ファイバカプラ7を有していない。
DFBレーザ1と検出部5との間には、波長フィルタ42と同じ特性の第2波長フィルタ421が配置されている。
そして、検出部5は、DFBレーザ1の出力として、第2波長フィルタ421を介して検出部5に入射した光の強度を検出する。
また、本実施形態の場合、光伝送路20は、その途中に検出部5を挿入する必要がないため、光ファイバ2と光ファイバ21とにより構成する必要が無く、光ファイバ2により構成されている。
【0052】
DFBレーザ1は、光ファイバ2側にレーザ光3を出射するとともに、検出部5側にもレーザ光31を出射する。
【0053】
レーザ光31は、第2波長フィルタ421を介して検出部5に入射する。本実施形態の場合、APC駆動回路6は、検出部5から入力される検出結果に基づいて、検出部5に入射する光出力が一定となるように、DFBレーザ1の出力を制御する。
【0054】
第2の実施形態のように、DFBレーザ1の後方に配置した検出部5による検出結果に応じてDFBレーザ1をAPC動作する場合にも、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
〔第3の実施形態〕
図7は第3の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
本実施形態に係る光半導体モジュールは、上記の第1の実施形態と比べて、以下の点が相違する。すなわち、光半導体モジュールは、波長フィルタ42を有しておらず、また、レンズ41に代えてレンズ411を有している。本実施形態の場合、例えば、レンズ411のみにより光学系4が構成されている。DFBレーザ1から出射したレーザ光3は、レンズ411を介して光ファイバ2に結合する。光ファイバ2に入射した光を検出部5により検出し、その検出結果に応じ、APC駆動回路6によってDFBレーザ1をAPC動作させる。
【0056】
レンズ411は、例えば、球面レンズである。より具体的には、レンズ411は、例えば球形のレンズ(球レンズ)である。レンズ411の直径は、例えば1.5mm程度とすることができる。
【0057】
レンズ411は、例えば、プラスチックなどの樹脂により構成されている。
レンズ411の材料は、より具体的には、例えば、25℃での屈折率が1.49、屈折率の温度依存性が−1.1×10−4/℃のプラスチックとすることができる。
【0058】
光ファイバ2の入射端面2aは、想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)で最適な結合が得られる位置(最適結合位置)に配置する。なお、光ファイバ2の位置は、85℃にて最適な結合位置に調整してもよいし、常温(例えば25℃)と上限温度での最適結合位置との差が予め分かっていれば、常温での最適結合位置に光ファイバ2の入射端面2aを位置合わせしてから、その差分(例えば120μm)だけ、レンズ411と反対側に入射端面2aをずらすことによって行っても良い。
【0059】
図8はレンズ411の最適結合位置の温度依存性の一例を示す図、図9はレンズ411の結合位置と結合効率との関係の一例を示す図、図10はレンズ411の結合効率の温度依存性の一例を示す図である。図8の縦軸は最適結合位置(mm)、横軸は温度(℃)、図9の縦軸は結合効率(%)、横軸は結合位置(mm)、図10の縦軸は結合効率(%)、横軸は温度(℃)である。
【0060】
レンズ411を構成するプラスチックの屈折率の温度変化により、最適結合位置は、温度変化に対して、図8のように変化する。
【0061】
また、レンズ411の結合位置と結合効率の関係は−40℃、25℃、85℃のそれぞれの温度において、図9のようになる。なお、図9には、本実施形態での結合位置P1、すなわち想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)で最適な結合が得られる位置を示している。
【0062】
また、図10に示すように、85℃の最適結合位置での結合効率は例えば17.9%となるが、−40℃では、同じ位置で光ファイバ2に結合させると、結合効率が例えば9.2%となる。
【0063】
以下、光出力を1mWとしてAPC動作する場合について説明する。
【0064】
ガラスレンズを使った場合、例えば、−40℃でのスロープ効率が0.5W/Aとなり、結合効率が18%となるので、光出力が1mWの場合は、変動電流が11mAとなる。変調電流が11mAの場合、25℃のΔλ=0 でも、fr=4.7GHzとなり、5GHzを下回るので、25℃でのΔλ=0〜10nmでは、2.488Gbpsでの動作ができない。
【0065】
これに対し、プラスチックレンズを使った場合、例えば、−40℃でのスロープ効率が0.5W/Aとなり、結合効率が9.2%となるので、変調電流は22mAとなり、25℃でのΔλ=10nmの時でも、fr=5.2GHzとなる。その結果、25℃でのΔλ=0〜10nmの間で、2.488Gbpsの動作条件を満たす。
【0066】
一般に、光半導体モジュールに用いられる光ファイバ2のコアの径は10μm程度であり、そのサイズのコアに光を結合させるため、光半導体モジュールのレンズの材料としては、一般に、屈折率の温度変動が2×10−6/℃と非常に小さいガラスが採用されている。
【0067】
一方、プラスチックなどの樹脂を材料にしたレンズ411は、ガラスと比較して加工が容易で、且つ安価である。しかし、レンズ411は、ガラスと比べて屈折率の温度依存性が−1×10−5から−1×10−4と1桁から2桁大きく、これまで光ファイバ2を使った装置には採用されなかった。例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)は、屈折率が1.49であり、レンズのガラス材料として採用されることが多いBK−7と同等の屈折率を有しているが、その温度依存性は−1.1×10−4/℃と、ガラス材料よりも2桁大きい。
【0068】
本実施形態では、樹脂の屈折率が温度依存性を利用して、下限温度(例えば−40℃)での結合効率を低くする。
樹脂の屈折率は、高温ほど小さくなり、低温ほど大きくなるので、最大の結合効率が得られる結合位置は、高温ほどレンズ411から離れ、低温ほどレンズ411に近くなる。上限温度(例えば85℃)で結合効率が最大になる位置で光ファイバ2と結合させると、−40℃では、最適結合位置がレンズ411に近くなり、結合効率が低下する。その結果、APC動作した場合は、下限温度(−40℃)での変調電流を高くすることができ、緩和振動周波数を高くすることができる。
【0069】
以上のような第3の実施形態でも、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなるので、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
また、ガラスよりも安価な樹脂によりレンズ411が構成されているので、光半導体モジュールのコストを低減することができる。
【0070】
〔第4の実施形態〕
図11は第4の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
本実施形態に係る光半導体モジュールは、以下に説明する点でのみ上記の第3の実施形態と相違する。
【0071】
本実施形態の場合、レンズ411は、非球面レンズである。また、レンズ411の材料は、例えば、25℃での屈折率が1.5、屈折率の温度依存性が−1.2×10−5/℃ のプラスチックとすることができる。
【0072】
非球面レンズでは、最適結合位置から結合位置がずれたときの結合効率の低下が大きく、屈折率が−1×10−4/℃の温度依存性を持つと、−40℃では、光ファイバ2に入射する光出力が取れなくなるため、第3の実施形態よりも温度依存性が小さいプラスチックを用いる。
【0073】
図12は、レンズ411が非球面レンズである場合の結合位置と結合効率との関係の一例を示す図である。図12の縦軸は結合効率(%)、横軸は結合位置(mm)である。
最適結合位置は、85℃から−40℃に変化すると、0.023mmだけレンズ側に近付くので、結合位置P2での結合効率は、51.5%から45.2%と13%低くなる。なお、結合位置P2は、図12に示す通り本実施形態における想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)で最適な結合が得られる位置を示している。
【0074】
以下、光出力を4mWとしてAPC動作する場合について説明する。
【0075】
ガラスレンズを使った場合、−40℃でのスロープ効率が0.5W/A、結合効率が 51.5%となるので、光出力が4mWの場合は、変動電流が15.4mAとなる。変調電流が15.4mAの場合、25℃のΔλ=0ではfr=5.6GHzとなり5GHzを超えるが、25℃でのΔλ=5nmでは、fr=4.8GHzとなり、5GHz以下となって、2.488Gbpsでの動作条件を満足しない。
【0076】
一方、プラスチックレンズを使用した場合、スロープ効率0.5W/A、結合効率が45.2%であるので、変調電流は、17.7mAとなる。25℃でのΔλ=0の時はfr=6.1GHz、25℃でのΔλ=5nmの時は、fr=5.3GHzとなり、2.488Gbpsでの動作条件を満足する。
【0077】
なお、ここでは、屈折率の温度依存性が−1.2×10−5/℃ の材料を採用したが、温度依存性が更に大きい材料を採用することになって、−40℃と85℃の結合効率の差を大きくすることも可能である。
【0078】
以上のような第4の実施形態によっても、第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0079】
なお、上記の第1及び第2の実施形態では結合効率を低下させるために波長フィルタ42を用いる例を説明し、上記の第3及び第4の実施形態では結合効率を低下させるための樹脂により構成されたレンズ411を用いる例を説明したが、波長フィルタ42及びレンズ411を併用することによって、結合効率を低下させても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 DFBレーザ
2 光ファイバ
2a 入射端面
20 光伝送路
21 光ファイバ
3 レーザ光
4 光学系
5 検出部
6 APC駆動回路
7 ファイバカプラ
8 フォトダイオード
9 光ファイバ
31 レーザ光
41 レンズ
42 波長フィルタ
411 レンズ
421 波長フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
分布帰還形のレーザーダイオード(以下、DFB(Distributed Feedback)レーザ)は、広域な温度範囲(例えば−40℃〜85℃)で単一モードにて動作する光通信用の光源として広く用いられている。
【0003】
特許文献1にも記載されているように、DFBレーザでは、最大利得波長λGとブラッグ波長λBの差、すなわちΔλ=λB−λGが重要なパラメータとなる。Δλは、離調量、或いはデチューニングと呼ばれる。
【0004】
なお、特許文献2には、緩和振動に起因する半導体レーザの特性劣化を抑制するために、温度が上昇すると半導体レーザの平均光出力を増大させる制御を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−129970号公報
【特許文献2】特開2005−203536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DFBレーザにおいては、温度変化に伴うλG及びλBの変化量は、λGの方がλBよりも大きい。これにより、低温(例えば−40℃)では、Δλがプラス側に大きくなって緩和振動が低下するため、所望の高い通信速度(例えば2.488Gbps以上)での動作ができなくなる場合がある。また、高温(例えば85℃)では Δλがマイナス側に(その絶対値が)大きくなることにより、スロープ効率が低下する。
【0007】
このような低温と高温でのトレードオフが存在するため、広域な温度範囲(例えば−40℃〜85℃)で光出力一定制御(Auto Power Control:以下、APC)によって所望の高い通信速度(例えば2.488Gbps以上)で動作可能な高性能のDFBレーザを高い歩留まりで製造することは困難だった。なお、良品と不良品は、例えば常温(例えば25℃)でのΔλの値により判別される。このような高性能のDFBレーザにおいては、許容されるΔλが極めて狭い範囲に限られることから、歩留が大きく低下する。
【0008】
このため、DFBレーザを有する光半導体モジュールとして、広域な温度範囲で高い通信速度で動作するものの歩留まりを向上することが困難だった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、DFBレーザと、
光信号を伝送する光伝送路と、
前記DFBレーザからの出射光を前記光伝送路に結合させる光学系であって、前記出射光を前記光伝送路の入射端面に集束させるレンズを含む光学系と、
前記DFBレーザの出力を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に応じて前記DFBレーザの出力を制御する制御部と、
を有し、
前記光学系は、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、前記想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなるように構成されていることを特徴とする光半導体モジュールを提供する。
【0010】
この光半導体モジュールによれば、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなるので、DFBレーザの出力の検出結果に応じてDFBレーザの出力を制御することによって、低温での駆動電流を高くして緩和振動周波数を大きくすることができる。このため、低温でも容易に高速動作を実現することができる。
よって、DFBレーザを有する光半導体モジュールとして、広域な温度範囲で高い通信速度で動作するものの歩留まりを向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、DFBレーザを有する光半導体モジュールとして、広域な温度範囲で高い通信速度で動作するものの歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る光半導体モジュールの波長フィルタの透過率と波長との関係の一例を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る光半導体モジュールのDFBレーザのピーク波長の温度依存性の一例を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る光半導体モジュールの波長フィルタの透過率の温度依存性の一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る光半導体モジュールと比較例に係る光半導体モジュールの緩和振動周波数のΔλ依存性の一例を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
【図7】第3の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
【図8】第3の実施形態に係る光半導体モジュールのプラスチックレンズの最適結合位置の温度依存性の一例を示す図である。
【図9】第3の実施形態に係る光半導体モジュールのプラスチックレンズの結合位置と結合効率との関係の一例を示す図である。
【図10】第3の実施形態に係る光半導体モジュールのレンズの結合効率の温度依存性の一例を示す図である。
【図11】第4の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
【図12】第4の実施形態に係る光半導体モジュールの非球面レンズの結合位置と結合効率との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態を説明する前に、本発明者が認識した課題について、より詳細に説明する。
【0014】
上述のように、DFBレーザでは、最大利得波長λGとブラッグ波長λBの差Δλが重要なパラメータとなり、温度が変化した時のそれぞれの変化量は、λBよりもλGの方が大きい。例えば、25℃でのΔλの値が0、λBの温度変動が0.1nm/℃、λBの温度変動が0.45nm/℃のDFBレーザの場合、−40℃では、Δλ=+22.75nmとなり、85℃では、Δλ=−21nmとなる。
【0015】
つまり、低温側では、Δλの値がプラス側に大きくなる。そして、λBとλGの乖離が大きくなるほど(Δλがプラス側に大きくなるほど)、緩和振動の低下が生じる。伝送速度2.488Gbps用のDFBレーザでは、緩和振動周波数が5GHz未満になると、アイバターンのマスクマージンが減少し伝送エラーが発生しやすくなるため、緩和振動周波数が5GHz以上であることが望ましい。
【0016】
一方、高温側では、Δλがマイナス側に大きくなる。そして、λBとλGの乖離が大きくなるほど(Δλがマイナス側に大きくなるほど)、スロープ効率が低下する。
【0017】
ここで、DFBレーザの25℃でのΔλがプラス側であっても、想定使用温度範囲の下限温度(例えば−40℃)では、変調電流を増大させることによって、5GHz以上の緩和振動周波数を得ることが可能である。
【0018】
しかし、DFBレーザの出力をフィードバック制御により自動調節するAPC(Auto Power Control)制御を行う場合、変調電流を増大させると、想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)でのスロープ効率が低下する結果、変調電流が駆動回路に対して予め定められている最大値を上回ったり、光出力が飽和のために不足したりして、高温での動作が困難になる場合がある。
【0019】
また、上記のようにDFBレーザでは、低温側での緩和振動と高温側でのスロープ効率との間にトレードオフの関係があり、この想定使用温度範囲内の何れの温度でも所望の通信速度(例えば2.488Gbps以上)を得るためには、Δλ(例えば常温でのΔλ)の許容範囲が限定され、その結果として歩留が低下するという課題があった。
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態では、低温(例えば−40℃)で所望の伝送速度(例えば2.488Gbps以上)の動作を容易に実現できるようにするために、低温時に光伝送路(例えば光ファイバ)との結合効率が低下する光学系を採用する。
ここで、低温で結合効率を小さくするためには、DFBレーザの波長が低温ほど短くなることを利用して、DFBレーザと光伝送路との間に、短波長で透過率が低下する(反射率が大きくなる)波長フィルタを挿入することが挙げられる。
或いは、プラスチックのように温度によって屈折率が大きく変化する材質により構成されたレンズを用いて、低温でのDFBレーザと光伝送路の結合効率が小さくなるようにしてもよい。
【0022】
このような光学系を採用するとともに、光伝送路に入射する光出力が一定になるように動作させて低温でのDFBレーザの駆動電流を大きくすることにより、緩和振動周波数を大きくすることができる。これにより、想定使用温度範囲内の何れの温度でも所望の通信速度(例えば2.488Gbps以上)で動作可能な光半導体モジュールの歩留まりを向上させることができる。
【0023】
ここで、DFBレーザの緩和振動周波数は、動作速度を決めるパラメータであり、以下の式(1)により表される。
【0024】
【数1】
【0025】
式(1)において、Gthはしきい値利得レベル、Iは駆動電流、Ithはしきい値電流、τは自然放出光による電子寿命時間、Igは利得が正になるキャリア密度に対応する電流値、である。
【0026】
上記の式(1)に示される通り、DFBレーザの駆動電流が大きくなるほど、緩和振動周波数は大きくなる。また、駆動電流としきい値電流の差分(I−Ith)を変調電流と定義する。この変調電流は、緩和振動周波数の2乗と比例し、変調電流が大きくなるほど、緩和振動周波数も大きくなる。
【0027】
以下、より具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0028】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
【0029】
本実施形態に係る光半導体モジュールは、DFBレーザ1と、光信号を伝送する光伝送路(例えば、光ファイバ2)と、DFBレーザ1からの出射光(レーザ光3)を光伝送路に結合させる光学系4であって、出射光を光伝送路の入射端面2aに集束させるレンズ41を含む光学系4と、DFBレーザ1の出力を検出する検出部5と、検出部5による検出結果に応じてDFBレーザ1の出力を制御する制御部(APC駆動回路6)と、を有し、光学系4は、想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度(例えば−40℃)での結合効率が低くなるように構成されている。
本実施形態では、DFBレーザ1のピーク波長が、約0.1nm/℃の温度依存性を持ち、低温になるほど短くなることを利用する。
以下、詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、光半導体モジュールは、光源としてのDFBレーザ1と、光伝送路20を構成する光ファイバ2、21と、DFBレーザ1から出射されるレーザ光3を光伝送路20の光ファイバ2に結合させる光学系4とを有している。
【0031】
光学系4は、レンズ41と、波長フィルタ42と、を有している。レンズ41は、DFBレーザ1と、光ファイバ2の入射端面2aと、の間に配置されている。波長フィルタ42は、このレンズ41と入射端面2aとの間に配置されている。
【0032】
レンズ41は、例えば、球面レンズである。より具体的には、レンズ41は、例えば球形のレンズ(球レンズ)である。また、本実施形態の場合、レンズ41の材質は、例えば、ガラスである。なお、本実施形態の場合、レンズ41は、非球面レンズであっても良い。
【0033】
DFBレーザ1から出射したレーザ光3は、レンズ41及び波長フィルタ42をこの順に介して光ファイバ2に結合する。
なお、波長フィルタ42は、DFBレーザ1とレンズ41との間に配置しても良い。この場合、DFBレーザ1から出射したレーザ光は、波長フィルタ42及びレンズ41をこの順に介して光ファイバ2に結合する。
【0034】
DFBレーザ1から出射したレーザ光3は、光ファイバ2の入射端面2a(DFBレーザ1側の端面)より、光ファイバ2内に入射し、光伝送路20内を伝送される。
【0035】
検出部5は、例えば、ファイバカプラ7とフォトダイオード(PD)8と光ファイバ9とにより構成されている。ファイバカプラ7は、光伝送路20の途中に挿入されている。すなわち、ファイバカプラ7は、光ファイバ2と光ファイバ21との間に挿入されている。更に、ファイバカプラ7は、更に別の光ファイバ9の一端にも接続され、この光ファイバ9の他端はフォトダイオード8と接続されている。ファイバカプラ7は、光ファイバ2を伝送される光の一部(例えば10%)をフォトダイオード8側の光ファイバ9に入射させ、残りの一部(例えば90%)の光を光ファイバ21に透過させることができる。すなわち、ファイバカプラ7は、該一部の光を光伝送路2から分岐させてフォトダイオード8に入射させる。フォトダイオード8は、ファイバカプラ7により分岐された光の強度を検出し、検出結果をAPC駆動回路6に入力する。
また、ファイバカプラ7を透過した光は、ファイバカプラ7の先(光ファイバ2の延長上)に設けられた光ファイバ21に入射される。光ファイバ21は、ファイバカプラ7から入射された光を伝送する。
【0036】
APC駆動回路6は、検出部5から入力される検出結果に基づいて、光ファイバ2に入射する光出力が一定となるように、DFBレーザ1の出力を制御する。すなわち、APC駆動回路6は、光量一定制御(APC動作)を行う。
このように、検出部5は、DFBレーザ1の出力を検出し(実際には、検出部5は、例えば、光ファイバ2に入射される光の一部(例えば10%)を検出するため、検出部5が検出するのはDFBレーザ1の出力と正の相関がある値である)、APC駆動回路6は検出部5による検出結果に応じてDFBレーザ1の出力を制御する。
なお、光出力が一定となるような制御には、厳密に一定となるような制御のみならず、所定の目標範囲内に収まるような制御も含まれる。
【0037】
光送信機としての光半導体モジュールでは、光源としてのDFBレーザ1からの光出力が定められているため、図1に示すように光出力モニタ用の検出部5を光伝送路20の途中に挿入して、APC動作を行う。
【0038】
波長フィルタ42は、短波側の波長の透過率が低くなる特性を持つ。
すなわち、波長フィルタ42は、光半導体モジュールの想定使用温度範囲の下限温度(例えば−40℃)でのDFBレーザ1のピーク波長に対して損失が大きく、該想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)でのDFBレーザ1のピーク波長に対して損失が小さいという特性を持つ。
より具体的には、波長フィルタ42は、低温になるほど、DFBレーザ1のピーク波長に対する損失が大きくなり、従って、低温になるほど透過率が低下する。
【0039】
本実施形態では、このような特性の波長フィルタ42を用いることにより、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなるように、光学系4が構成されている。
【0040】
例えば、85℃では、光ファイバ2に入射する光出力は、波長フィルタ42がない場合とほぼ同等になるが、−40℃では、波長フィルタ42での損失が生じる。このため、光ファイバ2に入射した光の光出力の検出結果に基づきAPC動作を行うと、−40℃では、波長フィルタ42で生じた損失の分、変調電流が大きくなり、その結果、緩和振動周波数を大きくすることができる。
【0041】
以下、DFBレーザ1の25℃でのピーク波長λp=1.31umの場合について、より具体的に説明する。
【0042】
図2は波長フィルタ42の透過率と波長との関係の一例を示す図、図3はDFBレーザ1のピーク波長の温度依存性の一例を示す図、図4は波長フィルタ42の透過率の温度依存性の一例を示す図である。図2の縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。図2は25℃での特性の一例を示す。波長フィルタ42は、温度変化に応じて透過率が変化するが、予め温度変動を考慮して25℃での透過率が設計されるので、以下では、説明を簡単にするため、波長フィルタ42に温度依存性がないものとする。図3の縦軸はピーク波長(nm)、横軸は温度(℃)である。図4の縦軸は透過率(%)、横軸は温度(℃)である。
【0043】
図2に示すように、波長フィルタ42は、例えば、波長が1310nm以下になると、波長が短くなるほど透過率が低下するという特性を持つ。
DFBレーザ1のピーク波長λpの温度依存性は、0.1nm/℃であるため、図3に示すように、例えば、−40℃でλp=1303.5nm、85℃でλp=1316nmとなる。
【0044】
また、図2に示される透過率特性と図3に示されるピーク波長λpの温度依存特性から、各温度での波長フィルタ42の透過率は、図4に示すようになる。
すなわち、図4に示すように、例えば、−40℃での透過率は59%、85℃での透過率は96%となる。光ファイバ2に入射した光出力をモニタし、APC動作を行うと、−40℃では、波長フィルタ42がない場合と比較して、光ファイバ2に結合する光が小さくなるので、変調電流が69%大きくなる。
【0045】
図5は本実施形態に係る光半導体モジュールと比較例に係る光半導体モジュールの緩和振動周波数のΔλ依存性の一例を示す図である。図5の縦軸は緩和振動周波数(GHz)、横軸は変調電流の平方根であり、横軸の値が大きいほど、変調電流が大きいことを意味する。図5には、Δλ=0、Δλ=5、Δλ=10のそれぞれの場合について、緩和振動周波数と、変調電流の平方根と、の関係を示している。
【0046】
図5において、先ず、比較例として、−40℃での変調電流(Imod)が15mAの場合(横軸の値が約3.8)について説明する。この場合、Δλ=0では、緩和振動周波数fr=5.6GHzが得られ、2.488Gbpsでの動作が可能である。しかし、Δλ=5nmでは、fr=4.8GHz、Δλ=10nmでは、fr=4GHzとなり、何れも2.488Gbpsでの動作に必要な5GHzを下回っていた。
【0047】
これに対して、本実施形態では、上記のような波長フィルタ42を用いることにより、−40℃での変調電流が25mAとなるため(横軸の値が約5.0)、Δλ=5nmでは、fr=6.4GHz、Δλ=10nmでも、fr=5.6GHzといずれも5GHz を超える緩和振動周波数を得ることができた。
【0048】
以上のような第1の実施形態に係る光半導体モジュールによれば、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなる。よって、DFBレーザ1の出力の検出結果に応じてDFBレーザ1の出力を一定に制御することによって、低温での駆動電流を高くして緩和振動周波数を大きくすることができる。このため、低温でも容易に高速動作を実現することができる。
よって、DFBレーザ1を有する光半導体モジュールとして、広域な温度範囲で高い通信速度で動作するものの歩留まりを向上することができる。
具体的には、例えば、−40℃でのDFBレーザ1の駆動電流を高くすることで、−40℃の緩和振動周波数を高くすることができ、−40℃以上85℃以下の温度範囲で、2.488Gbps以上で動作する光半導体モジュールを歩留よく製造することができる。
【0049】
光学系4は、DFBレーザ1と光ファイバ2との間に配置された波長フィルタ42を有し、波長フィルタ42は、想定使用温度範囲の上限温度におけるDFBレーザ1の出射波長の透過率が、下限温度におけるDFBレーザ1の出射波長の透過率よりも低くなる特性を持つ。DFBレーザ1の波長は、低温ほど短くなるので(図3)、このような波長フィルタ42を用いることにより、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度での結合効率を低くすることができる。
【0050】
なお、レンズ41がガラスにより構成される場合、レンズ41を球形にする方がレンズ41の加工が容易である。また、レンズ41が球形の方が、結合位置が変わった時の結合率の変化が小さいので、光ファイバ2と結合する際の調整がしやすくなる。
【0051】
〔第2の実施形態〕
図6は第2の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
本実施形態では、上記の第1の実施形態と比べて、検出部5の配置及び構成が異なる。すなわち、本実施形態では、DFBレーザ1を基準として、検出部5は、光ファイバ2の入射端面2aと反対側に配置されている。また、検出部5は、ファイバカプラ7を有していない。
DFBレーザ1と検出部5との間には、波長フィルタ42と同じ特性の第2波長フィルタ421が配置されている。
そして、検出部5は、DFBレーザ1の出力として、第2波長フィルタ421を介して検出部5に入射した光の強度を検出する。
また、本実施形態の場合、光伝送路20は、その途中に検出部5を挿入する必要がないため、光ファイバ2と光ファイバ21とにより構成する必要が無く、光ファイバ2により構成されている。
【0052】
DFBレーザ1は、光ファイバ2側にレーザ光3を出射するとともに、検出部5側にもレーザ光31を出射する。
【0053】
レーザ光31は、第2波長フィルタ421を介して検出部5に入射する。本実施形態の場合、APC駆動回路6は、検出部5から入力される検出結果に基づいて、検出部5に入射する光出力が一定となるように、DFBレーザ1の出力を制御する。
【0054】
第2の実施形態のように、DFBレーザ1の後方に配置した検出部5による検出結果に応じてDFBレーザ1をAPC動作する場合にも、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
〔第3の実施形態〕
図7は第3の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
本実施形態に係る光半導体モジュールは、上記の第1の実施形態と比べて、以下の点が相違する。すなわち、光半導体モジュールは、波長フィルタ42を有しておらず、また、レンズ41に代えてレンズ411を有している。本実施形態の場合、例えば、レンズ411のみにより光学系4が構成されている。DFBレーザ1から出射したレーザ光3は、レンズ411を介して光ファイバ2に結合する。光ファイバ2に入射した光を検出部5により検出し、その検出結果に応じ、APC駆動回路6によってDFBレーザ1をAPC動作させる。
【0056】
レンズ411は、例えば、球面レンズである。より具体的には、レンズ411は、例えば球形のレンズ(球レンズ)である。レンズ411の直径は、例えば1.5mm程度とすることができる。
【0057】
レンズ411は、例えば、プラスチックなどの樹脂により構成されている。
レンズ411の材料は、より具体的には、例えば、25℃での屈折率が1.49、屈折率の温度依存性が−1.1×10−4/℃のプラスチックとすることができる。
【0058】
光ファイバ2の入射端面2aは、想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)で最適な結合が得られる位置(最適結合位置)に配置する。なお、光ファイバ2の位置は、85℃にて最適な結合位置に調整してもよいし、常温(例えば25℃)と上限温度での最適結合位置との差が予め分かっていれば、常温での最適結合位置に光ファイバ2の入射端面2aを位置合わせしてから、その差分(例えば120μm)だけ、レンズ411と反対側に入射端面2aをずらすことによって行っても良い。
【0059】
図8はレンズ411の最適結合位置の温度依存性の一例を示す図、図9はレンズ411の結合位置と結合効率との関係の一例を示す図、図10はレンズ411の結合効率の温度依存性の一例を示す図である。図8の縦軸は最適結合位置(mm)、横軸は温度(℃)、図9の縦軸は結合効率(%)、横軸は結合位置(mm)、図10の縦軸は結合効率(%)、横軸は温度(℃)である。
【0060】
レンズ411を構成するプラスチックの屈折率の温度変化により、最適結合位置は、温度変化に対して、図8のように変化する。
【0061】
また、レンズ411の結合位置と結合効率の関係は−40℃、25℃、85℃のそれぞれの温度において、図9のようになる。なお、図9には、本実施形態での結合位置P1、すなわち想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)で最適な結合が得られる位置を示している。
【0062】
また、図10に示すように、85℃の最適結合位置での結合効率は例えば17.9%となるが、−40℃では、同じ位置で光ファイバ2に結合させると、結合効率が例えば9.2%となる。
【0063】
以下、光出力を1mWとしてAPC動作する場合について説明する。
【0064】
ガラスレンズを使った場合、例えば、−40℃でのスロープ効率が0.5W/Aとなり、結合効率が18%となるので、光出力が1mWの場合は、変動電流が11mAとなる。変調電流が11mAの場合、25℃のΔλ=0 でも、fr=4.7GHzとなり、5GHzを下回るので、25℃でのΔλ=0〜10nmでは、2.488Gbpsでの動作ができない。
【0065】
これに対し、プラスチックレンズを使った場合、例えば、−40℃でのスロープ効率が0.5W/Aとなり、結合効率が9.2%となるので、変調電流は22mAとなり、25℃でのΔλ=10nmの時でも、fr=5.2GHzとなる。その結果、25℃でのΔλ=0〜10nmの間で、2.488Gbpsの動作条件を満たす。
【0066】
一般に、光半導体モジュールに用いられる光ファイバ2のコアの径は10μm程度であり、そのサイズのコアに光を結合させるため、光半導体モジュールのレンズの材料としては、一般に、屈折率の温度変動が2×10−6/℃と非常に小さいガラスが採用されている。
【0067】
一方、プラスチックなどの樹脂を材料にしたレンズ411は、ガラスと比較して加工が容易で、且つ安価である。しかし、レンズ411は、ガラスと比べて屈折率の温度依存性が−1×10−5から−1×10−4と1桁から2桁大きく、これまで光ファイバ2を使った装置には採用されなかった。例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)は、屈折率が1.49であり、レンズのガラス材料として採用されることが多いBK−7と同等の屈折率を有しているが、その温度依存性は−1.1×10−4/℃と、ガラス材料よりも2桁大きい。
【0068】
本実施形態では、樹脂の屈折率が温度依存性を利用して、下限温度(例えば−40℃)での結合効率を低くする。
樹脂の屈折率は、高温ほど小さくなり、低温ほど大きくなるので、最大の結合効率が得られる結合位置は、高温ほどレンズ411から離れ、低温ほどレンズ411に近くなる。上限温度(例えば85℃)で結合効率が最大になる位置で光ファイバ2と結合させると、−40℃では、最適結合位置がレンズ411に近くなり、結合効率が低下する。その結果、APC動作した場合は、下限温度(−40℃)での変調電流を高くすることができ、緩和振動周波数を高くすることができる。
【0069】
以上のような第3の実施形態でも、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなるので、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
また、ガラスよりも安価な樹脂によりレンズ411が構成されているので、光半導体モジュールのコストを低減することができる。
【0070】
〔第4の実施形態〕
図11は第4の実施形態に係る光半導体モジュールの構成を示す模式図である。
本実施形態に係る光半導体モジュールは、以下に説明する点でのみ上記の第3の実施形態と相違する。
【0071】
本実施形態の場合、レンズ411は、非球面レンズである。また、レンズ411の材料は、例えば、25℃での屈折率が1.5、屈折率の温度依存性が−1.2×10−5/℃ のプラスチックとすることができる。
【0072】
非球面レンズでは、最適結合位置から結合位置がずれたときの結合効率の低下が大きく、屈折率が−1×10−4/℃の温度依存性を持つと、−40℃では、光ファイバ2に入射する光出力が取れなくなるため、第3の実施形態よりも温度依存性が小さいプラスチックを用いる。
【0073】
図12は、レンズ411が非球面レンズである場合の結合位置と結合効率との関係の一例を示す図である。図12の縦軸は結合効率(%)、横軸は結合位置(mm)である。
最適結合位置は、85℃から−40℃に変化すると、0.023mmだけレンズ側に近付くので、結合位置P2での結合効率は、51.5%から45.2%と13%低くなる。なお、結合位置P2は、図12に示す通り本実施形態における想定使用温度範囲の上限温度(例えば85℃)で最適な結合が得られる位置を示している。
【0074】
以下、光出力を4mWとしてAPC動作する場合について説明する。
【0075】
ガラスレンズを使った場合、−40℃でのスロープ効率が0.5W/A、結合効率が 51.5%となるので、光出力が4mWの場合は、変動電流が15.4mAとなる。変調電流が15.4mAの場合、25℃のΔλ=0ではfr=5.6GHzとなり5GHzを超えるが、25℃でのΔλ=5nmでは、fr=4.8GHzとなり、5GHz以下となって、2.488Gbpsでの動作条件を満足しない。
【0076】
一方、プラスチックレンズを使用した場合、スロープ効率0.5W/A、結合効率が45.2%であるので、変調電流は、17.7mAとなる。25℃でのΔλ=0の時はfr=6.1GHz、25℃でのΔλ=5nmの時は、fr=5.3GHzとなり、2.488Gbpsでの動作条件を満足する。
【0077】
なお、ここでは、屈折率の温度依存性が−1.2×10−5/℃ の材料を採用したが、温度依存性が更に大きい材料を採用することになって、−40℃と85℃の結合効率の差を大きくすることも可能である。
【0078】
以上のような第4の実施形態によっても、第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0079】
なお、上記の第1及び第2の実施形態では結合効率を低下させるために波長フィルタ42を用いる例を説明し、上記の第3及び第4の実施形態では結合効率を低下させるための樹脂により構成されたレンズ411を用いる例を説明したが、波長フィルタ42及びレンズ411を併用することによって、結合効率を低下させても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 DFBレーザ
2 光ファイバ
2a 入射端面
20 光伝送路
21 光ファイバ
3 レーザ光
4 光学系
5 検出部
6 APC駆動回路
7 ファイバカプラ
8 フォトダイオード
9 光ファイバ
31 レーザ光
41 レンズ
42 波長フィルタ
411 レンズ
421 波長フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DFBレーザと、
光信号を伝送する光伝送路と、
前記DFBレーザからの出射光を前記光伝送路に結合させる光学系であって、前記出射光を前記光伝送路の入射端面に集束させるレンズを含む光学系と、
前記DFBレーザの出力を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に応じて前記DFBレーザの出力を制御する制御部と、
を有し、
前記光学系は、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、前記想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなるように構成されていることを特徴とする光半導体モジュール。
【請求項2】
前記光学系は、低温になるほど結合効率が低下するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光半導体モジュール。
【請求項3】
前記光学系は、前記DFBレーザと前記光伝送路との間に配置された波長フィルタを更に有し、
前記波長フィルタは、前記上限温度における前記DFBレーザの出射波長の透過率が、前記下限温度における前記DFBレーザの出射波長の透過率よりも低くなる特性を持つことを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体モジュール
【請求項4】
前記検出部は、前記DFBレーザの出力として、前記光伝送路に入射した光の強度を検出することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項5】
前記DFBレーザを基準として、前記検出部は、前記光伝送路の入射端面と反対側に配置され、
前記DFBレーザと前記検出部との間には、前記波長フィルタと同じ特性の第2波長フィルタが配置され、
前記検出部は、前記DFBレーザの出力として、前記第2波長フィルタを介して当該検出部に入射した光の強度を検出する請求項3に記載の光半導体モジュール。
【請求項6】
前記レンズが樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項7】
前記光伝送路の入射端面が、前記上限温度での最適結合位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の光半導体モジュール。
【請求項8】
前記レンズは球面レンズであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項9】
前記レンズは非球面レンズであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項10】
前記上限温度は85℃であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項11】
前記下限温度は−40℃であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項1】
DFBレーザと、
光信号を伝送する光伝送路と、
前記DFBレーザからの出射光を前記光伝送路に結合させる光学系であって、前記出射光を前記光伝送路の入射端面に集束させるレンズを含む光学系と、
前記DFBレーザの出力を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に応じて前記DFBレーザの出力を制御する制御部と、
を有し、
前記光学系は、想定使用温度範囲の上限温度での結合効率よりも、前記想定使用温度範囲の下限温度での結合効率が低くなるように構成されていることを特徴とする光半導体モジュール。
【請求項2】
前記光学系は、低温になるほど結合効率が低下するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光半導体モジュール。
【請求項3】
前記光学系は、前記DFBレーザと前記光伝送路との間に配置された波長フィルタを更に有し、
前記波長フィルタは、前記上限温度における前記DFBレーザの出射波長の透過率が、前記下限温度における前記DFBレーザの出射波長の透過率よりも低くなる特性を持つことを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体モジュール
【請求項4】
前記検出部は、前記DFBレーザの出力として、前記光伝送路に入射した光の強度を検出することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項5】
前記DFBレーザを基準として、前記検出部は、前記光伝送路の入射端面と反対側に配置され、
前記DFBレーザと前記検出部との間には、前記波長フィルタと同じ特性の第2波長フィルタが配置され、
前記検出部は、前記DFBレーザの出力として、前記第2波長フィルタを介して当該検出部に入射した光の強度を検出する請求項3に記載の光半導体モジュール。
【請求項6】
前記レンズが樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項7】
前記光伝送路の入射端面が、前記上限温度での最適結合位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の光半導体モジュール。
【請求項8】
前記レンズは球面レンズであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項9】
前記レンズは非球面レンズであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項10】
前記上限温度は85℃であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【請求項11】
前記下限温度は−40℃であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の光半導体モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−156430(P2012−156430A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16119(P2011−16119)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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