説明

光半導体装置の製造方法及び光半導体装置

【課題】銀めっき層の変色を防止して高い反射率を保持することができると共に、生産性に優れた光半導体装置の製造方法及びその製造方法にて製造された光半導体素子を提供する。
【解決手段】光半導体装置100の製造方法では、トランスファ成形によって配線部材10上に形成された薄膜50において、光半導体素子20が搭載される領域及びボンディングワイヤ18が接続される領域に該当する部分の薄膜50を除去する。これにより、光半導体素子20が搭載される領域及びボンディングワイヤ18が接続される領域に該当する部分の薄膜50のみが取り除かれるため、その他の部分の銀めっき層の変色を薄膜50にて防止でき、銀めっき層において高い反射率を保持することができる。また、金めっきを使用することがないため、コストの低減を図ることができ、光半導体装置100の生産性を優れたものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体の製造方法及びこの製造方法にて製造された光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)発光装置等の光半導体装置は、例えば図8に示すように、パッケージ200の配線部材210上に形成された光反射層220の実装用凹部220a内にLED等の発光素子230を実装すると共に、実装用凹部220を透明封止材240で封止することによって形成されている。パッケージ200には、リードフレーム250の一端部が実装用凹部220内の底部に配置されていると共に、他端部がパッケージ200の外方へ突出するように設けてある。そして、発光素子230をリードフレーム250上に搭載してワイヤーボンディング260を行うことによって、発光素子230が実装されている。
【0003】
このような半導体発光装置において、発光素子230から発光した光の一部は、実装用凹部220内に位置するリードフレーム250の表面で反射して、実装用凹部220の開口から出射されることになる。そのため、リードフレーム250の表面に光の反射率が最も高い銀めっき層を設け、リードフレーム250の表面を高い反射率に形成して半導体発光装置の発光効率を高めるようにしている。
【0004】
ここで、透明封止材240には、LED素子の熱や紫外光に対して劣化の少ない軟質のシリコーン樹脂が一般的に使用されている。軟質シリコーンは、樹脂自体の変色は無いが、透湿性(106,000CC(STP)cm mm sec cm・Hg×1010)やガス透過性(酸素透過性1000〜6000CC(STP)cm mm sec cm・Hg×1010)が高い。そのため、硫化によって銀めっき層の表面が変色するといった問題があった。この問題に関して、例えば特許文献1には、めっき表面にパラジウムを介して金及び銀の合金めっきを施す方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−272345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のように、パラジウムを介して金及び銀の合金めっきを施す方法では、硫化に対する耐性は向上するものの、銀めっきと比較するとLEDの特性に最も重要な反射率が低下したり、金めっきを使用することでコストアップとなるといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、銀めっき層の変色を防止して高い反射率を保持することができると共に、生産性に優れた光半導体装置の製造方法及びその製造方法にて製造された光半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る光半導体装置の製造方法は、熱硬化性樹脂組成物を用いたトランスファ成形によって、貫通孔が複数形成された光反射層を銀めっき層が表面に形成された配線部材上に形成すると共に配線部材上に樹脂薄膜を形成し、貫通孔の一方の開口部を配線部材で塞いでなる複数の凹部が形成された成形体を得る工程と、光半導体素子が搭載される領域及びボンディングワイヤが接続される領域に該当する部分の樹脂薄膜を除去する工程と、複数の光半導体素子を凹部内にそれぞれ配置する工程と、光反射層の表面を覆うように半導体素子が配置された凹部に封止樹脂を供給する工程と、封止樹脂を硬化させる工程と、成形体を凹部ごとに分割して複数の光半導体装置を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
この光半導体装置の製造方法では、トランスファ成形によって銀めっき層が表面に形成された配線部材上に形成された樹脂薄膜において、光半導体素子が搭載される領域及びボンディングワイヤが接続される領域に該当する部分の樹脂薄膜を除去する。これにより、光半導体素子が搭載される領域及びボンディングワイヤが接続される領域、つまり導体部材に該当する部分に形成された樹脂薄膜のみが取り除かれる。そのため、その他の部分がガス透過性の低い樹脂薄膜によって覆われるので、硫化による銀めっき層の変色を防止できる。したがって、銀めっき層において高い反射率を保持することができる。また、金めっきを使用することがないため、コストの低減を図ることができ、光半導体装置の生産性を優れたものとすることができる。
【0010】
樹脂薄膜を除去する工程において、乾式処理または湿式処理により樹脂薄膜を除去することが好ましい。このように、乾湿処理または湿室処理を用いることで、樹脂薄膜を良好に除去することができる。
【0011】
樹脂薄膜を除去する工程において、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ及び半導体レーザのいずれかを使用して樹脂薄膜を除去することができる。また、樹脂薄膜を除去する工程において、メディアブラストを使用して樹脂薄膜を除去することができる。
【0012】
本発明に係る光半導体装置は、上述の光半導体装置の製造方法を用いて製造されることを特徴とする。上述の方法によって光半導体装置を製造することにより、銀めっき層の変色を防止して高い反射率を保持することができると共に、生産性に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、銀めっき層の変色を防止して高い反射率を保持することができると共に、生産性に優れた光半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す平面図である。
【図2】図1に示した光半導体装置のII−II線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る光半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】図3の後続の工程の手順を示す平面図である。
【図5】図3の工程後の成形体を示す平面図である。
【図6】図4の工程後の成形体を示す平面図である。
【図7】図4の後続の工程の手順を示す断面図である。
【図8】従来の光半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
[光半導体装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す平面図である。図2は、図1に示した光半導体装置のII−II線断面図である。なお、図1においては、後述する封止体の図示は省略している。
【0017】
各図に示すように、光半導体装置100は、配線部材10と、光半導体素子20と、光反射層30と、封止体40とを備えている。光半導体装置100は、一般には表面実装型(SMD:Surface Mount Device型)に分類されるものである。
【0018】
配線部材10としては、リードフレームを公知の方法で配線形成したものを用いることが好ましく、例えば、42アロイリードフレームや銅リードフレーム等のリードフレームが用いられる。配線部材10は、例えば矩形状をなしており、導体部材14a,14bを有している。
【0019】
導体部材14a,14bは、金属により形成されている。導体部材14aは、配線部材10の短手方向の略中央において、配線部材10の長手方向の一端から他端にかけて配置されている。導体部材14bは、配線部材10の短手方向における両端部のそれぞれに3つずつ配置されており、各導体部材14bは、配線部材10の長手方向に長尺状をなしている。各導体部材14bは、互いに離れて並んでいると共に、導体部材14aと離れて、導体部材14aを挟んで対称となるように配置されている。なお、図2においては図示していないが、配線部材10(導体部材14a,14b)の表面には、銀めっきが施されており、銀めっき層が形成されている。
【0020】
導体部材14aと導体部材14bとの間には、白色樹脂層16が配置されている。白色樹脂層16は、後述する光反射層30と同様の樹脂により形成されている。
【0021】
光半導体素子20は、例えばダイボンド材(図示せず)を介して導体部材14a上に3つマウントされており、互いに離れて配線部材10の長手方向に並んでいる。各光半導体素子20の表面は、ボンディングワイヤ18により、導体部材14aを挟んで対称に位置する導体部材14bのそれぞれに電気的に接続されている。光半導体素子20は、ボンディングワイヤ18を通して電力が供給されることにより発光し、その光が封止体40を通してレンズ(図示しない)から出射する。光半導体素子20としては、特に制限がなく、GaN系の青色素子や緑色素子、GaP系の緑色素子や橙色素子、GaAs系の赤色素子等の素子を使用することができる。
【0022】
光反射層30は、配線部材10の外縁部に沿って配線部材10上に配置された四方の側壁により、内部に貫通孔30aが形成された略直方体状の部材である。貫通孔30aは、光反射層30の四方の側壁が傾斜することにより、光反射層30の表面30bから裏面(配線部材10側の面)にかけて開口が小さくなるように形成されている。光反射層30は、配線部材10と共に光半導体素子搭載用基板を構成しており、貫通孔30aの裏面側の開口部が配線部材10により塞がれることにより、凹部(キャビティ部)32が形成されている。凹部32の内部を光反射層30の表面30b側から見た場合、凹部32の底部には、3つの光半導体素子20が露出している。すなわち、凹部32の底部は、光半導体素子搭載領域に相当する。
【0023】
封止体40は、凹部32内及び光反射層30の表面30bに透光性を有する封止樹脂(透光封止樹脂)が供給されて形成されている。封止樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂やそれらの変性樹脂が挙げられ、中でも、着色や劣化が抑制されると共に応力緩和効果により熱応力によるボンディングワイヤ18の断線等が抑制されることから信頼性を更に向上させることができるため、ゲル状やゴム状のシリコーン樹脂が好ましく、ゲル状やゴム状のジメチルシリコーン樹脂がより好ましい。ジメチルシリコーン樹脂としては、KJR−9022X−5、KER−2600(信越化学工業株式会社製、商品名)、OE−6351,JCR6115,JCR6110(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名)、XE−14−C2042、IVS4012、IVS5022(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名)等を使用することができる。封止樹脂には、必要に応じて蛍光体が添加されてもよい。封止樹脂の室温(25℃)における弾性率は、耐熱性、耐光性、応力緩和効果を向上させる観点から0.001〜10MPaが好ましい。なお、封止樹脂の弾性率は、針入度(JIS K 2220 1/4コーン)やゴム硬さ(JIS タイプA)を用いて測定することができる。
【0024】
薄膜(樹脂薄膜)50は、光半導体素子20が搭載される領域とボンディングワイヤ18が接続される領域以外の部分を覆うように形成されている。薄膜50は、厚みが0.01〜5μm程度となっており、そのガス透過性は、酸素0.49〜16CC(STP)cm mm sec cm・Hg×1010程度となっている。薄膜50は、白色樹脂層16上を覆うように、導体部材14aの一部(端部)と導体部材14bの一部とに跨って形成されている。つまり、薄膜50は、光半導体素子20が搭載される領域とボンディングワイヤ18が接続される領域とに亘って形成されている。このような薄膜50は、光反射層30をトランスファ成形により形成する際に配線部材10上に白色樹脂層16と同一の樹脂で全面に亘って形成される。そのため、薄膜50は、光半導体素子20が搭載される領域とボンディングワイヤ18が接続される領域とを選択的に除去することによって形成される。
【0025】
薄膜50を除去する乾式方法(乾式処理)としては、レーザを使用することができる。使用できるレーザとしては、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ及びエキシマレーザ(半導体レーザ)等があり、生産性の観点から炭酸ガスレーザが好ましい。レーザ光の照射条件は、時間が短く、且つ出力の大きなパルス状の発振をするものが好ましく、例えば、1パルスの幅が1μsec〜40μsec、パルス繰り返し周波数が150Hz〜10,000Hz、繰り返しパルス数が1Hz〜10パルスの条件で、且つ出力の大きさが2〜5パルスの範囲で皮膜除去できる出力のレーザ発振器が、発振及び制御が容易となり好ましい。この出力は、エネルギー密度にして、1J/cm〜40J/cmの範囲である。時間あたりの出力が、上記範囲未満であると、樹脂層を蒸発、発散することができず、上記範囲を越えると、必要以上に端子表面を除去することとなり制御が困難で、一旦蒸発した樹脂や金属がスミア化して付着することもあり、付着したスミアの除去を行わなければならない。炭酸ガスレーザでスミアが生じる場合があるが、その際はプラズマ処理で除去することが可能である。プラズマ処理で除去する方法としては、バッチ式のものでも常圧プラズマのライン式のものも使用できる。
【0026】
また、薄膜50を除去する湿式方法(湿式処理)としては、アルミナ粒子やシリカ粒子をスラリー状として噴霧することで除去するメディアブラスト法を用いることができる。このときの、ブラストの条件としては、#200〜#2000,0.5m/min〜3.0m/min,0.1MPa〜4.0MPaで処理することができる。
【0027】
[光半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る光半導体装置100の製造方法について、図3〜図7を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置の製造方法を示す断面図である。図4は、図3の後続の工程の手順を示す平面図である。図5は、図3の工程後の成形体を示す平面図である。図6は、図4の工程後の成形体を示す平面図である。図7は、図4の後続の工程の手順を示す断面図である。
【0028】
まず、銅箔をフォトエッチングする方法等の公知の方法を用いて回路を形成した後、回路の表面にNi/Agめっきを施すことによって、導体部材14a,14bを形成し、図3(a)に示すように、配線部材10を得る。
【0029】
次に、凹部32を有する光反射層30がマトリックス状(例えば、縦10個×横16個)に複数連なった形状の凹部を有する金型60を用意し、図3(b)に示すように、配線部材10上に金型60を配置する。次に、金型60の樹脂注入口(図示せず)から熱硬化性樹脂組成物を注入し、配線部材10上に光反射層30を形成する。光反射層30はトランスファ成形で形成され、MAP(Mold Array Package)法を用いることができる。熱硬化性樹脂組成物の注入後、金型温度を例えば180℃に90秒保持することによって熱硬化性樹脂組成物を硬化させる。なお、トランスファ成形時に金型60内を減圧にすると、樹脂充填性が向上するため好ましい。光反射層30を形成した後、例えば温度120〜180℃で1〜3時間加熱することによって熱硬化性樹脂組成物のアフターキュアを行ってもよい。以上により、図4(a)に示すように、凹部32を有する光反射層30が複数連なった成形体70が形成されると共に、導体部材14a,14b間に白色樹脂層16が形成される。また、図5に示すように、導体部材14a,14b及び白色樹脂層16を覆うように(配線部材10上に)薄膜50が形成される。
【0030】
続いて、トランスファ成形によって配線部材10上(導体部材14a,14b)に形成された薄膜50を選択的に除去する。薄膜50の除去には、例えば炭酸ガスレーザを用いる。この炭酸ガスレーザにより、図4(b)に示すように、光半導体素子20が搭載される領域と、ボンディングワイヤ18が接続される領域とに該当する部分の薄膜50を除去する。
【0031】
続いて、凹部32内の導体部材14a上に例えばダイボンド材を塗布し、ダイボンド材上に3つの光半導体素子20を並べて配置する。そして、図4(b)に示すように、各光半導体素子20の表面をボンディングワイヤ18を用いて導体部材14bと電気的に接続する。なお、実装方法として、ワイヤボンド方式だけでなく、フリップチップ方式を用いてもよい。以上により、図6(a),(b)に示すように、成形体70における各凹部32の底部に3つの光半導体素子20が実装される。
【0032】
次に、ポッティングにより以下のように封止体40を形成する。図7(a)に示すように、各凹部32内に封止樹脂を供給し、光半導体素子20を封止する封止体40を形成する。
【0033】
そして、図7(b)に示すように、複数の光半導体装置100が一体的に連なった成形体を凹部32ごとに分割(個片化)し、図2に示す光半導体装置100を複数得る。分割には、ダイシング、レーザ加工、ウォータージェット加工、金型加工等の公知の方法により分割することで、光半導体装置を1つ又は複数有する光半導体装置(SMD型光半導体装置)を得ることができる。
【0034】
続いて、光半導体装置100の光反射層30を形成する熱硬化性樹脂組成物(モールド材料)について詳細に説明する。熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)白色顔料、(E)無機充填剤、及び(F)カップリング剤を含むことが好ましい。
【0035】
[熱硬化性樹脂組成物]
(A):エポキシ樹脂(以下、場合により「(A)成分」と称する。)
エポキシ樹脂としては、例えば、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料として一般に使用されているものを用いることができる。エポキシ樹脂として具体的には、
フェノール類とアルデヒド類との反応により得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、等);
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換ビスフェノール等のビスフェノール類とジグリシジルエーテルとの反応により得られるビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アルキル置換ビスフェノール型エポキシ樹脂、等);
ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;
ポリブタジエン等の不飽和炭化水素樹脂が有するオレフィン結合を過酢酸等の過酸化物で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸、メチルナジック酸、核水素化トリメリット酸、核水素化ピロメリット酸等のポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン;
シクロヘキサン骨格、エポキシシクロヘキサン骨格等の脂環式環(飽和炭化水素環)を有する、脂環式エポキシ樹脂(例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物);
等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
エポキシ樹脂としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジグリシジルイソシアヌレート;トリグリシジルイソシアヌレート;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸ジグリシジルエステル;等が、比較的着色が少ないことから好ましい。
【0037】
同様の理由から、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸、メチルナジック酸等のジカルボン酸のジグリシジルエステルも好適である。
【0038】
なお、上記核水素化とは、芳香族水素化された脂環式環を有することを示す。また、上記エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンンは、例えば、シラン化合物を有機溶媒、有機塩基及び水の存在下に加熱して、加水分解・縮合させることにより製造されるポリオルガノシランをエポキシ化することにより得ることができる。
【0039】
また、エポキシ樹脂としては、グリシジル(メタ)アクリレート単量体と、これと重合可能な単量体との共重合体である、下記式(1)で示されるエポキシ樹脂を用いることもできる。
【化1】

【0040】
式(1)中、Rはグリシジル基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜6の飽和若しくは不飽和の1価の炭化水素基を示し、Rは1価の飽和炭化水素基を示す。a及びbは正の整数を示す。
【0041】
樹脂よごれを抑制する観点から、エポキシ樹脂としては2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロセキサン付加物が望ましく、このようなエポキシ樹脂としてはダイセル化学社製 製品名EHPE3150が市販品として入手可能である。
【0042】
硬化物の着色を抑制するために、エポキシ樹脂は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ヒドロナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から、水素原子を除くことにより誘導される脂環式環を有する、脂環式エポキシ樹脂であることも好ましい。脂環式環は、ハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい。
【0043】
(B):硬化剤(以下、場合により「(B)成分」と称する。)
熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤として多価カルボン酸縮合体を含むことが好ましい。本明細書において「多価カルボン酸縮合体」とは、2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸の1種又は2種以上が分子間で縮合して形成される重合体を意味する。より詳細には、多価カルボン酸縮合体は、2以上のカルボキル基を有する2分子以上のモノマーの分子間で、それぞれが有するカルボキシ基が脱水縮合することにより酸無水物基(酸無水物結合)を生成し、生成した酸無水物基によって各モノマー単位が鎖状又は環状に連結されている重合体である。一方、「多価カルボン酸のカルボキシル基を分子内で脱水縮合させて得ることのできる酸無水物化合物」とは、2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸のカルボキシル基が分子内で脱水縮合して酸無水物基を生成し、生成した酸無水物基を含む環状構造が形成されている酸無水物化合物を意味する。
【0044】
多価カルボン酸縮合体は、通常、重合度の異なる複数の成分から構成され、繰り返し単位及び末端基の構成が異なる複数の成分を含み得る。多価カルボン酸縮合体は、下記式(2)で表される化合物を主成分として含むことが好ましい(式中、Rは2価の有機基を示しは1価の有機基を示し、nは1以上の整数を示す。なお、nは、好ましくは1〜200の整数である。)。好ましくは、式(2)の成分の割合は、多価カルボン酸縮合体全量を基準として60質量%以上である。
【化2】

【0045】
式(2)中、Rは、脂環式環を有する2価の基であることが好ましく、脂環式環を有する2価の飽和炭化水素基であることがより好ましい。Rが脂環式環を有する2価の飽和炭化水素基であることにより、多価カルボン酸縮合体はエポキシ樹脂の透明な硬化物を形成させることが可能である。nが2以上の整数であるとき、同一分子中の複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよい。Rの脂環式環は、ハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい。脂環式環の置換基である炭化水素基は、好ましくは飽和炭化水素基である。脂環式環は単環でもよいし、2以上の環から構成される縮合環、ポリシクロ環、スピロ環又は環集合であってもよい。Rの炭素数は好ましくは3〜15である。
【0046】
は、式(2)で表される化合物(重合体)を得るために用いられるモノマーとしての多価カルボン酸からカルボキシル基を除いて誘導される基である。モノマーとしての多価カルボン酸は、重縮合の反応温度よりも高い沸点を有することが好ましい。
【0047】
より具体的には、Rはシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ヒドロナフタレン及び水素化ビフェニルからなる群より選ばれる環式飽和炭化水素から、水素原子を除くことにより誘導される2価の基であることが好ましい。Rがこれらの基であることにより、透明で熱による着色の少ない硬化物が得られるという効果がより一層顕著に奏される。これら環式飽和炭化水素は、ハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基(好ましくは飽和炭化水素基)で置換されていてもよい。
【0048】
特に、Rは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はこれらの誘導体から、カルボキシル基を除いて誘導される基であることが好ましい。すなわち、Rは下記式(3)で表される2価の基であることが好ましい。式(3)中、mは0〜4の整数を示す。Rはハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4の炭化水素基を示す。mが2〜4であるとき、複数のRは同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【化3】

【0049】
式(2)中の末端基であるRは、酸無水物基又はカルボン酸エステル基で置換されていてもよい1価の炭化水素基であることが好ましい。2個のRは同一でも異なっていてもよい。Rは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2〜15の脂肪族若しくは芳香族モノカルボン酸(安息香酸等)からカルボキシル基を除くことにより誘導される1価の基であってもよい。
【0050】
は、好ましくは、下記式(4)で表される1価の基、又は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される1価の基であることがより好ましい。Rがこれらの基であることにより、熱による着色の少ない硬化物が得られるという効果がより一層顕著に奏される。また、Rがこれらの基であると、多価カルボン酸縮合体中のカルボン酸残基の濃度が低減すると共に、分子量の分散を抑えることができる。
【化4】

【0051】
が上記式(3)で表される2価の基であり、同時に、Rが上記式(4)で表される1価の基であってもよい。すなわち、多価カルボン酸縮合体は、式(2)で表される成分として、下記式(2a)で表される化合物を含んでいてもよい。式中、n、m及びRは、上記と同義である。なお、nが2以上の整数のとき、複数存在するmは互いに同一でも異なっていてもよい。
【化5】

【0052】
また、硬化剤としては、式(2)で表される成分として、下記式(2b)で表される成分を用いることもできる。
【化6】

【0053】
式中、nは1以上の整数を示し、Rは脂環式環を有する2価の基を示す。該脂環式環は、ハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい。nが2以上の整数であるとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0054】
また、硬化剤としては、アルカリ性の脱脂液に対する耐性が向上する観点からは、式(2b)で表される化合物及び下記式(5)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましく、2種類以上の化合物を用いることが好ましい。
【化7】

【0055】
式(2b)で表される化合物は、Rが下記式(6)で表される2価の基であることが好ましい。
【化8】

【0056】
式中、mは0〜4の整数を示し、Rはハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4の炭化水素基を示す。mが2〜4であるとき、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【0057】
また、硬化剤は、下記式(7)で表される多価カルボン酸縮合体を含んでいても良い。
【化9】

【0058】
多価カルボン酸縮合体の数平均分子量Mnは、200〜20000であることが好ましい。Mnが200未満では、粘度が低くなりすぎて熱硬化性樹脂組成物のトランスファ成形時の樹脂汚れの発生を抑制し難くなる傾向があり、20000を超えると、エポキシ樹脂との相溶性が低下する傾向や、熱硬化性樹脂組成物のトランスファ成形時の流動性が低下する傾向がある。
【0059】
本発明で用いられる数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて下記条件で測定することで得られる。
(GPC条件)
ポンプ:L−6200型(株式会社日立製作所製、商品名)
カラム:TSKgel―G5000HXL及びTSKgel−G2000HXL(東ソー株式会社製、商品名)
検出器:L−3300RI型(株式会社日立製作所製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:30℃
流量:1.0mL/分
【0060】
硬化剤は、上述したような多価カルボン酸縮合体を含むものであればよく、ICIコーンプレート型粘度計によって測定される硬化剤の粘度が、150℃で1.0mPa・s〜1000mPa・sであることが好ましく、10mPa〜200mPaであることがより好ましい。硬化剤の粘度が、係る特定範囲内にあることにより、例えば、多価カルボン酸縮合体を配合した熱硬化性樹脂組成物をトランスファ成形に用いたときに、良好な成形性が得られる。硬化剤の粘度を調整する方法としては、多価カルボン酸縮合体の平均分子量を制御することなどにより多価カルボン酸縮合体の粘度を調整する方法や、多価カルボン酸縮合体と、併用可能な硬化剤との配合比を調整する方法が挙げられる。
【0061】
硬化剤の粘度を調整するのに望ましい多価カルボン酸縮合体の粘度は、好ましくは150℃で10mPa・s〜30000mPa・sであり、より好ましくは150℃で10mPa・s〜10000mPa・sである。上記温度における多価カルボン酸縮合体の粘度が10mPa・s未満では、トランスファ成形時の樹脂汚れの発生を抑える効果が低くなる傾向にあり、30000mPa・sを超えると、トランスファ成形時の金型内で熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下する傾向にある。多価カルボン酸縮合体の粘度は、例えばReseach Equipment(LonCon)LTC.製のICIコーンプレート型粘度計を用いて測定することができる。
【0062】
熱硬化性樹脂組成物において、数平均分子量換算で分子量500〜5000の多価カルボン酸縮合体の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0063】
多価カルボン酸縮合体は、多価カルボン酸及び必要に応じて用いられるモノカルボン酸を含む反応液中で脱水縮合させることにより、得られる。例えば、下記式(8)で表される多価カルボン酸及び下記式(9)で表されるモノカルボン酸を含む反応液中で、それぞれが有するカルボキシル基を分子間で脱水縮合させる工程を備える方法によって得ることができる。
【化10】

【0064】
脱水縮合の反応液は、例えば、多価カルボン酸及びモノカルボン酸と、これらを溶解する無水酢酸又は無水プロピオン酸、塩化アセチル、脂肪族酸塩化物及び有機塩基(トリメチルアミン等)から選ばれる脱水剤とを含有する。例えば、反応液を5〜60分にわたって窒素雰囲気下で還流した後、反応液の温度を180℃まで上昇させて窒素気流下の開放系で、生成する酢酸(脱水剤として無水酢酸を用いた場合)及び水を留去することにより重縮合を進行させる。揮発成分の発生が認められなくなった時点で、反応容器内を減圧しながら180℃の温度で3時間にわたって、より好ましくは8時間にわたって溶融状態で重縮合を進行させる。生成した多価カルボン酸縮合体を、無水酢酸等の非プロトン性溶媒を用いた再結晶や再沈殿法によって精製してもよい。
【0065】
なお、脱水縮合反応において、目的のICIコーンプレート粘度、数平均分子量、軟化点が得られるように適宜反応条件を変えることができ、ここに示した反応条件に限られるものではない。
【0066】
係る方法によって得られる多価カルボン酸縮合体は、式(9)のモノカルボン酸の2分子の縮合物、式(8)の多価カルボン酸と式(9)のモノカルボン酸との縮合物、多価カルボン酸及びモノカルボン酸の未反応物、並びに、無水酢酸及び無水プロピオン酸等の反応試薬と多価カルボン酸又はモノカルボン酸とが縮合反応して生成する酸無水物のような副生成物、を含んでいる場合がある。これら副生成物は、精製によって除いてもよく、また、混合物のまま硬化剤として用いることも出来る。
【0067】
本発明で用いられる多価カルボン酸縮合体は、縮合反応前の多価カルボン酸とモノカルボン酸の仕込み組成比で、生成物のICIコーンプレート粘度、数平均分子量及び軟化点を目的に応じて調整することができる。多価カルボン酸の比率が多くなるほど、ICIコーンプレート粘度、数平均分子量、軟化点が増加する傾向にある。但し、縮合に反応の条件によっては必ずしも前記のような傾向を示すわけではなく、脱水縮合反応の条件である反応温度、減圧度、反応時間の要素も加味する必要がある。
【0068】
多価カルボン酸縮合体の軟化点は、20℃〜200℃であることが好ましい。これにより、多価カルボン酸縮合体を含む樹脂組成物中に2本ロールミル等を用いて無機フィラーを分散させる場合に、良好な分散性及び作業性が得られる。無機フィラーの分散性に優れることは、トランスファ成形用の熱硬化性樹脂組成物等において特に重要である。また、ロールミルを用いて熱硬化性樹脂組成物を製造する際の混練性の観点から、多価カルボン酸縮合体の軟化点が30℃〜80℃であることが好ましく、30℃〜50℃であることがより好ましい。軟化点が20℃未満では熱硬化性樹脂組成物の製造時においてハンドリング性、混練性及び分散性が低下し、トランスファ成形時の樹脂汚れの発生を効果的に抑える難くなる傾向がある。軟化点が200℃を超えると、トランスファ成形によって100〜200℃に加熱した場合に樹脂組成物中に硬化剤が溶け残る可能性があり、均一な成形体が得られ難くなる傾向がある。
【0069】
多価カルボン酸縮合体の軟化点は、主鎖の構造の選択と数平均分子量の調整で所望の範囲にすることができる。一般に、モノマーとして長鎖の二価カルボン酸を用いると軟化点を低くすることができ、また、極性の高い構造を導入すると軟化点を高くすることができる。また、一般に、数平均分子量を大きくすれば軟化点を低下させることができる。
【0070】
硬化剤としては、多価カルボン酸が分子内で閉環縮合してなる酸無水物を更に含んでいてもよく、上記多価カルボン酸縮合体と共に、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されている硬化剤を併用することができる。また、硬化剤として、このような酸無水物を単独で使用することもできる。このような硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応するものであれば、特に限定されないが、無色又は淡黄色であることが好ましい。このような硬化剤として、例えば、酸無水物系硬化剤、イソシアヌル酸誘導体系硬化剤、フェノール系硬化剤が挙げられる。
【0071】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸が挙げられる。
【0072】
イソシアヌル酸誘導体としては、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0073】
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ポリビニルフェノール、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びこれらのフェノール樹脂のハロゲン化物、水素化物等が挙げられる。なかでも、ビスフェノールAノボラック樹脂は耐熱性に優れ好ましい。
【0074】
これらの硬化剤の中では、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸又は1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを用いることが好ましい。また、上記硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。これらの併用可能な硬化剤を含む場合、上記多価カルボン酸縮合体との配合比率を変えることによって、硬化剤の全体としての粘度を調整することができ、好ましい。
【0075】
上述の併用可能な硬化剤は、分子量が100〜400であることが好ましい。また、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香環を有する酸無水物よりも、芳香環を有しない酸無水物(例えば、芳香環の不飽和結合のすべてを水素化した無水物)が好ましい。酸無水物系硬化剤として、ポリイミド樹脂の原料として一般的に使用される酸無水物を用いてもよい。
【0076】
熱硬化性樹脂組成物において、硬化剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して、1〜150質量部であることが好ましく、樹脂汚れを抑制するという観点から、10〜150質量部であることがより好ましく、50〜120質量部であることがさらに好ましい。
【0077】
また、硬化剤は、(A)成分中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基との反応可能な硬化剤中の活性基(酸無水物基又は水酸基)が0.3〜1.2が好ましく0.5〜0.9当量となるように配合することが更に好ましく、0.7〜0.8当量となることが最も好ましい。上記活性基が0.3当量未満では、熱硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅くなると共に、得られる硬化体のガラス転移温度が低くなり、充分な弾性率が得られ難くなる傾向がある。一方、上記活性基が1.2当量を超えると、硬化後の強度が低下する傾向がある。
【0078】
(C):硬化促進剤(以下、場合により「(C)成分」と称する。)
熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤を配合することができる。硬化促進剤としては、(A)成分と(B)成分と間の硬化反応を促進させるような触媒機能を有するものであれば、特に限定されることなく用いることができる。
【0079】
硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの硬化促進剤の中でも、アミン化合物、イミダゾール化合物又は有機リン化合物を用いることが好ましい。アミン化合物としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールが挙げられる。また、イミダゾール化合物としては、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾールが挙げられる。更に、有機リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレートが挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
硬化促進剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.01〜8重量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の配合量が、0.01質量部未満では、十分な硬化促進効果を得られない場合があり、8質量部を超えると、得られる成形体に変色が見られる場合がある。
【0081】
(D):白色顔料(以下、場合により「(D)成分」と称する。)
光半導体装置などに利用可能な白色の成形樹脂として用いる場合には、熱硬化性樹脂組成物がさらに白色顔料を含むことが好ましい。白色顔料としては、公知のものを使用することができ、特に限定されない。白色顔料として、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、無機中空粒子が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上併用することができる。無機中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラス(白砂)が挙げられる。白色顔料の粒径は、中心粒径が0.1μm〜50μmであることが好ましい、この中心粒径が0.1μm未満であると粒子が凝集しやすく分散性が低下する傾向があり、50μmを超えると熱硬化性樹脂組成物からなる硬化物の反射特性が十分に得られ難くなる。
【0082】
白色顔料の配合量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10〜85体積%であることが好ましく、20〜75体積%であることがより好ましい。この配合量が10体積%未満であると硬化後の熱硬化性樹脂組成物の光反射特性が十分に得られ難い傾向があり、85体積%を超えると熱硬化性樹脂組成物の成形性が低下する傾向がある。
【0083】
また、熱硬化性樹脂組成物が白色顔料と共に後述する無機充填剤を含有する場合、白色顔料と無機充填材との合計配合量が、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10〜85体積%であると、熱硬化性樹脂組成物の成形性をより一層向上することができる。
【0084】
(E):無機充填材(以下、場合により「(E)成分」と称する。)
熱硬化性樹脂組成物は成形性を調整するために、無機充填材を含むことが好ましい。なお、無機充填材として、上記白色顔料と同様のものを用いてもよい。無機充填材としては、例えば、シリカ、酸化アンチモン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、アルミナ、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素が挙げられる。熱伝導性、光反射特性、成形性及び難燃性の点から、無機充填剤は、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムからなる群より選ばれる2種以上の混合物であることが好ましい。無機充填材の平均粒径は、白色顔料とのパッキング性を向上させる観点から、1〜100μmであることが好ましく、1〜40μmであることがより好ましい。熱硬化性樹脂組成物における無機充填剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、1〜800質量部であることがより好ましい。
【0085】
(F):カップリング剤(以下、場合により「(F)成分」と称する。)
熱硬化性樹脂組成物には、熱硬化性樹脂成分である(A)〜(C)成分と、必要に応じて添加される(D)成分及び(E)成分との接着性を向上させる観点から、カップリング剤を添加することが好ましい。カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、一般にエポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの複合系が挙げられ、任意の添加量で用いることができる。なお、カップリング剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0086】
また、熱硬化性脂組成物には、必要に応じてさらに、酸化防止剤、離型剤、イオン捕捉剤等の添加剤を添加してもよい。
【0087】
以上説明したように、光半導体装置100の製造方法では、トランスファ成形によって配線部材10上に形成された薄膜50において、光半導体素子20が搭載される領域及びボンディングワイヤ18が接続される領域に該当する部分の薄膜50を除去する。これにより、光半導体素子20が搭載される領域及びボンディングワイヤ18が接続される領域、つまり電気的接続が必要な導体部材14aと導体部材14bとに該当する部分に形成された薄膜50のみが取り除かれる。そのため、その他の部分はガス透過性の低い薄膜50にて覆われているので、硫化による銀めっき層の変色を防止できる。したがって、銀めっき層において高い反射率を保持することができる。また、金めっきを使用することがないため、コストの低減を図ることができ、光半導体装置100の生産性を優れたものとすることができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
[光反射層用の熱硬化性樹脂組成物の調製]
各成分を下記の配合比(質量部)で混合し、混錬温度20〜50℃、混錬時間10分の条件でロール混錬を行うことによって、熱硬化性樹脂組成物を調製した。
(A)エポキシ樹脂:トリスグリシジルイソシアヌレート、43質量部
(B)硬化剤:ヘキサヒドロ無水フタル酸、53質量部
(C)硬化促進剤:テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、3質量部
(D)白色顔料:酸化チタン(中心粒径:0.21μm)(石原産業社製、商品名:CR−63)、222質量部
(E)無機充填剤:溶融球状シリカ(中心粒径:25μm)(電気化学工業社製、商品名:FB−950)、418質量部
(E)無機充填剤:溶融球状シリカ(中心粒径:0.5μm)(アドマテックス社製、商品名:SO25R)、29質量部
(F)カップリング剤:トリメトキシエポキシシラン(東レダウコーニング社製、商品名:A−187)、1.2質量部
なお、(D)白色顔料の充填量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、37.7体積%であった。
【0090】
[光半導体装置の作製]
まず、Cu−Fe合金C194にフォトエッチングにより銅の回路を形成した後、3μm厚みの銀めっきを行い、厚み0.15mmのリードフレームを得た。
【0091】
次いで、トランスファ成形機(エムテックスマツムラ株式会社製、商品名:MF−FS01)を使用し、上記のように調製した熱硬化性樹脂組成物を金型温度180℃、硬化時間90秒、成形圧力6.9MPaの条件でMAP成形法により成形し、光反射層を上記リードフレーム上に作製し光半導体装置搭載用基板を得た。金型としては、縦10個×横16個のマトリックス状に配置された160個の凹部(キャビティ部)を有する一括成形用金型を用いた。キャビティサイズは、1個当たり3mm×3mm、深さ0.5mmとした。
【0092】
前記トランスファ成形において発生した樹脂薄膜において、光半導体素子が搭載される領域及びボンディングワイヤが接続される領域に該当する部分を炭酸ガスレーザにより選択的に除去した。
【0093】
続いて、上記光半導体装置搭載用基板の各凹部に露出したリードフレームの中央の接続端子(導体部材)上に、ダイボンド剤(日立化成工業株式会社製、商品名:EN4620K)をスタンピング法にて印刷した。次いで、光半導体素子(青色素子、Cree社製、商品名:EZ700)をダイボンド剤の上に配置した。そして、ダイボンド剤を加熱硬化(150℃、1時間)し、光半導体素子を接続端子上に固着させた。そして、金線を用いて光半導体素子の表面と、リードフレームの側面側に配置された接続端子(導体部材)とを電気的に接続した。
【0094】
続いて、ディスペンサを用いて上記光半導体装置搭載用基板上にゲル状のシリコーン透明封止樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:XE−14−C2042、弾性率(室温):0.03MPa)をポッティング法により供給した。これにより、各凹部に封止樹脂を充填し封止樹脂層を形成した。
【0095】
上記封止樹脂を硬化させた後、マトリックス状に連続した光半導体装置を、ダイシング装置((株)ディスコ製、商品名:DAD381)を使用して個片化し、光半導体素子を1つ有する単体の光半導体装置(SMD型LED)を複数製造した。マトリックス状に連続した光半導体装置は、成形体に軟質の透明樹脂が形成されているため、光半導体素子のワイヤボンドに加わる応力が緩和され製造工程で加わる熱ストレスにおける信頼性が向上するとともに、光半導体搭載用基板と透明樹脂との剥離が抑制されていた。そのため、マトリックス状に連続した光半導体装置が良好にダイシングされ、複数の光半導体装置を生産性良く得ることができた。
【0096】
(実施例2)
実施例1の薄膜除去工程を、PFE−300T(マコー社製)を使用し、アルミナ粒子#2000、エア圧0.25MPa、処理速度20mm/s、投射角度90°、処理回数2回で除去した以外は実施例1と同様に光半導体装置を作製した。
【符号の説明】
【0097】
100…光半導体装置、10…配線部材、18…ボンディングワイヤ、20…光半導体素子、30…反射層、30a…貫通孔、32…凹部、40…封止材(封止樹脂)、50…薄膜(薄膜樹脂)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物を用いたトランスファ成形によって、貫通孔が複数形成された光反射層を銀めっき層が表面に形成された配線部材上に形成すると共に前記配線部材上に樹脂薄膜を形成し、前記貫通孔の一方の開口部を前記配線部材で塞いでなる複数の凹部が形成された成形体を得る工程と、
光半導体素子が搭載される領域及びボンディングワイヤが接続される領域に該当する部分の前記樹脂薄膜を除去する工程と、
複数の前記光半導体素子を前記凹部内にそれぞれ配置する工程と、
前記光反射層の表面を覆うように前記半導体素子が配置された前記凹部に封止樹脂を供給する工程と、
前記封止樹脂を硬化させる工程と、
前記成形体を前記凹部ごとに分割して複数の光半導体装置を得る工程と、を有することを特徴とする光半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂薄膜を除去する工程において、乾式処理または湿式処理により前記樹脂薄膜を除去することを特徴とする請求項1に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂薄膜を除去する工程において、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ及び半導体レーザのいずれかを使用して前記樹脂薄膜を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂薄膜を除去する工程において、メディアブラストを使用して前記樹脂薄膜を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光半導体装置の製造方法を用いて製造されることを特徴とする光半導体装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−94587(P2012−94587A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238608(P2010−238608)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】