説明

光反応基を有する環状オレフィン化合物および光反応性重合体

【課題】液晶配向膜など多様な光反応に応用可能であり、多様な有機化合物または重合体の前駆体として好適に使用可能である、光反応基を有する新規な環状オレフィン化合物および光反応性重合体を提供する。
【解決手段】下記の化学式1で表される光反応基を有する環状オレフィン化合物:

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反応基を有する新規な環状オレフィン化合物および光反応性重合体に関する。より具体的には、本発明は、液晶配向膜など多様な光反応に応用可能であり、多様な有機化合物または重合体の前駆体として好適に使用可能な光反応基を有する新規な環状オレフィン化合物およびそれから得られる光反応性重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、薄膜トランジスター液晶ディスプレイ(TFT−LCD)やフォトレジストなどの多様な光応用分野に多様な光反応性化合物または重合体が使用されている。
【0003】
例えば、TFT−LCDでは液晶が光スイッチとして使用され得るように液晶層下部に配向膜が使用されているが、最近、このような配向膜内に光反応性重合体などが使用されてUVを利用した光配向が適用されている。
【0004】
ここで、光配向とは、線偏光されたUVにより一定の光反応性重合体の官能基(光反応基)が光反応を起こし、その過程で重合体の主鎖が一定の方向に配列することによって液晶が配向されるメカニズムを称す。
【0005】
したがって、このような光配向をより効果的に起こすためには、前記配向膜に含まれる光反応性重合体が液晶層内の分子と相互作用を良好に起こすことができ、これに加えて優れた光反応性を示すことが要求される。
【0006】
また、漸次により多様な分野で光反応性化合物または重合体が使用されることによって、例えば、より多様な光(例えば、多様な方向に偏光されたUVまたは多様な波長のUVなど)に対して優れた光反応性を示す多様な光反応性化合物または重合体が要求されている実情である。
【0007】
しかし、今まで知られた光反応性重合体などは優れた光反応性を示すことができなかったり、液晶分子との相互作用が充分でないものが大部分であった。しかも、多様な光に対して優れた光反応性を示す光反応性重合体などの開発が充分に行われていない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、液晶配向膜など多様な光反応に応用可能であり、多様な有機化合物または重合体の前駆体としても好適に使用可能な光反応基を有する新規な環状オレフィン化合物を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、多様な光に対する光反応性の調節が容易であり、配向膜などに使用されて液晶分子との向上した相互作用および優れた光反応性を示すことができる光反応性重合体を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の目的は、前記光反応性重合体を含む配向膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記の化学式1で表される光反応基を有する環状オレフィン化合物を提供する:
【0012】
【化1】

【0013】
前記化学式1中、
qは、0〜4の整数であり、
R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも一つは、下記の化学式1aで表されるラジカルであり、
化学式1aのラジカルであるものを除いた残りのR1〜R4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルキニル;置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6〜40のアリール;置換または非置換の炭素数5〜12のアリールアルキル;および酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素、およびホウ素の中で選択された少なくとも一つ以上を含む極性官能基からなる群より選択され、
前記R1〜R4が水素;ハロゲン;または極性官能基でない場合、R1とR2またはR3とR4の一つ以上の組み合わせが互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成したり、またはR1またはR2がR3およびR4のうちのいずれか一つと連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和脂肪族環、または炭素数6〜24の芳香族環を形成することができ、
【0014】
【化2】

【0015】
前記化学式1a中、
Aは、酸素、硫黄、−NH−、置換または非置換の炭素数1〜20のアルキレン、カルボニル、−(O=)C−O−、−O−C(=O)−、−CONH−および置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレンからなる群より選択され、
Bは、化学結合、酸素、硫黄、−NH−または1,4−フェニレンであり、
R9は、化学結合、置換または非置換の炭素数1〜20のアルキレン、置換または非置換の炭素数2〜20のアルケニレン、置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン、置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレン、置換または非置換の炭素数7〜15のアリールアルキレン、および置換または非置換の炭素数2〜20のアルキニレンからなる群より選択され、
C1は、非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数6〜40のアリーレン;非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数7〜15のアリールアルキレン;または14族、15族または16族ヘテロ元素を含む炭素数4〜40のヘテロアリーレンであり、
C2は、非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数6〜40のアリーレン;または14族、15族または16族ヘテロ元素を含む炭素数4〜40のヘテロアリーレンであり、
R10は、水素;ハロゲン;シアノ;ニトロ;−NCS;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;置換または非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ;および置換または非置換の炭素数6〜40のアリールからなる群より選択される。
【0016】
また、本発明は下記の化学式2aまたは2bの繰り返し単位を含む光反応性重合体を提供する:
【0017】
【化3】

【0018】
前記化学式2aおよび2b中、それぞれ独立して、mは、50〜5000であり、q、R1、R2、R3、およびR4は、化学式1に対して定義されたことと同意義である。
【0019】
また、本発明は、前記光反応性重合体を含む配向膜を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、前記配向膜と、配向膜上の液晶層とを含む液晶位相差フィルムを提供する。
【0021】
さらに、本発明は、前記配向膜を含む表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の環状オレフィン化合物は、化学式1aの構造に応じてシンナメイト構造またはカルコン構造のような光反応基を有することができる。したがって、それ自体で優れた光反応性を示して液晶配向膜など多様な光反応に応用可能であり、その他多様な有機化合物または重合体の前駆体としても好適に使用可能である。
【0023】
また、前記環状オレフィン化合物は、シンナメイト構造またはカルコン構造のような光反応基に芳香族環(C2)がさらに置換された構造を有することができる。通常液晶分子は芳香族環を有しているところ、前記環状オレフィン化合物に追加的に置換された芳香族環(C2)によって、このような環状オレフィン化合物またはそれから得られた光反応性重合体は液晶分子との向上した相互作用を示すことができ、これによって光配向をより効果的に起こすことができる。
【0024】
付加して、前記環状オレフィン化合物の化学式1aの構造を調節し、これから多様な光に対して優れた光反応性を示す多様な光反応性化合物または重合体などを提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】通常の配向膜構造の一例を模式的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明の具現例による光反応基を有する環状オレフィン化合物、光反応性重合体および配向膜などについて詳しく説明する。
【0027】
発明の一具現例によれば、下記の化学式1で表される光反応基を有する環状オレフィン化合物が提供される:
【0028】
【化4】

【0029】
前記化学式1中、
qは、0〜4の整数であり、
R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも一つは、下記の化学式1aで表されるラジカルであり、
化学式1aのラジカルであるものを除いた残りのR1〜R4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルキニル;置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6〜40のアリール;置換または非置換の炭素数5〜12のアリールアルキル;および酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素、およびホウ素の中で選択された少なくとも一つ以上を含む極性官能基からなる群より選択され、
前記R1〜R4が水素;ハロゲン;または極性官能基でない場合、R1とR2またはR3とR4の一つ以上の組み合わせが互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成したり、またはR1またはR2がR3およびR4のうちのいずれか一つと連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和脂肪族環、または炭素数6〜24の芳香族環を形成することができ、
【0030】
【化5】

【0031】
前記化学式1a中、
Aは、酸素、硫黄、−NH−、置換または非置換の炭素数1〜20のアルキレン、カルボニル、−(O=)C−O−、−O−C(=O)−、−CONH−および置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレンからなる群より選択され、
Bは、化学結合、酸素、硫黄、−NH−または1,4−フェニレンであり、
R9は、化学結合、置換または非置換の炭素数1〜20のアルキレン、置換または非置換の炭素数2〜20のアルケニレン、置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン、置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレン、置換または非置換の炭素数7〜15のアリールアルキレン、および置換または非置換の炭素数2〜20のアルキニレンからなる群より選択され、
C1は、非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数6〜40のアリーレン;非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数7〜15のアリールアルキレン;または14族、15族または16族ヘテロ元素を含む炭素数4〜40のヘテロアリーレンであり、
C2は、非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数6〜40のアリーレン;または14族、15族または16族ヘテロ元素を含む炭素数4〜40のヘテロアリーレンであり、
R10は、水素;ハロゲン;シアノ;ニトロ;−NCS;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;置換または非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ;および置換または非置換の炭素数6〜40のアリールからなる群より選択される。
【0032】
このような化合物は多様な化合物の前駆体や重合体の単量体などとして使用可能な環状オレフィン構造に所定の光反応基(化学式1a)、例えば、シンナメイト構造またはカルコン構造のような光反応基を導入した化学構造を有することができる。このように光反応基が導入された化学構造によって前記化学式1の環状オレフィン化合物はそれ自体で光反応性化合物として使用可能である。
【0033】
また、前駆体などとして使用可能な環状オレフィン構造の特性上、前記化合物から多様な化合物または重合体を製造することができ、このように製造された化合物または重合体も前記光反応基により優れた光反応性を示すことができる。したがって、前記環状オレフィン化合物を利用して多様な光応用分野に適用可能な多様な光反応性化合物または重合体などを製造することが可能になる。
【0034】
そして、前記環状オレフィン化合物は、シンナメイト構造またはカルコン構造のような光反応基に特定官能基Aを媒介として芳香族環(C2)がさらに結合された化学構造を有することができる。通常液晶分子は芳香族環を有しているところ、前記環状オレフィン化合物に追加的に結合された芳香族環(C2)によって、このような環状オレフィン化合物またはそれから得られた光反応性重合体は液晶分子との向上した相互作用を示すことができ、これによって光配向をより効果的に起こすことができる。したがって、前記環状オレフィン化合物およびそれから得られた光反応性重合体は、液晶配向膜などに好適に使用されて液晶分子との向上した相互作用および優れた光反応性を示すことができる。
【0035】
付加して、前記環状オレフィン化合物の化学式1aの構造、特に、前記追加的に置換された芳香族環(C2)の種類などを多様なアリーレンまたはヘテロアリーレンで調節し、それ自体の化合物およびそれから得られた光反応性重合体の光反応性を容易に調節することができるようになる。したがって、このような環状オレフィン化合物から多様な光に対して優れた光反応性を示す多様な光反応性化合物または重合体などを得ることができるようになる。
【0036】
以下、前記環状オレフィン化合物およびそれから得られる光反応性重合体などについてより具体的に説明する。
【0037】
前記環状オレフィン化合物において前記R1〜R4に置換可能な極性官能基、つまり、酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素、およびホウ素の中で選択された少なくとも一つ以上を含む極性官能基は、以下に羅列された官能基からなる群より選択され得、その他にも酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素またはホウ素の中で選択された一つ以上を含む多様な極性官能基になることができる:
−OR6、−OC(O)OR6、−R5OC(O)OR6、−C(O)OR6、−R5C(O)OR6、−C(O)R6、−R5C(O)R6、−OC(O)R6、−R5OC(O)R6、−(R5O)p−OR6、−(OR5p−OR6、−C(O)−O−C(O)R6、−R5C(O)−O−C(O)R6、−SR6、−R5SR6、−SSR6、−R5SSR6、−S(=O)R6、−R5S(=O)R6、−R5C(=S)R6−、−R5C(=S)SR6、−R5SO36、−SO36、−R5N=C=S、−N=C=S、−NCO、−R5−NCO、−CN、−R5CN、−NNC(=S)R6、−R5NNC(=S)R6、−NO2、−R5NO2
【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
このような極性官能基中、pは、それぞれ独立して、1〜10の整数であり、R5は、置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキレン;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニレン;非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルキニレン;置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン;置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレン;置換または非置換の炭素数1〜20のカルボニルオキシレン;または置換または非置換の炭素数1〜20のアルコキシレンであり、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルキニル;置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6〜40のアリール;置換または非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;および置換または非置換の炭素数1〜20のカルボニルオキシからなる群より選択される。
【0043】
また、前記環状オレフィン化合物中、前記C1は、非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数6〜40のアリーレン(例えば、置換または非置換のフェニレンまたは1,4−あるいは2,6−ナフチレンなど);非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数7〜15のアリールアルキレン;または14族、15族または16族ヘテロ元素を含む炭素数4〜40のヘテロアリーレン(例えば、2,5−チオフェンジイル(2,5−thiophenediyl)、2,5−フラニレン(2,5−furanylene)など)になることができる。
【0044】
そして、特定官能基Aを媒介として前記C1と結合されるC2は、非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数6〜40のアリーレン(例えば、置換または非置換のフェニレンまたは1,4−あるいは2,6−ナフチレンなど);または14族、15族または16族ヘテロ元素を含む炭素数4〜40のヘテロアリーレン(例えば、2,5−チオフェンジイル(2,5−thiophenediyl)、2,5−フラニレン(2,5−furanylene)など)になることができる。
【0045】
一方、前述した環状オレフィン化合物の構造において、各置換基の定義を具体的に説明すれば次の通りである:
まず、「アルキル」は、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個の炭素原子の線状または分枝状飽和一価炭化水素部位を意味する。アルキル基は、非置換のもののみならず、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。アルキル基の例としてメチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ヨードメチル、ブロモメチルなどが挙げられる。
【0046】
「アルケニル」は、1以上の炭素−炭素二重結合を含む2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜6個の炭素原子の線状または分枝状一価炭化水素部位を意味する。アルケニル基は、炭素−炭素二重結合を含む炭素原子を通じてまたは飽和された炭素原子を通じて結合され得る。アルケニル基は、非置換のもののみならず、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。アルケニル基の例としてエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、ペンテニル、5−ヘキセニル、ドデセニルなどが挙げられる。
【0047】
「シクロアルキル」は、3〜12個の環炭素の飽和されたまたは不飽和された非芳香族一価モノサイクリック、バイサイクリックまたはトリサイクリック炭化水素部位を意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクルロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、デカヒドロナフタレニル、アダマンチル、ノルボルニル(つまり、バイシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エニル)などが挙げられる。
【0048】
「アリール」は、6〜40個、好ましくは6〜12個の環原子を有する一価モノサイクリック、バイサイクリックまたはトリサイクリック芳香族炭化水素部位を意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。アリール基の例としてフェニル、ナフタレニルおよびフルオレニルなどが挙げられる。
【0049】
「アルコキシアリール」は、前記定義されたアリール基の水素原子1個以上がアルコキシ基で置換されているものを意味する。アルコキシアリール基の例としてメトキシフェニル、エトキシフェニル、プロポキシフェニル、ブトキシフェニル、ペントキシフェニル、ヘキトキシフェニル、ヘプトキシ、オキトキシ、ナノキシ、メトキシビフェニル、メトキシナフタレニル、メトキシフルオレニルあるいはメトキシアントラセニルなどが挙げられる。
【0050】
「アリールアルキル」は、前記定義されたアルキル基の水素原子が1個以上がアリール基で置換されているものを意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、ベンジル、ベンズヒドリルおよびトリチルなどが挙げられる。
【0051】
「アルキニル」は、1以上の炭素−炭素三重結合を含む2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜10個、より好ましくは2個〜6個の線状または分枝状の一価炭化水素部位を意味する。アルキニル基は、炭素−炭素三重結合を含む炭素原子を通じてまたは飽和された炭素原子を通じて結合され得る。アルキニル基は、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、エチニルおよびプロピニルなどが挙げられる。
【0052】
「アルキレン」は、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個の炭素原子の線状または分枝状の飽和された二価炭化水素部位を意味する。アルキレン基は、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。アルキレン基の例としてメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレンなどが挙げられる。
【0053】
「アルケニレン」は、1以上の炭素−炭素二重結合を含む2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜6個の炭素原子の線状または分枝状の二価炭化水素部位を意味する。アルケニレン基は、炭素−炭素二重結合を含む炭素原子を通じておよび/または飽和された炭素原子を通じて結合され得る。アルケニレン基は、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。
【0054】
「シクロアルキレン」は、3〜12個の環炭素の飽和されたまたは不飽和された非芳香族二価モノサイクリック、バイサイクリックまたはトリサイクリック炭化水素部位を意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、シクロプロピレン、シクロブチレンなどが挙げられる。
【0055】
「アリーレン」は、6〜20個、好ましくは6〜12個の環原子を有する二価モノサイクリック、バイサイクリックまたはトリサイクリック芳香族炭化水素部位を意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。芳香族部分は炭素原子のみを含む。アリーレン基の例としてフェニレンなどが挙げられる。
【0056】
「アリールアルキレン」は、前記定義されたアルキル基の水素原子が1個以上がアリール基に置換されている二価部位を意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、ベンジレンなどが挙げられる。
【0057】
「アルキニレン」は、1以上の炭素−炭素三重結合を含む2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜10個、より好ましくは2つ〜6個の線状または分枝状の二価炭化水素部位を意味する。アルキニレン基は、炭素−炭素三重結合を含む炭素原子を通じてまたは飽和された炭素原子を通じて結合され得る。アルキニレン基は、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、エチニレンまたはプロピニレンなどが挙げられる。
【0058】
前記で説明した置換基が「置換または非置換」されたということは、これら各置換基自体のみならず、一定の置換基によりさらに置換されたものも包括されることを意味する。本明細書で、特別に他の定義がない限り、各置換基にさらに置換され得る置換基の例としては、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アリールアルキル、ハロアリールアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリル、シロキシまたは前述したような「酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素またはホウ素を含む極性官能基」などが挙げられる。
【0059】
前述した環状オレフィン化合物は、環状オレフィン、例えば、ノルボルネン系化合物に所定の置換基、より具体的には化学式1aの光反応基などを導入する通常の方法により製造され得る。例えば、ノルボルネンメタノールなどのノルボルネンアルキロールと、化学式1aに対応する光反応基を有するカルボン酸化合物またはアシルクロライド化合物を縮合反応させて前記環状オレフィン化合物を製造することができ、その他化学式1aの光反応基の構造および種類に応じて多様な方法により前記光反応基を導入して前述した環状オレフィン化合物を製造することができる。
【0060】
一方、発明の他の具現例によれば、下記の化学式2aまたは2bの繰り返し単位を含む光反応性重合体が提供される:
【0061】
【化10】

【0062】
前記化学式2aおよび2b中、それぞれ独立して、mは、50〜5000であり、q、R1、R2、R3、およびR4は、化学式1に対して定義されたことと同意義である。
【0063】
このような光反応性重合体は、前述した環状オレフィン化合物から誘導された繰り返し単位を含むものであって、優れた光反応性を示すことができ、化学式1aの構造、特に、特定の官能基Aを媒介として追加的に結合された芳香族環(C2)を有することによって、液晶分子との向上した相互作用を示すことができ、優れた光反応性を示すことができる。また、前記芳香族環を多様なアリーレンまたはヘテロアリーレン中に選択および調節することによって、多様な光に対して優れた光反応性を示すことができる。
【0064】
また、前記光反応性重合体は、化学式2aまたは2bのノルボルネン系繰り返し単位を主な繰り返し単位として含む。このようなノルボルネン系繰り返し単位は構造的に硬く、これを含む光反応性重合体はガラス転移温度(Tg)が約300℃以上、好ましくは約300〜350℃であって比較的に高いため、既に知られた光反応性重合体などに比べて優れた熱的安定性を示すことができる。また、前記光反応性重合体は、前記ノルボルネン系繰り返し単位に光反応基が結合された構造的特性上、光反応基が高分子主鎖内で比較的に自由に移動することができるため、優れた配向性を示すことができる。
【0065】
したがって、前記光反応性重合体は、光配向のための液晶配向層に好適に使用可能であり、その他多様な光応用分野に好適に適用可能である。
【0066】
前記光反応性重合体に結合された各置換基の定義については、すでに化学式1について詳しく説明したため、これについてのそれ以上の説明は省略する。
【0067】
そして、前記光反応性重合体は、化学式2aまたは2bの繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位のみを含むこともできるが、他の種類の繰り返し単位を追加的に共に含む共重合体になることもできる。このような繰り返し単位の例としては、シンナメイト系、カルコン系またはアゾ系の光反応基が結合されたり、結合されない任意のオレフィン系繰り返し単位、アクリレート系繰り返し単位または環状オレフィン系繰り返し単位になることができる。このような繰り返し単位の例は、韓国特許公開公報第2010−0021751号などに開示されている。
【0068】
ただし、前記化学式2aまたは2bによる優れた光反応性などが阻害されないように、前記光反応性重合体は約50モル%以上、具体的には約50〜100モル%、好ましくは約70モル%以上の含量で前記化学式2aまたは2bの繰り返し単位を含むことができる。
【0069】
また、前記光反応性重合体を成す化学式2aまたは2bの繰り返し単位は、約50〜5、000の重合度、好ましくは約100〜4000の重合度、より好ましくは約1000〜3000の重合度を有することができる。そして、前記光反応性重合体は、10000〜1000000、好ましくは20000〜500000の重量平均分子量を有することができる。これによって、前記光反応性重合体が配向膜の形成のためのコーティング組成物に適切に含まれて優れたコーティング性を示すことができながらも、これから形成された配向膜が優れた液晶配向性などを示すことができる。
【0070】
前述した光反応性重合体は、約150〜450nmの波長を有する偏光の露光下に光反応性を示すことができ、例えば、約200〜400nmの波長、より具体的には、約250〜350nmの波長を有する偏光の露光下に光反応性を示すことができる。特に、特定の官能基Aを媒介として追加的に結合された芳香族環(C2)を多様なアリーレンまたはヘテロアリーレン中に選択および調節することによって、前述した広い波長帯にかけた光と、多様な方向に偏光された光に対して優れた光反応性を示すことができる。
【0071】
一方、発明の他の具現例によれば、前述した光反応性重合体の製造方法が提供される。このような製造方法の一実施例は、10族の遷移金属を含む前触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下に、化学式1の単量体を付加重合して化学式2aの繰り返し単位を形成する段階を含む:
【0072】
【化11】

【0073】
前記化学式1中、q、R1、R2、R3、およびR4は、化学式2aで定義されたことと同意義である。
【0074】
この時、前記重合反応は、10℃〜200℃の温度で行われ得る。前記反応温度が10℃より小さい場合、重合活性が低くなることがあり、200℃より大きい場合、触媒が分解されることがあって好ましくない。
【0075】
また、前記助触媒は、前記前触媒の金属と弱く配位結合が可能なルイス塩基を提供する第1助触媒;および15族電子供与リガンドを含む化合物を提供する第2助触媒からなる群より選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、前記助触媒は、前記ルイス塩基を提供する第1助触媒、および選択的に中性の15族電子供与リガンドを含む化合物第2助触媒を含む触媒混合物になることができる。
【0076】
この時、前記触媒混合物は、前記前触媒1モルに対して前記第1助触媒を1〜1000モルで含むことができ、前記第2助触媒を1〜1000で含むことができる。第1助触媒または第2助触媒の含量が過度に小さい場合、触媒活性化が良好に行われないことがあり、反対に過度に大きくなる場合、むしろ触媒活性が低くなることがある。
【0077】
そして、前記10族遷移金属を含む前触媒としては、ルイス塩基を提供する第1助触媒により容易に分離されて中心遷移金属が触媒活性種に変わり得るように、ルイス酸−塩基反応に容易に参加して中心金属から離れるルイス塩基官能基を有している化合物を使用することができる。例えば[(Allyl)Pd(Cl)]2(Allylpalladiumchloride dimer)、(CH3CO22Pd [Palladium(II)acetate]、[CH3COCH=C(O−)CH32Pd [Palladium(II)acetylacetonate]、NiBr(NP(CH334、[PdCl(NB)O(CH3)]2などがある。
【0078】
また、前記前触媒の金属と弱く配位結合が可能なルイス塩基を提供する第1助触媒としては、ルイス塩基と容易に反応して遷移金属の空席を作り、またこのように生成された遷移金属を安定化させるために遷移金属化合物と弱く配位結合する化合物あるいはこれを提供する化合物が使用され得る。例えば、B(C653のようなボランまたはジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(dimethylanilinium tetrakis(pentafluorophenyl)borate)のようなボレート、メチルアルミノキサン(MAO)またはAl(C253のようなアルキルアルミニウム、あるいはAgSbF6のような遷移金属ハライドなどがある。
【0079】
そして、前記中性の15族電子供与リガンドを含む化合物を提供する第2助触媒としては、アルキルホスフィン、シクロアルキルホスフィンまたはフェニルホスフィンなどを使用することができる。
【0080】
また、前記第1助触媒と第2助触媒を別途に使用することもできるが、これら2種類の助触媒を一つの塩に作って触媒を活性化させる化合物として使用することもできる。例えば、アルキルホスフィンとボランまたはボレート化合物をイオン結合させて作った化合物などが使用され得る。
【0081】
前述した方法を通じて化学式2aの繰り返し単位およびこれを含む一具現例の光反応性重合体を製造することができる。付加して、前記光反応性重合体がオレフィン系繰り返し単位、環状オレフィン系繰り返し単位またはアクリレート系繰り返し単位などをさらに含む場合、各繰り返し単位の通常的な製造方法によりこれら繰り返し単位を形成し、前述した方法により製造された化学式2aの繰り返し単位と共重合して前記光反応性重合体を得ることができる。
【0082】
一方、光反応性重合体が化学式2bの繰り返し単位を含む場合、前記製造方法の他の実施例により製造され得る。このような他の実施例の製造方法は、4族、6族、または8族の遷移金属を含む前触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下に、前記化学式1の単量体を開環重合して化学式2bの繰り返し単位を形成する段階を含む。選択可能な他の方法として、前記化学式2bの繰り返し単位を含む光反応性重合体は、前記4族、6族、または8族の遷移金属を含む前触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下に、ノルボルネンメタノールなどのノルボルネンアルキロールを単量体として開環重合して五角環を有する開環重合体を形成した後、このような開環重合体に光反応基を導入して製造されることもできる。この時、前記光反応基の導入は、前記開環重合体を化学式1aに対応する光反応基を有するカルボン酸化合物またはアシルクロライド化合物と縮合反応させる反応により行われ得る。
【0083】
前記開環重合段階では、前記化学式1などの単量体に含まれているノルボルネン環中の二重結合に水素が添加されれば開環が行われ得、これと共に重合が行われて前記化学式2bなどの繰り返し単位およびこれを含む光反応性重合体が製造され得る。
【0084】
前記開環重合は、4族(例えば、Ti、Zr、Hf)、6族(例えば、Mo、W)、または8族(例えば、Ru、Os)の遷移金属を含む前触媒、前記前触媒の金属と弱く配位結合が可能なルイス塩基を提供する助触媒および選択的に前記前触媒金属の活性を増進させることができる中性の15族および16族の活性化剤(activator)などからなる触媒混合物存在下に進行することができる。また、このような触媒混合物の存在下に、分子量の大きさを調節することができる1−アルケン、2−アルケンなど線状アルケン(linear alkene)を単量体対比1〜100mol%添加し、10℃〜200℃の温度で重合を行うことができ、4族(例えば、Ti、Zr)あるいは8族〜10族(例えば、Ru、Ni、Pd)の遷移金属を含む触媒を単量体対比1〜30重量%を添加して10℃〜250℃の温度でノルボルネン環中の二重結合に水素添加する反応を行うことができる。
【0085】
前記反応温度が過度に低い場合、重合活性が低くなる問題が生じ、過度に高い場合、触媒が分解される問題が生じて好ましくない。また、前記水素添加反応温度が過度に低い場合、水素添加反応の活性が低くなる問題が生じ、過度に高い場合、触媒が分解される問題が生じて好ましくない。
【0086】
前記触媒混合物は、4族(例えば、Ti、Zr、Hf)、6族(例えば、Mo、W)、または8族(例えば、Ru、Os)の遷移金属を含む前触媒1モルに対して前記前触媒の金属と弱く配位結合が可能なルイス塩基を提供する助触媒を1〜100、000モル、および選択的に前触媒金属の活性を増進させることができる中性の15族および16族の元素を含む活性化剤(activator)を前触媒1モルに対して1〜100モルを含む。
【0087】
前記助触媒の含量が1モルより小さい場合、触媒活性化が行われない問題があり、100、000モルより大きい場合、触媒活性が低くなる問題があって好ましくない。前記活性化剤は、前触媒の種類に応じて不要なことがある。活性化剤の含量が1モルより小さい場合、触媒活性化が行われない問題があり、100モルより大きい場合、分子量が低くなる問題があって好ましくない。
【0088】
水素添加反応に使用される4族(例えば、Ti、Zr)あるいは8族〜10族(例えば、Ru、Ni、Pd)の遷移金属を含む触媒の含量が単量体対比1重量%より小さい場合、水素添加が良好に行われない問題があり、30重量%より大きい場合、ポリマーが変色する問題があって好ましくない。
【0089】
前記4族(例えば、Ti、Zr、Hf)、6族(例えば、Mo、W)、または8族(例えば、Ru、Os)の遷移金属を含む前触媒は、ルイス酸を提供する助触媒によって簡単に離れて中心遷移金属が触媒活性種に変われ得るように、ルイス酸−塩基反応に容易に参加して中心金属から離れる官能基を有しているTiCl4、WCl6、MoCl5あるいはRuCl3やZrCl4のような遷移金属化合物を称すことができる。
【0090】
また、前記前触媒の金属と弱く配位結合が可能なルイス塩基を提供する助触媒は、B(C653のようなボランまたはボレート、メチルアルミノキサン(MAO)またはAl(C253、Al(CH3)Cl2のようなアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハライド、アルミニウムハライドを利用することができる。あるいはアルミニウムの代わりにリチウム(lithium)、マグネシウム(magnesium)、ゲルマニウム(germanium)、鉛、亜鉛、錫、ケイ素などの置換体を利用することができる。このようにルイス塩基と容易に反応して遷移金属の空席を作り、また、このように生成された遷移金属を安定化させるために遷移金属化合物と弱く配位結合する化合物あるいはこれを提供する化合物である。
【0091】
重合の活性化剤を添加することができるが、前触媒の種類に応じては不要なこともある。前記前触媒金属の活性を増進させることができる中性の15族および16族の元素を含む活性化剤(activator)は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、フェノール、エチルメルカプタン(ethyl mercaptan)、2−クロロエタノール、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン(pyridine)、エチレンオキシド(ethylene oxide)、ベンゾイルペルオキシド(benzoyl peroxide)、t−ブチルペルオキシド(t−butyl peroxide)などがある。
【0092】
水素添加反応に使用される4族(例えば、Ti、Zr)あるいは8族〜10族(例えば、Ru、Ni、Pd)の遷移金属を含む触媒は、溶媒と直ちに混合され得る均一(homogeneous)な形態であるか、前記金属触媒錯化合物を微粒子支持体上に担持させたものがある。前記微粒子支持体は、シリカ、チタニア、シリカ/クロミア、シリカ/クロミア/チタニア、シリカ/アルミナ、アルミニウムホスフェートゲル、シラン化されたシリカ、シリカヒドロゲル、モンモリロナイトクレーまたはゼオライトであることが好ましい。
【0093】
前述した方法を通じて化学式2bの繰り返し単位およびこれを含む一具現例の光反応性重合体を製造することができる。また、前記光反応性重合体がオレフィン系繰り返し単位、環状オレフィン系繰り返し単位またはアクリレート系繰り返し単位などをさらに含む場合にも、各繰り返し単位の通常的な製造方法によりこれら繰り返し単位を形成し、前述した方法により製造された化学式2bの繰り返し単位と共重合して前記光反応性重合体を得ることができる。
【0094】
一方、発明の他の具現例によれば、前述した光反応性重合体を含む配向膜が提供される。このような配向膜には薄膜の形態のみならずフィルム形態の配向フィルムも包括され得る。発明のさらに他の具現例によれば、このような配向膜と、配向膜上の液晶層とを含む液晶位相差フィルムを提供する。
【0095】
このような配向膜および液晶位相差フィルムは、前述した光反応性重合体を光配向重合体として含むことを除いては、当業界で知られた構成成分および製造方法を利用して製造することができる。
【0096】
例えば、前記配向膜は、前記光反応性重合体、バインダー樹脂および光開始剤を混合し有機溶媒に溶解してコーティング組成物を得た後、このようなコーティング組成物を基材上にコーティングしUV硬化を行って形成することができる。
【0097】
この時、前記バインダー樹脂としては、アクリレート系樹脂を使用することができ、より具体的には、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソイアヌレートなどを使用することができる。
【0098】
また、前記光開始剤としては、配向膜に使用可能なものと知られた通常の光開始剤を特別な制限なく使用することができ、例えば、商品名Irgacure907、819で知られた光開始剤を使用することができる。
【0099】
そして、前記有機溶媒としては、トルエン、アニソール、クロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどを使用することができる。前述した光反応性ノルボルネン系共重合体は、多様な有機溶媒に対して優れた溶解度を示すため、その他にも多様な有機溶媒が特別な制限なく使用され得る。
【0100】
前記コーティング組成物において、前記光反応性重合体、バインダー樹脂および光開始剤を含む固形分濃度は1〜15重量%になることができ、前記配向膜をフィルム形態でキャスティングするためには10〜15重量%が好ましく、薄膜形態で形成するためには1〜5重量%が好ましい。
【0101】
このように形成された配向膜は、例えば、図1に示されているように、基材上に形成され得、液晶下に形成されてこれを配向させる作用をすることができる。この時、前記基材としては、環状重合体を含む基材、アクリル重合体を含む基材またはセルロース重合体を含む基材などを使用することができ、前記コーティング組成物をバーコーティング、スピンコーティング、ブレードコーティングなどの多様な方法により基材上にコーティングした後、UV硬化して配向膜を形成することができる。
【0102】
前記UV硬化により光配向が生じることができるが、このような段階では波長範囲が約150〜450nm領域の偏光されたUVを照射して配向処理することができる。この時、露光の強さは約50mJ/cm2〜10J/cm2のエネルギー、好ましくは約500mJ/cm2〜5J/cm2のエネルギーになることができる。
【0103】
前記UVとしては、(1)石英ガラス、ソダライムガラス、ソダライムフリーガラスなどの透明基板表面に誘電異方性の物質がコーティングされた基板を利用した偏光装置、(2)微細にアルミニウムまたは金属ワイヤーが蒸着された偏光板、または(3)石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射させる方法により偏光処理されたUV中で選択された偏光UVを適用することができる。
【0104】
前記UVを照射する時の基板温度は常温が好ましい。しかし、場合によっては100℃以下の温度範囲内で加熱された状態でUVを照射することもできる。このような一連の過程により形成される最終塗膜の膜厚さは30〜1000nmであることが好ましい。
【0105】
前述した方法により配向膜を形成し、その上に液晶層を形成し、通常の方法により液晶位相差フィルムを製造することができる。このような配向膜は、前記光反応性重合体を含むことによって、液晶分子との優れた相互作用を示すことができ、これによって効果的な光配向の進行が可能になる。
【0106】
前述した配向膜または液晶位相差フィルムは立替映像を実現するための光学フィルムまたは光学フィルターに適用されることもできる。
【0107】
そこで、発明のさらに他の具現例によれば、前記配向膜を含む表示素子が提供される。このような表示素子は前記配向膜が液晶の配向のために含まれている液晶表示装置や、前記配向膜が立替映像を実現するための光学フィルムまたはフィルターなどに含まれている立替映像表示装置などになることができる。ただし、これら表示素子の構成は前述した光反応性重合体および配向膜を含む点を除いては、通常の素子の構成に従うため、これについてのそれ以上の具体的な説明は省略する。
【実施例】
【0108】
以下、発明の理解のために好適な実施例を提示する。しかし、以下の実施例は発明を例示するものに過ぎず、発明をこれらのみに限定するのではない。
【0109】
また、以下の実施例で空気や水に敏感な化合物を扱う全ての作業は、標準シュレンク技術(standard Schlenk technique)またはドライボックス技術を用いて実施した。核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、ブルカー300スペクトロメーター(Bruker 300 spectrometer)を使用して得、この時、1H NMRは300MHzで、そして13C NMRは75MHzでそれぞれ測定した。開環水素添加重合体の分子量と分子量分布はGPC(gel permeation chromatography)を使用して測定し、この時、ポリスチレン(polystyrene)サンプルを標準とした。
【0110】
トルエンはカリウム/ベンゾフェノン(potassium/benzophenone)で蒸留して精製し、ジクロロメタンはCaH2で蒸留精製された。
【0111】
【化12】

【0112】
の化合物(116.2g、0.43mol、Fw=270.26)、EDCI(N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロライド、206g、1.08mol)、DMAP(N,N−ジメチルアミドピリジン、10.5g、0.09mol)をフラスコに入れ、CH2Cl21500mlを加えた。DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン、225ml、1.29mol)、5−ノルボルネン−2−メタノール(106.8g、0.86mol、Fw=124.18)を加えて常温で20時間攪拌した。反応が完了した後、水を加えて有機層で抽出した後、有機層を塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過してコラムクロマトグラフィー(EA:Hex=1:7)を通じて表題の化合物74.5g(収率:46%、Fw=376.43)を得た。純度(GC):98%。
【0113】
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ7.90−7.71(m、5H)、7.64(d、2H)、7.22−7.14(m、2H)、6.55(d、1H)、6.17〜5.98(m、2H)、4.10〜3.76(m、2H)、2.94〜2.75(m、2H)、2.45(m、1H)、1.91〜1.83(m、1H)、1.48〜1.16(m、2H)、0.59(m、1H)
【0114】
【化13】

【0115】
の化合物(116.2g、0.43mol、Fw=270.29)、EDCI(N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロライド、206g、1.08mol)、DMAP(N,N−ジメチルアミドピリジン、10.5g、0.09mol)をフラスコに入れ、CH2Cl21500mlを加えた。DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン、225ml、1.29mol)、5−ノルボルネン−2−メタノール(106.8g、0.86mol、Fw=124.18)を加えて常温で20時間攪拌した。反応が完了した後、水を加えて有機層で抽出した後、有機層を塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過してコラムクロマトグラフィー(EA:Hex=1:7)を通じて表題の化合物84.2g(収率:52%、Fw=376.46)を得た。純度(GC):98%。
【0116】
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ7.71−7.66(m、3H)、7.22−7.14(m、4H)、7.02(s、2H)、6.45(d、1H)、6.18〜5.98(m、2H)、4.10〜3.75(m、2H)、3.82(s、3H)、2.94〜2.75(m、2H)、2.45(m、1H)、1.91〜1.83(m、1H)、1.48〜1.15(m、2H)、0.59(m、1H)
【0117】
【化14】

【0118】
の化合物(9.15g、32.4mmol、Fw=282.30)、5−ノルボルネン−2−メタノール(4.82g、38.9mmol、Fw=124.18)、ジルコニウムアセテートヒドロキシド(0.1g、1重量%)およびキシレン30mlをフラスコに入れ、窒素大気下の180℃で約24時間共沸還流を実施した。反応後、温度を常温に下げ、エチルアセテートを100体積%だけ加えた。1M塩酸で抽出し、水で再度洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を除去した後、粘性が高い液状物質を得た。コラムクロマトグラフィー(EA:Hex=1:10)を通じて表題の化合物8.05g(収率:64%、Fw=388.47)を得た。純度(GC):98%。
【0119】
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ7.84−7.71(m、5H)、7.35(d、2H)、7.23−7.14(m、2H)、6.55(d、1H)、6.17〜5.98(m、2H)、4.10〜3.76(m、2H)、2.94〜2.75(m、2H)、2.45(m、1H)、2.22(s、3H)、1.91〜1.83(m、1H)、1.48〜1.16(m、2H)、0.59(m、1H)
【0120】
【化15】

【0121】
の化合物(9.15g、34.1mmol、Fw=268.27)、5−ノルボルネン−2−プロパノール(4.82g、31.7mmol、Fw=152.24)、ジルコニウムアセテートヒドロキシド(0.1g、1重量%)およびキシレン30mlをフラスコに入れ、窒素大気下の180℃で約24時間共沸還流を実施した。反応後、温度を常温に下げ、エチルアセテートを100体積%だけ加えた。1M塩酸で抽出し、水で再度洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を除去した後、粘性が高い液状物質を得た。コラムクロマトグラフィー(EA:Hex=1:10)を通じて表題の化合物9.47g(収率:69%、Fw=402.49)を得た。純度(GC):97.5%。
【0122】
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ7.84−7.71(m、5H)、7.35(d、2H)、7.23−7.14(m、2H)、6.55(d、1H)、6.17〜5.98(m、2H)、5.0〜4.9(m、2H)、2.94〜2.75(m、2H)、2.45(m、1H)、1.91〜1.83(m、1H)、1.48〜1.16(m、2H)、0.59(m、1H)
【0123】
【化16】

【0124】
250mlシュレンク(schlenk)フラスコに単量体として
【0125】
【化17】


【0126】
1.13g(3mmol.Fw=376.43)と溶媒として精製されたトルエン3mlを投入した。このフラスコに触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgとトリシクロヘキシルホスフィン7.76mg、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを添加し、18時間90℃で攪拌しながら反応させた。
【0127】
反応18時間後に前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間乾燥して重合体1.0gを得た(Mw=170,000、PDI=3.2、収率=88%)。
【0128】
【化18】

【0129】
250mlシュレンク(schlenk)フラスコに単量体として
【0130】
【化19】

【0131】
3.0g(6.69mmol)と溶媒として精製されたトルエン6mlを投入した。このフラスコに触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)20.62mgとトリシクロヘキシルホスフィン0.71mg、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)0.60mgを添加し、18時間90℃で攪拌しながら反応させた。
【0132】
反応18時間後に前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間乾燥して重合体2.6gを得た(Mw=124,000、PDI=2.9、収率=87%)。
【0133】
【化20】

【0134】
250mlシュレンク(schlenk)フラスコに単量体として

【0135】
【化21】

【0136】
1.17g(3mmol)と溶媒として精製されたトルエン3mlを投入した。このフラスコに触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgとトリシクロヘキシルホスフィン7.76mg、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを添加し、18時間90℃で攪拌しながら反応させた。
【0137】
反応18時間後に前記反応物を過量のエタノールに投入して黄色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間乾燥して重合体0.89gを得た(Mw=103,000、PDI=3.6、収率=79%)。
【0138】
【化22】

【0139】
250mlシュレンク(schlenk)フラスコに単量体として
【0140】
【化23】

【0141】
1.2g(3mmol、Fw=402.49)と溶媒として精製されたトルエン3mlを投入した。このフラスコに触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgとトリシクロヘキシルホスフィン7.76mg、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを添加し、18時間90℃で攪拌しながら反応させた。
【0142】
反応18時間後に前記反応物を過量のエタノールに投入して黄色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間乾燥して重合体1.01gを得た(Mw=143,000、PDI=3.4、収率=84%)。
【0143】
(実施例5:開環重合および水素添加反応による光反応性重合体の製造)
Ar雰囲気下で250mlシュレンク(schlenk)フラスコに5−ノルボルネン−2−メタノール6.20g(50mmol)を入れた後、溶媒として精製されたトルエン34gを投入した。このフラスコを重合温度である80℃に維持した状態で助触媒であるトリエチルアルミニウム(triethyl aluminum)11.4mg(1.0mmol)を先に投入した。次に、タングステンヘキサクロライド(WCl8)とエタノールが1:3の比率で混合されている0.01M(mol/L)トルエン溶液1ml(WCl80.01mmol、エタノール0.03mmol)をフラスコに添加した。最後に、分子量調節剤である1−オクテン0.84g(7.5mmol)をフラスコに添加した後、18時間80℃で攪拌しながら反応させた。反応が終わった後、重合液に重合停止剤であるエチルビニルエーテル(ethyl vinyl ether)を少量滴下して5分間攪拌した。
【0144】
前記重合液を300mL高圧反応器に移送させた後、トリエチルアルミニウム(TEA)0.06mlを添加した。次に、グレイスラニーニッケル(grace raney Nickel(slurry phase in water))0.50gを添加した後、水素圧力を80atmに維持しながら2時間150℃で攪拌しながら反応させた。反応が完結した後、重合液をアセトンに滴下して沈殿させた後、これをろ過して70℃真空オーブンで15時間乾燥させた。その結果、5−ノルボルネン−2−メタノールの開環水素添加重合体(ring−opened hydrogenated polymer)5.62gを得た(収率=90.6%、Mw=69,900、PDI=4.92)。
【0145】
250mlの2−neckフラスコに前記5−ノルボルネン−2−メタノールの開環水素添加重合体(15g、0.121mol)、トリエチルアミン(アルドリッチ、61.2g、0.605mol)、THF50mlを入れた後、0℃のice−water bathで攪拌した。
【0146】
【化24】

【0147】
で表される4−ベンゾイルシンナモイルクロライド(36.0g、0.133mol、Fw=270.72)を60mlTHFに溶かした後、添加フラスコ(additional flask)を使用して徐々に入れた。10分後反応物を常温に上げた後、18時間さらに攪拌した。エチルアセテートで溶液を希釈させ分液漏斗で移した後、水とNaHCO3で数回洗浄した後、反応液をアセトンに滴下して沈殿させた後、これをろ過して70℃真空オーブンで15時間乾燥させた(収率:93%)。その結果、5−ノルボルネン−2−メチル−4’−ベンゾイルシンナメイト開環水素添加重合体が製造された。
【0148】
【化25】

【0149】
250mlシュレンク(schlenk)フラスコに単量体として
【0150】
【化26】

【0151】
0.34g(1.2mmol、Fw=284.36)、
【0152】
【化27】

【0153】
0.903g(2.4mmol、Fw=376.43)と溶媒として精製されたトルエン3mlを投入した。このフラスコに触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgとトリシクロヘキシルホスフィン7.76mg、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを添加し、18時間90℃で攪拌しながら反応させた。
【0154】
反応18時間後に前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間乾燥して重合体1.07gを得た(Mw=130,000、PDI=4.2、収率=86%)。
【0155】
【化28】

【0156】
250mlシュレンク(schlenk)フラスコに単量体として
【0157】
【化29】

【0158】
0.41g(1.2mmol、Fw=344.41)、
【0159】
【化30】

【0160】
0.903g(2.4mmol、Fw=376.43)と溶媒として精製されたトルエン3mlを投入した。このフラスコに触媒としてジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgとトリシクロヘキシルホスフィン7.76mg、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを添加し、18時間90℃で攪拌しながら反応させた。
【0161】
反応18時間後に前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間乾燥して重合体1.06gを得た(Mw=80,000、PDI=3.6、収率=81%)。
【0162】
【化31】

【0163】
250mlシュレンク(schlenk)フラスコに単量体として
【0164】
【化32】

【0165】
0.251g(0.6mmol、Fw=254.33)と溶媒として精製されたトルエン3mlを投入した。このフラスコに触媒にジクロロメタン1mlに溶かしたPd(OAc)26.73mgとトリシクロヘキシルホスフィン7.76mg、助触媒としてジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(dimethylanilinium tetrakiss(pentafluorophenyl)borate)6.53mgを添加し、18時間90℃で攪拌しながら反応させた。
【0166】
反応18時間後に前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した重合体を真空オーブンで60℃で24時間乾燥して重合体0.99gを得た(Mw=130,000、PDI=4.2、収率=86%)。
【0167】
(製造例5:液晶フィルムの製造)
前記実施例1および2と、比較例1で合成した光反応性重合体をそれぞれ使用し、以下の過程を通じて液晶フィルムを製造した。まず、前記光反応性重合体をc−ペンタノン(c−pentanone)溶媒に2重量%の濃度に溶解し、厚さ80マイクロンのポリエチレンテレフタレート(商品名:SH71、韓国のSKC社製造)基板上に、乾燥後の厚さが1000Åになるようにロールコーティング方法によりコーティングした。その後、80℃オーブンで3分間加熱してコーティング膜内部の溶媒を除去してコーティング膜を形成した。
【0168】
露光は200mW/cm2強さの高圧水銀灯を光源とし、Moxtek社のワイヤー−グリッド(Wire−grid)ポラライザを利用してフィルムの進行方向と垂直に偏光されたUVが出るようにしてコーティングされた膜に5秒間照射して配向を付与して配向膜を形成した。
【0169】
その後、UV重合性シアノビフェニルアクリレート95.0重量%と光開始剤としてイガキュア907(スイスのCiba−Geigy社製造)5.0重量%が混合された固形分を液晶溶液100重量部当たり液晶含量が25重量部になるようにトルエンに溶解して重合可能な反応性液晶溶液を製造した。
【0170】
製造された液晶溶液をロールコーティング方法により前記形成された光配向膜上に乾燥後の厚さが1μmになるようにコーティングした後、80℃で2分間乾燥して液晶分子が配向されるようにした。配向された液晶フィルムは200mW/cm2強さの高圧水銀灯を光源とする非偏光UVを照射して液晶の配向状態を固定化させて位相差フィルムを製造した。
【0171】
前記製造された位相差フィルムに対する配向性は偏光板間の光漏れをトランスミッタンス(transmittance)で測定して比較し、定量的な位相差値はAxoscan(Axomatrix社製造)を使用して測定した。
【0172】
<試験例1>
配向性の評価(光漏れ程度の評価)
配向膜の配向性は、実施例1、2および比較例1の光反応性重合体を使用して製造例5で製造された液晶位相差フィルムを垂直に配置された二つの偏光子の間で偏光顕微鏡で観察して評価した。配向性は1〜5の整数で示し、5に近いほど配向性が優れると評価した。
【0173】
透過度は厚さ80マイクロンのポリエチレンテレフタレート(商品名:SH71、韓国のSKC社製造)を基準に、垂直に配置された偏光子の間で、前記液晶位相差フィルムを入れ、入射された光が偏光板と位相差フィルムを通過してある程度透過するかを偏光顕微鏡で観察して光漏れの程度を測定した。このような光漏れ程度測定を通じた配向性の評価結果と共に、前記位相差値の測定結果を下記表1に示した。
【0174】
【表1】

【0175】
前記表1を参照すれば、実施例1および2の重合体で形成された位相差フィルムは、入射された光の波長に関係なく液晶の配向方向が均一であって優れた配向性を示し、フィルム面内位相差値が129nmおよび125nmであって液晶による異方性が良好に具現されることが確認された。
【0176】
これに比べて、比較例1の重合体で形成された位相差フィルムは、配向性が低下し、液晶の配向方向が揺れ、実施例1および2を用いた場合と同一な液晶の厚さにもかかわらず、位相差値が低いため、異方性が良好に具現されないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される光反応基を有する環状オレフィン化合物:
【化33】

前記化学式1中、
qは、0〜4の整数であり、
R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも一つは、下記の化学式1aで表されるラジカルであり、
化学式1aのラジカルであるものを除いた残りのR1〜R4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルキニル;置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6〜40のアリール;置換または非置換の炭素数5〜12のアリールアルキル;および酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素、およびホウ素の中で選択された少なくとも一つ以上を含む極性官能基からなる群より選択され、
前記R1〜R4が水素;ハロゲン;または極性官能基でない場合、R1とR2またはR3とR4の一つ以上の組み合わせが互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成するか、またはR1またはR2がR3およびR4のうちのいずれか一つと連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和脂肪族環、または炭素数6〜24の芳香族環を形成し、
【化34】

前記化学式1a中、
Aは、酸素、硫黄、−NH−、置換または非置換の炭素数1〜20のアルキレン、カルボニル、−(O=)C−O−、−O−C(=O)−、−CONH−および置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレンからなる群より選択され、
Bは、化学結合、酸素、硫黄、−NH−または1,4−フェニレンであり、
R9は、化学結合、置換または非置換の炭素数1〜20のアルキレン、置換または非置換の炭素数2〜20のアルケニレン、置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン、置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレン、置換または非置換の炭素数7〜15のアリールアルキレン、および置換または非置換の炭素数2〜20のアルキニレンからなる群より選択され、
C1は、非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数6〜40のアリーレン;非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数7〜15のアリールアルキレン;または14族、15族または16族ヘテロ元素を含む炭素数4〜40のヘテロアリーレンであり、
C2は、非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数6〜40のアリーレン;または14族、15族または16族ヘテロ元素を含む炭素数4〜40のヘテロアリーレンであり、
R10は、水素;ハロゲン;シアノ;ニトロ;−NCS;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;置換または非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ;および置換または非置換の炭素数6〜40のアリールからなる群より選択される。
【請求項2】
前記酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素、およびホウ素の中で選択された少なくとも一つ以上を含む極性官能基は以下に羅列された官能基からなる群より選択される、請求項1に記載の環状オレフィン化合物:
−OR6、−OC(O)OR6、−R5OC(O)OR6、−C(O)OR6、−R5C(O)OR6、−C(O)R6、−R5C(O)R6、−OC(O)R6、−R5OC(O)R6、−(R5O)p−OR6、−(OR5p−OR6、−C(O)−O−C(O)R6、−R5C(O)−O−C(O)R6、−SR6、−R5SR6、−SSR6、−R5SSR6、−S(=O)R6、−R5S(=O)R6、−R5C(=S)R6−、−R5C(=S)SR6、−R5SO36、−SO36、−R5N=C=S、−N=C=S、−NCO、−R5−NCO、−CN、−R5CN、−NNC(=S)R6、−R5NNC(=S)R6、−NO2、−R5NO2
【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

前記極性官能基中、pは、それぞれ独立して、1〜10の整数であり、
R5は、置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキレン;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニレン;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルキニレン;置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン;置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレン;置換または非置換の炭素数1〜20のカルボニルオキシレン;または置換または非置換の炭素数1〜20のアルコキシレンであり、
R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルキニル;置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6〜40のアリール;置換または非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;および置換または非置換の炭素数1〜20のカルボニルオキシからなる群より選択される。
【請求項3】
前記R5〜R8の各官能基は、非置換か、またはハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アリールアルキル、ハロアリールアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシからなる群より選択された官能基で置換されたものである、請求項2に記載の環状オレフィン化合物。
【請求項4】
下記の化学式2aまたは2bの繰り返し単位を含む光反応性重合体:
【化39】

前記化学式2aおよび2b中、それぞれ独立して、
mは、50〜5000であり、
qは、0〜4の整数であり、
R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも一つは、下記の化学式1aで表されるラジカルであり、
化学式1aのラジカルであるものを除いた残りのR1〜R4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルキニル;置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6〜40のアリール;置換または非置換の炭素数5〜12のアリールアルキル;および酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素、およびホウ素の中で選択された少なくとも一つ以上を含む極性官能基からなる群より選択され、
前記R1〜R4が水素;ハロゲン;または極性官能基でない場合、R1とR2またはR3とR4の一つ以上の組み合わせが互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成するか、またはR1またはR2がR3およびR4のうちのいずれか一つと連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和脂肪族環、または炭素数6〜24の芳香族環を形成し、
【化40】

前記化学式1a中、
Aは、酸素、硫黄、−NH−、置換または非置換の炭素数1〜20のアルキレン、カルボニル、−(O=)C−O−、−O−C(=O)−、−CONH−および置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレンからなる群より選択され、
Bは、化学結合、酸素、硫黄、−NH−または1,4−フェニレンであり、
R9は、化学結合、置換または非置換の炭素数1〜20のアルキレン、置換または非置換の炭素数2〜20のアルケニレン、置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン、置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレン、置換または非置換の炭素数7〜15のアリールアルキレン、および置換または非置換の炭素数2〜20のアルキニレンからなる群より選択され、
C1は、非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数6〜40のアリーレン;非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数7〜15のアリールアルキレン;または14族、15族または16族ヘテロ元素を含む炭素数4〜40のヘテロアリーレンであり、
C2は、非置換または、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群より選択された1種以上の官能基で置換された炭素数6〜40のアリーレン;または14族、15族または16族ヘテロ元素を含む炭素数4〜40のヘテロアリーレンであり、
R10は、水素;ハロゲン;シアノ;ニトロ;−NCS;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;置換または非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ;および置換または非置換の炭素数6〜40のアリールからなる群より選択される。
【請求項5】
10000〜1000000の重量平均分子量を有する、請求項4に記載の光反応性重合体。
【請求項6】
前記酸素、窒素、リン、硫黄、ケイ素、およびホウ素の中で選択された少なくとも一つ以上を含む極性官能基は以下に羅列された官能基からなる群より選択される、請求項4に記載の光反応性重合体:
−OR6、−OC(O)OR6、−R5OC(O)OR6、−C(O)OR6、−R5C(O)OR6、−C(O)R6、−R5C(O)R6、−OC(O)R6、−R5OC(O)R6、−(R5O)p−OR6、−(OR5p−OR6、−C(O)−O−C(O)R6、−R5C(O)−O−C(O)R6、−SR6、−R5SR6、−SSR6、−R5SSR6、−S(=O)R6、−R5S(=O)R6、−R5C(=S)R6−、−R5C(=S)SR6、−R5SO36、−SO36、−R5N=C=S、−N=C=S、−NCO、−R5−NCO、−CN、−R5CN、−NNC(=S)R6、−R5NNC(=S)R6、−NO2、−R5NO2

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

前記極性官能基中、pはそれぞれ独立して、1〜10の整数であり、
R5は、置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキレン;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニレン;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルキニレン;置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン;置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレン;置換または非置換の炭素数1〜20のカルボニルオキシレン;または置換または非置換の炭素数1〜20のアルコキシレンであり、
R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニル;置換または非置換の炭素数2〜20の線状または分枝状アルキニル;置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6〜40のアリール;置換または非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;および置換または非置換の炭素数1〜20のカルボニルオキシからなる群より選択される。
【請求項7】
10族の遷移金属を含む前触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下に、化学式1の単量体を付加重合して化学式2aの繰り返し単位を形成する段階を含む請求項4に記載の光反応性重合体の製造方法:
【化45】

前記化学式1中、q、R1、R2、R3、およびR4は、化学式2aで定義されたことと同意義である。
【請求項8】
4族、6族、または8族の遷移金属を含む前触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下に、化学式1の単量体を開環重合して化学式2bの繰り返し単位を形成する段階を含む請求項4に記載の光反応性重合体の製造方法:
【化46】

前記化学式1中、q、R1、R2、R3、およびR4は、化学式2bで定義されたことと同意義である。
【請求項9】
前記開環重合段階では、前記化学式1の単量体に含まれているノルボルネン環中の二重結合に水素が添加されて開環および重合が行われる、請求項8に記載の光反応性重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項4〜6のうちのいずれか一項に記載の光反応性重合体を含む配向膜。
【請求項11】
請求項10に記載の配向膜と、配向膜上の液晶層とを含む液晶位相差フィルム。
【請求項12】
請求項10に記載の配向膜を含む表示素子。

【図1】
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【公開番号】特開2012−72403(P2012−72403A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210179(P2011−210179)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】