説明

光受信器

【課題】複数の受光素子を用いる光空間伝送において、小型の波形等化回路を実現する。
【解決手段】入射される光信号を電気信号に変換するN個のアバランシェフォトダイオードと、前記N個のアバランシェフォトダイオードにバイアス電圧を与えるN個の電源部と、前記N個のアバランシェフォトダイオードから出力される電気信号のうち、(N−1)個の電気信号を遅延させる遅延部と、前記N個のアバランシェフォトダイオードから出力された電気信号を合成する合成部と、前記合成部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記N個の電源部の出力電圧を制御し、前記N個のアバランシェフォトダイオードの増倍率を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を無線信号として使用する光空間伝送技術等に関するものであり、特に、光受信時の受信波形を波形等化に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間伝送においては、自由空間中を光信号を無線伝送するため、大気のゆらぎなどに起因する波形歪や、光送信部、光受信部での生じる符号間干渉等に対するとして、波形等化方法として、光受信側で波形等化を行うことが考えられる。
【0003】
従来技術としては、受光後に、符号間干渉をもとに、波形等化を行う自動等価回路が提案されている。図7に、自動等価回路を示す。図7において、11はフォトダイオード、12は増幅器、13は等化器、14は比較器、15は符号間干渉量抽出回路、16は周波数帯域特性制御回路、17はスレッショルド制御回路、18はピーク検出器、19は比較器、Pは光信号である。
【0004】
受信される2値光信号Pは、フォトダイオード11で2値電気信号に変換された後、符号間干渉量抽出回路15で抽出される符号間干渉量に基づいて、周波数帯域特性制御回路16で電気信号波形の周波数特性が補正される。符号を低減するためには、透過周波数帯域を広げることが有効であるが、広げすぎると雑音量が増大してしまう問題がある。従って、符号間干渉と雑音の影響が共に低減できる周波数帯域条件を保つことが重要になる。
【0005】
一方、符号誤り率特性が最小となる最適スレッショルドレベルは、符号間干渉が存在する場合、ない場合に比較して、大きくなる方向に変化するため、符号間干渉量抽出回路15で抽出される符号間干渉量に基づいて、スレッショルド制御回路17で最適なスレッショルドレベルが設定される。
【0006】
このように、符号間干渉量抽出回路15で抽出される符号間干渉量に基づいて構成により、受信された2値光信号は、周波数帯域特性制御回路16で周波数帯域特性が制御され、スレッショルド制御回路17で最適なスレッショルドレベルで判定されるため、符号誤り率特性を良好に保つことができる。
【0007】
また、波形等価回路としては、タップフィルタを用いる構成がある。図8に、波形等化用に使用するタップ遅延線フィルタを示す模式図を示す。受光素子(図示せず)で受光した後、受信電気信号を異なる遅延時間差を持たせて複数に分岐し、それぞれにタップ係数を掛けた後加算することによって任意の周波数特性をもったフィルタを実現することができる。このタップ遅延線フィルタによる波形等化は、マイクロ波無線通信などですでに実用になっている技術であり、信頼性も高いと考えられる。本構成をとることにより、符号間干渉等を受けた波形を等化を行うことが可能となる。本フィルタを用いて、光ファイバ伝送時の偏波モード分散による劣化の補償を行う例が、J.H.Winters and M.A.Santoro,“Experimental Equalization
of Polarization Dispersion”,IEEE Photoni
cs Technology Letters,Vol.2,No.8,pp.591−593,1990に示されている。
【特許文献1】特公昭62−21419号公報
【非特許文献1】アイイーイーイー フォトニックス テクノロジー レターズ(IEEE Photonics Technology Letters),Vol.2,No.8,pp.591−593,1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光空間伝送を行う場合、伝送品質を確保する上で受光電力の向上が大変重要である。従って、受光部として、できるだけ大きな受光面積を確保することが望まれる。しかしながら、受光素子の受光面積と高速応答性はトレードオフであり、高速伝送を実現しようとすると、受光面積が小さい受光素子を使用する必要がある。従って、光空間伝送においては複数の受光素子を用いて受光する場合があり、この場合には、各受光素子に対して、帯域等価を行う必要があるため、回路規模が大きくなるといった問題があった。また、受光電力の確保のため、できるだけ大きな受光面積の受光素子を使用するためには、周波数帯域を犠牲にする必要があり、この面でも回路規模の小さな波形等価の実現が望まれていた。
【0009】
本発明は、光空間伝送等において、複数の受光素子を用いて光信号を受信する場合に、
回路規模を増大することなく、波形等価機能を実現する光受信器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の第1の光受信器は、入射される光信号に対し、入射量を変化させるN個の光減衰部と、前記光減衰部から出力される光信号を電気信号に変換するN個の受光部と、前記N個の受光部から出力される電気信号のうち、(N−1)個の電気信号を遅延させる遅延部と、前記N個の受光部から出力された電気信号を合成する合成部と、前記合成部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記N個の光減衰部の光減衰量を制御することを特徴としている。
【0011】
また、本発明第2の光受信器は、入射される光信号に対し、入射量を変化させるN個の光減衰部と、前記光減衰部から出力される光信号のうち、(N−1)個の光信号を遅延させる光遅延部と、前記N個の光減衰部から出力される光信号を、電気信号に変換するN個の受光部と、前記N個の受光部から出力された電気信号を合成する合成部と、前記合成部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記N個の光減衰部の光減衰量を制御することを特徴としている。
【0012】
また、本発明第3の光受信器は、入射される光信号に対し、入射量を変化させる2つの光減衰部と、前記光減衰部から出力される光信号を電気信号に変換する2つの受光部と、前記2つの受光部から出力される電気信号のうち、一方の電気信号を遅延させる遅延部と、前記2つの受光部から出力された電気信号を差動増幅する差動増幅部と、前記差動増幅部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と、前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記2つの光減衰部の光減衰量を制御することを特徴としている。
【0013】
また、本発明第4の光受信器は、入射される光信号に対し、入射量を変化させる2つの光減衰部と、前記光減衰部から出力される光信号のうち一方の光信号を遅延させる光遅延部と、前記2つの光減衰部から出力される光信号を、電気信号に変換する2つの受光部と、前記2つの受光部から出力された電気信号を差動増幅する差動増幅部と、前記差動増幅部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と、前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記2つの光減衰部の光減衰量を制御することを特徴としている。
【0014】
また、本発明第5の光受信器は、本発明第1〜4において、光減衰器が、MEMSミラーであること、を特徴としている。
【0015】
また、本発明第6の光受信器は、入射される光信号を電気信号に変換するN個のアバランシェフォトダイオードと、前記N個のアバランシェフォトダイオードにバイアス電圧を与えるN個の電源部と、前記N個のアバランシェフォトダイオードから出力される電気信号のうち、(N−1)個の電気信号を遅延させる遅延部と、前記N個のアバランシェフォトダイオードから出力された電気信号を合成する合成部と、前記合成部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と、前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記N個の電源部の出力電圧を制御し、前記N個のアバランシェフォトダイオードの増倍率を制御することを特徴としている。
【0016】
また、本発明第7の光受信器は、入射される光信号を、それぞれ遅延させる、(N−1)個の光遅延部と、前記(N−1)個の光遅延部から出力される光信号を電気信号に変換するN個のアバランシェフォトダイオードと、前記N個のアバランシェフォトダイオードにバイアス電圧を与えるN個の電源部と、前記N個のアバランシェフォトダイオードから出力された電気信号を合成する合成部と、前記差動増幅部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と、前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記N個の光減衰部の光減衰量を制御することを特徴としている。
【0017】
また、本発明第8の光受信器は、入射される光信号を電気信号に変換する2つの受光部と、前記2つの受光部のうち、少なくとも1つはアバランシェフォトダイオードであり、前記アバランシェフォトダイオードにバイアス電圧を与える少なくとも1つの電源部と、前記2つの受光部から出力される電気信号のうち、一方の電気信号を遅延させる遅延部と、前記2つの受光部から出力された電気信号を差動増幅する差動増幅部と、前記差動増幅部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と、前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記少なくとも1つの電源部の出力電圧を制御し、前記少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードの増倍率を制御することを特徴としている。
【0018】
また、本発明第9の光受信器は、入射される光信号を遅延させる光遅延部と、入射される光信号を電気信号に変換する2つの受光部と、前記2つの受光部のうち、少なくとも1つはアバランシェフォトダイオードであり、前記2つの受光部のうち、いずれかの受光部で受光する光信号は、前記光遅延部により遅延を受けた光信号であり、前記アバランシェフォトダイオードにバイアス電圧を与える少なくとも1つの電源部と、前記2つの受光部から出力された電気信号を差動増幅する差動増幅部と、前記差動増幅部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と、前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記少なくとも1つの電源部の出力電圧を制御し、前記少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードの増倍率を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本構成によって、複数の受光素子を用いて光信号を受信する場合に、回路規模を増大することなく、波形等価機能を実現する光受信器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光受信器の構成図である。図1において、111はアバランシェフォトダイオード(APD)、112は可変出力電源、113は制御部、114は受光素子、115は電源、116は遅延部、117は差動増幅器、118は波形モニタ、119は識別器、120は光受信器である。受光素子はフォトダイオード(PD)やAPDなどである。
【0022】
次に、図1を用いて光受信器の動作について説明する。入力された受信光信号は、可変出力電源112でバイアス電圧が与えられたAPD111、及び電源115で電圧バイアスが与えられた受光素子114で、それぞれ電気信号に変換される。一般に、APD111は、与えられるバイアス電圧に依存した増倍特性を有しており、フォトダイオードに比較して受光感度が良好である。その後、変換されたそれぞれの電気信号は差動増幅器117へ入力される。ここで、差動増幅器117に入力される前に、一方の電気信号に対し(ここでは受光素子114から出力される電気信号)、遅延が与えられる。差動増幅された電気信号は、識別器119に入力されて、識別結果として伝送されたデータを出力する。また、波形モニタ118は、差動増幅器117から出力される電気信号波形をモニタし、波形情報から符号間干渉やアイ開口などの波形劣化度合いを測定し、その結果を制御部113へ出力する。制御部113は、波形モニタ118からの出力を基にして、可変出力電源112の電源を制御し、APD111の増倍率を制御する。
【0023】
遅延部116で与えられる遅延量をTとすると、APD111から出力される電気信号と受光素子114から出力される電気信号が、それぞれ差動増幅器117に入力される時点では、Tだけずれた2つの波形として差動増幅されることになる。従って、2つの電気信号が重なる時間は、振幅成分減少するが、逆に波形の立ち上がり/立ち下がり部分が強調される形となるため、波形整形がなされることになる。
【0024】
また、APD111は増倍特性を有しており、APD111のバイアス電圧を可変にして増倍率を変化されることにより、2つの信号レベルには適宜差を発生させることが可能となる。これにより、波形の立ち上がり/立ち下がり部分の強調度合いも変化でき、波形劣化が異なる状況にも適宜対応が可能となる。
【0025】
以上のように、増倍率を有するAPDを利用し、差動増幅後の波形をモニタして、波形劣化に応じてAPDのバイアス電圧を可変にする構成とすることによって、従来必要であった、可変増幅器を不要とした波形等化を実現することができる。
【0026】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における光受信器の構成図である。図2において、図1と同等の機能を有するものについては、同一の番号を付与し、その説明を省略する。図2において、111−1〜Nはアバランシェフォトダイオード(APD)、112−1〜Nは可変出力電源、113−1〜Nは制御部、116−1〜(N−1)は遅延部、211は合成部である。図1に示す構成との主な違いは、受光素子をN個とし全てAPDの構成とした点と、それぞれのAPDに対して、増倍率を可変にする可変出力電源を設け、(N−1)個の遅延部を設け、全てのAPDから出力される電気信号に異なる遅延時間を与えて合成する構成とした点である。
【0027】
次に、図2を用いて光受信器の動作について説明する。入力された受信光信号は、可変出力電源112−1〜Nでバイアス電圧Vb1〜VbNが与えられたAPD111−1〜Nにおいて、それぞれ電気信号に変換される。その後、変換されたN個の電気信号のうち一つを除いた、(N−1)個の電気信号が、遅延部116−1〜(N−1)により、それぞれ異なる遅延量T〜(N−1)Tを受ける。その後、N個の電気信号が合成部211で合波される。合成された電気信号は、識別器119に入力されて、識別結果として伝送されたデータを出力する。また、波形モニタ118は、合成部211から出力される電気信号波形をモニタし、波形情報から符号間干渉やアイ開口などの波形劣化度合いを測定し、その結果を制御部113−1〜Nへ出力する。制御部113−1〜Nは、波形モニタ118からの出力を基にして、可変出力電源112−1〜Nの電源を制御し、APD111−1〜Nの増倍率を制御する。
【0028】
本実施の形態2の構成では、N個のAPD111−1〜Nを設け、可変出力電源112−1〜Nを用いてそれぞれのAPDに与えるバイアス電圧を可変にすることにより、それぞれのAPD増倍率を可変に出来る構成とするとともに、出力されるN個の電気信号を、それぞれ異なる遅延時間を与えて合成するための、遅延部116−1〜(N−1)を設けている。本構成とすることにより、光信号入力であるトランスバーサルフィルタ構成となっており、実施の形態1と比較して、より精度の高い波形等化を実現することができる。
【0029】
以上のように、増倍率を有するN個のAPDを利用し、光電気変換後のN個の電気信号を、それぞれ異なる遅延量を与えて合波し、合波後の波形劣化に応じてAPDのバイアス電圧を可変にする構成とすることによって、従来必要であった、N個の可変増幅器を不要とした波形等化を実現することができる。
【0030】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における光受信器の構成図である。図3において、図1と同等の機能を有するものについては、同一の番号を付与し、その説明を省略する。図1との主な違いは、APD111へ与えるバイアス電圧を、可変出力電源112ではなく、電源115から与える構成とするとともに、APDへ入射される光信号電力を減衰させる可変光減衰器311を設けた点である。
【0031】
次に、図3を用いて光受信器の動作について説明する。本実施の形態3の動作で、実施の形態1と異なる点は、可変出力電源112でAPDに与えるバイアス電圧を可変にすることで、増倍率を変化させる機能を、APDに入射する光電力そのものを可変光減衰器311の減衰量を変化させることにより実現した点である。
【0032】
従って、制御部113からが、波形モニタ118でモニタされた波形情報を基に、可変光減衰器311の減衰量を可変にすることにより、実施の形態1と同様の動作を実現することができる。
【0033】
また、可変光減衰器311として可変ミラーを用いた例を、図4に示す。図4は、本発明の実施の形態3における光空間伝送方法の構成図である。図4は、APD111への光結合の部分にのみ着目し、可変ミラー411を追加した構成である。可変ミラー411は、入射された受信光信号を反射して、受光素子に光信号を結合する構成であり、入射する受信光信号の方向に応じて、ミラーの方向が可変となるものである。入射する光信号の方向に応じて、ミラーの反射方向を可変にする構成は、光空間伝送における光軸調整手法として、一般的なものである。
【0034】
可変ミラー411の反射方向を可変にすることによって、APD111に入射する光信号の量も可変になることから、可変光減衰器として使用することが可能となる。
【0035】
図4に示すように、本実施の形態1で示した制御部113によって、可変ミラー411の反射方向を制御することによって、受光素子に入射する光信号の量を調整することにより、可変光減衰機能を実現することが可能となる。従って、光空間伝送における光軸調整手法として利用されている光軸調整構成を制御部113で制御することによって、可変光減衰機能としても使用することが可能となる。また、光軸調整構成として一般に使用されている可変ミラーを利用することにより、微小な構成で実現することが可能となる。
【0036】
以上のように、実施の形態1で示した可変出力電源の変わりに、可変光減衰器を設けて、APDへ入力する光信号電力を減衰する構成とすることによっても、波形等化機能を実現することができるとともに、従来光空間伝送において光軸調整を目的に使用されていた反射ミラーを、可変光減衰器として使用することによって、新たな追加構成なしに、従来必要であった可変増幅器を不要とした波形等化を実現することができる。
【0037】
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4における光受信器の構成図である。図5において、図3と同等の機能を有するものについては、同一の番号を付与し、その説明を省略する。図3との主な違いは、受光素子114から出力される電気信号に対して遅延を与える遅延部116の変わりに、光遅延部511を設けた点である。
【0038】
次に、図5を用いて光受信器の動作について説明する。本実施の形態4の動作で、実施の形態3と異なる点は、遅延部116を用いて電気信号に遅延を与える代わりに、光遅延部511を用いて光信号に遅延を与えている点である。光遅延部511としては、一旦光ファイバ、光導波路等に結合させて、所望の遅延時間を発生させる方法がある。また、まだ技術的には未完成な部分もあるが、フォトニック結晶構造を用いることにより、結晶中の伝搬速度を可変させることも可能である。伝送距離の調整ではなく、伝搬速度を制御することにより、所望の遅延時間を得ることができる。
【0039】
また、図5における、光遅延部511として光フィルタ611を用いた例を、図6に示す。図6で、入射される光信号は、波長多重された光信号であり、それぞれ同一データで変調されているものとする(図示せず)。入力された波長多重された光信号は光フィルタ611に入力され、回折格子型光フィルタを用いると、波長毎に異なる方向へ分離されることになる。従って、光フィルタ611に対して、APD111−1〜Nを異なる距離だけ離して設置することによって、異なる遅延量を与えることが可能となる。
【0040】
以上により、波形等化機能として、電気信号領域では合成するのみであり、光信号領域において遅延を与えること構成で実現することが可能となる。これにより、電気信号に比べ、高速な処理も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明にかかる光受信器は、増倍率を有するAPDを利用し、複数の電気信号を合成した後の波形をモニタして、波形劣化に応じてAPDのバイアス電圧を可変にする構成とすることによって、従来必要であった、可変増幅器を不要とした波形等化を実現することができる。これにより、光空間中での揺らぎや、光送受信器での波形歪の発生に対しても強く、小型でかつ良好な伝送品質を実現する光受信器等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1における光受信器の構成図
【図2】本発明の実施の形態2における光受信器の構成図
【図3】本発明の実施の形態3における光受信器の構成図
【図4】本発明の実施の形態3における可変光減衰器の例
【図5】本発明の実施の形態4における光受信器の構成図
【図6】本発明の実施の形態4における光遅延部の例
【図7】従来の、受光後に符号間干渉をもとに波形等化を行う自動等価回路
【図8】従来の、波形等化用に使用するタップ遅延線フィルタを示す模式図
【符号の説明】
【0043】
111−1〜N アバランシェフォトダイオード(APD)
112−1〜N 可変出力電源
113−1〜N 制御部
114 受光素子
115−1〜N 電源
116−1〜(N−1) 遅延部
117 差動増幅器
118 波形モニタ
119 識別器
120 光受信器
311 可変光減衰器
411 可変ミラー
511 光遅延部
611 光フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射される光信号に対し、入射量を変化させるN個の光減衰部と、
前記光減衰部から出力される光信号を電気信号に変換するN個の受光部と、
前記N個の受光部から出力される電気信号のうち、(N−1)個の電気信号を遅延させる遅延部と、
前記N個の受光部から出力された電気信号を合成する合成部と、
前記合成部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と
前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記N個の光減衰部の光減衰量を制御することを特徴とする、光受信器。
【請求項2】
入射される光信号に対し、入射量を変化させるN個の光減衰部と、
前記光減衰部から出力される光信号のうち、(N−1)個の光信号を遅延させる光遅延部と、
前記N個の光減衰部から出力される光信号を、電気信号に変換するN個の受光部と、
前記N個の受光部から出力された電気信号を合成する合成部と、
前記合成部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と
前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記N個の光減衰部の光減衰量を制御することを特徴とする、光受信器。
【請求項3】
入射される光信号に対し、入射量を変化させる2つの光減衰部と、
前記光減衰部から出力される光信号を電気信号に変換する2つの受光部と、
前記2つの受光部から出力される電気信号のうち、一方の電気信号を遅延させる遅延部と、
前記2つの受光部から出力された電気信号を差動増幅する差動増幅部と、
前記差動増幅部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と
前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記2つの光減衰部の光減衰量を制御することを特徴とする、光受信器。
【請求項4】
入射される光信号に対し、入射量を変化させる2つの光減衰部と、
前記光減衰部から出力される光信号のうち一方の光信号を遅延させる光遅延部と、
前記2つの光減衰部から出力される光信号を、電気信号に変換する2つの受光部と、
前記2つの受光部から出力された電気信号を差動増幅する差動増幅部と、
前記差動増幅部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と
前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記2つの光減衰部の光減衰量を制御することを特徴とする、光受信器。
【請求項5】
前記光減衰器が、MEMSミラーであることを特徴とする、請求項1または3に記載の光受信器。
【請求項6】
入射される光信号を電気信号に変換するN個のアバランシェフォトダイオードと、
前記N個のアバランシェフォトダイオードにバイアス電圧を与えるN個の電源部と、
前記N個のアバランシェフォトダイオードから出力される電気信号のうち、(N−1)個の電気信号を遅延させる遅延部と、
前記N個のアバランシェフォトダイオードから出力された電気信号を合成する合成部と、
前記合成部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と
前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記N個の電源部の出力電圧を制御し、前記N個のアバランシェフォトダイオードの増倍率を制御することを特徴とする、光受信器。
【請求項7】
入射される光信号を、それぞれ遅延させる、(N−1)個の光遅延部と、
前記(N−1)個の光遅延部から出力される光信号を電気信号に変換するN個のアバランシェフォトダイオードと、
前記N個のアバランシェフォトダイオードにバイアス電圧を与えるN個の電源部と、
前記N個のアバランシェフォトダイオードから出力された電気信号を合成する合成部と、
前記差動増幅部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と
前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記N個の光減衰部の光減衰量を制御することを特徴とする、光受信器。
【請求項8】
入射される光信号を電気信号に変換する2つの受光部と、
前記2つの受光部のうち、少なくとも1つはアバランシェフォトダイオードであり、
前記アバランシェフォトダイオードにバイアス電圧を与える少なくとも1つの電源部と、
前記2つの受光部から出力される電気信号のうち、一方の電気信号を遅延させる遅延部と、
前記2つの受光部から出力された電気信号を差動増幅する差動増幅部と、
前記差動増幅部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と
前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記少なくとも1つの電源部の出力電圧を制御し、前記少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードの増倍率を制御することを特徴とする、光受信器。
【請求項9】
入射される光信号を遅延させる光遅延部と、
入射される光信号を電気信号に変換する2つの受光部と、
前記2つの受光部のうち、少なくとも1つはアバランシェフォトダイオードであり、
前記2つの受光部のうち、いずれかの受光部で受光する光信号は、前記光遅延部により遅延を受けた光信号であり、
前記アバランシェフォトダイオードにバイアス電圧を与える少なくとも1つの電源部と、
前記2つの受光部から出力された電気信号を差動増幅する差動増幅部と、
前記差動増幅部から出力される電気信号波形をモニタする波形モニタ部と
前記波形モニタ部での波形情報を元に、前記少なくとも1つの電源部の出力電圧を制御し、前記少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードの増倍率を制御することを特徴とする、光受信器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−113387(P2008−113387A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296643(P2006−296643)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】