光吸収体をマクロファージに標的化することによるアテローム班の細胞特異的レーザー治療を提供するシステム及び方法
本発明に記載される装置及び方法は、アテローム班の細胞特異的レーザー治療を提供し、特に、プラークマクロファージ及び外来性ナノ粒子標的内に存在する内在性光吸収体を標的するシステム及び方法を提供する。1の例示的実施形態では、電磁放射は、外科構造に向けることができる。電磁照射は、(a)少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特徴を変更し、そして(b)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特徴の変更を最小限にし、及び/又は特徴を調節するように構成された少なくとも1の性質を有しうる。第一の細胞及び第二の細胞は互いに異なっており、第一細胞と第二細胞の特徴は、互いに異なっていることもあり、そして第一細胞及び/又は第二細胞は、少なくとも1のマクロファージの特徴を有し、そして少なくとも1の第一細胞及び/又は少なくとも1の第二細胞の特徴は温度であることもある。別の例示的実施形態によると、第一細胞及び第二細胞に付随する位置を決定することができる。例えば、電磁放射はその位置の近くに導くことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アテローム班の細胞特異的レーザー治療を提供するシステム及び方法、特にプラークマクロファージ内に存在する内在性光吸収体を標的とし、そして外来性ナノ粒子を標的するためのシステム及び方法に関する。さらに、本発明はさらに、貴金属ナノ粒子を生体内に分布させ、そしてマクロファージを多く含む組織においてナノ粒子分布に関連する光学形跡(optical signature)を評価するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2006年3月1日に出願された米国特許出願第60/778,336号、及び2006年3月17日に出願された米国特許出願第60/783,599号の優先権の利益に基いており、そして当該利益を主張する。これらの特許出願の開示は全て、本明細書に援用される。
【0003】
治療のための選択的な細胞標的化
周囲の組織の健康及び完全性を維持する一方で、選択的に限局された細胞のネクローシスを誘導するために特定の細胞を標的化する能力は、様々な疾患についてかなりの治療利得を有するであろう。癌細胞の初期検出及び選択的標的化は、腫瘍成長及び増殖を潜在的に制限する可能性があり、優れた臨床結果をもたらす(A.F. Chambersら、「Critical steps in hematogenous metastasis: a overview」 Surg Oncol Clin N Am. 2001; 10, pp. 243-55, viiを参照のこと)。腫瘍転移に関する因子を同定することに、かなりの努力が払われてきており、そして浸出癌細胞の同定及び選択的殺傷は、潜在的に腫瘍転移を制御することができる(A.F. Chambers, "The metastatic process: basic research and clinical implications," Oncol Res. 1999; 11, pp. 161-8を参照のこと)。選択的な細胞標的はまた、虚血性の心臓血管、脳血管及び末梢動脈疾患において潜在的な治療適用を有する。アテローム生成及び粥腫崩壊に関与するマクロファージの選択的殺傷(I. Tabas, "Consequences and therapeutic implications of macrophage apotosis in atherosclerosis: the importance of lesion stage and phagocytic efficiency," Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2005; 25, pp. 2255-64)は、虚血事象のリスクを結果として低減するプラーク安定についての治療利得を有しうる。骨、血管、皮膚、心臓及び肺に影響を与えるリューマチ様関節炎などの炎症性疾患において、浸潤マクロファージ及び炎症性細胞を選択的に殺傷することによる限局性の治療は、この衰弱をもたらす慢性疾患の進行を低減しうる。
【0004】
網膜の変性をもたらす多くの目の疾患は、網膜色素上皮(RPE)細胞の巣状増殖を伴う視覚受容体-桿状体及び錐状体の消失により特徴付けられる。周囲の細胞の生存性を維持しながら色素沈着したRPE細胞に選択的に損傷を与えることにより、かなりの治療利得を得ることができる(R. Brinkmann ら、"Origin of retinal pigment epithelium cell damage by pulsed laser irradiance in the nanocecond to microsecond time regimen" Lasers Surg Med. 2000; 27, pp. 451-64を参照のこと)。細胞の選択的標的は、血管種における毛細血管の治療、毛包の除去、にきび治療のための皮脂腺の選択的破壊、並びに皮下脂肪除去のための含脂肪細胞の選択的加熱について、皮膚科学においていくつもの適用を有する(D. Manstein ら、"Selective photothermolysis of lipid rich tissue. Annual meeting of Lasers in Surgery and Medicine," 2001; Supplement 13: Abs no. 17; and R.R. Andersonら、"Selective photothermolysis of cutaneous pigmentation by Q swithched Nd: YAG laser pulse at 1064, 532, and 355nm" J Invest Dermatol. 1989; 93, pp. 28-32を参照のこと)。
【0005】
選択的細胞標的化についての代表的な技術
近年、いくつもの研究グループが、疾患進行に関わる特定の細胞に限局治療をデリバリーする方法を開発するために、かなりの研究努力を払ってきた。選択的な細胞損傷を達成する代表的なアプローチとして、光活性化薬剤、ナノマテリアル及び細胞特異的治療用のレーザーに基く技術の使用が挙げられる。光線力学療法(PDT)は、光に晒された領域においてのみ細胞に毒性となる免疫結合性の光線感作物質を使用することができる(M. Del Governatore et al., "Experimental photoimmunotherapy of hepatic metastases of colorectal cancer with a 17.1A chlorin(e6) immunoconjugate," Cancer Res. 2000;60, pp. 4200-5を参照のこと)。特に、アテローム班に取り込まれる光感作物質モテキサフィン・ルテチウム(Motexafin lutetium)は、動物において光活性化された際にマクロファージ及び平滑筋細胞においてアポトーシスを引き起こすことができる(M. Hayase et al., "Photoangioplasty with local motexafin lutetium delivery reduces macrophages in a rabbit post-balloon injury model," Cardiovasc Res. 2001 ;49, pp. 449-55)。
【0006】
ナノテクノロジーの出現により、貴金属及び磁性蛍光ナノ粒子などの特定の物質、及び量子ドットは、細胞のin vivo同定を可能にし、そして治療用途に使用できる(G.M. Whitesides. "The 'right' size in nanobiotechnology," Nat Biotechnol. 2003;21, pp. 1161-5を参照のこと)。正確な生物学的機能を有するナノ粒子は、疾患診断のために、そして限局細胞治療のデリバリー薬剤のために開発されている(R. Weissleder et al., "Cell-specific targeting of nanoparticles by multivalent attachment of small molecules," Nat Biotechnol. 2005;23: 1418-23; 及び N. Tsapis, "Trojan particles: large porous carriers of nanoparticles for drug delivery," Proc Natl Acad Sci U S A. 2002;99, pp. 12001-5を参照のこと)。
【0007】
選択的細胞治療のためのレーザー光の使用は、外来性及び内在性の光吸収体を使用する様々な適用において調査されてきた。標的細胞により取り込まれたマイクロ粒子及びナノ粒子を用いて、ナノ秒のレーザーパルスをデリバリーすることにより高度に限局された細胞損傷を達成する(CM. Pitsillides et al., "Selective cell targeting with light-absorbing microparticles and nanoparticles," Biophys J. 2003;84, pp. 4023-32を参照のこと)。細胞中の内在性クロモフォアを近赤外光吸収体として使用することが、RPEの色素沈着細胞を選択的に損傷するために眼科において調査されてきており、そして皮膚科学においては、メラノサイトを短いレーザーパルスで選択的に標的化することは、色素沈着皮膚病変を治療するために示されてきた(R.R. Andersonら, "Selective photothermolysis of cutaneous pigmentation by Q-switched Nd: YAG laser pulses at 1064, 532, and 355 nm," J Invest Dermatol. 1989;93, pp. 28-32を参照のこと)。
【0008】
脆弱なアテローム班における選択的細胞標的化
アテローム生成は、全身の疾患であり、そしてアテローム班の崩壊は、急性冠不全症候群、虚血性脳卒中、及び末梢動脈疾患の前におこる主要なメカニズムである。マクロファージは、病変の開始から臨床提示まで、アテローム生成の全ての段階に関する(R. Ross, "Atherosclerosis-an inflammatory disease," N Engl J Med. 1999;340, pp. 115-26; and P. Libby, "Inflammation in atherosclerosis," Nature, 2002;420, pp. 868-74を参照のこと)。初期の病変では、マクロファージは、細胞質で脂質滴の蓄積を引き起こす脂質を貪食し、動脈泡細胞(arterial foam cell)の形成をもたらした。マクロファージのアポトーシスは、図1に示される様に、進行性の不安定な病変における血栓形成性の壊死中心をもたらし得る。
【0009】
急性心筋梗塞及び急性冠動脈イベントに関連する最も一般的なプラークタイプは、薄い線維性皮膜(thin-capped fibroatheroma)である。このタイプのプラークは、脂質を多く含む壊死中心(105)に重層する線維性皮膜(100)を含むことがある。マクロファージ(110及び115)は、これらの病変におけるプラークの不安定性に関与する細胞であり、マクロファージは、コラーゲンを分解するマトリクスメタロプロテイナーゼを分泌するので、線維性皮膜(100)を弱め、それにより線維性粥種崩壊を増大させる(P. Libby, "Inflammation in atherosclerosis," Nature, 2002;420, pp. 868-74を参照のこと)。さらに、マクロファージは、組織因子、既知の凝血促進剤を発現し、そして急性心筋梗塞及び急性冠不全症候群を患う患者の責任病変部位における管腔表面の近くに優先的に位置することが発見された(MacNeill et al., "Focal and multi-focal plaque macrophage distributions in patients with acute and stable presentations of coronary artery disease," J Am Coll Cardiol. 2004;44, pp. 972-9)。
【0010】
マクロファージが、一般的に、プラーク崩壊及び血栓形成において重要な役割を果たす可能性があるので、これらの細胞の数の低下は、潜在的にプラークを安定化させる。脂質を低下させるスタチンを使用する全身療法は、動脈狭窄の著しい変化を引き起こすことなく、粥腫崩壊から生じる急性冠動脈イベント及び脳卒中の発生を顕著に低下することができる。この治療利得は、マクロファージの数の低下から生じるプラークの安定及びそれに続く脂質プールにおけるコラーゲン原線維の蓄積により達成され得る(P. Libby et al., "Stabilization of atherosclerotic plaques: new mechanisms and clinical targets," Nat Med. 2002;8, pp. 1257-62を参照のこと)。全身スタチン治療と、上皮の完全性を維持しつつマクロファージの死滅を誘導する限局プラーク治療とを組み合わせることは、患者における粥腫崩壊及びそれに続く急性の冠動脈イベントの危険性を低減する可能性がある。
【0011】
金属ナノ粒子の投与を介した選択的な細胞標的化
貴金属ナノ粒子は、一般的にin situでマクロファージの可視性を高めることができる光学造影剤の1クラスを成す。低い平均レーザー出力並びにその高い生体適合性で、線形及び非線形光学プロセスの両方を高める銀及び金ナノ粒子の能力により、これらの粒子が生存中の患者において有用な光学造影剤でありうるということが示唆される。ナノ粒子は、様々な造影技術を高めるために造影剤として使用することができる。その小さい直径、5〜20ナノメートルは、細胞ジャンクション及び毛細血管を通した拡散を可能にする。MRI造影剤である酸化鉄の著しく小さい強磁性粒子(15〜20nm)(USPIO)は、内皮に浸透し、そしてアテローム班においてマクロファージにより選択的に貪食されるということが示された (S. G. Ruehm et al. "Magnetic resonance imaging of atherosclerotic plaque with ultrasmall superparamagnetic particles of iron oxide in hyperlipidemic rabbits," Circulation, 2001;103, pp. 415-22を参照のこと)。この具体的なデータに基き、アテローム班マクロファージも、貴金属ナノ粒子を選択的に取り込んでいる可能性がある。
【0012】
組織内に存在している場合、その高い弾性散乱効果のため、貴金属ナノ粒子は、共焦点顕微鏡及び光学コヒーレンストモグラフィーにおいて高い光学シグナルを提供しうる。さらに、共鳴励起された貴金属ナノ粒子に付随する非線形光学現象(nonlinear optical phenomena)は、診断のために使用されてもよい。レーザー場振動数が、貴金属ナノ粒子のプラスモン蛍光と一致する場合、大きな場増強(large field enhancement)が粒子表面の近くで達成され得る。この効果は、ラマン散乱断面積(raman scattering cross section)、2光子自己蛍光、及び吸着された分子の第2及び第3の高調波発生を有意に増加させるために使用することができる。これらの局所で高められるプロセスは、ナノ粒子分布並びに領域化学組成(regional chemical composition)の両方についての情報を提供する固有の光学痕跡を提供しうる。
従って、上に記載される欠点を克服する必要性が存在する。
【発明の開示】
【0013】
発明の対象及び要約
上記問題及び/又は欠点、並びに他の欠点を克服及び/又は対処するために、アテローム班の細胞特異的レーザー治療を促進するシステム及び方法を提供することができる。例えば、当該システム及び方法は、プラークマクロファージ内に存在する内在性の光吸収体を標的化し、そして外来性のナノ粒子標的化を提供することができる。さらに、当該システム及び方法は、貴金属ナノ粒子の生体分布及びマクロファージを多く含む組織においてナノ粒子の分布と関連する光学痕跡の評価を提供することもある。
【0014】
このような欠点は、本発明の例示的実施形態を用いて対処することができる。本発明の1の例示的実施形態では、電磁放射は、解剖構造に向けることができる。電磁放射は、(a)少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特性を変更し、そして(b)少なくとも第二細胞の変更を最小限にするか及び/又は少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性を変更するための少なくとも1の性質を有することがある。第一細胞及び第二細胞は、互いに異なっていることがあり、第一細胞及び第二細胞の特性は、互いに異なっていることもあり、そして第一細胞及び/又は第二細胞は、少なくとも1のマクロファージの特徴を有していることもあり、そして少なくとも1の第一細胞及び/又は少なくとも1の第二細胞の特性が温度であることもある。
【0015】
当該性質は、波長、平均出力、瞬間出力、パルス期間及び/又は合計露出期間を含むことがある。波長は、第一細胞内の化合物の吸収特徴の波長と凡そ同じでありうる。パルス期間は、およそ第一細胞内に限定される特性を引き起こすこともある。出力は、第一細胞の少なくとも一部において不可逆的な損傷を与える特性を引き起こすことができる。第一細胞の特徴は、当該第一細胞の少なくとも一部において損傷を引き起こす温度よりも高いこともある。第一細胞の当該部分への損傷は不可逆的であることもある。第一細胞は、血管壁内に位置してもよい。血管壁は、冠動脈の一部であることもある。
【0016】
本発明の別の例示的実施形態に従い、集成装置(arrangement)はカテーテル中で提供されることもある。マクロファージの特徴は、少なくとも1の脂質を含むリソゾームでありうる。脂質は、低密度リポタンパク質(LDL)、酸化LDL、コレステロール又はコレステロールエステルのうちの少なくとも1を含む。マクロファージの特徴は、壊死破砕物を含むリソゾーム、多数のリソゾーム及び/又は少なくとも1のナノ粒子であってもよい。請求項1に記載の装置。ナノ粒子は、細胞及び/又はリソゾーム内に提供されうる。単一のナノ粒子の大きさは、1〜20ナノメートルでありうる。ナノ粒子は、金属、貴金属、極小の常磁性酸化鉄、金及び/又は銀から構成されてもよい。ナノ粒子は、静脈内で対象に投与することができる。電磁放射がナノ粒子に適用されると、表面プラスモンが発生することがある。さらに別の本発明の例示的実施形態に従って、電磁放射は、対象の体外から送られ得る。さらに、提供されるマクロファージの特徴は、線維性皮膜内でありうる。
【0017】
さらに別の例示的実施形態に従って、第一細胞と第二細胞と関連する位置を、決定することができる。例えば、電磁放射は、その位置の近くに送ることができる。その位置は、解剖学的構造の少なくとも一部の画像に基いて決定することができる。集成装置は、その位置を決定するために使用することができ、集成装置として、コヒーレンス範囲の集成装置、スペクトル分析集成装置、熱造影集成装置、及び/又は分光学的集成装置が挙げられる。
【0018】
本発明のこれらの及び他の対象、特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲を考慮した場合、本発明の実施形態の以下の詳細な記載を読めば明らかである。
【0019】
図面について、他に記載されない限り、同じ参照番号及び文字が、図示された実施形態の同様の特徴、要素、成分又は部分を指すために使用される。さらに、図面を参照して本発明の対象が詳細に記載される一方で、本発明の対象が、例示的実施形態と併せて記載されている。添付の特許請求の範囲により定義される発明の対象の範囲及び本質から逸脱することなく記載された実施形態に変更及び改変がなされ得るということが意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
クロモフォアは、光を吸収する分子である。光化学的効果がない場合、光の吸収は加熱を誘導することができる。内在性のクロモフォアは、細胞に本来備わっているか又は細胞内に存在する生体光吸収分子である。これらの分子は、細胞を加熱し得るフォトン(200)を吸収することもある。内在性クロモフォアのある例は、水分子、脂質、細胞色素などであることもある。細胞死及び不可逆的なタンパク質変性は、"Physics of thermal processes in laser-tissue interaction," Phys Med Biol. 1990;35, pp. 1175-209に記載される様に60℃から70℃超の温度で生じ得る。光化学又は蒸気プロセスが存在しない場合、レーザー照射に応答して組織中に吸収されるエネルギーは、A. Vogel et al., "Mechanisms of pulsed laser ablation of biological tissues," Chem Rev. 2003; 103, pp. 577-644に記載されるように熱へと変換され得る。エネルギーが吸収されると、熱拡散によって標的からその冷めた周囲へと熱伝導が生じる。
【0021】
レーザーパラメーターに依存して、異なる熱誘導性の効果が生じうる。60℃の温度に達した場合、凝集及び不可逆的タンパク質の変性(205)が生じることがあり、これらは細胞死を引き起こすことができる。100℃を超える高温では、蒸発が生じる可能性がある。エネルギーが吸収されると、熱拡散により空間的に再分配され得る。このエネルギーが伝導するためにかかる時間は、標的クロモフォアの熱緩和時間(thermal relaxation time)に左右されることがある。レーザーパラメーターに依存して、熱損傷領域(205、210、307及び310(それぞれ図2及び3に示される))は、レーザーアブレーション領域の周囲におこることもあり、そして当該吸収されたエネルギーは、図2に示されるように熱伝導により空間的に再分配されることもある。これらの原理に基いて、以前は、レーザー血管形成として標識される技術が、狭窄動脈を広げるために導入された(W.H. Ahmed et al., "Excimer laser coronary angioplasty," Cardiol Clin. 1994;12, pp. 585-93を参照のこと)。この慣用的な方法では、プラークのデバルキングは、レーザーアブレーション、そしてそれに続く冠動脈におけるプラークの蒸発により行なわれた。レーザー血管形成術は、おそらくレーザーアブレーションの間の非特異的な組織加熱により引き起こされる内皮損傷のため、患者に高い率の再狭窄をもたらし、SMC増殖、新生内膜肥厚及び再狭窄のプロセスを開始した。
【0022】
マクロファージの選択的熱損傷
本発明の例示的実施形態は、内在性(例えば脂質)及び外来性(例えばナノ粒子及びマイクロ粒子)の光吸収体を標的化することにより、アテローム班においてレーザー誘導性熱損傷を引き起こすことによる、細胞特異的な治療システム及び方法に関する。本発明の例示的実施形態に従って使用されるサンプルアプローチは、レーザー血管形成を用いて以前から行なわれていたようにプラークのアブレーションを行なうことではなく、そして好ましくはマクロファージ内にのみ、例えば損傷の領域(307及び310(図3を参照のこと))に限定して細胞特異的に熱損傷を誘導し、そしてそれにより内皮及び周囲組織(215、220(図2を参照のこと))及び組織(320、305(図3を参照のこと))の健康を維持する。代表的な細胞特異的レーザー治療は、単独方法として、又はOCT、OFDI、SD-OCT、ラマン及びIR分光計、レーザースペクトルイメージング(LSI)、血管内視鏡、蛍光、蛍光分光法、時間分解蛍光、血管内超音波(IVUS)システム/方法、又は当該技術分野に知られている任意の他の造影システム/方法と併せて行われてもよい。本発明の例示的実施形態は、レーザーパラメーターの最適選択が、細胞特異的熱損傷を引き起こすために使用されうるという観察と関連しうる。
【0023】
以前に、組織内において空間的に限定された熱の局在を達成するための選択的特殊光温蒸散(selective photothermolysis)の概念が記載されてきた。この代表的な方法を用いて、選択的熱損傷は、レーザー(300(図3を参照のこと))の波長が優先的に標的クロモフォア(307)により吸収され、必要とされるか又は好ましい流速量(fluence)が当該クロモフォアを加熱するために十分高く、そしてレーザー暴露のパルス期間が、クロモフォアの熱緩和時間より短い場合に誘導することができる(R.R. Anderson et al., "Selective photothermolysis: precise microsurgery by selective absorption of pulsed radiation," Science. 1983;220, pp. 524-7を参照のこと。)。暴露のパルス期間(td)は、熱損傷の特異性又は限局に影響することができ、そして標的クロモフォアの熱緩和時間(tr)から決定されることもある。特異的熱損傷から非特異的熱損傷の遷移は、当該比率が以下の:(td/tr)≧1である場合に生じうる(R.R. Anderson et al., "Selective photothermolysis: precise microsurgery by selective absorption of pulsed radiation," Science. 1983;220, pp. 524-7を参照のこと)。直径d、及び熱拡散率κの球では、熱緩和時間は、tr=(d2/27κ)によりあたえることができる。
【0024】
周囲の組織の完全性を維持する一方で特定の細胞において標的化された熱損傷を誘導するために、標的クロモフォアが、所定のレーザー波長において、周囲の組織よりも高い光学吸収を有するということが好ましい。本発明の例示的実施形態に従って、特定の細胞集合内に熱を限定することは、脂質滴及びコレステロールエステルなどの、マクロファージ中に存在する様々な内在性の吸収体を光吸収体として標的化することにより達成することができる(CM. Pitsillidesら、"Selective cell targeting with light-absorbing microparticles and nanoparticles," Biophys J. 2003;84, pp. 4023-32を参照のこと)。
【0025】
図1に示されるように、プラークマクロファージ(105)は、多くの脂質を含んでおり、当該脂質はこれらの細胞の選択的に加熱し、そして破壊する一方で、周囲の支持細胞及びマトリクスの生存性を維持する内在性クロモフォアを提供しうる。脂質、コレステロール、又はコレステロールエステルなどの内在性吸収体を標的化することにより、選択的な熱損傷をプラークマクロファージに誘導することができる。本発明の特定の例示的実施形態に従うと、マクロファージ細胞死を誘導するための内在性クロモフォアを標的化することは、外来性薬剤又はクロモフォアを投与する必要性又は選好性を排除することができる。含脂質マクロファージ中の密封エネルギー付与は、脂質により強く吸収され、かつ周囲の水性組織により吸収されることがない波長で、そして吸収性の脂質に富むマクロファージからの熱伝導を低減するためにtr未満であるレーザーパルス期間で、レーザーエネルギーを用いることにより達成することができる。分光光度計計測を用いることにより、図4の典型的なグラフに示される様に、近赤外及び中赤外スペクトルにおいて915nm(400)、1205nm(410)、1715nm(420)及び2305nm(430)において、脂質に富む組織は水性組織よりも高い吸収を有する(D. Manstein et al., "Selective photothermolysis of lipid rich tissue," Annual meeting of Lasers in Surgery and Medicine. 2001; Supplement 13:Abs no 17を参照のこと)。皮下脂肪において選択的熱損傷を誘導する一方で、覆い被さっている表皮の健康を維持するために1206nmレーザーを利用することが可能でありうる。本発明のこの例示的実施形態では、内在性クロモフォア、例えば低密度リポタンパク質(LDL)、遊離コレステロール、コレステロールエステルなどの吸収バンドの近くのレーザー波長が、プラークマクロファージの選択的熱損傷を誘導するために使用することができる。
【0026】
マクロファージの細胞特異的治療の実施
本発明に従った細胞特異的レーザー治療の目的を達成するための1の例示的実施形態として、図5Aに示される様に選択的な熱限局を可能にする典型的な治療デリバリーシステムを挙げることができる。例えば、マクロファージ内の標的クロモフォア(例えば、脂質、コレステロール、コレステロールなど)の吸収バンドの近くの波長を有するレーザー源(510)は、細胞特異的治療に利用できる。レーザー(510)の出力(505)は、マクロファージの細胞死を達成するように制御することができる。レーザー誘導性熱限局を実施するために、レーザー源は、組織(520)を照射するように構成される。レーザー源(510)は、短いレーザーパルスのデリバリーを促進するために、音響光学変調器(507)、光学シャッターを取り込むことによりパルス運転を可能にするように構成することができる。レーザーパルス期間(td)は、その比(td/tr)≦1 [式中、trは熱緩和時間である]となるように調節される。
【0027】
本発明の1の例示的実施形態に従って、脂質含有マクロファージから構成される100μmの領域を使用することができ、そしてtrは、およそ2msに等しいこともある。短いパルス期間(〜10μs)を可能にするパルスレーザーシステムは、単一のマクロファージ(例えばtr=20μs)の標的化を提供することができる。この典型的なプロセスは、典型的な熱カメラ又は他の計測装置(510)を用いて直接熱可視化することにより(direct thermal visualization)、又は別の診断造影技術/方法、例えばレーザースペックルイメージング又は光周波数領域イメージングによりモニターすることができる。例えば、図5Bに示される様に、ヘリウムネオン光源(632nm)(540)からの可視照準光は、図5に示される様に平行処理レーザービームの中心を合わせるために使用することができる。レーザースペックルは、例えばレンズ(515)及びカメラ(510)を用いて記録することができる。スペックルパターンの時間変調は、典型的な選択的レーザーアブレーションを受けている組織(520)の温度に関連付けてもよい。
【0028】
選択的レーザーアブレーションについての適切な波長及び暴露時間の典型的な同定は、例えば細胞培養実験を用いて決定することができる。細胞培養は脂質に富むマクロファージのレーザー誘導性の熱損傷を評価するために行なうことができる。マクロファージ細胞は、DMEM、0.1%HEPES、1%ペニシリンストレプトマイシン、及び10%ウシ胎児血清を入れた75mlフラスコ中で培養することができ、そして10%CO2中でインキュベートした。この細胞がコンフルエントに達するまで培養し、そして細胞スクレーパーを用いてフラスコから剥がした。細胞を新たな培地中に10分の1に希釈して培養してマクロファージの活性化を予防することができる。細胞をヘモサイトメーターで計数し、そして10個の6ウェル培養プレートに移すことができる。例えば、5個のプレートでは、FITCで標識した低密度タンパク質(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)を加え、続いて最大4日間インキュベートすることができる。
【0029】
マクロファージによる蛍光標識されたLDLの取り込みは、蛍光顕微鏡により評価することができる。観察のために2つの対照細胞集合:a)LDLとインキュベートされていないマクロファージ、及びb)培養物中で増殖され、そしてLDLとインキュベートされないヒト冠状動脈平滑筋細胞株(HCASMC-c)を使用することができる。上記パルスレーザーアブレーションシステムを用いて、マクロファージ及び対照細胞培養プレートをレーザー照射にかけることができる。レーザー治療は、焦点化されたレーザービームをスキャンするか、又は平行化されたレーザービームを用いて広い領域を照射することにより行なうことができる。レーザーパルス期間及びパルスの数は、レーザー誘導性の細胞ネクローシスについてのこれらのパラメーターの影響を評価するために変化させることができる。代表的なレーザー治療の後に、細胞生存アッセイ(例えば、プロピオジン・ヨージド)は、熱損傷後の細胞死を評価するために使用することができる。細胞を顕微鏡を用いて評価することができ、そして細胞死の割合は、フローサイトメーターを用いて計数することにより定量することができる。LDLを貪食したマクロファージ集合における細胞死の割合を、対照細胞集合と比較することができる。細胞死の割合とレーザー暴露パラメーターとの相関は、回帰分析をもちいて評価することもできる。
【0030】
病理解剖で得られたヒト頚動脈、冠動脈、腸骨動脈及び大動脈の新たに回収されたサンプルを、熱限局の細胞特異性を評価するために使用することができる。標本を長軸方向に開くことができ、そして腔側を露出するようにピン止めすることができる。上に記載されるパルスレーザーアブレーションシステムを用いて、組織標本に照射することができる。レーザーパルス期間及びパルス回数は、アテローム班におけるマクロファージに富む領域内における熱限局についてのこれらのパラメーターの影響を評価するために変更することができる。レーザー暴露治療の後に、肉眼で見て切断し、そして組織学的処理のために調整することができる。ヘマトキシリン・エオシンを用い、そしてマクロファージについてCD68を用いて染色することができる。ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBTC)染色を使用して、熱損傷の程度を評価することができる。NBTCは、熱不安定性酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を陽性に染色する。LDH活性の低下は、熱誘導性細胞損傷の際に即座に生じ、そして細胞の死亡率と相関する(M.H. Khan et al., "Intradermally focused infrared laser pulses: thermal effects at defined tissue depths," Lasers Surg Med. 2005;36, pp. 270-280を参照のこと)。
【0031】
未染色組織と染色組織との間のボーダー領域を形態学的に計測して、熱損傷の領域を評価することができる。CD68染色部位は、NBTC染色部位と重ね合わせて(co-registered)、レーザー処理の細胞特異性を評価することができる。ネクローシスの細胞特異性の計量(metric)は、CD68で染色された領域とLDH染色が抜けている領域の間の割合を計測することにより見積もることができる。細胞特異性の計量と、レーザーパルス期間及びパルスの数との間の相関を計測することができる。完全に近い細胞特異性の計量を達成する最適レーザーパラメーターを決定することができる。こうして、冠動脈内リアルタイムスクリーニング及び治療装置の次なる開発のため、マクロファージに富む領域を同定し、そして選択的にレーザーエネルギーでそれらを破壊する最適治療レーザーパラメーターを決定することができる。この典型的な開発は、不安定なプラークの検出と、これらの病変の局所的治療との間に必要とされるギャップを埋めることができる。このような例示的実施形態は、さらに、様々な他の疾患における細胞特異的レーザー治療の基礎を与える。ここで内在性吸収体を標的化して異常細胞の選択的損傷を引き起こす一方、周囲の通常細胞の生存性を維持することができる。
【0032】
外来性ナノ粒子の投与による細胞特異的治療
本発明に記載されるシステム及び方法の別の例示的実施形態として、皮下、経口、又は静脈内の投与を介して外来性金属又は貴金属ナノ粒子を投与することが挙げられる。適切なサイズ、例えば好ましくは約5nm未満のナノ粒子は、血管内皮に浸透することがあり、そして目的の組織のマクロファージにより取り込まれうる。これらのナノ粒子に光を照射することができる。直接的な吸収又はこれらのナノ粒子に関連する表面プラスモン共鳴は、ナノ粒子を含む細胞を熱的に損傷させる局所的及び特異的加熱を誘導することができる。本発明のさらに別の例示的実施形態に従って、これらのナノ粒子は、選択的レーザー治療光の投与のために適切な位置を決定する様式で、技術、例えば非限定的に本明細書に言及される技術、により造影することができる。
【0033】
本発明に記載されるシステム及び方法のさらに別の例示的実施形態は、画像ガイド細胞特異的レーザー治療を提供することができる。これらの例示的システム及び方法では、組織の高解像度体積スクリーニングは、組織マクロファージを検出し、そしてマクロファージにより貪食される外来性クロモフォアを調べることにより、マクロファージ細胞死を誘導する治療レーザー照射の同時ガイダンスを可能にするために、光周波数領域造影(OFDI)などの造影技術を用いて行なうことができる。典型的なOFDI技術、システム及び方法が、in situで組織マクロファージの同定を可能にする広範囲の組織用量スクリーニングのために使用することができる(例えば、B.D. MacNeill et al., "Focal and multi-focal plaque macrophage distributions in patients with acute and stable presentations of coronary artery disease," J Am Coll Cardiol. 2004;44, pp. 972-9を参照のこと)。本発明に記載される例示的なシステム、カテーテル、及び方法は、治療レーザーエネルギーの同時マクロファージ検出及びデリバリーに提供することができる。投与された外来性クロモフォアは、貴金属ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、又は酸化鉄マイクロ粒子を含み、マクロファージ内のレーザー誘導性熱限局を誘導することができる一方で、周囲の組織の健康を維持することができる。
【0034】
熱限局を可能にするパルス操作を可能にする音響光学変調器で設定されたレーザー光源を使用することができるレーザー治療システム及び方法の例示的実施形態を提供することができる。光源の波長は、調査中のクロモフォアに依存して提供することができる。マクロファージ細胞(J774細胞株)は、増殖培地を用いて75mlフラスコ中で培養することができる。プラークマクロファージを模倣するために、蛍光標識された低密度リポタンパク質(LDL)(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)と最大4日間別々にインキュベートすることができる。LDLの取り込みは、蛍光顕微鏡を用いて評価することができる。
【0035】
内在性の選択的細胞治療について、細胞損傷を与える適切な暴露及び電力性能は、細胞培養研究をもちいて決定することができる。LDLを貪食したマクロファージの集合は、レーザー波長処理に合わされた貴金属ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、又は酸化鉄マイクロ粒子と別々にインキュベートされよう。例えば、2つの対照細胞集合:i)LDL又は外来性クロモフォアとインキュベートされないマクロファージ、及びii)培養物中で増殖されることもあり、そしてLDL又はナノ粒子とインキュベートされないヒト冠状動脈平滑筋細胞株(HCASMC-c)、を使用することができる。多くの又は全ての培養プレートをレーザー照射に晒すことができ、そして細胞死の割合は、プロピジウムヨージドアッセイを用いて治療することができる。レーザーパルス期間、放射電力、及びパルスの数を変化させて、全ての細胞集合におけるレーザー誘導性の細胞死についてのこれらのパラメーターの影響を評価するために変更されよう。
【0036】
ナノ粒子の生体内分布、並びに細胞特異的レーザー治療についての正確な暴露及び出力パラメーターを決定するために動物実験を利用することができる。本発明の1の例示的実施形態によれば、脂質異常症の動物のアテローム班内への金、銀、及びUSPIOナノ粒子の分布を決定することが好ましいこともある。例えば、この3種類のナノ粒子、金、銀、及びUSPIOの各々は、同様の実験デザインを用いて独立して試験することができる。例えば15匹のワタナベ遺伝性高脂血症(WHHL)ウサギ(P.M. McCabe et al. "Social environment influences the progression of atherosclerosis in the watanabe heritable hyperlipidemic rabbit," Circulation, 2002; 105, pp. 354-9; S. Ojio et al. "Considerable time from the onset of plaque rupture and/or thrombi until the onset of acute myocardial infarction in humans: coronary angiographic findings within 1 week before the onset of infarction," Circulation, 2000; 102, pp.2063-9; and K. Yokoya et al. "Process of progression of coronary artery lesions from mild or moderate stenosis to moderate or severe stenosis: A study based on four serial coronary arteriograms per year," Circulation, 1999; 100, pp. 903-9を参照のことI)(当該ウサギは、6月齢で活性大動脈プラークを発達させる)、及び5匹のニュージーランドホワイト(NZW)ウサギ(当該ウサギは各薬剤について対照として機能する)に薬剤を毎日静脈内投与することにより、各ナノ粒子についてこの実験を行なうことができる。追加の5匹のWHHLウサギに薬剤を投与しないで実験に用いて、各群についての疾患対照として用いた。
【0037】
例えば、多くの又は全てのウサギは、およそ1歳である。イソフルラン(1%)を用いて鎮静状態にしている間に耳介静脈を通して、ナノ粒子薬剤を最大5日間毎日、1〜2mg/kgの用量で投与する。ナノ粒子薬剤を投与されたWHHLウサギを、2、3、及び5日目に安楽死させた(各時点あたり3匹)。対照ウサギを4日目に安楽死させる。大動脈の回収前に、灌流固定を行なう。5μmの連続組織切片を作成し、そしてヘマトキシリン-エオシン、マッソン三重染色、CD68免疫ペルオキシダーゼ及びプルシアンブルーで染色する。ナノ粒子分布のパターンは、プラーク脆弱性、つまり脂質コア及びキャップ(100)の厚さの組織学的決定と関連することがある。さらに、各動脈標本の2mm切片は、電子顕微鏡評価にかけられて、ナノ粒子沈着の細胞内部位及び超微構造形態及び細胞内分布が決定される。
【0038】
本発明の他の例示的実施態様に従って、脂質異常症の動物のアテローム班中へのナノ粒子の取り込みに伴なう光学痕跡を計測することが好ましいことがある。例えば、安楽死の後で、かつ上に記載されるウサギの大動脈の灌流固定の前に、光学コヒーレンストモグラフィー(OCT)技術及び血管スコープ造影は、腸動脈から大動脈弓へ、0.5mm/秒の速度で自動プルバックを用いて行なうことができる。大動脈を開いてもよく、そして反射型共焦点顕微鏡観察が、各血管の長さにそって行なわれよう。各薬剤及び時間点について、処理されたウサギから得られた画像は、対照ウサギから得られた画像と形態学的及び分光学的に比較することができる。プラーク内の目的の領域、例えばキャップショルダー(cap shoulder)、キャップ本体及び脂質に富むコア、においてシグナル強度の定量的分析を行なって、アテローム班内で各薬剤の定量的分布を評価することができる。対照ウサギ計測に比べて固有の光学痕跡を伴なう組織位置を選択的に取得し、そして組織学観察及び電子顕微鏡観察のために処理されよう。
【0039】
本発明のさらに別の例示的実施形態によれば、ナノ粒子で標識されたマクロファージをin vivoで定量を行なうことが好ましい場合がある。最も光学的に高いコントラストを達成するナノ粒子金属は、10匹のWHHLウサギ(1歳)に、2mg/kgの用量で投与することができる。例えば、ナノ粒子を受容していない追加の5匹のWHHLウサギを対照として使用することができる。ナノ粒子投与の後の最適な日に(上に提供されるように決定される)、例示的なOCT造影技術を行なうことができ、そしてウサギを安楽死させた。例えば、ケタミン(35mg/kg)/キシラジン(7mg/kg)のIM注射を鼠径部の局所麻酔(リドカイン)を行なって投与することができる。
【0040】
角膜反射及び下顎反射へのウサギの応答の継続的な評価を、麻酔レベルをモニターするために用いる。左腸骨動脈をあらわにし、そして切除術をもちいて単離してもよい。6Fのイントロデューサーを左腸骨動脈に配置してもよい。0.014”ガイドワイヤーを動脈内に進める事ができる。蛍光顕微鏡ガイダンスの下で、OCTカテーテル(3F)をイントロデューサーを通して、ガイドワイヤー上をそして動脈内へと進めてもよい。動脈及び腸骨動脈の例示的OCT造影は、外科的特徴を用いて画像処理を行ってもよい。造影後、当該動物を安楽死させることもある。蛍光顕微鏡ガイダンスの下でOCTを用いて造影する一方、同定された外科的特長に隣接するプラークから組織学的切片を取得することができる。通常の様式で当該組織を処理することができる。OCT造影部位で4μmの切片を切り取り、そしてヘマトキシリン及びエオシン(H&E)及びマッソン三重染色で染色する。マクロファージの存在を可視化するために、マウス抗ウサギCD68モノクローナル抗体を使用することができる(Dako Corporation)。
【0041】
好ましいエピトープの免疫組織学的検出は、間接的なホースラディッシュペルオキシダーゼ技術に従って行なうことができる。デジタル化組織学及びOCT技術の両方を用いて、マクロファージ密度の計測は、各プラークの中心に位置する500×125μm(水平×垂直)の目的領域(ROI)を用いて得ることができる。CD68+の領域の割合は、デジタル化免疫組織化学染色されたスライドの対応するROI内を自動化2色分割を用いて定量することができる(100倍)。各プラークにおけるOCTシグナル強度及び標準偏差が、線形回帰を用いて対応位置から得たスライドからの疫組織化学染色と比較することができる。
【0042】
画像ガイド細胞特異的レーザー治療
細胞特異的レーザー治療は、単独技術/方法として、或いは標的アテローム班の診断用の造影又は顕微鏡技術/方法及び治療ガイダンスと組み合わせて行うことができる。レーザースペックル造影(例えば、図5に示される)、血管内視鏡、蛍光、蛍光分光法、時間分解蛍光、OCT、OFDI、SDOCT、ラマン又はIR分光法、IVUS、血管内MRIなどの技術を使用して、問題のプラークを検出し、そして細胞特異的レーザー治療をガイドすることができる。画像ガイド細胞特異的治療についての1の例示的実施形態は、治療を標的するためにマクロファージに富むプラークを検出するためのOCT及び/又は次世代OCT法、例えばOFDI又はスペクトルドメインOCT(SD-OCT)に関する。
【0043】
細胞特異的レーザー治療用のカテーテル
i. 単一の例示的光学ファイバーの実施形態
この例示的実施態様は、画像ガイダンスの使用を伴なわない包括的な細胞特異的レーザー治療のための独立型アプローチのための設計を含むことができる(図6)。この例示的実施形態では、パルスレーザー源からの光を光ファイバー(600)の近位末端に繋げることができる。光ファイバーは、外側シース(615)に囲まれている。ファイバーは、動脈壁のあらかじめ決定された位置に光(610)を照らし、そして焦点化するために、ビーム焦点化光学要素及び/又はビームリダイレクト光学要素が終端となる。レンズにより遠位末端のレーザー光を平行化又は焦点化することができる。レンズは、マイクロレンズ、GRINレンズなどでありうる。当該ファイバーは、血管壁(620)に沿って回転方向(616)又は長手方向(617)、又は他の方向のうちの少なくとも1の方向にビームをスキャンするように構成することができる。この実施形態では、治療は、良好なビーム品質を維持し、そして血液による治療光の散乱及び吸収を避けるために、血管内腔(618)のフラッシングをすることで行なうことができる。
【0044】
図7に示される別の例示的実施形態では、治療ファイバー(700)は、血管壁(710)に接触するか又はほぼ接触するように構成することができる。ファイバーは、回転方向(716)又は長手方向(717)又は他の方向のうちの少なくとも1の方向にスキャンすることができ、動脈の部分を治療することができる。図8に例示されるさらに他の例示的実施形態では、治療ファイバーは、バルーン(818)内に位置することもある。当該バルーン(818)は、治療を必要とする血管壁(820)の領域内で膨らませることができ、そしてファイバー(800)は、目的の領域を治療するために、回転方向(816)、長手軸方向(817)、又は他の方向のうちの少なくとも1の方向にスキャンすることができる。
【0045】
ii. 拡散カテーテル具体的実施形態
図9に示される様に本発明のさらなる例示的な実施形態に従って、標的クロモフォアに対応する光(910)は、バルーン、拡散光学要素(905)などを用いて、血管壁(920)の広い領域に渡り拡散させることができる。
【0046】
iii. 冷却を伴なった血管細胞特異的レーザー治療
当該クロモフォアの特異性が、目的の細胞の選択的破壊を許容するが、標的と周囲組織との間の吸収係数の差が十分に大きくない場合、組織の表面に巻き添え損傷が生じることがあり、内皮の損傷をもたらすことがある。この予期しない効果を避けるために、治療レーザーの照射の間に、冷却生理食塩水、水、D2O、血液又は他の冷却された液体を使用することによって、内皮表面を冷却することができる。この方法は、血管壁の奥深くに細胞特異的レーザー照射を安全に適用する一方で、内皮の生存度を維持することができる。その結果、カテーテルは、冷却物質で血管をフラッシングするための機構を付随させることができる。本発明の1の例示的実施態様では、この機構は、その中に治療カテーテルを含むガイドカテーテルを含むことができる。別の例示的実施形態では、治療カテーテルは、フラッシングポートを含んでもよい。さらに別の実施形態では、カテーテルは、当該冷却物質で満たされたバルーンを含む場合がある。
【0047】
iv. 画像ガイドカテーテルの例示的実施形態
本発明の具体的実施形態は、図10に示される様に、標的アテローム班を包括的に体積診断及びスクリーニングするための、並びにアテローム班におけるマクロファージの同時細胞特異的レーザー治療するためのプローブ設計を含むことができる。図10に示される例示的プローブ(1000)は、軸方向(1003)、回転方向(1005)、又は他の方向のうちの少なくとも1の方向に、動脈の管腔表面に渡ってスキャンするように設計することができる。治療レーザー光(1015)及び光学診断集成装置(1010)(例えば、レーザースペックル造影、血管内視鏡、OCT、OFDI、SDOCT、ラマン又はIR分光、蛍光、蛍光分光法、時間分解蛍光装置)の光は、同一又は別の光ファイバーを通してデリバリーすることができる。区別される診断及び治療ファイバーについて、各光ファイバーは、その独自の遠位光学要素を有して、その独自の光学診断及び治療ビーム直径を標的組織にもたらすことができる。1の実施形態では、光学ファイバー及び遠位光学要素は、ドライブシャフト中に入れられており、そしてカテーテルシース(1020)内に集成装置されている。カテーテルの近位末端は、回転接続部に繋がれており、そしてモーター駆動プルバックユニットに搭載されていてもよい。カテーテルの内部の要素を回転させ、そしてプルバックすることは、診断及び治療を同時に行なうことを可能にする。別の本発明の具体的実施形態では、診断及び治療用カテーテルは、動脈壁(1025)と接触するように構成することができる。ファイバーは、内皮に沿ってスキャンさせて、接触部位において診断を行い、そして細胞特異的治療を提供することができる。
【0048】
本発明に従った細胞特異的治療方法についてのある例示的実施形態が以下に記載され、そして図11〜13の典型的なフローダイアグラムに示されている。例えば、図11は、本発明に従った内在性治療法の例示的実施形態の例示的フローダイアグラムを示す。ここで、カテーテルは、開始され(ステップ1100)、そして動脈内に挿入され(ステップ1105)、そして適切な波長、暴露パラメーター、及び出力密度でレーザー照射を動脈へと導くことができる(ステップ1110)。プラークマクロファージと周囲の組織との間の大きい示差吸収を得るために波長を選択することができる。暴露及び出力パラメーターをこれらの細胞への熱限局を引き起こすために選択することができる。レーザー照射の前に血液を取り除いても取り除かなくてもよい。動脈を、所定の時間光に暴露させる。円周方向、長手方向、又は他の方向のうちの少なくとも1へとカテーテルを動かして(1115)、治療領域全体をスキャンすることができる。或いは、又はさらに、ビームスキャンを伴なわずに動脈を通して光が拡散されてもよい。ステップ1120では、例示的な方法が完了したかを決定され、そして完了していない場合当該方法が繰り返されてもよい(ステップ1122)。
【0049】
図12は、本発明に従った外来性治療法の例示的実施態様のフローダイアグラムを示す。ここで当該方法はステップ1200から開始し、そして貴金属ナノ粒子などの外来性物質が患者に投与される(ステップ1205)。適切な時間の後に(ステップ1210)、カテーテルを動脈内に挿入し(ステップ1215)、そして適切な波長、露出パラメーター、及び出力密度を有するレーザー照射が動脈内へと導かれる(ステップ1225)。波長は、プラークマクロファージと周囲の組織との間の吸収さが大きくなるように選択される。暴露及び出力パラメーターは、これらの細胞への熱限局に影響するために選択される。血液は、レーザー照射前に取り除かれてもよいし、又は取り除かれなくてもよい。動脈は、所定の時間のあいだ治療光に晒される。カテーテルは、円周、長手方向、又は他の方向のうちの少なくとも1の方向に動いて(ステップ1230)、治療領域全体をスキャンする。代わりに又はさらに、治療光は、スキャンすることなく動脈を通して拡散することもある。当該方法は繰り返されてもよい(ステップ1232)。
【0050】
図13は、治療の標的位置を測定し、そして治療が完了したときを決定するための画像ガイダンスを用いる、本発明に記載される一般的な細胞特異的治療方法の例示的実施形態のフローダイアグラムを示す。この例示的方法は、内在性吸収体(例えばボックス1307に提供される要素を伴なわない)、又は外来性吸収体(例えば、ボックス1307に提供される要素を伴なう)について実行することができる。当該方法は、ステップ1300から開始し、外来性薬剤はステップ1305で投与され、そして待機することができる(ステップ1310)。カテーテルは、動脈に挿入され(ステップ1315)、そして情報が動脈壁から回収されて、治療レーザー照射が分散されるかを決定することができる(ステップ1320)。
【0051】
例えば例示的な診断方法により決定される適切な例示的位置において、当該光は、適切な波長、暴露パラメーター、及び出力密度で壁を照射する(ステップ1325)。暴露及び出力パラメータは、これらの細胞への熱限局を与えるように選択される。動脈は、所定の時間又は同じ又は別の例示的診断方法(ステップ1330)により決定される時間の間治療光に暴露される場合がある。カテーテルは、周囲方向、長手軸方向、又は他の方向のうちの少なくとも1の方向に動かされて、治療領域全体をスキャンすることができる(ステップ1335)。当該方法が繰り返されてもよい(ステップ1332)。
【0052】
参考文献
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
ここまでの記載は、本発明の原理を単に例示しているものである。記載された実施形態についての様々な改変及び変更は、本明細書の教示の観点で当業者に明らかであろう。実際に、本発明の例示的実施形態に従った集成装置、システム、及び方法は、任意のOCTシステム、OFDIシステム、SD-OCTシステム、レーザースペックルイメージング(LSI)システム、又は他の造影システム、及び例えば2004年9月8日に出願された国際出願PCT/US2004/029148、2005年11月2日に出願された米国特許出願第11/266,779号、2004年7月9日に出願された米国特許出願第10/501,276号、2007年1月18日に出願された米国特許出願第11/624,334号、2005年9月29日に出願された米国特許出願第10/551,735号に記載されるシステムを用いることができるし、及び/又はこれらのシステムを実行することができる。これらの文献の開示は、本明細書にその全てが援用される。こうして、当業者が、本明細書に明確に示され又は記載されてはいないが、本発明の原理を具体化し、そうして本発明の本質及び範囲に含まれる多くのシステム、集成装置、及び方法を考案することができる。さらに、従来技術の知識は、本明細書には明確には援用されていないものについても、その全てを本明細書に明確に援用される。本明細書に参照される全ての特許文献が、その全てを本明細書に援用される。
【0057】
本発明のさらなる対象、特徴及び利点は、本発明の例示的実施形態を示す添付の図面と併せた本明細書の詳細な記載から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、ヒトアテローム班における脂質で満たされたマクロファージの典型的な顕微鏡画像である。
【図2】図2は、そのレーザー切除の間の組織の非特異的加熱の断面図である。
【図3】図3は、細胞特異的加熱のための細胞の断面図である。
【図4】図4は、脂肪と水との間で異なる吸収スペクトルを有する、スペクトル-光度計計測を用いて計測された皮下脂肪の選択的光吸収を示すグラフである。
【図5A−B】図5Aは、本発明の1の例示的実施形態に従った細胞特異的治療システムを示す模式図である。図5Bは、本発明の別の例示的実施形態に従った細胞特異的治療システムを示す模式図である。
【図6】図6は、本発明のある単一ファイバー実施形態に従った細胞特異的レーザー治療カテーテルの模式図である。
【図7】図7は、動脈壁の近くに位置する本発明の単一ファイバー実施形態に従った細胞特異的レーザー治療カテーテルの模式図である。
【図8】図8は、代表的なバルーン集成装置に包含される本発明の別の単一ファイバー実施形態に従った細胞特異的レーザー治療カテーテルの模式図である。
【図9】図9は、本発明の拡散ファイバー実施形態に従った細胞特異的レーザー治療カテーテルの模式図である。
【図10】図10は、本発明の画像によりガイドされるカテーテルに従った細胞特異的レーザー治療カテーテルの模式図である。
【図11】図11は、本発明に従った動脈の細胞特異的治療用の技術についての例示的実施形態のフローチャートをである。
【図12】図12は、本発明に従った外来性治療法の例示的実施形態のフローダイアグラムである。
【図13】図13は、治療する標的位置を決定するため及び/又は治療が完了したかを決定するために画像ガイダンスを用いた本発明に従った一般的な細胞特異的治療の例示的実施形態のフローダイアグラムである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アテローム班の細胞特異的レーザー治療を提供するシステム及び方法、特にプラークマクロファージ内に存在する内在性光吸収体を標的とし、そして外来性ナノ粒子を標的するためのシステム及び方法に関する。さらに、本発明はさらに、貴金属ナノ粒子を生体内に分布させ、そしてマクロファージを多く含む組織においてナノ粒子分布に関連する光学形跡(optical signature)を評価するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2006年3月1日に出願された米国特許出願第60/778,336号、及び2006年3月17日に出願された米国特許出願第60/783,599号の優先権の利益に基いており、そして当該利益を主張する。これらの特許出願の開示は全て、本明細書に援用される。
【0003】
治療のための選択的な細胞標的化
周囲の組織の健康及び完全性を維持する一方で、選択的に限局された細胞のネクローシスを誘導するために特定の細胞を標的化する能力は、様々な疾患についてかなりの治療利得を有するであろう。癌細胞の初期検出及び選択的標的化は、腫瘍成長及び増殖を潜在的に制限する可能性があり、優れた臨床結果をもたらす(A.F. Chambersら、「Critical steps in hematogenous metastasis: a overview」 Surg Oncol Clin N Am. 2001; 10, pp. 243-55, viiを参照のこと)。腫瘍転移に関する因子を同定することに、かなりの努力が払われてきており、そして浸出癌細胞の同定及び選択的殺傷は、潜在的に腫瘍転移を制御することができる(A.F. Chambers, "The metastatic process: basic research and clinical implications," Oncol Res. 1999; 11, pp. 161-8を参照のこと)。選択的な細胞標的はまた、虚血性の心臓血管、脳血管及び末梢動脈疾患において潜在的な治療適用を有する。アテローム生成及び粥腫崩壊に関与するマクロファージの選択的殺傷(I. Tabas, "Consequences and therapeutic implications of macrophage apotosis in atherosclerosis: the importance of lesion stage and phagocytic efficiency," Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2005; 25, pp. 2255-64)は、虚血事象のリスクを結果として低減するプラーク安定についての治療利得を有しうる。骨、血管、皮膚、心臓及び肺に影響を与えるリューマチ様関節炎などの炎症性疾患において、浸潤マクロファージ及び炎症性細胞を選択的に殺傷することによる限局性の治療は、この衰弱をもたらす慢性疾患の進行を低減しうる。
【0004】
網膜の変性をもたらす多くの目の疾患は、網膜色素上皮(RPE)細胞の巣状増殖を伴う視覚受容体-桿状体及び錐状体の消失により特徴付けられる。周囲の細胞の生存性を維持しながら色素沈着したRPE細胞に選択的に損傷を与えることにより、かなりの治療利得を得ることができる(R. Brinkmann ら、"Origin of retinal pigment epithelium cell damage by pulsed laser irradiance in the nanocecond to microsecond time regimen" Lasers Surg Med. 2000; 27, pp. 451-64を参照のこと)。細胞の選択的標的は、血管種における毛細血管の治療、毛包の除去、にきび治療のための皮脂腺の選択的破壊、並びに皮下脂肪除去のための含脂肪細胞の選択的加熱について、皮膚科学においていくつもの適用を有する(D. Manstein ら、"Selective photothermolysis of lipid rich tissue. Annual meeting of Lasers in Surgery and Medicine," 2001; Supplement 13: Abs no. 17; and R.R. Andersonら、"Selective photothermolysis of cutaneous pigmentation by Q swithched Nd: YAG laser pulse at 1064, 532, and 355nm" J Invest Dermatol. 1989; 93, pp. 28-32を参照のこと)。
【0005】
選択的細胞標的化についての代表的な技術
近年、いくつもの研究グループが、疾患進行に関わる特定の細胞に限局治療をデリバリーする方法を開発するために、かなりの研究努力を払ってきた。選択的な細胞損傷を達成する代表的なアプローチとして、光活性化薬剤、ナノマテリアル及び細胞特異的治療用のレーザーに基く技術の使用が挙げられる。光線力学療法(PDT)は、光に晒された領域においてのみ細胞に毒性となる免疫結合性の光線感作物質を使用することができる(M. Del Governatore et al., "Experimental photoimmunotherapy of hepatic metastases of colorectal cancer with a 17.1A chlorin(e6) immunoconjugate," Cancer Res. 2000;60, pp. 4200-5を参照のこと)。特に、アテローム班に取り込まれる光感作物質モテキサフィン・ルテチウム(Motexafin lutetium)は、動物において光活性化された際にマクロファージ及び平滑筋細胞においてアポトーシスを引き起こすことができる(M. Hayase et al., "Photoangioplasty with local motexafin lutetium delivery reduces macrophages in a rabbit post-balloon injury model," Cardiovasc Res. 2001 ;49, pp. 449-55)。
【0006】
ナノテクノロジーの出現により、貴金属及び磁性蛍光ナノ粒子などの特定の物質、及び量子ドットは、細胞のin vivo同定を可能にし、そして治療用途に使用できる(G.M. Whitesides. "The 'right' size in nanobiotechnology," Nat Biotechnol. 2003;21, pp. 1161-5を参照のこと)。正確な生物学的機能を有するナノ粒子は、疾患診断のために、そして限局細胞治療のデリバリー薬剤のために開発されている(R. Weissleder et al., "Cell-specific targeting of nanoparticles by multivalent attachment of small molecules," Nat Biotechnol. 2005;23: 1418-23; 及び N. Tsapis, "Trojan particles: large porous carriers of nanoparticles for drug delivery," Proc Natl Acad Sci U S A. 2002;99, pp. 12001-5を参照のこと)。
【0007】
選択的細胞治療のためのレーザー光の使用は、外来性及び内在性の光吸収体を使用する様々な適用において調査されてきた。標的細胞により取り込まれたマイクロ粒子及びナノ粒子を用いて、ナノ秒のレーザーパルスをデリバリーすることにより高度に限局された細胞損傷を達成する(CM. Pitsillides et al., "Selective cell targeting with light-absorbing microparticles and nanoparticles," Biophys J. 2003;84, pp. 4023-32を参照のこと)。細胞中の内在性クロモフォアを近赤外光吸収体として使用することが、RPEの色素沈着細胞を選択的に損傷するために眼科において調査されてきており、そして皮膚科学においては、メラノサイトを短いレーザーパルスで選択的に標的化することは、色素沈着皮膚病変を治療するために示されてきた(R.R. Andersonら, "Selective photothermolysis of cutaneous pigmentation by Q-switched Nd: YAG laser pulses at 1064, 532, and 355 nm," J Invest Dermatol. 1989;93, pp. 28-32を参照のこと)。
【0008】
脆弱なアテローム班における選択的細胞標的化
アテローム生成は、全身の疾患であり、そしてアテローム班の崩壊は、急性冠不全症候群、虚血性脳卒中、及び末梢動脈疾患の前におこる主要なメカニズムである。マクロファージは、病変の開始から臨床提示まで、アテローム生成の全ての段階に関する(R. Ross, "Atherosclerosis-an inflammatory disease," N Engl J Med. 1999;340, pp. 115-26; and P. Libby, "Inflammation in atherosclerosis," Nature, 2002;420, pp. 868-74を参照のこと)。初期の病変では、マクロファージは、細胞質で脂質滴の蓄積を引き起こす脂質を貪食し、動脈泡細胞(arterial foam cell)の形成をもたらした。マクロファージのアポトーシスは、図1に示される様に、進行性の不安定な病変における血栓形成性の壊死中心をもたらし得る。
【0009】
急性心筋梗塞及び急性冠動脈イベントに関連する最も一般的なプラークタイプは、薄い線維性皮膜(thin-capped fibroatheroma)である。このタイプのプラークは、脂質を多く含む壊死中心(105)に重層する線維性皮膜(100)を含むことがある。マクロファージ(110及び115)は、これらの病変におけるプラークの不安定性に関与する細胞であり、マクロファージは、コラーゲンを分解するマトリクスメタロプロテイナーゼを分泌するので、線維性皮膜(100)を弱め、それにより線維性粥種崩壊を増大させる(P. Libby, "Inflammation in atherosclerosis," Nature, 2002;420, pp. 868-74を参照のこと)。さらに、マクロファージは、組織因子、既知の凝血促進剤を発現し、そして急性心筋梗塞及び急性冠不全症候群を患う患者の責任病変部位における管腔表面の近くに優先的に位置することが発見された(MacNeill et al., "Focal and multi-focal plaque macrophage distributions in patients with acute and stable presentations of coronary artery disease," J Am Coll Cardiol. 2004;44, pp. 972-9)。
【0010】
マクロファージが、一般的に、プラーク崩壊及び血栓形成において重要な役割を果たす可能性があるので、これらの細胞の数の低下は、潜在的にプラークを安定化させる。脂質を低下させるスタチンを使用する全身療法は、動脈狭窄の著しい変化を引き起こすことなく、粥腫崩壊から生じる急性冠動脈イベント及び脳卒中の発生を顕著に低下することができる。この治療利得は、マクロファージの数の低下から生じるプラークの安定及びそれに続く脂質プールにおけるコラーゲン原線維の蓄積により達成され得る(P. Libby et al., "Stabilization of atherosclerotic plaques: new mechanisms and clinical targets," Nat Med. 2002;8, pp. 1257-62を参照のこと)。全身スタチン治療と、上皮の完全性を維持しつつマクロファージの死滅を誘導する限局プラーク治療とを組み合わせることは、患者における粥腫崩壊及びそれに続く急性の冠動脈イベントの危険性を低減する可能性がある。
【0011】
金属ナノ粒子の投与を介した選択的な細胞標的化
貴金属ナノ粒子は、一般的にin situでマクロファージの可視性を高めることができる光学造影剤の1クラスを成す。低い平均レーザー出力並びにその高い生体適合性で、線形及び非線形光学プロセスの両方を高める銀及び金ナノ粒子の能力により、これらの粒子が生存中の患者において有用な光学造影剤でありうるということが示唆される。ナノ粒子は、様々な造影技術を高めるために造影剤として使用することができる。その小さい直径、5〜20ナノメートルは、細胞ジャンクション及び毛細血管を通した拡散を可能にする。MRI造影剤である酸化鉄の著しく小さい強磁性粒子(15〜20nm)(USPIO)は、内皮に浸透し、そしてアテローム班においてマクロファージにより選択的に貪食されるということが示された (S. G. Ruehm et al. "Magnetic resonance imaging of atherosclerotic plaque with ultrasmall superparamagnetic particles of iron oxide in hyperlipidemic rabbits," Circulation, 2001;103, pp. 415-22を参照のこと)。この具体的なデータに基き、アテローム班マクロファージも、貴金属ナノ粒子を選択的に取り込んでいる可能性がある。
【0012】
組織内に存在している場合、その高い弾性散乱効果のため、貴金属ナノ粒子は、共焦点顕微鏡及び光学コヒーレンストモグラフィーにおいて高い光学シグナルを提供しうる。さらに、共鳴励起された貴金属ナノ粒子に付随する非線形光学現象(nonlinear optical phenomena)は、診断のために使用されてもよい。レーザー場振動数が、貴金属ナノ粒子のプラスモン蛍光と一致する場合、大きな場増強(large field enhancement)が粒子表面の近くで達成され得る。この効果は、ラマン散乱断面積(raman scattering cross section)、2光子自己蛍光、及び吸着された分子の第2及び第3の高調波発生を有意に増加させるために使用することができる。これらの局所で高められるプロセスは、ナノ粒子分布並びに領域化学組成(regional chemical composition)の両方についての情報を提供する固有の光学痕跡を提供しうる。
従って、上に記載される欠点を克服する必要性が存在する。
【発明の開示】
【0013】
発明の対象及び要約
上記問題及び/又は欠点、並びに他の欠点を克服及び/又は対処するために、アテローム班の細胞特異的レーザー治療を促進するシステム及び方法を提供することができる。例えば、当該システム及び方法は、プラークマクロファージ内に存在する内在性の光吸収体を標的化し、そして外来性のナノ粒子標的化を提供することができる。さらに、当該システム及び方法は、貴金属ナノ粒子の生体分布及びマクロファージを多く含む組織においてナノ粒子の分布と関連する光学痕跡の評価を提供することもある。
【0014】
このような欠点は、本発明の例示的実施形態を用いて対処することができる。本発明の1の例示的実施形態では、電磁放射は、解剖構造に向けることができる。電磁放射は、(a)少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特性を変更し、そして(b)少なくとも第二細胞の変更を最小限にするか及び/又は少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性を変更するための少なくとも1の性質を有することがある。第一細胞及び第二細胞は、互いに異なっていることがあり、第一細胞及び第二細胞の特性は、互いに異なっていることもあり、そして第一細胞及び/又は第二細胞は、少なくとも1のマクロファージの特徴を有していることもあり、そして少なくとも1の第一細胞及び/又は少なくとも1の第二細胞の特性が温度であることもある。
【0015】
当該性質は、波長、平均出力、瞬間出力、パルス期間及び/又は合計露出期間を含むことがある。波長は、第一細胞内の化合物の吸収特徴の波長と凡そ同じでありうる。パルス期間は、およそ第一細胞内に限定される特性を引き起こすこともある。出力は、第一細胞の少なくとも一部において不可逆的な損傷を与える特性を引き起こすことができる。第一細胞の特徴は、当該第一細胞の少なくとも一部において損傷を引き起こす温度よりも高いこともある。第一細胞の当該部分への損傷は不可逆的であることもある。第一細胞は、血管壁内に位置してもよい。血管壁は、冠動脈の一部であることもある。
【0016】
本発明の別の例示的実施形態に従い、集成装置(arrangement)はカテーテル中で提供されることもある。マクロファージの特徴は、少なくとも1の脂質を含むリソゾームでありうる。脂質は、低密度リポタンパク質(LDL)、酸化LDL、コレステロール又はコレステロールエステルのうちの少なくとも1を含む。マクロファージの特徴は、壊死破砕物を含むリソゾーム、多数のリソゾーム及び/又は少なくとも1のナノ粒子であってもよい。請求項1に記載の装置。ナノ粒子は、細胞及び/又はリソゾーム内に提供されうる。単一のナノ粒子の大きさは、1〜20ナノメートルでありうる。ナノ粒子は、金属、貴金属、極小の常磁性酸化鉄、金及び/又は銀から構成されてもよい。ナノ粒子は、静脈内で対象に投与することができる。電磁放射がナノ粒子に適用されると、表面プラスモンが発生することがある。さらに別の本発明の例示的実施形態に従って、電磁放射は、対象の体外から送られ得る。さらに、提供されるマクロファージの特徴は、線維性皮膜内でありうる。
【0017】
さらに別の例示的実施形態に従って、第一細胞と第二細胞と関連する位置を、決定することができる。例えば、電磁放射は、その位置の近くに送ることができる。その位置は、解剖学的構造の少なくとも一部の画像に基いて決定することができる。集成装置は、その位置を決定するために使用することができ、集成装置として、コヒーレンス範囲の集成装置、スペクトル分析集成装置、熱造影集成装置、及び/又は分光学的集成装置が挙げられる。
【0018】
本発明のこれらの及び他の対象、特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲を考慮した場合、本発明の実施形態の以下の詳細な記載を読めば明らかである。
【0019】
図面について、他に記載されない限り、同じ参照番号及び文字が、図示された実施形態の同様の特徴、要素、成分又は部分を指すために使用される。さらに、図面を参照して本発明の対象が詳細に記載される一方で、本発明の対象が、例示的実施形態と併せて記載されている。添付の特許請求の範囲により定義される発明の対象の範囲及び本質から逸脱することなく記載された実施形態に変更及び改変がなされ得るということが意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
クロモフォアは、光を吸収する分子である。光化学的効果がない場合、光の吸収は加熱を誘導することができる。内在性のクロモフォアは、細胞に本来備わっているか又は細胞内に存在する生体光吸収分子である。これらの分子は、細胞を加熱し得るフォトン(200)を吸収することもある。内在性クロモフォアのある例は、水分子、脂質、細胞色素などであることもある。細胞死及び不可逆的なタンパク質変性は、"Physics of thermal processes in laser-tissue interaction," Phys Med Biol. 1990;35, pp. 1175-209に記載される様に60℃から70℃超の温度で生じ得る。光化学又は蒸気プロセスが存在しない場合、レーザー照射に応答して組織中に吸収されるエネルギーは、A. Vogel et al., "Mechanisms of pulsed laser ablation of biological tissues," Chem Rev. 2003; 103, pp. 577-644に記載されるように熱へと変換され得る。エネルギーが吸収されると、熱拡散によって標的からその冷めた周囲へと熱伝導が生じる。
【0021】
レーザーパラメーターに依存して、異なる熱誘導性の効果が生じうる。60℃の温度に達した場合、凝集及び不可逆的タンパク質の変性(205)が生じることがあり、これらは細胞死を引き起こすことができる。100℃を超える高温では、蒸発が生じる可能性がある。エネルギーが吸収されると、熱拡散により空間的に再分配され得る。このエネルギーが伝導するためにかかる時間は、標的クロモフォアの熱緩和時間(thermal relaxation time)に左右されることがある。レーザーパラメーターに依存して、熱損傷領域(205、210、307及び310(それぞれ図2及び3に示される))は、レーザーアブレーション領域の周囲におこることもあり、そして当該吸収されたエネルギーは、図2に示されるように熱伝導により空間的に再分配されることもある。これらの原理に基いて、以前は、レーザー血管形成として標識される技術が、狭窄動脈を広げるために導入された(W.H. Ahmed et al., "Excimer laser coronary angioplasty," Cardiol Clin. 1994;12, pp. 585-93を参照のこと)。この慣用的な方法では、プラークのデバルキングは、レーザーアブレーション、そしてそれに続く冠動脈におけるプラークの蒸発により行なわれた。レーザー血管形成術は、おそらくレーザーアブレーションの間の非特異的な組織加熱により引き起こされる内皮損傷のため、患者に高い率の再狭窄をもたらし、SMC増殖、新生内膜肥厚及び再狭窄のプロセスを開始した。
【0022】
マクロファージの選択的熱損傷
本発明の例示的実施形態は、内在性(例えば脂質)及び外来性(例えばナノ粒子及びマイクロ粒子)の光吸収体を標的化することにより、アテローム班においてレーザー誘導性熱損傷を引き起こすことによる、細胞特異的な治療システム及び方法に関する。本発明の例示的実施形態に従って使用されるサンプルアプローチは、レーザー血管形成を用いて以前から行なわれていたようにプラークのアブレーションを行なうことではなく、そして好ましくはマクロファージ内にのみ、例えば損傷の領域(307及び310(図3を参照のこと))に限定して細胞特異的に熱損傷を誘導し、そしてそれにより内皮及び周囲組織(215、220(図2を参照のこと))及び組織(320、305(図3を参照のこと))の健康を維持する。代表的な細胞特異的レーザー治療は、単独方法として、又はOCT、OFDI、SD-OCT、ラマン及びIR分光計、レーザースペクトルイメージング(LSI)、血管内視鏡、蛍光、蛍光分光法、時間分解蛍光、血管内超音波(IVUS)システム/方法、又は当該技術分野に知られている任意の他の造影システム/方法と併せて行われてもよい。本発明の例示的実施形態は、レーザーパラメーターの最適選択が、細胞特異的熱損傷を引き起こすために使用されうるという観察と関連しうる。
【0023】
以前に、組織内において空間的に限定された熱の局在を達成するための選択的特殊光温蒸散(selective photothermolysis)の概念が記載されてきた。この代表的な方法を用いて、選択的熱損傷は、レーザー(300(図3を参照のこと))の波長が優先的に標的クロモフォア(307)により吸収され、必要とされるか又は好ましい流速量(fluence)が当該クロモフォアを加熱するために十分高く、そしてレーザー暴露のパルス期間が、クロモフォアの熱緩和時間より短い場合に誘導することができる(R.R. Anderson et al., "Selective photothermolysis: precise microsurgery by selective absorption of pulsed radiation," Science. 1983;220, pp. 524-7を参照のこと。)。暴露のパルス期間(td)は、熱損傷の特異性又は限局に影響することができ、そして標的クロモフォアの熱緩和時間(tr)から決定されることもある。特異的熱損傷から非特異的熱損傷の遷移は、当該比率が以下の:(td/tr)≧1である場合に生じうる(R.R. Anderson et al., "Selective photothermolysis: precise microsurgery by selective absorption of pulsed radiation," Science. 1983;220, pp. 524-7を参照のこと)。直径d、及び熱拡散率κの球では、熱緩和時間は、tr=(d2/27κ)によりあたえることができる。
【0024】
周囲の組織の完全性を維持する一方で特定の細胞において標的化された熱損傷を誘導するために、標的クロモフォアが、所定のレーザー波長において、周囲の組織よりも高い光学吸収を有するということが好ましい。本発明の例示的実施形態に従って、特定の細胞集合内に熱を限定することは、脂質滴及びコレステロールエステルなどの、マクロファージ中に存在する様々な内在性の吸収体を光吸収体として標的化することにより達成することができる(CM. Pitsillidesら、"Selective cell targeting with light-absorbing microparticles and nanoparticles," Biophys J. 2003;84, pp. 4023-32を参照のこと)。
【0025】
図1に示されるように、プラークマクロファージ(105)は、多くの脂質を含んでおり、当該脂質はこれらの細胞の選択的に加熱し、そして破壊する一方で、周囲の支持細胞及びマトリクスの生存性を維持する内在性クロモフォアを提供しうる。脂質、コレステロール、又はコレステロールエステルなどの内在性吸収体を標的化することにより、選択的な熱損傷をプラークマクロファージに誘導することができる。本発明の特定の例示的実施形態に従うと、マクロファージ細胞死を誘導するための内在性クロモフォアを標的化することは、外来性薬剤又はクロモフォアを投与する必要性又は選好性を排除することができる。含脂質マクロファージ中の密封エネルギー付与は、脂質により強く吸収され、かつ周囲の水性組織により吸収されることがない波長で、そして吸収性の脂質に富むマクロファージからの熱伝導を低減するためにtr未満であるレーザーパルス期間で、レーザーエネルギーを用いることにより達成することができる。分光光度計計測を用いることにより、図4の典型的なグラフに示される様に、近赤外及び中赤外スペクトルにおいて915nm(400)、1205nm(410)、1715nm(420)及び2305nm(430)において、脂質に富む組織は水性組織よりも高い吸収を有する(D. Manstein et al., "Selective photothermolysis of lipid rich tissue," Annual meeting of Lasers in Surgery and Medicine. 2001; Supplement 13:Abs no 17を参照のこと)。皮下脂肪において選択的熱損傷を誘導する一方で、覆い被さっている表皮の健康を維持するために1206nmレーザーを利用することが可能でありうる。本発明のこの例示的実施形態では、内在性クロモフォア、例えば低密度リポタンパク質(LDL)、遊離コレステロール、コレステロールエステルなどの吸収バンドの近くのレーザー波長が、プラークマクロファージの選択的熱損傷を誘導するために使用することができる。
【0026】
マクロファージの細胞特異的治療の実施
本発明に従った細胞特異的レーザー治療の目的を達成するための1の例示的実施形態として、図5Aに示される様に選択的な熱限局を可能にする典型的な治療デリバリーシステムを挙げることができる。例えば、マクロファージ内の標的クロモフォア(例えば、脂質、コレステロール、コレステロールなど)の吸収バンドの近くの波長を有するレーザー源(510)は、細胞特異的治療に利用できる。レーザー(510)の出力(505)は、マクロファージの細胞死を達成するように制御することができる。レーザー誘導性熱限局を実施するために、レーザー源は、組織(520)を照射するように構成される。レーザー源(510)は、短いレーザーパルスのデリバリーを促進するために、音響光学変調器(507)、光学シャッターを取り込むことによりパルス運転を可能にするように構成することができる。レーザーパルス期間(td)は、その比(td/tr)≦1 [式中、trは熱緩和時間である]となるように調節される。
【0027】
本発明の1の例示的実施形態に従って、脂質含有マクロファージから構成される100μmの領域を使用することができ、そしてtrは、およそ2msに等しいこともある。短いパルス期間(〜10μs)を可能にするパルスレーザーシステムは、単一のマクロファージ(例えばtr=20μs)の標的化を提供することができる。この典型的なプロセスは、典型的な熱カメラ又は他の計測装置(510)を用いて直接熱可視化することにより(direct thermal visualization)、又は別の診断造影技術/方法、例えばレーザースペックルイメージング又は光周波数領域イメージングによりモニターすることができる。例えば、図5Bに示される様に、ヘリウムネオン光源(632nm)(540)からの可視照準光は、図5に示される様に平行処理レーザービームの中心を合わせるために使用することができる。レーザースペックルは、例えばレンズ(515)及びカメラ(510)を用いて記録することができる。スペックルパターンの時間変調は、典型的な選択的レーザーアブレーションを受けている組織(520)の温度に関連付けてもよい。
【0028】
選択的レーザーアブレーションについての適切な波長及び暴露時間の典型的な同定は、例えば細胞培養実験を用いて決定することができる。細胞培養は脂質に富むマクロファージのレーザー誘導性の熱損傷を評価するために行なうことができる。マクロファージ細胞は、DMEM、0.1%HEPES、1%ペニシリンストレプトマイシン、及び10%ウシ胎児血清を入れた75mlフラスコ中で培養することができ、そして10%CO2中でインキュベートした。この細胞がコンフルエントに達するまで培養し、そして細胞スクレーパーを用いてフラスコから剥がした。細胞を新たな培地中に10分の1に希釈して培養してマクロファージの活性化を予防することができる。細胞をヘモサイトメーターで計数し、そして10個の6ウェル培養プレートに移すことができる。例えば、5個のプレートでは、FITCで標識した低密度タンパク質(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)を加え、続いて最大4日間インキュベートすることができる。
【0029】
マクロファージによる蛍光標識されたLDLの取り込みは、蛍光顕微鏡により評価することができる。観察のために2つの対照細胞集合:a)LDLとインキュベートされていないマクロファージ、及びb)培養物中で増殖され、そしてLDLとインキュベートされないヒト冠状動脈平滑筋細胞株(HCASMC-c)を使用することができる。上記パルスレーザーアブレーションシステムを用いて、マクロファージ及び対照細胞培養プレートをレーザー照射にかけることができる。レーザー治療は、焦点化されたレーザービームをスキャンするか、又は平行化されたレーザービームを用いて広い領域を照射することにより行なうことができる。レーザーパルス期間及びパルスの数は、レーザー誘導性の細胞ネクローシスについてのこれらのパラメーターの影響を評価するために変化させることができる。代表的なレーザー治療の後に、細胞生存アッセイ(例えば、プロピオジン・ヨージド)は、熱損傷後の細胞死を評価するために使用することができる。細胞を顕微鏡を用いて評価することができ、そして細胞死の割合は、フローサイトメーターを用いて計数することにより定量することができる。LDLを貪食したマクロファージ集合における細胞死の割合を、対照細胞集合と比較することができる。細胞死の割合とレーザー暴露パラメーターとの相関は、回帰分析をもちいて評価することもできる。
【0030】
病理解剖で得られたヒト頚動脈、冠動脈、腸骨動脈及び大動脈の新たに回収されたサンプルを、熱限局の細胞特異性を評価するために使用することができる。標本を長軸方向に開くことができ、そして腔側を露出するようにピン止めすることができる。上に記載されるパルスレーザーアブレーションシステムを用いて、組織標本に照射することができる。レーザーパルス期間及びパルス回数は、アテローム班におけるマクロファージに富む領域内における熱限局についてのこれらのパラメーターの影響を評価するために変更することができる。レーザー暴露治療の後に、肉眼で見て切断し、そして組織学的処理のために調整することができる。ヘマトキシリン・エオシンを用い、そしてマクロファージについてCD68を用いて染色することができる。ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBTC)染色を使用して、熱損傷の程度を評価することができる。NBTCは、熱不安定性酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を陽性に染色する。LDH活性の低下は、熱誘導性細胞損傷の際に即座に生じ、そして細胞の死亡率と相関する(M.H. Khan et al., "Intradermally focused infrared laser pulses: thermal effects at defined tissue depths," Lasers Surg Med. 2005;36, pp. 270-280を参照のこと)。
【0031】
未染色組織と染色組織との間のボーダー領域を形態学的に計測して、熱損傷の領域を評価することができる。CD68染色部位は、NBTC染色部位と重ね合わせて(co-registered)、レーザー処理の細胞特異性を評価することができる。ネクローシスの細胞特異性の計量(metric)は、CD68で染色された領域とLDH染色が抜けている領域の間の割合を計測することにより見積もることができる。細胞特異性の計量と、レーザーパルス期間及びパルスの数との間の相関を計測することができる。完全に近い細胞特異性の計量を達成する最適レーザーパラメーターを決定することができる。こうして、冠動脈内リアルタイムスクリーニング及び治療装置の次なる開発のため、マクロファージに富む領域を同定し、そして選択的にレーザーエネルギーでそれらを破壊する最適治療レーザーパラメーターを決定することができる。この典型的な開発は、不安定なプラークの検出と、これらの病変の局所的治療との間に必要とされるギャップを埋めることができる。このような例示的実施形態は、さらに、様々な他の疾患における細胞特異的レーザー治療の基礎を与える。ここで内在性吸収体を標的化して異常細胞の選択的損傷を引き起こす一方、周囲の通常細胞の生存性を維持することができる。
【0032】
外来性ナノ粒子の投与による細胞特異的治療
本発明に記載されるシステム及び方法の別の例示的実施形態として、皮下、経口、又は静脈内の投与を介して外来性金属又は貴金属ナノ粒子を投与することが挙げられる。適切なサイズ、例えば好ましくは約5nm未満のナノ粒子は、血管内皮に浸透することがあり、そして目的の組織のマクロファージにより取り込まれうる。これらのナノ粒子に光を照射することができる。直接的な吸収又はこれらのナノ粒子に関連する表面プラスモン共鳴は、ナノ粒子を含む細胞を熱的に損傷させる局所的及び特異的加熱を誘導することができる。本発明のさらに別の例示的実施形態に従って、これらのナノ粒子は、選択的レーザー治療光の投与のために適切な位置を決定する様式で、技術、例えば非限定的に本明細書に言及される技術、により造影することができる。
【0033】
本発明に記載されるシステム及び方法のさらに別の例示的実施形態は、画像ガイド細胞特異的レーザー治療を提供することができる。これらの例示的システム及び方法では、組織の高解像度体積スクリーニングは、組織マクロファージを検出し、そしてマクロファージにより貪食される外来性クロモフォアを調べることにより、マクロファージ細胞死を誘導する治療レーザー照射の同時ガイダンスを可能にするために、光周波数領域造影(OFDI)などの造影技術を用いて行なうことができる。典型的なOFDI技術、システム及び方法が、in situで組織マクロファージの同定を可能にする広範囲の組織用量スクリーニングのために使用することができる(例えば、B.D. MacNeill et al., "Focal and multi-focal plaque macrophage distributions in patients with acute and stable presentations of coronary artery disease," J Am Coll Cardiol. 2004;44, pp. 972-9を参照のこと)。本発明に記載される例示的なシステム、カテーテル、及び方法は、治療レーザーエネルギーの同時マクロファージ検出及びデリバリーに提供することができる。投与された外来性クロモフォアは、貴金属ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、又は酸化鉄マイクロ粒子を含み、マクロファージ内のレーザー誘導性熱限局を誘導することができる一方で、周囲の組織の健康を維持することができる。
【0034】
熱限局を可能にするパルス操作を可能にする音響光学変調器で設定されたレーザー光源を使用することができるレーザー治療システム及び方法の例示的実施形態を提供することができる。光源の波長は、調査中のクロモフォアに依存して提供することができる。マクロファージ細胞(J774細胞株)は、増殖培地を用いて75mlフラスコ中で培養することができる。プラークマクロファージを模倣するために、蛍光標識された低密度リポタンパク質(LDL)(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)と最大4日間別々にインキュベートすることができる。LDLの取り込みは、蛍光顕微鏡を用いて評価することができる。
【0035】
内在性の選択的細胞治療について、細胞損傷を与える適切な暴露及び電力性能は、細胞培養研究をもちいて決定することができる。LDLを貪食したマクロファージの集合は、レーザー波長処理に合わされた貴金属ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、又は酸化鉄マイクロ粒子と別々にインキュベートされよう。例えば、2つの対照細胞集合:i)LDL又は外来性クロモフォアとインキュベートされないマクロファージ、及びii)培養物中で増殖されることもあり、そしてLDL又はナノ粒子とインキュベートされないヒト冠状動脈平滑筋細胞株(HCASMC-c)、を使用することができる。多くの又は全ての培養プレートをレーザー照射に晒すことができ、そして細胞死の割合は、プロピジウムヨージドアッセイを用いて治療することができる。レーザーパルス期間、放射電力、及びパルスの数を変化させて、全ての細胞集合におけるレーザー誘導性の細胞死についてのこれらのパラメーターの影響を評価するために変更されよう。
【0036】
ナノ粒子の生体内分布、並びに細胞特異的レーザー治療についての正確な暴露及び出力パラメーターを決定するために動物実験を利用することができる。本発明の1の例示的実施形態によれば、脂質異常症の動物のアテローム班内への金、銀、及びUSPIOナノ粒子の分布を決定することが好ましいこともある。例えば、この3種類のナノ粒子、金、銀、及びUSPIOの各々は、同様の実験デザインを用いて独立して試験することができる。例えば15匹のワタナベ遺伝性高脂血症(WHHL)ウサギ(P.M. McCabe et al. "Social environment influences the progression of atherosclerosis in the watanabe heritable hyperlipidemic rabbit," Circulation, 2002; 105, pp. 354-9; S. Ojio et al. "Considerable time from the onset of plaque rupture and/or thrombi until the onset of acute myocardial infarction in humans: coronary angiographic findings within 1 week before the onset of infarction," Circulation, 2000; 102, pp.2063-9; and K. Yokoya et al. "Process of progression of coronary artery lesions from mild or moderate stenosis to moderate or severe stenosis: A study based on four serial coronary arteriograms per year," Circulation, 1999; 100, pp. 903-9を参照のことI)(当該ウサギは、6月齢で活性大動脈プラークを発達させる)、及び5匹のニュージーランドホワイト(NZW)ウサギ(当該ウサギは各薬剤について対照として機能する)に薬剤を毎日静脈内投与することにより、各ナノ粒子についてこの実験を行なうことができる。追加の5匹のWHHLウサギに薬剤を投与しないで実験に用いて、各群についての疾患対照として用いた。
【0037】
例えば、多くの又は全てのウサギは、およそ1歳である。イソフルラン(1%)を用いて鎮静状態にしている間に耳介静脈を通して、ナノ粒子薬剤を最大5日間毎日、1〜2mg/kgの用量で投与する。ナノ粒子薬剤を投与されたWHHLウサギを、2、3、及び5日目に安楽死させた(各時点あたり3匹)。対照ウサギを4日目に安楽死させる。大動脈の回収前に、灌流固定を行なう。5μmの連続組織切片を作成し、そしてヘマトキシリン-エオシン、マッソン三重染色、CD68免疫ペルオキシダーゼ及びプルシアンブルーで染色する。ナノ粒子分布のパターンは、プラーク脆弱性、つまり脂質コア及びキャップ(100)の厚さの組織学的決定と関連することがある。さらに、各動脈標本の2mm切片は、電子顕微鏡評価にかけられて、ナノ粒子沈着の細胞内部位及び超微構造形態及び細胞内分布が決定される。
【0038】
本発明の他の例示的実施態様に従って、脂質異常症の動物のアテローム班中へのナノ粒子の取り込みに伴なう光学痕跡を計測することが好ましいことがある。例えば、安楽死の後で、かつ上に記載されるウサギの大動脈の灌流固定の前に、光学コヒーレンストモグラフィー(OCT)技術及び血管スコープ造影は、腸動脈から大動脈弓へ、0.5mm/秒の速度で自動プルバックを用いて行なうことができる。大動脈を開いてもよく、そして反射型共焦点顕微鏡観察が、各血管の長さにそって行なわれよう。各薬剤及び時間点について、処理されたウサギから得られた画像は、対照ウサギから得られた画像と形態学的及び分光学的に比較することができる。プラーク内の目的の領域、例えばキャップショルダー(cap shoulder)、キャップ本体及び脂質に富むコア、においてシグナル強度の定量的分析を行なって、アテローム班内で各薬剤の定量的分布を評価することができる。対照ウサギ計測に比べて固有の光学痕跡を伴なう組織位置を選択的に取得し、そして組織学観察及び電子顕微鏡観察のために処理されよう。
【0039】
本発明のさらに別の例示的実施形態によれば、ナノ粒子で標識されたマクロファージをin vivoで定量を行なうことが好ましい場合がある。最も光学的に高いコントラストを達成するナノ粒子金属は、10匹のWHHLウサギ(1歳)に、2mg/kgの用量で投与することができる。例えば、ナノ粒子を受容していない追加の5匹のWHHLウサギを対照として使用することができる。ナノ粒子投与の後の最適な日に(上に提供されるように決定される)、例示的なOCT造影技術を行なうことができ、そしてウサギを安楽死させた。例えば、ケタミン(35mg/kg)/キシラジン(7mg/kg)のIM注射を鼠径部の局所麻酔(リドカイン)を行なって投与することができる。
【0040】
角膜反射及び下顎反射へのウサギの応答の継続的な評価を、麻酔レベルをモニターするために用いる。左腸骨動脈をあらわにし、そして切除術をもちいて単離してもよい。6Fのイントロデューサーを左腸骨動脈に配置してもよい。0.014”ガイドワイヤーを動脈内に進める事ができる。蛍光顕微鏡ガイダンスの下で、OCTカテーテル(3F)をイントロデューサーを通して、ガイドワイヤー上をそして動脈内へと進めてもよい。動脈及び腸骨動脈の例示的OCT造影は、外科的特徴を用いて画像処理を行ってもよい。造影後、当該動物を安楽死させることもある。蛍光顕微鏡ガイダンスの下でOCTを用いて造影する一方、同定された外科的特長に隣接するプラークから組織学的切片を取得することができる。通常の様式で当該組織を処理することができる。OCT造影部位で4μmの切片を切り取り、そしてヘマトキシリン及びエオシン(H&E)及びマッソン三重染色で染色する。マクロファージの存在を可視化するために、マウス抗ウサギCD68モノクローナル抗体を使用することができる(Dako Corporation)。
【0041】
好ましいエピトープの免疫組織学的検出は、間接的なホースラディッシュペルオキシダーゼ技術に従って行なうことができる。デジタル化組織学及びOCT技術の両方を用いて、マクロファージ密度の計測は、各プラークの中心に位置する500×125μm(水平×垂直)の目的領域(ROI)を用いて得ることができる。CD68+の領域の割合は、デジタル化免疫組織化学染色されたスライドの対応するROI内を自動化2色分割を用いて定量することができる(100倍)。各プラークにおけるOCTシグナル強度及び標準偏差が、線形回帰を用いて対応位置から得たスライドからの疫組織化学染色と比較することができる。
【0042】
画像ガイド細胞特異的レーザー治療
細胞特異的レーザー治療は、単独技術/方法として、或いは標的アテローム班の診断用の造影又は顕微鏡技術/方法及び治療ガイダンスと組み合わせて行うことができる。レーザースペックル造影(例えば、図5に示される)、血管内視鏡、蛍光、蛍光分光法、時間分解蛍光、OCT、OFDI、SDOCT、ラマン又はIR分光法、IVUS、血管内MRIなどの技術を使用して、問題のプラークを検出し、そして細胞特異的レーザー治療をガイドすることができる。画像ガイド細胞特異的治療についての1の例示的実施形態は、治療を標的するためにマクロファージに富むプラークを検出するためのOCT及び/又は次世代OCT法、例えばOFDI又はスペクトルドメインOCT(SD-OCT)に関する。
【0043】
細胞特異的レーザー治療用のカテーテル
i. 単一の例示的光学ファイバーの実施形態
この例示的実施態様は、画像ガイダンスの使用を伴なわない包括的な細胞特異的レーザー治療のための独立型アプローチのための設計を含むことができる(図6)。この例示的実施形態では、パルスレーザー源からの光を光ファイバー(600)の近位末端に繋げることができる。光ファイバーは、外側シース(615)に囲まれている。ファイバーは、動脈壁のあらかじめ決定された位置に光(610)を照らし、そして焦点化するために、ビーム焦点化光学要素及び/又はビームリダイレクト光学要素が終端となる。レンズにより遠位末端のレーザー光を平行化又は焦点化することができる。レンズは、マイクロレンズ、GRINレンズなどでありうる。当該ファイバーは、血管壁(620)に沿って回転方向(616)又は長手方向(617)、又は他の方向のうちの少なくとも1の方向にビームをスキャンするように構成することができる。この実施形態では、治療は、良好なビーム品質を維持し、そして血液による治療光の散乱及び吸収を避けるために、血管内腔(618)のフラッシングをすることで行なうことができる。
【0044】
図7に示される別の例示的実施形態では、治療ファイバー(700)は、血管壁(710)に接触するか又はほぼ接触するように構成することができる。ファイバーは、回転方向(716)又は長手方向(717)又は他の方向のうちの少なくとも1の方向にスキャンすることができ、動脈の部分を治療することができる。図8に例示されるさらに他の例示的実施形態では、治療ファイバーは、バルーン(818)内に位置することもある。当該バルーン(818)は、治療を必要とする血管壁(820)の領域内で膨らませることができ、そしてファイバー(800)は、目的の領域を治療するために、回転方向(816)、長手軸方向(817)、又は他の方向のうちの少なくとも1の方向にスキャンすることができる。
【0045】
ii. 拡散カテーテル具体的実施形態
図9に示される様に本発明のさらなる例示的な実施形態に従って、標的クロモフォアに対応する光(910)は、バルーン、拡散光学要素(905)などを用いて、血管壁(920)の広い領域に渡り拡散させることができる。
【0046】
iii. 冷却を伴なった血管細胞特異的レーザー治療
当該クロモフォアの特異性が、目的の細胞の選択的破壊を許容するが、標的と周囲組織との間の吸収係数の差が十分に大きくない場合、組織の表面に巻き添え損傷が生じることがあり、内皮の損傷をもたらすことがある。この予期しない効果を避けるために、治療レーザーの照射の間に、冷却生理食塩水、水、D2O、血液又は他の冷却された液体を使用することによって、内皮表面を冷却することができる。この方法は、血管壁の奥深くに細胞特異的レーザー照射を安全に適用する一方で、内皮の生存度を維持することができる。その結果、カテーテルは、冷却物質で血管をフラッシングするための機構を付随させることができる。本発明の1の例示的実施態様では、この機構は、その中に治療カテーテルを含むガイドカテーテルを含むことができる。別の例示的実施形態では、治療カテーテルは、フラッシングポートを含んでもよい。さらに別の実施形態では、カテーテルは、当該冷却物質で満たされたバルーンを含む場合がある。
【0047】
iv. 画像ガイドカテーテルの例示的実施形態
本発明の具体的実施形態は、図10に示される様に、標的アテローム班を包括的に体積診断及びスクリーニングするための、並びにアテローム班におけるマクロファージの同時細胞特異的レーザー治療するためのプローブ設計を含むことができる。図10に示される例示的プローブ(1000)は、軸方向(1003)、回転方向(1005)、又は他の方向のうちの少なくとも1の方向に、動脈の管腔表面に渡ってスキャンするように設計することができる。治療レーザー光(1015)及び光学診断集成装置(1010)(例えば、レーザースペックル造影、血管内視鏡、OCT、OFDI、SDOCT、ラマン又はIR分光、蛍光、蛍光分光法、時間分解蛍光装置)の光は、同一又は別の光ファイバーを通してデリバリーすることができる。区別される診断及び治療ファイバーについて、各光ファイバーは、その独自の遠位光学要素を有して、その独自の光学診断及び治療ビーム直径を標的組織にもたらすことができる。1の実施形態では、光学ファイバー及び遠位光学要素は、ドライブシャフト中に入れられており、そしてカテーテルシース(1020)内に集成装置されている。カテーテルの近位末端は、回転接続部に繋がれており、そしてモーター駆動プルバックユニットに搭載されていてもよい。カテーテルの内部の要素を回転させ、そしてプルバックすることは、診断及び治療を同時に行なうことを可能にする。別の本発明の具体的実施形態では、診断及び治療用カテーテルは、動脈壁(1025)と接触するように構成することができる。ファイバーは、内皮に沿ってスキャンさせて、接触部位において診断を行い、そして細胞特異的治療を提供することができる。
【0048】
本発明に従った細胞特異的治療方法についてのある例示的実施形態が以下に記載され、そして図11〜13の典型的なフローダイアグラムに示されている。例えば、図11は、本発明に従った内在性治療法の例示的実施形態の例示的フローダイアグラムを示す。ここで、カテーテルは、開始され(ステップ1100)、そして動脈内に挿入され(ステップ1105)、そして適切な波長、暴露パラメーター、及び出力密度でレーザー照射を動脈へと導くことができる(ステップ1110)。プラークマクロファージと周囲の組織との間の大きい示差吸収を得るために波長を選択することができる。暴露及び出力パラメーターをこれらの細胞への熱限局を引き起こすために選択することができる。レーザー照射の前に血液を取り除いても取り除かなくてもよい。動脈を、所定の時間光に暴露させる。円周方向、長手方向、又は他の方向のうちの少なくとも1へとカテーテルを動かして(1115)、治療領域全体をスキャンすることができる。或いは、又はさらに、ビームスキャンを伴なわずに動脈を通して光が拡散されてもよい。ステップ1120では、例示的な方法が完了したかを決定され、そして完了していない場合当該方法が繰り返されてもよい(ステップ1122)。
【0049】
図12は、本発明に従った外来性治療法の例示的実施態様のフローダイアグラムを示す。ここで当該方法はステップ1200から開始し、そして貴金属ナノ粒子などの外来性物質が患者に投与される(ステップ1205)。適切な時間の後に(ステップ1210)、カテーテルを動脈内に挿入し(ステップ1215)、そして適切な波長、露出パラメーター、及び出力密度を有するレーザー照射が動脈内へと導かれる(ステップ1225)。波長は、プラークマクロファージと周囲の組織との間の吸収さが大きくなるように選択される。暴露及び出力パラメーターは、これらの細胞への熱限局に影響するために選択される。血液は、レーザー照射前に取り除かれてもよいし、又は取り除かれなくてもよい。動脈は、所定の時間のあいだ治療光に晒される。カテーテルは、円周、長手方向、又は他の方向のうちの少なくとも1の方向に動いて(ステップ1230)、治療領域全体をスキャンする。代わりに又はさらに、治療光は、スキャンすることなく動脈を通して拡散することもある。当該方法は繰り返されてもよい(ステップ1232)。
【0050】
図13は、治療の標的位置を測定し、そして治療が完了したときを決定するための画像ガイダンスを用いる、本発明に記載される一般的な細胞特異的治療方法の例示的実施形態のフローダイアグラムを示す。この例示的方法は、内在性吸収体(例えばボックス1307に提供される要素を伴なわない)、又は外来性吸収体(例えば、ボックス1307に提供される要素を伴なう)について実行することができる。当該方法は、ステップ1300から開始し、外来性薬剤はステップ1305で投与され、そして待機することができる(ステップ1310)。カテーテルは、動脈に挿入され(ステップ1315)、そして情報が動脈壁から回収されて、治療レーザー照射が分散されるかを決定することができる(ステップ1320)。
【0051】
例えば例示的な診断方法により決定される適切な例示的位置において、当該光は、適切な波長、暴露パラメーター、及び出力密度で壁を照射する(ステップ1325)。暴露及び出力パラメータは、これらの細胞への熱限局を与えるように選択される。動脈は、所定の時間又は同じ又は別の例示的診断方法(ステップ1330)により決定される時間の間治療光に暴露される場合がある。カテーテルは、周囲方向、長手軸方向、又は他の方向のうちの少なくとも1の方向に動かされて、治療領域全体をスキャンすることができる(ステップ1335)。当該方法が繰り返されてもよい(ステップ1332)。
【0052】
参考文献
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
ここまでの記載は、本発明の原理を単に例示しているものである。記載された実施形態についての様々な改変及び変更は、本明細書の教示の観点で当業者に明らかであろう。実際に、本発明の例示的実施形態に従った集成装置、システム、及び方法は、任意のOCTシステム、OFDIシステム、SD-OCTシステム、レーザースペックルイメージング(LSI)システム、又は他の造影システム、及び例えば2004年9月8日に出願された国際出願PCT/US2004/029148、2005年11月2日に出願された米国特許出願第11/266,779号、2004年7月9日に出願された米国特許出願第10/501,276号、2007年1月18日に出願された米国特許出願第11/624,334号、2005年9月29日に出願された米国特許出願第10/551,735号に記載されるシステムを用いることができるし、及び/又はこれらのシステムを実行することができる。これらの文献の開示は、本明細書にその全てが援用される。こうして、当業者が、本明細書に明確に示され又は記載されてはいないが、本発明の原理を具体化し、そうして本発明の本質及び範囲に含まれる多くのシステム、集成装置、及び方法を考案することができる。さらに、従来技術の知識は、本明細書には明確には援用されていないものについても、その全てを本明細書に明確に援用される。本明細書に参照される全ての特許文献が、その全てを本明細書に援用される。
【0057】
本発明のさらなる対象、特徴及び利点は、本発明の例示的実施形態を示す添付の図面と併せた本明細書の詳細な記載から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、ヒトアテローム班における脂質で満たされたマクロファージの典型的な顕微鏡画像である。
【図2】図2は、そのレーザー切除の間の組織の非特異的加熱の断面図である。
【図3】図3は、細胞特異的加熱のための細胞の断面図である。
【図4】図4は、脂肪と水との間で異なる吸収スペクトルを有する、スペクトル-光度計計測を用いて計測された皮下脂肪の選択的光吸収を示すグラフである。
【図5A−B】図5Aは、本発明の1の例示的実施形態に従った細胞特異的治療システムを示す模式図である。図5Bは、本発明の別の例示的実施形態に従った細胞特異的治療システムを示す模式図である。
【図6】図6は、本発明のある単一ファイバー実施形態に従った細胞特異的レーザー治療カテーテルの模式図である。
【図7】図7は、動脈壁の近くに位置する本発明の単一ファイバー実施形態に従った細胞特異的レーザー治療カテーテルの模式図である。
【図8】図8は、代表的なバルーン集成装置に包含される本発明の別の単一ファイバー実施形態に従った細胞特異的レーザー治療カテーテルの模式図である。
【図9】図9は、本発明の拡散ファイバー実施形態に従った細胞特異的レーザー治療カテーテルの模式図である。
【図10】図10は、本発明の画像によりガイドされるカテーテルに従った細胞特異的レーザー治療カテーテルの模式図である。
【図11】図11は、本発明に従った動脈の細胞特異的治療用の技術についての例示的実施形態のフローチャートをである。
【図12】図12は、本発明に従った外来性治療法の例示的実施形態のフローダイアグラムである。
【図13】図13は、治療する標的位置を決定するため及び/又は治療が完了したかを決定するために画像ガイダンスを用いた本発明に従った一般的な細胞特異的治療の例示的実施形態のフローダイアグラムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解剖学的構造に電磁放射を送るように構成された少なくとも1の集成装置を含む装置であって、ここで当該電磁放射が、以下の:
i. 少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特性を変更し、そして
ii. (a)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性の任意の変更を最小化するか、又は(b)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性を変更することのうちの少なくとも1を行なう
ように決定された少なくとも1の性質を有し、
ここで、上記第一細胞及び第二細胞が互いに異なっており、ここで当該第一細胞と第二細胞の上記特性が互いに異なっており、ここで当該第一細胞又は第二細胞のうちの少なくとも1が少なくとも1のマクロファージ特徴を有し、そしてここで当該少なくとも1の第一細胞又は少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1における上記少なくとも1の特性が温度である、前記装置。
【請求項2】
前記少なくとも1の性質が、波長、平均出力、瞬間出力、パルス期間、又は合計暴露期間のうちの少なくとも1を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞内の化合物の吸収特性の波長とほぼ同じである波長を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞の範囲内にほぼ限定された少なくとも1の特性を誘導するパルス期間を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞の少なくとも一部を不可逆的に損傷するように少なくとも1の特性を誘導する出力を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1の第一細胞の前記少なくとも1の特性が、前記少なくとも1の第一細胞の少なくとも一部に損傷を誘導する温度よりも高い、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1の第一細胞の前記少なくとも一部に対する損傷が、不可逆的である、請求項7に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1の第一細胞が、血管壁内に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記血管壁が、冠動脈の一部である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1の集成装置が、カテーテル内に提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、少なくとも1の脂質を含むリソゾームである、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1の脂質が、少なくとも1の低密度リポタンパク質(LDL)、酸化LDL、コレステロール又はコレステロールエステルを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、壊死破片を含むリソゾームである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、多数のリソゾームである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、少なくとも1のナノ粒子である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1のナノ粒子が、前記細胞内に提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも1のナノ粒子が、リソゾーム内に提供される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1のナノ粒子のうちの単一物の大きさが、1〜20ナノメートルである、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1のナノ粒子が、金属、貴金属、極小常磁性酸化鉄、金又は銀のうちの少なくとも1から構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも1のナノ粒子が、対象に静脈内投与される、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記電磁放射が、前記少なくとも1のナノ粒子上に適用される場合、表面プラスモンが発生する、請求項16に記載の装置。
【請求項22】
前記少なくとも1の第一集成装置が、対象の体外から電磁放射を送るように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、線維性被膜内に提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記少なくとも1の第一細胞及び前記少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1に関連する位置を決定するように構成された少なくとも1の第二集成装置をさらに含み、ここで前記少なくとも1の第一集成装置が、前記位置の近くにおいて電磁放射を送るようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記第一細胞又は第二細胞のうちの少なくとも1が、少なくとも1のマクロファージ特徴を有する、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記少なくとも1の第一細胞又は前記少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1における前記少なくとも1の特性が温度である、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
電磁照射を解剖学的構造に送ることを含む方法であって、当該電磁放射が以下の:
iii. 少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特性を変更し、そして
iv. (a)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性の任意の変更を最低限にするか、又は(b)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性を変更することのうちの少なくとも1を行う
ように決定された少なくとも1の性質を有し、
ここで、上記第一細胞と第二細胞が互いに異なっており、ここで当該第一細胞と第二細胞の上記特性が互いに異なっており、ここで第一細胞又は第二細胞のうちの少なくとも1が少なくとも1のマクロファージ特徴を有し、そしてここで上記少なくとも1の第一細胞又は少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1における上記少なくとも1の特性が温度である、前記方法。
【請求項28】
電磁放射を解剖学的構造に送るように構成される少なくとも1の第一集成装置であって、当該電磁放射が、以下の:
i. 少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特性を変更し、そして
ii. (a)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性の任意の変更を最小化するか、又は(b)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性を変更することのうちの少なくとも1をする
ように決定された少なくとも1の性質を有し、ここで、上記第一細胞と第二細胞が互いに異なっており、そしてここで当該第一細胞と第二細胞の上記特性が互いに異なっている、前記第一集成装置、並びに
上記少なくとも1の第一細胞及び少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1に付随する位置を決定するように構成された少なくとも1の第二集成装置であって、ここで上記少なくとも1の第一集成装置が、当該位置の近くに電磁放射を送るようにさらに構成される、前記第二集成装置
を含む装置。
【請求項29】
前記第一細胞又は前記第二細胞のうちの少なくとも1が少なくとも1のマクロファージ特徴を有する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記少なくとも1の第一細胞又は前記少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1における前記少なくとも1の特性が温度である、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記少なくとも1の第二集成装置が、前記解剖学的構造の少なくとも一部の画像に基いて前記位置を決定するように構成される、請求項28に記載の装置。
【請求項32】
前記少なくとも1の第二集成装置が、コヒーレンス範囲の集成装置、スペックル分析の集成装置、熱造影集成装置、又は分光法集成装置のうちの少なくとも1を含む、請求項28に記載の装置。
【請求項33】
前記第一細胞又は前記第二細胞のうちの少なくとも1が、少なくとも1のマクロファージ特徴を有し、そしてここで、前記少なくとも1の第一細胞又は前記少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1における少なくとも1の特性が温度である、請求項28に記載の装置。
【請求項34】
前記少なくとも1の性質が、波長、平均出力、瞬時出力、パルス期間又は合計暴露期間のうちの少なくとも1を含む、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞内の化合物の吸収特性の波長とほぼ同じである波長を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞内にほぼ限局される前記少なくとも1の特性を引き起こすパルス期間を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項37】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞の少なくとも一部において不可逆的に損傷を与える少なくとも1の特性を引き起こす出力を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項38】
前記少なくとも1の第一細胞の前記少なくとも1の特性が、前記少なくとも1の第一細胞の少なくとも一部に損傷を引き起こす温度よりも高い温度である、請求項33に記載の装置。
【請求項39】
前記少なくとも1の第一細胞の少なくとも一部への前記損傷が不可逆的である、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記少なくとも1の第一細胞が、血管壁内に位置する、請求項33に記載の装置。
【請求項41】
前記血管壁が、冠動脈の一部である、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記少なくとも1の集成装置が、カテーテル内に提供される、請求項33に記載の装置。
【請求項43】
前記少なくとも1のマクロファージの特徴が、少なくとも1の脂質を含むリソゾームである、請求項33に記載の装置。
【請求項44】
前記少なくとも1の脂質が、少なくとも1の低密度リポタンパク質(LDL)、酸化LDL、コレステロール、又はコレステロールエステルを含む、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記少なくとも1のマクロファージの特徴が、壊死破砕物を含むリソゾームである、請求項33に記載の装置。
【請求項46】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、多くのリソゾームである、請求項33に記載の装置。
【請求項47】
前記少なくとも1のマクロファージの特徴が、少なくとも1のナノ粒子である、請求項33に記載の装置。
【請求項48】
前記少なくとも1のナノ粒子が、前記細胞内に提供される、請求項33に記載の装置。
【請求項49】
前記少なくとも1のナノ粒子が、リソゾーム内に提供される、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記少なくとも1のナノ粒子のうちの単一物の大きさが、1〜20ナノメートルである、請求項48に記載の装置。
【請求項51】
前記少なくとも1のナノ粒子が、金属、貴金属、極小常磁性酸化鉄、金又は銀のうちの少なくとも1からから構成される、請求項48に記載の装置。
【請求項52】
前記少なくとも1のナノ粒子が、対象に静脈内投与される、請求項48に記載の装置。
【請求項53】
前記電磁放射が前記少なくとも1のナノ粒子に適用される場合、表面プラスモンが発生する、請求項48に記載の装置。
【請求項54】
前記少なくとも1の第一集成装置が、対象の体外から電磁放射を送るように構成される、請求項33に記載の装置。
【請求項55】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、線維性被膜内に提供される、請求項33に記載の装置。
【請求項56】
以下のステップ:
電磁照射を解剖学的構造に送り、ここで当該電磁放射が以下の:
iii. 少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特性を変更し、そして
iv. (a)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性の任意の変更を最低限にするか、又は(b)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性を変更することのうちの少なくとも1
を行うように決定された少なくとも1の性質を有し、ここで、上記第一細胞と第二細胞が互いに異なっており、ここで上記第一細胞と第二細胞の特性が互いに異なっており、そして
上記少なくとも1の第一細胞と上記少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1に付随する位置を決定し、ここで当該電磁放射が、当該位置の近くに送られる、
を含む方法。
【請求項1】
解剖学的構造に電磁放射を送るように構成された少なくとも1の集成装置を含む装置であって、ここで当該電磁放射が、以下の:
i. 少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特性を変更し、そして
ii. (a)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性の任意の変更を最小化するか、又は(b)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性を変更することのうちの少なくとも1を行なう
ように決定された少なくとも1の性質を有し、
ここで、上記第一細胞及び第二細胞が互いに異なっており、ここで当該第一細胞と第二細胞の上記特性が互いに異なっており、ここで当該第一細胞又は第二細胞のうちの少なくとも1が少なくとも1のマクロファージ特徴を有し、そしてここで当該少なくとも1の第一細胞又は少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1における上記少なくとも1の特性が温度である、前記装置。
【請求項2】
前記少なくとも1の性質が、波長、平均出力、瞬間出力、パルス期間、又は合計暴露期間のうちの少なくとも1を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞内の化合物の吸収特性の波長とほぼ同じである波長を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞の範囲内にほぼ限定された少なくとも1の特性を誘導するパルス期間を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞の少なくとも一部を不可逆的に損傷するように少なくとも1の特性を誘導する出力を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1の第一細胞の前記少なくとも1の特性が、前記少なくとも1の第一細胞の少なくとも一部に損傷を誘導する温度よりも高い、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1の第一細胞の前記少なくとも一部に対する損傷が、不可逆的である、請求項7に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1の第一細胞が、血管壁内に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記血管壁が、冠動脈の一部である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1の集成装置が、カテーテル内に提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、少なくとも1の脂質を含むリソゾームである、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1の脂質が、少なくとも1の低密度リポタンパク質(LDL)、酸化LDL、コレステロール又はコレステロールエステルを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、壊死破片を含むリソゾームである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、多数のリソゾームである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、少なくとも1のナノ粒子である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1のナノ粒子が、前記細胞内に提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも1のナノ粒子が、リソゾーム内に提供される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1のナノ粒子のうちの単一物の大きさが、1〜20ナノメートルである、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1のナノ粒子が、金属、貴金属、極小常磁性酸化鉄、金又は銀のうちの少なくとも1から構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも1のナノ粒子が、対象に静脈内投与される、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記電磁放射が、前記少なくとも1のナノ粒子上に適用される場合、表面プラスモンが発生する、請求項16に記載の装置。
【請求項22】
前記少なくとも1の第一集成装置が、対象の体外から電磁放射を送るように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、線維性被膜内に提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記少なくとも1の第一細胞及び前記少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1に関連する位置を決定するように構成された少なくとも1の第二集成装置をさらに含み、ここで前記少なくとも1の第一集成装置が、前記位置の近くにおいて電磁放射を送るようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記第一細胞又は第二細胞のうちの少なくとも1が、少なくとも1のマクロファージ特徴を有する、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記少なくとも1の第一細胞又は前記少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1における前記少なくとも1の特性が温度である、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
電磁照射を解剖学的構造に送ることを含む方法であって、当該電磁放射が以下の:
iii. 少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特性を変更し、そして
iv. (a)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性の任意の変更を最低限にするか、又は(b)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性を変更することのうちの少なくとも1を行う
ように決定された少なくとも1の性質を有し、
ここで、上記第一細胞と第二細胞が互いに異なっており、ここで当該第一細胞と第二細胞の上記特性が互いに異なっており、ここで第一細胞又は第二細胞のうちの少なくとも1が少なくとも1のマクロファージ特徴を有し、そしてここで上記少なくとも1の第一細胞又は少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1における上記少なくとも1の特性が温度である、前記方法。
【請求項28】
電磁放射を解剖学的構造に送るように構成される少なくとも1の第一集成装置であって、当該電磁放射が、以下の:
i. 少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特性を変更し、そして
ii. (a)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性の任意の変更を最小化するか、又は(b)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性を変更することのうちの少なくとも1をする
ように決定された少なくとも1の性質を有し、ここで、上記第一細胞と第二細胞が互いに異なっており、そしてここで当該第一細胞と第二細胞の上記特性が互いに異なっている、前記第一集成装置、並びに
上記少なくとも1の第一細胞及び少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1に付随する位置を決定するように構成された少なくとも1の第二集成装置であって、ここで上記少なくとも1の第一集成装置が、当該位置の近くに電磁放射を送るようにさらに構成される、前記第二集成装置
を含む装置。
【請求項29】
前記第一細胞又は前記第二細胞のうちの少なくとも1が少なくとも1のマクロファージ特徴を有する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記少なくとも1の第一細胞又は前記少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1における前記少なくとも1の特性が温度である、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記少なくとも1の第二集成装置が、前記解剖学的構造の少なくとも一部の画像に基いて前記位置を決定するように構成される、請求項28に記載の装置。
【請求項32】
前記少なくとも1の第二集成装置が、コヒーレンス範囲の集成装置、スペックル分析の集成装置、熱造影集成装置、又は分光法集成装置のうちの少なくとも1を含む、請求項28に記載の装置。
【請求項33】
前記第一細胞又は前記第二細胞のうちの少なくとも1が、少なくとも1のマクロファージ特徴を有し、そしてここで、前記少なくとも1の第一細胞又は前記少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1における少なくとも1の特性が温度である、請求項28に記載の装置。
【請求項34】
前記少なくとも1の性質が、波長、平均出力、瞬時出力、パルス期間又は合計暴露期間のうちの少なくとも1を含む、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞内の化合物の吸収特性の波長とほぼ同じである波長を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞内にほぼ限局される前記少なくとも1の特性を引き起こすパルス期間を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項37】
前記少なくとも1の性質が、前記少なくとも1の第一細胞の少なくとも一部において不可逆的に損傷を与える少なくとも1の特性を引き起こす出力を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項38】
前記少なくとも1の第一細胞の前記少なくとも1の特性が、前記少なくとも1の第一細胞の少なくとも一部に損傷を引き起こす温度よりも高い温度である、請求項33に記載の装置。
【請求項39】
前記少なくとも1の第一細胞の少なくとも一部への前記損傷が不可逆的である、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記少なくとも1の第一細胞が、血管壁内に位置する、請求項33に記載の装置。
【請求項41】
前記血管壁が、冠動脈の一部である、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記少なくとも1の集成装置が、カテーテル内に提供される、請求項33に記載の装置。
【請求項43】
前記少なくとも1のマクロファージの特徴が、少なくとも1の脂質を含むリソゾームである、請求項33に記載の装置。
【請求項44】
前記少なくとも1の脂質が、少なくとも1の低密度リポタンパク質(LDL)、酸化LDL、コレステロール、又はコレステロールエステルを含む、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記少なくとも1のマクロファージの特徴が、壊死破砕物を含むリソゾームである、請求項33に記載の装置。
【請求項46】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、多くのリソゾームである、請求項33に記載の装置。
【請求項47】
前記少なくとも1のマクロファージの特徴が、少なくとも1のナノ粒子である、請求項33に記載の装置。
【請求項48】
前記少なくとも1のナノ粒子が、前記細胞内に提供される、請求項33に記載の装置。
【請求項49】
前記少なくとも1のナノ粒子が、リソゾーム内に提供される、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記少なくとも1のナノ粒子のうちの単一物の大きさが、1〜20ナノメートルである、請求項48に記載の装置。
【請求項51】
前記少なくとも1のナノ粒子が、金属、貴金属、極小常磁性酸化鉄、金又は銀のうちの少なくとも1からから構成される、請求項48に記載の装置。
【請求項52】
前記少なくとも1のナノ粒子が、対象に静脈内投与される、請求項48に記載の装置。
【請求項53】
前記電磁放射が前記少なくとも1のナノ粒子に適用される場合、表面プラスモンが発生する、請求項48に記載の装置。
【請求項54】
前記少なくとも1の第一集成装置が、対象の体外から電磁放射を送るように構成される、請求項33に記載の装置。
【請求項55】
前記少なくとも1のマクロファージ特徴が、線維性被膜内に提供される、請求項33に記載の装置。
【請求項56】
以下のステップ:
電磁照射を解剖学的構造に送り、ここで当該電磁放射が以下の:
iii. 少なくとも1の第一細胞の少なくとも1の特性を変更し、そして
iv. (a)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性の任意の変更を最低限にするか、又は(b)少なくとも第二細胞の少なくとも1の特性を変更することのうちの少なくとも1
を行うように決定された少なくとも1の性質を有し、ここで、上記第一細胞と第二細胞が互いに異なっており、ここで上記第一細胞と第二細胞の特性が互いに異なっており、そして
上記少なくとも1の第一細胞と上記少なくとも1の第二細胞のうちの少なくとも1に付随する位置を決定し、ここで当該電磁放射が、当該位置の近くに送られる、
を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−533076(P2009−533076A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557495(P2008−557495)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/063058
【国際公開番号】WO2007/103721
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/063058
【国際公開番号】WO2007/103721
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】
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