説明

光変調素子及びその製造方法

【課題】機械的強度を落とさずにディップを抑制可能な構造をもった光変調素子を提案する。
【解決手段】本提案に係る光変調素子は、電気光学効果をもつ結晶基板10と、結晶基板内に形成された光導波路20と、結晶基板上に形成され、光導波路20に対して電界を印加する電極30と、電極30が形成された結晶基板の表面11及びこれに対向する裏面12の両方から離隔した結晶基板内部における電極下領域に、光導波路20を避けて埋設された低誘電率の埋設層50と、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学効果をもつ結晶を利用して電気信号を光信号へ変換する光変調技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高速・大容量化に伴い、最近の光通信システムには40GHz以上の帯域幅が求められている。これに従って、光送信機等において使用される光変調器にも40GHz以上の広帯域化が要求されている。近年の光変調器は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)などの電気光学効果をもつ結晶を基板として、これに光導波路及び電極を形成したマッハ-ツェンダ型の光変調素子を使用していることから、当該光変調素子について、40GHz以上の帯域で動作可能であることが求められる。
【0003】
図11及び図12に、ニオブ酸リチウム基板(LN基板)を使用した光変調素子の平面図とそのA−A線断面図を示している。LN基板1の表面下には、チタン等の金属膜をパターニングして熱拡散させる、あるいは、パターニング後に安息香酸中でプロトン交換するなどの手法により、光導波路2が形成されている。光導波路2は、入射端部2aと出射端部2bとの間に平行な二本の分岐部2c,2dを有する構造で、このような光導波路2を進行する光に対して変調をかける電極3が、SiO膜など低屈折率のバッファ層4を介してLN基板1上に形成される。電極3は、分岐部2c,2dに対し作用するように形成され、一方の分岐部2c上に形成された信号電極3aと、その両脇の接地電極3bと、を含んでいる。
【0004】
信号電極3aは、光導波路2に電界を印加するための進行波電極とされ、一端から送信データに従う高周波電気信号が入力され、反対側の他端は50Ω等で終端される。信号電極3a及び接地電極3bの電極幅や電極間隔は、電気信号と光の速度が整合するように設計される。
【0005】
このような光変調素子を40GHz以上の広帯域で使用するうえで、高周波がLN基板1内に漏れて別モードとなることにより、周波数特性にディップ(特性の急低下)の生じることが課題となっている。これに関し、図13に、光変調素子の周波数透過特性(S21)を示している。図示のように、高周波の透過特性においてディップの生じることが光変調素子の帯域を決めてしまうため、40GHz以上の広帯域で動作させることが難しくなっている。このようなディップは、図14に示すように、LN基板1内に漏れ出した高周波の電界が、LN基板1内でTEモードやTMモードなどの別モードへと結合することで発生すると考えられ、LN基板1の厚みや幅によってディップの発生する周波数が異なることが知られている。
【0006】
電気光学効果をもつ結晶基板を使用した光変調素子において上記ディップを抑制するための手法が、特許文献1〜6に開示されている。
【0007】
特許文献1には、基板を薄くすることで、ディップの生じる周波数を、信号電極に印加する電気信号よりも高周波側へシフトさせる手法が開示されている。しかし、この手法では、40GHz以上の帯域を確保するために、通常は0.5〜1mm程度ある基板の厚みを0.2mm以下にしなければならず、基板の機械的強度に難がある。すなわち、工程中に基板割れが発生したり、モジュール化後も、筐体や終端基板などとの熱膨張差で基板割れの生じる可能性があり、歩留りが低下する。
【0008】
特許文献2には、基板の裏面に溝を掘って肉薄部分を形成することで、駆動電圧を下げる手法が開示されている。この手法では、通常1mm厚の基板に0.1mm以下の肉薄部分を形成することになり、やはり基板の機械的強度に難がある。また、基板を貼り付ける際の接着剤が溝部分に入り込むため、接着剤と基板との熱膨張係数の違いから基板割れが発生し得る。
【0009】
特許文献3には、薄くした基板を低誘電率のガラス基板に貼り付けることで機械的強度を高める手法が開示されている。しかし、ガラスなどの低誘電率基板は、電気光学結晶基板と熱膨張係数が合わず(SiOの熱膨張係数0.5ppm/℃に対しLN基板の場合熱膨張係数15ppm/℃)、熱膨張差による基板割れの可能性を排除できない。また、貼り付け前に基板を薄くする加工時の基板割れも無視できない。
【0010】
特許文献4には、凹部空間を形成した筐体に、薄い基板を貼り付けるようにし、その凹部を低誘電率層とする手法が開示されている。この手法の場合も、ディップを十分に抑制するためには基板を薄くせねばならず、加工時の基板割れを解決することはできない。
【0011】
一方、これら基板を薄くする手法とは異なる手法が特許文献5,6に開示されている。特許文献5には、基板の側部に導電性のフローティング電極を形成することで、特定の周波数の基板内共振を抑え、ディップを回避する手法が開示されている。この手法は、基板を薄くするものではないので、機械的強度という点では上記の手法より好ましいが、ディップを抑制するのではなく、周波数をまたいで分散させるようにしているため、基板を薄くする上記手法に比べると帯域劣化が生じやすい。また、特許文献6には、基板の形状を、厚み方向及び幅方向に不均一化することで、ディップを分散する手法が開示されているが、この手法もディップを抑制するものではなく、帯域劣化を無視できない。
【0012】
【特許文献1】特開平05−257104号公報
【特許文献2】特開2002−169133号公報
【特許文献3】特開平05−093892号公報
【特許文献4】特開2002−357797号公報
【特許文献5】特開2005−181537号公報
【特許文献6】特開平05−276701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように従来の技術において、40GHz以上という広帯域対応に関し、電気光学効果をもつ結晶基板のディップ抑制と機械的強度を両立させ得る技術は、未だ提案されていない。本発明はこの点に着目したもので、機械的強度を落とさずにディップを抑制可能な構造をもった光変調素子とその製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためにここで提案する光変調素子は、電気光学効果をもつ結晶基板と、該結晶基板内に形成された光導波路と、前記結晶基板上に形成され、前記光導波路に対して電界を印加する電極と、該電極が形成された前記結晶基板の表面及びこれに対向する裏面の両方から離隔した前記結晶基板内部における前記電極下領域の少なくとも一部に、前記光導波路を避けて埋設された低誘電率の埋設層と、を含んで構成される。
【0015】
このような光変調素子であって、前記埋設層を前記結晶基板外部と連通させる外部接続通路をさらに含む光変調素子の製造方法として、ここでは、前記埋設層及び前記外部接続通路を形成する前記結晶基板の部分に超短パルスレーザを照射し、該レーザ照射部分をアモルファス化するレーザ照射工程と、当該結晶基板から前記アモルファス化部分を選択エッチングするエッチング工程と、を含む製造方法を提案する。
【0016】
また、上記提案に係る光変調素子であって、前記埋設層の端部が前記結晶基板の側面に露呈している光変調素子の製造方法として、ここでは、前記埋設層を形成する前記結晶基板の部分に超短パルスレーザを照射し、該レーザ照射部分をアモルファス化するレーザ照射工程と、当該結晶基板から前記アモルファス化部分を選択エッチングするエッチング工程と、を含む製造方法を提案する。あるいは、同様に前記埋設層の端部が前記結晶基板の側面に露呈している上記提案の光変調素子の製造方法として、前記埋設層の端部を露呈させる前記結晶基板の側面を介して、前記埋設層を形成する前記結晶基板の部分を切削する切削工程を含む製造方法を提案する。
【0017】
さらに、上記提案に係る光変調素子の製造方法として、ここでは、前記埋設層を形成する前記結晶基板の部分に超短パルスレーザを照射し、該レーザ照射部分に空孔を形成するレーザ照射工程を含む製造方法を提案する。
【発明の効果】
【0018】
この提案に係る光変調素子は、結晶基板内部の電極下領域(電気力線の通り道)に低誘電率の埋設層を設けたことにより、結晶基板内へ漏れる高周波電界の別モードへの結合が抑止されるので、周波数特性のディップが抑制される。そして、その埋設層は、基板表面及び裏面から離隔した結晶基板の内部に形成した、言わば基板内部を部分的にくり抜いた形態のもので、基板厚を薄くしたり裏面から溝を掘ったりするものではないので、結晶基板の機械的強度をあまり落とさずに済む。すなわち、本提案に係る光変調素子は、ディップ抑制と機械的強度とを両立させることが可能である。
【0019】
また、上記提案に係る製造方法によれば、電極を形成する結晶基板の表面やこれに対向する裏面に大きな開口を設けるなど、結晶基板の機械的強度を大きく損なうような加工を伴うことなく、結晶基板の内部に埋設層を形成することができる。また特に、基板裏面に開口する溝や孔等を形成することがないので、筐体接着時に使用される接着剤の埋設層への入り込みを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1及び図2に、光変調素子の第1実施形態を、平面図とA−A線断面図で示す。この光変調素子は、電気光学効果をもつ結晶基板の一例としてニオブ酸リチウム(LiNbO)の基板(LN基板)を使用したマッハ−ツェンダ型の光変調素子である。
【0021】
LN基板10の表面下には、チタン等の金属膜をパターニングして熱拡散させる、あるいは、パターニング後に安息香酸中でプロトン交換するなどの手法により、光導波路20が形成されている。光導波路20は、例えば、入射端部21と出射端部22との間に平行な二本の分岐部23,24を有する構造で、このような光導波路20を進行する光に対して変調をかける電極30が、SiO膜など低屈折率のバッファ層40を介してLN基板10の表面上に形成される。電極30は、分岐部23,24に対し作用するように形成され、一方の分岐部23上に形成された信号電極31と、その両脇の接地電極32と、を含んでいる。
【0022】
信号電極31は、光導波路20に電界を印加するための進行波電極とされ、一端から送信データに従う高周波電気信号が入力され、反対側の他端は50Ω等で終端される。信号電極31及び接地電極32の電極幅や電極間隔は、電気信号と光の速度が整合するように設計される。
【0023】
このような電極30を表面上に有するLN基板10の内部に、低誘電率の埋設層50が形成されている。埋設層50は、LN基板10の表面11(電極30形成面)及びこれに対向する裏面12の両方から離隔した基板内部において、電極30下の領域全体にわたって、すなわち、電極30の形状に沿ってその下方を覆うように形成されている。電極30下の領域全体にわたって形成されているので、埋設層50の端部は、LN基板10の側面13に達して露呈している(図1の破線領域参照)。なお、光導波路20はLN基板10の表面下に形成されているので、LN基板10の表面11から離隔した位置に形成される埋設層50に含まれない。つまり、埋設層50は、光導波路20を避けて埋設される。
【0024】
埋設層50は、LN基板10の表面11及び裏面12の両方から離隔し、LN基板10の内部に埋め込まれた状態にあるので、埋設層50の存在が、LN基板10の機械的強度を大きく低下させることはない。基板を薄くしたり溝を掘ったりする従来技術に比べれば、LN基板10の機械的強度は格段に高い。また、LN基板10の裏面12に開口する溝や孔などがないので、当該光変調素子を載置する筐体への接着時に、その接着剤が埋設層50へ入り込むこともない。
【0025】
一方、電極30の下方、すなわち電極30に印加される高周波電気信号によって発生する電界が作用する領域(電気力線の通り道)に、低誘電率の埋設層50を設けたので、図14で説明したような、漏れ出た高周波電界の別モードへの結合が抑止され、周波数特性のディップが抑制される。このディップ抑制のための埋設層50は、空洞(アモルファス部と空乏部の入り交じったものも含む)とすることができる。空洞とした場合、埋設層50は、真空状態としたり、空気や不活性ガスなどで満たすことが可能である。あるいは、埋設層50に低誘電率の物質を充填することもできる。不活性ガス等を入れる場合には、光変調器モジュールの組み立て時に充填して密封するなどの手法が可能である。このような埋設層50の形成位置は、光導波路20にかからない範囲でなるべく基板表面11に近い方がよい。また、埋設層50の厚み(図中上下方向の幅)は、機械的強度との兼ね合いを考慮しつつなるべく厚くする方がよい。このような埋設層50を設けることにより、さらに副次的効果として、例えば特開平10−133159号公報に述べられている帯域向上、駆動電圧低減といった効果にもつながり得る。
【0026】
図3及び図4に、第2実施形態を示している。図3が平面図、図4はそのB−B線断面図である。第2実施形態の光変調素子は、埋設層を電極下に部分的に設けた例である。第1実施形態と共通のものには同じ符号を付してあるので、その説明は省く。
【0027】
電極30はコ字状の平面形状を呈し、その両端部は、電気回路とワイヤボンディングで接続されるので、該両端部における信号電極31と接地電極32との間の電極間隔は、拡げられている。そして、これら端部からコ字状の曲折部(角部)までの間は、電極間隔が狭まっていくテーパ部となっている。曲折部と曲折部との間の直線部分が、光導波路20に作用する作用部となる。このように電極30は、端部及びテーパ部において電極間隔が拡がっているので、当該部分では高周波の電界が基板内に広がり、基板内に漏れやすくなる。また、曲折部においても、放射により電界が基板内に漏れやすい。そこで、第2実施形態の埋設層60は、電極30において高周波の漏れやすい箇所、つまり端部−テーパ部−曲折部の下方領域にだけ形成されている。なお、場合によっては、端部のみ、テーパ部のみ、曲折部のみなどに形成する例も可能である。
【0028】
図5及び図6には、光変調素子の第3実施形態を、平面図とそのA−A線断面図で示している。第3実施形態は、埋設層をその端部以外でLN基板外部と連通させる外部接続通路をさらに含む例である。なお、第1実施形態と共通のものには同じ符号を付してあるので、その説明は省く。
【0029】
埋設層50は、第1実施形態と同じく電極下領域全体にわたり形成されているが、第3実施形態では、この埋設層50をLN基板10の外部と連通させる外部接続通路70が複数形成されている。外部接続通路70は、埋設層50とLN基板10の側面13とを結ぶ通路で、後述のエッチング工程の時間短縮に寄与する。現在一般的なLN基板10において、厚みは0.5mm〜1mm、幅(短辺方向の長さ)は1mm〜2mm、長さ(長辺方向の長さ)は10mm〜90mmであるから、長さ方向に所定のピッチで外部接続通路70を形成することによって、エッチング液の浸透を速め、エッチング時間を短縮することができる。各外部接続通路70の口径は、基板の機械的強度に影響しないように、極力極小さくしておくのがよい。
【0030】
図7に、第4実施形態として、外部接続通路の変形例を図6相当の断面図で示す。この実施形態では、外部接続通路の一部が基板表面へ開口している。すなわち、図6同様に側面13へ開口する外部接続通路70と、LN基板10の表面11へ曲折して開口する外部接続通路71と、が形成されている。LN基板10の幅が広い場合など、埋設層50からLN基板10の側面13までの距離が長いときには、表面11へ開口した方が外部接続通路71の全長を短くできることがある。通路長は短い方が、エッチング時間の短縮には好ましい。
【0031】
図8には、埋設層の形態が異なる第5実施形態を図2相当の断面図で示す。なお、第1実施形態と共通のものには同じ符号を付してあるので、その説明は省く。
【0032】
この実施形態の埋設層80は、図1の埋設層50相当の電極下領域の全体にわたる多数の空孔81の束を含んで構成されている。各空孔81は、例えば特開2006−239718号公報にあるように、フェムト秒レーザ等の超短パルスレーザを、埋設層80の形成領域に沿って往復させて照射することにより、形成することができる。このような空孔80の束を含む構成の埋設層80によっても、LN基板10の機械的強度は落とさずにディップを抑制する効果を得ることができる。なお、埋設層80も、第2実施形態のように少なくとも部分的に存在していれば効果を得ることができる。
【0033】
図9に、第1〜第4実施形態に係る光変調素子の製造方法について工程図を示している。
【0034】
(A)まず、LN基板10において光導波路20を形成する部位に金属、例えばチタンの膜をパターニングし、熱拡散又はプロトン交換を実施して光導波路20を形成する。
(B)電極30を形成する領域の下方に相当するLN基板10の内部領域、つまり埋設層50,60(及び外部接続通路70,71)を形成する領域に対して、フェムト秒レーザ等の超短パルスレーザを走査し、該領域をアモルファス化する。このレーザ照射工程では、埋設層形成領域に対して超短パルスレーザを何度も往復させて照射することにより、埋設層形成領域全体をアモルファス化する。
(C)エッチング液にLN基板10を浸し、ウエットエッチングを実施する。このエッチング工程は、アモルファス部分の選択比が大きい(エッチング速度の速い)エッチング液を使用した選択エッチングである。エッチング液としては、例えば、HF(フッ酸)、HF+2HNO混合液、KOHなどの酸・アルカリを使用可能である。ただし、LN基板10にダメージを与える可能性のあるエッチング液の場合には、光導波路20を形成したLN基板10の表面をフォトレジストなどでマスクキングしておく必要がある。
(D)スパッタリングを使用して、光導波路20を形成したLN基板10の表面上にSiOなどのバッファ層40を形成する。
(E)バッファ層40の上に下地電極をパターニングし、鍍金等によって厚膜電極30を形成する。
【0035】
なお、工程順は上記の順に限らず、(B)→(C)→(A)→(D)→(E)、あるいは、(A)→(D)→(E)→(B)→(C)など、都合に応じて適宜変更可能である。
【0036】
以上は第1実施形態や第3実施形態、第4実施形態の埋設層50(及び外部接続通路70,71)を形成する場合の製造工程例であるが、第2実施形態の埋設層60を形成する場合は、レーザ照射工程→エッチング工程を必須とはしない。すなわち、埋設層60は、LN基板10の側面13に端部が露呈しており、しかも平面形状が四辺形なので、埋設層端部を露呈させる側面13からLN基板10を切削することにより、直接的に形成することができる。その切削工程には、レーザ加工、あるいはサンドブラスト加工を用いることが可能である。
【0037】
図10に、埋設層及び外部接続通路形成領域をアモルファス化する際の超短パルスレーザ照射手法の例を示している。(A)(B)(C)に示すように、超短パルスレーザLを、LN基板10のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に走査することにより、三次元形状のアモルファス化領域を形成することができる。超短パルスレーザLを走査制御する他にも、LN基板10をXYZステージに載置して移動制御することによっても同様の加工を施すことができる。
【0038】
以上のような製造方法によれば、電極30を形成するLN基板10の表面11やこれに対向する裏面12に大きな開口を設けるといった基板の機械的強度を大きく損なうような加工を伴わずに済む。
【0039】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0040】
(付記1) 電気光学効果をもつ結晶基板と、
該結晶基板内に形成された光導波路と、
前記結晶基板上に形成され、前記光導波路に対して電界を印加する電極と、
該電極が形成された前記結晶基板の表面及びこれに対向する裏面の両方から離隔した前記結晶基板内部における前記電極下領域の少なくとも一部に、前記光導波路を避けて埋設された低誘電率の埋設層と、
を含んで構成される光変調素子。
【0041】
(付記2) 付記1記載の光変調素子であって、
前記埋設層を前記結晶基板外部と連通させる外部接続通路をさらに含む光変調素子。
【0042】
(付記3) 付記2記載の光変調素子であって、
前記外部接続通路が前記結晶基板の側面に開口している光変調素子。
【0043】
(付記4) 付記2記載の光変調素子であって、
前記外部接続通路の少なくとも一部が前記結晶基板の表面に開口している光変調素子。
【0044】
(付記5) 付記1記載の光変調素子であって、
前記埋設層の端部が前記結晶基板の側面に露呈している光変調素子。
【0045】
(付記6) 付記1〜付記5のいずれかに記載の光変調素子であって、
前記埋設層が空洞である光変調素子。
【0046】
(付記7) 付記1〜付記6のいずれかに記載の光変調素子であって、
前記結晶基板がニオブ酸リチウムの基板である光変調素子。
【0047】
(付記8) 付記1〜付記6のいずれかに記載の光変調素子であって、
前記電極が進行波電極である光変調素子。
【0048】
(付記9) 付記2〜付記4のいずれかに記載の光変調素子の製造方法であって、
前記埋設層及び前記外部接続通路を形成する前記結晶基板の部分に超短パルスレーザを照射し、該レーザ照射部分をアモルファス化するレーザ照射工程と、
当該結晶基板から前記アモルファス化部分を選択エッチングするエッチング工程と、
を含む製造方法。
【0049】
(付記10) 付記5記載の光変調素子の製造方法であって、
前記埋設層を形成する前記結晶基板の部分に超短パルスレーザを照射し、該レーザ照射部分をアモルファス化するレーザ照射工程と、
当該結晶基板から前記アモルファス化部分を選択エッチングするエッチング工程と、
を含む製造方法。
【0050】
(付記11) 付記1〜付記5のいずれかに記載の光変調素子の製造方法であって、
前記埋設層を形成する前記結晶基板の部分に超短パルスレーザを照射し、該レーザ照射部分に空孔を形成するレーザ照射工程
を含む製造方法。
【0051】
(付記12) 付記5記載の光変調素子の製造方法であって、
前記埋設層の端部を露呈させる前記結晶基板の側面を介して、前記埋設層を形成する前記結晶基板の部分を切削する切削工程
を含む製造方法。
【0052】
(付記13) 付記9〜付記11のいずれかに記載の光変調素子の製造方法であって、
前記超短パルスレーザがフェムト秒レーザである製造方法。
【0053】
(付記14) 付記9又は付記10記載の光変調素子の製造方法であって、
前記エッチング工程をウエットエッチングにより実施する製造方法。
【0054】
(付記15) 付記9〜付記12のいずれかに記載の光変調素子の製造方法であって、
金属の熱拡散又はプロトン交換により、前記結晶基板内に前記光導波路を形成する工程を含む製造方法。
【0055】
(付記16) 付記9〜付記12のいずれかに記載の光変調素子の製造方法であって、
スパッタリングにより、前記電極を形成する前記結晶基板の表面にバッファ層を形成する工程を含む製造方法。
【0056】
(付記17) 付記16記載の光変調素子の製造方法であって、
前記バッファ層上に下地電極を形成して、鍍金により厚膜電極を形成する工程を含む製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態に係る光変調素子の平面図。
【図2】第1実施形態に係る光変調素子の断面図。
【図3】第2実施形態に係る光変調素子の平面図。
【図4】第2実施形態に係る光変調素子の断面図。
【図5】第3実施形態に係る光変調素子の平面図。
【図6】第3実施形態に係る光変調素子の断面図。
【図7】第4実施形態に係る光変調素子の断面図。
【図8】第5実施形態に係る光変調素子の断面図。
【図9】第1〜第4実施形態に係る光変調素子の製造工程図。
【図10】超短パルスレーザによる加工方法の説明図。
【図11】従来技術に係る光変調素子の平面図。
【図12】従来技術に係る光変調素子の断面図。
【図13】ディップを説明する周波数透過特性のグラフ。
【図14】ディップを生じる原因について示した説明図。
【符号の説明】
【0058】
10 LN基板(結晶基板)
11 基板表面
12 基板裏面
13 基板側面
20 光導波路
21 入射端部
22 出射端部
23,24 分岐部(作用部)
30 電極
31 信号電極
32 接地電極
40 バッファ層
50,60,80 埋設層
70,71 外部接続通路
81 空孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果をもつ結晶基板と、
該結晶基板内に形成された光導波路と、
前記結晶基板上に形成され、前記光導波路に対して電界を印加する電極と、
該電極が形成された前記結晶基板の表面及びこれに対向する裏面の両方から離隔した前記結晶基板内部における前記電極下領域の少なくとも一部に、前記光導波路を避けて埋設された低誘電率の埋設層と、
を含んで構成される光変調素子。
【請求項2】
請求項1記載の光変調素子であって、
前記埋設層を前記結晶基板外部と連通させる外部接続通路をさらに含む光変調素子。
【請求項3】
請求項1記載の光変調素子であって、
前記埋設層の端部が前記結晶基板の側面に露呈している光変調素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の光変調素子であって、
前記埋設層が空洞である光変調素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の光変調素子であって、
前記結晶基板がニオブ酸リチウムの基板である光変調素子。
【請求項6】
請求項2記載の光変調素子の製造方法であって、
前記埋設層及び前記外部接続通路を形成する前記結晶基板の部分に超短パルスレーザを照射し、該レーザ照射部分をアモルファス化するレーザ照射工程と、
当該結晶基板から前記アモルファス化部分を選択エッチングするエッチング工程と、
を含む製造方法。
【請求項7】
請求項3記載の光変調素子の製造方法であって、
前記埋設層を形成する前記結晶基板の部分に超短パルスレーザを照射し、該レーザ照射部分をアモルファス化するレーザ照射工程と、
当該結晶基板から前記アモルファス化部分を選択エッチングするエッチング工程と、
を含む製造方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項記載の光変調素子の製造方法であって、
前記埋設層を形成する前記結晶基板の部分に超短パルスレーザを照射し、該レーザ照射部分に空孔を形成するレーザ照射工程
を含む製造方法。
【請求項9】
請求項3記載の光変調素子の製造方法であって、
前記埋設層の端部を露呈させる前記結晶基板の側面を介して、前記埋設層を形成する前記結晶基板の部分を切削する切削工程
を含む製造方法。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項記載の光変調素子の製造方法であって、
前記超短パルスレーザがフェムト秒レーザである製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−8686(P2010−8686A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167584(P2008−167584)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】