光学センサ及び画像形成装置
【課題】対象物を多くの種類のなかから特定することができる光学センサを提供する。
【解決手段】 光源11、コリメートレンズ12、2つの受光器(13、15)、偏光フィルタ14、2つのミラー(21、22)、筐体16、標準板17、保持部材18などを有している。受光器13は、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分を受光し、受光器15は、表面正反射光を主として受光するように配置されている。また、紙種判別処理が行われるときには、筐体16の開口部を開放し、紙種判別処理が行われていないときには、該開口部を封止している。
【解決手段】 光源11、コリメートレンズ12、2つの受光器(13、15)、偏光フィルタ14、2つのミラー(21、22)、筐体16、標準板17、保持部材18などを有している。受光器13は、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分を受光し、受光器15は、表面正反射光を主として受光するように配置されている。また、紙種判別処理が行われるときには、筐体16の開口部を開放し、紙種判別処理が行われていないときには、該開口部を封止している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学センサ及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、対象物の種類を判別するのに好適な光学センサ、及び該光学センサを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置では、複数種類のシート状の記録媒体に高品質の画像を形成するために、画像形成を行う前に記録媒体の種類を判別し、その判別結果に応じて記録媒体の種類に適した作像条件を設定するものが知られている。
【0003】
記録媒体の種類の判別は、記録媒体からの反射光量や記録媒体の厚さを測定し、予め取得されている記録媒体の種類と反射光量や厚さとの関係を参照することにより行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、移動中のシート材の材質をシート材の表面で反射した反射光量とシート材を透過した透過光量に基づいて判別するシート材材質判別装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、反射型光学センサからの検出出力に基づいて、給紙部に収容された記録材の有無と給紙部の有無とを判別する判別手段を有する画像形成装置が開示されている。
【0006】
なお、記録媒体の厚さの測定法としては、透過光型や超音波等を用いた方法が提唱されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の判別方法では、非塗工紙/塗工紙/OHPシートといった大雑把な種類分けしかできず、高品質の画像形成を行うには不充分であった。
【0008】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、対象物を多くの種類のなかから特定することができる光学センサを提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、高品質の画像を形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の観点からすると、第1の偏光方向の直線偏光を、シート状の対象物の表面に向けて、該表面の法線に対して傾斜した方向から射出する照射系と;前記照射系から射出され前記対象物で正反射された光の光路上に配置された第1の光検出器と;前記対象物における入射面内で、前記対象物で拡散反射された光の光路上に配置され、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の直線偏光成分を透過させる光学素子と;前記光学素子を透過した光を受光する第2の光検出器と;前記照射系、前記第1の光検出器、前記光学素子及び前記第2の光検出器が保持され、前記対象物に向かう光束、及び前記対象物で反射された光束の光路となる開口部を有している筐体と;前記筐体内の汚染の有無を検知するための標準部材が取り付けられ、待機状態のときに、前記開口部を覆う封止部材と;を備える光学センサである。
【0011】
これによれば、対象物を多くの種類のなかから特定することができる。
【0012】
本発明は、第2の観点からすると、記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、前記記録媒体を対象物とする本発明の光学センサを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0013】
これによれば、高品質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図2(A)は光学センサの待機位置を説明するための図であり、図2(B)は光学センサの判別位置を説明するための図であり、図2(C)及び図2(D)は、それぞれ光学センサの昇降機構を説明するための図である。
【図3】光学センサの構成を説明するための図である。
【図4】光学センサの筐体の開口部を説明するための図である。
【図5】図5(A)〜図5(C)は、それぞれ光学センサが待機位置にあるときの保持部材の位置(封止位置)を説明するための図である。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、それぞれ光学センサが判別位置にあるときの保持部材の位置(開放位置)を説明するための図である。
【図7】起伏機構の押し上げ部材及びガイド部材を説明するための図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、それぞれ起伏機構の動作を説明するための図である。
【図9】ローラガイドを説明するための図である。
【図10】面発光レーザアレイを説明するための図である。
【図11】照射対象物への入射光の入射角を説明するための図である。
【図12】照明領域を説明するための図である。
【図13】偏光フィルタ14及び受光器13の配置位置を説明するための図である。
【図14】ミラー22及び受光器15の配置位置を説明するための図である。
【図15】光学センサが待機位置にあるときの開口部の状態を説明するための図である。
【図16】光学センサが判別位置にあるときの記録紙及び開口部の状態を説明するための図である。
【図17】図17(A)は表面正反射光を説明するための図であり、図17(B)は表面拡散反射光を説明するための図であり、図17(C)は内部拡散反射光を説明するための図である。
【図18】各受光器で受光される光を説明するための図である。
【図19】S1及びS2と、記録紙の銘柄との関係を説明するための図である。
【図20】標準板の位置と受光器での受光位置との関係を説明するための図である。
【図21】光学センサの変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図19に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像形成装置としてのカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
【0016】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、光学センサ2245、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0017】
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0018】
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、上位装置からの要求に応じて各部を制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置2010に送る。
【0019】
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
【0020】
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
【0021】
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
【0022】
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
【0023】
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転するものとする。
【0024】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
【0025】
光走査装置2010は、上位装置からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて、各色毎に変調された光束を、対応する帯電された感光体ドラムの表面にそれぞれ照射する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。
【0026】
トナーカートリッジ2034aにはブラックトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033aに供給される。トナーカートリッジ2034bにはシアントナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033bに供給される。トナーカートリッジ2034cにはマゼンタトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033cに供給される。トナーカートリッジ2034dにはイエロートナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033dに供給される。
【0027】
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
【0028】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされて多色のカラー画像が形成される。
【0029】
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。ところで、給紙トレイ2060内の記録紙の束は、不図示のばね機構により、給紙コロ2054に接するように上方に付勢されている。
【0030】
レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出す。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。ここで転写された記録紙は、定着装置2050に送られる。
【0031】
定着装置2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここで定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次スタックされる。
【0032】
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
【0033】
光学センサ2245は、給紙トレイ2060内に収容されている記録紙の種類を判別するためのセンサである。
【0034】
光学センサ2245は、非動作時には、一例として図2(A)に示されるように、給紙トレイ2060の着脱を妨げられないような位置(以下では、便宜上「待機位置」ともいう)に配置されている。また、待機位置にあるときの光学センサ2245の状態を「待機状態」という。
【0035】
そして、光学センサ2245は、動作時には、一例として図2(B)に示されるように、記録紙の束の一番上にある記録紙の表面に押し付けられた位置(以下では、便宜上「判別位置」ともいう)に配置される。また、判別位置にあるときの光学センサ2245の状態を「判別状態」という。
【0036】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、記録紙の表面に直交する方向をZ軸方向、記録紙の表面に平行な面をXY面として説明する。そして、光学センサ2245は、記録紙の+Z側に配置されているものとする。
【0037】
また、一例として図2(C)に示されるように、光学センサ2245の+Y側には、貫通孔及びねじ穴が形成されたブロックが取り付けられている。
【0038】
そして、一例として図2(D)に示されるように、ブロックの貫通孔には丸棒が挿入され、ねじ穴にはねじ棒が嵌合されている。このねじ棒は、一端がモータに固定されており、該モータが回転すると、ねじ棒も回転し、光学センサ2245がZ軸方向に関して移動、すなわち上下するようになっている。このモータは、プリンタ制御装置2090によって駆動される。すなわち、光学センサ2245は、プリンタ制御装置2090によって、待機位置及び判別位置に位置決めされる。
【0039】
このように、ブロックと丸棒とねじ棒とモータとによって、光学センサ2245の昇降機構が構成されている。なお、光学センサ2245の昇降機構が、これらとは異なる構成であっても良い。
【0040】
この光学センサ2245は、一例として図3に示されるように、光源11、コリメートレンズ12、2つの受光器(13、15)、偏光フィルタ14、2つのミラー(21、22)、筐体16、標準板17、保持部材18などを有している。
【0041】
筐体16は、アルミニウム製の箱部材であり、外乱光及び迷光の影響を低減するため、表面に黒アルマイト処理が施されている。また、底板には、記録紙に向かう光束、及び記録紙で反射された光束の光路となる開口部を有している(図4参照)。
【0042】
標準板17は、筐体16の開口部よりも一回り小さな板状部材であり、光源11からの光が入射すると、その一部が内部で拡散反射されるような繊維状のもので構成されている。例えば、紙を複数枚積層したものや、グラスウールを板状にしたものを用いることができる。
【0043】
保持部材18は、外形が筐体16の開口部よりも一回り大きな枠状部材であり、その一側の面に標準板17が取り付けられている。また、保持部材18の中央は、光源11から標準板17に向かう光束、及び標準板17で反射され各受光部に向かう光束の光路となる開口部となっている。すなわち、光源11からの光束は、けられることなく標準板17に照射されるとともに、標準板17で反射された光束は、けられることなく各受光器に向かう。
【0044】
保持部材18は、光学センサ2245が待機位置にあるときには、一例として図5(A)〜図5(C)に示されるように、筐体16の開口部を覆う位置(以下、「封止位置」ともいう)にある。このとき、Z軸方向に関して、標準板17の+Z側の面は、筐体16の底面の−Z側の面とほぼ同じ位置となるように設定されている。なお、以下では、標準板17の+Z側の面を標準板17の表面という。
【0045】
保持部材18は、光学センサ2245が判別位置にあるときには、一例として図6(A)〜図6(C)に示されるように、短手方向の一端を支点として起き上げられ、筐体16の開口部を開放する位置(以下、「開放位置」ともいう)にある。
【0046】
保持部材18を、封止位置から開放位置へ、及び開放位置から封止位置へ起伏させるための起伏機構が図7に示されている。ここでは、起伏機構は、押し上げ部材31と、ガイド部材32と、保持部材18を起伏可能に支持する支持部材35と、ローラガイド36を有している。この起伏機構は、保持部材18の長手方向の両端にそれぞれ取り付けられている(図9参照)。
【0047】
押し上げ部材31は、円柱又は角柱の柱部材と、該柱部材の+Z側端部近傍にほぼ水平に取り付けられた腕部材と、該腕部材の先端に取り付けられたベアリングなどの回転部材と、柱部材の−Z側端部に取り付けられた円板状の押し当て板とから構成されている。
【0048】
押し当て板は、柱部材が記録紙に押し付けられた際に記録紙を傷つけるのを防止している。また、回転部材は、ローラガイド36上を回転する。
【0049】
ガイド部材32は、パイプ状の部材であり、その中に押し上げ部材31の柱部材が挿入される。このガイド部材32には、押し上げ部材31の柱部材の上下動をガイドするためのスリットが形成されている。このスリットは、押し上げ部材31の回転を防止する機能も有している。
【0050】
図8(A)及び図8(B)には、起伏機構により保持部材18が起伏される様子が模式図的に示されている。なお、筐体16の底板の−Z側の面には、座グリ穴が開けられており、押し当て板が記録紙に強く押し当てられるのを防いでいる。
【0051】
光源11は、複数の発光部を有している。各発光部は、同一の基板上に形成された垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。すなわち、光源11は、面発光レーザアレイ(VCSELアレイ)を含んでいる。ここでは、一例として図10に示されるように、9個の発光部(ch1〜ch9)が2次元配列されている。
【0052】
光源11は、記録紙に対してS偏光となる光束が、−Z方向に射出されるように配置されている。
【0053】
また、光源11は、射出される光束の光量をモニタするためのモニタ系を有している。このモニタ系は、例えば、面発光レーザアレイから射出された光束の一部を分岐させる分岐光学素子、及び該分岐光学素子で分岐された光束を受光する受光素子などを含んでいる。
【0054】
そして、光源11は、面発光レーザアレイを駆動する駆動回路を有し、該駆動回路は、モニタ系の受光素子の出力信号に基づいて、光源11から射出される光束の光量が一定になるように駆動信号を制御している。この制御は、APC(Auto Power Control)と呼ばれている。
【0055】
コリメートレンズ12は、光源11から射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光とする。
【0056】
ここでは、光源11とコリメートレンズ12は一体化され、筐体16に取り付けられている。
【0057】
ミラー21は、コリメートレンズ12を介した光束の光路上に配置され、該光束の光路を筐体16の開口部に向かう方向に曲げる。ここでは、一例として図11に示されるように、ミラー21で反射された光束は、保持部材18が封止位置にあるとき、X軸方向に関して、標準板17の表面の中心に向かい、標準板17への入射角θが80°となるように設定されている。なお、図11では、煩雑さを避けるため、保持部材18の図示を省略している。また、以下では、標準板17の表面における照明領域(図12参照)の中心を「照明中心」と略述する。
【0058】
ところで、光が媒質の境界面に入射するとき、入射光線と入射点に立てた境界面の法線とを含む面は「入射面」と呼ばれている。そこで、入射光が複数の光線からなる場合は、光線毎に入射面が存在することとなるが、ここでは、便宜上、照明中心に入射する光線の入射面を、標準板17における入射面ということとする。すなわち、照明中心を含みXZ面に平行な面が標準板17における入射面である。
【0059】
偏光フィルタ14は、照明中心の+Z側に配置されている。この偏光フィルタ14は、P偏光を透過させ、S偏光を遮光する偏光フィルタである。なお、偏光フィルタ14に代えて、同等の機能を有する偏光ビームスプリッタを用いても良い。
【0060】
受光器13は、偏光フィルタ14の+Z側に配置されている。ここでは、図13に示されるように、照明中心と偏光フィルタ14及び受光器13の中心とを結ぶ線L1と、標準板17の表面とのなす角度は90°である。
【0061】
ここでは、偏光フィルタ14と受光器13は一体化され、筐体16に取り付けられている。
【0062】
ミラー22は、一例として図14に示されるように、標準板17の表面で正反射された光束の光路上に配置され、該光束の光路を+Z方向に曲げる。
【0063】
受光器15は、ミラー22で反射された光束の光路上に配置されている。
【0064】
そこで、光源11の中心、受光器13の中心、及び受光器15の中心は、いずれも標準板17における入射面上に存在する。
【0065】
ここでは、光学センサ2245が待機位置にあるときは、押し上げ部材31及び保持部材18の自重によって、押し上げ部材31が下がり、図15に示されるように、保持部材18の位置は、封止位置となる。これにより、筐体16の内部に紙粉などが入り込み、光学系の汚染を防止することができる。そこで、このとき光源11から射出された光束は、標準板17の表面を照射する。そして、標準板17からの反射光が、各受光部で受光される。なお、煩雑さを避けるため、図15では、起伏機構の表示は省略されている。
【0066】
また、光学センサ2245が判別位置にあるときは、記録紙に押し付けられることによって、押し上げ部材31が持ち上げられ、図16に示されるように、保持部材18の位置は、開放位置となる。このときは、開口部の直下に記録紙が位置している。そこで、このとき光源11から射出された光束は、記録紙の表面を照射する。そして、記録紙からの反射光が、各受光部で受光される。なお、煩雑さを避けるため、図16では、起伏機構の表示は省略されている。
【0067】
以下では、標準板17と記録紙を区別する必要がないときは、それらを総称して「照射対象物」という。
【0068】
ところで、照射対象物に光を照射したときの反射光は、照射対象物の表面で反射された反射光と、照射対象物の内部で反射された反射光に分けて考えることができる。また、照射対象物の表面で反射された反射光は、正反射された反射光と拡散反射された反射光に分けて考えることができる。以下では、便宜上、照射対象物の表面で正反射された反射光を「表面正反射光」、拡散反射された反射光を「表面拡散反射光」ともいう(図17(A)及び図17(B)参照)。
【0069】
照射対象物の表面は、平面部と傾面部とで構成され、その割合でその表面の平滑性が決定される。平面部で反射された光は表面正反射光となり、斜面部で反射された光は表面拡散反射光となる。表面拡散反射光は、完全に散乱反射された反射光であり、その反射方向は等方性があるとみなせる。そして、平滑性が高くなるほど表面正反射光の光量が増加する。
【0070】
一方、照射対象物の内部からの反射光は、その内部の繊維中で多重散乱するため拡散反射光のみとなる。以下では、便宜上、照射対象物の内部からの反射光を「内部拡散反射光」ともいう(図17(C)参照)。この内部拡散反射光も、表面拡散反射光と同様に、完全に散乱反射された反射光であり、その反射方向は等方性があるとみなせる。
【0071】
表面正反射光及び表面拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向と同じである。一方、内部拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向から回転していることが発明者らの各種実験によって確認されている。これは、繊維中を透過し、多重散乱される間に旋光し、偏光方向が回転するためと考えられる。
【0072】
そこで、偏光フィルタ14には、表面拡散反射光及び内部拡散反射光が入射する。表面拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向と同じS偏光であるため、表面拡散反射光は、偏光フィルタ14で遮光される。一方、内部拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向から回転しているため、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分が、偏光フィルタ14を透過する。すなわち、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分が受光器13で受光される(図18参照)。なお、図18では、煩雑さを避けるため、標準板17及び保持部材18の図示を省略している。
【0073】
発明者らは、種々の実験から、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分の光量は、照射対象物の厚みや密度に相関を持つことを確認している。これは、該P偏光成分の光量が、照射対象物の繊維中を通過する際の経路長に依存するためと考えられる。
【0074】
受光器15には、表面正反射光と、表面拡散反射光及び内部拡散反射光のごく一部が入射する。すなわち、受光器15には、主として、表面正反射光が入射する。
【0075】
受光器13及び受光器15は、それぞれ受光光量に対応する電気信号(光電変換信号)をプリンタ制御装置2090に出力する。なお、以下では、光源11からの光束が照射対象物に照射されたときの、受光器13の出力信号における信号レベルを「S1」、受光器15の出力信号における信号レベルを「S2」という。
【0076】
ここでは、カラープリンタ2000が対応可能な複数銘柄の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の銘柄毎にS1及びS2の値を計測し、該計測結果を「記録紙判別テーブル」としてプリンタ制御装置2090のROMに格納している。図19には、6銘柄の普通紙(N1〜N6)、3銘柄のマットコート紙(M1〜M3)、9銘柄のグロスコート紙(G1〜G9)について、S1及びS2の計測値が示されている。
【0077】
従来は、正反射光の光量から記録紙表面の光沢度を検出し、正反射光の光量と拡散反射光の光量の比から記録紙表面の平滑度を検出し、光沢度と平滑度の違いから記録紙を識別しようとしていた。これに対し、本実施形態では、記録紙表面の光沢度及び平滑度のみならず、記録紙の他の特性である厚さ及び密度も含んだ情報を反射光から検出し、識別可能な記録紙の種類を従来よりも拡大させている。
【0078】
例えば、図19に示されるように、従来の識別方法で用いられていた記録紙表面の情報(横軸)のみでは、普通紙とマットコート紙の区別は困難であった。そして、記録紙表面の情報(横軸)に、記録紙内部の情報(縦軸)を加えると、普通紙とマットコート紙の区別だけでなく、複数銘柄の普通紙、及び複数銘柄のマットコート紙もそれぞれ区別することが可能となった。
【0079】
すなわち、本実施形態では、光沢度、平滑度、厚さ、及び密度の少なくともいずれかが異なる複数の記録紙のなかから対象物の銘柄を特定することが可能である。
【0080】
また、カラープリンタ2000が対応可能な複数銘柄の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の銘柄毎に各ステーションでの最適な現像条件及び転写条件を決定し、該決定結果を「現像・転写テーブル」としてプリンタ制御装置2090のROMに格納している。
【0081】
プリンタ制御装置2090は、カラープリンタ2000の電源が入れられたとき、及び給紙トレイ2060に記録紙が供給されたときなどに、記録紙の紙種判別処理を行う。このプリンタ制御装置2090によって行われる紙種判別処理について以下に説明する。
【0082】
(1)昇降機構を介して光学センサ2245を待機位置から判別位置に移動させる。
(2)光学センサ2245の複数の発光部を同時に点灯させる。
(3)受光器13及び受光器15の出力信号からS1及びS2の値を求める。
(4)記録紙判別テーブルを参照し、得られたS1及びS2の値から記録紙の銘柄を特定する。
(5)特定された記録紙の銘柄をRAMに保存し、紙種判別処理を終了する。
【0083】
プリンタ制御装置2090は、ユーザからの印刷ジョブ要求を受け取ると、RAMに保存されている記録紙の銘柄を読み出し、該記録紙の銘柄に最適な現像条件及び転写条件を、現像・転写テーブルから求める。
【0084】
そして、プリンタ制御装置2090は、最適な現像条件及び転写条件に応じて各ステーションの現像装置及び転写装置を制御する。例えば、転写電圧やトナー量を制御する。これにより、高い品質の画像が記録紙に形成される。
【0085】
また、プリンタ制御装置2090は、光学センサ2245が待機状態にあるとき、定期的(例えば1日毎)に、筐体16内の汚染の有無を監視する監視処理を行う。
【0086】
この監視処理では、光源11からの光束を標準板17に照射し、各受光器の出力値を前回の監視処理での出力値と比較して、筐体16内が汚染されているか否かを検知する。プリンタ制御装置2090は、今回の出力値と前回の出力値との差が予め設定されている閾値を超えていれば、筐体16内が汚染されていると判断し、不図示のディスプレイにその旨を表示させ、ユーザに通知する。
【0087】
なお、監視処理が行われているときは、給紙動作は禁止される。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係るカラープリンタ2000によると、光走査装置2010、4つの画像形成ステーション、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙トレイ2060、光学センサ2245、及び装置全体を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0089】
光学センサ2245は、光源11、コリメートレンズ12、2つの受光器(13、15)、偏光フィルタ14、2つのミラー(21、22)、筐体16、標準板17、保持部材18などを有している。
【0090】
そして、受光器13は、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分を受光し、受光器15は、表面正反射光を主として受光するように配置されている。
【0091】
また、光学センサ2245は、紙種判別処理が行われるときには、筐体16の開口部を開放し、紙種判別処理が行われていないときには、該開口部を封止している。これにより、筐体16内部が汚染されるのを防止することが可能となり、その結果、光学センサ2245の高い判別精度を維持することができる。
【0092】
また、プリンタ制御装置2090が、定期的に監視処理を行っているため、光学センサ2245の判別精度の信頼性を向上させることができる。
【0093】
そこで、受光器13の出力信号と受光器15の出力信号とから、多くの種類のなかから記録紙の種類を安定して精度良く特定することができる。
【0094】
また、光源として面発光レーザアレイを用いているため、照射光を直線偏光にするための偏光フィルタが不要である。また、照射光を容易に平行光にすることができるとともに、小型化で複数の発光部を有する光源を実現できるため、光学センサの小型化及びコスト削減を図ることができる。
【0095】
また、光源が複数の発光部を有しているため、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分の光量を大きくすることができる。さらに、複数の発光部を同時点灯させることにより、反射光のスペックルパターンのコントラスト比が低減し、判別精度を向上させることができる。
【0096】
また、Z軸方向に関して、標準板17の表面が記録紙の表面と同じ位置にあるため、各受光器に含まれる受光素子の口径を小さくすることができる。例えば、標準板17の表面が記録紙の表面よりも+Z側にある場合が図20に示されている。また、これにより、監視処理の際の光路と紙種判別処理の際の光路とをほぼ同じにすることができる。
【0097】
また、押し上げ部材31及びガイド部材32などを含む起伏機構によって、開口部の開閉を行っているため、光学センサの複雑化、大型化、及び高コスト化を抑制することができる。
【0098】
そして、カラープリンタ2000は、光学センサ2245を備えているため、結果として、高品質の画像を安定して形成することができる。さらに、従来の手動で設定しなければならない煩わしさや設定ミスによる印刷の失敗が解消される。
【0099】
なお、上記実施形態では、記録紙に照射される光がS偏光の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、記録紙に照射される光がP偏光であっても良い。但し、この場合は、前記偏光フィルタ14に代えて、S偏光成分を透過させる偏光フィルタが用いられる。
【0100】
また、上記実施形態では、光源11が複数の発光部を有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、内部拡散反射光のP偏光成分の光量が確保可能であれば、光源11が1つの発光部を有していても良い。
【0101】
また、上記実施形態において、面発光レーザアレイから照射される光は、S偏光でなくても良い。但し、この場合は、記録紙に照射される光がS偏光となるように、例えば、コリメートレンズ12とミラー21の間に偏光子を設ける必要がある。
【0102】
また、上記実施形態において、前記面発光レーザアレイに代えて、従来のLD(Laser Diode)を用いても良い。但し、この場合は、一例として図21に示されるように、記録紙に照射される光をS偏光にするための偏光フィルタ23が必要となる。
【0103】
また、上記実施形態では、給紙トレイが1つの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、給紙トレイが複数あっても良い。この場合は、給紙トレイ毎に光学センサ2245を設けても良い。
【0104】
また、上記実施形態では、光学センサ2245において、照射対象物の表面への入射角θが80°の場合について説明したが、これに限定されるものではない。なお、入射角θとしては、60°〜80°であることが好ましい。
【0105】
また、上記実施形態において、プリンタ制御装置2090では、CPUによるプログラムに従う処理の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良いし、あるいは全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
【0106】
また、上記実施形態では、画像形成装置としてカラープリンタ2000の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光プロッタやデジタル複写装置であっても良い。
【0107】
また、上記実施形態では、画像形成装置が4つの感光体ドラムを有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0108】
また、光学センサ2245は、記録紙にインクを吹き付けて画像を形成する画像形成装置にも適用可能である。
【0109】
また、光学センサ2245は、画像形成装置以外の装置にも適用可能である。例えば、紙幣、株券などの真贋を判別する装置に用いることも可能である。
【0110】
また、光学センサ2245において、対象物が紙でない場合は、前記標準板17として、対象物と類似したものが用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上説明したように、本発明の光学センサによれば、対象物を多くの種類のなかから特定するのに適している。また、本発明の画像形成装置によれば、高品質の画像を形成するのに適している。
【符号の説明】
【0112】
11…光源(照射系の一部)、12…コリメートレンズ(照射系の一部)、13…受光器(第2の光検出器)、14…偏光フィルタ(光学素子)、15…受光器(第1の光検出器)、16…筐体、17…標準板、18…保持部材(封止部材)、21…ミラー(照射系の一部)、22…ミラー、23…偏光フィルタ、31…押し上げ部材(駆動機構の一部)、32…ガイド部材(駆動機構の一部)、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、2030a,2030b,2030c,2030d…感光体ドラム(像担持体)、2032a,2032b,2032c,2032d…帯電装置、2033a,2033b,2033c,2033d…現像ローラ(現像装置の一部)、2040…転写ベルト、2042…転写ローラ(転写装置の一部)、2050…定着装置、2090…プリンタ制御装置(汚染検知装置、処理装置)、2245…光学センサ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】特開平10−160687号公報
【特許文献2】特開2006−062842号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学センサ及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、対象物の種類を判別するのに好適な光学センサ、及び該光学センサを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置では、複数種類のシート状の記録媒体に高品質の画像を形成するために、画像形成を行う前に記録媒体の種類を判別し、その判別結果に応じて記録媒体の種類に適した作像条件を設定するものが知られている。
【0003】
記録媒体の種類の判別は、記録媒体からの反射光量や記録媒体の厚さを測定し、予め取得されている記録媒体の種類と反射光量や厚さとの関係を参照することにより行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、移動中のシート材の材質をシート材の表面で反射した反射光量とシート材を透過した透過光量に基づいて判別するシート材材質判別装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、反射型光学センサからの検出出力に基づいて、給紙部に収容された記録材の有無と給紙部の有無とを判別する判別手段を有する画像形成装置が開示されている。
【0006】
なお、記録媒体の厚さの測定法としては、透過光型や超音波等を用いた方法が提唱されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の判別方法では、非塗工紙/塗工紙/OHPシートといった大雑把な種類分けしかできず、高品質の画像形成を行うには不充分であった。
【0008】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、対象物を多くの種類のなかから特定することができる光学センサを提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、高品質の画像を形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の観点からすると、第1の偏光方向の直線偏光を、シート状の対象物の表面に向けて、該表面の法線に対して傾斜した方向から射出する照射系と;前記照射系から射出され前記対象物で正反射された光の光路上に配置された第1の光検出器と;前記対象物における入射面内で、前記対象物で拡散反射された光の光路上に配置され、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の直線偏光成分を透過させる光学素子と;前記光学素子を透過した光を受光する第2の光検出器と;前記照射系、前記第1の光検出器、前記光学素子及び前記第2の光検出器が保持され、前記対象物に向かう光束、及び前記対象物で反射された光束の光路となる開口部を有している筐体と;前記筐体内の汚染の有無を検知するための標準部材が取り付けられ、待機状態のときに、前記開口部を覆う封止部材と;を備える光学センサである。
【0011】
これによれば、対象物を多くの種類のなかから特定することができる。
【0012】
本発明は、第2の観点からすると、記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、前記記録媒体を対象物とする本発明の光学センサを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0013】
これによれば、高品質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図2(A)は光学センサの待機位置を説明するための図であり、図2(B)は光学センサの判別位置を説明するための図であり、図2(C)及び図2(D)は、それぞれ光学センサの昇降機構を説明するための図である。
【図3】光学センサの構成を説明するための図である。
【図4】光学センサの筐体の開口部を説明するための図である。
【図5】図5(A)〜図5(C)は、それぞれ光学センサが待機位置にあるときの保持部材の位置(封止位置)を説明するための図である。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、それぞれ光学センサが判別位置にあるときの保持部材の位置(開放位置)を説明するための図である。
【図7】起伏機構の押し上げ部材及びガイド部材を説明するための図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、それぞれ起伏機構の動作を説明するための図である。
【図9】ローラガイドを説明するための図である。
【図10】面発光レーザアレイを説明するための図である。
【図11】照射対象物への入射光の入射角を説明するための図である。
【図12】照明領域を説明するための図である。
【図13】偏光フィルタ14及び受光器13の配置位置を説明するための図である。
【図14】ミラー22及び受光器15の配置位置を説明するための図である。
【図15】光学センサが待機位置にあるときの開口部の状態を説明するための図である。
【図16】光学センサが判別位置にあるときの記録紙及び開口部の状態を説明するための図である。
【図17】図17(A)は表面正反射光を説明するための図であり、図17(B)は表面拡散反射光を説明するための図であり、図17(C)は内部拡散反射光を説明するための図である。
【図18】各受光器で受光される光を説明するための図である。
【図19】S1及びS2と、記録紙の銘柄との関係を説明するための図である。
【図20】標準板の位置と受光器での受光位置との関係を説明するための図である。
【図21】光学センサの変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図19に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像形成装置としてのカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
【0016】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、光学センサ2245、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0017】
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0018】
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、上位装置からの要求に応じて各部を制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置2010に送る。
【0019】
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
【0020】
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
【0021】
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
【0022】
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
【0023】
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転するものとする。
【0024】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
【0025】
光走査装置2010は、上位装置からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて、各色毎に変調された光束を、対応する帯電された感光体ドラムの表面にそれぞれ照射する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。
【0026】
トナーカートリッジ2034aにはブラックトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033aに供給される。トナーカートリッジ2034bにはシアントナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033bに供給される。トナーカートリッジ2034cにはマゼンタトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033cに供給される。トナーカートリッジ2034dにはイエロートナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033dに供給される。
【0027】
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
【0028】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされて多色のカラー画像が形成される。
【0029】
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。ところで、給紙トレイ2060内の記録紙の束は、不図示のばね機構により、給紙コロ2054に接するように上方に付勢されている。
【0030】
レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出す。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。ここで転写された記録紙は、定着装置2050に送られる。
【0031】
定着装置2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここで定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次スタックされる。
【0032】
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
【0033】
光学センサ2245は、給紙トレイ2060内に収容されている記録紙の種類を判別するためのセンサである。
【0034】
光学センサ2245は、非動作時には、一例として図2(A)に示されるように、給紙トレイ2060の着脱を妨げられないような位置(以下では、便宜上「待機位置」ともいう)に配置されている。また、待機位置にあるときの光学センサ2245の状態を「待機状態」という。
【0035】
そして、光学センサ2245は、動作時には、一例として図2(B)に示されるように、記録紙の束の一番上にある記録紙の表面に押し付けられた位置(以下では、便宜上「判別位置」ともいう)に配置される。また、判別位置にあるときの光学センサ2245の状態を「判別状態」という。
【0036】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、記録紙の表面に直交する方向をZ軸方向、記録紙の表面に平行な面をXY面として説明する。そして、光学センサ2245は、記録紙の+Z側に配置されているものとする。
【0037】
また、一例として図2(C)に示されるように、光学センサ2245の+Y側には、貫通孔及びねじ穴が形成されたブロックが取り付けられている。
【0038】
そして、一例として図2(D)に示されるように、ブロックの貫通孔には丸棒が挿入され、ねじ穴にはねじ棒が嵌合されている。このねじ棒は、一端がモータに固定されており、該モータが回転すると、ねじ棒も回転し、光学センサ2245がZ軸方向に関して移動、すなわち上下するようになっている。このモータは、プリンタ制御装置2090によって駆動される。すなわち、光学センサ2245は、プリンタ制御装置2090によって、待機位置及び判別位置に位置決めされる。
【0039】
このように、ブロックと丸棒とねじ棒とモータとによって、光学センサ2245の昇降機構が構成されている。なお、光学センサ2245の昇降機構が、これらとは異なる構成であっても良い。
【0040】
この光学センサ2245は、一例として図3に示されるように、光源11、コリメートレンズ12、2つの受光器(13、15)、偏光フィルタ14、2つのミラー(21、22)、筐体16、標準板17、保持部材18などを有している。
【0041】
筐体16は、アルミニウム製の箱部材であり、外乱光及び迷光の影響を低減するため、表面に黒アルマイト処理が施されている。また、底板には、記録紙に向かう光束、及び記録紙で反射された光束の光路となる開口部を有している(図4参照)。
【0042】
標準板17は、筐体16の開口部よりも一回り小さな板状部材であり、光源11からの光が入射すると、その一部が内部で拡散反射されるような繊維状のもので構成されている。例えば、紙を複数枚積層したものや、グラスウールを板状にしたものを用いることができる。
【0043】
保持部材18は、外形が筐体16の開口部よりも一回り大きな枠状部材であり、その一側の面に標準板17が取り付けられている。また、保持部材18の中央は、光源11から標準板17に向かう光束、及び標準板17で反射され各受光部に向かう光束の光路となる開口部となっている。すなわち、光源11からの光束は、けられることなく標準板17に照射されるとともに、標準板17で反射された光束は、けられることなく各受光器に向かう。
【0044】
保持部材18は、光学センサ2245が待機位置にあるときには、一例として図5(A)〜図5(C)に示されるように、筐体16の開口部を覆う位置(以下、「封止位置」ともいう)にある。このとき、Z軸方向に関して、標準板17の+Z側の面は、筐体16の底面の−Z側の面とほぼ同じ位置となるように設定されている。なお、以下では、標準板17の+Z側の面を標準板17の表面という。
【0045】
保持部材18は、光学センサ2245が判別位置にあるときには、一例として図6(A)〜図6(C)に示されるように、短手方向の一端を支点として起き上げられ、筐体16の開口部を開放する位置(以下、「開放位置」ともいう)にある。
【0046】
保持部材18を、封止位置から開放位置へ、及び開放位置から封止位置へ起伏させるための起伏機構が図7に示されている。ここでは、起伏機構は、押し上げ部材31と、ガイド部材32と、保持部材18を起伏可能に支持する支持部材35と、ローラガイド36を有している。この起伏機構は、保持部材18の長手方向の両端にそれぞれ取り付けられている(図9参照)。
【0047】
押し上げ部材31は、円柱又は角柱の柱部材と、該柱部材の+Z側端部近傍にほぼ水平に取り付けられた腕部材と、該腕部材の先端に取り付けられたベアリングなどの回転部材と、柱部材の−Z側端部に取り付けられた円板状の押し当て板とから構成されている。
【0048】
押し当て板は、柱部材が記録紙に押し付けられた際に記録紙を傷つけるのを防止している。また、回転部材は、ローラガイド36上を回転する。
【0049】
ガイド部材32は、パイプ状の部材であり、その中に押し上げ部材31の柱部材が挿入される。このガイド部材32には、押し上げ部材31の柱部材の上下動をガイドするためのスリットが形成されている。このスリットは、押し上げ部材31の回転を防止する機能も有している。
【0050】
図8(A)及び図8(B)には、起伏機構により保持部材18が起伏される様子が模式図的に示されている。なお、筐体16の底板の−Z側の面には、座グリ穴が開けられており、押し当て板が記録紙に強く押し当てられるのを防いでいる。
【0051】
光源11は、複数の発光部を有している。各発光部は、同一の基板上に形成された垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。すなわち、光源11は、面発光レーザアレイ(VCSELアレイ)を含んでいる。ここでは、一例として図10に示されるように、9個の発光部(ch1〜ch9)が2次元配列されている。
【0052】
光源11は、記録紙に対してS偏光となる光束が、−Z方向に射出されるように配置されている。
【0053】
また、光源11は、射出される光束の光量をモニタするためのモニタ系を有している。このモニタ系は、例えば、面発光レーザアレイから射出された光束の一部を分岐させる分岐光学素子、及び該分岐光学素子で分岐された光束を受光する受光素子などを含んでいる。
【0054】
そして、光源11は、面発光レーザアレイを駆動する駆動回路を有し、該駆動回路は、モニタ系の受光素子の出力信号に基づいて、光源11から射出される光束の光量が一定になるように駆動信号を制御している。この制御は、APC(Auto Power Control)と呼ばれている。
【0055】
コリメートレンズ12は、光源11から射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光とする。
【0056】
ここでは、光源11とコリメートレンズ12は一体化され、筐体16に取り付けられている。
【0057】
ミラー21は、コリメートレンズ12を介した光束の光路上に配置され、該光束の光路を筐体16の開口部に向かう方向に曲げる。ここでは、一例として図11に示されるように、ミラー21で反射された光束は、保持部材18が封止位置にあるとき、X軸方向に関して、標準板17の表面の中心に向かい、標準板17への入射角θが80°となるように設定されている。なお、図11では、煩雑さを避けるため、保持部材18の図示を省略している。また、以下では、標準板17の表面における照明領域(図12参照)の中心を「照明中心」と略述する。
【0058】
ところで、光が媒質の境界面に入射するとき、入射光線と入射点に立てた境界面の法線とを含む面は「入射面」と呼ばれている。そこで、入射光が複数の光線からなる場合は、光線毎に入射面が存在することとなるが、ここでは、便宜上、照明中心に入射する光線の入射面を、標準板17における入射面ということとする。すなわち、照明中心を含みXZ面に平行な面が標準板17における入射面である。
【0059】
偏光フィルタ14は、照明中心の+Z側に配置されている。この偏光フィルタ14は、P偏光を透過させ、S偏光を遮光する偏光フィルタである。なお、偏光フィルタ14に代えて、同等の機能を有する偏光ビームスプリッタを用いても良い。
【0060】
受光器13は、偏光フィルタ14の+Z側に配置されている。ここでは、図13に示されるように、照明中心と偏光フィルタ14及び受光器13の中心とを結ぶ線L1と、標準板17の表面とのなす角度は90°である。
【0061】
ここでは、偏光フィルタ14と受光器13は一体化され、筐体16に取り付けられている。
【0062】
ミラー22は、一例として図14に示されるように、標準板17の表面で正反射された光束の光路上に配置され、該光束の光路を+Z方向に曲げる。
【0063】
受光器15は、ミラー22で反射された光束の光路上に配置されている。
【0064】
そこで、光源11の中心、受光器13の中心、及び受光器15の中心は、いずれも標準板17における入射面上に存在する。
【0065】
ここでは、光学センサ2245が待機位置にあるときは、押し上げ部材31及び保持部材18の自重によって、押し上げ部材31が下がり、図15に示されるように、保持部材18の位置は、封止位置となる。これにより、筐体16の内部に紙粉などが入り込み、光学系の汚染を防止することができる。そこで、このとき光源11から射出された光束は、標準板17の表面を照射する。そして、標準板17からの反射光が、各受光部で受光される。なお、煩雑さを避けるため、図15では、起伏機構の表示は省略されている。
【0066】
また、光学センサ2245が判別位置にあるときは、記録紙に押し付けられることによって、押し上げ部材31が持ち上げられ、図16に示されるように、保持部材18の位置は、開放位置となる。このときは、開口部の直下に記録紙が位置している。そこで、このとき光源11から射出された光束は、記録紙の表面を照射する。そして、記録紙からの反射光が、各受光部で受光される。なお、煩雑さを避けるため、図16では、起伏機構の表示は省略されている。
【0067】
以下では、標準板17と記録紙を区別する必要がないときは、それらを総称して「照射対象物」という。
【0068】
ところで、照射対象物に光を照射したときの反射光は、照射対象物の表面で反射された反射光と、照射対象物の内部で反射された反射光に分けて考えることができる。また、照射対象物の表面で反射された反射光は、正反射された反射光と拡散反射された反射光に分けて考えることができる。以下では、便宜上、照射対象物の表面で正反射された反射光を「表面正反射光」、拡散反射された反射光を「表面拡散反射光」ともいう(図17(A)及び図17(B)参照)。
【0069】
照射対象物の表面は、平面部と傾面部とで構成され、その割合でその表面の平滑性が決定される。平面部で反射された光は表面正反射光となり、斜面部で反射された光は表面拡散反射光となる。表面拡散反射光は、完全に散乱反射された反射光であり、その反射方向は等方性があるとみなせる。そして、平滑性が高くなるほど表面正反射光の光量が増加する。
【0070】
一方、照射対象物の内部からの反射光は、その内部の繊維中で多重散乱するため拡散反射光のみとなる。以下では、便宜上、照射対象物の内部からの反射光を「内部拡散反射光」ともいう(図17(C)参照)。この内部拡散反射光も、表面拡散反射光と同様に、完全に散乱反射された反射光であり、その反射方向は等方性があるとみなせる。
【0071】
表面正反射光及び表面拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向と同じである。一方、内部拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向から回転していることが発明者らの各種実験によって確認されている。これは、繊維中を透過し、多重散乱される間に旋光し、偏光方向が回転するためと考えられる。
【0072】
そこで、偏光フィルタ14には、表面拡散反射光及び内部拡散反射光が入射する。表面拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向と同じS偏光であるため、表面拡散反射光は、偏光フィルタ14で遮光される。一方、内部拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向から回転しているため、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分が、偏光フィルタ14を透過する。すなわち、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分が受光器13で受光される(図18参照)。なお、図18では、煩雑さを避けるため、標準板17及び保持部材18の図示を省略している。
【0073】
発明者らは、種々の実験から、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分の光量は、照射対象物の厚みや密度に相関を持つことを確認している。これは、該P偏光成分の光量が、照射対象物の繊維中を通過する際の経路長に依存するためと考えられる。
【0074】
受光器15には、表面正反射光と、表面拡散反射光及び内部拡散反射光のごく一部が入射する。すなわち、受光器15には、主として、表面正反射光が入射する。
【0075】
受光器13及び受光器15は、それぞれ受光光量に対応する電気信号(光電変換信号)をプリンタ制御装置2090に出力する。なお、以下では、光源11からの光束が照射対象物に照射されたときの、受光器13の出力信号における信号レベルを「S1」、受光器15の出力信号における信号レベルを「S2」という。
【0076】
ここでは、カラープリンタ2000が対応可能な複数銘柄の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の銘柄毎にS1及びS2の値を計測し、該計測結果を「記録紙判別テーブル」としてプリンタ制御装置2090のROMに格納している。図19には、6銘柄の普通紙(N1〜N6)、3銘柄のマットコート紙(M1〜M3)、9銘柄のグロスコート紙(G1〜G9)について、S1及びS2の計測値が示されている。
【0077】
従来は、正反射光の光量から記録紙表面の光沢度を検出し、正反射光の光量と拡散反射光の光量の比から記録紙表面の平滑度を検出し、光沢度と平滑度の違いから記録紙を識別しようとしていた。これに対し、本実施形態では、記録紙表面の光沢度及び平滑度のみならず、記録紙の他の特性である厚さ及び密度も含んだ情報を反射光から検出し、識別可能な記録紙の種類を従来よりも拡大させている。
【0078】
例えば、図19に示されるように、従来の識別方法で用いられていた記録紙表面の情報(横軸)のみでは、普通紙とマットコート紙の区別は困難であった。そして、記録紙表面の情報(横軸)に、記録紙内部の情報(縦軸)を加えると、普通紙とマットコート紙の区別だけでなく、複数銘柄の普通紙、及び複数銘柄のマットコート紙もそれぞれ区別することが可能となった。
【0079】
すなわち、本実施形態では、光沢度、平滑度、厚さ、及び密度の少なくともいずれかが異なる複数の記録紙のなかから対象物の銘柄を特定することが可能である。
【0080】
また、カラープリンタ2000が対応可能な複数銘柄の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の銘柄毎に各ステーションでの最適な現像条件及び転写条件を決定し、該決定結果を「現像・転写テーブル」としてプリンタ制御装置2090のROMに格納している。
【0081】
プリンタ制御装置2090は、カラープリンタ2000の電源が入れられたとき、及び給紙トレイ2060に記録紙が供給されたときなどに、記録紙の紙種判別処理を行う。このプリンタ制御装置2090によって行われる紙種判別処理について以下に説明する。
【0082】
(1)昇降機構を介して光学センサ2245を待機位置から判別位置に移動させる。
(2)光学センサ2245の複数の発光部を同時に点灯させる。
(3)受光器13及び受光器15の出力信号からS1及びS2の値を求める。
(4)記録紙判別テーブルを参照し、得られたS1及びS2の値から記録紙の銘柄を特定する。
(5)特定された記録紙の銘柄をRAMに保存し、紙種判別処理を終了する。
【0083】
プリンタ制御装置2090は、ユーザからの印刷ジョブ要求を受け取ると、RAMに保存されている記録紙の銘柄を読み出し、該記録紙の銘柄に最適な現像条件及び転写条件を、現像・転写テーブルから求める。
【0084】
そして、プリンタ制御装置2090は、最適な現像条件及び転写条件に応じて各ステーションの現像装置及び転写装置を制御する。例えば、転写電圧やトナー量を制御する。これにより、高い品質の画像が記録紙に形成される。
【0085】
また、プリンタ制御装置2090は、光学センサ2245が待機状態にあるとき、定期的(例えば1日毎)に、筐体16内の汚染の有無を監視する監視処理を行う。
【0086】
この監視処理では、光源11からの光束を標準板17に照射し、各受光器の出力値を前回の監視処理での出力値と比較して、筐体16内が汚染されているか否かを検知する。プリンタ制御装置2090は、今回の出力値と前回の出力値との差が予め設定されている閾値を超えていれば、筐体16内が汚染されていると判断し、不図示のディスプレイにその旨を表示させ、ユーザに通知する。
【0087】
なお、監視処理が行われているときは、給紙動作は禁止される。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係るカラープリンタ2000によると、光走査装置2010、4つの画像形成ステーション、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙トレイ2060、光学センサ2245、及び装置全体を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0089】
光学センサ2245は、光源11、コリメートレンズ12、2つの受光器(13、15)、偏光フィルタ14、2つのミラー(21、22)、筐体16、標準板17、保持部材18などを有している。
【0090】
そして、受光器13は、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分を受光し、受光器15は、表面正反射光を主として受光するように配置されている。
【0091】
また、光学センサ2245は、紙種判別処理が行われるときには、筐体16の開口部を開放し、紙種判別処理が行われていないときには、該開口部を封止している。これにより、筐体16内部が汚染されるのを防止することが可能となり、その結果、光学センサ2245の高い判別精度を維持することができる。
【0092】
また、プリンタ制御装置2090が、定期的に監視処理を行っているため、光学センサ2245の判別精度の信頼性を向上させることができる。
【0093】
そこで、受光器13の出力信号と受光器15の出力信号とから、多くの種類のなかから記録紙の種類を安定して精度良く特定することができる。
【0094】
また、光源として面発光レーザアレイを用いているため、照射光を直線偏光にするための偏光フィルタが不要である。また、照射光を容易に平行光にすることができるとともに、小型化で複数の発光部を有する光源を実現できるため、光学センサの小型化及びコスト削減を図ることができる。
【0095】
また、光源が複数の発光部を有しているため、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分の光量を大きくすることができる。さらに、複数の発光部を同時点灯させることにより、反射光のスペックルパターンのコントラスト比が低減し、判別精度を向上させることができる。
【0096】
また、Z軸方向に関して、標準板17の表面が記録紙の表面と同じ位置にあるため、各受光器に含まれる受光素子の口径を小さくすることができる。例えば、標準板17の表面が記録紙の表面よりも+Z側にある場合が図20に示されている。また、これにより、監視処理の際の光路と紙種判別処理の際の光路とをほぼ同じにすることができる。
【0097】
また、押し上げ部材31及びガイド部材32などを含む起伏機構によって、開口部の開閉を行っているため、光学センサの複雑化、大型化、及び高コスト化を抑制することができる。
【0098】
そして、カラープリンタ2000は、光学センサ2245を備えているため、結果として、高品質の画像を安定して形成することができる。さらに、従来の手動で設定しなければならない煩わしさや設定ミスによる印刷の失敗が解消される。
【0099】
なお、上記実施形態では、記録紙に照射される光がS偏光の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、記録紙に照射される光がP偏光であっても良い。但し、この場合は、前記偏光フィルタ14に代えて、S偏光成分を透過させる偏光フィルタが用いられる。
【0100】
また、上記実施形態では、光源11が複数の発光部を有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、内部拡散反射光のP偏光成分の光量が確保可能であれば、光源11が1つの発光部を有していても良い。
【0101】
また、上記実施形態において、面発光レーザアレイから照射される光は、S偏光でなくても良い。但し、この場合は、記録紙に照射される光がS偏光となるように、例えば、コリメートレンズ12とミラー21の間に偏光子を設ける必要がある。
【0102】
また、上記実施形態において、前記面発光レーザアレイに代えて、従来のLD(Laser Diode)を用いても良い。但し、この場合は、一例として図21に示されるように、記録紙に照射される光をS偏光にするための偏光フィルタ23が必要となる。
【0103】
また、上記実施形態では、給紙トレイが1つの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、給紙トレイが複数あっても良い。この場合は、給紙トレイ毎に光学センサ2245を設けても良い。
【0104】
また、上記実施形態では、光学センサ2245において、照射対象物の表面への入射角θが80°の場合について説明したが、これに限定されるものではない。なお、入射角θとしては、60°〜80°であることが好ましい。
【0105】
また、上記実施形態において、プリンタ制御装置2090では、CPUによるプログラムに従う処理の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良いし、あるいは全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
【0106】
また、上記実施形態では、画像形成装置としてカラープリンタ2000の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光プロッタやデジタル複写装置であっても良い。
【0107】
また、上記実施形態では、画像形成装置が4つの感光体ドラムを有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0108】
また、光学センサ2245は、記録紙にインクを吹き付けて画像を形成する画像形成装置にも適用可能である。
【0109】
また、光学センサ2245は、画像形成装置以外の装置にも適用可能である。例えば、紙幣、株券などの真贋を判別する装置に用いることも可能である。
【0110】
また、光学センサ2245において、対象物が紙でない場合は、前記標準板17として、対象物と類似したものが用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上説明したように、本発明の光学センサによれば、対象物を多くの種類のなかから特定するのに適している。また、本発明の画像形成装置によれば、高品質の画像を形成するのに適している。
【符号の説明】
【0112】
11…光源(照射系の一部)、12…コリメートレンズ(照射系の一部)、13…受光器(第2の光検出器)、14…偏光フィルタ(光学素子)、15…受光器(第1の光検出器)、16…筐体、17…標準板、18…保持部材(封止部材)、21…ミラー(照射系の一部)、22…ミラー、23…偏光フィルタ、31…押し上げ部材(駆動機構の一部)、32…ガイド部材(駆動機構の一部)、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、2030a,2030b,2030c,2030d…感光体ドラム(像担持体)、2032a,2032b,2032c,2032d…帯電装置、2033a,2033b,2033c,2033d…現像ローラ(現像装置の一部)、2040…転写ベルト、2042…転写ローラ(転写装置の一部)、2050…定着装置、2090…プリンタ制御装置(汚染検知装置、処理装置)、2245…光学センサ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】特開平10−160687号公報
【特許文献2】特開2006−062842号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光方向の直線偏光を、シート状の対象物の表面に向けて、該表面の法線に対して傾斜した方向から射出する照射系と;
前記照射系から射出され前記対象物で正反射された光の光路上に配置された第1の光検出器と;
前記対象物における入射面内で、前記対象物で拡散反射された光の光路上に配置され、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の直線偏光成分を透過させる光学素子と;
前記光学素子を透過した光を受光する第2の光検出器と;
前記照射系、前記第1の光検出器、前記光学素子及び前記第2の光検出器が保持され、前記対象物に向かう光束、及び前記対象物で反射された光束の光路となる開口部を有している筐体と;
前記筐体内の汚染の有無を検知するための標準部材が取り付けられ、待機状態のときに、前記開口部を覆う封止部材と;を備える光学センサ。
【請求項2】
前記封止部材は、一端が起伏可能に支持され、
前記筐体が前記対象物に近づくと、前記封止部材が起き上がり、前記開口部を開放状態とする駆動機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学センサ。
【請求項3】
前記照射系からの光束を前記標準板に照射し、
前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器の出力信号に基づいて、前記筐体内の汚染の有無を検知する汚染検知装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学センサ。
【請求項4】
前記照射系からの光束を前記対象物に照射し、
前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器の出力信号に基づいて、前記対象物を特定する処理装置を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項5】
前記照射系は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項6】
記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、
前記記録媒体を対象物とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学センサを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記光学センサと前記記録媒体との距離を変化させるための昇降機構を備えることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項1】
第1の偏光方向の直線偏光を、シート状の対象物の表面に向けて、該表面の法線に対して傾斜した方向から射出する照射系と;
前記照射系から射出され前記対象物で正反射された光の光路上に配置された第1の光検出器と;
前記対象物における入射面内で、前記対象物で拡散反射された光の光路上に配置され、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の直線偏光成分を透過させる光学素子と;
前記光学素子を透過した光を受光する第2の光検出器と;
前記照射系、前記第1の光検出器、前記光学素子及び前記第2の光検出器が保持され、前記対象物に向かう光束、及び前記対象物で反射された光束の光路となる開口部を有している筐体と;
前記筐体内の汚染の有無を検知するための標準部材が取り付けられ、待機状態のときに、前記開口部を覆う封止部材と;を備える光学センサ。
【請求項2】
前記封止部材は、一端が起伏可能に支持され、
前記筐体が前記対象物に近づくと、前記封止部材が起き上がり、前記開口部を開放状態とする駆動機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学センサ。
【請求項3】
前記照射系からの光束を前記標準板に照射し、
前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器の出力信号に基づいて、前記筐体内の汚染の有無を検知する汚染検知装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学センサ。
【請求項4】
前記照射系からの光束を前記対象物に照射し、
前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器の出力信号に基づいて、前記対象物を特定する処理装置を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項5】
前記照射系は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項6】
記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、
前記記録媒体を対象物とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学センサを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記光学センサと前記記録媒体との距離を変化させるための昇降機構を備えることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−131593(P2012−131593A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284075(P2010−284075)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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