説明

光学ドライブ装置、ホモダイン検波方法

【課題】光記録媒体についてホモダイン検波による信号再生を行う場合において、面ブレ等に起因して生じる信号光と参照光の光路長差を補正するための高速な駆動手段が不要となるようにする。
【解決手段】ホモダイン方式において信号光(第1の光)に干渉させる参照光(第2の光)を従来のように光学系内に配置したミラーにて反射させるのではなく、光記録媒体に照射して反射させる。このことで、光記録媒体の面ブレが生じた場合において、参照光の光路長をそれに追従させるように変化させることができ、フォーカスサーボ制御により面ブレに追従するように対物レンズが駆動されたとしても、信号光の光路長と参照光の光路長とに差が生じないようにできる。この結果、参照光の光路長を信号光のフォーカスサーボ制御に連動して高速に変化させるための駆動手段は不要とできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるホモダイン検波による信号再生を行う光学ドライブ装置と、ホモダイン検波方法とに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−269680号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスクが普及している。
【0004】
このような光ディスクに関し、検出信号(再生信号)のS/Nの低下を改善するための手法として上記特許文献1に開示されるようなホモダイン方式が提案されている。
周知のようにホモダイン方式は、検出対象とする光(信号光)に対し、同波長(同位相)の光を干渉させた光と、逆位相の光を干渉させた光とをそれぞれ個別に受光し、それらの受光信号の差分をとることで、信号増幅とノイズの抑制の双方が図られるようにするものである。
【0005】
図20は、ホモダイン方式により信号再生を行う従来例としての光学ドライブ装置の構成例を示している。
図示するようにレーザ(半導体レーザ)101より出射されたレーザ光は、コリメーションレンズ102を介して平行光となるようにされた後、λ/2板(1/2波長板)103を介して偏光ビームスプリッタ(PBS)104に入射する。
この場合、偏光ビームスプリッタ104は、P偏光を透過しS偏光を反射するように構成されているとする。その上で、上記λ/2板103の取り付け角度(レーザ光の入射面内における回転角度)は、上記偏光ビームスプリッタ104による分光比(P偏光成分:S偏光成分)が1:1となるように設定されているとする。
【0006】
偏光ビームスプリッタ104を透過したレーザ光(P偏光成分)は、λ/4板(1/4波長板)105を介した後、図のように2軸アクチュエータ107により保持された対物レンズ107を介して光記録媒体100の記録層(反射膜)100aに集光するように照射される。
【0007】
このように光記録媒体100に対してレーザ光が照射されることに応じては、上記記録層100aからの反射光(以下、信号光とも称する)が得られる。該反射光は、対物レンズ107→λ/4板105を介した後、偏光ビームスプリッタ104に入射する。
ここで、このように偏光ビームスプリッタ104に入射する反射光は、上記λ/4板105による作用と記録層100a上での反射時の作用とにより、その偏光方向が、レーザ100側から入射し該偏光ビームスプリッタ104を透過した光(往路光とする)の偏光方向に対して90°異なるものとなっている。すなわち上記反射光はS偏光となる。
このため上記反射光は、偏光ビームスプリッタ104にて反射される。
【0008】
偏光ビームスプリッタ104にて反射された上記反射光は、図のようにλ/2板108、偏光ビームスプリッタ109、集光レンズ110、第1ホモダイン検波用受光部111、集光レンズ112、及び第2ホモダイン検波用受光部113を有するホモダイン検波用光学系に入射する。
なお、該ホモダイン検波用光学系による作用については後述する。
【0009】
また、この場合の光学ドライブ装置においては、上述した偏光ビームスプリッタ104により反射されたS偏光成分が、ホモダイン検波用の参照光として機能する。図示するように偏光ビームスプリッタ104により生成(反射)された参照光は、λ/4板114を介した後、ミラー115にてその光軸が180°折り返されるようにして反射される。
該ミラー115にて反射された参照光は、再度、λ/4板114を介して偏光ビームスプリッタ104に入射する。
【0010】
このように偏光ビームスプリッタ104に入射する参照光は、λ/4板114による作用とミラー115における反射の作用とにより、その偏光方向が、往路光としての参照光とは90°異なるものとされる(つまりP偏光となる)。従って該参照光は、偏光ビームスプリッタ104を透過することとなる。
偏光ビームスプリッタ104を透過した参照光としても、上述したホモダイン検波用光学系に対して入射する。
【0011】
ここで、上記のように偏光ビームスプリッタ104を透過した参照光(P偏光)と、上述のように偏光ビームスプリッタ104にて反射された信号光(S偏光)とは、その偏光方向が直交する関係となっており、この時点では光の干渉は発生しない。
【0012】
この場合、ホモダイン検波用光学系におけるλ/2板108は、上記のように偏光ビームスプリッタ104側より入射する信号光と参照光の偏光方向を、光の進行方向に対し時計回りに45°回転させるようにその取り付け角度(回転角度)が調整されている。
また、該λ/2板108を介した光が入射される偏光ビームスプリッタ109としては、先の偏光ビームスプリッタ104と同様にP偏光を透過、S偏光を反射するように構成されており、従って該偏光ビームスプリッタ109によっては、その透過光と反射光とによって、信号光・参照光の双方が、それぞれ偏光方向の直交する光に分光されることになる。
【0013】
このとき、上記偏光ビームスプリッタ109を透過した信号光・参照光は、共にP偏光であり、従ってこれらの光は同位相の光として集光レンズ110を介して第1ホモダイン検波用受光部111上に集光される。つまりこの結果、第1ホモダイン検波用受光部111側では、信号光に対し、該信号光と同位相の参照光が合成された(干渉した)光が受光されることになる。
【0014】
一方、偏光ビームスプリッタ109にて反射された信号光・参照光については、上述のようにλ/2板108によりそれらの光の偏光方向が時計回りに45°回転されることと、該偏光ビームスプリッタ109の分光面上での反射時の作用とにより、参照光の位相が、信号光の位相に対して180°異なるようにされる。
図示するように偏光ビームスプリッタ109にて反射された信号光・参照光は、集光レンズ112を介して第2ホモダイン検波用受光部113上に集光され、この結果、第2ホモダイン検波用受光部113側では、信号光に対して、該信号光とは逆位相となる参照光が合成された(干渉した)光が受光されることになる。
【0015】
図示するように第1ホモダイン検波用受光部111による受光信号(第1ホモダイン検波用信号とする)、及び第2ホモダイン検波用受光部113による受光信号(第2ホモダイン検波用信号とする)は、減算器117に供給される。
減算器117は、上記第1ホモダイン検波用信号から上記第2ホモダイン検波用信号を減算する。これにより、信号光成分の増幅とノイズ成分の抑圧とが図られたホモダイン検波信号が得られる。
【0016】
ここで、上記のようなホモダイン方式は、光の干渉効果を利用したものであり、その実現のためには信号光と参照光の光路長を可干渉距離内に収める必要性がある。
光記録媒体についての記録/再生を行う光学ドライブ装置においては、光源として半導体レーザ(レーザダイオード)を用いるが、一般的に半導体レーザの可干渉距離は比較的短いものとされている。特に、光ディスクシステムで用いる場合は、レーザ発振に起因するノイズを低減するためにレーザ駆動信号に高周波パルスを印加する(いわゆる高周波重畳)ということが行われるので、可干渉距離は短く、例えば0.1mm程度となる。
【0017】
そして、このとき注意すべきは、光ディスクシステムにおいては、いわゆるフォーカスサーボ制御により、光記録媒体100の面ブレに追従するようにして対物レンズ106が駆動されるという点である。
具体的に、光ディスクシステムにおいて、フォーカスサーボ制御による信号光の光路長の変化量は、およそ0.4mm程度とされる。従って、上記により説明した構成のままでは、信号光と参照光の光路長差が上記の可干渉距離0.1mmを超えてしまう場合があり、ホモダイン検波を適正に行うことができなくなってしまう。
【0018】
この点を考慮して上記特許文献1では、図20に示す1軸アクチュエータ116を設けて、信号光の光路長の変化量に応じて参照光の光路長を調整するものとしている。具体的には、該1軸アクチュエータ116により、対物レンズ106のフォーカス方向の動きに追従させるようにミラー115を光軸に平行な方向に駆動するというものである。
これにより、対物レンズ106のフォーカスサーボ制御が行われる下でも、信号光と参照光の光路長差を可干渉距離内に収めることができ、ホモダイン検波が適正に行われるようにすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記のようにフォーカスサーボによる対物レンズ106の動きに追従させるようにミラー115を駆動するためには、高速な駆動手段を備える必要があり、その点でコストアップに繋がる。また、対物レンズ106のフォーカスサーボ系からの信号に基づき駆動信号を生成するためには、比較的高速な演算処理を行う必要性があり、回路構成の複雑化や処理負担の増大化を招く。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記のような問題点に鑑み、本発明では光学ドライブ装置として以下のように構成することとした。
光源より出射された光を第1の光と第2の光とに分光し、上記第1の光を対物レンズを介して光記録媒体に照射し、上記第2の光を平行光により上記光記録媒体に照射すると共に、上記光記録媒体から得られる上記第1の光の反射光と上記第2の光の反射光とを互いの偏光方向が直交した状態で同軸に合成する分光照射合成部を備える。
また、上記分光照射合成部において合成された上記第1の光の反射光と上記第2の光の反射光とを入力し、上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と同位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光と、上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と逆位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光とを生成するホモダイン検波用光生成部を備える。
また、上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と同位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光を受光する第1の受光部を備える。
また、上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と逆位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光を受光する第2の受光部を備える。
さらに、上記第1の受光部による受光信号と上記第2の受光部による受光信号との差分を計算してホモダイン検波信号を得る演算部を備えるようにした。
【0021】
上記のように本発明では、ホモダイン方式において信号光(第1の光)に干渉させる参照光(第2の光)を、従来のように光学系内に配置したミラーにて反射させるのではなく、光記録媒体に照射して反射させるものとしている。このことで、光記録媒体の面ブレが生じた場合において、参照光の光路長をそれに追従させるように変化させることができ、従って、面ブレに追従するように対物レンズが駆動されたとしても、信号光の光路長と参照光の光路長とに差が生じないようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光記録媒体の面ブレが生じた場合においても、信号光の光路長と参照光の光路長とに差が生じないようにすることができる。
この結果、参照光の光路長を信号光のフォーカスサーボ制御に連動して高速に変化させるための構成は不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1及び第2の実施の形態で記録再生対象とする光記録媒体の断面構造を示した図である。
【図2】第1の実施の形態の光学ドライブ装置が備える光ピックアップの構成について説明するための図である。
【図3】第1の実施の形態としての光学ドライブ装置の内部構成について説明するための図である。
【図4】参照光の光軸ずれを検出するための受光部の構造例を示した図である。
【図5】第2の実施の形態の光学ドライブ装置が備える光ピックアップの構成について説明するための図である。
【図6】第2の実施の形態としての光学ドライブ装置の内部構成について説明するための図である。
【図7】バルク記録方式について説明するための図である。
【図8】マイクロホログラム方式について説明するための図である。
【図9】ネガ型マイクロホログラム方式について説明するための図である。
【図10】実施の形態で記録再生対象とするバルク型記録媒体の断面構造を示した図である。
【図11】バルク型記録媒体に対するマーク記録時の動作について説明するための図である。
【図12】バルク型記録媒体の記録再生を行うための光学系の概要について説明するための図である。
【図13】バルク型記録媒体の再生時におけるサーボ制御について説明するための図である。
【図14】第3の実施の形態の光学ドライブ装置が備える光ピックアップの構成について説明するための図である。
【図15】光路長補正部について説明するための図である。
【図16】第3の実施の形態としての光学ドライブ装置の内部構成について説明するための図である。
【図17】第4の実施の形態の光学ドライブ装置が備える光ピックアップの構成について説明するための図である。
【図18】第4の実施の形態としての光学ドライブ装置の内部構成について説明するための図である。
【図19】変形例としてのバルク型記録媒体の断面構造を示した図である。
【図20】従来例としての光学ドライブ装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。

<1.第1の実施の形態>
[1-1.記録再生対象とする光記録媒体]
[1-2.光学ドライブ装置の構成]
[1-3.まとめ]
<2.第2の実施の形態>
[2-1.光学ドライブ装置の構成]
<3.第3の実施の形態>
[3-1.バルク型記録媒体について]
[3-2.バルク型記録媒体の記録再生手法について]
[3-3.光学ドライブ装置の構成]
<4.第4の実施の形態>
[4-1.光学ドライブ装置の構成]
<5.変形例>
【0025】
<1.第1の実施の形態>
[1-1.記録再生対象とする光記録媒体]

図1は、第1の実施の形態において記録再生対象とする光記録媒体1の断面構造を示した図である。
この光記録媒体1は、ディスク状の光記録媒体とされ、回転駆動される光記録媒体1に対するレーザ光照射が行われて記録信号の再生が行われる。
光記録媒体1は、記録可能型、再生専用型の何れの光記録媒体とされてもよく、記録可能型の場合においては、回転駆動される光記録媒体1に対してレーザ光を照射してマーク記録が行われる。
なお光記録媒体とは、光の照射により情報の記録/再生が行われる記録媒体を総称したものである。
【0026】
図1に示されるように光記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、記録層(反射膜)3、基板4が形成されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する実施の形態としての光学ドライブ装置側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。つまりこの場合、光記録媒体1に対しては、カバー層2側からレーザ光が入射することになる(図2(b)等を参照)。
【0027】
光記録媒体1において、基板4は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその上面側には、記録/再生位置を案内するための案内溝の形成に伴う凹凸の断面形状が与えられている。
上記案内溝としては、連続溝(グルーブ)、又はピット列で形成される。例えば光記録媒体1が再生専用型ディスクであり、上記案内溝がピット列で形成される場合、ピットとランドの長さの組み合わせにより情報記録が行われる。或いは、光記録媒体1が記録可能型ディスクであり、上記案内溝がグルーブとされる場合、当該グルーブを周期的に蛇行(ウォブル)させて形成することで、該蛇行の周期情報により位置情報(絶対位置情報:例えば回転角度情報や半径位置情報など)が記録される。
基板4は、このような案内溝(凹凸形状)が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
【0028】
また、上記案内溝が形成された基板4の上面側には、記録層3が形成される。
光記録媒体1が再生専用型ディスクである場合、上記記録層3は、例えば金属膜などによる反射膜が成膜されて形成されたものとなる。
また、光記録媒体1が記録可能型ディスクである場合、上記記録層3は、反射膜が成膜された上で、その上層に記録材料が成膜されて形成されたものとなる。
何れにしても記録層3は、入射光を反射する反射膜として機能する。
【0029】
上記記録層3の上層側に形成されるカバー層2は、例えば紫外線硬化樹脂をスピンコート法等により塗布した後、紫外線照射による硬化処理を施すことで形成されたものとなる。
【0030】
[1-2.光学ドライブ装置の構成]

図2は、上記光記録媒体1についてホモダイン方式による信号再生を行う第1の実施の形態としての光学ドライブ装置が備える光ピックアップOP1の内部構成について説明するための図である。
図2(a)は、光ピックアップOP1を光記録媒体1の面内方向に平行な方向で切断したときの断面図を示している。またこの図2(a)では、光記録媒体1のディスク中心Cと、光記録媒体1の外縁(図中グレーによる太線)も併せて示している。
また図2(b)は、光ピックアップOP1内におけるミラー16、第2ガルバノミラー27のそれぞれから光記録媒体1の表面までの間に設けられる構成を、図2(a)に示す矢印Yの方向から見たときの断面図によって示している。
【0031】
図2(a)において、光ピックアップOP1内には、光記録媒体1に対する記録再生を行うためのレーザ光の光源となるレーザ(半導体レーザ)10が設けられている。
該レーザ10より出射されたレーザ光は、コリメーションレンズ11を介して平行光となるようにされた後、λ/2板(1/2波長板)12を介して偏光ビームスプリッタ(PBS)13に入射する。
【0032】
このとき、上記偏光ビームスプリッタ13は、例えばP偏光を透過しS偏光を反射するように構成されているとする。その上で、上記λ/2板12の取り付け角度(レーザ光の入射面内における回転角度)は、上記偏光ビームスプリッタ13を透過して出力される光(P偏光成分)と反射して出力される光(S偏光成分)との比率(すなわち偏光ビームスプリッタ13による分光比)が1:1となるように調整されているとする。
【0033】
偏光ビームスプリッタ13を透過したレーザ光は、λ/4板(1/4波長板)14を介した後、光路長補正板15に入射する。
光路長補正板15は、信号光と参照光の光路長を設計上一致させるために挿入されたものである。すなわち、例えば光学ドライブ装置が製品として出荷される前段階で、光路長についての微調整を予め行っておくために挿入されたものである。
【0034】
光路長補正板15を介したレーザ光はミラー16に入射する。図2(b)に示されるように、このようにミラー16に入射したレーザ光は、その光軸が90°折り曲げられるようにして反射され、2軸アクチュエータ18により保持された対物レンズ17を介して、光記録媒体1の記録層3に集光するようにして照射される。
【0035】
上記2軸アクチュエータ18は、対物レンズ17をフォーカス方向(光記録媒体1に対して接離する方向)及びトラッキング方向(光記録媒体1の半径方向に平行な方向:上記フォーカス方向とは直交関係となる方向)に変位可能に保持する。
2軸アクチュエータ18にはフォーカスコイル、トラッキングコイルが備えられており、これらフォーカスコイル、トラッキングコイルにそれぞれ後述するフォーカスドライブ信号FD、トラッキングドライブ信号TDが供給されることで、対物レンズ17を上記フォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
【0036】
ここで図2(a)を参照して分かるように、本例の場合、光学系の配置方向は、光源であるレーザ10側からミラー16へと入射するレーザ光の光軸の方向(及び後述する第1ガルバノミラー25にて反射され第2ガルバノミラー27に入射する参照光の光軸の方向)が、光記録媒体1に形成されるトラック(案内溝:図中の破線部)の形成方向に対し45°の角度を為すようにして設定されている。
これは、対物レンズ17を介したレーザ光の集光位置と、第2ガルバノミラー27を介して光記録媒体1に照射される参照光の照射位置(照射光軸の位置)とが同一トラック上(すなわち同じ半径位置)に並ぶようにするためである。
なおこのことからも理解されるように、図2(a)において上記トラッキング方向とは、紙面右斜め方向に平行な方向となる。
【0037】
説明を戻す。
上述のように記録層3に対してレーザ光が照射されることに応じては、該記録層3からの反射光(信号光)が得られる。該反射光は、図2(b)に示す対物レンズ17を介しミラー16にて反射された後、図2(a)に示す光路長補正板15→λ/4板14を介して、上述した偏光ビームスプリッタ13に入射する。
【0038】
ここで、このように偏光ビームスプリッタ13に入射する反射光は、上記λ/4板14による作用と記録層3上での反射時の作用とにより、その偏光方向が、レーザ10側から入射し該偏光ビームスプリッタ13を透過した光(往路光とする)の偏光方向に対して90°異なるものとなっている。すなわち上記反射光はS偏光となる。
このため上記のように入射した反射光は、偏光ビームスプリッタ13にて反射される。
【0039】
偏光ビームスプリッタ13にて反射された上記反射光は、図中の無偏光ビームスプリッタ(BS)19においてその一部が透過、一部が反射される。
無偏光ビームスプリッタ19にて反射された反射光は、λ/2板20、集光レンズ21、偏光ビームスプリッタ22、第1ホモダイン検波用受光部23、及び第2ホモダイン検波用受光部24を有して構成されるホモダイン検波用光学系に入射する。
このホモダイン検波用光学系による作用については後述する。
【0040】
また、本実施の形態の光学ドライブ装置において、レーザ10より出射され上述した偏光ビームスプリッタ13にて反射・出力されたレーザ光(S偏光)は、ホモダイン方式における参照光として機能する。
このように偏光ビームスプリッタ13より出力された参照光は、図中の第1ガルバノミラー25により、その光軸が略90°(例えば第1ガルバノミラー25が初期位置の状態において90°)折り曲げられるようにして反射された後、λ/4板26を介して、第2ガルバノミラー27に入射する。
【0041】
第2ガルバノミラー27に入射した参照光は、図2(b)に示すようにしてその光軸が略90°(例えば第1ガルバノミラー25が初期位置の状態において90°)折り曲げられるようにして反射され、平行光の状態にて光記録媒体1に対して照射される。
【0042】
このように光記録媒体1に対して参照光が照射されることに応じては、記録層3より該参照光の反射光が得られる。記録層3により反射された参照光は、第2ガルバノミラー27にて反射され、図2(a)に示すλ/4板26を介した後、第1ガルバノミラー25にて反射されて偏光ビームスプリッタ13に入射する。
【0043】
このように偏光ビームスプリッタ13に入射する参照光は、λ/4板26による作用と記録層3における反射時の作用とにより、その偏光方向が、往路光としての参照光とは90°異なるものとされる(つまりP偏光となる)。従って該参照光は偏光ビームスプリッタ3を透過する。
【0044】
このように偏光ビームスプリッタ13を透過した参照光としても、上述した信号光と同様に無偏光ビームスプリッタ19に入射し、該無偏光ビームスプリッタ19にてその一部が透過、一部が反射される。
無偏光ビームスプリッタ19にて反射された参照光は、上述したホモダイン検波用光学系に対して入射する。
【0045】
ホモダイン検波用光学系において、上記無偏光ビームスプリッタ19にて反射された信号光及び参照光は、λ/2板20→集光レンズ21を介した後、偏光ビームスプリッタ22に入射する。該偏光ビームスプリッタ22としても、先の偏光ビームスプリッタ13と同様にP偏光を透過しS偏光を透過するように構成されている。
図のように偏光ビームスプリッタ22にて反射された光は、第1ホモダイン検波用受光部23の受光面上に集光し、また偏光ビームスプリッタ22を透過した光は第2ホモダイン検波用受光部24の受光面上に集光する。
【0046】
ここで、先に説明したようにして偏光ビームスプリッタ13で反射された信号光(S偏光)と、偏光ビームスプリッタ13を透過した参照光(P偏光)は、その偏光方向が互いに直交する関係となっており、この時点では光の干渉は生じない。
【0047】
上記ホモダイン検波用光学系において、λ/2板20は、無偏光ビームスプリッタ19側より入射する信号光と参照光の偏光方向を、光の進行方向に対し時計回りに45°回転させるようにその取り付け角度(回転角度)が調整されている。
また上記ホモダイン検波用光学系において、偏光ビームスプリッタ22によっては、その透過光と反射光とによって、信号光・参照光の双方が、それぞれ偏光方向の直交する光に分光されることになる。
【0048】
このとき、上記偏光ビームスプリッタ22を透過した信号光・参照光は、共にP偏光であり、従ってこれらの光は同位相の光として第1ホモダイン検波用受光部23に集光される。つまりこの結果、第1ホモダイン検波用受光部23側では、信号光に対し、該信号光と同位相の参照光が合成された(干渉した)光が受光されることになる。
図示するように、当該第1ホモダイン検波用受光部23による受光信号については、受光信号D_hm1とする。
【0049】
一方、偏光ビームスプリッタ22にて反射された信号光・参照光については、上述のようにλ/2板20によりそれらの光の偏光方向が時計回りに45°回転されることと、該偏光ビームスプリッタ22の分光面上での反射時の作用とにより、参照光の位相が、信号光の位相に対して180°異なるようにされる。
このことで、第2ホモダイン検波用受光部113側では、信号光に対して、該信号光とは逆位相となる参照光が合成された(干渉した)光が受光されることになる。
当該第2ホモダイン検波用受光部24による受光信号については、受光信号D_hm2とする。
【0050】
ここで、これまでの説明からも理解されるように、本実施の形態においては、ホモダイン方式による信号再生を行う場合において信号光と干渉させる参照光(平行光)を、従来のように光学系内に設けたミラーにて反射させるものとはせず、光記録媒体1に対して照射して反射させるものとしている。
このような構成によれば、フォーカスサーボ制御に伴い光記録媒体1の面ブレに追従するように対物レンズ17が駆動されて信号光の光路長が変化してしまっても、参照光の光路長も面ブレに追従するように変化されることになるため、結果として、面ブレに起因した信号光と参照光の光路長差が生じないようにできる。
つまりこのことで、参照光の光路長を信号光のフォーカスサーボ制御に連動して高速に変化させるための構成は不要とすることができる。
【0051】
なお確認のために述べておくと、図2においてミラー16、第2ガルバノミラー27を設けて偏光ビームスプリッタ13による分光後のそれぞれの光を90°反射して光記録媒体1に対して照射する構成としているのは、信号光の光路長と参照光の光路長とを揃えるためである。
ここで、平行光としての参照光を光記録媒体1に対して照射するためには、参照光を対物レンズ17を介さずに照射する必要があり、従って参照光は、対物レンズ17を介したレーザ光の集光位置とは異なる位置に照射することとなる。このように参照光の照射位置をずらす必要があるため、例えば先の図20に示したように90°反射させない構成とした場合には、参照光の光路長は必然的に信号光の光路長よりも長くなってしまう。そこで、図2のように分光後のそれぞれの光を90°反射して照射する構成とすることで、ミラー16及び第2ガルバノミラー27の配置位置の設定により、信号光と参照光の光路長を揃えることが可能となるようにしている。
【0052】
また確認のために述べておくと、面ブレは半径位置が異なるとその発生量も異なる。このため本例では、上述のように光学系を45°配置とすることで、対物レンズ17を介したレーザ光の照射半径位置と参照光の照射半径位置とが同じとなるようにし、半径位置の違い起因した光路長差が生じないようにしている。
【0053】
また、面ブレの発生量は光記録媒体1の角度位置によっても異なる。このため、対物レンズ17を介したレーザ光の照射半径位置と参照光の照射半径位置は、周方向(トラック形成方向)において近接させることが望ましい。
【0054】
ところで、上記のように参照光を光記録媒体1に対して平行光により照射する本実施の形態においては、いわゆるチルトが発生した場合に、参照光の光記録媒体1からの反射光の光軸が、往路光としての参照光の光軸と一致しないものとなってしまう。つまりこのことからも理解されるように、チルトの発生に応じては、信号光と参照光とに光軸のずれが生じてしまうこととなる。
【0055】
先にも述べたように、ホモダイン方式は、光干渉を利用して信号増幅を図る方式であり、従って適正なホモダイン検波信号が得られるようにするためには、信号光と参照光の光軸が一致していることが望ましいものとなる。
このとき、光軸ずれによってホモダイン検波に与えられる影響が無視できる程度に軽微であるときには、特段の対処は不要であるが、再生信号の更なるS/Nの改善を図るとした場合等には、上記のような信号光と参照光の光軸ずれは可能な限り補正されることが望ましい。
【0056】
そこで、本実施の形態では、チルトによる参照光の光軸ずれを補正するための構成を設けるものとしている。
具体的に、図2に示す光ピックアップOP1内において、チルト補正のための構成としては、図中の偏光ビームスプリッタ28、集光レンズ29、軸ずれ検出用受光部30と、上述した第1ガルバノミラー25、第2ガルバノミラー27とが該当する。
【0057】
前者の偏光ビームスプリッタ28、集光レンズ29、軸ずれ検出用受光部30は、光軸ずれ量の検出光学系を構成するものとなる。
上記偏光ビームスプリッタ28には、先に述べた無偏光ビームスプリッタ19を透過した信号光(S偏光)と参照光(P偏光)が入射される。この偏光ビームスプリッタ28としても、P偏光を透過、S偏光を反射するように構成されており、従って上記無偏光ビームスプリッタ19側から入射した信号光は偏光ビームスプリッタ28にて反射され、参照光のみが偏光ビームスプリッタ28を透過することになる。
【0058】
図示するように偏光ビームスプリッタ28を透過した参照光は、集光レンズ28を介して軸ずれ検出用受光部30の受光面上に集光する。
該軸ずれ検出用受光部30により得られた受光信号は、受光信号D_axdと称する。
【0059】
なお、上記受光信号D_axdに基づく具体的な軸ずれ量の検出手法や、第1ガルバノミラー25や第2ガルバノミラー27を用いた具体的な補正手法については後に改めて説明を行う。
【0060】
図3は、第1の実施の形態の光学ドライブ装置全体の内部構成について説明するための図である。
なお図3において、光ピックアップOP1については、レーザ10、2軸アクチュエータ18、第1ガルバノミラー25、第2ガルバノミラー27のみを抽出して示している。
【0061】
図示するように光ピックアップOP1の外部には、記録/再生系の構成として、記録処理部31、第1再生信号生成回路32、第2再生信号生成回路33、減算部34、再生処理部35が設けられている。
【0062】
上記記録処理部31には、光記録媒体1に対して記録すべきデータ(記録データ)が入力される。記録処理部31は、入力された記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化を施すなどして、光記録媒体1に実際に記録される「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。その上で、このように生成した記録変調データ列に基づくレーザ10の発光駆動を行う。
【0063】
第1再生信号生成回路32は、図2に示した第1ホモダイン検波用受光部23により得られた受光信号D_hm1に基づき、信号光に対して同位相の参照光が干渉した光についての再生信号を得る。
また、第2再生信号生成回路33は、図2に示した第2ホモダイン検波用受光部24により得られた受光信号D_hm2に基づき、信号光に対して逆位相の参照光が干渉した光についての再生信号を得る。
【0064】
ここで、本例の場合において、図2に示した第1ホモダイン検波用受光部23及び第2ホモダイン検波用受光部24としては共に分割ディテクタにより構成されており、受光信号D_hm1、受光信号D_hm2としては、それぞれの受光素子からの受光信号を包括して表したものとなる。
上記第1再生信号生成回路32、上記第2再生信号生成回路33は、上記受光信号D_hm1、受光信号D_hm2としての、複数の受光素子からの受光信号の和を計算することで上記再生信号を得る。
【0065】
第1再生信号生成回路32、第2再生信号生成回路33により得られたそれぞれの再生信号は、減算部34に供給される。
減算部34は、再生信号生成回路32より供給される再生信号から、第2再生信号生成回路33より供給される再生信号を減算する。
これにより、ホモダイン検波信号が得られる。
【0066】
ここで、先の図2において説明した通り、信号光と参照光の分光比は1:1に設定されている。この点を踏まえると、第1ホモダイン検波用受光部23による受光信号D_hm1、すなわち信号光に同位相の参照光が干渉した光を受光(自乗検波)した結果は、次の[式1]のように表すことができる。


【数1】



但し[式1]において、Esigは信号光の電場を表し、Erefは参照光の電場を表す。またφsigは信号光の位相を表し、φrefは参照光の位相を表す。
この[式1]を展開して、


【数2】



とおく。
【0067】
一方、第2ホモダイン検波用受光部24による受光信号D_hm2、すなわち信号光に逆位相の参照光が干渉した光を受光(自乗検波)した結果は、次の[式3]のように表すことができる。


【数3】



この[式3]についても展開して、


【数4】



とおく。
【0068】
減算部34による減算処理は、受光信号D_hm1と受光信号D_hm2との差分を計算していることに相当するものであり、これは下記[式5]のように表すことができる。


【数5】


【0069】
上記減算部34により得られたホモダイン検波信号は、再生処理部35に供給される。
再生処理部35は、上記ホモダイン検波信号について2値化処理や記録変調符号の復号化・エラー訂正処理など、上述した記録データを復元するための再生処理を行い、上記記録データを再生した再生データを得る。
【0070】
また、光学ドライブ装置内には、レーザ光の照射位置制御を行うための構成として信号光生成回路36、位置情報検出部37、サーボ回路38が設けられている。
信号生成回路36は、図2に示した第2ホモダイン検波用受光部24からの受光信号D_hm2に基づき、位置制御のために必要となる各種の信号を生成する。具体的には、対物レンズ17についてのフォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号TEを生成する。
また、光記録媒体1が記録可能型ディスクである場合に対応してウォブリンググルーブにより記録される絶対位置情報(半径位置情報や回転角度情報)を検出するための信号として、プッシュプル信号PPを生成する。
【0071】
図示するようにフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEはサーボ回路38に対して供給される。
またプッシュプル信号PPは位置情報検出部37に対して供給される。
【0072】
なお、ここではフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEなど再生信号以外の位置制御のための信号が、第2ホモダイン検波用受光部24による受光信号D_hm2に基づき生成される場合の構成を例示しているが、これら位置制御のための各種の信号は第1ホモダイン検波用受光部23による受光信号D_hm1に基づき生成することも勿論可能である。
また、ホモダイン検波用の再生信号のみを生成する側の受光部については、分割ディテクタである必要がないことは言うまでもない。
【0073】
位置情報検出部37は、上記プッシュプル信号PPに基づき光記録媒体1に記録された絶対位置情報を検出する。
検出された絶対位置情報はコントローラ39に対して供給される。
【0074】
サーボ回路38は、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEに基づきフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号をそれぞれ生成し、これらフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づくフォーカスドライブ信号FD、トラッキングドライブ信号TDに基づいて、光ピックアップOP1内における2軸アクチュエータ18のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、対物レンズ17についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行う。
【0075】
また、サーボ回路38は、コントローラ39からの指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとして2軸アクチュエータ18のトラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、トラッキングサーボの引き込み制御等も行う。また、フォーカスサーボの引き込み制御等も行う。
【0076】
コントローラ39は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、光学ドライブ装置の全体制御を行う。
【0077】
また、本実施の形態の光学ドライブ装置においては、チルトに伴う参照光の光軸ずれを補正するための構成として、光軸ずれ量検出部40、第1方向補正部41、第2方向補正部42も設けられる。
【0078】
光軸ずれ量検出部40は、図2に示した軸ずれ検出用受光部30による受光信号D_axdに基づき、参照光の光軸ずれ量を検出する。
【0079】
ここで本例において、図2に示した軸ずれ検出用受光部30は、次の図4に示すように受光素子A,B,C,Dを有する4分割ディテクタで構成されている。
図4においては、軸ずれ検出用受光部30を、図2(a)に示した矢印Y方向から見たときの平面図により示している。
この図4において、先の図2に示した光学系の配置方向によると、軸ずれ検出用受光部30の受光面内においては、紙面の右斜め方向がラジアル方向(rad)、左斜め方向がタンジェンシャル方向(tan)にそれぞれ対応した方向となる。
また、図2の光学系の構成によると、紙面の縦方向が第1ガルバノミラー25による光軸補正方向に平行な方向となり、紙面の横方向が第2ガルバノミラー27による光軸補正方向に平行な方向となる。
【0080】
軸ずれ検出用受光部30における各受光素子の配置関係は、図のように[受光素子A・受光素子D]の組と[受光素子B・受光素子C]の組とがそれぞれ第1ガルバノミラー25による光軸補正方向に平行な方向にて隣接する関係となっており、また[受光素子A・受光素子B]の組と[受光素子C・受光素子D]の組とがそれぞれ第2ガルバノミラー27による光軸補正方向に平行な方向にて隣接する関係となっている。
図2及び図3に示される受光信号D_axdは、これら受光素子A,B,C,Dによる受光信号を包括して表したものとなる。
【0081】
図3において、光軸ずれ量検出部40は、上記受光信号D_axdに基づき、第1ガルバノミラー25による光軸補正方向に平行な方向における参照光の光軸ずれ量(axd_vとする)と、第2ガルバノミラー27の光軸補正方向に平行な方向における参照光の光軸ずれ量(axd_hとする)の双方を検出する。
具体的に、光軸ずれ量検出部40は、受光素子A,B,C,Dによる受光信号をそれぞれAi,Bi,Ci,Diとしたとき、次の[式6][式7]により光軸ずれ量axd_v、光軸ずれ量axd_hを検出する。

axd_v=(Ai+Bi)−(Ci+Di) ・・・[式6]

axd_h=(Ai+Di)−(Bi+Ci) ・・・[式7]

図示するように光軸ずれ量axd_vは第1方向補正部41に供給され、光軸ずれ量axd_hは第2方向補正部42に対して供給される。
【0082】
第1方向補正部41は、上記光軸ずれ量axd_vに基づき、軸ずれ検出用受光部30上に形成される参照光スポットの、図4の紙面縦方向におけるずれ量をキャンセルするための駆動信号を生成し、これを第1ガルバノミラー25に供給する。
また、第2方向補正部42は、上記光軸ずれ量axd_hに基づき、軸ずれ検出用受光部30上に形成される参照光スポットの、図4の紙面横方向におけるずれ量をキャンセルするための駆動信号を生成し、これを第2ガルバノミラー27に対して供給する。
これにより、参照光の受光スポット位置を、軸ずれ検出用受光部30における基準位置(例えば受光面中心)と一致させるように補正を行うことができる。つまりこの結果、ラジアル方向・タンジェンシャル方向の双方のチルトに起因する参照光の光軸ずれを補正することができる。
【0083】
[1-3.まとめ]

上記のようにして本実施の形態では、ホモダイン方式による信号再生を行う場合において信号光と干渉させる参照光(平行光)を、光記録媒体1に対して照射するものとしている。このような構成により、面ブレに起因した信号光と参照光の光路長差が生じないようにすることができ、その結果、参照光の光路長を信号光のフォーカスサーボ制御に連動して高速に変化させるための構成を不要とすることができる。
【0084】
また、本実施の形態では、参照光の受光位置ずれ量を検出し、その結果に基づき参照光の光軸を補正するものとしている。
これにより、チルトの発生に対しても安定的なホモダイン検波を行うことができ、再生信号の更なるS/Nの改善を図ることができる。
【0085】
<2.第2の実施の形態>
[2-1.光学ドライブ装置の構成]

第2の実施の形態は、参照光の受光位置ずれ量の検出結果に基づき、チルト補正(コマ収差補正)を行うものである。
【0086】
図5は、第2の実施の形態としての光学ドライブ装置が備える光ピックアップOP2の内部構成について説明するための図である。
この図5としても、先の図2(a)と同様に、光ピックアップOP2を光記録媒体1の面内方向に平行な方向で切断したときの断面図を示すものであり、光記録媒体1のディスク中心Cと、光記録媒体1の外縁(図中グレーによる太線)を併せて示している。
【0087】
なお図示は省略しているが、図5に示す光ピックアップOP2においても、先の第1の実施の形態で説明した光ピックアップOP1と同様に対物レンズ17、2軸アクチュエータ18が備えられている。
【0088】
また、以下の説明において、既に説明済みとなった部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0089】
先の図2(a)と比較して分かるように、第2の実施の形態の光ピックアップOP2は、先の光ピックアップOP1に対して、対物レンズ17を介して照射されるレーザ光の光路中(信号光側の光路中)にコマ収差補正用の液晶素子45を挿入したものとなる。
この液晶素子45は、参照光を分光出力する偏光ビームスプリッタ13の分光面から対物レンズ17までの間において挿入する。具体的にこの場合は、液晶素子45を、光路長調整板15とミラー16との間に挿入するものとしている。
【0090】
図6は、第2の実施の形態としての光学ドライブ装置全体の内部構成について説明するための図である。
この図6と先の図3とを比較して分かるように、この場合の光学ドライブ装置は、第1の実施の形態の光学ドライブ装置に対して、チルト量推定部46とチルト補正部47とが追加されたものとなる。
【0091】
図示するようにチルト量推定部46には、第1方向補正部41から第1ガルバノミラー25に供給される駆動信号と、第2方向補正部42から第2ガルバノミラー27に供給される駆動信号とが、それぞれ分岐して入力される。
チルト量推定部46は、これら第1ガルバノミラー25の駆動信号と第2ガルバノミラー27の駆動信号とに基づき、ラジアル方向のチルト量sti_rad、タンジェンシャル方向のチルト量sti_tanをそれぞれ推定(検出)する。
【0092】
ここで、先の第1の実施の形態の説明からも理解されるように、第1ガルバノミラー25と第2ガルバノミラー27の駆動信号は、チルトの発生に伴う参照光の受光位置ずれに関して、その発生方向(ラジアル方向と直交する方向及びタンジェンシャル方向と直交する方向)と各々の方向へのずれ量とを表すものとなる。
従ってこれら駆動信号に基づき、ラジアル方向のチルト量sti_rad、タンジェンシャル方向のチルト量sti_tanを推定することができる。
【0093】
なお、上記駆動信号に基づくチルト量sti_rad、sti_tanの推定手法は多様に考えられるものであり、ここで特に限定されるべきものではない。例えば一例として、それぞれの駆動信号の値の組み合わせごとに、対応するラジアル方向チルト量sti_rad、タンジェンシャル方向チルト量sti_tanの値の組を格納したテーブル情報を用いるといった手法を採ることができる。この場合、それぞれの駆動信号の値の組とチルト量sti_rad、sti_tanの値の組との対応関係は、予め実験を行うなどして割り出しておく。
【0094】
チルト補正部47は、上記チルト量推定部46により得られたチルト量sti_rad、チルト量sti_tanの値に基づき、ラジアル方向、タンジェンシャル方向のそれぞれのチルトに起因したコマ収差が補正されるようにして液晶素子45を駆動する。
【0095】
このようにして第2の実施の形態によれば、対物レンズ17を介して照射されるレーザ光についてのチルト補正(コマ収差補正)を行うことができる。これにより、チルトの発生に対しより安定した再生信号品質を維持することができる。
【0096】
<3.第3の実施の形態>
[3-1.バルク型記録媒体について]

続いて、第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、いわゆるバルク型の光記録媒体(以下、バルク型記録媒体と称する)の再生にホモダイン方式による信号再生手法を適用するものである。
【0097】
ここで、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)など現状において普及している光記録媒体の次世代を担うべき光記録媒体に関し、先に本出願人は、下記の参考文献1や参考文献2に記載されるようないわゆるバルク型記録媒体を提案している。

参考文献1・・・特開2008−135144号公報

参考文献2・・・特開2008−176902号公報
【0098】
バルク記録とは、多層記録による大記録容量化を図るための1つの記録手法であり、例えば図7に示すようにして、少なくともカバー層51とバルク層(記録層)52とを有する光記録媒体に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行って、バルク層52内の深さ方向において選択的にマーク記録を行うものである。
なお、本明細書においては「深さ方向」という語を用いるが、該深さ方向は、光記録媒体に照射されるレーザ光の光軸に平行な方向、すなわちフォーカス方向に平行な方向を指すものである。
【0099】
このようなバルク記録に関して、上記参考文献1には、いわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれる記録技術が開示されている。
マイクロホログラム方式は、次の図8に示されるようにして、ポジ型マイクロホログラム方式とネガ型マイクロホログラム方式とに大別される。
マイクロホログラム方式では、バルク層52の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
【0100】
ポジ型マイクロホログラム方式は、図8(a)に示すように、対向する2つの光束(光束A、光束B)を同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
【0101】
また、図8(b)に示すネガ型マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とは逆の発想で、予め形成しておいた干渉縞をレーザ光照射により消去して、当該消去部分を記録マークとする手法である。
【0102】
図9は、ネガ型マイクロホログラム方式について説明するための図である、
ネガ型マイクロホログラム方式では、記録動作を行う前に、図9(a)に示されるようにして予めバルク層52に対して干渉縞を形成するための初期化処理を行うことになる。具体的には、図中に示すように平行光による光束C,Dを対向して照射し、それらの干渉縞をバルク層52の全体に形成しておく。
このように初期化処理により予め干渉縞を形成しておいた上で、図9(b)に示されるようにして消去マークの形成による情報記録を行う。具体的には、任意の層位置にフォーカスを合わせた状態で記録情報に応じたレーザ光照射を行うことで、消去マークによる情報記録を行うものである。
【0103】
また、本出願人は、マイクロホログラム方式とは異なるバルク記録の手法として、例えば参考文献2に開示されるようなボイド(空孔)を記録マークとして形成する記録手法も提案している。
ボイド記録方式は、例えば光重合型フォトポリマなどの記録材料で構成されたバルク層52に対して、例えば比較的高パワーでレーザ光照射を行い、上記バルク層52内に空孔(ボイド)を記録する手法である。参考文献2に記載されるように、このように形成された空孔部分は、バルク層52内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空孔部分は記録マークとして機能し、これによって空孔マークの形成による情報記録が実現される。
【0104】
このようなボイド記録方式は、ホログラムを形成するものではないので、記録にあたっては片側からの光照射を行えば済むものとできる。すなわち、ポジ型マイクロホログラム方式の場合のように2つの光束を同位置に集光して記録マークを形成する必要は無いものとできる。
また、ネガ型マイクロホログラム方式との比較では、初期化処理を不要にできるというメリットがある。
なお、参考文献2には、ボイド記録を行うにあたり記録前のプリキュア光の照射を行う例が示されているが、このようなプリキュア光の照射は省略してもボイドの記録は可能である。
ところで、上記のような各種の記録手法が提案されているバルク型記録媒体であるが、該バルク型記録媒体の記録層(バルク層)は、例えば反射膜が複数形成されるという意味での明示的な多層構造を有するものではない。すなわち、バルク層52においては、通常の多層ディスクが備えているような記録層ごとの反射膜、及び案内溝は設けられていない。
従って、先の図7に示したバルク型記録媒体の構造のままでは、マークが未形成である記録時において、フォーカスサーボやトラッキングサーボを行うことができないことになる。
【0105】
このため実際において、バルク型記録媒体としては、次の図10に示すような構成が採られることとなる。
図10に示されるように、実際におけるバルク型記録媒体(バルク型記録媒体50とする)には、案内溝を有する反射面(基準面Ref)が設けられる。
【0106】
具体的に、この場合のバルク型記録媒体50には、上層側から順にカバー層51、バルク層52、中間層53、反射膜54、基板55が形成されている。
上記基板55には、その上面側において、ピット列やウォブリンググルーブによる案内溝(位置案内子)が形成され、そこに反射膜54が成膜される。そして、このように反射膜54が成膜された基板55が、例えば紫外線硬化樹脂などで構成された中間層53を介して、バルク層52の下層側に接着される。
【0107】
[3-2.バルク型記録媒体の記録再生手法について]

上記のような媒体構造とした上で、バルク型記録媒体50に対しては、次の図11に示されるようにマークの記録(又は再生)のためのレーザ光(以下、録再用レーザ光、或いは単に録再光と称する)と、さらに位置制御用のレーザ光としてのサーボ用レーザ光(単にサーボ光とも称する)とを照射するようにされる。
図示するようにこれら録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とは、共通の対物レンズを介してバルク型記録媒体50に照射される。
【0108】
このとき、仮に、上記サーボ用レーザ光と上記録再用レーザ光とが同波長であると、サーボ用レーザ光がバルク層52を介したときに、マーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、従来よりバルク記録方式では、上記サーボ用レーザ光として、録再用レーザ光とは波長帯の異なるレーザ光を用いるものとされている。
【0109】
この前提を踏まえた上で、図11を参照し、バルク型記録媒体50に対するマーク記録時の動作について説明する。
先ず、案内溝や反射膜の形成されていないバルク層52に対して多層記録を行うとしたときには、バルク層52内の深さ方向においてマークを記録する層位置を何れの位置とするかを予め定めておくことになる。図中では、バルク層52内においてマークを形成する層位置(マーク形成層位置:情報記録層位置とも呼ぶ)として、第1情報記録層位置L1〜第5情報記録層位置L5の計5つの情報記録層位置Lが設定された場合を例示している。図示するように第1情報記録層位置L1は、案内溝が形成された反射膜54(基準面Ref)から深さ方向に第1オフセットof-L1分だけ離間した位置として設定される。また、第2情報記録層位置L2、第3情報記録層位置L3、第4情報記録層位置L4、第5情報記録層位置L5は、それぞれ基準面Refから第2オフセットof-L2分、第3オフセットof-L3分、第4オフセットof-L4分、第5オフセットof-L5分だけ離間した位置として設定される。
【0110】
マークが未だ形成されていない記録時においては、録再用レーザ光の反射光に基づいてバルク層52内の各層位置を対象としたフォーカスサーボ、トラッキングサーボを行うことはできない。従って、記録時における対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御は、サーボ用レーザ光の反射光に基づき、当該サーボ用レーザ光のスポット位置が基準面Refにおいて案内溝に追従するようにして行うことになる。
【0111】
但し、上記録再用レーザ光は、マーク記録のために上記基準面Refよりも上層側にその合焦位置を設定する必要がある。このため、この場合の光学系には、対物レンズのフォーカス機構とは別途に、録再用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための録再光用フォーカス機構が設けられることになる。
【0112】
ここで、このような録再光用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための機構を含めた、バルク型記録媒体50の記録再生を行うための光学系の概要を図12に示しておく。
先ず、図12においては、図11にも示した対物レンズが示されている。対物レンズは、2軸アクチュエータによりトラッキング方向及びフォーカス方向に変位可能に保持されている。
【0113】
上記のように録再用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための機構は、図中のフォーカス機構(エキスパンダ)が該当する。具体的に、このエキスパンダとしてのフォーカス機構は、固定レンズと可動レンズ、及び該可動レンズを録再用レーザ光の光軸に平行な方向に変位可能に保持するレンズ駆動部とを備えて構成されており、上記レンズ駆動部により上記可動レンズが駆動されることで、図中の対物レンズに入射する録再用レーザ光のコリメーションが変化し、それにより録再用レーザ光の合焦位置がサーボ用レーザ光とは独立して調整されるようになっている。
【0114】
また、上述のように録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯が異なるものとされているので、これに対応しこの場合の光学系では、図中のダイクロイックプリズムにより、録再用レーザ光、サーボ用レーザ光のバルク型記録媒体50からの反射光がそれぞれの系に分離されるように(つまりそれぞれの反射光検出を独立して行えるように)している。
また、往路光で考えた場合、上記ダイクロイックプリズムは、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とを同軸上に合成して対物レンズに入射させる機能を有する。具体的にこの図の例の場合、録再用レーザ光は、図示するように上記エキスパンダを介しミラーで反射された後、上記ダイクロイックプリズムの選択反射面で反射されて対物レンズに対して入射するものとされている。一方、サーボ用レーザ光は、上記ダイクロイックプリズムの選択反射面を透過して対物レンズに入射するようにされている。
【0115】
図13は、バルク型記録媒体50の再生時におけるサーボ制御について説明するための図である。
マーク記録が既に行われたバルク型記録媒体50の再生時には、記録時のように対物レンズの位置をサーボ用レーザ光の反射光に基づいて制御する必要性はない。すなわち、再生時においては、再生対象とする情報記録層位置L(以下、情報記録層Lと表記する場合もある)に形成されたマーク列を対象として、録再用レーザ光の反射光に基づいて対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行えばよい。
【0116】
上記で説明してきたように、バルク記録方式においては、バルク型記録媒体50に対し、マーク記録/再生を行うための録再用レーザ光と位置制御用光としてのサーボ用レーザ光とを共通の対物レンズを介して(同一光軸上に合成して)照射するようにした上で、記録時においては、サーボ用レーザ光が基準面Refの案内溝に追従するように対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行い且つ、録再光用フォーカス機構により録再用レーザ光の合焦位置を別途調整することによって、バルク層52内に案内溝が形成されていなくとも、バルク層52内の所要の位置(深さ方向及びトラッキング方向)に対してマーク記録ができるように図られている。
また、再生時には、既に記録されたマーク列に録再用レーザ光の焦点位置が追従するようにして当該録再用レーザ光の反射光に基づく対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行うことで、バルク層52内に記録されたマークの再生を行うことができる。
【0117】
[3-3.光学ドライブ装置の構成]

以上の前提を踏まえた上で、バルク型記録媒体50の再生にホモダイン方式を採用した第3の実施の形態としての光学ドライブ装置の構成について説明する。
図14は、第3の実施の形態の光学ドライブ装置が備える光ピックアップOP3の内部構成について説明するための図である。
図14(a)は、光ピックアップOP3について、先の図2(a)の場合と同様にバルク型記録媒体50の面内方向に平行な方向で切断したときのその断面図を示している(この場合もディスク中心Cと記録媒体の外縁も併せて示している)。
また図14(b)は、光ピックアップOP3内におけるミラー16、第2ガルバノミラー27のそれぞれからバルク型記録媒体50の表面までの間に設けられる構成を、図14(a)に示す矢印Yの方向から見たときの断面図により示している。
なおこの図14(及び後の図16〜図18も同様)において、先の図2(a)において示したレーザ10に関しては、録再用レーザ10と表記する。
【0118】
図示するように第3の実施の形態における光ピックアップOP3は、光ピックアップOP1に対して、[固定レンズ60、可動レンズ61、レンズ駆動部62]による録再光用独立フォーカス機構と、ダイクロイックプリズム63、及び[サーボ用レーザ64、コリメーションレンズ65、偏光ビームスプリッタ66、λ/4板67、集光レンズ68、サーボ光用受光部69]によるサーボ光用光学系が追加されたものとなっている。
【0119】
上記録再光用独立フォーカス機構は、偏光ビームスプリッタ13の分光面からダイクロイックプリズム63までの間に挿入される。具体的にこの場合は、光路長補正板15とダイクロイックプリズム63との間に挿入している。
該録再光用独立フォーカス機構において、固定レンズ60は光源である録再用レーザ10により近い側に配置され、可動レンズ62は上記光源に対しより遠い側に配置されている。可動レンズ62は、レンズ駆動部62により入射光軸に平行な方向に駆動され、これにより図14(b)に示す対物レンズ17に入射する録再用レーザ光のコリメーションが変化し、該録再用レーザ光の合焦位置をサーボ用レーザ光とは独立して変化させることが可能とされている。
【0120】
また、上記ダイクロイックプリズム63は、少なくとも上記録再光用独立フォーカス機構における可動レンズ62から対物レンズ17までの間に設けられればよく、この場合においては、可動レンズ62とミラー16との間に挿入している。
ダイクロイックプリズム63は、録再用レーザ10を光源とする録再用レーザ光(偏光ビームスプリッタ13から該ダイクロイックプリズム63側に出射されるレーザ光)と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。
【0121】
また、上記サーボ光用光学系において、サーボ用レーザ64より出射されたサーボ用レーザ光は、コリメーションレンズ65を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ66に入射する。偏光ビームスプリッタ66は、このようにサーボ用レーザ64側から入射したサーボ用レーザ光(往路光)は反射するように構成される。
【0122】
偏光ビームスプリッタ66にて反射されたサーボ用レーザ光は、λ/4板76を介してダイクロイックプリズム63に入射する。先に述べたようにダイクロイックプリズム63は録再用レーザ光と同波長帯の光は透過しそれ以外の波長による光は反射するように構成されているので、上記サーボ用レーザ光はダイクロイックプリズム63にて反射される。その結果、サーボ用レーザ光は、録再用レーザ光と同軸に合成され、ミラー16を反射した後対物レンズ17を介してバルク型記録媒体50に照射される。
【0123】
また、このようにバルク型記録媒体50にサーボ用レーザ光が照射されたことに応じて得られる当該サーボ用レーザ光の反射光(基準面Refからの反射光)は、対物レンズ17→ミラー16を介し、ダイクロイックプリズム63にて反射された後、λ/4板67を介して偏光ビームスプリッタ66に入射する。
このようにバルク型記録媒体50側から入射したサーボ用レーザ光の反射光(復路光)は、λ/4板67の作用と基準面Refでの反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90°異なるものとされ、従って復路光としての上記反射光は偏光ビームスプリッタ66を透過する。
【0124】
偏光ビームスプリッタ66を透過したサーボ用レーザ光の反射光は、集光レンズ68を介してサーボ光用受光部69の受光面上に集光する。
ここで、該サーボ光用受光部69により得られる受光信号については、受光信号D_svと称する。
【0125】
また、第3の実施の形態の光ピックアップOP3においては、参照光の光路中において、光路長調整部70が挿入されている。
図示するようにこの場合は、光路長調整部70が、λ/4板26と第2ガルバノミラー27との間に挿入された例を示している。
【0126】
ここで、先の図11〜図13の説明からも理解されるように、バルク型記録媒体50についての再生を行う際には、所要の情報記録層Lを選択することになる。
このように録再用レーザ光の合焦位置が選択されるということは、選択した層位置に応じて、参照光の光路長と信号光の光路長とに差が生じてしまうこととなる。
【0127】
バルク記録においては、大記録容量化の要請から、バルク層52内に例えば数十層程度の多層記録を行うことが想定されている。このため、再生時の層選択に伴う信号光と参照光との光路長差を可干渉距離(例えば0.1mm程度)に収めることは非常に困難となる。
【0128】
そこで、第3の実施の形態では、再生対象とする情報記録層Lの位置に応じて参照光の光路長を補正するために、上記光路長調整部70を設けるものとしている。
【0129】
図15は、光路長調整部70について説明するための図である。
なお図15において、図中の縦方向の矢印は参照光の光軸を表している。
この図15に示されるように、光路長調整部70は、第1プリズム70A、第2プリズム70B、及びアクチュエータ70Cを有して構成される。
【0130】
第1プリズム70Aと第2プリズム70Bは、それぞれ同じ頂角を有し、図のようにそれぞれの対向する面が平行な関係となるように向かい合わせで配置される。このような向かい合わせ配置とすることで、当該光路長調整部70に入/出射する参照光の角度が同じになる。
この場合、第1プリズム70Aは、偏光ビームスプリッタ13の分光面により近い側に配置されたプリズムであるもとし、第2プリズム70Bは上記分光面に対しより遠い側に配置されたプリズムであるとする。
【0131】
アクチュエータ70Cは、1軸アクチュエータであり、第2プリズム70Bを参照光の光軸に対して直交する方向にスライドさせるように駆動する。
【0132】
上記のように構成された光路長調整部70において、参照光の光路長を短くする場合には、アクチュエータ70Cにより第2プリズム70Bを図15(a)に示される方向に駆動する。具体的には、それぞれのプリズムの対向面間の間隔が広がる方向に駆動するものである。
逆に、参照光の光路長を長くする場合には、図15(b)に示すように、第2プリズム70Bを図15(a)に示す方向とは逆の方向、すなわちそれぞれのプリズムの対向面間の間隔が狭まる方向に駆動する。
【0133】
ここで、上記のようなプリズムのスライド駆動により入射光の光路長が変化する原理は以下のようになる。
先ず、2枚のプリズムのうち、一方のプリズム(この場合は第2プリズム70B)を入射光軸に直交する方向においてXだけ移動させると、光軸上では、

ΔL=X/tanθ ・・・[式8]

だけ板厚を変えることができる。但し[式8]において、θはプリズムの頂角である。
【0134】
ここで、板厚=t、ガラス屈折率=n、空気の屈折率=nairとおく。
板厚tがΔLだけ変化したとすると、その変化した距離だけ空気の層と入れ替わることになるので、実効的な光路長は、以下のように変化する。

ΔL/n−ΔL/nair ・・・[式9]

ここで、参照光は光路長調整部70を往復するので、参照光の実効的な光路長の変化量は、

2×(ΔL/n−ΔL/nair) ・・・[式10]

となる。
【0135】
この[式10]からも理解されるように、参照光の実効的な光路長は図15(a)のように板厚tを増やす方向にプリズムをスライドさせることによっては短くなり、図15(b)のように板厚tを減らす方向にプリズムをスライドさせることによっては長くなる。
【0136】
なお、図15においてはアクチュエータ70Cにより第2プリズム70B側をスライドさせる構成を例示したが、第1プリズム70A側をスライドさせても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0137】
ここで、本例の場合において、光路長調整部70による参照光の光路長の補正は、バルク型記録媒体50の最も下層側に形成された情報記録層L5に録再用レーザ光が合焦しているときを基準として行われるものとする。
具体的に、第3の実施の形態の場合、光路長補正板15による光路長補正(出荷前段階での光路長補正)は、アクチュエータ70Cの可動範囲内でプリズムを一番近づけた状態(つまり参照光光路長を最も長く調整した状態)で且つ、録再用レーザ光が上記情報記録層L5に合焦する状態において、信号光と参照光の光路長を一致させるようにして行われており、従って、この場合における光路長調整部70による参照光の光路長補正は、上記情報記録層L5が選択された状態では補正が不要となり、上層側の情報記録層Lを選択するほど補正量が大となるように行われる。
【0138】
この前提を踏まえた上で、例えば情報記録層L5から最も上層側に位置する情報記録層L1までの間の厚みが0.3mmであり、メディアの屈折率が1.5程度であると仮定すると、層選択に伴い生じ得る信号光の最大光路長変化量、すなわち情報記録層L5を選択した場合と情報記録層L1を選択した場合とでの光路長変化量は、空気換算で0.2mm程度となる。
このとき、光路長調整部70における各プリズムの頂角が20°、ガラス屈折率n=1.5程度であるとすると、情報記録層L1を選択した場合の信号光と参照光の光路長を補正するためには、第2プリズム70Bを図15(b)に示される方向に0.3mm程度移動させればよいものとなる。
【0139】
図16は、第3の実施の形態の光学ドライブ装置全体の内部構成について説明するための図である。
図16において、第3の実施の形態の光学ドライブ装置は、図6に示した第1の実施の形態の光学ドライブ装置と比較して、主にサーボ制御系の構成が異なるものとなっている。
具体的に、図16に示す光学ドライブ装置には、図6に示した信号生成回路36に代えてエラー信号生成回路71が設けられ、またサーボ回路38に代えて録再光用サーボ回路72が設けられる。
またこの場合の光学ドライブ装置には、図14に示したサーボ光用受光部69による受光信号D_svに基づく位置情報検出やサーボ制御を実現するための構成として、新たにマトリクス回路73、サーボ光用サーボ回路74が設けられている。
またこの場合は、図6に示したコントローラ39に代えて、コントローラ76が設けられる。
【0140】
上記エラー信号生成回路71は、図14に示される第2ホモダイン検波用受光部24による受光信号D_hm2に基づき、録再用レーザ光についてのフォーカスエラー信号FE-rp、トラッキングエラー信号TE-rpをそれぞれ生成する。
ここで、先の説明からも理解されるように、バルク型記録媒体50の記録時には、バルク層52からの録再用レーザ光の反射光は得られないものとなる。すなわち、上記フォーカスエラー信号FE-rp、トラッキングエラー信号TE-rpは、再生時において得られるものである。
【0141】
録再光用サーボ回路72は、エラー信号生成回路71から供給されるフォーカスエラー信号FE-rp、トラッキングエラー信号TE-rpに基づき、それぞれフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号を生成し、これらフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号TS-rpに基づくフォーカスドライブ信号FD-rp、トラッキングドライブ信号TD-rpに基づいて、光ピックアップOP3における2軸アクチュエータ18のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、対物レンズ17についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行う。
このような録再光用サーボ回路72による録再用レーザ光の反射光に基づく2軸アクチュエータ18(対物レンズ20)のサーボ制御は、再生時において行われるものである。
【0142】
また、録再光用サーボ回路72は、再生時に対応してコントローラ76から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとして上記トラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、トラッキングサーボの引き込み制御等も行う。また、フォーカスサーボの引き込み制御や、層間ジャンプのための制御も行う。
【0143】
また、マトリクス回路73は、サーボ光用受光部69としての複数の受光素子からの受光信号D_svに基づき、必要な各種の信号を生成する。
具体的にマトリクス回路73は、サーボ用レーザ光についてのフォーカスエラー信号FE-sv、トラッキングエラー信号TE-svを生成する。
また、基準面Refにおいて記録された絶対位置情報の検出を行うための信号として、プッシュプル信号PPも生成する。
この場合もプッシュプル信号PPは位置情報検出部37に供給され、該位置情報検出部37にて検出された位置情報はコントローラ76に供給される。
【0144】
上記フォーカスエラー信号FE-sv、トラッキングエラー信号TE-svは、サーボ光用サーボ回路74に対して供給される。
サーボ光用サーボ回路74は、上記フォーカスエラー信号FE-sv、トラッキングエラー信号TE-svに基づきフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号をそれぞれ生成する。そして、これらフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づき生成したフォーカスドライブ信号FD-sv、トラッキングドライブ信号TD-svに基づき、2軸アクチュエータ18のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、対物レンズ17についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行う。
先の説明からも理解されるように、このようなサーボ光用サーボ回路74による対物レンズ17のフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御は、記録時において行われるものである。
【0145】
また、サーボ光用サーボ回路74は、記録時に対応してコントローラ76から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとして2軸アクチュエータ18のトラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、トラッキングサーボの引き込み制御等も行う。また、フォーカスサーボの引き込み制御等も行う。
【0146】
コントローラ76は、先のコントローラ39と同様にCPUやROM、RAMなどのメモリを備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、光学ドライブ装置の全体制御を行う。
具体的に、この場合におけるコントローラ76は、先の図11にて説明したようにして予めバルク層52内の各情報層位置Lに対応して設定されたオフセットofの値に基づいて、録再用レーザ光の合焦位置の制御(設定)を行う。より具体的に、コントローラ76は、記録時において、記録対象とする情報記録層位置Lに対応して設定されたオフセットof-Lの値に基づき、光ピックアップOP3におけるレンズ駆動部16(録再光用独立フォーカス機構におけるアクチュエータ)を駆動することで、深さ方向における記録位置の選択を行う。
【0147】
また、コントローラ76は、記録時において、サーボ光用サーボ回路74に対して対物レンズ17のフォーカスサーボ制御・トラッキングサーボ制御を実行するように指示を行う。
また、再生時においては、録再光用サーボ回路72側に対物レンズ17についてのフォーカスサーボ制御・トラッキングサーボ制御を実行させるように指示を行う。また再生時には、録再光用サーボ回路74に対する指示を行って、再生対象とする情報記録層Lへの録再用レーザ光のフォーカスサーボ引き込み制御を実行させる。すなわち、再生対象とする情報記録層Lの選択を行うことに相当するものである。
【0148】
また、この場合のコントローラ76は、再生時において光路長調整部70を制御することで、再生対象として選択した情報記録層L(マーク列)の層位置に応じた参照光の光路長補正動作を実行させる。具体的に本例の場合、コントローラ76は、再生対象とする情報記録層Lxの、最下層の情報記録層L5からの距離に応じたスライド量の情報を光路長調整部70におけるアクチュエータ70Cに指示することで、再生対象とする層位置に応じた参照光の光路長補正動作を実行させる。
先に述べたように、この場合の光路長調整部70による光路長補正は、最下層の情報記録層L5を基準として行われるようにされている。このことに対応させて、この場合のコントローラ76には、例えば内部ROM等のメモリに対し、情報記録層L5以外の各情報記録層Lごとにアクチュエータ70のスライド量の情報を対応づけたテーブル情報が格納され、コントローラ76は、該テーブル情報に基づき、再生対象として選択した情報記録層Lに応じたスライド量の情報を取得し、該取得したスライド量の情報を上記アクチュエータ70Cに指示して参照光の光路長補正動作を実行させる。
【0149】
上記により説明したように、第3の実施の形態では、参照光の光路長中に光路長調整部70を設けて、再生対象として選択した層位置に応じて参照光の光路長を補正するようにしたことで、バルク型記録媒体50についての再生を行う場合、すなわち再生対象とする層位置(マーク列)の選択に応じて信号光と参照光の光路長差が生じ得る場合においても、ホモダイン方式による信号再生が適正に行われるようにすることができる。換言すれば、このような光路長差の補正によりS/Nの改善が図られる。
【0150】
このとき、光路長調整部70としては、層選択が行われるタイミングでのみ動作するようにされていればよく、面ブレに追従するような高速動作は不要である。このことからも理解されるように、第3の実施の形態によっても、図20に示した従来例のように面ブレに追従して参照光の光路長を補正するような構成を採る必要はないものとできる。
【0151】
なお、本実施の形態のようにバルク型記録媒体の再生にホモダイン検波を適用する場合においては、参照光は、バルク層52を介してドライブ装置側に戻されることになる。このように参照光がバルク層52を介すことによっては、バルク層52内に記録されたマーク列の影響により、参照光の反射光にノイズ成分が重畳する虞がある。そこで、このようなノイズがホモダイン検波に与える影響を抑制するため、反射膜54としては、全反射膜を用いる。すなわち、このように全反射膜を用いることで、参照光の照射により生じるマーク列からの反射光成分(ノイズ成分)に対し、参照光の反射膜54からの反射光成分の光強度を大幅に大とすることができ、それによりノイズ成分がホモダイン検波に与える影響を無視できる程度に小とすることができる。
【0152】
<4.第4の実施の形態>
[4-1.光学ドライブ装置の構成]

続いて、第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態は、第3の実施の形態のようにバルク型記録媒体50に対応する場合において、先の第2の実施の形態と同様にチルトに起因したコマ収差の補正を行うようにしたものである。
【0153】
図17は、第4の実施の形態の光学ドライブ装置が備える光ピックアップOP4の内部構成について説明するための図であり、先の図14(a)と同様にバルク型記録媒体50の面内方向に平行な方向で切断したときの断面図を示している(この場合もディスク中心Cと記録媒体の外縁も併せて示している)。
なお図示は省略しているが、この場合も先の光ピックアップOP3等と同様に対物レンズ17及び2軸アクチュエータ18が備えられているものとする。
【0154】
図14に示した光ピックアップOP3と比較して分かるように、第4の実施の形態の光ピックアップOP4には、先の第2の実施の形態の光ピックアップOP2が備えていたものと同様の液晶素子45が追加される。
この液晶素子45としては、ダイクロイックプリズム63から対物レンズ17までの間に挿入されることで、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光の双方についてのコマ収差補正が可能となり、例えば本例においては、図のようにダイクロイックプリズム63とミラー16との間に挿入している。
なお、録再用レーザ光のみについてコマ収差補正を行う場合には、液晶素子45は、偏光ビームスプリッタ13の分光面からダイクロイックプリズム63までの間に挿入すればよい。
【0155】
図18は、第4の実施の形態としての光学ドライブ装置全体の内部構成について説明するための図である。
先の図16と比較して分かるように、第4の実施の形態の光学ドライブ装置は、第3の実施の形態の光学ドライブ装置に対して、第2の実施の形態(図6)で説明したチルト量推定部46及びチルト補正部47が追加されたものとなっている。
つまりこのような構成により、この場合は録再用レーザ光の受光位置ずれ量に基づくラジアル方向及びタンジェンシャル方向のチルト量sti_rad、sti_tanの推定(検出)が行われ、それらチルト量sti_rad、sti_tanの値に基づき液晶素子45によるコマ収差補正が実行される。
この結果、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光の双方について、ラジアル方向及びタンジェンシャル方向のチルトに起因したコマ収差の補正が実現されるものとなる。
【0156】
<5.変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば光学系の構成等は、実際の実施形態に応じて適宜最適とされる構成が採られればよく、本発明の範囲内において適宜変更が可能である。
【0157】
また、特に第3及び第4の実施の形態では、バルク型記録媒体への照射光の位置制御を行うにあたり基準とする基準面Refが、バルク層52よりも下層側に形成される場合に対応した構成を例示したが、図19に示されるように、基準面Refがバルク層52よりも上層側に形成されたバルク型記録媒体80に対しても、本発明は好適に適用できる。
この図19に示す例において、基準面Refに相当する反射膜81は、カバー層51の下層に対して形成されている。バルク型記録媒体80は、例えばポリカーボネート等の樹脂で構成された基板83(この場合その上層側の面は平坦面とされる)上に対しバルク層52を積層し、該バルク層52の上層に紫外線硬化樹脂をスピンコート法などで塗布して該塗布された紫外線硬化樹脂の上面側にスタンパを押し当てた状態にて紫外線照射を行って案内溝の形成された中間層82を形成した上で、該中間層82上への反射膜81の成膜、及び反射膜81上へのカバー層51の積層を行って形成される。
【0158】
このようなバルク型記録媒体80とする場合は、基準面Refを形成する反射膜81としては、録再用レーザ光をバルク層52内に到達させ且つ参照光を基準面Refにて反射させるために、半透明反射膜を用いることとなる。
なお、このようなバルク型記録媒体80に対応するとした場合にも、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光の記録時/再生時のサーボ制御手法や光路長調整部70による参照光の光路長補正の手法自体は、先の第3、第4の実施の形態で説明したものと同様でよいことは言うまでもない。
【0159】
また、上記反射膜81の反射率は、できるだけ大とすることが望ましい。すなわち、反射膜81の反射率を大とすれば、その分、参照光が該反射膜81を透過してバルク層52内に照射されることに応じて生じるノイズ光が参照光の反射光に重畳して与える影響を少なくすることができるためである。
【0160】
また、これまでの説明では特に言及はしなかったが、記録可能ディスクとしての光記録媒体に対して記録時に参照光を照射してしまうと、記録特性の悪化等を招いてしまう虞がある(記録光と参照光は同一光源を用いるため)。
そこで、参照光の光路中にシャッタ等の遮光手段を設け、記録時に参照光を遮光するといった構成を採ることもできる。
【0161】
また、第2及び第4の実施の形態において、チルト量stiは、ガルバノミラー(25、27)の駆動信号から推定するものとしたが、光軸ずれ量検出部40により検出された光軸ずれ量D_axdから直接的に推定するようにもできる。
なお、何れの手法とする場合にも、チルト量stiは、参照光の受光位置ずれに基づいて推定していることに変わりはない。
【0162】
また、第2及び第4の実施の形態において、チルト起因のコマ収差の補正は、液晶素子45を用いて行うものとしたが、例えばチルト自体の補正を行うものとして、光記録媒体を傾ける、光ピックアップOP全体を傾ける、或いは対物レンズ17を傾けるといった構成を採ることもできる。
【0163】
またこれまでの説明では、本発明が光記録媒体に対する記録及び再生の双方を行う記録再生装置に適用される場合を例示したが、本発明は光記録媒体に対する再生のみが可能とされた再生専用装置(再生装置)にも好適に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0164】
1 光記録媒体、2,51 カバー層、3 記録層、4,55,83 基板、10 レーザ(録再用レーザ)、11,65 コリメーションレンズ、12,20 13,22,28,66 偏光ビームスプリッタ(PBS)、14,26,67 λ/4板、15 光路長補正板、16 ミラー、17 対物レンズ、18 2軸アクチュエータ、19 無偏光ビームスプリッタ(BS)、21,29,68 集光レンズ、23 第1ホモダイン検波用受光部、24 第2ホモダイン検波用受光部、25 第1ガルバノミラー、27 第2ガルバノミラー、30 光軸ずれ検出用受光部、31 記録処理部、32 第1再生信号生成回路、33 第2再生信号生成回路、34 減算部、35 再生処理部、36 信号生成回路、37 位置情報検出部、38 サーボ回路、39,76 コントローラ、40 光軸ずれ量検出部、41 第1方向補正部、42 第2方向補正部、OP1,OP2,OP3,OP4 光ピックアップ、45 液晶素子、46 チルト量推定部、47 チルト補正部、50,80 バルク型記録媒体、52 バルク層、53,82 中間層、54,81 反射膜、60 固定レンズ、61 可動レンズ、62 レンズ駆動部、63 ダイクロイックプリズム、64 サーボ用レーザ、70 光路長調整部、70A 第1プリズム、70B 第2プリズム、70C アクチュエータ、71 エラー信号生成回路、72 録再光用サーボ回路、73 マトリクス回路、74 サーボ光用サーボ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源より出射された光を第1の光と第2の光とに分光し、上記第1の光を対物レンズを介して光記録媒体に照射し、上記第2の光を平行光により上記光記録媒体に照射すると共に、上記光記録媒体から得られる上記第1の光の反射光と上記第2の光の反射光とを互いの偏光方向が直交した状態で同軸に合成する分光照射合成部と、
上記分光照射合成部において合成された上記第1の光の反射光と上記第2の光の反射光とを入力し、上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と同位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光と、上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と逆位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光とを生成するホモダイン検波用光生成部と、
上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と同位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光を受光する第1の受光部と、
上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と逆位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光を受光する第2の受光部と、
上記第1の受光部による受光信号と上記第2の受光部による受光信号との差分を計算してホモダイン検波信号を得る演算部と
を備える光学ドライブ装置。
【請求項2】
上記第2の光の反射光の受光位置のずれを検出した結果に基づきその光軸ずれを検出する光軸ずれ検出部と、
上記光軸ずれ検出部による検出結果に基づき、上記第2の光の光軸を補正する光軸補正部とを備える
請求項1に記載の光学ドライブ装置。
【請求項3】
上記光軸ずれ検出部による検出結果に基づきチルト検出を行うチルト検出部を備える請求項2に記載の光学ドライブ装置。
【請求項4】
上記チルト検出部によるチルト検出結果に基づき上記第1の光についてのコマ収差補正を行う収差補正部を備える
請求項3に記載の光学ドライブ装置。
【請求項5】
上記収差補正部は液晶素子によりコマ収差補正を行う請求項4に記載の光学ドライブ装置。
【請求項6】
上記光記録媒体は、
上記第1の光の照射に応じて深さ方向の所要の層位置に選択的にマーク記録が行われるバルク層と、反射膜とを備えて構成されており、
上記バルク層内に形成された再生対象とするマーク列の層位置に応じて上記第2の光の光路長を補正する光路長補正部を備える
請求項1に記載の光学ドライブ装置。
【請求項7】
上記光路長補正部は、
上記第2の光の光路中に挿入された同じ頂角をもつ2枚向かい合わせのプリズムのうち一方のプリズムをスライド移動させることで上記第2の光の光路長を補正する
請求項6に記載の光学ドライブ装置。
【請求項8】
上記光記録媒体に対する記録時において上記第2の光を遮光する遮光部を備える請求項1に記載の光学ドライブ装置。
【請求項9】
光源より出射された光を第1の光と第2の光とに分光し、上記第1の光を対物レンズを介して光記録媒体に照射し、上記第2の光を平行光により上記光記録媒体に照射すると共に、上記光記録媒体から得られる上記第1の光の反射光と上記第2の光の反射光とを互いの偏光方向が直交した状態で同軸に合成する分光照射合成手順と、
上記分光照射合成手順により合成した上記第1の光の反射光と上記第2の光の反射光とを入力し、上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と同位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光と、上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と逆位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光とを生成するホモダイン検波用光生成手順と、
上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と同位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光を受光する第1の受光手順と、
上記第1の光の反射光に対して該第1の光の反射光と逆位相となる上記第2の光の反射光を干渉させた光を受光する第2の受光手順と、
上記第1の受光手順による受光信号と上記第2の受光手順による受光信号との差分を計算してホモダイン検波信号を得る演算手順と
を有するホモダイン検波方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図14】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−165285(P2011−165285A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28645(P2010−28645)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】