説明

光学フィルムおよびその用途ならびに光学フィルムの製造方法

【課題】本発明は、工業的に長尺のフィルムを製造する場合における、周期的な厚さムラの少ない環状オレフィン系樹脂からなる光学フィルム、およびその製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の光学フィルムは、環状オレフィン系樹脂からなり、長手方向に周期的な厚み変動を有するフィルムであって、下記式(A)、(B)および(C)で示される条件を全て満たすことを特徴としている。
P−V≦1 …(A)、W≧3 …(B)、D≦30 …(C)
(Pは、厚み変動における厚みの極大値(μm)を表し、Vは、厚み変動における厚みの極小値(μm)を表し、Wは、長手方向の周期間隔(cm)を表し、Dは、フィルム厚み変化の傾き(ppm)の最大値の絶対値を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み変動の少ない光学フィルムに関する。詳しくは、本発明は、環状オレフィン系樹脂からなり、厚み変動が少なく、好ましくは位相差フィルムとしての機能を有する光学フィルム、ならびに該光学フィルムを用いた偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系樹脂は、透明性、耐熱性、耐湿性などに優れるため、光学フィルム用途に好適に用いられている。通常、環状オレフィン系樹脂からなるフィルムは、溶液流延法(溶液キャスティング法)や、溶融押出法などにより製膜され、必要に応じて延伸などを施して製造される。
【0003】
光学フィルムは、透明性などの光学特性に優れることが求められるとともに、フィルムが均質で、光学ムラが少ないことが肝要である。光学フィルム製造時に生じる光学ムラを防止あるいは抑制して光学フィルムを製造する方法としては、たとえばダイリップの欠陥形状を抑制した特定のTダイを用いることにより、溶融押出し成形で光学フィルムを製造する際にフィルムの押出し方向にそって連続的に発生する凹凸状線状模様(ダイライン)の発生を抑制する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、工業的に長尺のフィルムを製造する場合には、原料樹脂の供給に用いられるポンプの特性、フィルムを巻き取るロールの回転くせなどにより、長手方向に周期的な厚み変動が生じ、これにより得られた光学フィルムに明度の周期的な変化や光学的な歪み(いわゆるクロスマーク)が生じるという問題がある。
【特許文献1】特開2005−148568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、工業的に長尺のフィルムを製造する場合における、周期的な厚さムラの少ない環状オレフィン系樹脂からなる光学フィルム、ならびに環状オレフィン系樹脂からなる周期的な厚さムラを低減した光学フィルムを製造する方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学フィルムは、環状オレフィン系樹脂からなり、長手方向に周期的な厚み変動を有するフィルムであって、下記式(A)、(B)および(C)で示される条件を全て満たすことを特徴としている。
【0007】
P−V≦1 …(A)
W≧3 …(B)
D≦30 …(C)
(式(A)中、Pは、厚み変動における厚みの極大値(μm)を表し、Vは、厚み変動における厚みの極小値(μm)を表す。
【0008】
式(B)中、Wは、長手方向の極大厚み2点間の間隔であって、該2点でのP値が、該2点間に存在するVの最小値よりも0.1(μm)以上大きい場合の、最短の間隔として測定される、長手方向の周期間隔(cm)を表す。
【0009】
式(C)中、Dは、フィルム厚み変化の傾き(ppm)の最大値の絶対値を表す。)
このような本発明の光学フィルムは、環状オレフィン系樹脂が、下記式(1)で表される少なくとも一種の化合物を重合あるいは共重合して得られた樹脂であることが好ましい。
【0010】
【化1】

(式(1)中、R1〜R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていても良い。また、R1
〜R4 のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。)。
【0011】
本発明の光学フィルムは、位相差フィルムとしての機能を有することが好ましい。
本発明の光学フィルムは、長手方向の長さが50m以上の長尺フィルムであることが好ましい。
【0012】
本発明の偏光板は、上記位相差フィルムとしての機能を有する本発明の光学フィルムを、少なくとも一面に有することを特徴としている。
本発明の液晶ディスプレイは、上記本発明の光学フィルムのいずれか、または上記本発明の偏光板を有することを特徴としている。
【0013】
本発明の光学フィルムの製造方法は、上述の本発明の光学フィルムを製造する方法であって、環状オレフィン系樹脂を、ギアポンプを用いて押出機に供給し、押出機出口における極大圧力と、平均圧力との差が、平均圧力の0.2%以下である条件で、溶融押出法によりフィルム状に成形する工程を有することを特徴としている。
【0014】
また本発明の光学フィルムの製造方法は、上述の本発明の光学フィルムを製造する方法であって、環状オレフィン系樹脂をフィルム状に成形してロールで引取るに際し、定常運転時のロールの引取速度の極大値または極小値と、平均引取り速度との差の絶対値を、平均引取速度の0.1%以下とすることを特徴としている。このような光学フィルムの製造方法では、表面がセラミック製であり、表面粗度Rsの極大値Rmax(μm)が、Rmax≦0.2を満たす範囲内にある引取ロールを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂からなり、周期的な厚さの変動が少なく、フィルムの外観がよく、位相差や光軸が安定した光学的にムラのないフィルムおよびその製造方法を提供することができる。また、光学フィルムが延伸を施したフィルムである場合には、位相差や光軸の安定した、光学的にムラのない位相差フィルムとして好適に用いることができる。本発明に係る光学フィルムは厚み変動が極めて少なく、光学的なムラが少ないため、これを用いた大画面の液晶ディスプレイなどは全面において歪みやムラのない高い性能を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について具体的に説明する。
環状オレフィン系樹脂
本発明に係る光学フィルムは、環状オレフィン系樹脂からなる。環状オレフィン系樹脂としては、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系化合物を単独または2種以上で、あるいは環状オレフィン系化合物以外の共重合モノマーとともに、重合あるいは共重合モノマーとして用いて、付加(共)重合、開環(共)重合、あるいは開環(共)重合後に主鎖中の二重結合を水素添加して得られる環状オレフィン系樹脂がいずれも用いられる。
【0017】
本発明に係る光学フィルムを構成する環状オレフィン系樹脂としては、特に、下記一般式(1)で表される単量体(以下、「特定単量体」ともいう。)から得られる重合体または共重合体(以下、「(共)重合体」と表現する。)を用いることが好ましく、より好ましくは下記一般式(1’)で表される構造単位を有する(共)重合体、特に好ましくは、下記一般式(2)で表される構造単位を有する(共)重合体である。
【0018】
【化2】

(式(1)中、R1〜R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていても良い。また、R1
〜R4 のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。)
【0019】
【化3】

(式(1’)中、R1〜R4 、p、mの定義は上記式(1)に同じ。)
【0020】
【化4】

(式(2)中、R1〜R4 の定義は上記式(1)に同じ。)
具体的には、下記(a)〜(e)に示す重合体または共重合体を好適に用いることができる。
(a)特定単量体の開環重合体(以下、「特定の開環重合体」ともいう。)
(b)特定単量体とこれと共重合可能な環状単量体(特定単量体を除く。以下、「共重合性環状単量体」ともいう。)との開環共重合体(以下、「特定の開環共重合体」ともいう。)
(c)特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体(以下、「特定の飽和共重合体」ともいう。)
(d)特定の開環重合体または特定の開環共重合体(以下、これらを「特定の開環(共)重合体」ともいう。)の水素添加(共)重合体
(e)特定の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化した後、水素添加して得られる水素添加(共)重合体
〔特定単量体〕
好ましい特定単量体としては、上記式(1)中、R1およびR3が水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2およびR4が水素原子または一価の有機基であって、R2およびR4の少なくとも一つは水素原子および炭化水素基以外の極性基を示し、mが0〜3の整数、pが0〜3の整数であり、m+pの値が0〜4、更に好ましくは0〜2、特に好ましくは1であるものを挙げることができる。
【0021】
また、特定単量体のうち、R2およびR4が下記式(3)で表される極性基を有する特定単量体は、ガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう)が高く、吸湿性が低い環状オレフィン系熱可塑性樹脂が得られる点で好ましい。
【0022】
−(CH2)nCOOR5 (3)
(式中、R5は炭素数1〜12の炭化水素基を示し、nは0〜5の整数である。)
上記式(3)において、R5はアルキル基であることが好ましい。
【0023】
また、nの値が小さいものほど、得られる環状オレフィン系樹脂のTgが高くなるので好ましく、特にnが0である特定単量体は、その合成が容易である点で好ましい。
また、上記式(1)において、R1またはR3はアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数が1〜4のアルキル基、さらに好ましくは炭素数が1〜2のアルキル基、特に好ましくはメチル基である。更に、このアルキル基が、上記式(3)で表される極性基が結合した炭素原子と同一の炭素原子に結合されていることが好ましい。
【0024】
また、上記式(1)においてmが1である特定単量体は、Tgがより高い熱可塑性樹脂組成物が得られる点で好ましい。
上記式(1)で表される特定単量体の具体例としては、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]−8−デセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.199,12.08,13]−3−ペンタデセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
【0025】
ジメタノオクタヒドロナフタレン、
エチルテトラシクロドデセン、
6−エチリデン−2−テトラシクロドデセン、
トリメタノオクタヒドロナフタレン、
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、
ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン、
ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−
エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシ
クロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチ
ルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0026】
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−フルオロ
メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.
7,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テト
ラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチル
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.
7,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.
4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどを挙げることができる。
【0027】
これらの特定単量体のうち、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.
4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.
7,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセンは、優れた耐熱性を有する環状オレフィン系樹脂が得られる点で好ましい。
【0028】
〔共重合性環状単量体〕
特定の開環共重合体を得るための共重合性環状単量体としては、炭素数が4〜20、特に5〜12のシクロオレフィンを用いることが好ましく、その具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、トリシクロ[5.2.1.02,6]−3−デセン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0029】
〔不飽和二重結合含有化合物〕
特定の飽和共重合体を得るための不飽和二重結合含有化合物としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖に炭素−炭素間二重結合を含む不飽和炭化水素系ポリマーを用いることができる。
【0030】
特定単量体と共重合性環状単量体または不飽和二重結合含有化合物との使用割合は、特定単量体:共重合性環状単量体または不飽和二重結合含有化合物が、重量比で100:0〜50:50であることが好ましく、更に好ましくは100:0〜60:40である。
【0031】
共重合性環状単量体または不飽和二重結合含有化合物の使用割合が過大である場合には、得られる共重合体のTgが低下し、その結果、樹脂の耐熱性が低下するため、耐熱性の高いシートを得ることが困難となる。
【0032】
〔開環重合触媒〕
特定単量体の開環重合反応はメタセシス触媒の存在下に行われる。このメタセシス触媒は、タングステン化合物、モリブデン化合物およびレニウム化合物から選ばれた少なくとも1種の金属化合物(以下、「(a)成分」という。)と、周期表第1族元素(例えばLi、Na、Kなど)、第2族元素(例えばMg、Caなど)、第12族元素(例えばZn、Cd、Hgなど)、第13族元素(例えばB、Alなど)、第4族元素(例えばTi、
Zrなど)あるいは第14族元素(例えばSi、Sn、Pbなど)の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種の化合物(以下、「(b)成分」という。)との組み合わせからなるものであり、触媒活性を高めるために添加剤(以下、「(c)成分」という。)が含有されていてもよい。
【0033】
上記(a)成分を構成する好適な金属化合物の具体例としては、WCl6、MoCl5、ReOCl3 などの特開平1−240517号公報に記載の金属化合物を挙げることができる。
【0034】
上記(b)成分を構成する化合物の具体例としては、n−C49Li、(C25)3Al、(C25)2AlCl、(C25)1.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルミノキサン、LiHなどの特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0035】
上記(c)成分としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などを好適に用いることができるが、その他に特開平1−240517号公報に示される化合物を用いることができる。
【0036】
〔水素添加〕
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂としては、上記の特定の(共)開環重合体および特定の飽和共重合体の他に、特定の(共)開環重合体に水素添加して得られる水素添加(共)重合体、および特定の(共)開環重合体をフリーデルクラフト反応により環化した後、これに水素添加して得られる水素添加(共)重合体を用いることができる。
【0037】
このような水素添加(共)重合体は、優れた熱安定性を有するものであるため、成形加工を行う際や製品として使用する際に、加熱によってその特性が劣化することを防止することができる。
【0038】
ここに、水素添加(共)重合体における水素添加率は、通常50%以上、好ましく70%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。
【0039】
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂は、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)が0.2〜5.0dl/gであることが好ましい。
また、環状オレフィン系樹脂の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が8,000〜100,000、重量平均分子量(Mw)が20,000〜300,000の範囲のものが好適である。
【0040】
更に、環状オレフィン系樹脂のビカット軟化点は、120℃以上であることが好ましい。
また、本発明で用いる環状オレフィン系樹脂フィルムは、上述のような環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物から形成されていてもよい。樹脂組成物には、環状オレフィン系樹脂の他、環状オレフィン系樹脂以外の樹脂成分、安定剤や加工性向上剤などの樹脂に配合し得る各種添加剤を配合することができる。
【0041】
光学フィルム
本発明の光学フィルムは、上述した環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム長手方向における周期的な厚み変動が、下記式(A)、(B)および(C)で示される条件を全て満たす。
【0042】
P−V≦1 …(A)
W≧3 …(B)
D≦30 …(C)
(式(A)中、Pは、厚み変動における厚みの極大値(μm)を表し、Vは、厚み変動における厚みの極小値(μm)を表す。
【0043】
式(B)中、Wは、長手方向の極大厚み2点間の間隔であって、該2点でのP値が、該2点間に存在するVの最小値よりも0.1(μm)以上大きい場合の、最短の間隔として測定される、長手方向の周期間隔(cm)を表す。
【0044】
式(C)中、Dは、フィルム厚み変化の傾き(ppm)の最大値の絶対値を表す。)
なお、図1は、フィルムの長手方向の長さとフィルムの厚みとの関係を示す図であり、式(A)〜(C)中のP、V、WおよびDを表している。ただし、区間W1の両端のPをP1、P2、区間W1の極小値をV1、区間W2の両端のPをP2、P3、区間W2の極小値をV2としている。
【0045】
上記式(A)は、フィルム厚みの極大値と極小値の差(μm)を示すものであって、P−Vは、1μm以下であり、フィルムの厚みにもよるが、好ましくは0.8μm以下、更に好ましくは0.5μm以下であるのが望ましい。
【0046】
上記式(B)におけるWは、長手方向に周期的な厚み変動を有するフィルムの、変動の周期を表す。この周期は長いほどフィルムの光学ムラは少なくなるため好ましい。本発明ではW≧3cm、好ましくはW≧5cm、より好ましくはW≧7cmである。
【0047】
上記式(C)におけるDは、フィルム厚み変化の傾き(ppm)の最大値の絶対値を表す。Dが小さいことは、フィルムの急激な厚み変化が少ないことを意味するため、Dの値は小さいほど好ましく、D≦30ppm、好ましくはD≦25ppm、更に好ましくはD≦20ppmである。
【0048】
なお、本発明では、評価しようとするいわゆるクロスマークの程度を正確に把握するため、上記式(A)〜(C)中、P、V、WおよびDの各値は、フィルム厚み分布測定装置を用い、測定間隔を1mm毎として、フィルムの厚み分布を測定した数値データに、JIS B0632:2001(ISO 11562:1996)および該JISの解説に基いてフィルタリング処理を施して求めた値としている。厚み分布測定装置は1mm以下ごとの測定間隔で連続的に測定できるもので、0.025μm以下の厚み分解能を有し、0.01μm単位以下で厚み測定値が表示されるものが望ましい。
【0049】
本発明の光学フィルムは、環状オレフィン系樹脂を、溶融押出法あるいは溶液流延法などの方法により製膜して得た未延伸のフィルムであることも好ましく、また、未延伸のフィルムを縦一軸延伸、横一軸延伸、二軸延伸などの方法で延伸処理して得たフィルムであることも好ましい。これらのうち、二軸延伸フィルム、好ましくはフィルム面内の屈折率の最大方向(以下、光軸と略)がフィルム長手方向に対して垂直方向となる二軸延伸フィルムは、良好な位相差と光軸を発現し、位相差フィルムとしての機能を有するため、偏光板用途や液晶ディスプレイ用途に好適に用いることができる。また、未延伸のフィルムは、偏光板の偏光子の保護膜などの光学フィルムとして好適に用いることができる。
【0050】
本発明の光学フィルムは、特に限定されるものではないが、フィルム厚さが通常1〜300μm程度、好ましくは10〜200μm程度であるのがハンドリング性から望ましい。なお、ここでフィルム厚さとは、フィルム厚さの平均値またはフィルムの平坦部で測定した厚さを意味する。
【0051】
本発明の光学フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、長手方向の長さが通常50m以上、好ましくは100m以上であることが望ましい。このような長尺フィルムは、通常フィルムロールとして取り扱われる。
【0052】
本発明の光学フィルムが位相差フィルムとしての機能を有するフィルムである場合、原反となる未延伸の光学フィルムに厚みのムラや光学的な歪みが極めて少ないことに起因して、延伸で得られる位相差フィルムにも局所的な厚みのムラや光学ゆがみが極めて少なく、フィルム外観がよく、位相差や光軸の安定したフィルムとなる。本発明の光学フィルムは、位相差フィルムとしての機能を有するフィルムである場合には、厚み変動による光学ムラが少ないことにより、位相差フィルムとしての各種用途、これを少なくとも片面に有する偏光板としての各種用途に好適に使用でき、たとえば液晶ディスプレイに使用した場合に視認性に著しく優れ、しかも耐熱性、他素材との密着性・接着性にも優れており、LCDパネルの高品位化に応えることができる。位相差フィルムとしての機能を有する本発明の光学フィルムは、未延伸のフィルムである本発明の光学フィルムを延伸処理することにより好適に製造することができる。
【0053】
偏光板
本発明の偏光板は、位相差フィルムとしての機能を有する本発明の光学フィルムを少なくとも一面に有するものであって、偏光膜(偏光子)の少なくとも一面に上記本発明の位相差フィルムを積層した構成であるのが望ましい。本発明の偏光板を構成する偏光膜としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)やPVAの一部をホルマル化したポリマーなどからなるフィルムに、ヨウ素や二色性染料などからなる二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理などを適当な順序や方法で施して得られるフィルムであって、自然光を入射させると直線偏光となって透過するものである。特に、光の透過率が高く、偏光度の優れたものが好ましく用いられる。
【0054】
偏光板を構成する偏光膜の厚さは、一般に5〜80μmのものが好適に使用されるが、
本発明ではこれに限定されない。また、偏光膜としては、上記PVA系フィルムの他に、同様の特性を発現するものであれば他のものを使用してもよい。たとえば、環状オレフィン系樹脂からなるフィルムに、染色処理、延伸処理、架橋処理などを適当な順序や方法で施したものでもよい。
【0055】
通常、偏光板は、偏光膜と、位相差フィルムと、保護フィルムとから構成されるが、本発明では、偏光板を構成する位相差フィルムとして、環状オレフィン系樹脂からなり、位相差フィルムとしての機能を有する光学フィルムを偏光膜の少なくとも一面に用いる。このような本発明の偏光板では、位相差フィルムが耐熱性、耐湿性、耐薬品性などの性状に優れ、保護フィルムとしても十分な機能を有するため、偏光膜上に位相差フィルムとしての機能を有する本発明の光学フィルムが積層された面には、別途保護フィルムが積層されていなくてもよい。本発明の偏光板が、偏光膜の片面のみに位相差フィルムとしての機能を有する本発明の光学フィルムが積層された構成である場合には、偏光膜のもう一方の面は、たとえばトリアセチルセルロース(TAC)などの公知の保護膜が積層されていてもよい。本発明の偏光板は、好ましくは、偏光膜の両面に、本発明に係る位相差フィルムが積層された構造であるのが望ましい。
【0056】
このような本発明の偏光板は、各層を、感圧接着剤などの公知の接着剤や粘着剤を介して接着することにより、好適に製造することができる。粘着剤、接着剤としては、透明性に優れたものが好ましく、具体的には、天然ゴム、合成ゴム、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリビニルエーテル、アクリル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂等の粘着剤
;水酸基、アミノ基等の官能基を有する前記樹脂等にイソシアナート基含有化合物などの硬化剤を添加した硬化型粘着剤;ポリウレタン系のドライラミネート用接着剤;合成ゴム系接着剤;エポキシ系接着剤などが挙げられる。
【0057】
本発明に係る光学フィルムならびに偏光板は、周期的な厚み変動が小さいため、光学歪みが極めて少なく、特に大画面表示を行う大型の液晶ディスプレイなどの用途に好適に用いることができる。本発明に係る光学フィルム、偏光板は、様々な光学部品に使用することができ、各種液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタ、エレクトロルミネッセンス表示素子またはタッチパネルなどに使用することができる。また光ディスクの記録・再生装置に使用される波長板としても有用である。
【0058】
液晶ディスプレイ
本発明の液晶ディスプレイは、上記本発明の光学フィルムおよび/または偏光板を有するものであり、好ましくは上記本発明の偏光板を有する。本発明の光学フィルムが未延伸のフィルムである場合には、偏光膜の保護膜として好適に用いることができる。
【0059】
本発明の液晶ディスプレイは、厚みの変動が小さく、光学ムラが極めて小さい光学フィルムあるいは偏光板を有するため、液晶ディスプレイが大型である場合にも、光学的な歪みがなく、全面にムラなく表示することができる。
【0060】
光学フィルムの製造方法
本発明に係る環状オレフィン系樹脂フィルムは、上述した環状オレフィン系樹脂あるいは樹脂組成物を成形して製造される。環状オレフィン系樹脂からフィルムを成形する方法としては、溶融押出法、溶液流延法などの方法が挙げられ、必要に応じてこれをさらに縦一軸延伸、横一軸延伸あるいは二軸延伸などの方法で延伸する方法が挙げられる。すなわち本発明に係る光学フィルムは、溶融押出法、溶液流延法などの方法により環状オレフィン系樹脂をフィルム上に成形した未延伸のフィルムであってもよく、また、未延伸のフィルムに延伸を施したフィルムであってもよい。
【0061】
溶融押出法により本発明に係る光学フィルムを製造する場合、通常Tダイを有する押出機を用いて環状オレフィン系樹脂を製膜する。本発明では、原料である環状オレフィン系樹脂を、脈動の少ないギアポンプを使用して押出機へ導入し、押出機出口における極大圧力と平均圧力との差が、平均圧力の0.2%以下、好ましくは0.1%以下とすることにより、出口圧力の周期的な変動を抑制することが望ましい。
【0062】
また、溶融押出法により本発明に係る光学フィルムを製造する場合、ポリマーフィルターを有する押出機を用いるのが好ましく、ポリマーフィルターでの樹脂滞留時間を3〜10分、好ましくは3〜5分の範囲に制御するのが望ましい。溶融押出法で樹脂フィルムを製造する場合において、ポリマーフィルターを有する押出機を使用すると、樹脂中のゲル状物質や異物を高度に除去できるが、環状オレフィン系樹脂は融点が高く押出成形時の成形温度も高温となるため、滞留時間が長い場合にはフィルター通過後にも熱分解による新たなゲル状物質が発生したり、低分子量の揮発物が発生して気泡を生じたりする場合がある。本発明では、ポリマーフィルターでの環状オレフィン系樹脂の滞留時間を上記の範囲に制御することによって、目の細かいポリマーフィルターを通過させることのできる滞留時間を確保し、かつ、滞留時間が長いことによるフィルムの品質低下を回避することができる。
【0063】
また、溶融押出法により本発明に係る光学フィルムを製造する場合、Tダイから吐出した溶融樹脂が先ず接触する転写ロール表面がセラミック製であり、その表面粗度Rsの極大値Rmax(μm)が、Rmax≦0.2、好ましくはRmax≦0.1を満たす範囲
内にある転写ロールを用いることが望ましい。転写ロールの表面を構成するセラミックとしては、たとえば酸化アルミニウム、酸化クロムなどが挙げられる。
【0064】
このような転写ロールを用いて環状オレフィン系樹脂をフィルム状に成形すると、ロールと成形されたフィルムとの剥離性が良好でロール表面の特性にバラツキがないため、剥離時にフィルムに付加される張力に変動が生じにくく、得られるフィルムに剥離に起因する周期的な厚みの変動が生じにくい。
【0065】
連続的に光学フィルムを製造するにあたっては、通常、転写ロールから剥離ロールを用いて製膜されたフィルムを引取るが、ロールの引取速度の周期的な変動が小さいことが望ましく、本発明においては、引き取り開始時および終了時を除く定常運転時において、ロールの引き取り速度の極大値または極小値と、平均引き取り速度との差の絶対値が、好ましくは平均引取速度の0.1%以下、好ましくは0.05%以下の範囲であることが望ましい。具体的には、例えば、ロールからの引き取り速度が10m/分の場合には、変動が±0.01m/分以内に制御する。ここで、連続的な光学フィルムの製造における製膜の方法は特に限定されるものではないが、上述のように製膜条件を制御した溶融押出法であるのが特に好ましい。
【0066】
本発明では、上述した転写ロールに加え、その次のロールに該当する剥離ロールとして、表面がセラミック製であり、ロールの表面粗度Rsの極大値Rmax(μm)が、Rmax≦0.2、好ましくはRmax≦0.1を満たす範囲内にある引取ロールを用いることが望ましい。引取ロールの表面を構成するセラミックとしては、たとえば酸化アルミニウム、酸化クロムなどが挙げられる。このような引取ロールを用いて製膜されたフィルムを引取ると、引取ロールとフィルムとの剥離性が良好で、ロール表面の特性にバラツキがないため、剥離時にフィルムに付加される張力に変動が生じにくく、得られるフィルムに引取ロールに起因する周期的な厚みの変動が生じにくい。
【0067】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」、「%」は、特に断りのない限り「重量部」、「重量%」を意味する。
【0069】
また、以下の実施例において、ガラス転移温度、飽和吸水率、全光線透過率、透過光の面内位相差、フィルム厚み方向の光軸傾斜角度、偏光板の透過率および偏光度、反射率、輝点数並びに耐傷性は、下記の方法により測定した。
【0070】
〔ガラス転移温度(Tg)〕
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素雰囲気で昇温速度が20℃/分の条件でガラス転移温度を測定した。
【0071】
〔飽和吸水率〕
ASTM D570に準拠し、23℃の水中に1週間サンプルを浸漬し、浸漬前後のサンプルの重量変化測定し、その値から飽和吸水率を求めた。
【0072】
〔全光線透過率〕
村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150型」を用い、全光線透過率を測定した。
【0073】
〔透過光の面内位相差(R0)〕
王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」を用い、フィルムに垂直に光が入射したときの面内位相差(R0)を、波長550nmにおいて測定した。
【0074】
〔偏光板の透過率および偏光度〕
王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」を用い、偏光板の透過率および偏光度を測定した。測定波長は550nmとした。
【0075】
〔フィルム厚み分布および厚み変化の傾きの計算〕
フィルム厚み分布測定装置(MOCONプロファイラー)を使用して、フィルム長手方向に測定した。測定間隔は1mmおきとし、測定開始直後150mm分の測定値と測定終了直前100mm分の測定値は測定誤差の影響があるため除外した。このデータをJIS
B0632:2001(ISO 11562:1996)および該JISの解説に基き、移動ボックス関数フィルタ(隣接する計5点の測定値の平均値をとって1段目のデータとする操作を5段分行った)を適用し、厚み分布の補正曲線(輪郭曲線フィルタにおける長波長成分)を求め、該補正曲線から上記式(A)および(B)でのP、V、Wを求めた。上記式(C)でのDは、該補正曲線に数値微分の3点公式を適用し求めた。
【0076】
<合成例1>
窒素置換した反応容器に、特定単量体として8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン225部と、特定単量体としてビ
シクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン25部と、分子量調節剤として1−ヘキセン27部と、溶媒としてトルエン750部とを仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム1.5モル/lを含有するトルエン溶液0.62部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)を含有する濃度0.05モル/lのトルエン溶液3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液を得た。
【0077】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C65)33 0.12部を添加し、水素ガス
圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応
を行い、得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、「樹脂A1」という。)を得た。当該樹脂Aの1H−NMRを用いて
測定した水素添加率は99.9%であった。
【0078】
樹脂A1について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は20,800、重量平均分子量(Mw)は62,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.00であった。また、樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は130℃であり、23℃における飽和吸水率は0.3%であった。また、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh)を測定したところ0.51dl/gであった。
【0079】
<調製例1>
反応容器に蒸留水250部を仕込み、この反応容器にアクリル酸ブチル90部と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8部と、ジビニルベンゼン2部と、オレイン酸カリウム
0.1部とを添加した後、この系をポリテトラフルオロエチレン製の撹拌羽根により撹拌して分散処理した。その後、この反応容器内を窒素置換した後、この系を50℃まで昇
温し、過硫酸カリウム0.2部を添加して重合を開始した。重合開始から2時間経過後に、さらに、重合反応系に過硫酸カリウム0.1部を添加した後、この系を80℃まで昇温し、1時間にわたって重合反応を継続させることにより重合体分散液を得た。
【0080】
次いで、エバポレータを用いて、重合体分散液を固形分濃度が70%となるまで濃縮することにより、アクリル酸エステル系重合体の水系分散体からなる水系粘着剤(極性基を有する粘着剤)を得た。
【0081】
このようにして得られた水系粘着剤(以下、「水系粘着剤A」という)を構成するアクリル酸エステル系重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は69,000、重量平均分子量(Mw)は135,000であった。
【0082】
また、水系粘着剤Aについて、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh)を測定し
たところ1.2dl/gであった。
[実施例1]
樹脂Aをトルエンに濃度が30%となるように溶解した。得られた溶液の室温における溶液粘度は30,000mPa・sであった。この溶液に、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を、樹脂A100部に対して0.3部を添加し、得られた溶液を日本精線製の孔径5μmの金属繊維焼結フィルターを用い、差圧が0.4MPa以内に収まるように溶液の流速をコントロールしながら濾過させた後、二軸押出機(東芝機械株式会社製;TEM-48)を用いて、3段ベントにより、トルエンを脱気しながら、ギアポンプを用いて下流に押出を行い、公称の目開きを10μmとした日本精線製の金属繊維焼結フィルターを用いて、溶融ろ過を行い、コートハンガー型のTダイ(650mm幅)を用いて、Tダイ出口の間
隙を0.5mmとして280℃で膜状に押出した。このとき、押出機出口における極大圧力と平均圧力との差が0.1%であった。また、溶融状態でTダイから吐出された樹脂中のトルエン含有量は、0.05%であった。
【0083】
押出したフィルムを、表面粗度Rsの極大値Rmax(μm)が0.1の酸化アルミを表面コートした転写ロールと、0.3mm厚の金属ベルトの間に挟んで、フィルムの表面を光沢面に転写した。
【0084】
その後、酸化アルミを表面コートした表面粗度Rsの極大値Rmax(μm)が0.1の剥離ロールを用いて剥離した。そのときのロールの引き取り速度の極大値または極小値と、平均引き取り速度との差の絶対値は0.04%であった。
【0085】
その後、鏡面ロールから剥離した樹脂フィルムをポリエチレン製の厚み50μmのプロ
テクトフィルムと貼合し、厚さ100μm、長さ2000mの樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(a−1)」ともいう。)を得た。当該樹脂フィルム(a−1)について各種評価した結果を表1に示す。また、得られた樹脂フィルム(a−1)の全光線透過率は93%であった。
【0086】
[実施例2]
実施例1において得た樹脂フィルム(a−1)を用い、Tg+10℃でロールニップ式の縦一軸延伸機を用いて1.3倍に延伸後、Tg+10℃でテンター式の横延伸機を用いて1.5倍に延伸して樹脂フィルム(a−2)を得た。樹脂フィルム(a−2)の位相差は、フィルム面内の位相差(R0)が50nmであった。また、各種評価結果を表1にまとめた。当該樹脂フィルム(a−2)の全光線透過率は93%であった。
【0087】
[実施例3]
厚さ50μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素5g、ヨウ化カリウム250g、ほう酸10g、水1000gからなる40℃の浴に浸漬しながら約5分間で4倍まで一軸延伸して偏光膜を得た。この偏光膜の表面に、調整例1で得られた水系粘着剤を用い、実施例1で作製した樹脂フィルム(a−1)と実施例2で作製した樹脂フィルム(a−2)をそれぞれ偏光膜に片面ずつ粘着させ透過率40%、偏光度99.9%の偏光板(1)を得た。この偏光板(1)を80℃、90%相対湿度の条件下で500時間の耐久試験を行い、その外観変化を目視で観察したところ、いずれも白化や膨れ等の外観異常は認められず、また、偏光度についても、初期値に対して95%以上の偏光度を保持しており良好な耐久性を有していることが確認された。また、当該偏光板(1)を二枚クロスニコル状態にして、一方から輝度10000cdのバックライトで照射したときに、もう一方から観察しても光漏れに起因する帯スジ状のムラは全く確認されなかった。
【0088】
[比較例1]
実施例1において、押出機出口における極大圧力と平均圧力との差が0.5%とし、 押出したフィルムを、表面粗度Rsの極大値Rmax(μm)が0.5の酸化アルミを表面コートしていない金属面をもつ転写ロールとし、酸化アルミを表面コートしていない表面粗度Rsの極大値Rmax(μm)が0.5の剥離ロールを用いて剥離し、そのときのロールの引き取り速度の極大値または極小値と、平均引き取り速度との差の絶対値を0.15%としたこと以外は同様にして、樹脂フィルム(b−1)を得た。当該樹脂フィルム(b−1)の各種評価結果を表1にまとめた。また、樹脂フィルム(b−1)の全光線透過率は92%であった。
【0089】
[比較例2]
樹脂フィルム(b−1)を使用したこと以外は実施例2と同様にして、樹脂フィルム(b−2)を得た。樹脂フィルム(b−2)の位相差は、フィルム面内の位相差(R0)が49nmであった。また、各種評価結果を表1にまとめた。当該樹脂フィルム(b−2)の全光線透過率は92%であった。
[比較例3]
樹脂フィルム(a−1)の代わりに樹脂フィルム(b−1)を、また、樹脂フィルム(a−2)の代わりに樹脂フィルム(b−2)を使用したこと以外は実施例3と同様にして、透過率40%、偏光度99.9%の偏光板(2)を得た。この偏光板(2)を80℃、90%相対湿度の条件下で500時間の耐久試験を行い、その外観変化を目視で観察したところ、いずれも白化や膨れ等の外観異常は認められず、また、偏光度についても、初期値に対して95%以上の偏光度を保持しており良好な耐久性を有していることが確認された。しかしながら、当該偏光板(2)を二枚クロスニコル状態にして、一方から輝度10000cdのバックライトで照射したときに、もう一方から観察したときに光漏れに起因する帯スジ状のムラが確認された。
【0090】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る光学フィルム、偏光板は、様々な光学部品に使用することができる。たとえば、携帯電話、ディジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイなどの本発明に係る各種液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタ、エレクトロルミネッセンス表示素子またはタッチパネルなどに使用することができる。また、CD、CD−R、MD、MO、DVD等の光ディスクの記録・再生装置に使用される波長板としても有用である。
【0092】
本発明に係る光学フィルムならびに偏光板は、周期的な厚み変動が小さいため、光学歪みが極めて少なく、特に大画面表示を行う大型の液晶ディスプレイなどの用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、フィルムの長手方向の長さとフィルムの厚みとの関係に基づき、各パラメータを示す図である。
【符号の説明】
【0094】
P(P1、P2およびP3):フィルム厚みの極大値
V(V1およびV2):フィルム厚みの極小値
W(W1およびW2):極大厚み2点でのP値が、該2点間のVの最小値よりも0.1μm以上大きい場合の、最短間隔(長手方向の周期間隔)
D:フィルム厚み変化の傾きの最大値の絶対値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂からなり、長手方向に周期的な厚み変動を有するフィルムであって、下記式(A)、(B)および(C)で示される条件を全て満たすことを特徴とする光学フィルム。
P−V≦1 …(A)
W≧3 …(B)
D≦30 …(C)
(式(A)中、Pは、厚み変動における厚みの極大値(μm)を表し、Vは、厚み変動における厚みの極小値(μm)を表す。
式(B)中、Wは、長手方向の極大厚み2点間の間隔であって、該2点でのP値が、該2点間に存在するVの最小値よりも0.1(μm)以上大きい場合の、最短の間隔として測定される、長手方向の周期間隔(cm)を表す。
式(C)中、Dは、フィルム厚み変化の傾き(ppm)の最大値の絶対値を表す。)
【請求項2】
環状オレフィン系樹脂が、下記式(1)で表される少なくとも一種の化合物を重合あるいは共重合して得られた樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム;
【化1】

(式(1)中、R1〜R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていてもよい。また、R1
〜R4 のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。)。
【請求項3】
位相差フィルムとしての機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
長手方向の長さが50m以上の長尺フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の光学フィルムを、少なくとも一面に有することを特徴とする偏光板。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルムまたは請求項5に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶ディスプレイ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルムを製造する方法であって、環状オレフィン系樹脂を、ギアポンプを用いて押出機に供給し、押出機出口における極大圧力と、平均圧力との差が、平均圧力の0.2%以下である条件で、溶融押出法によりフィルム状に成形する工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルムを製造する方法であって、環状オレフィン系樹脂をフィルム状に成形してロールで引取る工程を有し、定常運転時のロールの引取速度の極大値または極小値と、平均引取り速度との差の絶対値が、平均引取速度の0.1
%以下であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
表面がセラミック製であり、ロールの表面粗度Rsの極大値Rmax(μm)が、Rmax≦0.2を満たす範囲内にある引取ロールを用いることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルムの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−316609(P2007−316609A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96573(P2007−96573)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】