説明

光学フィルムの製造方法、光学フィルムおよび液晶表示装置

【課題】本発明は、コントラスト比の大きい液晶表示装置などに好適に使用できる、面全体において高度に光学性能を制御した光学フィルムの製造方法、光学フィルム、ならびに液晶表示装置を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の光学フィルムの製造方法は、環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム面内位相差R0が20nm以下であるフィルムを、温度分布が設定温度±0.6にコントロールされたオーブン中でフィルム長手方向に一軸延伸し、さらに、温度分布が設定温度±0.5℃以内にコントロールされたオーブン中でフィルム幅方向に一軸延伸することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法、光学フィルム、ならびに光学フィルムを有する液晶表示装置に関する。詳しくは、本発明は、面内の均一性に優れ、高度に光学性能の制御された光学フィルムの製造方法、光学フィルム、ならびに光学フィルムを有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置を構成する光学フィルムには、透明性などの光学特性に加えて、耐熱性、耐湿性などの性状が求められる。本願出願人は、このような用途に環状オレフィン系の光学フィルムが好適に使用できることを見出し、すでに提案している(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
近年液晶表示装置にはより大型化が求められ、大型の液晶表示装置の全面において均質な表示性能が求められている。一方、液晶表示装置には、鮮明な画像を表示することが求められており、より高いコントラスト比を示すことが求められている。コントラスト比は、暗室においてモニターに黒を表示した場合の輝度1に対しての、白を表示した場合の輝度で表され、一般的に市販されている液晶表示装置では通常500〜2000程度であるが、現在では、たとえばコントラスト比が5000以上であるような、より鮮明な画像を表示し得る液晶表示装置の出現が求められてきている。
【0004】
これまでにVA方式の液晶セルにおいて、AプレートフィルムとCプレートフィルムと呼ばれる、異なる光学特性を有する視野角補償フィルムをそれぞれ使用した2枚の偏光板を用いることが提案されている(特許文献3及び特許文献4)。しかしながら、単に位相差の範囲を特定したような、従来公知の光学フィルムを用いたとしても、全面において均質な表示が可能で、上述したような極めて高いコントラスト比を示す大型液晶表示装置を得ることは、実現されていなかった。
【0005】
本発明者は、このような状況において鋭意研究した結果、環状オレフィン系樹脂からなるフィルムを、特定条件下で延伸することにより、液晶表示装置などの用途に好適に使用できる高性能のCプレートフィルムを得ることに成功し、該Cプレートフィルムを具備する液相表示装置が全面において高いコントラスト比を実現し得ることを見出して本発明を完成するに至った。
【特許文献1】特開2001−350017号公報
【特許文献2】特開2004−309979号公報
【特許文献3】特開平10−153802号公報
【特許文献4】特開2005−49792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コントラスト比の大きい液晶表示装置などに好適に使用できる、面全体において高度に光学性能を制御した光学フィルムの製造方法、光学フィルム、ならびに液晶表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学フィルムの製造方法は、
環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム面内位相差R0が20nm以下であるフィルムを、
温度分布が設定温度±0.6℃以内にコントロールされたオーブン中でフィルム長手方向に一軸延伸し、
さらに、温度分布が設定温度±0.5℃以内にコントロールされたオーブン中でフィルム幅方向に一軸延伸することを特徴としている。
(ただし、フィルム面内位相差R0は、光線波長550nmにおけるフィルム面内の最大屈折率をnx、フィルム面内でnxに対して直行する方向の屈折率をny、フィルム厚みをd(nm)とした場合に、式 R0=(nx−ny)×d により求められる値である。)
このような本発明の光学フィルムの製造方法では、フィルム長手方向に一軸延伸したフィルムが、フィルム面内位相差R0が200〜400nmの範囲にあり、R0のばらつきが±3nm以内であり、かつフィルム面内の最大屈折率方向がフィルム長手方向に対して0±3度の範囲にあることが好ましい。
【0008】
本発明の光学フィルムの製造方法では、環状オレフィン系樹脂が、下記式(I)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
[式(I)中、mは1以上の整数であり、pは0または1以上の整数であり、Dは−CH=CH−または−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基;置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表し、R1およびR2は一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R3
およびR4は一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。R1およびR2は互いに結合
して炭素環または複素環を形成してもよく、R3およびR4は互いに結合して炭素環または複素環を形成してもよく、該炭素環または複素環は単環でも多環でもよい。]
本発明の光学フィルムは、上記本発明の光学フィルムの製造方法により得られることを特徴としている。
【0011】
また本発明の光学フィルムは、環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム全面において、フィルム面内位相差R0が2nm以下であり、フィルム面内の最大屈折率方向とフィルム長手方向との角度を90±α度としたとき、αが30以下であり、さらにαとR0との積が30以下であることを特徴としている。
(ただし、フィルム面内位相差R0は、光線波長550nmにおけるフィルム面内の最大屈折率をnx、フィルム面内でnxに対して直行する方向の屈折率をny、フィルム厚みをd(nm)とした場合に、式 R0=(nx−ny)×d により求められる値である。)
本発明の積層型光学フィルムは、上記本発明の光学フィルムの片面に、粘着剤層または接着剤層を介して他の光学フィルムを積層し、さらにもう一方の面に粘着剤層を設けてな
ることを特徴としている。このような本発明の積層型光学フィルムでは、前記他の光学フィルムが偏光膜であることが好ましい。
【0012】
本発明の液晶表示装置は、上記本発明の光学フィルムまたは上記本発明の積層型光学フィルムを有することを特徴としている。このような本発明の液晶表示装置は、正面コントラスト比が5000以上であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の液晶表示装置は、
(1)本発明の光学フィルムと、
(2)環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム面内の位相差R0が70〜120nmであり、フィルム厚さ方向の位相差RxzとR0との比(Rxz/R0)が1.2〜1.5である光学フィルム(以下、「光学フィルム(2)」ともいう)とが、
液晶を介して対向配置されていることを特徴としている。
(ここで、フィルム厚さ方向の位相差Rxzは、光線波長550nmにおけるフィルム面内の最大屈折率をnx、フィルム厚み方向の屈折率をnz、フィルム厚みをd(nm)とした場合に、式 Rxz=(nx−nz)×d により求められる値である。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大型の液晶表示装置に用いた場合にも、面全体において高度に光学性能が制御され、コントラスト比が大きく表示性能に優れた液晶表示装置の材料として好適に用いられるような光学フィルムの製造方法、光学フィルム、ならびに液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
<環状オレフィン系樹脂>
まずは、本発明に係るフィルムを構成する環状オレフィン系樹脂について説明する。
【0016】
本発明に係るフィルムを構成する環状オレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系単量体の開環(共)重合体、開環(共)重合体の水素添加物、付加(共)重合体、あるいは環状オレフィン系単量体と共重合性のその他の単量体との共重合体、その水素添加物などが挙げられる。
【0017】
具体的には、後述する式(I’)および式(II’)で表されるような環状オレフィン系単量体の開環(共)重合体、当該開環(共)重合体の水素化物、付加(共)重合体、環状オレフィン系単量体とα−オレフィンとの付加共重合体などが挙げられる。これらのうち好ましくは開環(共)重合体の水素化物であり、特に下記一般式(I)で表される構造単位を有する重合体が好ましい。当該重合体は、下記一般式(I)で表される構造単位を有する単独重合体であってもよいし、式(I)とともに下記一般式(II)で表される構造単位を有する共重合体であってもよい。
【0018】
【化2】

【0019】
[式(I)中、mは1以上の整数であり、pは0または1以上の整数であり、Dは−CH=CH−または−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基;置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表し、R1およびR2は一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R3
およびR4は一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。R1およびR2は互いに結合
して炭素環または複素環を形成してもよく、R3およびR4は互いに結合して炭素環または複素環を形成してもよく、該炭素環または複素環は単環でも多環でもよい。]
【0020】
【化3】

【0021】
[式(II)中、Eは、独立に−CH=CH−または−CH2CH2−で表される基であり、R5〜R8は、各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基;置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;極性基を表し、R5とR6は一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R7とR8は一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。R5またはR6と、R7またはR8とは相互に結合して炭素環または複素環を形成してもよく、該炭素環または複素環は、単環構造でも多環構造でもよい。]
環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度をフィルム加工に適した領域にし、同時に複屈折制御性を確保するため、上記一般式(I)におけるmは好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3であり、pは好ましくは0〜4、より好ましくは0〜2である。また、R1
〜R4の炭素原子数は好ましくは1〜25、より好ましくは1〜20である。さらに、上
記一般式(II)におけるR5〜R8の炭素原子数は好ましくは1〜25、より好ましくは1〜20である。
【0022】
製造方法
本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、上記式(I)で表される構造単位と、必要に応じて上記式(II)で表される構造単位を有する。
【0023】
上記式(I)で表される構造単位は、開環(共)重合により、下記式(I’)で表される環状オレフィン系単量体から誘導される。
【0024】
【化4】

【0025】
(式(I’)中、mおよびR1〜R4は、前記式(I)と同様である。)
式(I)または式(I’)において、極性基としては、たとえば、水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基、およびカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、たとえばメトキシ基、エトキシ基などが挙げられ;カルボニルオキシ基としては、たとえばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基などのアルキルカルボニルオキシ基、およびベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、たとえばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、たとえばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基などが挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては、たとえばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基などが挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては、たとえばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
【0026】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜10の炭化水素基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基などが挙げられる。
【0027】
また、置換または非置換の炭化水素基は直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基(linkage)を介して結合していてもよい。連結基としては、たとえば炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基(たとえば、−(CH2m−(式中、mは1〜10の整数)で表されるアルキレン基);酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基(たとえば、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、スルホン基(−S
2−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、シロキサン結合(−OSi(R2)−(式中、Rはメチル、エチルなどのアルキル基))などが挙げられ、これらの複数を含む連結基であっ
てもよい。
【0028】
環状オレフィン系単量体(I’)としては、具体的には、次のような化合物が挙げられる。 テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8−シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−シアノ−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17
,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.
7,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テト
ラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロイソプロピル−9−トリフルオロメチルテト
ラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.
7,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.
4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
これらは、単独でまたは2種以上を併用することができる。
【0029】
本発明では、前記式(I)で表される構造単位が極性基を有することが好ましく、その極性基が、下記式(III)で表される基であることが好ましい。すなわち、前記式(I)で表される構造単位あるいは前記式(I’)で表される環状オレフィン系単量体は、R1〜R4の少なくとも一つが、下記式(III)で表される基であることが好ましい。
【0030】
−(CH2pCOOR’ …(III)
(式(III)中、pは0または1〜5の整数であり、R’は炭素原子数1〜15の炭化水素基である。)
上記式(III)において、pの値が小さいものほど、また、R’が炭素数の小さいほど、得られる共重合体のガラス転移温度が高くなり、耐熱性が向上するので好ましい。すなわち、pは通常0または1〜5の整数であるが、好ましくは0または1であり、また、R’は通常炭素原子数1〜15の炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1〜3のアルキル基であるのが望ましい。
【0031】
さらに、上記式(I)または(I')において、上記一般式(III)で表される極性基
が結合した炭素原子にさらにアルキル基が結合している場合は、得られる共重合体の耐熱性と吸水(湿)性のバランスを図るうえで好ましい。また、アルキル基の炭素原子数は1〜5であることが好ましく、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
【0032】
前記式(II)で表される構造単位は、開環共重合により、下記式(II’)で表される環状オレフィン系単量体(II)から誘導される。
【0033】
【化5】

【0034】
(式(II’)中、R5〜R8は前記式(II)と同様である。)
このような環状オレフィン系単量体としては、具体的には次のような化合物が挙げられる。
トリシクロ[4.3.0.12,5〕デカ−3,7−ジエン、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヘプチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ノニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ウンデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−テトラデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヘキサデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヘプタデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−オクタデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ノナデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−イコシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニル−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エトキシカルボニル−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンスピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12.5][3]デセン]
これらは単独でまたは2種以上を併用することができる。本発明では、このうち、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンが好ましく用いられる。
【0035】
本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、それぞれ1種以上の、環状オレフィン系単量体(I’)および環状オレフィン系単量体(II’)を開環共重合することにより製造することができる。本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセンとビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンからなる共重合体であることが、特に好ましい。
【0036】
本発明において、環状オレフィン系単量体(式(I’)で表される化合物)および環状オレフィン系単量体(式(II’)で表される化合物)の共重合比率は、これらの合計を100重量部とした場合に、通常、環状オレフィン系単量体(II’)が0〜40重量部、好ましくは、0〜30重量部の範囲であるのが望ましい。環状オレフィン系単量体(II’)の共重合割合が30重量部を超えると、ガラス転移温度を低下させ、位相差や寸法などフィルム諸特性の耐熱安定性を低下させる場合がある。また、3重量未満では得られる成形体、フィルムまたはシートの摺動性および位相差発現性が低下する場合がある。
【0037】
本発明においては、これらの環状オレフィン系単量体(I’)および(II’)の他に、本発明の目的を損なわない範囲でその他の環状オレフィン系単量体あるいは共重合可能なその他のモノマーを共重合原料モノマーとして少量用いることもでき、本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、前記式(I)および(II)で表される構造単位以外の構造単位を含有することができる。かかる構造単位は、たとえば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロオレフィン系単量体を、上記環状オレフィン系単量体(I’)および(II’)とともに開環共重合することにより形成することができる。また、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖にオレフィン性不飽和結合を有する不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に上記環状オレフィン系単量体(I’)および(II’)を開環共重合することによっても形成することができ、このような構造単位を有する場合には、本発明の共重合体の耐衝撃性が改善される傾向にある。
【0038】
しかしながら、本発明においては、環状オレフィン系単量体(I’)および(II’)のみを用いて共重合を行うのが好ましい。すなわち、本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、前記式(I)および(II)で表される構造単位の他に本発明の目的を損なわない範囲でその他の構造単位を有していてもよいが、前記式(I)および(II)で表される構造単位以外の構造単位を有さないことが好ましい。
【0039】
各環状オレフィン系単量体を開環共重合しただけの開環共重合体は、その分子内にオレフィン性不飽和結合を有しており、耐熱着色などの問題を有しているため、かかるオレフィン性不飽和結合は水素添加されることが好ましいが、かかる水素添加反応も公知の方法を適用できる。
【0040】
たとえば、特開昭63−218726号公報、特開平1−132626号公報、特開平1−240517号公報、特開平2−10221号公報などに記載された触媒や溶媒および温度条件などを適用することで、開環重合反応および水素添加反応を実施することができる。
【0041】
オレフィン性不飽和結合の水素添加率としては、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であることが望ましい。なお、本発明における水素添加反応とは、上記の通り、分子内のオレフィン性不飽和結合に対するものであり、本発明に係る環状オレフィン系樹脂が芳香族基を有する場合、かかる芳香族基は屈折率など光学的な特性や耐熱性において有利に作用することもあるので、必ずしも水素添加される必要はない。
【0042】
本発明に係る環状オレフィン系樹脂の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常3×103〜5×105、好ましくは5×103〜3×105、さらに好ましくは1×104
2×105であり、また、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、通常5×103〜1×106、好ましくは1×104〜5×105、さらに好ましくは2×104〜4×105の範囲であるのが望ましい。
【0043】
分子量が過小である場合には、得られるフィルムの強度が低いものとなったり、延伸加工時の位相差発現性が低下したりすることがある。一方、分子量が過大である場合には、溶液粘度が高くなりすぎて本発明の共重合体の生産性や加工性が悪化することがある。
【0044】
また、本発明に係る環状オレフィン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.5〜10、好ましくは2〜7、さらに好ましくは2〜5であるのが望ましい。
本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、23℃における飽和吸水率が、通常0.05〜1重量%、好ましくは0.07〜0.8重量%、さらに好ましくは0.1〜0.7重量%であるのが望ましい。本発明に係る環状オレフィン系樹脂の飽和吸水率が上記の範囲内にあれは、得られるフィルムの各種の光学特性、透明性、位相差および位相差の均一性、あるいは寸法精度が、高温多湿のような条件下でも安定に維持されると共に、他の材料との密着性・接着性に優れるため、使用中に剥離などが発生することがなく、また、酸化防止剤等の添加剤との相溶性も良好であるため、添加剤の種類および添加量の選択の自由度が大きくなる。
【0045】
この飽和吸水率が0.05重量%未満である場合には、得られるフィルムは、他材料との密着性や接着性が低いものとなり、使用中に剥離を生じやすくなり、また、酸化防止剤等の添加剤の添加量が制約されることがある。一方、この飽和吸水率が1重量%を超える場合には、吸水により光学特性の変化や寸法変化を起こしやすくなる。
【0046】
ここで、飽和吸水率は、ASTM D570に準拠し、23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる値である。
本発明に係る環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、通常70〜250℃であり、好ましくは90〜200℃、さらに好ましくは100〜180℃である。Tgが150℃以上である場合には、優れた耐熱性を有するため好ましい。Tgが90℃未満である場合には、熱変形温度が低くなるため、耐熱性に問題が生じるおそれがあり、また、得られるフィルムにおける温度による光学特性の変化が大きくなるという問題が生じることがある。一方、Tgが200℃を超える場合には、延伸加工する際に加工温度が高くなりすぎて本発明の共重合体が熱劣化する場合がある。
【0047】
ここで、環状オレフィン系樹脂のTgとは、示差走査熱量計(DSC)を用い、昇温速度20℃/分、窒素雰囲気にて測定した際に得られる微分示差走査熱量曲線の最大ピーク温度(A点)及び最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求められる。
【0048】
重合触媒
本発明に係る環状オレフィン系樹脂の製造に用いる触媒としては、たとえば、
Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN, J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒等が好ましく用いられる。このような触媒としては、た
とえば、(a)W、Mo、Re、VおよびTiの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)アルカリ金属元素(たとえば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属元素(たとえば、Mg、Ca)、第12族元素(たとえば、Zn、Cd、Hg)、第13族元素(たとえば、B、Al)、第14族元素(たとえば、Si、Sn、Pd)などの化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合または当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組み合わせからなるメタセシス触媒が挙げられる。該触媒の活性を高めるために、後述の(c)添加剤が添加されたものであってもよい。
【0049】
上記(a)成分の具体例としては、たとえば、WCl6、MoCl5、ReOCl3、V
OCl3、TiCl4などの特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0050】
上記(b)成分の具体例としては、たとえば、n−C49Li、(C253Al、(
252AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなどの特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0051】
上記(c)成分の添加剤としては、たとえば、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類等を好適に用いることができ、さらに、特開平1−240517号公報に記載の化合物を使用することができる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0052】
上記(a)成分などを組み合わせてなるメタセシス触媒の使用量は、上記(a)成分と、全単量体との、「(a)成分:全単量体」のモル比が、通常、1:500〜1:500,000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:100,000となる範囲である。更に、上記(a)成分と(b)成分との割合は、「(a):(b)」の金属原子(モル)比が、通常、1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲である。このメタセシス触媒に上記(c)添加剤を添加する場合、(a)成分と(c)成分との割合は、「(c):(a)」のモル比が、通常0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲である。
【0053】
また、その他の触媒として、
(II)周期表第4族〜第8族の遷移金属−カルベン錯体やメタラシクロブタン錯体などからなるメタセシス触媒を用いることができる。
【0054】
上記触媒(II)の具体例としては、たとえば、W(=N−2,6−C63iPr2)(=CHtertBu)(OtertBu)2、Mo(=N−2,6−C63iPr2)(=CHtert
Bu)(OtertBu)2、Ru(=CHCH=CPh2)(PPh32Cl2、Ru(=C
HPh2)[P(C61132Cl2などが挙げられる。これらは1種単独でも2種以上
を組み合わせても使用することができる。
【0055】
上記触媒(II)の使用量は、「触媒(II):全単量体」のモル比が、通常1:500〜1:50,000となる範囲、好ましくは1:100〜1:10,000となる範囲である。
【0056】
なお、上記触媒(I)と(II)とを組み合わせて用いても差し支えない。
本発明で用いる共重合体(A)および(B)の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類などを調整することによっても行うことができるが、分子量調節剤を開環共重合の反応系に共存させることにより調節することが好ましい。分子量調節剤としては、たとえば、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンが好ましく、これらのうち、1−ブテンおよび1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。この分子量調節剤の使用量は、全単量体1モル当たり、通常、0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルである。
【0057】
開環共重合反応において用いられる溶媒(すなわち、単量体、開環重合触媒、分子量調節剤などを溶解する溶媒)としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリールなどの化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチルなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類が挙げられ、これらの中では芳香族炭化水素が好ましい。これらは1種単独でも2種以
上を組み合わせても使用することができる。この開環重合反応用溶媒の使用量は、「溶媒:全単量体」の重量比が、通常、1:1〜10:1となる量であり、好ましくは1:1〜5:1となる量であるのが望ましい。
【0058】
触媒を添加する時のモノマー溶液の温度は、30〜200℃が好ましく、より好ましくは50℃〜180℃である。30℃未満の場合は重合体の収率が低下することがあり、200℃を超える場合は分子量コントロールが困難になることがある。
【0059】
環共重合反応を行う際の反応時間は通常0.1〜10時間であるが、好ましくは0.1〜9時間、より好ましくは0.1〜8時間である。
各環状オレフィン系単量体を開環共重合しただけの開環共重合体は、その分子内にオレフィン性不飽和結合を有しており、耐熱着色などの問題を有しているため、かかるオレフィン性不飽和結合は水素添加されることが好ましいが、かかる水素添加反応も公知の方法を適用できる。たとえば、特開昭63−218726号公報、特開平1−132626号公報、特開平1−240517号公報、特開平2−10221号公報などに記載された触媒や溶媒および温度条件などを適用することで、開環重合反応および水素添加反応を実施することができる。
【0060】
共重合体(A)および(B)のオレフィン性不飽和結合の水素添加率としては、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であることが望ましい。なお、本発明における水素添加反応とは、上記の通り、分子内のオレフィン性不飽和結合に対するものであり、本発明で用いる環状オレフィン系樹脂が芳香族基を有する場合、かかる芳香族基は屈折率など光学的な特性や耐熱性において有利に作用することもあるので、必ずしも水素添加される必要はない。
【0061】
<添加剤>
本発明に係る環状オレフィン系樹脂には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。たとえば、酸化安定性を向上させ、着色および劣化を防ぐため、フェノール系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤から選ばれる酸化防止剤を配合することができる。
【0062】
前記酸化防止剤は、前記重合体100重量部当たり0.001〜5重量部の割合で配合することができる。酸化防止剤の具体例としては、
1)2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6
−tert−ブチル−3−メチル−フェニル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル
)シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロ
キシフェニル)プロピオン酸ステアレート、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン
およびペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒ
ドロキシフェニル)]プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤またはヒドロキノン
系酸化防止剤、
2)ビス (2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール
ジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)4,4'−ビフェニレン
ジホスホナイト、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイトおよびトリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどのリン系2次酸化防止剤、ならびに
3)ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネートおよび2−メルカプトベンズイミダゾ
ールなどの硫黄系2次酸化防止剤などを挙げることができる。
【0063】
また本発明に係る環状オレフィン系樹脂には難燃剤を配合することもできる。難燃剤としては公知のものを使用することができ、たとえば、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤および金属水酸化物などを挙げることができる。なかでも少量の配合で効果を示し、吸水性、低誘電性および透明性の悪化を最小限にすることができるリン酸エステル系難燃剤が好ましく、1,3−ビス(フェニルホスホリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、1,3−ビス[ジ(アルキルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6'−ジメチルフェニル)ホスホ
リル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6'−ジエチルフェニル)ホスホリル]ベン
ゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6’−ジイソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6’−ジブチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’−tert−ブチルフェニル)ホスフホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’−イソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン1,3−ビス[ジ(2’−メチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジメチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジエチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジイソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−tert−ブチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−イソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−メチルフェニル)ホスホリル]ベンゼンおよび4,4’−ビス[ジ(2”,6”−ジメチルフェニル)ホスホリルフェニル]ジメチルメタンなどの縮合型リン酸エステル系難燃剤がより好ましい。配合量は選択される難燃剤および要求される難燃性の程度によって決まるが、環状オレフィン重合体100重量部に対し0.5〜40重量部が好ましく、2〜30重量部がより好ましく、4〜20重量部が特に好ましい。上記難燃剤の配合量が0.5重量部より少ない場合には、効果が不十分であり、一方、40重量部を超えて使用すると透明性が損なわれたり、誘電率などの電気特性が悪化したり、吸水率が増大したり、耐熱性が悪化したりする。
【0064】
本発明に係る環状オレフィン系樹脂には、さらに必要に応じて、公知の滑剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、位相差調節剤、可塑剤および染料などを配合することもできる。
【0065】
<光学フィルムの製造方法>
本発明の光学フィルムの製造方法では、環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム面内位相差R0が20nm以下であるフィルムを、
温度分布が設定温度±0.6℃以内にコントロールされたオーブン中でフィルム長手方向に一軸延伸し、
さらに、温度分布が設定温度±0.5℃以内にコントロールされたオーブン中でフィルム幅方向に一軸延伸する。
【0066】
本発明において、フィルム面内位相差R0は、光線波長550nmにおけるフィルム面内の最大屈折率をnx、フィルム面内でnxに対して直行する方向の屈折率をny、フィルム厚みをd(nm)とした場合に、式 R0=(nx−ny)×d により求められる値である。
【0067】
原反フィルム
本発明の光学フィルムの製造方法において、原材料として用いられるフィルム(以下、原反フィルムともいう)は、環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム面内位相差R0が20nm以下、好ましくは0〜15nm、より好ましくは0〜10nmであるのが望ましい。
【0068】
原反フィルムは、フィルム面内の最大屈折率方向が、フィルム長手方向に対して好ましくは0±30度の範囲、より好ましくは0±20度の範囲であるのが好ましい。
この原反フィルムは、通常未延伸のフィルムであり、環状オレフィン系樹脂を適当な溶媒に溶解し、キャストすることにより、フィルムまたはシートの形状に成形して得られる。また、溶融押出法などの公知の方法により製膜して得ることもできる。
【0069】
本発明で用いる原反フィルムは、透明性などの光学特性、耐薬品性、耐熱性、耐水性および耐湿性などにバランスよく優れる。原反フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、通常フィルム厚みが100〜250μm、好ましくは120〜200μmであり、フィルムの最大厚みと最小厚みとの差が3μm以内、好ましくは2μm以内である。
【0070】
長手方向一軸延伸
本発明の製造方法では、上記のような原反フィルムを、フィルム長手方向に一軸延伸する工程を有する。
【0071】
この長手方向の一軸延伸、すなわち縦一軸延伸は、温度分布が設定温度±0.6℃以内、好ましくは設定温度±0.4℃以内、より好ましくは設定温度±0.2℃以内にコントロールされたオーブン中で行うのが望ましい。
【0072】
ここで、設定温度は、オーブン中の全領域で等しい温度であってもよく、また各ゾーンを段階的にあるいは勾配的に分布を設けた温度であってもよい。いずれの場合も温度コントロールは熱風を循環することにより達成され、適宜熱風の温度を設定することにより所望の温度分布を達成することができる。設定温度が分布を設けた温度である場合には、オーブン中の実際の温度分布と、設定された温度分布とが、±0.6℃以内、好ましくは±0.4℃以内、より好ましくは±0.2℃以内であるのが望ましい。
【0073】
また、均一な温度分布を達成するために、オーブン内の風向を制御することが好ましい。例えば、風向を制御するための風向制御板を設置することが、均一な温度分布が達成されるために好ましい。風向制御板の枚数は特に限定はされないが、層内に上下4枚以上、好ましくは6枚以上、より好ましくは8枚以上設置することにより、均一な温度分布が確保される。また、風向制御板の形状についても特に限定はされないが、平板状であってもよく、曲板状であってもよく、スリットや穴を有しても良い。
【0074】
さらに、均一な温度分布を達成するために、オーブン内を居所的に加熱する装置を設置することも好ましい。局所的に加熱する装置としては、局所熱風オーブンや局所遠赤外線加熱装置などが挙げられる。
【0075】
長手方向一軸延伸の設定温度は、フィルムを構成する環状オレフィン系樹脂の種類、延伸倍率および延伸速度、フィルムの厚み、延伸後のフィルムの所望位相差などにより設定すればよく、特に限定されるものではないが、たとえば、原反フィルムを構成する環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、通常、(Tg−10℃)〜(Tg+70℃)の範囲であり、好ましくは(Tg±0℃)〜(Tg+50℃)の範囲である。このような温度範囲では、フィルムの熱劣化が起きることなく、また、フィルムが破断することなく延伸できるため好ましい。ここでTgは示差走査熱量計(DSC)を用いて求めた値である。
【0076】
長手方向一軸延伸の延伸倍率は、たとえば1.1〜3.5倍、好ましくは1.3〜3.
2倍、特に好ましくは1.5〜3.0倍の範囲であるのが望ましい。
本発明の製造方法では、長手方向に一軸延伸したフィルムが、フィルム面内位相差R0
が通常200〜400nm、好ましくは250〜400nm、より好ましくは300〜400nmの範囲にあることが望ましく、この面内位相差R0のばらつきが通常±3nm以内、好ましくは±2nm以内、より好ましくは±1nm以内であることが望ましい。また、長手方向に一軸延伸したフィルムの、フィルム面内の最大屈折率方向がフィルム長手方向に対して通常0±3度の範囲、好ましくは0±2度の範囲、より好ましくは0±1度の範囲にあることが望ましい。
【0077】
幅方向一軸延伸
本発明では、上述のようにして原反フィルムを長手方向に一軸延伸したフィルムを、次いで幅方向に一軸延伸する工程を有する。
【0078】
この幅方向の一軸延伸、すなわち横一軸延伸は、温度分布が設定温度±0.5℃以内、好ましくは設定温度±0.3℃以内、より好ましくは設定温度±0.2℃以内にコントロールされたオーブン中で行うのが望ましい。
【0079】
ここで、幅方向一軸延伸の設定温度は、長手方向一軸延伸の場合と同様、オーブン中の全領域で等しい温度であってもよく、また各ゾーンを段階的にあるいは勾配的に分布を設けた温度であってもよい。いずれの場合も温度コントロールは熱風を循環することにより達成され、適宜熱風の温度を設定することにより所望の温度分布を達成することができる。設定温度が分布を設けた温度である場合には、オーブン中の実際の温度分布と、設定された温度分布とが、±0.5℃以内、好ましくは±0.3℃以内、より好ましくは±0.2℃以内であるのが望ましい。この幅方向一軸延伸の設定温度は、長手方向一軸延伸の工程における設定温度と同様であってもよく、異なっていてもよい。
また、均一な温度分布を達成するために、オーブン内の風向を制御することが好ましい。例えば、長手方向一軸延伸の場合と同様、風向を制御するための風向制御板を設置することが、均一な温度分布が達成されるために好ましい。
さらに、均一な温度分布を達成するために、長手方向一軸延伸の場合と同様、オーブン内を居所的に加熱する装置を設置することも好ましい。
【0080】
幅方向一軸延伸の設定温度は、長手方向一軸延伸の場合と同様に特に限定されるものではないが、たとえば、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、通常、(Tg−10℃)〜(Tg+70℃)の範囲であり、好ましくは(Tg±0℃)〜(Tg+50℃)の範囲である。
【0081】
幅方向一軸延伸の延伸倍率は、得られる光学フィルムの所望特性に応じて決定すればよいが、たとえば1.3〜3.5倍、好ましくは1.5〜3.2倍、特に好ましくは1.8〜3.0倍の範囲であるのが望ましい。
【0082】
本発明においては、得られる光学フィルムが、原反フィルムに対して、たとえば2.5
〜6.5倍、好ましくは2.8〜6.4倍、特に好ましくは3.0〜6.3倍の延伸倍率
で延伸されたものであるのが望ましい。この延伸倍率は、長手方向一軸延伸の延伸倍率と、幅方向一軸延伸の延伸倍率との積である。
【0083】
このようにして得られた光学フィルムは、フィルム全面において、フィルム面内位相差R0が、好ましくは2nm以下、より好ましくは1.5nm以下、さらに好ましくは1.0nm以下であるのが望ましい。また、フィルム面内の最大屈折率方向と、フィルム長手方向との角度を90±α度としたとき、光軸ズレを示すαが好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下であることが望ましく、さらに、αとR0との積が好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下であることが望ましい。
【0084】
本発明の光学フィルムの製造方法においては、フィルムを構成する環状オレフィン系樹脂の種類、すなわちモノマー種、共重合比率、分子量分布、ガラス転移温度などの特性を考慮した環状オレフィン系樹脂の選択、フィルムの長手方向の一軸延伸ならびに幅方向の一軸延伸の各工程における、オーブン中の設定温度の選択、延伸倍率および延伸速度の選択などにより、得られる光学フィルムの特性を制御することができる。
【0085】
<光学フィルム>
本発明の第一の光学フィルムは、前述した本発明の光学フィルムの製造方法により得られる。
【0086】
また、本発明の第二の光学フィルムは、環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム全面において、フィルム面内位相差R0が2nm以下であり、フィルム面内の最大屈折率方向とフィルム長手方向との角度を90±α度としたとき、αが30以下であり、さらにαとR0との積が30以下である。
【0087】
ここで、フィルム面内位相差R0は、好ましくは1.5nm以下であり、また、前記αが好ましくは20以下、さらに、αとR0との積が、好ましくは15以下である。
このような本発明の第二の光学フィルムは、その製造方法を特に限定するものではないが、上述した本発明の光学フィルムの製造方法により好適に得ることができる。
【0088】
これらの本発明の光学フィルムは、その厚みが好ましくは20〜100μm、より好ましくは25〜90μmである。また、該フィルムの最大厚みと最小厚みとの差は、3μm以内であることが望ましい。また、その幅は好ましくは1300mm以上、より好ましくは1500mm以上、さらに好ましくは2000mm以上であり、フィルムロールであることが好適である。
【0089】
このような本発明の光学フィルムは、優れた透明性、耐熱性、低吸湿性などを有し、位相差フィルム、あるいは偏光板の保護フィルムなどの、各種光学フィルムとして好適に用いることができ、各種液晶表示装置を構成する材料として特に好適に用いることができる。
【0090】
<積層型光学フィルム>
上述した本発明の光学フィルムは、積層型光学フィルムの用途に用いることも好適である。積層型光学フィルムとしては、本発明の光学フィルムからなる1層以上の層と、粘着剤層、接着剤層、他の光学フィルムの層、その他の機能層などから選ばれる1種以上の層とが、任意の順序で積層された積層体が挙げられる。
【0091】
本発明ではこのうち、本発明の光学フィルムの片面に、粘着剤層または接着剤層を介して他の光学フィルムを積層し、さらにもう一方の面に粘着剤層を設けてなる、積層型光学フィルムがより好ましい。
【0092】
このような本発明の積層型光学フィルムにおいては、前記他の光学フィルムが、偏光膜であることが好ましい。
偏光板
本発明の光学フィルムは、偏光膜と積層して、偏光板を構成することも好ましい。すなわち、本発明の積層型光学フィルムは、偏光板であることも好ましい。
【0093】
本発明に係る偏光板は、好ましくは、本発明の光学フィルムの片面に、接着層または粘着層を介して偏光膜が貼着されたものであり、より好ましくは、本発明の光学フィルムの
片面に接着層または粘着層を介して偏光膜が貼着され、さらに偏光膜と反対の面に粘着層が形成されたものである。
【0094】
偏光板を構成する偏光膜としては、偏光膜としての機能、すなわち、入射光を互いに直行する2つの偏光成分に分け、その一方のみを通過させ、他の成分を吸収または分散させる働きを有する膜であれば特に限定されず、いずれの偏光膜も用いることができる。
【0095】
本発明で用いることのできる偏光膜としては、たとえば、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略す)・ヨウ素系偏光膜;PVA系フィルムに二色性染料を吸着配向させたPVA・染料系偏光膜;PVA系フィルムの脱水反応やポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸反応により、ポリエンを形成させたポリエン系偏光膜;分子内にカチオン性基を含有する変性PVAからなるPVA系フィルムの表面および/または内部に二色性染料を有する偏光膜などが挙げられる。これらのうち、PVA・ヨウ素系偏光膜が好ましい。
【0096】
本発明で用いられる偏光膜の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を適用することができる。たとえば、PVA系フィルムを延伸後、ヨウ素イオンを吸着させる方法、PVA系フィルムを二色性染料による染色後、延伸する方法、PVA系フィルムを延伸後、二色性染料で染色する方法、二色性染料をPVA系フィルムに印刷後、延伸する方法、PVA系フィルムを延伸後、二色性染料を印刷する方法などが挙げられる。より具体的には、ヨウ素をヨウ化カリウム溶液に溶解して、高次のヨウ素イオンを作り、このイオンをPVAフィルムに吸着させて延伸し、次いで1〜5重量%ホウ酸水溶液に浴温度30〜40℃で浸漬して偏光膜を製造する方法;あるいは、PVAフィルムを上記と同様にホウ酸処理して一軸方向に3〜7倍程度延伸した後、0.05〜5重量%の二色性染料水溶液に浴温度30〜40℃で浸漬して染料を吸着し、次いで80〜100℃で乾燥して熱固定して偏光膜を製造する方法などが挙げられる。
【0097】
本発明で用いられる偏光膜の厚さは、特に限定されるものではないが、10〜50μm、好ましくは15〜45μmであることが望ましい。
これらの偏光膜は、そのまま本発明に係る偏光板の製造に用いてもよいが、接着剤層と接する面に、コロナ放電処理、プラズマ処理を施して用いることもできる。
【0098】
本発明に係る偏光板は、上記偏光膜の少なくとも1面に、環状オレフィン系樹脂からなる上記光学フィルムが接着された積層型光学フィルムである。
このような偏光板の製造方法は特に制限されず、たとえば、偏光膜または本発明の光学フィルムの一表面に接着剤を均一に塗布し、塗布面に他方のフィルム(膜)を重ね合わせてロールにより貼合し、必要に応じて加熱または露光する方法などが挙げられる。
【0099】
本発明に係る偏光板は、良好な偏光機能を有し、耐熱性、耐薬品性などの特性にも優れており、長期使用においても剥離、変形、偏光度変化などが生じにくく、高い信頼性を有し、耐久性に優れている。このような偏光板は、液晶表示装置などの用途に好適に用いることができる。
【0100】
本発明の光学フィルムあるいは積層型光学フィルムは、各種液晶表示装置の用途に好適に用いることができ、携帯電話、ノートパソコン、カーナビゲーション、液晶テレビなど種々の製品に利用することができる。本発明の光学フィルムあるいは積層型光学フィルムは、面全体において高度に光学性能が制御されており、幅広のフィルムであっても全面が均質であることから、特に大型ディスプレイを備えた液晶モニターなどの用途に好適に用いることができる。
【0101】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、上述した本発明の光学フィルムあるいは積層型光学フィルムを備えている。このような本発明の液晶表示装置は、光学フィルムあるいは積層型光学フィルムが、面全体において高度に光学性能が制御されていることに起因して、表示ムラがなく、視野角が広く、コントラスト比が大きいものとすることができる。
【0102】
本発明の液晶表示装置は、正面コントラスト比が通常2000以上、好ましくは5000以上、特に好ましくは10,000以上であって、鮮明な画像を歪みなく表示することができる。なお、本発明の液晶表示装置は、本発明の光学フィルムと、上述した光学フィルム(2)とが、液晶を介して対向配置されていることが好ましい。特に好ましくは、本発明の光学フィルムを液晶パネルのバックライト側、光学フィルム(2)をパネル観察者側に配置することが望ましい。
【0103】
光学フィルム(2)は、環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム面内の位相差R0が70〜120nmであり、フィルム厚さ方向の位相差RxzとR0との比(Rxz/R0)が1.2〜1.5である光学フィルム(ここで、フィルム厚さ方向の位相差Rxzは、光線波長550nmにおけるフィルム面内の最大屈折率をnx、フィルム厚み方向の屈折率をnz、フィルム厚みをd(nm)とした場合に、式 Rxz=(nx−nz)×d により求められる値である。)であり、このような光学フィルムはAプレートフィルムと呼ばれる。光学フィルム(2)を構成する環状オレフィン系樹脂としては、本発明の光学フィルムを構成する環状オレフィン系樹脂が挙げられる。好ましくは、本発明の液晶表示装置において、本発明の光学フィルムと光学フィルム(2)とを構成する環状オレフィン系樹脂は、同じ構造を有する樹脂である。光学フィルム(2)は、本発明の光学フィルムの製造方法において用いられる原反フィルムを、フィルム幅方向に一軸延伸することにより得ることができる。なおこの際、温度分布が、好ましくは設定温度±0.5℃以内、より好ましくは±0.3℃以内、特に好ましくは±0.2℃にコントロールされたオーブン中でフィルム幅方向に一軸延伸することが好ましい。
【0104】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0105】
以下の実施例あるいは比較例において、各性状は次のようにして測定あるいは評価した。
(1)延伸機炉内温度分布の測定
山里産業社製のシースK熱伝対を用いて、延伸炉内9箇所の温度をオンラインで測定した。9箇所の温度の中心値を算出し、9測定箇所につき温度分布を最大でも中心値±0.2℃に制御した。
【0106】
(2)α×R0の測定方法
王子計測機器社製「KOBRA−21ADH」を用い光学フィルムの位相差R0および光軸角度を測定した。測定される光軸角度はフィルム長手方向が0度となる。測定された光軸角度の絶対値が45度未満の場合、測定された光軸角度をαと表現する。また、測定された光軸角度の絶対値が45度以上の場合、(90度−測定された光軸角度)をαとし、αとR0の積を測定した。この測定はフィルム幅方向に10cmごとに行った。
【0107】
(3)偏光板の偏光度
日本分光社製V−7300を用い、光学フィルムの粘・接着剤側から入射させて偏光板
の偏光度を測定した。この測定はフィルムのαとR0の積の測定での測定位置に対応する偏光板位置を同様に10cmごとに行った。
【0108】
(4)ガラス転移温度(Tg)
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を用いて、昇温速度を毎分20℃、窒素気流下で測定を行った。Tgは、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)及び最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた。
【0109】
(5)水素添加率
核磁気共鳴分光計(NMR)はBruker社製AVANCE500を用い、測定溶媒はd−クロロホルムで1H−NMRを測定した。5.1〜5.8ppmのビニレン基、3
.7ppmのメトキシ基、0.6〜2.8ppmの脂肪族プロトンの積分値より、単量体の組成を算出後、水素添加率を算出した。
【0110】
(6)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム:東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSKgel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶媒:テトラヒドロ
フラン、流速:1mL/min、サンプル濃度:0.7〜0.8重量%、注入量:70μL、測定温度:40℃とし、検出器:RI(40℃)、標準物質:東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、前記Mnは数平均分子量である。
【0111】
(7)残留溶媒量
サンプルを塩化メチレンに溶解し、得られた溶液をガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−7A)を用いて分析した。
(8)対数粘度
ウベローデ型粘度計を用いて、クロロホルム中(試料濃度:0.5g/dL)、30℃
で測定した。
(9)飽和吸水率
ASTM D570に準拠し、23℃の水中に1週間サンプルを浸漬し、浸漬前後の重量変化を測定して求めた。
(10)全光線透過率、ヘイズ
スガ試験機社製ヘイズメーター(HGM−2DP型)を使用して測定した。
(11)フィルム厚み分布
フィルム厚み分布測定装置(MOCON社製)を使用して測定した。
【0112】
[合成例1](樹脂Aの合成)
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン(DNM)225部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NB)25部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)27部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)750部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(1.5mol/リットル)0.62部と、tert−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(tert−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35mol:0.3mol:1mol)のトルエン溶液(濃度0.05mol/リットル)3.7部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0113】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反
応を行った。
【0114】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、「樹脂A」という。)を得た。
【0115】
このようにして得られた樹脂Aの1H−NMRにより測定した水素添加率は99.9%
、DSC法により測定したTgは130℃、GPC法により測定したポリスチレン換算によるMnは20,800、Mwは62,000およびMw/Mnは3.00、23℃における飽和吸水率は0.21%ならびに30℃におけるクロロホルム中での対数粘度は0.51dl/gであった。
【0116】
[合成例2](樹脂Bの合成)
DNM71部と、ジシクロペンタジエン(DCP)15部と、NB1部と、1−へキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)200部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、100℃に加熱した。
【0117】
これにトリエチルアルミニウム 0.005部、メタノール変性WCl6(無水メタノール:PhPOCl2:WCl6=103:630:427 重量比)0.005部を加えて
1分間反応させ、次いで、DCP10部とNB3部を5分間かけて追加添加して、さらに45分間反応させることにより、DNM/DCP/NB=69.77/26.01/4.23(wt%)の共重合体を得た。
【0118】
次いで、得られた共重合体の溶液をオートクレーブに入れ、さらにトルエンを200部加えた。次に、反応調整剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを1部と水素添加触媒であるRuHCl(CO)[P(C65)]3を0.006部添加し、155℃まで過熱した後、水素ガスを反応器へ投入し、
圧力を10MPaとした。その後、圧力を10MPaに保ったまま、165℃、3時間の反応を行った。反応終了後、トルエン100重量部、蒸留水3重量部、乳酸0.72重量部、過酸化水素0.00214重量部を加え60℃で30分加熱した。その後、メタノール200重量部を加え60℃で30分加熱し、これを25℃まで冷却すると2層に分離した。上澄み液500重量部を除去し、再びトルエン350重量部、水3重量部を加え60℃で30分加熱し、その後メタノール240重量部を加え60℃で30分加熱して25℃まで冷却し、2層に分離した。上澄み液500重量部を除去し、さらにトルエン350重量部、水3重量部を加え60℃で30分加熱し、その後メタノール240重量部を加え60℃で30分加熱して25℃まで冷却し、2層に分離した。最後に上澄み液500重量部を除去後、残ったポリマー溶液を、2.0μm、1.0μm、0.2μmのそれぞれのフィルターを用いて濾過した。その後、ポリマー固形分量を55%まで濃縮し、250℃、4torr、滞留時間1時間で脱溶媒処理を行い、10μmのポリマーフィルターを通過させて、共重合体を得た(以下、「樹脂B」という。)。
【0119】
このようにして得られた樹脂Bの1H−NMRにより測定した水素添加率は99.9%
、DSC法により測定したTgは131℃、GPC法により測定したポリスチレン換算によるMnは16,000、Mwは61,000およびMw/Mnは3.81、23℃における飽和吸水率は0.18%ならびに30℃におけるクロロホルム中での対数粘度は0.52dl/gであった。
【0120】
[合成例3](樹脂Cの合成)
DNM250部と、1−ヘキセンの添加量を18部としたこと以外は、合成例1と同様にして水素添加重合体(以下、「樹脂C」という。)を得た。
【0121】
このようにして得られた樹脂Cの1H−NMRにより測定した水素添加率は99.9%
、DSC法により測定したTgは165℃、GPC法により測定したポリスチレン換算によるMnは32,000、Mwは137,000およびMw/Mnは4.29、23℃における飽和吸水率は0.3%ならびに30℃におけるクロロホルム中での対数粘度は0.78dl/gであった。
【0122】
[製造例1](フィルムAの製造)
合成例1で得られた樹脂Aをトルエンに30%濃度(室温での溶液粘度は30,000mPa・s)になるように溶解させ、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を樹脂A100重量部に対して0.1重量部添加し、日本ポール製の孔径5μmの金属繊維焼結フィルターを用い、差圧が0.4MPa以内となるように溶液の流速をコントロールしながら濾過した。
【0123】
上記の方法により製造した樹脂溶液を、二軸押出機(東芝機械株式会社製;TEM−48)を用いて、3段ベントにより、トルエンを脱気しながら、ギアポンプを用いて下流に押出を行い、ストランドダイより流出させた樹脂を冷却水槽で冷却の後、ストランドカッターに送り込み、米粒状に裁断し、造粒樹脂を得た。
【0124】
この造粒樹脂を窒素雰囲気下で100℃×4時間乾燥の後、単軸押出機(90mmΦ)に送り込み、260℃で溶融しながら、ギアポンプで定量押出を実施し、公称の目開きを10μmとした日本精線製の金属繊維焼結フィルターを用いて、溶融ろ過を行い、コートハンガー型のダイ(1700mm幅)を用いて、コートハンガーダイ出口の間隙を0.5mmとして260℃で膜状に押出した。このときに用いたダイのダイランド長(ダイ出口の平行部分の長さ)は、20mmであった。ダイ出口からロール圧着点までの距離を65mmとして、押出したフィルムを、表面粗さが0.1Sの250mmΦの鏡面ロールと、0.3mm厚の金属ベルトの間に挟んで、フィルムの表面を光沢面に転写した。金属ベルト(幅1650mm)は、ゴム被覆のロール(保持するロールの径は150mmΦ)と、冷却ロール(ロール径150mm)により保持したもので、市販のスリーブ式転写ロール(千葉機械工業製)を用いて、転写した。転写するときのロール間隔は、0.35mmであり、転写圧力は、0.35MPaであった。
【0125】
このときの、鏡面ロールの外周の周速度を10m/minとした。このときの鏡面ロールの温度は、オイル温調機を用いて125℃、ゴム被覆ロールの温度は、115℃に設定した。
鏡面ロールの下流側には、250mmΦの冷却ロール1が配置してあり、鏡面ロールから剥ぎ取ったフィルムは、115℃に設定した冷却ロール1に圧着するまでの時間を2.1秒間として冷却した。
【0126】
冷却ロール2の後で、フィルムを剥離張力、0.4MPa・cmで剥離して、片面にマスキングフィルムを貼合して、巻き取り機で巻き取り、厚み150μm、幅1500mmで長さ2000mの樹脂フィルムを得た(以下、「フィルムA」という)。得られたフィルムAの残留溶媒量は0.1%であり、全光線透過率は93%で、ガラス転移温度(Tg)は130℃であった。また、フィルム厚みバラツキは1μm(0.7%)であった。
【0127】
[製造例2](フィルムBの製造)
合成例2で得られた樹脂Bを用いたこと以外は製造例1と同様にして、厚み150μm、幅1500mmで長さ2000mの樹脂フィルムを得た(以下、「フィルムB」という)。得られたフィルムBの残留溶媒量は0.1%であり、全光線透過率は93%で、ガラ
ス転移温度(Tg)は131℃であった。また、フィルム厚みバラツキは1μm(0.7%)であった。
【0128】
[製造例3](フィルムCの製造)
合成例3で得られた樹脂Cをトルエンに30%濃度(室温での溶液粘度は30,000mPa・s)になるように溶解し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を重合体100重量部に対して0.1重量部を添加し、日本ポール製の孔径5μmの金属繊維焼結フィルターを用い、差圧が0.4MPa以内に収まるように溶液の流速をコントロールしながら濾過した。得られたポリマー溶液を、クラス1000のクリーンルーム内に設置した井上金属工業製INVEXラボコーターを用い、アクリル酸系で親水化(易接着性化)表面処理した厚さ100μmの基材のPETフィルム(東レ(株)製、ルミラーU94)上に、乾燥後のフィルム厚みが200μmになるように塗布し、これを50℃で一次乾燥の後、PETフィルムより剥がして90℃で二次乾燥を行うことにより、幅600mmで長さ500mの樹脂フィルムを得た(以下、「フィルムC」という)。得られたフィルムCの残留溶媒量は0.1%であり、全光線透過率は93%で、ガラス転移温度(Tg)は165℃であった。また、フィルム厚みバラツキは1μm(0.5%)であった。
【0129】
[実施例1]
製造例1にて得られたフィルムAを用い、上下8枚の風向制御板を設けた縦延伸炉内で148℃に加熱し、延伸機炉内温度分布が148±0.2℃以内にコントロールされた層内にて炉内速度8.0m/minでフィルム長手方向に2.2倍に、フィルム幅方向を固定しない一軸延伸をしてR0が400nm、R0のばらつきが±3nmかつ光軸がフィルム長手方向に対して0±2度の位相差フィルムを得た。さらに、得られた一軸延伸フィルムを用い、上下8枚の風向制御板を設けたテンター搬送式横延伸炉内で138℃に加熱し、延伸機炉内温度分布が138±0.2℃以内にコントロールされた層内にて炉内速度8.0m/minでフィルム幅方向に2.3倍に、フィルム長手方向を固定した一軸延伸をしてR0が0.8±0.8nm、αが0〜14度であり、α×R0が0〜9.8、厚みが45μmであり、厚みばらつきが3μm以下のフィルム幅2000mm、長さ2000mの光学フィルムA−1を得た。
【0130】
[実施例2]
製造例2にて得られたフィルムBを用い、上下8枚の風向制御板を設けた縦延伸炉内で149℃に加熱し、延伸機炉内温度分布が149±0.2℃以内にコントロールされた層内にて炉内速度8.0m/minでフィルム長手方向に2.15倍に、フィルム幅方向を固定しない一軸延伸をしてR0が400nm、R0のばらつきが±3nmかつ光軸がフィルム長手方向に対して0±2度の光学フィルムを得た。さらに、得られた一軸延伸フィルムを用い、上下8枚の風向制御板を設けたテンター搬送式横延伸炉内で139℃に加熱し、延伸機炉内温度分布が139±0.2℃以内にコントロールされた層内にて炉内速度8.0m/minでフィルム幅方向に2.25倍に、フィルム長手方向を固定した一軸延伸をしてR0が1.2±0.8nm、αが3〜15度であり、α×R0が3.6〜15.0、厚みが48μmであり、厚みばらつきが3μm以下のフィルム幅2000mm、長さ2000mの光学フィルムB−1を得た。
【0131】
[実施例3]
製造例3にて得られたフィルムCを用い、上下8枚の風向制御板を設けた縦延伸炉内で176℃に加熱し、延伸機炉内温度分布が176±0.2℃以内にコントロールされた層内にて炉内速度8.0m/minでフィルム長手方向に2.34倍に、フィルム幅方向を固定しない一軸延伸をしてR0が400nm、R0のばらつきが±3nmかつ光軸がフィルム長手方向に対して0±2度の光学フィルムを得た。さらに、得られた一軸延伸フィル
ムを用い、上下8枚の風向制御板を設けたテンター搬送式横延伸炉内で166℃に加熱し、延伸機炉内温度分布が166±0.2℃以内にコントロールされた層内にて炉内速度8.0m/minでフィルム幅方向に2.33倍に、フィルム長手方向を固定した一軸延伸をしてR0が1.3±0.9nm、αが2〜17度であり、α×R0が3.4〜18.7
、厚みが41μmであり、厚みばらつきが3μm以下のフィルム幅1000mm、長さ5
00mの光学フィルムC−1を得た。
【0132】
[比較例1]
実施例1において、幅方向への一軸延伸時の延伸機炉内温度分布を138±0.6℃にコントロールしたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムA−2を得た。得られた光学フィルムの特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0133】
[比較例2]
実施例1において、長手方向への一軸延伸時の延伸機炉内温度分布を148℃±0.8℃にコントロールしたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルムA−3を得た。得られた光学フィルムの特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0134】
[比較例3]
実施例2において、長手方向への一軸延伸時の延伸機炉内温度分布を149℃±0.8℃に、幅方向への一軸延伸時の延伸機炉内温度分布を139±0.6℃に、それぞれコントロールしたこと以外は実施例2と同様にして、光学フィルムB−2を得た。得られた光学フィルムの特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0135】
[比較例4]
実施例3において、幅方向への一軸延伸時の延伸機炉内温度分布を166±0.6℃にコントロールしたこと以外は実施例3と同様にして、光学フィルムC−2を得た。得られた光学フィルムの特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0136】
[参考例1]
樹脂フィルムAを予め幅750mmにスリットしたフィルムを用い、延伸機炉内温度分布が155±0.2℃以内にコントロールされたテンター搬送式横延伸炉内で、炉内速度8.0m/minでフィルム長手方向に垂直な方向に3.1倍に、フィルム長手方向を固定したフィルム幅方向の一軸延伸をしてR0が100.0nm±1.0nm、α×R0が0〜20.0のフィルム幅2000mm、長さ1800mのロール状の光学フィルムDを得た。この光学フィルムはAプレートと呼ばれる。
【0137】
【表1】

【0138】
[調製例](水系粘着剤の調製)
反応容器に蒸留水250部を仕込み、当該反応容器にアクリル酸ブチル90部と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8部と、ジビニルベンゼン2部と、オレイン酸カリウム0.1部とを添加し、これをテフロン(登録商標)製の撹拌羽根により撹拌して分散処理した。
【0139】
当該反応容器内を窒素置換した後、この系を50℃まで昇温し、過硫酸カリウム0.2部を添加して重合を開始した。2時間経過後、過硫酸カリウム0.1部をさらに添加し、この系を80℃まで昇温し、1時間にわたり重合反応を継続させて重合体分散液を得た。次いで、エバポレータを用いて、固形分濃度が70%になるまでこの重合体分散液を濃縮することにより、アクリル酸エステル系重合体の水系分散体からなる水系粘着剤(極性基を有する粘着剤)を得た。
【0140】
このようにして得られた水系粘着剤を構成するアクリル酸エステル系重合体について、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)によりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mnは69,000、Mwは135,000であり、30℃のクロロホルム中で測定した対数粘度は1.2dl/gであった。
【0141】
[実施例4]
ロール状のポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう。)製フィルムを、ヨウ素濃度が0.03重量%であり、ヨウ化カリウム濃度が0.5重量%である30℃水溶液の染色浴にて、連続的に延伸倍率3倍で前延伸した後、ほう酸濃度が5重量%であり、ヨウ化カリウム濃度が8重量%である水溶液の55℃の架橋浴中で、さらに延伸倍率2倍で後延伸し、乾燥処理して巻き取り、ロール状の偏光子を得た。
【0142】
次に、実施例1で得られた光学フィルムA−1を上記偏光子の片面にロール状のフィルムを揃えるようにして(偏光板の吸収軸と位相差フィルムの幅方向に存在する光軸が直行になるようになる)、上記水系接着剤を用いて両者を連続的に貼付し、もう一方の面に80μm厚みのトリアセチルセルロース(以下、「TAC」ともいう。)製フィルムを濃度5%のPVA水溶液からなる接着剤を用いて貼付し、偏光板A−1を得た。得られた偏光板の偏光度を調べたところ、99.99であり、ムラがなくばらつきが小さいことが分かった。結果を表2に示す。
【0143】
[参考例2]
実施例4において、光学フィルムA−1に代えて、参考例1で得た光学フィルムDを使用したことのほかは実施例4と同様にして偏光板Dを得た。
【0144】
[実施例5]
実施例4で得られた偏光板A−1の特性を評価するため、三星電子株式会社製液晶テレビ(型番LN40R81BD)の液晶パネルの観察者側の背面に貼付している偏光板および位相差フィルムを剥離し、この剥離した箇所に、上記偏光板A−1を、元々貼付されていた偏光板の透過軸と同一にして、偏光板の光学フィルムが液晶セル側になるように貼付した。また、同様に液晶パネルの観察者側の前面の偏光板および位相差フィルムを剥離し、この剥離した箇所に偏光板Dを、元々貼付されていた偏光板の透過軸と同一にして、偏光板の光学フィルムが液晶セル側になるように貼付した。
【0145】
上記偏光板A−1を有する液晶テレビの、ムラを目視で観察したところ、目立ったムラは観察されなかった。また、全方位で視野角(コントラスト比10以上の領域)を確認したところ、上下、左右、斜め方向の全てで175度以上であることを確認した。加えて、正面コントラスト比を測定したところ、最小値が5920、最大値が6240であった。また黒表示状態で方位角45度において、極角0度から80度でのカラーシフト現象を目
視で確認したところ、色の変化が小さく良好であった。結果を表2に示す。
【0146】
[実施例6]
実施例4において、光学フィルムBを使用したこと以外は実施例4と同様にして偏光板B−1を得た。得られた偏光板の特性を実施例4と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0147】
[実施例7]
実施例5において、偏光板A−1の代わりに実施例6で得られた偏光板B−1を使用したこと以外は実施例5と同様にして液晶セルに貼合し、実施例5と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0148】
[実施例8]
実施例4において、光学フィルムC−1を使用したこと以外は実施例4と同様にして偏光板C−1を得た。得られた偏光板の特性を実施例4と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0149】
[実施例9]
実施例5において、偏光板A−1の代わりに実施例8で得られた偏光板を使用したこと以外は実施例5と同様にして液晶セルに貼合し、実施例5と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0150】
[比較例5]
実施例4において、光学フィルムA−2を使用したこと以外は実施例4と同様にして偏光板A−2を得た。得られた偏光板の特性を実施例4と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0151】
[比較例6]
実施例5において、偏光板A−1の代わりに比較例5で得られた偏光板を使用したこと以外は実施例5と同様にして液晶セルに貼合し、実施例5と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0152】
[比較例7]
実施例4において、光学フィルムA−3を使用したこと以外は実施例4と同様にして偏光板A−3を得た。得られた偏光板の特性を実施例4と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0153】
[比較例8]
実施例5において、偏光板A−1の代わりに比較例7で得られた偏光板を使用したこと以外は実施例5と同様にして液晶セルに貼合し、実施例5と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0154】
[比較例9]
実施例4において、光学フィルムB−2を使用したこと以外は実施例4と同様にして偏光板B−2を得た。得られた偏光板の特性を実施例4と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0155】
[比較例10]
実施例5において、偏光板A−1の代わりに比較例9で得られた偏光板を使用したこと
以外は実施例5と同様にして液晶セルに貼合し、実施例5と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0156】
[比較例11]
実施例4において、光学フィルムC−2を使用したこと以外は実施例4と同様にして偏光板C−2を得た。得られた偏光板の特性を実施例4と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0157】
[比較例12]
実施例5において、偏光板A−1の代わりに比較例11で得られた偏光板を使用したこと以外は実施例5と同様にして液晶セルに貼合し、実施例5と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0158】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の光学フィルムあるいは積層型光学フィルムは、各種液晶表示装置の用途に好適に用いることができ、携帯電話、ノートパソコン、カーナビゲーション、液晶テレビなど種々の製品に利用することができる。本発明の光学フィルムあるいは積層型光学フィルムは、面全体において高度に光学性能が制御されており、幅広のフィルムであっても全面が均質であることから、特に大型ディスプレイを備えた液晶モニターなどの用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム面内位相差R0が20nm以下であるフィルムを、
温度分布が設定温度±0.6℃以内にコントロールされたオーブン中でフィルム長手方向に一軸延伸し、
さらに、温度分布が設定温度±0.5℃以内にコントロールされたオーブン中でフィルム幅方向に一軸延伸することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
(ただし、フィルム面内位相差R0は、光線波長550nmにおけるフィルム面内の最大屈折率をnx、フィルム面内でnxに対して直行する方向の屈折率をny、フィルム厚みをd(nm)とした場合に、式 R0=(nx−ny)×d により求められる値である。)
【請求項2】
フィルム長手方向に一軸延伸したフィルムが、
フィルム面内位相差R0が200〜400nmの範囲にあり、R0のばらつきが±3nm以内であり、かつフィルム面内の最大屈折率方向がフィルム長手方向に対して0±3度の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
環状オレフィン系樹脂が、下記式(I)で表される構造単位を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【化1】

[式(I)中、mは1以上の整数であり、pは0または1以上の整数であり、Dは−CH=CH−または−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基;置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表し、R1およびR2は一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R3
およびR4は一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。R1およびR2は互いに結合
して炭素環または複素環を形成してもよく、R3およびR4は互いに結合して炭素環または複素環を形成してもよく、該炭素環または複素環は単環でも多環でもよい。]
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法により得られることを特徴とする光学フィルム。
【請求項5】
環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム全面において、フィルム面内位相差R0が2nm以下であり、フィルム面内の最大屈折率方向とフィルム長手方向との角度を90±α度としたとき、αが30以下であり、さらにαとR0との積が30以下であることを特徴とする光学フィルム。
(ただし、フィルム面内位相差R0は、光線波長550nmにおけるフィルム面内の最大屈折率をnx、フィルム面内でnxに対して直行する方向の屈折率をny、フィルム厚み
をd(nm)とした場合に、式 R0=(nx−ny)×d により求められる値である。)
【請求項6】
請求項4または5に記載の光学フィルムの片面に、粘着剤層または接着剤層を介して他の光学フィルムが積層され、さらにもう一方の面に粘着剤層が設けられてなることを特徴とする積層型光学フィルム。
【請求項7】
前記他の光学フィルムが偏光膜であることを特徴とする請求項6に記載の積層型光学フィルム。
【請求項8】
請求項4または5に記載の光学フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
請求項6または7に記載の積層型光学フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
コントラスト比が5000以上であることを特徴とする請求項8または9に記載の液晶
表示装置。
【請求項11】
(1)請求項4または5に記載の光学フィルムと、
(2)環状オレフィン系樹脂からなり、フィルム面内の位相差R0が70〜120nmであり、フィルム厚さ方向の位相差RxzとR0との比(Rxz/R0)が1.2〜1.5である光学フィルムとが、
液晶を介して対向配置されていることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の液晶表示装置。
(ここで、フィルム厚さ方向の位相差Rxzは、光線波長550nmにおけるフィルム面内の最大屈折率をnx、フィルム厚み方向の屈折率をnz、フィルム厚みをd(nm)とした場合に、式 Rxz=(nx−nz)×d により求められる値である。)

【公開番号】特開2009−128821(P2009−128821A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306294(P2007−306294)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】