説明

光学フィルムを作製するプロセス

代表的な方法は、少なくとも1つのポリマー材料を含むフィルムを提供することと、第1延伸工程において、第1セットの加工条件下で、フィルムをクロスウェブ方向に沿って拡幅し、フィルム中にもたらされる面内複屈折がたとえあるとしても低いようにすることと、第2延伸工程において、第2セットの加工条件下でフィルムをクロスウェブ方向に沿って緩和させながら、フィルムをダウンウェブ方向に沿って延伸することと、を包含し、第2セットの加工条件は、少なくとも1つのポリマー材料中に面内複屈折をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、一般に光学フィルム及び光学フィルムを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販のプロセスでは、ポリマー材料又はポリマー材料のブレンドから作製される光学フィルムは、典型的にはダイから押出成形されるか、又は溶媒からキャストされる。押出成形されたフィルム又はキャストフィルムは、続いて伸張され、材料の少なくとも一部に複屈折をもたらし、及び/又は複屈折を強化する。材料及び伸張プロトコルを選択し、反射光学フィルム、例えば反射型偏光子又はミラーなどの光学フィルムを製造してもよい。幾つかのこうした光学フィルムは、輝度強化光学フィルムと呼ばれる場合がある、というのは、液晶光学ディスプレイの輝度は、そこにこうした光学フィルムを包含することにより増加される場合があるからである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの代表的な実施では、本開示は、光学フィルムを作製する方法を対象としている。1つの代表的な方法は、少なくとも1つのポリマー材料を包含するフィルムを提供することと、第1延伸工程において、第1セットの加工条件下でフィルムをクロスウェブ(TD)方向に沿って拡幅し、フィルム中にもたらされる複屈折がたとえあるとしても低いようにすることと、第2延伸工程において、第2セットの加工条件下でフィルムをクロスウェブ(TD)方向に沿って緩和させながら、フィルムをダウンウェブ(MD)方向に沿って延伸することと、を包含し、第2セットの加工条件は、ポリマー材料中に面内複屈折及びMDに沿って有効な延伸軸をもたらす。
【0004】
本開示の別の代表的な方法は、少なくとも第1ポリマー材料及び第2ポリマー材料を包含するフィルムを提供する工程と、第1延伸工程において、第1セットの加工条件下でフィルムをクロスウェブ(TD)方向に沿って延伸してフィルムを拡幅し、第1及び第2ポリマー材料中に低い面内複屈折がもたらされるようにする工程と、第2延伸工程において、第2セットの加工条件下で、フィルムをクロスウェブ(TD)方向に沿って緩和させながら、フィルムをダウンウェブ(MD)方向に沿って延伸し、第1及び第2ポリマー材料の少なくとも1つの中に面内複屈折、並びにMDに沿って有効な延伸軸をもたらす工程と、を包含する。
【0005】
本開示の更に別の代表的な方法は、少なくとも第1ポリマー材料及び第2ポリマー材料を包含する第1フィルムを提供する工程と、第1延伸工程において、第1セットの加工条件下で第1フィルムをクロスウェブ(TD)方向に沿って延伸して第1フィルムを拡幅し、第1及び第2ポリマー材料中に低い面内複屈折がもたらされるようにする工程と、第2延伸工程において、第2セットの加工条件下で、フィルムをクロスウェブ(TD)方向に沿って緩和させながら、第1フィルムをダウンウェブ(MD)方向に沿って延伸し、第1及び第2ポリマー材料の少なくとも1つの中に面内複屈折、並びにMDに沿って有効な延伸をもたらす工程と、第2フィルムを第1光学フィルムに取り付ける工程と、を包含する。
【0006】
上記の概要は、本発明の図解された各実施形態、又は本発明のあらゆる実施を記載するものではない。図及び以下の詳細な説明がこれらの実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図面と関連して本発明の様々な実施形態の以下の「発明を実施するための形態」を検討することで、本発明はより完全に理解され得、その中で:
【図1】光学フィルムを図解。
【図2】光学フィルムを図解。
【図3】ブレンドされた光学フィルムを図解。
【図4】本開示により光学フィルムを作製する装置及びプロセスの略図。
【図5】本開示の1つの実施形態による伸張プロセスの略図。
【図6】バッチ伸張プロセス工程の略図。
【図7A】長さ延伸機を使用する、フィルムラインの実施形態の概略図。
【図7B】長さ延伸機スレッディングシステムの1つの実施形態の概略図。
【図7C】長さ延伸機スレッディングシステムの別の実施形態の概略図。
【図8】第1光学フィルムが第2光学フィルムに取り付けられているラミネート構造物を図解。
【図9A】本開示により作製された代表的な構造物の断面図。
【図9B】本開示により作製された代表的な構造物の断面図。
【図10A】本開示により作製された代表的な構造物の断面図。
【図10B】本開示により作製された代表的な構造物の断面図。
【図10C】本開示により作製された代表的な構造物の断面図。
【図11】本開示により作製された代表的な構造物の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、ディスプレイの輝度を強化することができる光学フィルムなどの光学フィルムを作製することを対象としている。光学フィルムは、例えば、光学ディスプレイのような特定の最終用途のために設計される光学均一性及び十分な光学品質が必要であるという点で、他のフィルムとは異なる。この用途の目的上、光学ディスプレイに使用するための十分な品質とは、すべての加工工程後及び他のフィルムへのラミネート加工前のロール形態の光学フィルムには、目に見える有意な不良が存在しないこと、例えばヒトの裸眼で見た時、実質的に色ストリーク又は表面リッジを有さないことを意味する。更に、光学品質フィルムは、有用フィルム領域にわたって、特定用途に応じて十分に小さいキャリパー変化を有するべきであり、それは例えば、フィルムの平均厚さの±10%以下、±5%以下、±3%以下及び幾つかの場合では±1%以下である。キャリパー変化の空間勾配も、本開示による光学フィルムの望ましくない外観又は特性を避けるため十分に小さくしなければならない。例えば、同じ量のキャリパー変化でも、それが大きい領域にわたって発生するのであれば望ましくない度合いもそれほど大きくはない。
【0009】
拡幅の延伸された光学フィルム、例えばそれらの長さに沿って(MDに沿って)ブロック又は偏光軸を有する反射型偏光フィルムを作製するための方法、及びこうした方法により製造される場合があるそれらの長さに沿って(MDに沿って)ブロック又は偏光軸を有する拡幅フィルムのロールは、同一所有者の米国特許出願11/394,479及び11/394,478(両方共、2006年3月31日出願)に記載されており、それらの開示は、本明細書に参考として組み込まれる。反射型偏光フィルムは、これらに限定されないが多層反射型偏光フィルム及び拡散反射型偏光光学フィルムを包含してもよい。幾つかの代表的な実施形態では、反射型偏光フィルムは、吸収型偏光子、位相差板、拡散板、保護被膜、表面構造化フィルムなどの別の光学フィルムにロールツーロール法で有利にラミネートされ得る。
【0010】
本用途の目的上、用語「拡幅」又は「拡幅形式」は、約0.3mを超える幅を有するフィルムを指す。フィルムの縁部のある部分は、例えば、テンター装置の把持部材により、使用に適さない又は不良になる可能性があるので、当業者は、用語「幅」が、有用なフィルム幅と関連して使用されることを直ちに認識するであろう。本開示の拡幅光学フィルムの幅は、予定された用途により変わり得るが、典型的に0.3mを超え10mまでの範囲にわたる。幾つかの用途では、10mを超える拡幅フィルムが製造される場合があるが、そのようなフィルムは、運搬するのが困難である。代表的な好適なフィルムは、典型的に約0.5m〜約2m及び約7mまでの幅を有し、現在入手可能なディスプレイフィルム製品は、例えば、0.65m、1.3m、1.6m、1.8m又は2.0mの幅を有するフィルムを利用している。用語「ロール」は、少なくとも10mの長さを有する連続フィルムを指す。本開示の幾つかの代表的な実施形態では、フィルムの長さは、20m以上、50m以上、100m以上、200m以上又はいずれかの他の好適な長さであってもよい。
【0011】
以下の説明は、図面を参照しながら読む必要があり、図面では、異なる図面の同様の素子に同様の形で番号を付してある。図面は、必ずしも一定の縮尺とは限らないが、特定の例証的な実施形態を表しており、また本開示の範囲を制限しようとするものではない。様々な素子について、構造、寸法、及び材料の例が説明されているが、当業者は、提供されている多くの実施例に、利用可能な好適な代替物があることを理解するだろう。
【0012】
特に明記しない限り、本明細書と請求項で用いられている特徴的なサイズ、量、及び、物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語によって変更されることを理解されたい。したがって、特に記載のない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数のパラメータは、本願明細書で開示する教示を利用する当業者が得ようと試みる所望の特性に応じて変えることのできる近似値である。
【0013】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内のすべての数(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を包含する)、及び、その範囲内のあらゆる範囲を包含する。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する時、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容によって明確に別段の指示がなされていない場合は、複数の指示対象を有する実施形態にも及ぶ。例えば、「a film」の引用は、1つ、2つ又はそれ以上のフィルムを有する実施形態を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する時、用語「又は」は、その内容によって別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0015】
用語「複屈折」は、直交x、y、z方向における屈折率の全てが同じではないことを意味する。本明細書に記載のポリマー層において、軸は、x及びy軸が層平面中にあり、z軸が層の厚さ又は高さに対応するように選択される。主要な軸は、屈折率が最大及び最小値となる方向を指す。用語「面内複屈折」は、主面内屈折率(n及びn)間の差であると理解される。用語「面外複屈折」は、主面内屈折率(n又はn)の1つと主面外屈折率nとの差であると理解される。主面内方向は、特にクロスウェブ対称プロセスのフィルムの中心において、クロスウェブ/横方向(TD)及びダウンウェブ/縦方向(MD)と典型的にそろえられる。主面外方向は、およそ垂直方向(ND)であってもよい。全複屈折率及び屈折率値は、指示がない限り632.8nmにおいて報告される。
【0016】
複屈折を有する延伸された層は、典型的に、延伸された方向(つまり、伸張方向)に平行な偏光平面を有する光線、及び横方向(つまり、伸張方向に直交する方向)に平行な偏光平面を有する光線の透過及び/又は反射間に違いを示す。例えば、延伸されることが可能なポリエステルフィルムはx軸に沿って伸張される際、典型的な結果は、n≠nであり、式中、n及びnは、「x」及び「y」のそれぞれの軸に対して平行な平面で偏光した光の屈折率である。伸張方向に沿った屈折率の変化の程度は、伸張量、伸張速度、伸張中のフィルム温度、フィルム厚、フィルム厚の変動、フィルムの組成などの要因による。
【0017】
材料の屈折率は、波長の関数である(即ち、材料は典型的には分散性を示す)ことが理解されるであろう。それ故に、屈折率に対する光学的要求も波長の関数である。2つの光学的に接続した材料の屈折率の比を使用し、2つの材料の屈折力を算出することができる。特定の方向に沿った偏光の2つの材料間の屈折率差の絶対値を、同じ方向に沿った偏光の該材料の平均屈折率で割ったものが、フィルムの光学性能を示す。この値は、正規化された屈折率差と呼ばれる。
【0018】
反射型偏光子において、不整合の面内屈折率、例えば面内(MD)方向での正規化された差は、たとえあるとしても、少なくとも約0.06、より好ましくは少なくとも約0.09、及び更により好ましくは少なくとも約0.11以上であることが一般に望ましい。より一般的には、光学フィルムの他の態様を劣化しない限りできるだけ大きくこの差を有することが望ましい。屈折率の同じ平面(例えば、面内(TD)方向)での正規化された差は、存在する場合、約0.06未満、より好ましくは約0.03未満、最も好ましくは約0.01未満であることも一般的に望ましい。同様に、偏光フィルムの厚さ方向(例えば、面外(ND)方向)でのいずれかの正規化された屈折率の差は、約0.11未満、約0.09未満、約0.06未満、より好ましくは約0.03未満、最も好ましくは約0.01未満であることが望ましい場合がある。
【0019】
特定の場合では、多層積み重ね体の2つの隣接する材料の厚さ方向で制御された不整合を有することが望ましい場合がある。多層フィルムの2つの材料のz軸の屈折率がそのようなフィルムの光学性能に与える影響は、米国特許番号第5,882,774号、名称「光学フィルム(Optical Film)」、米国特許番号第6,531,230号、名称「色が変化するフィルム(Color Shifting Film)」及び米国特許番号第6,157,490号、名称「鋭いバンド端を有する光学フィルム(Optical Film with Sharpened Bandedge)」に、より完全に記載されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。幾つかの代表的な光学フィルムでは、非伸張方向nに沿って偏光した光の屈折率と、厚さ方向nに沿って偏光した光の屈折率との間の正規化された差は、たとえあるとしても、できるだけ小さいこと、例えば約0.06未満、より好ましくは約0.03未満、及び最も好ましくは約0.01未満であることが一般に望ましい。
【0020】
本開示の代表的な実施形態は、「有効な延伸軸」を特徴としてもよく、これは、ひずみ誘起延伸の結果として屈折率が最も変化した面内方向である。例えば、有効な延伸軸は、典型的に偏光フィルムのブロック(反射又は吸収)軸と一致する。一般に、面内屈折率には2つの主要な軸があり、それは、最大及び最少屈折率に対応している。正の複屈折材料の場合、屈折率は、主軸又は伸張方向に沿って偏光された光に対して増加する傾向があり、有効な延伸軸は、最大面内屈折率の軸と一致する。負の複屈折材料の場合、屈折率は、主軸又は伸張方向に沿って偏光された光に対して減少する傾向があり、有効な延伸軸は、最小面内屈折率の軸と一致する。
【0021】
図1は、以下に記載されるプロセスで使用されてもよい光学フィルム構造物101の一部を図解している。示された光学フィルム101は、3つの互いに直交するx、y及びz軸を参照して記載することが可能である。図解された実施形態では、2つの直交する軸x及びyは、フィルム101の平面内にあり、第3の軸(z軸)は、フィルムの厚さ方向に伸びる。幾つかの代表的な実施形態では、光学フィルム101は、光学接続された少なくとも2つの異なる材料(例えば、反射、拡散、透過及びその類などの光学効果をもたらすように組み合わされた2つの材料)、第1材料と第2材料を包含する。本開示の典型的な実施形態では、一方の材料又は両方の材料がポリマーである。
【0022】
第1及び第2材料は、フィルム101の少なくとも1つの軸に沿った、例えばx方向に沿った方向の屈折率の所望の不整合をもたらすように選択されてもよい。好ましくは、y方向に沿った屈折率の不整合は、少なくとも0.05、少なくとも0.07、少なくとも0.1、及びより好ましくは少なくとも0.2である。材料はまた、屈折率が不整合である方向に対して垂直な、フィルム101の少なくとも1つの他の軸に沿った方向、例えばy方向に沿った方向に、屈折率の所望の整合をもたらすように選択されてもよい。好ましくはx方向に沿った屈折率の間の差は、0.05未満、0.04以下、0.03以下、及びより好ましくは0.02以下である。幾つかの代表的な実施形態では、材料は、屈折率が不整合である方向に対して垂直な、フィルム101の2つの軸に沿った方向、例えばy及びx方向の両方に沿った方向に、屈折率の所望の整合をもたらすように選択されてもよい。こうした代表的な実施形態では、x及びy方向に沿った第1及び第2材料の屈折率の間の差は、両方共0.05未満、0.04以下、0.03以下、及びより好ましくは0.02以下である。
【0023】
第1及び第2材料の少なくとも1つが、特定条件下で、負又は正の複屈折を発現する傾向があってもよい。光学フィルムに使用されるこれらの材料は、キャストフィルムも使用することができるが共押出法の要件に適合するため十分に類似のレオロジーを有するように選択されるのが好ましい。他の代表的な実施形態では、光学フィルム101は、1つの材料又は2つ以上の材料の混和性ブレンドから構成されてもよい。これらの代表的な実施形態は、光学ディスプレイの位相差板又は補償器として使用されてもよい。
【0024】
幾つかの代表的な実施形態では、本開示の光学フィルムは複屈折材料、時には唯一の複屈折材料を包含する。他の代表的な実施形態では、本開示の光学フィルムは、少なくとも1つの複屈折材料と少なくとも1種の等方性材料とを包含する。更に他の代表的な実施形態では、光学フィルムは、第1複屈折材料と第2複屈折材料とを包含する。幾つかのこうした代表的な実施形態では、両方の材料の面内屈折率は、同じ加工条件に応じて同様に変化する。1つの実施形態では、フィルムが延伸される時、第1材料及び第2材料の屈折率は、両方とも延伸方向(例えば、MD)に沿って偏光された光に対して増加し、一方、伸張方向に対して直交する方向(例えば、TD)に沿って偏光された光に対して減少することになる。他の実施形態では、フィルムが延伸される時、第1材料及び第2材料の屈折率は、両方とも延伸方向(例えば、MD)に沿って偏光された光に対して減少し、一方、伸張方向に対して直交する方向(例えば、TD)に沿って偏光された光に対して増加することになる。一般に、1つ、2つ又はそれ以上の複屈折材料が、本開示による延伸された光学フィルムに使用される場合、各複屈折材料の有効な延伸軸は、MDに沿って合わされる。
【0025】
延伸工程に起因する又は延伸工程の組み合わせによる延伸が、1つの面内方向の2つの材料の屈折率の整合及び他の面内方向の屈折率の実質的な不整合をもたらす場合、フィルムは、特に反射型偏光子を製作するのに適切である。一致する方向は、偏光子に対する透過(通過)方向を形成し、異なる方向は、反射(ブロック)方向を形成する。一般に、反射方向の屈折率の不整合が大きくなればなるほど、また透過方向の整合がよくなればなるほど、偏光子の性能はよくなる。
【0026】
一方、複屈折材料又は材料類が、非伸張方向に沿って、例えばy及びz方向に沿って屈折率の間に差を示す場合には、偏光子の用途に使用される幾つかの光学フィルムは、軸外色に悩まされる。したがって、本開示の代表的な実施形態に含まれる複屈折材料は、非伸張方向に沿った屈折率の間に、できるだけ小さい不整合を有するべきである。非伸張方向(即ち、y方向及びz方向)の屈折率は、望ましくは、所与の複屈折層又は領域について互いの約5%以内であり、また1を超える材料を含む実施形態では、異なる材料の隣接する層又は領域の対応する非伸張方向の約5%以内である。
【0027】
図2は、第2材料115の第2層上に配置された(例えば、共押出により)第1材料113の第1層を包含する多層光学フィルム111を図解している。第1材料及び第2材料のいずれか又は両方が、複屈折であってもよい。2つの層だけが図2に図解され、本明細書において一般に記載されているが、該プロセスは、いずれの数の異なる材料から作製される数百若しくは数千まであるいはそれ以上の層を有する多層光学フィルムに適用でき、例えば第1材料113の複数の第1層及び第2材料115の複数の第2層を有する多層光学フィルムに適用できる。多層光学フィルム111又は光学フィルム101は、追加の層を包含してもよい。追加の層は、光学的、例えば、追加の光学機能を発揮するものであってもよいし、又は非光学的、例えばそれらの機械的若しくは化学的特性、又は両方のために選択されてもよい。参照により本明細書に組み込まれる米国特許番号第6,179,948号で論じられているように、これらの追加の層は、本明細書に記載される加工条件下で延伸される場合があり、フィルムの全体的な光学及び/又は機械的特性に寄与する場合があるが、明瞭さ、及び平易化の目的でこれらの層は、この明細書では更に議論しない。
【0028】
光学フィルム111の材料は、粘弾性特性を有するように選択され、フィルム111内の2つの材料113及び115の延伸挙動を少なくとも部分的に切り離す。例えば、幾つかの代表的な実施形態では、伸張又は延伸に対して2つの材料113及び115の応答を切り離すことが有益である。延伸挙動を切り離すことにより、材料の屈折率の変化を別々に制御し、2つの異なる材料の延伸状態、したがって複屈折度の様々な組み合わせを得ることができる。このようなプロセスの1つでは、2つの異なる材料は、共押出多層光学フィルムなどの多層光学フィルムの光学層を形成する。キャストプロセス中の延伸が意図的に又は付随して押出フィルムに導入されることがあるとはいえ、層の屈折率は、最初の等方性を有する(即ち、屈折率は、各軸に沿って同じである)ことができる。
【0029】
反射型偏光子形成の1つのアプローチは、本開示による加工の結果として複屈折になる第1材料と、屈折率が実質的に等方性のままである、即ち延伸プロセス中に感知されるほどの複屈折量を発現しない第2材料とを使用する。幾つかの代表的な実施形態では、第2材料は、延伸後第1材料の延伸されていない面内屈折率に一致する屈折率を有するように選択される。
【0030】
図1、2の光学フィルムに使用するのに好適な材料は、例えば米国特許第5,882,774号で論じられており、これは本明細書に参考として組み込まれる。好適な材料としては、例えば、ポリエステル、コポリエステル及び変性コポリエステルなどのポリマーが挙げられる。この文脈では、用語「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマー、並びに、例えば共押出、又は、例えばエステル交換などの反応によって、混和性ブレンドの形で形成されるポリマー又はコポリマーを包含すると考えられる。用語「ポリマー」及び「コポリマー」は、ランダム及びブロックコポリマーの両方を包含する。本開示によって構成される光学体における幾つかの代表的な光学フィルムに使用するのに好適なポリエステル類には、一般的にはカルボキシレート及びグリコールサブユニットが挙げられ、カルボキシレートモノマー分子とグリコールモノマー分子との反応によって生成され得る。各々のカルボキシレートモノマー分子は、2つ以上のカルボン酸又はエステル官能基を有し、各グリコールモノマー分子は、2つ以上のヒドロキシ官能基を有する。カルボキシレートモノマー分子はすべて同じでもよいし、2つ以上の種類の異なる分子でもよい。グリコールモノマー分子にも同じことが言える。炭酸のエステルによるグリコールモノマー分子の反作用に由来するポリカーボネートは、「ポリエステル」という用語の範囲内に含まれる。
【0031】
ポリエステル層のカルボキシレートサブユニットを形成するのに使用する好適なカルボキシレートモノマー分子には、例えば、2,6−ナフタレンジカルボキシル酸及びその異性体;テレフタル酸;イソフタル酸;フタル酸;アゼライン酸;アジピン酸;セバシン酸;ノルボルネンジカルボン酸;ビシクロオクタンジカルボン酸;1,6−シクロヘキサンジカルボン酸及びその異性体;t−ブチルイソフタル酸、トリメリット酸;イソフタル酸スルホン酸ナトリウム;2,2’−ビフェニルジカルボン酸及びその異性体;及びメチル又はエチルエステル類のようなそれらの酸の低級アルキルエステル類が挙げられる。用語「低級アルキル」は、本文中ではC1〜C10の直鎖又は分枝状アルキル基を表す。
【0032】
ポリエステル層のグリコールサブユニットを形成するのに用いられる適切なグリコールモノマー分子は、エチレングリコール、プロピレン・グリコール、1,4−ブタンジオール及びその異性体、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチル・グリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリシクロデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びその異性体、ノルボルナンジオール、ビシクロ−オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−ベンゼンジメタノール及びその異性体、ビスフェノールA、1,8−ジヒドロキシ・ビフェニル及びその異性体、及び、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを包含する。
【0033】
本開示の光学フィルムに有用な代表的なポリマーは、例えば、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとの反応によって作製することができるポリエチレンナフタレン酸(PEN)である。ポリエチレン2,6−ナフタレン酸(PEN)は、しばしば第1ポリマーとして選択される。PENは大きな正の応力光係数を有し、伸張後に効果的に複屈折を保持し、可視領域の範囲内でほとんど又は全く吸光度を有さない。PENはまた等方性状態の大きな屈折率を有する。偏光平面が伸張方向と平行になる時、550nm波長の偏光入射光線におけるその屈折率は約1.64から約1.9もの高さまで増加する。分子の延伸の増加によって、PENの複屈折が増加する。分子の延伸は、他の伸張状態を固定したまま材料をより大きな伸張割合まで伸張することにより増加し得る。第1ポリマーとして好適な他の半結晶性ポリエステルには、例えば、ポリブチレン2,6−ナフタレン酸(PBN)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、及びそれらのコポリマーが挙げられる。
【0034】
幾つかの代表的な実施形態では、第2光学層の第2ポリマーは、完成したフィルムにおいて少なくとも1つの方向の屈折率が同じ方向の第1ポリマーの屈折率と有意に異なるように選択されるべきである。つまり、ポリマー材料は典型的には分散性であって、屈折率は波長に応じて変化するので、これらの条件は問題となる特定のスペクトル帯域幅によって判断されるべきである。これまでの議論によって、第2ポリマーの選択は、問題の多層光学フィルムの用途の指定だけでなく、第1ポリマーの選択並びに処理条件に依存することが理解できよう。
【0035】
光学フィルム、特に第1光学層の第1ポリマーに使用されて好適な他の材料が、例えば、米国特許番号第6,352,762号、米国特許番号第6,498,683号、米国特許出願通し番号第09/229724号、米国特許出願通し番号第09/232332号、米国特許出願通し番号第09/399531号及び米国特許出願通し番号第09/444756号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。第1ポリマーとして有用な他のポリエステルは、90mol%のジメチルナフタレン酸ジカルボキシレート及び10mol%のジメチルテレフタラート由来のカルボキシレートサブユニット、及び100mol%のエチレングリコールサブユニット由来のグリコールサブユニットを有し固有粘度(IV)が0.48dL/gのcoPENである。このポリマーの屈折率はおよそ1.63である。本明細書中でこのポリマーは、低融点PEN(90/10)と称される。他の有用な第1ポリマーは、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical Company)(テネシー州キングスポート(Kingsport))から入手可能な0.74dL/gの固有粘度を有するPETである。非ポリエステルポリマーも偏光フィルムを作製するのに有用である。例えば、ポリエーテルイミドをPEN及びcoPENなどのポリエステルと共に用いて、多層反射鏡を生成させることができる。ポリエチレンテレフタレートとポリエチレン(例えば、エンゲージ(Engage)8200の製品名でミシガン州ミッドランドのダウケミカル社(Dow Chemical Corp.)から市販されているもの)など、その他のポリエステル/ポリエステル以外の物質の組み合わせを用いることができる。
【0036】
第2光学層は、第1ポリマーのそれに適合するガラス転移温度を有し、第1ポリマーの等方性屈折率と類似の屈折率を有する多様なポリマーから作製することができる。光学フィルム、特に第2光学層で使用するのに好適な他のポリマーの例としては、上述のCoPEN以外に、ビニルナフタレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリレート及びメタクリレートのようなモノマーから作製されるビニルポリマー及びコポリマーが挙げられる。そのようなポリマーの例には、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などのポリアクリレート、ポリメタクリレート、及びアイソタクチックポリスチレン又はシンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。他のポリマーには、ポリスルホン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミン酸、及びポリイミドなどの縮合ポリマーが挙げられる。更には、第2光学層は、ポリエステル及びポリカーボネートのようなポリマー及びコポリマーから形成させることができる。
【0037】
その他の代表的な好適な、とりわけ第2光学層での使用に好適なポリマーとしては、デラウェア州ウィルミントンのイネオスアクリリクス社(Ineos Acrylics, Inc.)からCP71及びCP80の製品名で市販されているようなポリメチルメタクリレート(PMMA)、又は、PMMAよりもガラス転移温度の低いポリエチルメタクリレート(PEMA)のホモポリマーが挙げられる。追加の第2ポリマーとしては、75重量%のメチルメタクリレート(MMA)モノマー及び25重量%のエチルアクリレート(EA)モノマーから作られているcoPMMA(イネオスアクリリクス社(Ineos Acrylics, Inc.)からパースペックス(Perspex)CP63の製品名で市販されている)、MMAコモノマーユニット及びn−ブチルメタクリレート(nBMA)コモノマーユニットによって形成されているcoPMMA、又は、PMMAと、テキサス州ヒューストンのソルベーポリマーズ社(Solvay Polymers, Inc.)からソレフ(Solef)1008の製品名で市販されているようなポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)のブレンドといったPMMA(coPMMA)のコポリマーが挙げられる。
【0038】
更に、特に第2層に使用する他の好適なポリマーには、例えばダウ・デュポンエラストマーズ(Dow-Dupont Elastomers)から商標表記エンゲージ(Engage)8200として入手可能なポリ(エチレン−co−オクテン)(PE−PO)のようなポリオレフィンコポリマー、テキサス州ダラス(Dallas)のフィナオイルアンドケミカル社(Fina Oil and Chemical Co)から商標表記Z9470として入手可能なポリ(プロピレン−co−エチレン)(PPPE)、及びユタ州ソルトレイクシティ(Salt Lake City)のハンツマンケミカル社(Huntsman Chemical Corp)から商標表記レックスフレックス(Rexflex)W111として入手可能なアタクチックポリプロピレン(aPP)及びイソタクチックポリプロピレン(iPP)のコポリマーが挙げられる。光学フィルムには更に、例えば、第2光学層に、デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポンデュヌムール社(E.I. duPont de Nemours & Co., Inc.)からバイネル(Bynel)4105の製品名で市販されているような線状低密度ポリエチレン−g−無水マレイン酸(LLEPE−g−MA)などの官能化ポリオレフィンを搭載することもできる。
【0039】
偏光子の場合の材料の代表的な組み合わせとしては、PEN/co−PEN、ポリエチレンテレフタレート(PET)/co−PEN、PEN/sPS、PEN/イースター(Eastar)、及び、PET/イースター(Eastar)が挙げられるが、ここで「co−PEN」はナフタレンジカルボン酸(既述済み)系のコポリマー又はブレンドを意味しており、イースター(Eastar)は、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical Co.)から市販されているポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートである。ミラーの場合の材料の代表的な組み合わせとしては、PET/coPMMA、PEN/PMMA又はPEN/coPMMA、PET/ECDEL、PEN/ECDEL、PEN/sPS、PEN/THV、PEN/co−PET、PET/co−PET及びPET/sPSが挙げられ、ここで「co−PET」は、テレフタル酸(既述済み)に基づくコポリマー又はブレンドを指し、ECDELは、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical Co.)から市販されている熱可塑性ポリエステルであり、THVは、3M社(3M Company)から市販されているフルオロポリマーである。PMMAはポリメチルメタクリレートを表し、PETGは第2グリコール(通常はシクロヘキサンジメタノール)に用いるPETのコポリマーを表す。sPSは、シンジオタクチックポリスチレンを指す。
【0040】
他の実施形態では、光学フィルムは、ブレンド光学フィルムであることができ、又はそれを包含することができる。幾つかの代表的な実施形態では、ブレンド光学フィルムは、拡散反射型偏光子であってもよい。本開示による典型的なブレンドフィルムでは、少なくとも2つの異なる材料のブレンド(又は混合物)が使用される。特定の軸に沿った2つ又はそれ以上の材料の屈折率の不整合が使用され、その軸に沿って偏光される入射光線を実質的に散乱させ、その光線の有意な量の拡散反射をもたらすことができる。2つ又はそれ以上の材料の屈折率が整合される軸の方向に偏光される入射光線は、実質的に透過され又は少なくともずっと少ない程度の散乱のみを伴って透過されることになる。材料の相対屈折率など、光学フィルムの他の特性を制御することにより、拡散反射型偏光子が構成され得る。このようなブレンドフィルムは、多くの異なる形態を取ることができる。例えば、ブレンド光学フィルムは、1つ以上の共連続相、1つ以上の連続相内の1つ以上の分散相、又は共連続相を包含してもよい。様々なブレンドフィルムの一般的な形成及び光学特性が、米国特許番号第5,825,543号及び米国特許番号第6,111,696号で更に論じられており、その開示が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
図3は、第1材料と、第1材料に実質的に不混和性である第2材料とのブレンドから形成される本開示の実施形態を図解している。図3では、光学フィルム201は、連続(マトリックス)相203と分散(不連続)相207から形成される。連続相は、第1材料を含んでもよく、第2相は、第2材料を含んでもよい。フィルムの光学特性を使用し、拡散反射型偏光フィルムを形成してもよい。このようなフィルムでは、連続及び分散相材料の屈折率は、1つの面内軸に沿って実質的には同じになり、別の面内軸に沿って実質的には異なる。一般に、材料の一方又は両方が、適切な条件下での伸張又は延伸の結果、面内複屈折を発現することができる。図3に示したものなどの拡散反射型偏光子では、フィルムの1つの面内軸の方向の材料の屈折率をできるだけ緊密に整合させ、同時に他の面内軸の方向にはできるだけ大きい屈折率の不整合を有するようにすることが望ましい。
【0042】
光学フィルムが、図3に示すような分散相と連続相とを包含するブレンドフィルム、又は第1共連続相と第2共連続相とを包含するブレンドフィルムである場合、多くの異なる材料が、連続相又は分散相として使用されてもよい。このような材料としては、シリカ系ポリマーなどの無機材料、液晶などの有機材料並びにモノマー、コポリマー、グラフトポリマー及びこれらの混合物又はブレンドを含むポリマー材料が挙げられる。拡散反射型偏光子の特性を有するブレンド光学フィルムの連続及び分散相又は共連続相として使用されるように選択された材料は、幾つかの代表的な実施形態では、面内複屈折を導入するため第2セットの加工条件下で延伸可能な少なくとも1つの光学材料及び第2セットの加工条件下で感知されるほどに延伸せず、感知されるほどの量の複屈折を発現しない少なくとも1つの材料を包含してもよい。
【0043】
ブレンドフィルムの材料選択に関する詳細が、米国特許第5,825,543号及び米国特許第6,590,705号に詳述されており、その両方が参照により組み込まれる。
【0044】
連続相に好適な材料(特定の構造物における分散相又は共連続相に使用されてもよい)は、イソフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ジ安息香酸(dibenzoic)、テレフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びビ安息香酸(bibenzoic)(4,4’−ビ安息香酸を包含する)などのカルボン酸に基づくモノマーから作製される材料又は前述の酸の対応するエステル(即ち、テレフタル酸ジメチル)から作製される材料を包含する非晶質、半結晶質又は結晶性ポリマー材料であってもよい。これらのうち、2,6−ポリエチレンナフタレート(PEN)、PENとポリエチレンテレフタレート(PET)のコポリマー、PET、ポリプロピレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート及びその他の結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルが好ましい。PEN及びPET並びに中間体組成物のコポリマーが、それらのひずみ誘起複屈折及び伸張後恒久的に複屈折を残すそれらの性能のため特に好ましい。
【0045】
幾つかのフィルム構造物の第2ポリマーに好適な材料としては、第1ポリマー材料中に適切なレベルの複屈折を生成するために使用される条件下で延伸される時に等方性又は複屈折である材料が挙げられる。好適な例としては、ポリカーボネート(PC)及びコポリカーボネート、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレートコポリマー(PS−PMMA)、例えば、商標表記MS 600(50%アクリレート含有量)NAS 21(20%アクリレート含有量)としてペンシルベニア州ムーンタウンシップ(Moon Township)のノバケミカル(Nova Chemical)から入手可能なものなどのPS−PMMA−アクリレートコポリマー、例えば、商標表記DYLARKとしてノバケミカル(Nova Chemical)から入手可能なものなどのポリスチレン無水マレイン酸コポリマー、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)及びABS−PMMA、ポリウレタン、ポリアミド、特にナイロン6、ナイロン6,6及びナイロン6,10などの脂肪族ポリアミド、ミシガン州ミッドランド(Midland)のダウケミカルから入手可能なTYRILなどのスチレン−アクリロニトリルポリマー(SAN)、及び例えば、バイエルプラスチックス(Bayer Plastics)から商標表記マクロブレンド(Makroblend)として入手可能なポリエステル/ポリカーボネートアロイ、GEプラスチックス(GE Plastics)から商標表記キシレックス(Xylex)として入手可能なもの、イーストマンケミカル(Eastman Chemical)から商標表記SA 100及びSA 115として入手可能なものなどのポリカーボネート/ポリエステルブレンド樹脂、例えばCoPET及びCoPENを含む脂肪族コポリエステル類などのポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)並びにポリクロロプレンが挙げられる。
【0046】
1つの態様では、本開示は、例えば光学ディスプレイに有用な拡幅の延伸された光学フィルムのロールを作製する方法を対象としており、そこでは延伸された光学フィルムの有効な延伸軸は、一般にロールの長さにそろえられる。反射型偏光フィルムなどのこのフィルムのロールは、ロールの長さに沿ったブロック状態軸を有する吸収型偏光フィルムなどの他の光学フィルムのロールに容易にラミネートされてもよい。1つの代表的なロールは、MDに沿った有効な延伸軸を特徴とする複屈折材料を含む延伸された光学フィルムを包含し、TDに沿って偏光された光の屈折率とNDに沿って偏光された光の屈折率との間の正規化された差が、0.06未満である。
【0047】
本開示の代表的な方法は、少なくとも1つのポリマー材料、好ましくは少なくとも第1ポリマー材料及び第2ポリマー材料から作製される光学フィルムをもたらす工程を包含し、ポリマー材料の少なくとも1つは複屈折を発現することができる。光学フィルムは、本明細書では押し並べて第1延伸工程と呼ばれる第1の工程でクロスウェブ(TD)方向に伸張又は延伸され、たとえあるとしても低面内複屈折だけがフィルム内に発現されるように第1セットの加工条件下でフィルムを拡幅する。
【0048】
本明細書で使用する時、用語「拡幅する」とは、フィルム寸法が、ポリマー分子に実質的な分子延伸を導入することなしに好ましくは分子延伸がない状態で変更され、フィルムを構成する加工工程を指す。フィルムが第1加工工程で拡幅される場合、加工条件、例えば温度は、第1加工工程及び第2加工工程後フィルムが容認できないほど不均一にならず、光学フィルムの品質要件を満すことができるように選択されるべきである。
【0049】
本明細書で使用する時、用語「延伸」とは、フィルム寸法が変更され、分子延伸がフィルムを構成するポリマー材料の1つ以上に引き起こされる加工工程を指す。本明細書では押し並べて第2延伸工程と呼ばれる第2加工工程では、フィルムは、第2セットの加工条件下でダウンウェブ(MD)方向に延伸され、所望の用途の光学フィルムに十分な複屈折を引き起こす。更に、追加の伸張又は延伸工程(複数)が、別々に又は第1延伸工程及び第2延伸工程と共に使用され、フィルムの光学特性(例えば、光学均一性、反り、剥離接着、複屈折及びその類)を改善できる。第2延伸工程の間に、フィルムは、クロスウェブ(TD)方向に沿って緩和される間に、ダウンウェブ(MD)方向に沿って延伸される。幾つかの代表的な実施形態では、第2延伸工程の間に、フィルムは、クロスウェブ(TD)方向に沿って、並びに垂直(厚さ)方向(ND)に沿って緩和される間に、ダウンウェブ(MD)方向に沿って延伸される。
【0050】
本開示により延伸された光学フィルムを作製する代表的なプロセスが、図4に概略的に示される。先ず、光学フィルムを装置300に供給し、フィルムをクロスウェブ(TD)方向若しくはダウンウェブ(MD)方向又は所望により両方に伸張させる。フィルムに適用される伸張工程は、逐次又は同時であってもよい。例えば、図4の装置は、チェーンの配列、又はフィルムウェブの縁部を把持する磁気駆動クリップ302を包含してもよい。個々のクリップは、コンピュータ制御され、フィルムウェブ304にそれが装置300を通って移動する時、各種の伸張プロファイルを提供するようにしてもよい。
【0051】
図4に示されない代替的実施形態では、光学フィルム304は、可変ピッチスクリュー(varying-pitched screws)の配列により規定されるプロファイルで伸張されてもよい。スクリューは、MD伸張のプロファイルと相対量を制御し、TDプロファイルを制御するレールに沿って置かれ、他のプロセス条件と共同して伸張する。図4に示していない更に別の実施形態では、光学フィルム304は、機械パンタグラフ−レールシステムにより規定されるプロファイルで伸張されてもよく、機械パンタグラフ−レールシステムでは、MD伸張比を部分的に制御する個々のクリップの分離が、機械パンタグラフにより制御され、そこではTD伸張比は、クリップが移動するレール経路によって部分的に規定される。本開示によりフィルムを伸張するのに好適な幾つかの代表的な方法及び装置が、米国特許番号第3,150,433号(カンフ(Kampf))及び米国特許番号第4,853,602号(ホームズ(Hommes))に記載されており、両方が参照により本明細書に組み込まれる。装置300に供給されたフィルム304は、溶媒キャスト又は押し出しキャストフィルムであってもよい。図4に図解された実施形態では、フィルム304は、ダイ306から放出された押し出しフィルムであり、少なくとも1つ、好ましくは2つのポリマー材料を包含する。光学フィルム304は、予定された用途に依存して大きく変わることも可能で、図1に示したようなモノリシック構造、図2に示したような層状構造、若しくは図3に示したようなブレンド構造、又はこれらの組み合わせを有してもよい。
【0052】
光学フィルム304に使用されるために選択される材料は、後続する延伸工程の前に好ましくはすべての望ましくない延伸をなくさなければならない。あるいは、第1延伸工程を支援するプロセスとしてキャスト又は押し出し工程中に意図的な延伸を引き起こすことができる。例えば、キャスト又は押し出し工程は、第1延伸工程の一部と考えられてもよい。フィルム304の材料は、光学フィルムの最終用途に基づき選択される、そしてそれは、すべての延伸工程後、面内複屈折を発現することになり、反射型偏光特性などの反射特性を有してもよい。本出願に詳細に記載された1つの代表的な実施形態では、フィルム304の材料に光学接続された材料が選択され、すべての延伸工程後、フィルムに反射型偏光子の特性を付与する。
【0053】
図4を更に参照すると、ひとたび光学フィルム304がダイ306から押し出され、ないしは別の方法で装置300に提供されると、光学フィルム304は、フィルム304の縁部を把持するクリップ302の適切な配置によりゾーン310内の第1延伸工程で伸張される。第1延伸工程は、第1セットの加工条件下(延伸温度、延伸速度及び延伸比の少なくとも1つ(例えばTD/MD延伸速度))で行われ、フィルム304は、クロスウェブ(TD)方向に幅が広くなる。第1セットの加工条件は、フィルムに引き起こされるいずれの追加の複屈折も低いように、即ち第1延伸工程でフィルム304のポリマー材料に引き起こされるのは微小以下の複屈折であるように、好ましくは複屈折が実質的にないように、最も好ましくは複屈折がないように選択されるべきである。幾つかの代表的な実施形態では、第1延伸工程後、面内複屈折は、約0.05未満、約0.03未満、より好ましくは約0.02未満、最も好ましくは約0.01未満である。
【0054】
所定のセットの加工条件下で延伸するポリマー材料の傾向は、ポリマーの粘弾性挙動の結果であり、一般にポリマー材料の分子緩和速度の結果である。分子緩和速度は、平均最長総緩和時間(即ち総分子再配列)又は同時間の分布を特徴とし得る。平均最長総緩和時間は、典型的に温度増加と共に増加し、ガラス転移温度近辺で非常に大きい値に接近する。平均最長総緩和時間は、ポリマー材料の結晶化及び/又は架橋により増加させることもできる、そしてそれは、実際上、典型的に使用される加工時間及び温度条件下でこの最長モードのすべての緩和を抑制する。分子量及び分布並びに化学的組成及び構造(例えば、分枝)が最長緩和時間に影響を及ぼすこともある。
【0055】
特定ポリマー材料の平均最長緩和時間が、およそプロセス延伸時間に等しいかそれ以上である場合、材料において実質的な分子延伸が延伸方向に発生することになる。したがって、高い及び低いひずみ速度が、それぞれ平均最長緩和時間未満又はそれを超える時間にわたり材料を延伸する工程に対応する。所定の材料の応答は、プロセスの延伸温度、延伸速度及び延伸比を制御することにより変更することができる。
【0056】
延伸プロセス中の延伸の程度は、広い範囲にわたって正確に制御することができる。特定の延伸プロセスでは、延伸プロセスによって、実際にフィルムの少なくとも1つの方向の分子延伸量を減少させることができる。延伸方向において、延伸プロセスにより引き起こされる分子の延伸は、実質的に延伸がない状態から僅かに光学的な延伸がある状態(例えばフィルムの光学特性に無視できる程度に僅かな影響をもたらす延伸)、更には後続のプロセス工程中に取り除くことができる様々な程度の光学的な延伸の範囲にわたる。
【0057】
光学的な延伸の相対強度は、フィルムの材料と相対屈折率に依存する。例えば、強い光学的な延伸は、所定の材料の全固有(標準化された)複屈折に関係し得る。また、所定の延伸プロセス順序において、延伸強度が材料間に実現可能な標準化屈折率差の総量に関係することもあり得る。分子の延伸のある規定量が、1つの文脈においては強い光学的な延伸と考えられ、別の文脈においては弱い又は非光学的な延伸と考えられる場合があることもいうまでもない。例えば、第1面内軸と平面外軸間の特定の複屈折量は、第2面内軸と平面外軸間の非常に大きい複屈折との関連で見る時、低いと考えられる場合がある。十分に短い時間及び/又は十分に低い温度で行われ、本開示の光学フィルムに包含される少なくとも1つの材料に幾らかの又は相当量の光学的な分子の延伸を引き起こすプロセスは、それぞれ弱い又は強い光学的に延伸した延伸プロセスである。長い時間及び/又は十分に高い温度にわたって行われ、ほとんど又は全く分子の延伸が発生しないようなプロセスは、それぞれ弱い又は実質的に非光学的な延伸プロセスである。
【0058】
プロセス条件に対する1つ以上の材料の延伸/不延伸応答を考慮して材料及びプロセス条件を選択することにより、たとえあるとしても各延伸工程の軸に沿った延伸量は、材料毎に別々に制御され得る。しかし、特定の延伸プロセスにより引き起こされる分子の延伸の量は、生じたフィルムの分子の延伸をそれ自体で必ずしも規定するものではない。第1延伸プロセスでの非光学的な有効な延伸量は、第2若しくは後続する延伸工程の更なる分子の延伸を補償し又は補助するため、1つの材料に対して許容される。
【0059】
延伸プロセスは、第1の近似で材料の延伸される変化を画定するが、高密度化などの二次的なプロセス又は結晶化などの相転移も、延伸的な特性に影響を及ぼすことがある。極端な材料の相互作用(例えば、自己集合又は液晶遷移)の場合には、これらの影響の方が大きいこともあり得る。典型的な場合、例えば、ポリマー分子の主鎖が流れとそろえられる傾向がある延伸ポリマーは、ひずみ誘起結晶化などが延伸的な特性に二次的な影響だけを有する傾向になるような効果をもたらす。しかし、ひずみ誘起及び他の結晶化は、こうした延伸の強度に有意な影響を有する(例えば、弱い延伸性引き上げを強い延伸性引き上げに変えることがあり得る)。したがって、光学フィルム304に使用されるために選択される材料はいずれも、第1延伸工程に適用される第1セットの加工条件で急速な結晶化が可能なものであってはならず、材料の1つは、感知されるほど結晶化が可能ものであってはならない。その結果、幾つかの用途では、PEN及びPETのコポリマーなど、第1セットの加工条件下でPENより遅く結晶化するcoPENが好ましい場合がある。好適な一例は、PEN90%とPET10%のコポリマーであり、本明細書では低融点PEN(LmPEN)と呼ぶ。
【0060】
第1延伸工程の第1セットの加工条件は、フィルム304を構成するポリマー又はポリマー類により大きく変わり得る。一般に、高温、低延伸比及び/又は低ひずみ速度で延伸される時、ポリマーは粘稠な液体のように流れ、分子延伸がほとんど又は全く存在しない傾向がある。低温及び/又は高ひずみ速度で、ポリマーは、付随的分子の延長によって、固体のように弾力的に延伸される傾向がある。低温プロセスは、典型的に非晶質ポリマー材料のガラス転移温度未満、好ましくは近辺であり、一方高温プロセスは、通常ガラス転移温度を超え、好ましくは相当程度超える。したがって、第1延伸工程は、典型的に高温(ガラス転移温度を超える)及び/又は低ひずみ速度で行われ、ほとんど又は全く分子的な延伸をもたらさないようにすべきである。本開示の典型的な実施形態では、第1延伸工程において、温度は、ポリマーが感知されるほど延伸しない十分な高さにすべきであるが光学フィルムの1つ以上のポリマーが静止結晶化するほど高くすべきではない。静止結晶化は、往々にして望ましくないと考えられている、というのは、それは、過度なヘイズなどの悪影響を及ぼす光学特性をもたらす場合があるからである。更に、フィルムが加熱される時間、即ち温度増加速度は、望ましくない延伸を避けるように調節すべきである。
【0061】
例えば、高屈折率材料としてPENを有する、図2に示したような光学フィルムでは、第1延伸工程の温度範囲は、光学フィルムのポリマーの少なくとも1つのガラス転移温度より、時には光学フィルムのすべてのポリマーのガラス転移温度より約20℃〜約100℃高い。幾つかの代表的な実施形態では、第1延伸工程の温度範囲は、光学フィルムのポリマーの少なくとも1つ、往々にして光学フィルムのポリマーすべてのガラス転移温度より約20℃〜約40℃高い。
【0062】
第1加工条件が適用される第1延伸工程では、例えば、図4に示すゾーン310において、フィルム304は、好ましくはクロスウェブ(TD)方向に伸張又は延伸される。しかし、フィルム304は、所望によりクロスウェブ(TD)方向の伸張/延伸が発生すると同時にダウンウェブ(MD)方向にも伸張若しくは延伸されてもよく、即ちフィルムは、2軸的に伸張若しくは延伸されてもよく、又はフィルム304は、低面内複屈折、例えば僅かに面内複屈折する状態、好ましくは実質的に面内複屈折がない状態、より好ましくは面内複屈折がない状態だけがフィルム304のポリマー材料にもたらされる限り、TDに伸張後MD方向に伸張されてもよい。
【0063】
フィルム304に第1セットの加工条件を適用した後、多くの場合それに続いて、別の第2延伸工程において、第2セットの加工条件が図4に示すゾーン320のフィルムに適用される。ゾーン320の幾つかの代表的な具体的構成が以下に提供されるが、ゾーン320は、本開示の原則によって光学フィルム304が延伸されるいかなる他の好適な構成を有してもよい。第2延伸工程では、光学フィルム304はダウンウェブ(MD)方向に延伸され、その結果、複屈折がフィルムの少なくとも1つのポリマー材料に引き起こされ、第2延伸工程後少なくとも1つの複屈折材料の有効な延伸軸がMDに沿って配置される。光学フィルムが第1ポリマー材料及び第2ポリマー材料を包含する実施形態では、好ましくは第1面内軸(例えば、MD)に沿って第1材料と第2材料との間で屈折率不整合が引き起こされ、第1面内軸に対して直交している第2面内軸(例えば、TD)に沿っては第1材料と第2材料の間で、実質的に屈折率不整合は引き起こされない。幾つかの代表的な実施形態では、第1面内軸は、有効な延伸軸と一致する。
【0064】
幾つかの代表的な実施形態では、第2延伸工程中に伸張方向(MD)に沿ってもたらされる正規化された面内屈折率の差は、少なくとも約0.06、少なくとも約0.07、好ましくは少なくとも約0.09、より好ましくは少なくとも約0.11、更により好ましくは少なくとも約0.2である。少なくとも第1及び第2の異なるポリマー材料を包含する代表的な実施形態では、第2延伸工程後、MDに沿った第1材料及び第2材料の面内屈折率は、少なくとも約0.05のみ、好ましくは少なくとも約0.1のみ、より好ましくは少なくとも約0.15のみ、最も好ましくは少なくとも約0.2のみ異なってもよい。より一般的には、反射型偏光子の場合、光学フィルムの他の態様をできるだけ有意に劣化させない限りにおいて、できるだけ大きいMDに沿った屈折率不整合値を有することが望ましい。これらの特性は、以下に記載される第2延伸工程と同時に又はその後行われる追加の工程/プロセスにより改善することができる。
【0065】
第2延伸工程後、例えば面内(TD)方向の整合した面内屈折率の間の正規化された屈折率の差が、たとえあるとしても、約0.06未満、より好ましくは約0.03未満、最も好ましくは約0.01未満であることが一般に望ましい。同様に、代表的な光学フィルムの厚さ方向、例えば、面外(ND)方向の屈折率の間のいずれかの正規化された差が、約0.11未満、約0.09未満、約0.06未満、より好ましくは約0.03未満、最も好ましくは約0.01未満であることが望ましい可能性がある。更に、少なくとも第1の異なるポリマー材料及び第2の異なるポリマー材料を包含する代表的な実施形態では、第2延伸工程後、TD、ND、又はTD及びNDに沿った第1材料の面内屈折率及び第2材料の面内屈折率は、約0.03未満、より好ましくは約0.02未満、最も好ましくは約0.01未満、異なってもよい。他の代表的な実施形態では、これらの条件は、第1延伸工程後及び第2延伸工程後又はいずれかの追加のプロセス工程後に満たされてもよい。
【0066】
第2延伸工程では、代表的な光学フィルム304は、フィルムの第2面内軸(y又はクロスウェブ方向(TD))において並びに厚さ方向(z又は垂直方向(ND))に沿って、フィルムを収縮又は緩和させながら、フィルムの第1面内軸(x又は縦方向(MD))に沿って延伸される。これらの加工条件は、複屈折材料の屈折率が更に一軸性を得ることを可能にし、そのため、こうしたプロセスは、実質的に一軸の伸張又は延伸と呼ばれてもよい。それによって、本開示の方法は、MDに沿った有効な延伸軸を特徴とする複屈折材料を含む延伸された光学フィルムの製造を可能にし、及びTDに沿って偏光された光の屈折率とNDに沿って偏光された光の屈折率との間の正規化された差は、0.06未満である。
【0067】
一般に、実質的に一軸の延伸プロセスは、フィルムを伸張することを包含し、それは縦方向(MD)、横方向(TD)、及び垂直方向(ND)に対応する3つの互いに直交する軸に関して記載され得る。これらの軸は、図5に図解されるように、フィルムの幅、長さ、及び厚さに対応する。実質的に一軸の伸張プロセスは、フィルムの領域32を、最初の構成34から最後の構成36に伸張する。縦方向(MD)は、フィルムが伸張デバイスをそれに沿って進む一般的な方向であり、横方向(TD)は、フィルムの平面内の第2軸であり、縦方向に直交している。垂直方向(ND)は、MD、TDの両方と直交しており、一般的には、ポリマーフィルムの厚さ寸法に対応している。
【0068】
複屈折ポリマーの一軸延伸は、光学フィルム(又はフィルムの層)を提供し、その中で3つの直交する方向の内の2つの屈折率は実質的に同じである(例えば、図5に図解されるように、フィルムの幅(W)及び厚さ(T)方向)。第3の方向の(例えば、フィルムの長さ(L)方向に沿った)屈折率は、他の2つの方向の屈折率とは異なる。伸張変形は、延伸比のセット:縦方向延伸比(MDDR)、横方向延伸比(TDDR)、及び垂直方向延伸比(NDDR)として記載され得る。フィルム32に関して決定される時、特定の延伸比は一般に、所望の方向(例えばTD、MD、又はND)におけるフィルム32’の現在のサイズ(例えば長さ、幅、又は厚さ)と、その同じ方向におけるフィルム32の最初のサイズ(例えば長さ、幅、又は厚さ)との比として定義される。
【0069】
横方向の寸法の増加を伴う完全な一軸伸張条件は、図5に図解されるように、それぞれ、λ、(λ)−1/2、及び(λ)−1/2のMDDR、TDDR、及びNDDRを結果として生じる(材料の一定密度を仮定する)。換言すれば、伸張中の均一密度を仮定すると、MDに沿って一軸に延伸されるフィルムは、伸張を通じてTDDR=(MDDR)−1/2となるものである。一軸性の程度に関する有用な指標Uは、以下のように定義することができる。
【0070】
【数1】

【0071】
完全な一軸伸張については、Uは、伸張を通じて1である。Uが1未満の場合、伸張条件は「準一軸性」と見なされる。Uが1を超える場合は、伸張条件は「超一軸性」と見なされる。Uが1を超える状態は、様々なレベルの過緩和状態を表している。しかしながら、フィルムの密度が、ρの要因により変化する場合、そこでは、ρ=ρ/ρであり、ρは、伸張プロセス中の現時点での密度であり、及びρは、伸張開始時の最初の密度であり、そして予想されるように、NDDR=ρ/(TDDRMDDR)である。予想されるように、Uは、密度の変化について補正され得、次の式によりUを与える:
【0072】
【数2】

【0073】
典型的には、完全な一軸延伸が必要ではなく、最適条件からのある程度の偏位が、光学フィルムの最終用途を包含する多様な要因に依存して許容され得る。これに代わり、延伸中にわたって、又は、延伸の特定部分中に維持させるUの最小値若しくは閾値、又はUの平均値を定義することができる。例えば、Uの許容可能な最小値/閾値、又は平均値は、所望に応じて、又は特定の用途での必要性に応じて、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、又は0.95であり得る。
【0074】
許容可能な、ほぼ一軸の用途の例として、液晶ディスプレイ用途に使用される反射型偏光子のオフ角特性は、TDが主要な一軸延伸方向である時、MDとNDとの屈折率の差により強く影響を受ける。0.08というMD及びNDの指数の差異は一部の用途では許容可能である。0.04という差異もその他の用途で許容することができる。より厳密な用途では、0.02以内という差異が好ましい。例えば、多くの場合、一軸横延伸フィルム用に、ポリエチレンナフタレート(PEN)又はPENのコポリマーが含まれているポリエステル系において、波長633nmで0.02以内というMD方向とND方向の屈折指数差を実現させるためには、0.85という一軸特性度で十分である。一部のポリエステル系、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)では、実質的に一軸性ではない延伸フィルムの屈折指数の本質的差異が小さいため、0.80、更には0.75という更に低い値のUが許容可能と思われる。
【0075】
準一軸延伸では、真の一軸特性の最後の値を用いて、以下の等式によりy(TD)方向とz(ND)方向との間を整合する屈折率のレベルを推定することができる。
【0076】
Δnyz=Δnyz(U=0)×(1−U)
ここで、Δnyzは、ある値UについてのTD方向(即ちy−方向)とND方向(即ちz−方向)の屈折率の間の差であり、及びΔnyz(U=0)は、TDDRが延伸を通じて一体に保たれる場合を除き、等しく延伸されるフィルムの屈折率の差である。この相関関係は、多様な光学フィルムで用いられているポリエステル系(PEN、PET、及び、PEN又はPETのコポリマーなど)については容易に予測可能であることが分かっている。これらのポリエステル系では、Δnyz(U=0)は典型的には、2つの面内方向TD(y−軸)とMD(x−軸)との間の屈折差である、差Δnxy(U=0)の約1/2以上である。Δnxy(U=0)の典型的な値は633nmにおいて最大約0.26である。Δnyz(U=0)の典型的な値は633nmにおいて最大0.15である。例えば、90/10coPEN、即ち、約90%のPEN様繰り返し単位及び10%のPET様繰り返し単位を含むコポリマーの典型的な最大伸長値は633nmで約0.14である。実際のフィルム延伸比によって測定した場合にUの値が0.75、0.88、及び0.97であり、対応するΔnyzの値が633nmにおいて0.02、0.01、及び0.003であるこの90/10coPENが含まれているフィルムを本発明の方法に従って作製した。
【0077】
様々な方法が、第2延伸工程中にゾーン320においてフィルムを延伸するために使用され得る。例えば図6は、例えば、偏光子のような光学体中の構成要素として使用するのに好適な多層光学フィルムなどの光学フィルムを実質的に一軸伸張するためのバッチ技術を図解している。平らな最初のフィルム24は、矢印26の方向に伸張されて伸張フィルム22を製造する。フィルム22は、フィルムの2つの縁部30が、伸張プロセス後にもはや平行でないように、ネックダウンしている。フィルムの中心部分28は、最も有用な光学特性を提供する。
【0078】
他の代表的な実施形態では、長さ延伸機(LO)がまた使用されて、実質的に一軸の延伸偏光フィルムを作製する場合がある。LOは、異なる速度のローラー間の少なくとも1つのスパンにわたって、縦方向(MD)にフィルムを長手方向に延伸し、その結果、このスパン又は延伸ギャップに沿って付与される縦方向延伸速度(MDDR)は、本質的に、最終段階のロールと開始段階のロールの速度の比である。フィルムは縁部の拘束なしにローラーに自由にかかるため、フィルムは、それが延伸する時に、横方向に沿って幅がネックダウンする可能性があり、並びにフィルムの平面に垂直な方向(ND又はz方向)に沿ってキャリパーを薄くする可能性がある。
【0079】
図7Aは、LOを包含するフィルムラインの好適な実施形態の一部分を図解している。連続フィルム920は、ローラー912によって予備加熱ゾーンの中に運ばれてもよい。予備加熱ゾーンは、一揃いの加熱されたローラー913、放射加熱源914、予備加熱オーブン、又はこれらのいずれかの組み合わせを含んでもよい。予備加熱後、フィルム920は、それぞれが最初の遅いロール902と最後の速いロール906とを含む1つ以上の伸張ゾーンに運ばれる。それぞれが、延伸ギャップ940を通じた速いロール906の動作からのフィルムの引張りに抵抗するように、遅いロール902が典型的には駆動される。代表的な実施形態では、フィルム920は、延伸ギャップ940において更に加熱される。1つの典型的な加熱方法は、例えばIR加熱アセンブリ950及び/又は917によるなどの放射加熱である。
【0080】
代表的な実施形態では、ギャップ940にわたる延伸後、フィルム920は急冷される。典型的には、速いロール906は、フィルム920の急冷を少なくとも開始するように設定された冷却されたロールである。実際には、フィルム920は、速いロール906との接触の際に直ちに急冷されないが、その代わりに速いロール906の上で短い距離において更に延伸されることが見出される場合がある。1つの実施形態では、更なる延伸は、速いロール906との接触後フィルム920の約1インチにわたって起こる。更なる冷却が、例えば、追加のロール919の急冷動作を通じて続く場合がある。これらのロール919は、例えばフィルムの張力を低下し及びMDの縮みを許すために又は冷却の際の熱収縮に見合うように、速いロール906に比べて減速された速度に設定されてもよい。時には、最後の仕上げゾーン921が使用され得る。1つの実施形態では、仕上げゾーン921もまた、MD収縮を可能にするために、例えば放射ヒーターにより加熱されるが、一方でこのプロセスは、伸張する延伸ギャップの張力から分離される。
【0081】
図7B及び図7Cは、長さ延伸機スレッディングシステム900及び910の2つの実施形態の概略図である。図7Bでは、プルロール902、904、及び906は、Sラップ構成に据え付けられる。図7Cでは、プルロールは、直線の、垂直な、又は卓上の構成に据え付けられる。代表的な実施形態では、相対的な観点から、ロール902はゆっくりと回転し、ロール904は中間の速度で回転し、ロール906は素早く回転する。代表的な実施形態では、相対的な観点から、ロール902は加熱され、及びロール906は冷却される。
【0082】
長さ延伸機という用語は、ポリマー920の連続フィルム又はウェブが運ばれて、少なくとも1対のローラー間のスパン又は延伸ギャップ940において伸張されるが、その対の最終段階のロール906の直線(接線)速度が、開始段階のロール902の直線速度より速い、一連の伸張装置を包含する。フィルム径路に沿った速いロールと遅いロールとの差別的な速度の比は、スパン940にわたる縦方向の延伸比(MDDR)とおよそ等しい。
【0083】
フィルム920は、一連の予備加熱されたローラー902、904、906を通って、延伸ギャップ940、940bに運ばれる。フィルム920は、延伸ギャップ940、940bを画定する最初のローラーと最後のローラーとの間の速度差によって延伸される。典型的には、フィルム920は、ギャップ940、940bにかかる時に、例えば、赤外線で加熱されてフィルム920を軟化し、ガラス転移温度より上での延伸を促進する。図7B及び図7Cに描写される実施形態は、フィルム920の長手方向伸張ゾーン940又は940bに熱の分配を提供するために、加熱要素960を包含する加熱アセンブリ950a〜950bを用いる。
【0084】
本開示の幾つかの代表的な実施形態では、一軸フィルム920は、長さ延伸機900を使用し、大きな加熱された延伸ギャップ(L)940とフィルム幅(W)とのアスペクト比(L/W)、及び低いMD延伸比(λMD)を使用して作製され得る。所与の合計のL及び所与のλMDについて、一軸の特性、ひいてはまたクロスウェブ(TD)全体の均一性は、時には、延伸ギャップ940を、所与の望ましいλMD及び/又はWについて、2つ以上の分離セグメントに分けることにより強化され得る。複数の延伸ギャップ構成を利用する代表的な実施形態では、予備加熱後にフィルム920は、それぞれが最初の遅いロール902と最後の速いロール906を含む1つ、2つ、又はそれ以上の伸張ゾーンに運ばれる。各延伸ギャップは、遅いロール902が、延伸ギャップ940又は940bを通じた速いロール906の動作からのフィルムの引張りに抵抗するように典型的には駆動される。
【0085】
図解された実施形態では、第1の速いロールと第1の遅いロールとを有する第1延伸ギャップの後に、第2延伸ギャップ、例えば延伸ギャップ940又は940bが直列に構成され得る。第1延伸ギャップのように、その後、それぞれの、例えば第2延伸ギャップは、第2の遅いロールと第2の速いロールとを含んでもよい。幾つかの代表的な実施形態では、第1の速いロールは、第2の遅いロールと同じロールであってもよい。幾つかの構成では、孤立的なローラーが、第1及び第2延伸ギャップの間に介在することになる。
【0086】
光学フィルムの実質的に一軸延伸の様々な他の態様は、例えば同一所有者の米国特許第6,939,499号;第6,916,440号;第6,949,212号;及び第6,936,209号;並びに3M整理番号(3M Docket No.)61869US002、題名「長さ延伸機を使用する改善された均一性のためのプロセス(Processes For Improved Uniformity Using A Length Orienter)」、及び61868US002、題名「改善された一軸特性及び均一性のための複数の延伸ギャップの長さ延伸プロセス(Multiple Draw Gap Length Orientation Process For Improved Uniaxial Character and Uniformity)」(本明細書と共に同日付で出願され及び本開示と一致する範囲において本明細書に参考として組み込まれる)に記載されている。
【0087】
第2セットの加工条件の正確な詳細は、光学フィルム304に使用されるために選択された材料によって大きく変更されてもよいが、第2セットの加工条件は、典型的に第1セットの加工条件より低い温度を包含し、より大きい延伸速度及び/又は延伸比を包含してもよい。例えば、図1に示したような層状の光学フィルムでは、高屈折率材料としてのPEN及び低屈折率材料としてのcoPENに対して、第2延伸工程で使用される温度範囲は、光学フィルムのポリマー材料のガラス転移温度より約10℃低い温度からガラス転移温度より約60℃高い温度までであるべきである。反射型偏光子を製造するため、例えば、第2延伸工程後、例えば面内(TD)方向の整合した屈折率の差が、たとえあるとしても、約0.05未満、より好ましくは約0.02未満、最も好ましくは約0.01未満であることが一般に望ましい。例えば面内(MD)方向の不整合方向では、屈折率の差が、少なくとも約0.06、より好ましくは約0.09を超え、更により好ましくは約0.11を超えることが一般に望ましい。より一般的には、光学フィルムの他の態様を劣化しない限りできるだけ大きくこの差を有することが望ましい。
【0088】
幾つかの代表的な実施形態では、装置300での第2延伸工程を完了後、フィルム304は、特定用途について所望されるような追加の工程により加工されてもよい。第2若しくは追加の工程は、同じプロセスラインに沿ってLO上で行われる延伸工程であってもよいし、又はフィルムは、プロセスライン300から取り除かれて、異なるプロセスラインに移動され、LO若しくはロールツーロールプロセスを使用する別の加工装置に導入されてもよい。所望の場合、フィルムの複屈折は、第2又は追加の工程で変更されてもよい。第2及び/又は追加の延伸工程後、フィルム、又はその上に配置されるいずれかの層若しくはフィルムは、所望によりコロナ処理、プライマーコーティング又は乾燥工程のいずれか又はすべてをいずれかの順序で適用することにより光学処理され、例えば、後続するラミネート加工工程のためその表面特性を強化してもよい。
【0089】
第2延伸工程の前又は後で、フィルム、又はその上に配置されるいずれかの層若しくはフィルムは、所望によりコロナ処理、プライマーコーティング又は乾燥工程のいずれか又はすべてをいずれかの順序で適用することにより光学処理され、後続するラミネート加工工程のためその表面特性を強化することが可能である。
【0090】
上記実施形態に記載された各種延伸プロセスに対して特定の順序が例示されているが、順序は、説明を容易にするために使用されており、限定することを意図するものではない。ある例では、プロセスの順序は、後続して行われるプロセスが、前に行われたプロセスに悪影響を及ぼさない限り変更する又は同時に行うことができる。例えば、上記したように光学フィルムは、同時に両方向に延伸されてもよい。フィルムが同時に両方の面内軸に沿って延伸される場合、延伸温度は、フィルムの材料について同じになる。しかし、延伸比及び速度は、別々に制御されてもよい。例えば、フィルムは、MDに比較的早く、TDに比較的遅く延伸されてもよい。
【0091】
同時2軸延伸の材料、並びに延伸比及び速度は、第1延伸軸に沿った延伸(例えば、素早い延伸)が、第1延伸軸に沿って1つ又は両方の材料を光学的に延伸し、一方、他の方向の延伸(例えば、遅い延伸)が、第2延伸軸に沿って2つの材料の1つを延伸しない(又は非光学的に延伸する)ように好適に選択されてもよい。したがって、それぞれの方向の延伸に対する2つの材料の応答は、独立して制御されてもよい。
【0092】
本開示の代表的な方法は、好ましくは第2延伸工程後に行われる、ヒートセッティング又はアニーリング工程を更に包含することが可能である。本開示の代表的な実施形態と共に使用するのに好適なヒートセッティングプロセスは、例えば同一所有者の米国特許出願11/397,992、題名「ヒートセッティング光学フィルム(Heat Setting Optical Films)」(2006年4月5日出願)に記載されており、その開示は本明細書に参考として組み込まれる。
【0093】
上記で参照された出願の中で説明されるように、伸張直後にny及びnzに著しい差を有する従来の一方向伸張材料のヒートセット挙動とは対照的に、ny及びnzの差を最小化するためにy及びz方向の収縮を許容する実質的に一軸の伸張フィルムのヒートセッティングは、全く異なる効果を有する。実質的に一軸の伸張プロセス後のヒートセッティングは、これらのフィルムに既存する屈折率の何らかの小さい非対称を維持するか又は低減する。このようにして、y及びz方向の屈折率がより等しくなるほど、望ましくない色の効果に関する問題は生じにくくなる。
【0094】
以下に記載されるヒートセッティング手順は、例えば、多層光学フィルム(MOF)のような光学フィルムの実質的に一軸の伸張を提供するいずれかのプロセス後に適用されてもよい。本開示に記載されるヒートセッティング手順は、1つ以上のポリエステル層を包含する実質的に一軸の伸張フィルムについて特に有用である。
【0095】
本開示の目的上、ヒートセットという用語は、本開示の代表的なフィルム、例えば、101、111、201、又は400が延伸後に加熱されて、フィルム特性、例えば結晶成長、寸法安定性、及び/又は全体的な光学性能を強化する加熱プロトコルを指す。ヒートセッティングは、温度及び時間の両方の関数であり、並びに、例えば、商業的に有用なライン速度及びフィルムの熱伝達特性、加えて最終製品の光学的透明度などの要因が考慮されなければならない。代表的な実施形態では、ヒートセッティングプロセスは、フィルムをその少なくとも1つのポリマー構成成分のガラス転移温度(Tg)の上まで、好ましくはそのすべてのポリマー構成成分のTgの上まで加熱することを伴う。代表的なポリマー材料には、PEN、PET、coPEN、ポリプロピレン、及びシンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。ヒートセッティングプロセスの1つの実施形態では、フィルムは、フィルムの伸張温度の上まで加熱されるが、これは必要ではない。別の実施形態では、ヒートセッティングプロセスでは、フィルムは、Tgとフィルムの融点との間の温度まで加熱される。
【0096】
一般に、系の動力学と熱力学とのバランスから結果として生じる結晶化速度のための最適温度が存在する。この温度は、ヒートセット時間の最短化が第一の検討事項である時には、有用である。様々な製品とプロセスの検討事項との間の最良のバランスを見つけるための条件調整の典型的開始点は、Tgとフィルムの融点との間のおよそ中間である。例えば、PET及びPENについてのガラス転移温度は、乾燥条件下で、それぞれ、およそ80℃及び120℃である。PET及びPENの中間体組成物のコポリマー(いわゆる「coPEN」)のガラス転移温度は、ホモポリマーのガラス転移温度の中間である。融点は、物理的結晶中のそれらのサイズ及び拘束による欠陥の範囲に応じた温度範囲を網羅する。PET及びPENの融点のおよその推定は、PETについては約260℃、及びPENについては約270℃である。いわゆるcoPENの融点は典型的には、ホモポリマーの融点より低く、例えば示差走査熱量計(DSC)により近似的に測定できる。
【0097】
したがって、PET及びPENのヒートセッティングのための開始点の範囲は、例えば約170〜195℃である。実際のプロセスの設定点は、所与のプロセス内の滞留時間及び熱伝達に依存する。滞留時間は、約1秒〜約10分までの範囲であってもよく、プロセス条件だけでなく所望の最終結果、例えば他の特性を所与として、結晶化度の量、層間剥離への耐性の増加、及びヘイズの最適化にも依存する。滞留時間を最短化することは、設備サイズの最小化などの検討事項のために多くの場合有用である。より高い温度は、ある程度の結晶化度を達成するために必要な時間を減少する場合がある。しかしながら、より高い温度はまた、不完全な結晶構造の融解を生じる場合があり、これは次にはより大きい構造に再形成する場合がある。これは幾つかの用途において不必要なヘイズを生成する場合がある。
【0098】
本開示による光学フィルムのヒートセッティングは、その後に急冷されてもよい。フィルムは、すべての構成成分がそれらのガラス転移温度未満の温度レベルに達した時に急冷される。幾つかの他の実施形態では、急冷は伸張装置の外側で行われる。
【0099】
幾つかの代表的な実施形態では、本開示によるフィルムの最終製品への直接変換は、フィルムが300のような伸張装置から取り除かれてロール形態に保管された後に起こる。1つの実施例では、フィルムは巻き戻され及び任意の追加の加熱ユニットに移動されてもよい。追加の加熱ユニットでは、フィルムはしわを防ぐために必要に応じて張力下で把持され及び設置されることが可能であるこのプロセスは典型的には、第2延伸工程中に適用される元の伸張温度未満の温度で起こる。追加の加熱ユニットは、単にオーブンであってもよく、そこではフィルムがその特性を強化するためにロール又はシート形態で設置されてもよい。フィルムは、少なくとも1つのフィルム構成成分のTg未満、好ましくはすべてのフィルム構成成分のTg未満の温度に加熱されてもよい。第2のヒートセッティング又はソーキング工程は、防縮性又は耐クリープ性のような所望のフィルム特性が実現されるまで、例えば数時間又は数日間のような長時間続く場合がある。例えばPETについてのヒートソークは典型的には、約50〜75℃で数時間から数日間まで行われるが、一方PENについてのヒートソークは典型的には、約60〜115℃で数時間から数日間まで行われる。ヒートソーキングはまた、一部が幾つかの、後加工活動において実現され得る。例えば、フィルムはコーティングされ及び乾燥されてもよいし、又は幾らかのヒートソーキング効果によりオーブン中で硬化されてもよい。
【0100】
追加のヒートセッティング工程の後、フィルムは、任意に追加の急冷及び/又はセットゾーンに移動されてもよい。第2の急冷及び/又はセットゾーンでは、縮み及び反りを制御するために、フィルムは張力下に設置されてもよいし及び/又は収束レールに沿って内向きになってもよい。任意の第2の急冷及び/又はセットゾーン後、フィルムは再び巻かれてもよい。
【0101】
本開示はまた、光学フィルムの一軸延伸を増加する方法を対象としている。代表的な方法は、最初の幅寸法及び方向を有する延伸フィルムを提供することと;延伸フィルムを幅方向には拘束しないが、延伸フィルムを、幅方向に実質的に垂直な方向に拘束することと;延伸フィルムを、その少なくとも1つの構成成分のガラス転移温度の上に加熱して、最初の幅の減少を可能にすることとを包含する。
【0102】
1つの代表的な実施形態では、少なくとも幾つかのPET様若しくはPEN様の部分、例えば鎖軸に沿ったテレフタレート又はナフタレート系サブユニットを有するポリエステル又はコポリエステルを含む光学フィルムが、1つの面内方向にフィルムを延伸し、一方で垂直面内方向の幅を維持又は減少させて、少なくとも1つのポリエステル複屈折を作製し、その結果、延伸方向に沿って偏光される光の屈折率が、更なる加熱工程における幅の減少を可能にする臨界値未満であるようにすることにより、形成される。
【0103】
フィルムがMDに沿って延伸される場合、幅はTD方向であり、かつ逆もまた同様である。代表的な実施形態では、光学フィルムは、2つの異なる材料の交互の層を有する多層フィルム、異なる材料の3つ以上の層を少なくとも何らかの種類の繰り返しパターンで有する多層光学フィルム、連続ポリエステル相を有する連続/分散ブレンド若しくは共連続ブレンド、又はこれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。こうしたポリエステルの特に有用な例には、PET、PEN、及びPETとPENとの間の中間体化学組成物のランダム又はブロックコポリマーであるcoPENが挙げられる。
【0104】
延伸の際に幅の減少を可能にする延伸条件は、加工温度履歴、ひずみ速度履歴、延伸比、分子量(又は樹脂のIV)などに依存する。典型的には、フィルムが、ひずみ誘起結晶化を開始するために十分であるが、高レベルの結晶化度を生じるほどではなく延伸されることが望ましい。ガラス転移温度近くの代表的な有効な延伸については、延伸比は、典型的には4未満、より典型的には3.5未満、又は更には3.0以下である。典型的な温度は、0.1秒(0. s1ec)−1以上の典型的な最初の延伸速度については、ガラス転移温度を超える10℃以内である。より高い温度については、より速い速度が典型的には使用されて有効な延伸の同じレベルを維持する。あるいは、より高い延伸比が許容される場合がある。連続相での延伸の関数としてのフィルムの幅減少のレベルはまた、分散相又は共連続相の程度及び性質により変更される場合がある。
【0105】
延伸のレベルを決定するための別の方法は、結果として生じる延伸の屈折率の有効性を測定することである。所与のポリエステル樹脂について臨界延伸率を超えると、幅の減少は僅かになり、例えば10%未満になる。この臨界延伸率未満では、十分な時間、加熱、及び拘束の緩和が与えられれば、有意な幅の減少がその後の工程において起こり得る。多くの場合、幅の減少工程により、相対的な複屈折もまた減少され得る。90%PEN様部分及び10%PET様部分を含むcoPENについては、632.8nmにおける臨界延伸率は、1.77〜1.81である。最良推定値は約1.78である。PENについての臨界延伸率は、1.79未満であり、おそらく90/10coPENについての値と同様である。PETについてのおよその推定値は、1.65〜1.68である。第1の近似として、coPENの値は、coPENの化学組成が次第にPENに近づくにつれてPET値からPEN値までおよそ増加すると推定され得る。しかしながら、所与の延伸率における結晶化度のレベルが、構造的再配列の能力に影響する場合があるため、coPENの臨界率の値は、coPEN90/10と純粋なPENの推定値との間の比較から示されてもよいように、これらの第1の近似より高い場合があると予想することが可能である。一般に臨界値は、Lが延伸方向に沿っている場合に大きいL/W比を提供するように組み込まれた、率の測定値を有する延伸試料をヒートセッティングして、ヒートセッティング後の横延伸(cross-draw)幅の減少を観測することにより見出すことができる。最後に、臨界値は、融点近くの温度でのヒートセッティングによるなど温度の激しい変化によって変化する場合があることに留意すべきである。
【0106】
L.O.は、伸張方向(L.O.の場合にはMDDR)に沿って適度に均一の延伸比を維持しながら、こうした延伸条件を実現する際に特に有用であり得る。例えば、テンター又はバッチ伸張デバイスの中で延伸される時、横延伸(Cross-drawn)フィルムは、クロスウェブ温度の変動などにより、伸張方向(これらの場合にはTDDR)に沿って、延伸比の不均一性がより大きくなり易く、ひいては製品の不均一性がより大きくなりやすい場合がある。したがって、特に有用なプロセスは、L.O.を使用して、幅減少の前に少なくとも最初の延伸工程を提供する。
【0107】
幅減少工程は、フィルムが、第1延伸工程の方向に垂直なその幅全域を引き込むことができるような方式で達成される。幅減少工程が、L.O.の延伸ギャップにわたって達成される時、L/W比は、幅減少の程度及び均一性を制御する際に重要である。少なくとも1のL/W比が典型的には望ましい。5、10、又はそれ以上の値が使用できる。むら及びしわを最小化するために所望の幅減少を実現する、最小の許容可能なL/Wを使用することは有用である可能性がある。温度及び時間は、好ましくは、プロセス工程においてひずみの反動を許すために十分な量及び程度である。幅減少工程のための典型的条件は、フィルムを、構造物中の各連続相材料のガラス転移温度を超えて少なくとも1秒間加熱することを含む。より典型的には、加熱は、少なくとも延伸工程の平均温度までであり、少なくとも延伸工程を達成するために使用される時間の間である。他の場合には、フィルムの温度は、1、5、15、30秒又はそれ以上の間、構造物中の各連続相材料のガラス転移温度15℃を上回る。
【0108】
幅減少工程は、第1延伸工程中の平らでないネックダウンにより厚さの水平化を結果として生じてもよい。同様に、フィルムの幅の全域での横幅延伸比(例えばMDに沿ったフィルム延伸についてのTDDR)のより一貫した分布、並びに更に一貫した程度のフィルム全域での一軸特性が実現されてもよい。この方式で、より均一なフィルムが形成され得る。したがって、1つの実施形態では、本開示は、伸張方向に関わらず、幅減少及び改善された一軸特性をもたらすために、追加のヒートセッティングを有する低延伸比プロセスを記載する。
【0109】
幅減少工程はまた、ヘイズレベルの増加を結果として生じる場合がある。一般に、臨界率に近づくほど、ヘイズの増加は小さくなる。幾つかの用途では、相対的複屈折のその減少を伴う熱処理のレベルは、所与の光学用途に向けて形成されたフィルムの使用に応じたへイズの増加とバランスを取ることができる。
【0110】
第2若しくは第3の、又は幾つかの実施形態では、いずれかの数の好適な追加工程の後に、延伸された光学フィルムが多種多様な材料にラミネートされるか、ないしは別の方法で組み合わされて、様々な光学構造物を作成してもよく、その幾つかは、LCDのようなディスプレイ装置に有用である場合がある。本開示の延伸された光学フィルム又は本開示による延伸された光学フィルムを包含するいずれかの好適なラミネート構造物は、ロール形態で有益に提供され得る。
【0111】
例えば、上記偏光フィルムはいずれも、商標表記BEFとしてミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社(3M Company)から入手可能なものなどの構造化された表面フィルムをラミネートないしは別の方法でその上に配置していてもよい。1つの実施形態では、構造化された表面フィルムは、実質的に平行な線状プリズム型構造体又は溝の配列を包含する。幾つかの代表的な実施形態では、光学フィルム304は、実質的に平行の線状プリズム型構造体又は溝の配列を包含する構造化された表面フィルムにラミネートされてもよい。溝は、ダウンウェブ(MD)方向に沿って(及び反射型偏光子の場合、有効な延伸軸又はブロック軸に沿って)そろえられてもよく、又は溝は、クロスウェブ(TD)方向に沿って(及び反射型偏光子フィルムの透過又は通過軸に沿って)そろえられてもよい。他の代表的な実施形態では、代表的な構造化された表面フィルムの溝は、本開示による延伸された光学フィルムの有効な延伸軸に対して別の角度で延伸されてもよい。
【0112】
当業者は、構造化された表面が、すべての他の種類の構造体、粗い表面又はマット表面を包含してもよいことを直ちに認識するであろう。この種の代表的な実施形態は、硬化性材料を本開示の光学フィルムにコーティングし、この硬化性材料の層に表面構造を付与し、硬化性材料の層を硬化する追加の工程を含むことによってももたらされ得る。
【0113】
本明細書に記載されたプロセスにより作製される代表的な反射型偏光子は、ダウンウェブ(MD)方向に沿ったブロック軸を有するため、反射型偏光子は、いずれかの長さの延伸偏光フィルムに単にロールツーロールでラミネートされてもよい。他の代表的な実施形態では、フィルムは、第2延伸工程前に二色性染料材料又はPVA含有層などの吸収型偏光子材料の層と共押出されてもよく、又はこれらの層でコーティングされてもよい。
【0114】
図8は、光学フィルム構造物400を図解し、方向405に沿ったブロック軸を有する反射型偏光子などの第1光学フィルム401が第2光学フィルム403と組み合わされている。第2光学フィルム403は、例えば方向404に沿ったブロック軸を有する吸収型偏光子などの別の種類の光学又は非光学フィルムであってもよい。
【0115】
図8に示した構造物では、反射型偏光フィルム401のブロック軸405は、できるだけ正確にダイクロイック偏光フィルム403のブロック軸404とそろえられ、例えば、輝度強化偏光子のような特定の用途に対して許容できる性能をもたらさなければならない。反射型偏光フィルムの通過又は透過軸は、406として示されている。軸404及び405の誤整列が増すとラミネート構造物400によりもたらされる利得を減少させ、ラミネート構造物400の幾つかのディスプレイ用途に対する有用性を減少させる。例えば、輝度強化偏光子の場合、構造物400のブロック軸404とブロック405との間の角度は、約±10°未満、より好ましくは約±5°未満、より好ましくは約±3°未満とすべきである。
【0116】
図9Aに示した実施形態では、ラミネート構造物500は、吸収型偏光フィルム502を包含する。この代表的な実施形態では、吸収型偏光フィルムは、第1保護層503を包含する。保護層503は、予定された用途により大きく変えられてもよいが、典型的に溶媒キャストセルローストリアセテート(TAC)フィルムを包含する。代表的な構造物500は、更に第2保護層505並びにヨウ素染色ポリビニルアルコール(I/PVA)などの吸収型偏光子層504を包含する。他の代表的な実施形態では、偏光フィルムは、1つだけ保護層を含むか、又は保護層を包含しなくてもよい。吸収型偏光フィルム502は、例えば、接着層508により(本明細書でMDブロック軸を有して記載されるような)光学フィルム反射型偏光子506にラミネートないしは別の方法で固着あるいは配置される。
【0117】
いずれかの好適な吸収型偏光材料が、本開示の吸収型偏光フィルムに使用されてもよい。例えば、ヨウ素染色ポリビニルアルコール(I/PVA)系偏光子に加えて、本開示は、ポリビニリデン系光偏光子(KE型偏光子と呼ばれ、更に米国特許番号第5,973,834号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる)、ヨウ素系偏光子、染色PVOH偏光子及び他の好適な吸収型偏光子にも及ぶ。
【0118】
図9Bは、光学ディスプレイの代表的な偏光子補償構造体510を示し、ラミネート構造物500は、接着剤512、典型的には感圧性接着剤(PSA)により、例えば補償フィルム又は位相差フィルムなどの任意の複屈折フィルム514に固着されている。補償構造体510では、保護層503及び505のいずれかが、所望により補償器又は位相差板などの、補償フィルム514と同じ又は異なる複屈折フィルムと置き換えられてもよい。このような光学フィルムは、光学ディスプレイ530に使用されてもよい。そのような構成では、補償フィルム514は、接着層516を介して第1ガラス層522、第2ガラス層524及び液晶層526を包含するLCDパネル520に接着されてもよい。
【0119】
図10Aについて参照すると、別の代表的なラミネート構造物600が示されており、それは、単一保護層603及び吸収型偏光層604、例えばI/PVA層を有する吸収型偏光フィルム602を包含する。吸収型偏光フィルム602は、例えば接着層608によりMD偏光軸光学フィルム反射型偏光子606に固着されている。この代表的な実施形態では、吸収型偏光子のブロック軸も、MDに沿っている。吸収型偏光子層604に隣接した保護層のいずれか一方又は両方を除去することで、例えば厚さの減少、材料コストの削減、及び環境負荷の削減(溶媒キャストTAC層は必要ない)を包含する多くの利点をもたらすことができる。
【0120】
図10Bは、光学ディスプレイの偏光子補償構造体610を示し、ラミネート構造物600が接着剤612により、例えば補償フィルム又は位相差フィルムなどの任意の複屈折フィルム614に固着されている。補償構造体610では、保護層603は、所望により補償フィルム614と同じ又は異なる複屈折フィルムと置き換えられてもよい。このような光学フィルムが、光学ディスプレイ630に使用されてもよい。そのような構成では、複屈折フィルム614は、接着層616を介して第1ガラス層622、第2ガラス層624及び液晶層626を包含するLCDパネル620に接着されてもよい。
【0121】
図10Cは、光学ディスプレイの別の代表的な偏光子補償構造体650を示す。補償構造体650は、単一保護層653及び吸収型偏光子層654、例えばI/PVA層を有する吸収型偏光フィルム652を包含する。吸収型偏光フィルム652は、例えば接着層658によりMDブロック軸反射型偏光子656に固着されている。補償構造体650では、保護層653は、所望により補償又は位相差フィルムと置き換えられてもよい。光学ディスプレイ682を形成するため、吸収型偏光子層654は、接着層666を介して第1ガラス層672、第2ガラス層674及び液晶層676を包含するLCDパネル670に接着されてもよい。
【0122】
図11は、光学ディスプレイの別の代表的な偏光子補償構造体700を示し、吸収型偏光フィルムは、いずれの隣接した保護層も有さない吸収型偏光子材料(例えば、I/PVA)層704の単一層を包含する。層704の1つの主要な表面が、MDブロック軸光学フィルム反射型偏光子706に固着され、その結果、吸収型偏光子のブロック軸も、MDに沿う。固着は、接着層708により達成されてもよい。層704の対向する表面が、接着剤712により、例えば補償フィルム又は位相差フィルムなどの選択が自由な複屈折フィルム714に固着される。このような光学フィルムは、光学ディスプレイ730に使用されてもよい。そのような構成では、複屈折フィルム714は、接着層716を介して第1ガラス層722、第2ガラス層724及び液晶層726を包含するLCDパネル720に接着されてもよい。
【0123】
上記図8〜図11の接着層は、予定した用途により大きく変えることが可能であるが、感圧性接着剤及びPVAが添加されたHO溶液は、I/PVA層を反射型偏光子に直接接着するのに好適であると予想される。例えば、空気コロナ、窒素コロナ、他のコロナ、火焔又はコーティングされたプライマー層などの従来の技術を使用した選択が自由な表面処理も、単独で又は接着剤と組み合わせて反射型偏光子フィルム及び吸収型偏光子フィルムのいずれか若しくは両方に使用され、層間の固着強度をもたらし又は強化する。こうした表面処理は、第1延伸工程及び第2延伸工程に合わせてもたらされ又は別の工程が考慮されてもよく、第1延伸工程の前、第2延伸工程の前、第1延伸工程及び第2延伸工程の後又はいずれかの追加の延伸工程の後であってもよい。他の代表的な実施形態では、吸収型偏光子材料の層は、本開示の代表的な光学フィルムと共押出されてもよい。
【0124】
以下の実施例は、本開示の異なる実施形態による代表的な材料及び加工条件を包含する。実施例は、開示を限定することを意図するものではなく、むしろ発明の理解を容易にするために提供され、並びに様々な上記実施形態に従って使用して特に適切である材料の例を提供する。当業者は、図8〜図11に示した代表的な実施形態が、本開示の趣旨と矛盾しないいずれの方法で修正されてもよいことを容易に理解するであろう。例えば、層若しくはフィルムのいずれかの好適な数又は組み合わせが本開示の代表的な実施形態に使用されてもよい。
【実施例】
【0125】
以下の実施例では、具体的な材料に適するように試料を10〜60秒間伸張するため加熱した。最も典型的な加熱時間は、30〜50秒であった。第1延伸工程では、フィルムを1秒当たり10〜60%だけ、より典型的には1秒当たり20〜50%だけ伸張した。第2延伸工程では、フィルムを1秒当たり40〜150%だけ、より典型的には1秒当たり60〜100%だけ伸張した。用語「最初」及び「最後」は、それぞれ第1延伸工程及び第2延伸工程を指すために使用される。
【0126】
(実施例1)
単層PENキャストフィルムが、以下の表1に記載される3組の加工条件によって伸張された。
【0127】
【表1】

【0128】
試料A及びBを作製するために使用されたプロセスは緩和工程を包含し、並びに試料Bを作製するために使用されたプロセスはまたアニーリング工程を包含した。試料Cを作製するために使用されたプロセスは、緩和工程又はアニール工程を包含しないが、より低いMDの第2延伸工程を包含した。試料A〜Cが、多層光学フィルムの光学層又は拡散反射型偏光フィルムの構成要素として使用される場合、これらの代表的なプロセスのいずれも、反射型偏光子を生成するために使用できると考えられている。
【0129】
(実施例2)
単層LmPEN(95:5 PEN/PET)キャストフィルムが、以下の表2に記載される加工条件によって伸張された。
【0130】
【表2】

【0131】
試料D、E、G、及びHを作製するために使用されたプロセスは、緩和工程を包含した。上記参照層が、多層光学フィルムの光学層として又は拡散反射型偏光フィルムの構成要素として使用される場合、これらのプロセスのいずれをも、反射型偏光子を生成するために使用できると考えられている。アニーリングは、試料D及びHについてのnMDを増加した。試料F、I、及びJを作製するために使用されたプロセスは、緩和工程を包含しなかった。試料Fは、ΔnMD−nTDとΔnTD−nZDとの間に比較的小さい差を有する。試料I及びJは、より低いΔnTD−nZDを有し、ひいてはそれらが反射型偏光子内にあった場合、他の試料と比べてより低いオフ角の色を有することになる。
【0132】
(実施例3)
単層LmPEN(90:10 PEN/PET)キャストフィルムが、以下の表3に記載される加工条件によって伸張された。
【0133】
【表3】

【0134】
試料K、L、N、R、Tを作製するために使用されたプロセスは緩和工程を包含した。上記参照層が、多層光学フィルムの光学層として又は拡散反射型偏光フィルムの構成要素として使用される場合、これらのプロセスのいずれをも、反射型偏光子を生成するために使用できると考えられている。アニーリングは、試料KについてのnMDを増加した。試料M及びSを作製するために使用されたプロセスは緩和工程を包含しなかった。試料Mでは、ΔnMD−nTDとΔnTD−nZDとの間の差は比較的小さかった。試料N、特にR、及びTは、より低いΔnTD−nZDを有し、ひいてはそれらが反射型偏光子内にあった場合、他の試料と比べてより低いオフ角の色を有することになる。
【0135】
(実施例4)
単層LmPEN(60:40 PEN/PET)キャストフィルムが、以下の表4に記載される加工条件によって伸張された。
【0136】
【表4】

【0137】
試料U及びVを作製するために使用されたプロセスは緩和工程を包含したが、試料Wを作成するために使用されたプロセスは包含しなかった。試料Uは、より低いΔnTD−nZDを有し、ひいてはそれが反射型偏光子内にあった場合、他の試料と比べてより低いオフ角の色を有することになる。上記参照層が、多層光学フィルムの光学層として又は拡散反射型偏光フィルムの構成要素として使用される場合、これらのプロセスのいずれをも、反射型偏光子を生成するために使用できると考えられている。
【0138】
(実施例5)
単層LmPEN(30:70 PEN/PET)キャストフィルムが、以下の表5に記載される加工条件によって伸張された。
【0139】
【表5】

【0140】
試料Xを作製するために使用されたプロセスは緩和工程を包含したが、試料Y及びZを作成するために使用されたプロセスは包含しなかった。上記参照層が、多層光学フィルムの光学層として又は拡散反射型偏光フィルムの構成要素として使用される場合、これらのプロセスのいずれをも、反射型偏光子を生成するために使用できると考えられている。
【0141】
(実施例6)
PEN:PETの重量比90:10を有する(LmPEN)高屈折率光学体(HIO)層、及びポリエステル/ポリカーボネート合金の低屈折率光学体(LIO)層(テネシー州キングズポート(Kingsport)のイーストマンケミカル(Eastman Chemical)から取引表記サハラ(Sahara)SA 115により入手可能)を有する多層フィルムが調製された。フィルムは、以下の表6に概説される条件下で伸張された。
【0142】
【表6】

【0143】
(実施例7)
PEN:PETの重量比90:10を有する(LmPEN)高屈折率光学体(HIO)層、及びPEN:PETの重量比55:45を有するCoPENの低屈折率光学体(LIO)層を有する多層フィルムが調製された。フィルムは、以下の表7に概説される条件下で同時に2軸伸張された。
【0144】
【表7】

【0145】
(実施例8)
PENフィルム、並びにPEN:PETの90:10重量比を有するフィルム(LmPEN)が、以下の表8に概説される条件下で、TDにおいて第1延伸工程で、その後MDにおいて第2延伸工程で、順番に伸張された。これらの加工工程から結果として生じるフィルム特性もまた表8に示される。
【0146】
【表8】

【0147】
(実施例9)
表6でRP−A及び表7でRP−4と表記される多層フィルムが、追加の構造化された表面層又は90/50パターンでプリズム溝を有するフィルムによりラミネートされた。構造化された表面層又はフィルムは、多層の反射型偏光子のブロック方向又は軸(MD)に対して0及び90°でラミネートされて、有効な透過率は、表9に表示されるように測定された。
【0148】
【表9】

【0149】
本明細書で参照又は引用されるすべての特許、特許出願、仮出願、及び公報は、本明細書が明白に教示することと矛盾しない範囲で、全図及び表を包含するそのすべてが参照として組み込まれる。
【0150】
本明細書に記載される実施例及び実施形態は、単に例示することが目的であり、その様々な変更又は変形が当業者に提示され、本出願の趣旨及び範囲内に包含されることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムを作製する方法であって、
少なくとも1つのポリマー材料を含むフィルムを提供する工程と、
第1延伸工程において、第1セットの加工条件下で、前記フィルムをクロスウェブ(TD)方向に沿って拡幅し、前記フィルム中に生じる複屈折がたとえあるとしても低いようにする工程と、
第2延伸工程において、第2セットの加工条件下で、前記フィルムを前記クロスウェブ(TD)方向に沿って緩和させながら、前記フィルムをダウンウェブ(MD)方向に沿って延伸する工程と、を含み、前記第2セットの加工条件が、前記ポリマー材料中に面内複屈折及び前記MDに沿って有効配向軸をもたらす、光学フィルムを作製する方法。
【請求項2】
前記第1加工条件下の前記フィルムの温度が、前記第2加工条件下の前記フィルムの温度より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1延伸工程の前記フィルムの前記温度が、前記ポリマーのガラス転移温度より20〜100℃高く、前記第2延伸工程の前記フィルムの前記温度が、前記ポリマーの前記ガラス転移温度より10℃低い温度から前記ポリマーの前記ガラス転移温度より40℃高い温度までにある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルムが、前記第2延伸工程後に0.3mを超える幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1延伸工程で生じた複屈折が、0.05未満であり、前記第2延伸工程で生じた複屈折が、少なくとも0.06である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2延伸工程後に前記フィルムをアニールすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
光学フィルムを作製する方法であって、
少なくとも第1ポリマー材料と第2ポリマー材料とを含むフィルムを提供することと、
第1延伸工程において、第1セットの加工条件下で、前記フィルムをクロスウェブ(TD)方向に沿って延伸して前記フィルムを拡幅し、前記第1及び第2ポリマー材料中に前記TD方向に沿って低い複屈折が生じるようにすることと、
第2延伸工程において、第2セットの加工条件下で、前記フィルムを前記クロスウェブ(TD)方向に沿って緩和させながら、前記フィルムをダウンウェブ(MD)方向に沿って延伸し、前記第1及び第2ポリマー材料の少なくとも1つの中に面内複屈折、並びに前記MDに沿って有効配向軸を生じさせることと、を含む、光学フィルムを作製する方法。
【請求項8】
前記第1加工条件下の前記フィルムの温度が、前記第2加工条件下の前記フィルムの温度より高い、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1延伸工程での前記フィルムの前記温度が、前記第1及び第2ポリマーの前記少なくとも1つのガラス転移温度より20〜100℃高く、前記第2延伸工程の前記フィルムの前記温度が、前記第1及び第2ポリマーの少なくとも1つの前記ガラス転移温度より10℃低い温度から前記第1及び第2ポリマーの少なくとも1つの前記ガラス転移温度より40℃高い温度までにある、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルムが、前記第1延伸工程において前記MD方向に沿って伸張される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
第3延伸工程において、第3セットの加工条件下で、前記ダウンウェブ(MD)方向に沿って前記フィルムを延伸することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1延伸工程で生じる複屈折が、0.05未満であり、及び前記第2延伸工程で生じる複屈折が、少なくとも0.06である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルムが、吸収偏光子材料を含んでなる層を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記フィルムが、前記第1及び第2延伸工程後、反射偏光子フィルムである、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記第2延伸工程後に前記フィルムをアニールすることを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
光学フィルムを作製する方法であって、
少なくとも第1ポリマー材料と第2ポリマー材料とを含む第1フィルムを提供することと、
第1延伸工程において、第1セットの加工条件下で、前記第1フィルムをクロスウェブ(TD)方向に沿って延伸して前記第1フィルムを拡幅し、前記第1及び第2ポリマー材料中に前記TD方向に沿って低い面内複屈折が生じるようにすることと、
第2延伸工程において、第2セットの加工条件下で、前記フィルムを前記クロスウェブ(TD)方向に沿って緩和させながら、前記第1フィルムをダウンウェブ(MD)方向に沿って延伸し、前記第1及び第2ポリマー材料の少なくとも1つの中に面内複屈折を生じるさせることと、
第2フィルムを前記第1光学フィルムに取り付けることと、を含む、光学フィルムを作製する方法。
【請求項17】
前記第2フィルムが、前記第1及び第2延伸工程の後で前記第1フィルムに取り付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2フィルムが、構造化表面フィルム、位相差フィルム、吸収偏光フィルム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第2フィルムを前記第1フィルムに取り付けることが、前記第1フィルムと前記第2フィルムとの間に接着剤を配置することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第2フィルムが、前記第1フィルム上にコーティングされる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第2フィルムが硬化性材料を含み、前記第2フィルムを取り付けることが、前記硬化性材料を構造化することと、前記硬化性材料を硬化させて前記第1フィルム上に構造化表面を形成することと、を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第2フィルムを前記第1光学フィルムに取り付ける前に、前記第1フィルムに表面処理を適用することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記表面処理が、コロナ処理、乾燥、プライマーの適用、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1フィルムが、前記第1及び第2延伸工程後、反射偏光子フィルムである、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記第2延伸工程後に前記フィルムをアニールすることを更に含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−506213(P2010−506213A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531528(P2009−531528)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/079400
【国際公開番号】WO2008/045675
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】