光学フィルム
モアレ防止及びウェットアウト防止機能を有する光学フィルムが、その作製のためのシステム及び方法と共に記述される。光学フィルムを作製するのに使用されるマスターは、マスター表面の面外の軌道に沿って切削する単軸アクチュエータを使用して形成される。軌道に沿った切削工具の動きにより、可変深さ及び可変ピッチを有する溝が表面に刻まれる。このマスターから形成されるプリズムは可変深さ、可変高さを有し、これによりウェットアウト防止及びモアレ防止機能が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモアレ防止及びウェットアウト防止機能を有する光学フィルム、並びにモアレ防止及びウェットアウト防止機能を有する光学フィルムを作製するシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリズム構造を有する光学フィルムは、ディスプレイの外観を改善するために使用される。ディスプレイ装置には、好ましい視角に沿ってディスプレイ光源からの光を導くことによりディスプレイの輝度を強化するための、いくつかの異なるタイプのフィルムが使用できる。
【0003】
光学フィルムは輝度及びコントラストなどの好ましいディスプレイ特性を高めるが、好ましくない特性も導入することがある。例えば、複数の光学フィルムをディスプレイ内で重ね合わせると、ウェットアウト及び/又はモアレ効果によって起こる、目につく欠陥が生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
観る人の気を散らすような欠陥を減らしながら、同時に輝度及びコントラストなどのディスプレイの好ましい特性を高めるような光学フィルムのニーズが存在する。本発明は、これら及びその他の要求を満たし、先行技術に勝る他の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、モアレ防止及びウェットアウト防止機能を有する光学フィルム、並びにモアレ防止及びウェットアウト防止機能を有する光学フィルムを作製するシステム及び方法を目的とする。
【0006】
本発明の一実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変するシステムである。このシステムには、マスターの表面に溝を刻むのに使用する切削工具が含まれる。駆動メカニズムが、切削工具と表面との間の相対的な動きを提供する。単軸アクチュエータが切削工具に接続され、表面に対して面外にある軌道に沿って切削工具を動かす。この軌道は、表面に対して垂直な、ゼロではないx成分と、表面に対して平行で、ゼロではないz成分とを有する。切削工具と表面との間の相対的な動きと同時に、軌道に沿って切削工具を動かすことにより、表面に可変深さ及び可変ピッチを有する溝を刻む。いくつかの構成において、この表面は円筒形である。これらの構成において、駆動メカニズムは、円筒形表面を回転させることにより、切削工具と表面との間の相対的な動きを提供するよう構成されている。
【0007】
1つの態様により、このシステムには、切削工具の非ランダム、ランダム、又は擬似ランダムな動きを生み出す信号を生成するよう構成されたコントローラが含まれる。
【0008】
アクチュエータは、その作動方向が軌道に沿うよう、表面に対して方向付けされた単軸圧電アクチュエータであり得る。軌道は、表面の面に対して約1〜約89度の範囲、又は約91〜約179度の範囲の角度を有し得る。ピッチの変動及び/又は深さの変動は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲であり得る。軌道のx及びz成分は、フィルムのウェットアウト防止及びモアレ防止機能の望ましい程度を達成するよう、調節することができる。
【0009】
駆動メカニズムは、波長約500,000ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの溝ピッチにおける低周波変動を生成するために、切削工具を動かすよう構成することができる。この構成において、ピッチの低周波変動は、軌道に沿った切削工具移動によって生じた変動の上に重ね合わせられる。加えて、又は別の方法として、駆動メカニズムは、波長約2,000,000ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの溝深さにおける低周波変動を生成するために、切削工具を動かすよう構成することができる。深さの低周波変動は、軌道に沿った切削工具移動によって生じた変動の上に重ね合わせられる。
【0010】
本発明の一態様により、システムには、切削工具先端形状が、表面に対してある角度に向くよう構成されたメカニズムが含まれ得る。例えば、切削工具先端の形状は、表面に対して実質垂直に向くようにできる。1つの構成において、望ましい方向をもたらすため、アクチュエータと切削工具との間にスペーサが配置される。
【0011】
本発明の別の実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変する方法である。切削工具が表面を横断するとき、切削工具は更に、表面に対して垂直でゼロではないx成分及び表面に対して平行でゼロではないz成分を有する軌道に沿って前後に動く。表面に対する切削工具の動きが、可変ピッチ及び可変深さを有する溝を表面に刻む。一実施形態において、表面は円筒形状であり、表面を横断して工具を動かすことは、円筒形状表面にねじ切り溝を形成することを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、切削工具の動きによって、溝ピッチ及び/又は溝深さにおける低周波変動が刻まれ、これが、軌道に沿った切削工具の動きによって形成される変動に重ね合わせられる。
【0013】
本発明の更なる実施形態は、光学フィルム作製のためのマスターを目的とする。このマスターには、表面に溝を伴う表面が含まれる。溝は、可変ピッチ及び可変深さを有する。ピッチの変動は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲を有し、深さの変動は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有する。ピッチの変動は、深さの変動に依存する。
【0014】
ピッチ及び深さの変動は、比較的低周波のピッチの変動と、比較的低周波の深さの変動の、一方又は両方に重ね合わせられる。
【0015】
本発明の別の実施形態は、プリズム光学フィルムを目的とし、フィルムの各プリズムがピッチの変動及び高さの変動を有する。ピッチの変動及び高さの変動は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲である。ピッチの変動は、高さの変動に依存する。プリズムのピッチ及び高さの変動は、比較的低周波のプリズム高さの変動と、比較的低周波のプリズムピッチの変動の、一方又は両方に重ね合わせられる。
【0016】
特定の構成において、プリズムは実質線状及び/又は実質平行でよく、或いは、プリズムは交差してもよい。プリズムの第1群をプリズムの第2群に相互に挟み込むことができ、この第1群は、プリズムの第2群よりも高い公称高さを有する。より高い公称ピッチを有するプリズムの第1群を、プリズムの第2群に相互に挟み込むこともできる。例えば、相互挟み込みは1:1であってよく、又は別のパターンに従ったものであってもよい。
【0017】
本発明の別の実施形態は、実質平らな表面と、プリズムの第2群に相互に挟み込まれているプリズムの第1群を含むプリズム配列を有する第2表面とを有する、光学フィルムを目的とする。第1群のプリズムそれぞれは、実質同じ高さであり、波長が約5〜約50ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲のピッチ変動を有する。プリズムの第2群は、プリズムの第1群よりも比較的高い高さを有する。プリズムは、一対一パターンで相互に挟み込まれていてよく、又は他のパターンで相互に挟み込まれていてもよい。プリズムの第1群のピッチ変動は、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムであり得る。プリズムの第2群も、ピッチ及び/又は高さの変動を有し得る。
【0018】
本発明の更なる一実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変するシステムを目的とする。切削工具と表面との間の相対的な動きを提供するため、機械駆動メカニズムが構成される。機械駆動メカニズムは更に、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの低周波の深さ変動を有する溝を表面に刻むため、表面に対して垂直に切削工具を動かすよう構成される。システムには、高周波のピッチ変動の溝を刻むため、表面に対して切削工具を平行に動かすよう構成されたアクチュエータが含まれる。高周波のピッチ変動は、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲、及び約5ミクロン〜約500ミクロンの波長を有する。ピッチ変動はランダム、擬似ランダム、又は非ランダムであり得る。
【0019】
本発明の別の実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスターを形成するため、表面を改変する方法を含む。切削工具は低周波で動かされ、表面に溝を刻む。この溝は、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲の、低周波の深さ変動を伴って刻まれる。切削工具は、高周波でのピッチ変動を溝に刻むよう動かされる。高周波のピッチ変動は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有する。ピッチの高周波変動は、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムであり得る。このマスターは、フィルム上にプリズムを形成するために使用することができる。
【0020】
本発明の別の実施形態において、光学フィルムを作製するためのマスターには、表面に溝を有する表面が含まれる。各溝は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲の高周波のピッチ変動と、0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲の低周波の深さ変動を有する。
【0021】
別の実施形態は、実質平らな表面と第2のプリズム表面とを有する光学フィルムを目的とする。第2表面のプリズムは、平らな表面に対して実質平行な面内にある、プリズムピークを有する。第1群のプリズムそれぞれは、波長が約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲の高周波のピッチ変動を有する。第2群のプリズムそれぞれは、波長が約5ミクロン〜約500ミクロンで、0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲の高周波の高さ変動を有する。一態様において、第1群のプリズムは第2群のプリズムに相互に挟み込まれ、この相互挟み込みパターンは、一対一、又は他のパターンであってよい。
【0022】
上記の課題を解決するための手段は、本発明の各実施形態又はあらゆる実施を説明することは意図しない。本発明の利点及び効果、並びに本発明に対する一層の理解は、以下に記載する発明を実施するための形態及び特許請求の範囲を添付図面と併せて参照することによって明らかになり、理解するに至るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に従って、モアレ防止及びウェットアウト防止機能を有するプリズムフィルムを作製するために使用されるマスターロールの製造のために構成された、ダイヤモンド旋盤工作機械システムを示す。
【図2】マスターロールを製造するため、切削工具1つ及び単軸アクチュエータ2つをダイヤモンド旋盤工作機械に取り付けるよう構成された、工具マウントアセンブリの一部分の平面図。
【図3A】本発明の実施形態に従って、切削工具1つ及び単軸アクチュエータ1つをダイヤモンド旋盤工作機械に取り付けるよう構成された、工具マウントの一部分を示す。
【図3B】図3Aに示されている単軸アクチュエータ構成のX−Z面における切削工具の軌道を示す。
【図3C】本発明の実施形態に従って、切削工具先端のマスターロールの表面に対する角度を実質垂直に維持するために使用される、アクチュエータと切削工具との間に取り付けたスペーサを示す。
【図3D】本発明の実施形態に従って、切削工具先端のマスターロールの表面に対する角度を実質垂直に維持するための、切削工具取り付け用の工具シャンクを示す。
【図3E】本発明の実施形態に従って、マスターロールの表面に対して実質垂直な切削工具先端を提供するために、研削された切削工具を示す。
【図4】本発明の実施形態に従って、モアレ防止、ウェットアウト防止のプリズムフィルムを作製するのに用いるマスターの切削方法を示したフローチャート。
【図5】本発明の実施形態に従って、マスターロールを使用してモアレ防止及びウェットアウト防止機能を有するプリズムフィルムの作製のためのシステムを示す。
【図6A】本発明の実施形態に従って、面外軌道に沿って切削することにより形成されたx及びz軸偏位を有するマスターロールを使用して作製されたぷリズムフィルムを示す、それぞれ斜視図及び断面図。
【図6B】本発明の実施形態に従って、面外軌道に沿って切削することにより形成されたx及びz軸偏位を有するマスターロールを使用して作製されたぷリズムフィルムを示す、それぞれ斜視図及び断面図。
【図6C】高さの変動がなくピッチ変動だけを有するプリズムをもつプリズムフィルムの断面図。
【図7A】本発明の実施形態に従って、モアレ防止及びウェットアウト防止機能を提供するため、一部のプリズムが近隣のプリズムよりも高い公称高さを有しているような、モアレ防止機能を提供するためのピッチ高周波変動を備えたプリズムを有するプリズムフィルムの、透視図及び断面図。
【図7B】本発明の実施形態に従って、モアレ防止及びウェットアウト防止機能を提供するため、一部のプリズムが近隣のプリズムよりも高い公称高さを有しているような、モアレ防止機能を提供するためのピッチ高周波変動を備えたプリズムを有するプリズムフィルムの、透視図及び断面図。
【図8】本発明の実施形態に従って、ウェットアウト防止を提供するための高さ高周波変動を備えたプリズムが、モアレ防止機能を提供するためのピッチ高周波変動を備えたプリズムに相互に挟み込まれているプリズムを示す。
【図9】本発明の実施形態に従って、プリズムの高さ及びピッチの高周波変動と共に、公称ピッチが徐々に変動するプリズムを有するプリズムを示す。
【図10】本発明の実施形態に従って、ウェットアウト防止、モアレ防止表面を有するフィルムを使用した装置の一例を示す。
【図11A】本発明の実施形態に従って、軌道切削プロセスによって形成されたマスターを用いて作製された、プリズムピッチ及びプリズム深さの変動を備え、実質平行なプリズムを有するプリズムフィルムの、走査型電子顕微鏡写真。
【図11B】本発明の実施形態に従って、軌道切削プロセスによって形成されたマスターを用いて作製された、プリズムピッチ及びプリズム深さの変動を備え、実質平行なプリズムを有するプリズムフィルムの、走査型電子顕微鏡写真。
【図11C】本発明の実施形態に従って、軌道切11 Dintersecting削プロセスによって形成されたマスターを用いて作製された、プリズムピッチ及びプリズム深さの変動を備え、交差するプリズムを有するプリズムフィルムの、走査型電子顕微鏡写真。
【図11D】本発明の実施形態に従って、軌道切11 Dintersecting削プロセスによって形成されたマスターを用いて作製された、プリズムピッチ及びプリズム深さの変動を備え、交差するプリズムを有するプリズムフィルムの、走査型電子顕微鏡写真。
【0024】
本発明は様々な変更例及び代替形状が可能であるが、その具体例を一例として図面に示すと共に詳細に説明する。ただし、本発明は記載される特定の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。逆に、添付の請求の範囲に記載した発明の範囲を逸脱することなく、あらゆる変更、均等物、及び代替物が含まれることを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例示される実施形態の以下の説明では、本明細書の一部を構成し、本発明を実施され得るさまざまな実施形態を実例として示す添付の図面が参照される。他の実施形態が利用されてもよく、また、構造的又は機能的な変更が、本発明の範囲から逸脱することなくなされてもよいことが理解される。
【0026】
ディスプレイに対するフィルムの使用は周知である。例えばバックライトディスプレイにおいて、輝度強化フィルムは、視軸に沿って光を導くためにプリズム構造を利用し、これにより観る人が感受する光の輝度が強化される。別の例において、バックライトコンピュータディスプレイ画面は、特定の選択された方向においては均一な高輝度を維持し、同時に他の方向においては低輝度であるような、高コントラスト及び全体的な高輝度の画面を作製する目的で、数多くの異なるフィルムを使用することがある。このような画面には、プリズムフィルム又はレンズフィルムと組み合わせた拡散フィルムを含め、いくつかの種類のフィルムが使用され得る。
【0027】
ディスプレイにフィルムを使用する際の問題の1つは、コンピュータディスプレイなどの近距離で見るためのディスプレイについては、外観の要件が非常に高いことである。これは、そのような種類のディスプレイは長時間にわたって近距離で見られるため、非常に小さな欠陥でも検知され、観る人の気を散らす原因となり得る。そのような欠陥を除去するには、検査時間及び材質の両方において費用が高くつく可能性がある。
【0028】
欠陥は、いくつかの異なる状態で現われる。小班点、糸くず状、傷、異物封入などの物理的欠陥があり、また光学的現象の欠陥もある。最も一般的に起こる光学的現象は、「ウェットアウト」及びニュートン環である。「ウェットアウト」は、2つの表面が光学的に互いに接触し、これにより一方のフィルムからもう一方のフィルムへ光が拡散する際の屈折率の変化が事実上除去されて起こる。これは、光学的効果のために構造化表面を使用しているフィルムについては、構造化表面の屈折特性が帳消しになってしまうため、特に問題となる。「ウェットアウト」の影響は、斑点模様を形成し、画面上の外見が変わることである。ニュートン環は、2枚のフィルム間にあるホコリの粒子によって生成され得るような、2枚のフィルム間にある空気間隙がわずかに変化する際の結果として生じる。ニュートン環は、透過又は反射において形成され得る。ニュートン環が生じた結果、気を散らす原因になり得るような、画面上の輪郭模様を観る人が感受する。モアレ効果は、実質等しいピッチの線状プリズムを有する2枚以上のフィルムが重ね合わせられたときに生じ得る、光学的干渉パターンによって引き起こされる。上述の欠陥は、ディスプレイに非均一さ、斑点模様、又はでこぼこした外見をもたらすため、望ましくなく、観る人の気を散らすことになる。
【0029】
複数フィルムを用いたディスプレイアセンブリにおいて欠陥の問題を克服するために、いくつかのアプローチが行われている。1つは単に、従来の製造プロセスによって製造された、許容できるレベルのディスプレイアセンブリの低収率を容認することである。これは、競争の激しい市場では明らかに受け入れられない。第2のアプローチは、非常にクリーンかつ注意深い製造工程を採用し、厳格な品質管理基準を適用することである。これにより収率が高まる可能性があるが、クリーンな施設及び検査の費用をカバーするため、製造コストが増大する。
【0030】
欠陥を低減するための別のアプローチは、ディスプレイに、表面ディフューザ又はバルクディフューザのいずれかのディフューザを導入することである。このようなディフューザは多くの欠陥を覆い隠すことができ、少ない追加コストで製造収率を高めることができる。しかしながら、ディフューザは光を散乱し、観る人が感受する光の軸上輝度を低下させるため、性能が低下する。ディスプレイの欠陥発生を減らし、これによりごくわずかな追加コストで製造収率を改善し、同時に性能を維持するというニーズは引き続き存在する。
【0031】
本発明の実施形態は、フィルムを組み込んだディスプレイにおける目に見える欠陥の発生を低下させるプリズムフィルム、並びにそのフィルムを作製する方法及びシステムを目的とする。本明細書に記述されるアプローチによって形成されるプリズムフィルムは、プリズムの高さ及びピッチを変えることにより、モアレ防止及びウェットアウト防止の両方の機能をもたらすことができる。プリズムピッチの変動により、モアレ干渉縞の出現が低減される。プリズム高さの変動により、ウェットアウト領域の出現が低減される。
【0032】
本明細書に記述されているプリズムフィルムは特に液晶ディスプレイに有用であり、またオーバーヘッド及びリアプロジェクション画面などのさまざまな種類のプロジェクション画面にも有用である。本明細書に記述されている構成に従ったモアレ防止及びウェットアウト防止機能を有するプリズムフィルムは、予想外かつ好ましい数多くの結果を生み出す。例えば、最大偏位で生じるウェットアウト防止機能は、互いに等距離になるよう有利に配置することにより、フィルムのより均一な支持が供給され得る。プリズムピッチの変動は、収縮したピーク内に保持されるため、欠陥及びモアレコントラストを低減する能力は維持される。
【0033】
いくつかの実施形態において、単軸の面外運動を使用して、公称で同一面内であった一面上のプリズムマスターにおいて、ピーク及び深さの変動を同時に形成する。これらの機能を有するマスターから作製されるフィルムは、ウェットアウト防止性能において劇的な結果をもたらす。
【0034】
プリズムフィルムを作製するのに使用されるマスターは、ネガのレリーフでマスター表面に刻まれたプリズム機能を有する。マスターの製造後、このマスターを使用して、例えばエンボス加工、押出成形、鋳造及び硬化、並びに/又はその他のプロセスによってプリズムフィルムを作製することができる。
【0035】
プリズムフィルムマスターは通常、望ましいプリズム形状のネガである溝を有する円筒形ロールである。溝は、ダイヤモンド旋盤によってマスターに刻まれ得る。マスターの表面は典型的には硬銅であるが、アルミニウム、ニッケル、鋼、又はプラスチック(アクリルなど)の他の材質も使用することができる。マスターロールの周囲に、数多くの同軸円溝を刻むことができる。マスターロールは、ねじ切りとして知られる技法によって機械加工することができ、ここにおいて、回転するマスターロールの表面に対して平行方向にダイヤモンド工具が移動している間に、1本の連続したカットがロール上に刻まれるか、或いは、複数の同軸円溝が対象物に個々に形成されるプランジ切削が行われる。
【0036】
ダイヤモンド旋盤工作機械には典型的に、マスターに溝を刻むのに使用する切削工具の動きを制御するコントローラが含まれる。ダイヤモンド旋盤工作機械は、切削工具がマスター内に食い入る深さと、マスターの表面に沿って工具の側方向の動きとを、独立に制御することができる。更に、ダイヤモンド旋盤工作機械は、円筒形マスターの回転速度を独立に制御することができる。
【0037】
プリズムフィルム作製のためのマスターロール製造用に構成されたダイヤモンド旋盤工作機械を、図1に示す。円筒形マスター100が、ドラム駆動104によって、軸102を中心に回転する。この実施例では、マスター100は円筒形で示されているが、別の実施形態においては、マスターは平面であってもよい。ウェットアウト防止、モアレ防止の表面パターンを、同軸円溝をプランジ切削することにより、又はマスター100上に浅い溝110をねじ切り加工することにより(すなわち、マスター100の表面上を切削しながら切削工具108をz方向に移動させることにより)、マスター100に刻むことができる。マスター100の表面はフィルムの相補的表面を形成するため、マスター表面の局所的な最低点は、フィルムを作製したときのフィルム表面の局所的最高点に対応する。
【0038】
典型的に、コントローラ106は切削工具マウント109をz方向に側方駆動させ、回転するマスター100に沿って切削工具108を動かし、連続的なねじ切り、又は非連続的な同軸円切削を行う。コントローラ106はドラム駆動104の速度を制御し、マスター100の角度位置Ψをモニターすることができる。
【0039】
コントローラ106は切削工具マウント109の動きを制御し、切削工具を、マスター表面に対して平行のz方向に低周波で偏位させ、かつマスター表面に対して垂直のx方向に低周波で偏位させる。コントローラ106は、1つ以上の高速サーボアクチュエータ138を介して切削工具108の動きをコントロールし、これにより切削工具の高周波偏位を生成することもできる。切削工具108とマスター表面100とのなす角度θも、制御することができる。切削工具108のサイズ及び形状は、マスター100を使用して作製するフィルムの個々のタイプに応じて選択される。
【0040】
1つ以上のアクチュエータ138の動きを使用して、切削工具108の短く高速な偏位を生成することができ、同時に切削工具マウント109の動きを使用して、切削工具108の長くゆっくりの偏位を生成することができる。マウントの低周波の動きを使用して、高速サーボアクチュエータ138のストローク長さよりも長い距離で、マスター100の表面切削を変えることができる。コントローラ106は、切削工具108の高周波及び低周波の動きを制御する制御信号を生成する。制御信号には、切削工具マウント109を対象とする低周波成分、及びアクチュエータ138を対象とする高周波成分が含まれ得る。
【0041】
制御信号の高周波及び/又は低周波成分は、マスター100の回転に同期していてもよく、周期的、ランダム、非ランダム、又は擬似ランダムであってもよい。例えば、切削工具108が大きくゆっくりした動きをするよう制御されているマウント109の動きの間、切削工具108が小刻みで速い動きをするよう、1つ以上のアクチュエータ138が制御され得る。ここにおいて、アクチュエータ138によって生成された切削工具108の高周波の動きは、マウント109によって生成された切削工具108の低周波の動きと重ね合わせられる。マウント109及び/又はアクチュエータ138の動きは、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムのいずれでもあり得る。擬似ランダムの動きは、コンピュータ生成の乱数によって達成することができる。記録された同じ乱数を含むよう、そしてその結果得られる構造が各ロールで同じになるよう、各ロール工具に対して同じランダム信号を繰り返すことが好ましいことがある。いくつかの実施形態において、アクチュエータ138及び/又は工具マウント109の動きは全般に非ランダム(例えば周期的又は正弦波パターン)であってよく、これを散発的なランダムな動きによって無作為化し、溝110のピッチ又は深さのパターンに位相ずれを起こすことができる。
【0042】
1つ以上のアクチュエータ138は、切削工具マウント107の動きによって通常は達成され得ないような高周波で切削工具108を動かすよう作動する。各アクチュエータ138には、最終的に切削工具108の動きを制御するための、コントローラ106からの電気信号をアクチュエータ138の動きに変換するための圧電変換器(PZT)又はその他の変換器を有する、単軸高速ツールサーボが含まれる。高速サーボアクチュエータの応答の周波上限は、数キロヘルツから数十キロヘルツの範囲でよく、一方、切削工具マウントの応答周波は通常、5Hzを超えることはない。例えば、工具マウント109の動きは、約500,000ミクロンの距離(波長)にわたり、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの溝ピッチにおいて、低周波の変動を達成することができる。工具マウント109の動きは、約2,000,000ミクロンの波長で、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの溝深さにおいて、低周波の変動を達成することができる。
【0043】
アクチュエータ138がなすストローク長さは、波長約5ミクロン〜約500ミクロンの範囲で、例えば50ミクロン未満、又は約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲であり得る。より高い周波変動範囲を採用して、欠点隠しと光散乱の強化をもたらすことができる。広い視野角が望ましい実施形態において、例えば、より細かいピッチにすると、ディスプレイのカットオフ角度を和らげ、スムーズになる。ストロークの長さと上方周波応答との間にはトレードオフ関係があり得ることが認識されるだろう。
【0044】
結果として得られる、マスター100の表面上に刻まれた溝110は、切削工具108に対するロールの表面速度と、切削工具108の偏位間の平均時間とに依存して、ロール円周上に局所的x及び/又はz偏位の間の平均間隔を有している。例えば、直径30.48cm(12インチ)のドラムを毎分200回転で回転させ、同時にアクチュエータ138が正弦曲線状に約20kHzで駆動させることができる。結果として得られる波長は、アクチュエーションベクトル平面で160ミクロンとなる。
【0045】
図2は、切削工具236及びアクチュエータ218、216をダイヤモンド旋盤工作機械に取り付けるのに使用される工具マウントアセンブリ200の部分平面図を示す。工具マウントアセンブリ200には、単軸x方向アクチュエータ218、単軸z方向アクチュエータ216、及び切削工具236を保持することができる本体212が含まれる。この実施例において、アクチュエータ216、218はPZT積層物である。PZT積層物218、216は、それぞれが切削工具をx方向及びz方向に動かすよう配置される。PZT積層物218、216は、切削工具236の正確に制御された動きのために必要な安定性を得るため、工具マウントアセンブリ212にしっかりと固定される。PZT積層物218、216には、コントローラからの信号を受信するための電気的接続230、234が含まれる。
【0046】
切削工具先端235は、マスターロールの表面に対して垂直方向にされ得る。マスターが回転している際の、x軸アクチュエータ218の制御下にある切削工具の動きにより、可変深さの平行な溝がマスターに刻まれる。マスターが回転している際の、z軸方向アクチュエータ216の制御下にある切削工具の動きにより、可変ピッチの溝がマスターロールに刻まれる。いくつかの構成において、溝は少なくともいくつかの方向において、実質直線状であり実質平行であり得る。いくつかの実施形態において、溝は交差し得る。
【0047】
プリズムフィルム作製に使用するための独立したx及びzの動きを有する切削工具アセンブリは、同一所有者の米国特許公開第2007/0107568号に記述されており、これは参考として本明細書に組み込まれる。
【0048】
本発明の一実施形態は、切削工具の動きを制御するために単軸アクチュエータを1つだけ使用する、プリズムフィルムマスター製造のシステム及び方法を目的とする。単軸アクチュエータの使用は、相互に依存するx及びz成分を有する溝の切削に使用され得る。
【0049】
切削工具は、マスター表面に対する面外運動を切削工具にもたらすよう、単軸アクチュエータの作動によってx成分及びz成分の両方を有する軌道に沿って動くように、切削工具がマスターに対して方向付けされる。この切削工具の面外運動は、溝の深さ及びピッチの両方において変動をもたせて、マスターロールに溝を刻む。プリズムフィルムがこのマスターロールを使用して作製されると、マスターの溝の可変ピッチ、可変深さは、可変ピッチ、可変高さのプリズムに変換される。前述のように、可変ピッチ、可変高さのプリズムは、モアレ防止及びウェットアウト防止機能をプリズムフィルムにもたらす。
【0050】
1つの単軸アクチュエータの作動によって、深さ及びピッチ両方の変動を有する溝を刻むような切削工具の線状の動きを生み出すことができる。単軸アクチュエータ1つを使用することにより、必要な構成要素の数が低減され、工具マウントの構造が単純化され、コントローラエレクトロニクスが単純化され、構造化フィルムの作製可能な速度が増大し、モアレ防止機能とウェットアウト防止の両方のプリズム機能をもたらすマスター工具が製造される。単軸アクチュエータを使用することにより達成可能なピッチの変動は、波長約5〜約500ミクロンで、ピッチ変動が約0.5〜約50ミクロン未満である。単軸アクチュエータを使用することにより達成可能な深さの変動は、波長約5〜約500ミクロンで、深さ変動が約0.5〜約50ミクロン未満である。
【0051】
図3Aは、ダイヤモンド旋盤工作機械に切削工具310及び単軸アクチュエータ320を取り付けるよう構成された工具マウント300の一部分を示す。切削工具310及びアクチュエータ320は、アクチュエータ320(例えばPZTアクチュエータ)の作動により切削工具310の軸外の動きが生成されるように向けられる。PZTアクチュエータ320の作動によって、切削工具310が、x及びzの両成分を有しかつマスター325の表面に対して軸外となる軌道に沿って動く。
【0052】
図3Bは、図3Aに示されている単軸アクチュエータ構成のX−Z面における切削工具310の軌道350を示す。切削工具310は軌道350に沿って前後に動き、マスターに可変深さ及び可変ピッチの溝を刻む。軌道350は、望ましいx成分及びz成分の量に応じて単軸アクチュエータについて調整することができる。単軸アクチュエータの移動能力によって、最大の斜辺長さが示される。
【0053】
例えば、20ミクロンの移動が可能なPZT積層物では、ウェットアウト防止の3ミクロン偏位(x軸成分)が望ましいように、アクチュエータを回転することができる。x軸成分が3ミクロンに等しく、斜辺が20ミクロンに等しいとき、アクチュエータはマスター表面に対する角度Γが8.6度の方向に向けられる。ピタゴラスの定理を使用して、z軸沿いのモアレ防止成分は19.7ミクロンと算出される。
【0054】
切削工具310の先端は、マスターの表面に対して垂直、又はマスター表面に対してある角度をなす方向に向けることができる。工具先端の向きは、さまざまな方法で達成することができる。図3Cに示すように、方向付けスペーサ370をPZTアクチュエータ320と工具シャンク360との間に使用することができる。図3Dに示すように、工具シャンク365には望ましい形状を直接もたせることができる。工具310は、図3Aに示すように、シャンク366上で望む角度に向けることができる。工具先端305は、図3Eに示すように、望ましい方向を含むように研磨又は成形することができる。
【0055】
図4は、本発明の実施形態に従って、モアレ防止、ウェットアウト防止のプリズムフィルムを作製するのに用いるマスターの切削方法を示したフローチャートである。切削工具は、マスター表面に対して移動し(410)、その表面に溝を刻む。表面に対する切削工具の移動により、マスター表面に溝のねじ切り、又は同軸円状の溝の切削が形成され得る。切削工具が表面に対して移動すると、単軸高速サーボアクチュエータを介して、ゼロではないx及びz成分を有し表面に対して面外となる軌道に沿って前後に移動することになる(420)。切削工具の軌道沿いの移動により、可変ピッチと可変深さの両方を有するよう、溝が表面に刻まれる。
【0056】
モアレ防止及びウェットアウト防止機能を有するプリズムフィルムは、図5に示すように、特定の寸法で間隔が空いた1組のローラーの間で鋳造することにより成形することができる。図5において、フィルム502はリザーバ501から引き出され、ダイ500に通される。フィルム502はニップロール504と、望ましいプリズム構造のネガである溝507を有するマスターロール506との間に挟まる。マスターロール506は、フィルム502の上面にプリズムパターン508を形成する。ローラー504と506との間を通過した後、フィルム502は例えば冷却器520の中で冷まされ、ローラー504と506によってエンボス加工された模様が維持される。
【0057】
プリズムフィルムの一実施形態において、マスターロール506は、ある軌道に沿って切削工具の高周波の偏位によって刻まれた溝506を有し、この軌道は、マスターロールの表面に対して面外であり、ゼロではないx及びz成分を有する。マスターロール506によって形成されたプリズムは、モアレ防止機能を提供するため、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムのピッチ変動を有することがあり、及び/又はウェットアウト防止機能を提供するため、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムの高さ変動を有することがある。例えば、プリズム高さ及びピッチの変動は、波長約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有し得る。
【0058】
図6Aは、面外軌道に沿った切削によって形成されたx及びz軸偏位を有するマスターロールを使用して形成されたプリズムフィルム600を示す。図6A〜6Cのプリズムフィルムに図示されている線は、プリズムの高さ変動をより明確に示すためのものである。プリズムフィルム600には、プリズムピッチpにおけるモアレ防止の変動と、プリズム高さhにおけるウェットアウト防止の変動の両方を有するプリズム610が含まれる。図6Bは、図6Aのプリズムフィルム600のプリズムピーク610の断面図であり、プリズム高さ及びピッチの変動を示している。比較のため、図6Cに、高さの変動がなくピッチ変動だけを有するプリズムをもつプリズムフィルム650の断面図を示す。
【0059】
別のプリズムフィルム実施形態において、マスターロールは、1つの単軸高速サーボアクチュエータによって制御された切削工具の高周波の動きを、切削工具の低周波のx軸方向の動きと組み合わせることによって、刻まれた溝を有している。単軸アクチュエータは、z軸アクチュエータであってよく、又は、図3Aに示すようなx及びz方向の面外運動を提供する単軸アクチュエータであってもよい。プリズムフィルムには、モアレ防止機能を提供するためピッチの高周波変動を有するプリズムが含まれ、ここで一部のプリズムは、ウェットアウト防止機能を提供するために、隣接するプリズムよりも高い公称高さを有する。この種のプリズムフィルムの一例が、図7A及び7Bに、それぞれ平面図及び断面図として示されている。図7Aにおいて、プリズム701〜708はプリズムピッチの変動を呈している。プリズム702及び706の公称高さは、プリズム701、703〜705、707、及び708の公称高さよりも高い。図7A及び7Bのプリズムフィルムに図示されている線は、プリズムの高さ変動をより明確に示すためのものである。
【0060】
更に別のプリズムフィルムの実施形態において、マスターロールは、z軸アクチュエータによって制御された切削工具の高周波のz軸の動きによって刻まれた第1群の溝を有している。第1群の溝は、x軸アクチュエータによって制御された切削工具の高周波の動きによって刻まれた第2群の溝の間に相互に挟み込まれている。例えば、マスターロールは、z軸変動を有するm本の溝が、x軸変動を有するn本の溝に相互に挟み込まれている状態であり得る。図8に、m及びnが1の場合の、そのようなマスターロールを用いて形成されたプリズムフィルムを示す。プリズム801、803、805、807は、ウェットアウト防止を提供するため、高さに高周波の変動を有する。ウェットアウト防止プリズム801、803、805、807は、モアレ防止機能を提供するためピッチに高周波の変動を有するプリズム802、804、806、808の間に相互に挟み込まれている。
【0061】
プリズムフィルムの更なる一実施形態において、マスターロールに刻まれた溝には、マスターロール表面に対する面外軌道に沿って切削工具を移動させることにより単軸アクチュエータによって形成された高周波のピッチ及び深さ変動に重ね合わせられた、プリズム対プリズムの低周波のピッチ変動が含まれる。図9は、この種のマスターロールを使用して形成されたプリズムフィルム900を示す。プリズム910の公称ピッチは、プリズムごとに徐々に変化し、一部のプリズム間のピッチP1は、別のプリズム間のピッチP2よりも小さい。各プリズム910には、前述のように、マスター表面に対する面外軌道に沿って切削の速い動きにより刻まれたピッチ及び深さの変動に対応する、高さ及びピッチの高周波の変動も含まれる。可変ピッチプリズムフィルムに関する更なる詳細、並びにそのようなフィルムを作製するための方法及びシステムは、同一所有者の米国特許第5,919,551号に記述されており、参考として本明細書に組み込まれる。
【0062】
本発明によって作製されたフィルムは、望ましくは実質透明な物質から作製される。本発明に従ったフィルムに、拡散バルク材質を組み込むこともできるが、但し多くの場合これは光学フィルムの性能を低下させ得る。更に、単一のフィルムに複数のフィルム層及び材質を含めることができ、これにより例えば反射偏光などの特定の光学的硬化を生み出すことができる。アクリル類及びポリカーボネート類は、フィルム材質の有力な候補である。また、フィルムは2つの部分からなる構造にすることができ、構造化表面は基材状で鋳造及び硬化される。例えば、ポリエステル基材上に鋳造された紫外線硬化性アクリル類を使用することができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムは、硬化される構造を載せるための基材として有用であることが示されている。ポリエチレンナフタレート(PEN)も、光学フィルムのためのポリマー材質として有用であることが示されている。
【0063】
ウェットアウト防止、モアレ防止表面を有するフィルムを用いた装置の一例を、図10の分解図に示す。液晶ディスプレイ(LCD)の照明モジュール1000は、蛍光ランプ1002及び反射鏡1003を光源として使用し、ライトガイド1004内に光を導く。ライトガイド1004は、下の表面1007上に拡散的に反射する抽出ドット1006を有し得る。広帯域の拡散反射鏡1008が、ライトガイド1004の下側に配置され、ガイド1004の上にある構成要素からリサイクルされた光をすべて反射する。蛍光ランプ1002の光がライトガイド1004の側面から入り、ガイド1004の表面で内部的に反射することにより、ライトガイド1004に沿って光が導かれる。抽出ドット1006の1つに入射した光線1010は、拡散的に反射され、数多くの拡散光線1012を生成する。
【0064】
抽出ドット1006から上方向に伝搬された光が、ガイド1004の上面を通り抜ける。ディフューザ1014はライトガイド1004の上に配置されて、ガイド1004から抽出された光を更に拡散し、これによりLCDディスプレイ1024で結果として得られる照明をより均一なものにする。
【0065】
上向きの方向の連続的な光は、上側及び下側のプリズムフィルム1018、1016を通り抜けることができ、これらはそれぞれ、本明細書で記述したプリズム構造に類似したプリズム構造を上面に有している。フィルム1018、1016は、上側フィルム1018のプリズム軸が、下側フィルム1016のプリズム軸に対してある角度(例えば約90度)を向くよう配置される。光は、上側又は下側プリズムフィルム1018、1016のいずれかによってリサイクルされ、反射鏡1008によって反射される。交差する一組のフィルム1016、1018は、好ましい視軸に沿って光出力を導く役目をする。
【0066】
反射偏光フィルム1020は、上側フィルム1018の上に配置される。反射偏光板1020は、一つの偏光の光を透過し、直交する偏光の光を反射する。よって、偏光フィルム1020を通過した光は偏光している。偏光フィルム1020によって反射された光は、反射鏡1008によって再循環させることができる。
【0067】
LCDマトリックス1024は、偏光フィルム1020の上に配置される。LCDマトリックスを通過した偏光は、情報(例えば画像)によって空間的に偏光され、これが透過される。モジュール1000には、例えば上側フィルム1018と偏光フィルム1020との間に配置するカバーシートなど、他の構成要素を含めることができる。
【0068】
図10に示すようなバックライトLCDディスプレイは、例えばテレビ、コンピュータモニター、携帯ゲーム装置及び携帯電話などのさまざまな装置に組み込むことができる。
【0069】
図11A〜11Cは、本明細書に記載されているプロセスに従って形成されたプリズムフィルムの顕微鏡写真である。図11A及び11Bはそれぞれ、図3及び4に関連して記述した、軌道切削プロセスによって製造されたマスターから形成されたプリズムフィルムの、平面図及び断面図である。図11A及び11Bは、高さとピッチが変動し、実質線状で実質平行なプリズムを示している。図11Cは、軌道切削プロセスによって形成された、交差するプリズムを示す。図11Dは、軌道切削プロセスによって製造された交差するプリズムの別の形状を示す。
【0070】
モアレ防止のピッチ変動及びウェットアウト防止の高さ変動を備えたプリズムを有するフィルムのさまざまな構成が、上記に説明された。記述されたさまざまなプリズム構造は、欠陥を減少させるフィルムを提供するため、任意の組み合わせで使用することができることが理解されるであろう。例えば、高周波のx及び/又はz変動は、低周波のx及び/又はz変動と任意に組み合わせて使用することにより、モアレ防止、ウェットアウト防止のフィルムを提供することができる。
【0071】
本発明の様々な実施形態の上述の説明を、例証及び説明の目的で提示してきた。これまでの記述は、包括的であることも、開示されたそのままの形態に本発明を限定することも意図しない。以上の教示を考慮すれば、多くの修正形態及び変形形態が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明はモアレ防止及びウェットアウト防止機能を有する光学フィルム、並びにモアレ防止及びウェットアウト防止機能を有する光学フィルムを作製するシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリズム構造を有する光学フィルムは、ディスプレイの外観を改善するために使用される。ディスプレイ装置には、好ましい視角に沿ってディスプレイ光源からの光を導くことによりディスプレイの輝度を強化するための、いくつかの異なるタイプのフィルムが使用できる。
【0003】
光学フィルムは輝度及びコントラストなどの好ましいディスプレイ特性を高めるが、好ましくない特性も導入することがある。例えば、複数の光学フィルムをディスプレイ内で重ね合わせると、ウェットアウト及び/又はモアレ効果によって起こる、目につく欠陥が生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
観る人の気を散らすような欠陥を減らしながら、同時に輝度及びコントラストなどのディスプレイの好ましい特性を高めるような光学フィルムのニーズが存在する。本発明は、これら及びその他の要求を満たし、先行技術に勝る他の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、モアレ防止及びウェットアウト防止機能を有する光学フィルム、並びにモアレ防止及びウェットアウト防止機能を有する光学フィルムを作製するシステム及び方法を目的とする。
【0006】
本発明の一実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変するシステムである。このシステムには、マスターの表面に溝を刻むのに使用する切削工具が含まれる。駆動メカニズムが、切削工具と表面との間の相対的な動きを提供する。単軸アクチュエータが切削工具に接続され、表面に対して面外にある軌道に沿って切削工具を動かす。この軌道は、表面に対して垂直な、ゼロではないx成分と、表面に対して平行で、ゼロではないz成分とを有する。切削工具と表面との間の相対的な動きと同時に、軌道に沿って切削工具を動かすことにより、表面に可変深さ及び可変ピッチを有する溝を刻む。いくつかの構成において、この表面は円筒形である。これらの構成において、駆動メカニズムは、円筒形表面を回転させることにより、切削工具と表面との間の相対的な動きを提供するよう構成されている。
【0007】
1つの態様により、このシステムには、切削工具の非ランダム、ランダム、又は擬似ランダムな動きを生み出す信号を生成するよう構成されたコントローラが含まれる。
【0008】
アクチュエータは、その作動方向が軌道に沿うよう、表面に対して方向付けされた単軸圧電アクチュエータであり得る。軌道は、表面の面に対して約1〜約89度の範囲、又は約91〜約179度の範囲の角度を有し得る。ピッチの変動及び/又は深さの変動は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲であり得る。軌道のx及びz成分は、フィルムのウェットアウト防止及びモアレ防止機能の望ましい程度を達成するよう、調節することができる。
【0009】
駆動メカニズムは、波長約500,000ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの溝ピッチにおける低周波変動を生成するために、切削工具を動かすよう構成することができる。この構成において、ピッチの低周波変動は、軌道に沿った切削工具移動によって生じた変動の上に重ね合わせられる。加えて、又は別の方法として、駆動メカニズムは、波長約2,000,000ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの溝深さにおける低周波変動を生成するために、切削工具を動かすよう構成することができる。深さの低周波変動は、軌道に沿った切削工具移動によって生じた変動の上に重ね合わせられる。
【0010】
本発明の一態様により、システムには、切削工具先端形状が、表面に対してある角度に向くよう構成されたメカニズムが含まれ得る。例えば、切削工具先端の形状は、表面に対して実質垂直に向くようにできる。1つの構成において、望ましい方向をもたらすため、アクチュエータと切削工具との間にスペーサが配置される。
【0011】
本発明の別の実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変する方法である。切削工具が表面を横断するとき、切削工具は更に、表面に対して垂直でゼロではないx成分及び表面に対して平行でゼロではないz成分を有する軌道に沿って前後に動く。表面に対する切削工具の動きが、可変ピッチ及び可変深さを有する溝を表面に刻む。一実施形態において、表面は円筒形状であり、表面を横断して工具を動かすことは、円筒形状表面にねじ切り溝を形成することを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、切削工具の動きによって、溝ピッチ及び/又は溝深さにおける低周波変動が刻まれ、これが、軌道に沿った切削工具の動きによって形成される変動に重ね合わせられる。
【0013】
本発明の更なる実施形態は、光学フィルム作製のためのマスターを目的とする。このマスターには、表面に溝を伴う表面が含まれる。溝は、可変ピッチ及び可変深さを有する。ピッチの変動は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲を有し、深さの変動は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有する。ピッチの変動は、深さの変動に依存する。
【0014】
ピッチ及び深さの変動は、比較的低周波のピッチの変動と、比較的低周波の深さの変動の、一方又は両方に重ね合わせられる。
【0015】
本発明の別の実施形態は、プリズム光学フィルムを目的とし、フィルムの各プリズムがピッチの変動及び高さの変動を有する。ピッチの変動及び高さの変動は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲である。ピッチの変動は、高さの変動に依存する。プリズムのピッチ及び高さの変動は、比較的低周波のプリズム高さの変動と、比較的低周波のプリズムピッチの変動の、一方又は両方に重ね合わせられる。
【0016】
特定の構成において、プリズムは実質線状及び/又は実質平行でよく、或いは、プリズムは交差してもよい。プリズムの第1群をプリズムの第2群に相互に挟み込むことができ、この第1群は、プリズムの第2群よりも高い公称高さを有する。より高い公称ピッチを有するプリズムの第1群を、プリズムの第2群に相互に挟み込むこともできる。例えば、相互挟み込みは1:1であってよく、又は別のパターンに従ったものであってもよい。
【0017】
本発明の別の実施形態は、実質平らな表面と、プリズムの第2群に相互に挟み込まれているプリズムの第1群を含むプリズム配列を有する第2表面とを有する、光学フィルムを目的とする。第1群のプリズムそれぞれは、実質同じ高さであり、波長が約5〜約50ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲のピッチ変動を有する。プリズムの第2群は、プリズムの第1群よりも比較的高い高さを有する。プリズムは、一対一パターンで相互に挟み込まれていてよく、又は他のパターンで相互に挟み込まれていてもよい。プリズムの第1群のピッチ変動は、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムであり得る。プリズムの第2群も、ピッチ及び/又は高さの変動を有し得る。
【0018】
本発明の更なる一実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変するシステムを目的とする。切削工具と表面との間の相対的な動きを提供するため、機械駆動メカニズムが構成される。機械駆動メカニズムは更に、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの低周波の深さ変動を有する溝を表面に刻むため、表面に対して垂直に切削工具を動かすよう構成される。システムには、高周波のピッチ変動の溝を刻むため、表面に対して切削工具を平行に動かすよう構成されたアクチュエータが含まれる。高周波のピッチ変動は、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲、及び約5ミクロン〜約500ミクロンの波長を有する。ピッチ変動はランダム、擬似ランダム、又は非ランダムであり得る。
【0019】
本発明の別の実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスターを形成するため、表面を改変する方法を含む。切削工具は低周波で動かされ、表面に溝を刻む。この溝は、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲の、低周波の深さ変動を伴って刻まれる。切削工具は、高周波でのピッチ変動を溝に刻むよう動かされる。高周波のピッチ変動は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有する。ピッチの高周波変動は、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムであり得る。このマスターは、フィルム上にプリズムを形成するために使用することができる。
【0020】
本発明の別の実施形態において、光学フィルムを作製するためのマスターには、表面に溝を有する表面が含まれる。各溝は、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲の高周波のピッチ変動と、0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲の低周波の深さ変動を有する。
【0021】
別の実施形態は、実質平らな表面と第2のプリズム表面とを有する光学フィルムを目的とする。第2表面のプリズムは、平らな表面に対して実質平行な面内にある、プリズムピークを有する。第1群のプリズムそれぞれは、波長が約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲の高周波のピッチ変動を有する。第2群のプリズムそれぞれは、波長が約5ミクロン〜約500ミクロンで、0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲の高周波の高さ変動を有する。一態様において、第1群のプリズムは第2群のプリズムに相互に挟み込まれ、この相互挟み込みパターンは、一対一、又は他のパターンであってよい。
【0022】
上記の課題を解決するための手段は、本発明の各実施形態又はあらゆる実施を説明することは意図しない。本発明の利点及び効果、並びに本発明に対する一層の理解は、以下に記載する発明を実施するための形態及び特許請求の範囲を添付図面と併せて参照することによって明らかになり、理解するに至るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に従って、モアレ防止及びウェットアウト防止機能を有するプリズムフィルムを作製するために使用されるマスターロールの製造のために構成された、ダイヤモンド旋盤工作機械システムを示す。
【図2】マスターロールを製造するため、切削工具1つ及び単軸アクチュエータ2つをダイヤモンド旋盤工作機械に取り付けるよう構成された、工具マウントアセンブリの一部分の平面図。
【図3A】本発明の実施形態に従って、切削工具1つ及び単軸アクチュエータ1つをダイヤモンド旋盤工作機械に取り付けるよう構成された、工具マウントの一部分を示す。
【図3B】図3Aに示されている単軸アクチュエータ構成のX−Z面における切削工具の軌道を示す。
【図3C】本発明の実施形態に従って、切削工具先端のマスターロールの表面に対する角度を実質垂直に維持するために使用される、アクチュエータと切削工具との間に取り付けたスペーサを示す。
【図3D】本発明の実施形態に従って、切削工具先端のマスターロールの表面に対する角度を実質垂直に維持するための、切削工具取り付け用の工具シャンクを示す。
【図3E】本発明の実施形態に従って、マスターロールの表面に対して実質垂直な切削工具先端を提供するために、研削された切削工具を示す。
【図4】本発明の実施形態に従って、モアレ防止、ウェットアウト防止のプリズムフィルムを作製するのに用いるマスターの切削方法を示したフローチャート。
【図5】本発明の実施形態に従って、マスターロールを使用してモアレ防止及びウェットアウト防止機能を有するプリズムフィルムの作製のためのシステムを示す。
【図6A】本発明の実施形態に従って、面外軌道に沿って切削することにより形成されたx及びz軸偏位を有するマスターロールを使用して作製されたぷリズムフィルムを示す、それぞれ斜視図及び断面図。
【図6B】本発明の実施形態に従って、面外軌道に沿って切削することにより形成されたx及びz軸偏位を有するマスターロールを使用して作製されたぷリズムフィルムを示す、それぞれ斜視図及び断面図。
【図6C】高さの変動がなくピッチ変動だけを有するプリズムをもつプリズムフィルムの断面図。
【図7A】本発明の実施形態に従って、モアレ防止及びウェットアウト防止機能を提供するため、一部のプリズムが近隣のプリズムよりも高い公称高さを有しているような、モアレ防止機能を提供するためのピッチ高周波変動を備えたプリズムを有するプリズムフィルムの、透視図及び断面図。
【図7B】本発明の実施形態に従って、モアレ防止及びウェットアウト防止機能を提供するため、一部のプリズムが近隣のプリズムよりも高い公称高さを有しているような、モアレ防止機能を提供するためのピッチ高周波変動を備えたプリズムを有するプリズムフィルムの、透視図及び断面図。
【図8】本発明の実施形態に従って、ウェットアウト防止を提供するための高さ高周波変動を備えたプリズムが、モアレ防止機能を提供するためのピッチ高周波変動を備えたプリズムに相互に挟み込まれているプリズムを示す。
【図9】本発明の実施形態に従って、プリズムの高さ及びピッチの高周波変動と共に、公称ピッチが徐々に変動するプリズムを有するプリズムを示す。
【図10】本発明の実施形態に従って、ウェットアウト防止、モアレ防止表面を有するフィルムを使用した装置の一例を示す。
【図11A】本発明の実施形態に従って、軌道切削プロセスによって形成されたマスターを用いて作製された、プリズムピッチ及びプリズム深さの変動を備え、実質平行なプリズムを有するプリズムフィルムの、走査型電子顕微鏡写真。
【図11B】本発明の実施形態に従って、軌道切削プロセスによって形成されたマスターを用いて作製された、プリズムピッチ及びプリズム深さの変動を備え、実質平行なプリズムを有するプリズムフィルムの、走査型電子顕微鏡写真。
【図11C】本発明の実施形態に従って、軌道切11 Dintersecting削プロセスによって形成されたマスターを用いて作製された、プリズムピッチ及びプリズム深さの変動を備え、交差するプリズムを有するプリズムフィルムの、走査型電子顕微鏡写真。
【図11D】本発明の実施形態に従って、軌道切11 Dintersecting削プロセスによって形成されたマスターを用いて作製された、プリズムピッチ及びプリズム深さの変動を備え、交差するプリズムを有するプリズムフィルムの、走査型電子顕微鏡写真。
【0024】
本発明は様々な変更例及び代替形状が可能であるが、その具体例を一例として図面に示すと共に詳細に説明する。ただし、本発明は記載される特定の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。逆に、添付の請求の範囲に記載した発明の範囲を逸脱することなく、あらゆる変更、均等物、及び代替物が含まれることを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例示される実施形態の以下の説明では、本明細書の一部を構成し、本発明を実施され得るさまざまな実施形態を実例として示す添付の図面が参照される。他の実施形態が利用されてもよく、また、構造的又は機能的な変更が、本発明の範囲から逸脱することなくなされてもよいことが理解される。
【0026】
ディスプレイに対するフィルムの使用は周知である。例えばバックライトディスプレイにおいて、輝度強化フィルムは、視軸に沿って光を導くためにプリズム構造を利用し、これにより観る人が感受する光の輝度が強化される。別の例において、バックライトコンピュータディスプレイ画面は、特定の選択された方向においては均一な高輝度を維持し、同時に他の方向においては低輝度であるような、高コントラスト及び全体的な高輝度の画面を作製する目的で、数多くの異なるフィルムを使用することがある。このような画面には、プリズムフィルム又はレンズフィルムと組み合わせた拡散フィルムを含め、いくつかの種類のフィルムが使用され得る。
【0027】
ディスプレイにフィルムを使用する際の問題の1つは、コンピュータディスプレイなどの近距離で見るためのディスプレイについては、外観の要件が非常に高いことである。これは、そのような種類のディスプレイは長時間にわたって近距離で見られるため、非常に小さな欠陥でも検知され、観る人の気を散らす原因となり得る。そのような欠陥を除去するには、検査時間及び材質の両方において費用が高くつく可能性がある。
【0028】
欠陥は、いくつかの異なる状態で現われる。小班点、糸くず状、傷、異物封入などの物理的欠陥があり、また光学的現象の欠陥もある。最も一般的に起こる光学的現象は、「ウェットアウト」及びニュートン環である。「ウェットアウト」は、2つの表面が光学的に互いに接触し、これにより一方のフィルムからもう一方のフィルムへ光が拡散する際の屈折率の変化が事実上除去されて起こる。これは、光学的効果のために構造化表面を使用しているフィルムについては、構造化表面の屈折特性が帳消しになってしまうため、特に問題となる。「ウェットアウト」の影響は、斑点模様を形成し、画面上の外見が変わることである。ニュートン環は、2枚のフィルム間にあるホコリの粒子によって生成され得るような、2枚のフィルム間にある空気間隙がわずかに変化する際の結果として生じる。ニュートン環は、透過又は反射において形成され得る。ニュートン環が生じた結果、気を散らす原因になり得るような、画面上の輪郭模様を観る人が感受する。モアレ効果は、実質等しいピッチの線状プリズムを有する2枚以上のフィルムが重ね合わせられたときに生じ得る、光学的干渉パターンによって引き起こされる。上述の欠陥は、ディスプレイに非均一さ、斑点模様、又はでこぼこした外見をもたらすため、望ましくなく、観る人の気を散らすことになる。
【0029】
複数フィルムを用いたディスプレイアセンブリにおいて欠陥の問題を克服するために、いくつかのアプローチが行われている。1つは単に、従来の製造プロセスによって製造された、許容できるレベルのディスプレイアセンブリの低収率を容認することである。これは、競争の激しい市場では明らかに受け入れられない。第2のアプローチは、非常にクリーンかつ注意深い製造工程を採用し、厳格な品質管理基準を適用することである。これにより収率が高まる可能性があるが、クリーンな施設及び検査の費用をカバーするため、製造コストが増大する。
【0030】
欠陥を低減するための別のアプローチは、ディスプレイに、表面ディフューザ又はバルクディフューザのいずれかのディフューザを導入することである。このようなディフューザは多くの欠陥を覆い隠すことができ、少ない追加コストで製造収率を高めることができる。しかしながら、ディフューザは光を散乱し、観る人が感受する光の軸上輝度を低下させるため、性能が低下する。ディスプレイの欠陥発生を減らし、これによりごくわずかな追加コストで製造収率を改善し、同時に性能を維持するというニーズは引き続き存在する。
【0031】
本発明の実施形態は、フィルムを組み込んだディスプレイにおける目に見える欠陥の発生を低下させるプリズムフィルム、並びにそのフィルムを作製する方法及びシステムを目的とする。本明細書に記述されるアプローチによって形成されるプリズムフィルムは、プリズムの高さ及びピッチを変えることにより、モアレ防止及びウェットアウト防止の両方の機能をもたらすことができる。プリズムピッチの変動により、モアレ干渉縞の出現が低減される。プリズム高さの変動により、ウェットアウト領域の出現が低減される。
【0032】
本明細書に記述されているプリズムフィルムは特に液晶ディスプレイに有用であり、またオーバーヘッド及びリアプロジェクション画面などのさまざまな種類のプロジェクション画面にも有用である。本明細書に記述されている構成に従ったモアレ防止及びウェットアウト防止機能を有するプリズムフィルムは、予想外かつ好ましい数多くの結果を生み出す。例えば、最大偏位で生じるウェットアウト防止機能は、互いに等距離になるよう有利に配置することにより、フィルムのより均一な支持が供給され得る。プリズムピッチの変動は、収縮したピーク内に保持されるため、欠陥及びモアレコントラストを低減する能力は維持される。
【0033】
いくつかの実施形態において、単軸の面外運動を使用して、公称で同一面内であった一面上のプリズムマスターにおいて、ピーク及び深さの変動を同時に形成する。これらの機能を有するマスターから作製されるフィルムは、ウェットアウト防止性能において劇的な結果をもたらす。
【0034】
プリズムフィルムを作製するのに使用されるマスターは、ネガのレリーフでマスター表面に刻まれたプリズム機能を有する。マスターの製造後、このマスターを使用して、例えばエンボス加工、押出成形、鋳造及び硬化、並びに/又はその他のプロセスによってプリズムフィルムを作製することができる。
【0035】
プリズムフィルムマスターは通常、望ましいプリズム形状のネガである溝を有する円筒形ロールである。溝は、ダイヤモンド旋盤によってマスターに刻まれ得る。マスターの表面は典型的には硬銅であるが、アルミニウム、ニッケル、鋼、又はプラスチック(アクリルなど)の他の材質も使用することができる。マスターロールの周囲に、数多くの同軸円溝を刻むことができる。マスターロールは、ねじ切りとして知られる技法によって機械加工することができ、ここにおいて、回転するマスターロールの表面に対して平行方向にダイヤモンド工具が移動している間に、1本の連続したカットがロール上に刻まれるか、或いは、複数の同軸円溝が対象物に個々に形成されるプランジ切削が行われる。
【0036】
ダイヤモンド旋盤工作機械には典型的に、マスターに溝を刻むのに使用する切削工具の動きを制御するコントローラが含まれる。ダイヤモンド旋盤工作機械は、切削工具がマスター内に食い入る深さと、マスターの表面に沿って工具の側方向の動きとを、独立に制御することができる。更に、ダイヤモンド旋盤工作機械は、円筒形マスターの回転速度を独立に制御することができる。
【0037】
プリズムフィルム作製のためのマスターロール製造用に構成されたダイヤモンド旋盤工作機械を、図1に示す。円筒形マスター100が、ドラム駆動104によって、軸102を中心に回転する。この実施例では、マスター100は円筒形で示されているが、別の実施形態においては、マスターは平面であってもよい。ウェットアウト防止、モアレ防止の表面パターンを、同軸円溝をプランジ切削することにより、又はマスター100上に浅い溝110をねじ切り加工することにより(すなわち、マスター100の表面上を切削しながら切削工具108をz方向に移動させることにより)、マスター100に刻むことができる。マスター100の表面はフィルムの相補的表面を形成するため、マスター表面の局所的な最低点は、フィルムを作製したときのフィルム表面の局所的最高点に対応する。
【0038】
典型的に、コントローラ106は切削工具マウント109をz方向に側方駆動させ、回転するマスター100に沿って切削工具108を動かし、連続的なねじ切り、又は非連続的な同軸円切削を行う。コントローラ106はドラム駆動104の速度を制御し、マスター100の角度位置Ψをモニターすることができる。
【0039】
コントローラ106は切削工具マウント109の動きを制御し、切削工具を、マスター表面に対して平行のz方向に低周波で偏位させ、かつマスター表面に対して垂直のx方向に低周波で偏位させる。コントローラ106は、1つ以上の高速サーボアクチュエータ138を介して切削工具108の動きをコントロールし、これにより切削工具の高周波偏位を生成することもできる。切削工具108とマスター表面100とのなす角度θも、制御することができる。切削工具108のサイズ及び形状は、マスター100を使用して作製するフィルムの個々のタイプに応じて選択される。
【0040】
1つ以上のアクチュエータ138の動きを使用して、切削工具108の短く高速な偏位を生成することができ、同時に切削工具マウント109の動きを使用して、切削工具108の長くゆっくりの偏位を生成することができる。マウントの低周波の動きを使用して、高速サーボアクチュエータ138のストローク長さよりも長い距離で、マスター100の表面切削を変えることができる。コントローラ106は、切削工具108の高周波及び低周波の動きを制御する制御信号を生成する。制御信号には、切削工具マウント109を対象とする低周波成分、及びアクチュエータ138を対象とする高周波成分が含まれ得る。
【0041】
制御信号の高周波及び/又は低周波成分は、マスター100の回転に同期していてもよく、周期的、ランダム、非ランダム、又は擬似ランダムであってもよい。例えば、切削工具108が大きくゆっくりした動きをするよう制御されているマウント109の動きの間、切削工具108が小刻みで速い動きをするよう、1つ以上のアクチュエータ138が制御され得る。ここにおいて、アクチュエータ138によって生成された切削工具108の高周波の動きは、マウント109によって生成された切削工具108の低周波の動きと重ね合わせられる。マウント109及び/又はアクチュエータ138の動きは、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムのいずれでもあり得る。擬似ランダムの動きは、コンピュータ生成の乱数によって達成することができる。記録された同じ乱数を含むよう、そしてその結果得られる構造が各ロールで同じになるよう、各ロール工具に対して同じランダム信号を繰り返すことが好ましいことがある。いくつかの実施形態において、アクチュエータ138及び/又は工具マウント109の動きは全般に非ランダム(例えば周期的又は正弦波パターン)であってよく、これを散発的なランダムな動きによって無作為化し、溝110のピッチ又は深さのパターンに位相ずれを起こすことができる。
【0042】
1つ以上のアクチュエータ138は、切削工具マウント107の動きによって通常は達成され得ないような高周波で切削工具108を動かすよう作動する。各アクチュエータ138には、最終的に切削工具108の動きを制御するための、コントローラ106からの電気信号をアクチュエータ138の動きに変換するための圧電変換器(PZT)又はその他の変換器を有する、単軸高速ツールサーボが含まれる。高速サーボアクチュエータの応答の周波上限は、数キロヘルツから数十キロヘルツの範囲でよく、一方、切削工具マウントの応答周波は通常、5Hzを超えることはない。例えば、工具マウント109の動きは、約500,000ミクロンの距離(波長)にわたり、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの溝ピッチにおいて、低周波の変動を達成することができる。工具マウント109の動きは、約2,000,000ミクロンの波長で、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの溝深さにおいて、低周波の変動を達成することができる。
【0043】
アクチュエータ138がなすストローク長さは、波長約5ミクロン〜約500ミクロンの範囲で、例えば50ミクロン未満、又は約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲であり得る。より高い周波変動範囲を採用して、欠点隠しと光散乱の強化をもたらすことができる。広い視野角が望ましい実施形態において、例えば、より細かいピッチにすると、ディスプレイのカットオフ角度を和らげ、スムーズになる。ストロークの長さと上方周波応答との間にはトレードオフ関係があり得ることが認識されるだろう。
【0044】
結果として得られる、マスター100の表面上に刻まれた溝110は、切削工具108に対するロールの表面速度と、切削工具108の偏位間の平均時間とに依存して、ロール円周上に局所的x及び/又はz偏位の間の平均間隔を有している。例えば、直径30.48cm(12インチ)のドラムを毎分200回転で回転させ、同時にアクチュエータ138が正弦曲線状に約20kHzで駆動させることができる。結果として得られる波長は、アクチュエーションベクトル平面で160ミクロンとなる。
【0045】
図2は、切削工具236及びアクチュエータ218、216をダイヤモンド旋盤工作機械に取り付けるのに使用される工具マウントアセンブリ200の部分平面図を示す。工具マウントアセンブリ200には、単軸x方向アクチュエータ218、単軸z方向アクチュエータ216、及び切削工具236を保持することができる本体212が含まれる。この実施例において、アクチュエータ216、218はPZT積層物である。PZT積層物218、216は、それぞれが切削工具をx方向及びz方向に動かすよう配置される。PZT積層物218、216は、切削工具236の正確に制御された動きのために必要な安定性を得るため、工具マウントアセンブリ212にしっかりと固定される。PZT積層物218、216には、コントローラからの信号を受信するための電気的接続230、234が含まれる。
【0046】
切削工具先端235は、マスターロールの表面に対して垂直方向にされ得る。マスターが回転している際の、x軸アクチュエータ218の制御下にある切削工具の動きにより、可変深さの平行な溝がマスターに刻まれる。マスターが回転している際の、z軸方向アクチュエータ216の制御下にある切削工具の動きにより、可変ピッチの溝がマスターロールに刻まれる。いくつかの構成において、溝は少なくともいくつかの方向において、実質直線状であり実質平行であり得る。いくつかの実施形態において、溝は交差し得る。
【0047】
プリズムフィルム作製に使用するための独立したx及びzの動きを有する切削工具アセンブリは、同一所有者の米国特許公開第2007/0107568号に記述されており、これは参考として本明細書に組み込まれる。
【0048】
本発明の一実施形態は、切削工具の動きを制御するために単軸アクチュエータを1つだけ使用する、プリズムフィルムマスター製造のシステム及び方法を目的とする。単軸アクチュエータの使用は、相互に依存するx及びz成分を有する溝の切削に使用され得る。
【0049】
切削工具は、マスター表面に対する面外運動を切削工具にもたらすよう、単軸アクチュエータの作動によってx成分及びz成分の両方を有する軌道に沿って動くように、切削工具がマスターに対して方向付けされる。この切削工具の面外運動は、溝の深さ及びピッチの両方において変動をもたせて、マスターロールに溝を刻む。プリズムフィルムがこのマスターロールを使用して作製されると、マスターの溝の可変ピッチ、可変深さは、可変ピッチ、可変高さのプリズムに変換される。前述のように、可変ピッチ、可変高さのプリズムは、モアレ防止及びウェットアウト防止機能をプリズムフィルムにもたらす。
【0050】
1つの単軸アクチュエータの作動によって、深さ及びピッチ両方の変動を有する溝を刻むような切削工具の線状の動きを生み出すことができる。単軸アクチュエータ1つを使用することにより、必要な構成要素の数が低減され、工具マウントの構造が単純化され、コントローラエレクトロニクスが単純化され、構造化フィルムの作製可能な速度が増大し、モアレ防止機能とウェットアウト防止の両方のプリズム機能をもたらすマスター工具が製造される。単軸アクチュエータを使用することにより達成可能なピッチの変動は、波長約5〜約500ミクロンで、ピッチ変動が約0.5〜約50ミクロン未満である。単軸アクチュエータを使用することにより達成可能な深さの変動は、波長約5〜約500ミクロンで、深さ変動が約0.5〜約50ミクロン未満である。
【0051】
図3Aは、ダイヤモンド旋盤工作機械に切削工具310及び単軸アクチュエータ320を取り付けるよう構成された工具マウント300の一部分を示す。切削工具310及びアクチュエータ320は、アクチュエータ320(例えばPZTアクチュエータ)の作動により切削工具310の軸外の動きが生成されるように向けられる。PZTアクチュエータ320の作動によって、切削工具310が、x及びzの両成分を有しかつマスター325の表面に対して軸外となる軌道に沿って動く。
【0052】
図3Bは、図3Aに示されている単軸アクチュエータ構成のX−Z面における切削工具310の軌道350を示す。切削工具310は軌道350に沿って前後に動き、マスターに可変深さ及び可変ピッチの溝を刻む。軌道350は、望ましいx成分及びz成分の量に応じて単軸アクチュエータについて調整することができる。単軸アクチュエータの移動能力によって、最大の斜辺長さが示される。
【0053】
例えば、20ミクロンの移動が可能なPZT積層物では、ウェットアウト防止の3ミクロン偏位(x軸成分)が望ましいように、アクチュエータを回転することができる。x軸成分が3ミクロンに等しく、斜辺が20ミクロンに等しいとき、アクチュエータはマスター表面に対する角度Γが8.6度の方向に向けられる。ピタゴラスの定理を使用して、z軸沿いのモアレ防止成分は19.7ミクロンと算出される。
【0054】
切削工具310の先端は、マスターの表面に対して垂直、又はマスター表面に対してある角度をなす方向に向けることができる。工具先端の向きは、さまざまな方法で達成することができる。図3Cに示すように、方向付けスペーサ370をPZTアクチュエータ320と工具シャンク360との間に使用することができる。図3Dに示すように、工具シャンク365には望ましい形状を直接もたせることができる。工具310は、図3Aに示すように、シャンク366上で望む角度に向けることができる。工具先端305は、図3Eに示すように、望ましい方向を含むように研磨又は成形することができる。
【0055】
図4は、本発明の実施形態に従って、モアレ防止、ウェットアウト防止のプリズムフィルムを作製するのに用いるマスターの切削方法を示したフローチャートである。切削工具は、マスター表面に対して移動し(410)、その表面に溝を刻む。表面に対する切削工具の移動により、マスター表面に溝のねじ切り、又は同軸円状の溝の切削が形成され得る。切削工具が表面に対して移動すると、単軸高速サーボアクチュエータを介して、ゼロではないx及びz成分を有し表面に対して面外となる軌道に沿って前後に移動することになる(420)。切削工具の軌道沿いの移動により、可変ピッチと可変深さの両方を有するよう、溝が表面に刻まれる。
【0056】
モアレ防止及びウェットアウト防止機能を有するプリズムフィルムは、図5に示すように、特定の寸法で間隔が空いた1組のローラーの間で鋳造することにより成形することができる。図5において、フィルム502はリザーバ501から引き出され、ダイ500に通される。フィルム502はニップロール504と、望ましいプリズム構造のネガである溝507を有するマスターロール506との間に挟まる。マスターロール506は、フィルム502の上面にプリズムパターン508を形成する。ローラー504と506との間を通過した後、フィルム502は例えば冷却器520の中で冷まされ、ローラー504と506によってエンボス加工された模様が維持される。
【0057】
プリズムフィルムの一実施形態において、マスターロール506は、ある軌道に沿って切削工具の高周波の偏位によって刻まれた溝506を有し、この軌道は、マスターロールの表面に対して面外であり、ゼロではないx及びz成分を有する。マスターロール506によって形成されたプリズムは、モアレ防止機能を提供するため、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムのピッチ変動を有することがあり、及び/又はウェットアウト防止機能を提供するため、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムの高さ変動を有することがある。例えば、プリズム高さ及びピッチの変動は、波長約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有し得る。
【0058】
図6Aは、面外軌道に沿った切削によって形成されたx及びz軸偏位を有するマスターロールを使用して形成されたプリズムフィルム600を示す。図6A〜6Cのプリズムフィルムに図示されている線は、プリズムの高さ変動をより明確に示すためのものである。プリズムフィルム600には、プリズムピッチpにおけるモアレ防止の変動と、プリズム高さhにおけるウェットアウト防止の変動の両方を有するプリズム610が含まれる。図6Bは、図6Aのプリズムフィルム600のプリズムピーク610の断面図であり、プリズム高さ及びピッチの変動を示している。比較のため、図6Cに、高さの変動がなくピッチ変動だけを有するプリズムをもつプリズムフィルム650の断面図を示す。
【0059】
別のプリズムフィルム実施形態において、マスターロールは、1つの単軸高速サーボアクチュエータによって制御された切削工具の高周波の動きを、切削工具の低周波のx軸方向の動きと組み合わせることによって、刻まれた溝を有している。単軸アクチュエータは、z軸アクチュエータであってよく、又は、図3Aに示すようなx及びz方向の面外運動を提供する単軸アクチュエータであってもよい。プリズムフィルムには、モアレ防止機能を提供するためピッチの高周波変動を有するプリズムが含まれ、ここで一部のプリズムは、ウェットアウト防止機能を提供するために、隣接するプリズムよりも高い公称高さを有する。この種のプリズムフィルムの一例が、図7A及び7Bに、それぞれ平面図及び断面図として示されている。図7Aにおいて、プリズム701〜708はプリズムピッチの変動を呈している。プリズム702及び706の公称高さは、プリズム701、703〜705、707、及び708の公称高さよりも高い。図7A及び7Bのプリズムフィルムに図示されている線は、プリズムの高さ変動をより明確に示すためのものである。
【0060】
更に別のプリズムフィルムの実施形態において、マスターロールは、z軸アクチュエータによって制御された切削工具の高周波のz軸の動きによって刻まれた第1群の溝を有している。第1群の溝は、x軸アクチュエータによって制御された切削工具の高周波の動きによって刻まれた第2群の溝の間に相互に挟み込まれている。例えば、マスターロールは、z軸変動を有するm本の溝が、x軸変動を有するn本の溝に相互に挟み込まれている状態であり得る。図8に、m及びnが1の場合の、そのようなマスターロールを用いて形成されたプリズムフィルムを示す。プリズム801、803、805、807は、ウェットアウト防止を提供するため、高さに高周波の変動を有する。ウェットアウト防止プリズム801、803、805、807は、モアレ防止機能を提供するためピッチに高周波の変動を有するプリズム802、804、806、808の間に相互に挟み込まれている。
【0061】
プリズムフィルムの更なる一実施形態において、マスターロールに刻まれた溝には、マスターロール表面に対する面外軌道に沿って切削工具を移動させることにより単軸アクチュエータによって形成された高周波のピッチ及び深さ変動に重ね合わせられた、プリズム対プリズムの低周波のピッチ変動が含まれる。図9は、この種のマスターロールを使用して形成されたプリズムフィルム900を示す。プリズム910の公称ピッチは、プリズムごとに徐々に変化し、一部のプリズム間のピッチP1は、別のプリズム間のピッチP2よりも小さい。各プリズム910には、前述のように、マスター表面に対する面外軌道に沿って切削の速い動きにより刻まれたピッチ及び深さの変動に対応する、高さ及びピッチの高周波の変動も含まれる。可変ピッチプリズムフィルムに関する更なる詳細、並びにそのようなフィルムを作製するための方法及びシステムは、同一所有者の米国特許第5,919,551号に記述されており、参考として本明細書に組み込まれる。
【0062】
本発明によって作製されたフィルムは、望ましくは実質透明な物質から作製される。本発明に従ったフィルムに、拡散バルク材質を組み込むこともできるが、但し多くの場合これは光学フィルムの性能を低下させ得る。更に、単一のフィルムに複数のフィルム層及び材質を含めることができ、これにより例えば反射偏光などの特定の光学的硬化を生み出すことができる。アクリル類及びポリカーボネート類は、フィルム材質の有力な候補である。また、フィルムは2つの部分からなる構造にすることができ、構造化表面は基材状で鋳造及び硬化される。例えば、ポリエステル基材上に鋳造された紫外線硬化性アクリル類を使用することができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムは、硬化される構造を載せるための基材として有用であることが示されている。ポリエチレンナフタレート(PEN)も、光学フィルムのためのポリマー材質として有用であることが示されている。
【0063】
ウェットアウト防止、モアレ防止表面を有するフィルムを用いた装置の一例を、図10の分解図に示す。液晶ディスプレイ(LCD)の照明モジュール1000は、蛍光ランプ1002及び反射鏡1003を光源として使用し、ライトガイド1004内に光を導く。ライトガイド1004は、下の表面1007上に拡散的に反射する抽出ドット1006を有し得る。広帯域の拡散反射鏡1008が、ライトガイド1004の下側に配置され、ガイド1004の上にある構成要素からリサイクルされた光をすべて反射する。蛍光ランプ1002の光がライトガイド1004の側面から入り、ガイド1004の表面で内部的に反射することにより、ライトガイド1004に沿って光が導かれる。抽出ドット1006の1つに入射した光線1010は、拡散的に反射され、数多くの拡散光線1012を生成する。
【0064】
抽出ドット1006から上方向に伝搬された光が、ガイド1004の上面を通り抜ける。ディフューザ1014はライトガイド1004の上に配置されて、ガイド1004から抽出された光を更に拡散し、これによりLCDディスプレイ1024で結果として得られる照明をより均一なものにする。
【0065】
上向きの方向の連続的な光は、上側及び下側のプリズムフィルム1018、1016を通り抜けることができ、これらはそれぞれ、本明細書で記述したプリズム構造に類似したプリズム構造を上面に有している。フィルム1018、1016は、上側フィルム1018のプリズム軸が、下側フィルム1016のプリズム軸に対してある角度(例えば約90度)を向くよう配置される。光は、上側又は下側プリズムフィルム1018、1016のいずれかによってリサイクルされ、反射鏡1008によって反射される。交差する一組のフィルム1016、1018は、好ましい視軸に沿って光出力を導く役目をする。
【0066】
反射偏光フィルム1020は、上側フィルム1018の上に配置される。反射偏光板1020は、一つの偏光の光を透過し、直交する偏光の光を反射する。よって、偏光フィルム1020を通過した光は偏光している。偏光フィルム1020によって反射された光は、反射鏡1008によって再循環させることができる。
【0067】
LCDマトリックス1024は、偏光フィルム1020の上に配置される。LCDマトリックスを通過した偏光は、情報(例えば画像)によって空間的に偏光され、これが透過される。モジュール1000には、例えば上側フィルム1018と偏光フィルム1020との間に配置するカバーシートなど、他の構成要素を含めることができる。
【0068】
図10に示すようなバックライトLCDディスプレイは、例えばテレビ、コンピュータモニター、携帯ゲーム装置及び携帯電話などのさまざまな装置に組み込むことができる。
【0069】
図11A〜11Cは、本明細書に記載されているプロセスに従って形成されたプリズムフィルムの顕微鏡写真である。図11A及び11Bはそれぞれ、図3及び4に関連して記述した、軌道切削プロセスによって製造されたマスターから形成されたプリズムフィルムの、平面図及び断面図である。図11A及び11Bは、高さとピッチが変動し、実質線状で実質平行なプリズムを示している。図11Cは、軌道切削プロセスによって形成された、交差するプリズムを示す。図11Dは、軌道切削プロセスによって製造された交差するプリズムの別の形状を示す。
【0070】
モアレ防止のピッチ変動及びウェットアウト防止の高さ変動を備えたプリズムを有するフィルムのさまざまな構成が、上記に説明された。記述されたさまざまなプリズム構造は、欠陥を減少させるフィルムを提供するため、任意の組み合わせで使用することができることが理解されるであろう。例えば、高周波のx及び/又はz変動は、低周波のx及び/又はz変動と任意に組み合わせて使用することにより、モアレ防止、ウェットアウト防止のフィルムを提供することができる。
【0071】
本発明の様々な実施形態の上述の説明を、例証及び説明の目的で提示してきた。これまでの記述は、包括的であることも、開示されたそのままの形態に本発明を限定することも意図しない。以上の教示を考慮すれば、多くの修正形態及び変形形態が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変するシステムであって、
切削工具と、
該切削工具と該表面との間に相対的な動きを提供するよう構成された駆動メカニズムと、
該表面に対して面外の軌道に沿って該切削工具を動かすよう接続された単軸アクチュエータと、
を含み、該軌道は該表面に対し垂直でゼロではないx成分、及び該表面に対し平行でゼロではないz成分を有しており、該切削工具と該表面との間の相対的な動きと同時に起こる該軌道に沿った該切削工具の動きが、該表面に対して可変深さ及び可変ピッチを有する溝を刻むよう構成されている、システム。
【請求項2】
前記表面が円筒形であり、
前記駆動メカニズムが、該円筒形表面を回転させることにより、前記切削工具と該表面との間の相対的な動きを提供するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記切削工具の非ランダム、ランダム、又は擬似ランダムな動きを生み出す信号を生成するよう構成されたコントローラを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記軌道が、前記表面の面に対して約1度〜約89度の範囲、又は約91度〜約179度の範囲の角度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ピッチの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記深さの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記駆動メカニズムが、波長約500,000ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの溝ピッチにおける低周波変動を生成し、そのピッチの低周波変動が、前記軌道に沿った前記切削工具の動きによる変動に重ね合わせられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記駆動メカニズムが、前記切削工具を動かして、波長約2,000,000ミクロンで、溝深さ約0.5ミクロン〜約50ミクロンの低周波変動を生成するように構成され、前記切削工具の前記軌道に沿った動きに起因する変動に、該深さの低周波変動が、重ね合わせられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記アクチュエータが、その作動方向が前記軌道に沿うように前記表面に対して向けられた1つの単軸圧電アクチュエータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記軌道のx及びz成分が調整可能な、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記表面に対して実質垂直に、前記切削工具先端形状を向けるよう構成されたメカニズムを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記メカニズムが、前記アクチュエータと前記切削工具との間に配置されたスペーサを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記切削工具が、前記表面に対して或る角度θに向けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変する方法であって、
該表面を横断して切削工具を動かすことと、
該表面を該切削工具が横断するとき、該表面に可変ピッチ及び可変深さを有する溝を刻むために、該切削工具を更に、該表面に対して垂直でゼロではないx成分及び該表面に対して平行でゼロではないz成分を有する軌道に沿って前後に動かすことを含む方法。
【請求項15】
前記表面が円筒形であり、
該表面を横断して前記工具を動かすことが、該円筒形表面にねじ切りを形成することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
溝ピッチに低周波変動を刻み、これが、前記軌道に沿った前記切削工具の動きによって形成される変動に重ね合わせられるような、前記切削工具の動きを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
溝の深さについて低周波変動を刻み、これが、前記軌道に沿った前記切削工具の動きによって形成される変動に重ね合わせられるような、前記切削工具の動きを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
表面と、
該表面における溝とを含み、該溝が可変ピッチ及び可変深さを有し、ピッチの変動が深さの変動に依存する、光学フィルムを作製するためのマスター。
【請求項19】
前記ピッチの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲を有し、前記深さの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有する、請求項18に記載のマスター。
【請求項20】
前記ピッチの変動及び前記深さの変動が、相対的に低周波のピッチ変動と、相対的に低周波の深さ変動の、一方又は両方と重ね合わせられる、請求項18に記載のマスター。
【請求項21】
複数のプリズムを含み、該プリズムそれぞれがピッチの変動及び高さの変動を有し、このときピッチの該変動が高さの該変動に依存する、光学フィルム。
【請求項22】
ピッチの前記変動及び高さの前記変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜50ミクロンである、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項23】
前記プリズムが実質平行である、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項24】
前記プリズムが交差する、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項25】
第1群の前記プリズムが第2群の前記プリズムに相互に挟み込まれ、第1群の該プリズムが第2群の該プリズムよりも高い公称高さを有する、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項26】
前記相互挟み込みが一対一である、請求項25に記載の光学フィルム。
【請求項27】
第1群の前記プリズムが第2群の前記プリズムに相互に挟み込まれ、第1群の該プリズムが第2群の該プリズムよりも大きな公称ピッチを有する、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項28】
前記相互挟み込みが一対一ではない、請求項27に記載の光学フィルム。
【請求項29】
前記プリズムのピッチ及び高さの変動が、比較的低い周波数のプリズム高さの変動と、比較的低い周波数のプリズムピッチの変動の、一方又は両方に重ね合わせられる、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項30】
実質平らな表面と、
第1群の各プリズムは、該平らな表面に実質平行な面内にプリズムピークを有してピッチの変動を有し、第2群の各プリズムは第1群のプリズムよりも相対的に高い高さを有する、第2群のプリズムに相互に挟み込まれた第1群のプリズムを含む第2の表面と、
を含む光学フィルム。
【請求項31】
前記ピッチ変動が、波長約5〜約50ミクロンで約0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲である、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項32】
前記相互挟み込みが一対一である、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項33】
前記相互挟み込みが一対一ではない、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項34】
前記ピッチ変動がランダム又は擬似ランダムである、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項35】
前記ピッチ変動が非ランダムである、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項36】
プリズムの前記第2群がピッチ変動を有する、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項37】
光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変するシステムであって、
切削工具と、
該切削工具と該表面との間に相対的な動きを提供するよう構成され、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの低周波の深さ変動を有するよう該表面に溝を刻むため、該表面に対して垂直に該切削工具を動かすよう更に構成された、機械駆動メカニズムと、
高周波のピッチ変動を溝に刻むよう、該表面に対して平行に該切削工具を動かすよう構成され、このとき高周波の該ピッチ変動は、約0.5ミクロン〜約50ミクロンで波長約5ミクロン〜約500ミクロンである、アクチュエータと、
を含む、システム。
【請求項38】
前記ピッチ変動がランダム又は擬似ランダムである、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記深さ変動が非ランダムである、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲の低周波の深さ変動を有する溝を表面に刻むよう、切削工具を動かすことと、
波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲の高周波ピッチ変動で溝を刻むよう、切削工具を動かすことと、
を含む、光学フィルムを作製するためのマスターを形成するために表面を改変する方法。
【請求項41】
前記の高周波のピッチ変動が、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記マスターを使用してフィルムにプリズムを形成することを更に含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
表面と、
該表面の溝とを含み、各溝がピッチ変動及び深さ変動を有し、該ピッチ変動は該深さ変動よりも高い周波数を有する、光学フィルムを作製するためのマスター。
【請求項44】
前記ピッチ変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有し、前記深さ変動が、0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲を有する、請求項43に記載のマスター。
【請求項45】
前記高周波のピッチ変動が、ランダム又は擬似ランダムである、請求項43に記載のマスター。
【請求項46】
前記低周波の深さ変動が、非ランダムである、請求項43に記載のマスター。
【請求項47】
実質平らな表面と、
第1群の各プリズムは、該平らな表面に実質平行な面内にプリズムピークを有してピッチの変動を有し、第2群の各プリズムは高さの変動を有するプリズム配列を含む第2の表面と、
を含む光学フィルム。
【請求項48】
前記ピッチの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有し、前記高さの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有する、請求項47に記載の光学フィルム。
【請求項49】
前記第1群のプリズムが、第2群のプリズムに相互に挟み込まれる、請求項47に記載の光学フィルム。
【請求項50】
前記相互挟み込みが一対一である、請求項49に記載の光学フィルム。
【請求項51】
前記相互挟み込みが一対一ではない、請求項49に記載の光学フィルム。
【請求項52】
前記ピッチ変動が非ランダムである、請求項47に記載の光学フィルム。
【請求項53】
前記高さ変動が非ランダム、ランダム、又は擬似ランダムである、請求項47に記載の光学フィルム。
【請求項1】
光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変するシステムであって、
切削工具と、
該切削工具と該表面との間に相対的な動きを提供するよう構成された駆動メカニズムと、
該表面に対して面外の軌道に沿って該切削工具を動かすよう接続された単軸アクチュエータと、
を含み、該軌道は該表面に対し垂直でゼロではないx成分、及び該表面に対し平行でゼロではないz成分を有しており、該切削工具と該表面との間の相対的な動きと同時に起こる該軌道に沿った該切削工具の動きが、該表面に対して可変深さ及び可変ピッチを有する溝を刻むよう構成されている、システム。
【請求項2】
前記表面が円筒形であり、
前記駆動メカニズムが、該円筒形表面を回転させることにより、前記切削工具と該表面との間の相対的な動きを提供するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記切削工具の非ランダム、ランダム、又は擬似ランダムな動きを生み出す信号を生成するよう構成されたコントローラを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記軌道が、前記表面の面に対して約1度〜約89度の範囲、又は約91度〜約179度の範囲の角度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ピッチの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記深さの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記駆動メカニズムが、波長約500,000ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの溝ピッチにおける低周波変動を生成し、そのピッチの低周波変動が、前記軌道に沿った前記切削工具の動きによる変動に重ね合わせられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記駆動メカニズムが、前記切削工具を動かして、波長約2,000,000ミクロンで、溝深さ約0.5ミクロン〜約50ミクロンの低周波変動を生成するように構成され、前記切削工具の前記軌道に沿った動きに起因する変動に、該深さの低周波変動が、重ね合わせられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記アクチュエータが、その作動方向が前記軌道に沿うように前記表面に対して向けられた1つの単軸圧電アクチュエータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記軌道のx及びz成分が調整可能な、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記表面に対して実質垂直に、前記切削工具先端形状を向けるよう構成されたメカニズムを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記メカニズムが、前記アクチュエータと前記切削工具との間に配置されたスペーサを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記切削工具が、前記表面に対して或る角度θに向けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変する方法であって、
該表面を横断して切削工具を動かすことと、
該表面を該切削工具が横断するとき、該表面に可変ピッチ及び可変深さを有する溝を刻むために、該切削工具を更に、該表面に対して垂直でゼロではないx成分及び該表面に対して平行でゼロではないz成分を有する軌道に沿って前後に動かすことを含む方法。
【請求項15】
前記表面が円筒形であり、
該表面を横断して前記工具を動かすことが、該円筒形表面にねじ切りを形成することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
溝ピッチに低周波変動を刻み、これが、前記軌道に沿った前記切削工具の動きによって形成される変動に重ね合わせられるような、前記切削工具の動きを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
溝の深さについて低周波変動を刻み、これが、前記軌道に沿った前記切削工具の動きによって形成される変動に重ね合わせられるような、前記切削工具の動きを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
表面と、
該表面における溝とを含み、該溝が可変ピッチ及び可変深さを有し、ピッチの変動が深さの変動に依存する、光学フィルムを作製するためのマスター。
【請求項19】
前記ピッチの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲を有し、前記深さの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有する、請求項18に記載のマスター。
【請求項20】
前記ピッチの変動及び前記深さの変動が、相対的に低周波のピッチ変動と、相対的に低周波の深さ変動の、一方又は両方と重ね合わせられる、請求項18に記載のマスター。
【請求項21】
複数のプリズムを含み、該プリズムそれぞれがピッチの変動及び高さの変動を有し、このときピッチの該変動が高さの該変動に依存する、光学フィルム。
【請求項22】
ピッチの前記変動及び高さの前記変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜50ミクロンである、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項23】
前記プリズムが実質平行である、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項24】
前記プリズムが交差する、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項25】
第1群の前記プリズムが第2群の前記プリズムに相互に挟み込まれ、第1群の該プリズムが第2群の該プリズムよりも高い公称高さを有する、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項26】
前記相互挟み込みが一対一である、請求項25に記載の光学フィルム。
【請求項27】
第1群の前記プリズムが第2群の前記プリズムに相互に挟み込まれ、第1群の該プリズムが第2群の該プリズムよりも大きな公称ピッチを有する、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項28】
前記相互挟み込みが一対一ではない、請求項27に記載の光学フィルム。
【請求項29】
前記プリズムのピッチ及び高さの変動が、比較的低い周波数のプリズム高さの変動と、比較的低い周波数のプリズムピッチの変動の、一方又は両方に重ね合わせられる、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項30】
実質平らな表面と、
第1群の各プリズムは、該平らな表面に実質平行な面内にプリズムピークを有してピッチの変動を有し、第2群の各プリズムは第1群のプリズムよりも相対的に高い高さを有する、第2群のプリズムに相互に挟み込まれた第1群のプリズムを含む第2の表面と、
を含む光学フィルム。
【請求項31】
前記ピッチ変動が、波長約5〜約50ミクロンで約0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲である、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項32】
前記相互挟み込みが一対一である、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項33】
前記相互挟み込みが一対一ではない、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項34】
前記ピッチ変動がランダム又は擬似ランダムである、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項35】
前記ピッチ変動が非ランダムである、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項36】
プリズムの前記第2群がピッチ変動を有する、請求項30に記載の光学フィルム。
【請求項37】
光学フィルムを作製するためのマスターを製造するため、表面を改変するシステムであって、
切削工具と、
該切削工具と該表面との間に相対的な動きを提供するよう構成され、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの低周波の深さ変動を有するよう該表面に溝を刻むため、該表面に対して垂直に該切削工具を動かすよう更に構成された、機械駆動メカニズムと、
高周波のピッチ変動を溝に刻むよう、該表面に対して平行に該切削工具を動かすよう構成され、このとき高周波の該ピッチ変動は、約0.5ミクロン〜約50ミクロンで波長約5ミクロン〜約500ミクロンである、アクチュエータと、
を含む、システム。
【請求項38】
前記ピッチ変動がランダム又は擬似ランダムである、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記深さ変動が非ランダムである、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲の低周波の深さ変動を有する溝を表面に刻むよう、切削工具を動かすことと、
波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲の高周波ピッチ変動で溝を刻むよう、切削工具を動かすことと、
を含む、光学フィルムを作製するためのマスターを形成するために表面を改変する方法。
【請求項41】
前記の高周波のピッチ変動が、ランダム、擬似ランダム、又は非ランダムである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記マスターを使用してフィルムにプリズムを形成することを更に含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
表面と、
該表面の溝とを含み、各溝がピッチ変動及び深さ変動を有し、該ピッチ変動は該深さ変動よりも高い周波数を有する、光学フィルムを作製するためのマスター。
【請求項44】
前記ピッチ変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有し、前記深さ変動が、0.5ミクロン〜50ミクロンの範囲を有する、請求項43に記載のマスター。
【請求項45】
前記高周波のピッチ変動が、ランダム又は擬似ランダムである、請求項43に記載のマスター。
【請求項46】
前記低周波の深さ変動が、非ランダムである、請求項43に記載のマスター。
【請求項47】
実質平らな表面と、
第1群の各プリズムは、該平らな表面に実質平行な面内にプリズムピークを有してピッチの変動を有し、第2群の各プリズムは高さの変動を有するプリズム配列を含む第2の表面と、
を含む光学フィルム。
【請求項48】
前記ピッチの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有し、前記高さの変動が、波長約5ミクロン〜約500ミクロンで約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲を有する、請求項47に記載の光学フィルム。
【請求項49】
前記第1群のプリズムが、第2群のプリズムに相互に挟み込まれる、請求項47に記載の光学フィルム。
【請求項50】
前記相互挟み込みが一対一である、請求項49に記載の光学フィルム。
【請求項51】
前記相互挟み込みが一対一ではない、請求項49に記載の光学フィルム。
【請求項52】
前記ピッチ変動が非ランダムである、請求項47に記載の光学フィルム。
【請求項53】
前記高さ変動が非ランダム、ランダム、又は擬似ランダムである、請求項47に記載の光学フィルム。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【公表番号】特表2010−540271(P2010−540271A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525862(P2010−525862)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/071122
【国際公開番号】WO2009/042286
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/071122
【国際公開番号】WO2009/042286
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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