説明

光学ヘッド及び光学記録装置

【課題】小さな略円形状の光スポットを用いて高密度の情報記録を行うことの可能な光学ヘッドと、それを備えた光学記録装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に対する情報記録に光を利用する光学ヘッドであって、集光機能を有するプラナー導波路18Aと、そのプラナー導波路18Aで集光された光のモードフィールド径を縮小するスポットサイズ変換部19と、を有する。スポットサイズ変換部19は2次元導波路を有し、その2次元導波路が断面積を滑らかに変化させることによりモードフィールド径を縮小する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学ヘッド及び光学記録装置に関するものであり、例えば、情報記録に磁界と光を利用する光アシスト式磁気記録ヘッドと、それを備えた光アシスト式磁気記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記録方式では、記録密度が高くなると磁気ビットが外部温度等の影響を顕著に受けるようになる。このため高い保磁力を有する記録媒体が必要になるが、そのような記録媒体を使用すると記録時に必要な磁界も大きくなる。記録ヘッドによって発生する磁界は飽和磁束密度によって上限が決まるが、この値は材料限界に近づいており飛躍的な増大は望めない。そこで、記録時に局所的に加熱して磁気軟化を生じさせ、保磁力が小さくなった状態で記録し、その後に加熱を止めて自然冷却することにより、記録した磁気ビットの安定性を保証する方式が提案されている。この方式は熱アシスト磁気記録方式と呼ばれている。熱アシスト磁気記録方式では、記録媒体の加熱を瞬間的に行うことが望ましい。また、加熱する機構と記録媒体とが接触することは許されない。このため、加熱は光の吸収を利用して行われるのが一般的であり、加熱に光を用いる方式は光アシスト式と呼ばれている。
【0003】
光アシスト式の磁気記録ヘッドとして、集光機能付きプラナー導波路を有する光学ヘッド部分と、その光学ヘッド部分からの射出光で照射された部分に磁気記録を行う磁気ヘッド部分と、を備えたものが、特許文献1で提案されている。そのプラナー導波路は、同一平面上で高屈折率層の両側に低屈折率層を配置した構成になっている。そして、回折格子から成る光導入部から高屈折率層に平行光が入射し、低屈折率層との境界から成る放物面で全反射して集光する構成になっている。
【特許文献1】米国特許第6,944,112号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の記録ヘッドでは、プラナー導波路内で導波路断面の長辺方向にのみ集光が行われ、導波路断面の短辺方向(すなわちプラナー導波路の厚み方向)に集光は行われない。つまり、導波路断面の短辺方向のスポットサイズは、プラナー導波路の厚みのみで決定されることになる。したがって、プラナー導波路が厚いほど得られる光スポットは導波路断面の短辺方向に長くなり、情報記録の高密度化が困難になる。この光スポットを略円形状に小さくするためにプラナー導波路の厚みを薄くすると、導波損失が生じてしまい、光が入射するときのカップリング効率が低くなる。結果として、集光機能付きプラナー導波路のみでスポットサイズ(特にプラナー導波路の厚み方向のスポットサイズ)の縮小を行うのには限界がある。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、小さな略円形状の光スポットを用いて高密度の情報記録を行うことの可能な光学ヘッドと、それを備えた光学記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明の光学ヘッドは、記録媒体に対する情報記録に光を利用する光学ヘッドであって、集光機能を有するプラナー導波路と、そのプラナー導波路で集光された光のモードフィールド径を縮小するスポットサイズ変換部と、を有することを特徴とする。
【0007】
第2の発明の光学ヘッドは、上記第1の発明において、前記スポットサイズ変換部が2次元導波路を有し、その2次元導波路が断面積を滑らかに変化させることにより前記モードフィールド径の縮小を行うことを特徴とする。
【0008】
第3の発明の光学ヘッドは、上記第2の発明において、前記プラナー導波路の集光方向とは異なる方向について、前記2次元導波路の光入力側のモードフィールド径をDとし、前記2次元導波路の光出力側のモードフィールド径をdとすると、D>dを満たすことを特徴とする。
【0009】
第4の発明の光学ヘッドは、上記第2又は第3の発明において、前記プラナー導波路内に、前記2次元導波路の一部又は全部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
第5の発明の光学ヘッドは、上記第1の発明において、前記スポットサイズ変換部が1次元導波路を有し、その1次元導波路が断面積を滑らかに変化させることにより前記モードフィールド径の縮小を行うことを特徴とする。
【0011】
第6の発明の光学ヘッドは、上記第5の発明において、前記プラナー導波路の集光方向とは異なる方向について、前記1次元導波路の光入力側のモードフィールド径をDとし、前記1次元導波路の光出力側のモードフィールド径をdとすると、D>dを満たすことを特徴とする。
【0012】
第7の発明の光学ヘッドは、上記第5又は第6の発明において、前記プラナー導波路内に、前記1次元導波路の一部又は全部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第8の発明の光学ヘッドは、上記第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記スポットサイズ変換部が、前記プラナー導波路の集光方向に対して略垂直方向に集光を行うことにより、前記モードフィールド径の縮小を行うことを特徴とする。
【0014】
第9の発明の光学記録装置は、上記第1〜第8のいずれか1つの発明に係る光学ヘッドを備えたことを特徴とする。
【0015】
第10の発明の光アシスト式磁気記録ヘッドは、上記第1〜第8のいずれか1つの発明に係る光学ヘッドにおいて、記録媒体に対して磁気情報の書き込みを行う磁気記録素子を更に有することを特徴とする。
【0016】
第11の発明の光アシスト式磁気記録装置は、上記第10の発明に係る光アシスト式磁気記録ヘッドを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プラナー導波路で集光された光のモードフィールド径をスポットサイズ変換部で縮小する構成になっているため、小さな略円形状の光スポットを得ることが可能であり、その光スポットを用いて高密度の情報記録を行うことが可能である。例えば、スポットサイズ変換部に有する光導波路(つまり、2次元導波路又は1次元導波路)が、断面積を滑らかに変化させることにより、モードフィールド径の縮小を行う構成にすれば、集光機能を有するプラナー導波路のみでは得られない小さな略円形状の光スポットを得ることができる。そして、光スポットサイズが略円形状に小さくなることにより、情報記録の高密度化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る光アシスト式の磁気記録ヘッドとそれを備えた磁気記録装置等を、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態,具体例等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0019】
図1に、光アシスト式の磁気記録ヘッド3を搭載した磁気記録装置(例えばハードディスク装置)10の概略構成例を示す。この磁気記録装置10は、記録用のディスク(磁気記録媒体)2と、支軸5を支点として矢印mA方向(トラッキング方向)に回転可能に設けられたサスペンション4と、サスペンション4に取り付けられたトラッキング用のアクチュエータ6と、サスペンション4の先端部に取り付けられた光アシスト式の磁気記録ヘッド3と、ディスク2を矢印mB方向に回転させるモータ(不図示)と、を筐体1内に備えており、磁気記録ヘッド3がディスク2上で浮上しながら相対的に移動しうるように構成されている(図2中の矢印mC方向)。
【0020】
図2に、磁気記録ヘッド3の概略構成例を断面図で示す。この磁気記録ヘッド3は、ディスク2に対する情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドであって、スライダ11と光源部13を備えている。スライダ11は基板14で構成されており、基板14の内部には、ディスク2の被記録部分の流入側から流出側にかけて順に(矢印mC方向)、光アシスト部12A,磁気記録部12B及び磁気再生部12Cが形成されている。光アシスト部12Aは、ディスク2の被記録部分を近赤外レーザー光でスポット加熱するための光導波路を有しており、その導波路構造は、後述するプラナー導波路18A又は18Bとスポットサイズ変換部19との組み合わせにより構成されている(図4,図5)。磁気記録部12Bは、ディスク2の被記録部分に対して磁気情報の書き込みを行う磁気記録素子から成っており、磁気再生部12Cは、ディスク2に記録されている磁気情報の読み取りを行う磁気再生素子から成っている。
【0021】
光源部13は、半導体レーザ,コリメータレンズ等(不図示)から成っている。光源部13を構成している半導体レーザは近赤外光源であり、その半導体レーザから射出した近赤外波長(1550nm,1310nm等)のレーザー光はコリメータレンズで平行光に変換される。光源部13から射出したレーザー光は、光アシスト部12Aに入射し、光アシスト部12A内の光導波路を通って磁気記録ヘッド3から射出する。光アシスト部12Aから射出した近赤外レーザー光が微小な光スポットとしてディスク2に照射されると、ディスク2の被照射部分の温度が一時的に上昇してディスク2の保磁力が低下する。その保磁力の低下した状態の被照射部分に対して、磁気記録部12Bにより磁気情報が書き込まれる。
【0022】
図2に示すように、光アシスト部12Aは基板14の側面部分に積層することで作り込まれている。光アシスト部12Aは光導波路を有しており、その導波路構造は、図3に示すように、基板14上に高屈折率層16を積層し、その周りに低屈折率層15を積層することにより構成される。一般的な導波路では、高屈折率層16の導波路幅(導波路断面の長辺方向の長さ)が積層厚の数倍程度であるが、プラナー導波路の場合、光束との結合面積を大きくとるために導波路幅が導波路平面方向に大きく広がっている。なお、図3において互いに直交する方向をx方向,y方向,z方向とし、光導波方向をz方向とすると、x方向が導波路断面の長辺方向であり、y方向が導波路断面の短辺方向である。また、光学的作用が1方向のみ(x,yのいずれか1方向)の光導波路が1次元導波路であり、光学的作用が2方向(x,yの両方向)の光導波路が2次元導波路である。
【0023】
光アシスト部12Aは、集光機能を有するプラナー導波路と、そのプラナー導波路で集光された光のモードフィールド径を縮小するスポットサイズ変換部と、を有している。図4と図5に、光アシスト部12Aの具体例を示す。図4に示す光アシスト部12Aには、レンズ型集光機能を有するプラナー導波路18Aが設けられており、図5に示す光アシスト部12Aには、ミラー型集光機能を有するプラナー導波路18Bが設けられている。なお、プラナー導波路18Aはプラナーソリッドイマージョンレンズ(PSIL)であり、プラナー導波路18Bはプラナーソリッドイマージョンミラー(PSIM)である。
【0024】
各光アシスト部12Aの高屈折率層16には、カップリンググレーティング(例えば回折格子)から成る光導入部17が形成されている。光源部13から射出したレーザー光は、その光導入部17から光アシスト部12Aに入射することになる。光源部13から射出するレーザー光は平行光であるため、回折格子等のカップリンググレーティングで光導入部17を構成することにより、プラナー導波路18A,18Bに対する位置合わせを容易に行うことが可能となる。また、プラナー導波路18A,18Bに対して平行な平面(図3中のxz平面に対して平行な平面)では、光導入部17を広く形成することができるため、導波路端面(図3中のxy平面に対して平行な平面)から入射させる構成よりも、位置合わせを容易に行うことが可能である。
【0025】
図4に示す光アシスト部12Aに入射したレーザー光は、プラナー導波路18Aのレンズ効果により1方向(図3中のx方向)に集光され、図5に示す光アシスト部12Aに入射したレーザー光は、プラナー導波路18Bのミラー効果により1方向(図3中のx方向)に集光される。つまり、プラナー導波路18A,18Bは、その周囲の高屈折率層16よりも屈折率が高くなっているため、プラナー導波路18Aでは屈折率差を利用したレンズ効果によりレーザー光が集光され、プラナー導波路18Bでは全反射を利用したミラー効果によりレーザー光が集光されることになる。
【0026】
プラナー導波路18A,18Bは上記のように1次元導波路であるため、レーザー光は図3中のxz平面に対して平行な平面内で集光される。xz平面に対して垂直方向(すなわちy方向)の集光は、2次元導波路又は1次元導波路を有するスポットサイズ変換部19により行われ、その結果、レーザー光のモードフィールド径が縮小される。つまりスポットサイズ変換部19は、プラナー導波路18A又は18Bで集光された光のモードフィールド径を、その集光方向とは異なる方向について縮小し、その際、プラナー導波路18A,18Bの集光方向に対して略垂直方向に集光を行うことによって、モードフィールド径の縮小を効果的に行う。このモードフィールド径の縮小により、集光機能を有するプラナー導波路18A,18Bのみでは得られない小さな略円形状の光スポットを得ることが可能になる。そして、光スポットサイズが略円形状に小さくなることにより、情報記録の高密度化が可能になる。
【0027】
上記2種類のプラナー導波路18A,18Bは、屈折率材料の配置の観点から言えば、同様の方法により作製可能である。しかし、屈折率差が小さい場合には全反射の利用が困難になるので、その点でレンズ型集光機能を有するプラナー導波路18A(図4)の方が好ましいといえる。つまり、プラナー導波路18Aの場合、周辺の材料層との屈折率差のバランスがとりやすいので、例えば、基板14に対する一体的な作り込みを容易に行うことができるというメリットがある。そこで、プラナー導波路18Aを有する光アシスト部12Aの具体例1〜3を以下に挙げて、磁気記録ヘッド3を更に詳しく説明する。
【0028】
図6に、光アシスト部12Aの具体例1を示す。図6(B)は具体例1を流入端側(つまり、ディスク2(図2)の記録領域の流入側)から見た正面図で示しており、図6(A)はそれを側面側から見た断面図で示している。プラナー導波路18Aは、光導入部17が形成された導波路基板24Lと、その導波路基板24L上(光導入部17の形成面と同じ側)に設けられた集光レンズ部25Mと、で構成されている。また、導波路基板24Lは低屈折率材料から成っており、それよりも高い屈折率を有する中屈折率材料で集光レンズ部25Mが構成されている。
【0029】
光導入部17から導波路基板24Lに入射した平行光は、導波路基板24L内を導波して、集光レンズ部25Mが配置されている位置に到達すると、集光レンズ部25Mのレンズ効果により1方向(図3中のx方向)に集光する。つまり、集光レンズ部25Mは導波路基板24Lよりも屈折率が高いので、集光レンズ部25Mが配置されている範囲では導波路基板24Lよりも高い屈折率(導波路基板24Lと集光レンズ部25Mとの平均屈折率)の影響を受けて、その境界での屈折率差で生じるレンズ効果により平行光は集光することになる。なお、集光レンズ部25Mを導波路基板24L内に埋め込んだ構成とした場合でも、上記と同様のレンズ効果を得ることができる。
【0030】
プラナー導波路18Aから射出したレーザー光は、スポットサイズ変換部19に入射する。図7(A)に、スポットサイズ変換部19を斜視図で示す。スポットサイズ変換部19は、コア21H(例えばSi)と、その周囲に配置されたクラッド22M(例えばSiO2)と、その周囲に配置された低屈折率層23Lと、で構成されており、コア21Hとクラッド22Mとで2次元導波路を構成している。また、低屈折率層23Lは導波路基板24Lと同じ低屈折率材料から成っており、低屈折率層23Lよりも高い屈折率を有する中屈折率材料でクラッド22Mが構成されており、クラッド22Mよりも高い屈折率を有する高屈折率材料でコア21Hが構成されている。なお、コア21Hの先端は、点又は線で構成されるのが理想的であるが、製造の観点から面(平面、曲面等)で構成してもよい。
【0031】
前述したようにプラナー導波路18Aのレンズ効果による集光は1方向(図3中のx方向)であるため、スポットサイズ変換部19に入射する光スポットは導波路断面の短辺方向(図3中のy方向)に長くなる。スポットサイズ変換部19が有する2次元導波路は、図6(A)及び図7(A)に示すように、コア21Hの断面積を滑らかに変化させることによりモードフィールド径の縮小を行う。そのモードフィールド径の縮小は、プラナー導波路18Aの集光方向に対して略垂直方向(図3中のy方向)に集光を行うことにより行われる。ただし、図6(B)及び図7(A)に示すように、スポットサイズ変換部19では2次元導波路により2方向(図3中のx方向とy方向)に集光が行われる。導波路幅方向(図3中のx方向)の集光をも行うことにより、プラナー導波路で集光した後の導波路幅方向の広がりを抑えるようにして、コア21Hのモードとの良好な結合を可能としている。
【0032】
コア21Hの厚みは、図6(A)に示す断面では光入力側から光出力側にかけて徐々に広くなるように変化している。このコア21Hの断面積の滑らかな変化(つまり2次元導波路の断面積の滑らかな変化)により、モードフィールド径が縮小される。つまり、2次元導波路の光入力側のモードフィールド径をDとし、2次元導波路の光出力側のモードフィールド径をdとすると、プラナー導波路18Aの集光方向とは異なる方向についてD>dを満たすようにすることが好ましく、プラナー導波路18Aの集光方向に対して略垂直方向についてD>dを満たすようにすることが更に好ましい。コア21Hの断面積を滑らかに変化させることによりモードフィールド径を変換して、光導波路の光入力側のモードフィールド径よりも光出力側のモードフィールド径をプラナー導波路18Aの集光方向に対して略垂直方向に小さくする構成により、小さな略円形状の光スポットを得ることが可能になる。そして、光スポットサイズが略円形状に小さくなることにより、記録の高密度化が可能になる。
【0033】
上記モードフィールド径の縮小を更に詳しく説明する。図6(A)において光出力側からの入射を考えた場合、コア21Hの先端を徐々に細くなる(つまり断面積が小さくなる)ようにしておくと、光がコア21Hを伝搬していくにしたがって、クラッド22Mへ漏れだす量が多くなる。その結果、光の電界分布が広がって、スポットサイズが大きくなる。光の逆進性により上記のように拡大された光スポットと同じ形状の光を入射させれば、上述したように光スポットを縮小することができる。
【0034】
図7(B)に、具体例1が有するスポットサイズ変換部19の変形例を斜視図で示す。図7(B)に示すスポットサイズ変換部19は、コア21H(例えばSi),サブコア21M(例えばSiON)及びクラッド22M(例えばSiO2)から成る光導波路を有している。サブコア21Mは、コア21Hとクラッド22Mとの中間の屈折率を有している。このように、スポットサイズ変換部19の光導波路にサブコア21Mを用いることにより、コア21Hのモードとの更に良好な結合が可能となり、前記モードフィールド径の縮小を更に効果的に行うことが可能となる。
【0035】
図8に、光アシスト部12Aの具体例2を示す。図8(B)は具体例2を流入端側(つまり、ディスク2(図2)の記録領域の流入側)から見た正面図で示しており、図8(A)はそれを側面側から見た断面図で示している。具体例2は、前記具体例1(図6)においてプラナー導波路18Aとスポットサイズ変換部19とが一体化された構造になっている。つまり、プラナー導波路18Aを構成している導波路基板24L内に、2次元導波路を構成するコア21Hが設けられた構成になっている。導波路基板24Lは、クラッド22Mと同様、コア21Hよりも屈折率が低いので、導波路基板24L内にコア21Hを埋め込んで配置しても、図6に示すスポットサイズ変換部19と同様の集光機能を得ることができる。このように2次元導波路の一部又は全部をプラナー導波路18A内に設けることにより、光アシスト部12Aの構成が簡単になり、その製造も容易になる。なお、前記サブコア21M(図7(B))をコア21Hの周囲に形成してもよい。
【0036】
図9に、光アシスト部12Aの具体例3を示す。図9(B)は具体例3を流入端側(つまり、ディスク2(図2)の記録領域の流入側)から見た正面図で示しており、図9(A)はそれを側面側から見た断面図で示している。具体例3は、前記具体例2においてコア21Hで1次元導波路を構成した構造になっている。つまり、プラナー導波路18Aを構成している導波路基板24L内に、1次元導波路を構成するくさび形状のコア21Hが設けられた構成になっている。このように1次元導波路の一部又は全部をプラナー導波路18A内に設けることにより、光アシスト部12Aの構成が簡単になり、その製造も容易になる。
【0037】
スポットサイズ変換部19が有する1次元導波路は、図9(A)に示すように、コア21Hの断面積を滑らかに変化させることによりモードフィールド径の縮小を行うが、そのモードフィールド径の縮小は、プラナー導波路18Aの集光方向に対して略垂直方向(図3中のy方向)に集光を行うことにより行われる。コア21Hの厚みは、図9(A)に示す断面では光入力側から光出力側にかけて徐々に広くなるように変化している。このコア21Hの断面積の滑らかな変化(つまり1次元導波路の断面積の滑らかな変化)により、モードフィールド径が縮小される。つまり、1次元導波路の光入力側のモードフィールド径をDとし、1次元導波路の光出力側のモードフィールド径をdとすると、プラナー導波路18Aの集光方向とは異なる方向についてD>dを満たすようにすることが好ましく、プラナー導波路18Aの集光方向に対して略垂直方向についてD>dを満たすようにすることが更に好ましい。コア21Hの断面積を滑らかに変化させることによりモードフィールド径を変換して、光導波路の光入力側のモードフィールド径よりも光出力側のモードフィールド径をプラナー導波路18Aの集光方向に対して略垂直方向に小さくする構成により、小さな略円形状の光スポットを得ることが可能になる。そして、光スポットサイズが略円形状に小さくなることにより、記録の高密度化が可能になる。
【0038】
上述した具体例1,2を構成しているスポットサイズ変換部19のみを用いることによっても、一般的な小径の光スポットを得ることは可能である。しかし、スポットサイズ変換部19で構成される2次元導波路に光を入射させようとすると、入射光の位置合わせを2次元又は3次元(図3中のx,y,z方向)で高精度に行う必要が生じる。上述した具体例1〜3のように、1次元導波路(プラナー導波路18A,18Bに相当)と1次元導波路又は2次元導波路(スポットサイズ変換部19に相当)との接続であれば、位置合わせは比較的容易であり、プラナー導波路18A,18Bに対する入射光の位置合わせも容易に行うことができる。また以下に説明するように、光アシスト部12Aをリソグラフィープロセス等で作製することを想定した場合、プラナー導波路18Aの集光機能部分とスポットサイズ変換部19の光導波路部分とを同一プロセスで行うことができるというメリットもある。
【0039】
次に、具体例2の光アシスト部12Aを有するスライダ11の作製方法を、図10の工程図を用いて説明する。図10(A)に示すように、基板14(例えばAlTiC)に磁気再生部12C及び磁気記録部12Bを作製した後、平坦化し、CVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて低屈折率層20L(例えばSiO2)を成膜し、続いてコア層21(例えばSi)を成膜する。その上にレジストを塗布し、電子ビームリソグラフィー(あるいはステッパーを用いたリソグラフィー)によりコア形状をパターニングして、レジストパターンを形成する。このとき、コア形状が所望の形状となるようにレジストパターンを形成する。RIE(Reactive Ion Etching)を用いてコア層21を加工し、また、斜めエッチングを行うことによりテーパ形状を形成して、図10(B)に示すようにコア21Hを形成する。図10(C)に示すように、CVDを用いて導波路基板24L(例えばSiO2)を成膜した後、図10(D)に示すように、集光レンズ部25M(例えばSiON)をリソグラフィープロセス等で形成する。最後に、ダイシング,ミリング等の加工方法により、スライダ形状に切断加工する。
【0040】
光導波路のコア材料がシリコン(Si)であり、光導波路の使用波長が近赤外波長であることが好ましい。いろいろな高屈折率材料が一般的に知られており、その高屈折率材料を使用することにより、紫外光から可視光,近赤外光まで様々な波長に対応することができ、光源部13に用いるレーザや光学系の部材の選択肢は広がる。しかし、一般に高屈折率材料はドライエッチング装置で加工してもエッチング速度が遅く、レジストとの選択比も取り難く、性能の良い微細構造を形成するためには困難が伴う。例えば、GaAs,GaN等の材料では可視光を用いることができるが、加工は困難である。シリコンは半導体プロセスの一般的材料であり、その加工方法が確立されているため、比較的簡単に加工を行うことができる。したがって、シリコンを光導波路のコア材料として用いることが好ましい。ただし、シリコンを光導波路のコア材料として用いると、可視光を使用することができないので、光導波路に使用する光として近赤外光を用いることが好ましい。つまり、近赤外波長(1550nm,1310nm等)の光源を用いれば、実績のあるシリコンをコア材料として用いることができるため、加工性が向上して有利になる。
【0041】
シリコンは屈折率が石英に比べてはるかに高いので、シリコンを光導波路のコア材料として用いることにより、コアとクラッドとの屈折率差Δnを大きくすることができ、単純な構成で微小スポット(つまり高エネルギー密度)を得ることが可能となる。例えば、上記のようにコアをシリコンで構成しクラッドをSiO2で構成することにより、屈折率差Δnを大きくすることができ、スポット径を小さくすることができる。コアとクラッドとの屈折率差Δnは、コアの屈折率(ここではシリコン等)をn1とし、クラッドの屈折率(ここではSiO2等)をn2とすると、式:Δn(%)=(n12−n22)/(2・n12)×100≒(n1−n2)/n1×100で定義される。なお、SiO2の屈折率は1.465、SiONの屈折率は1.5、Siの屈折率は3.5である。
【0042】
シリコンは近赤外波長用として有効なコア材料であるが、加工上のメリットを要しない場合には、コア材料として他の高屈折率材料を用いることにより、紫外光から可視光,近赤外光まで幅広い波長域で微小スポットの効果を得ることができる。シリコン以外の高屈折率材料(波長域)の例としては、ダイヤモンド(可視全域);III-V族半導体:AlGaAs(近赤外,赤),GaN(緑,青)GaAsP(赤,橙,青),GaP(赤,黄,緑),InGaN(青緑,青),AlGaInP(橙,黄橙,黄,緑);II-VI族半導体:ZnSe(青)が挙げられる。また、シリコン以外の高屈折率材料の加工方法の例としては、ダイヤモンドではO2ガスによるドライエッチングが挙げられ、GaAs系,GaP系,ZnSe,GaN系では、Cl2系ガス又はメタン水素を用いたICPエッチング装置でのドライエッチング加工が挙げられる。
【0043】
前述した磁気記録ヘッド3は、ディスク2に対する情報記録に光を利用する光アシスト式磁気記録ヘッドであるが、記録媒体に対する情報記録に光を利用する光学ヘッドは光アシスト式磁気記録ヘッドに限らない。例えば、近接場光記録,相変化記録等の記録を行う微小光記録ヘッドにおいても、前記特徴のある光アシスト部12Aを用いることにより同様の効果を得ることが可能である。図11に、前記光アシスト部12Aと同じ構成の光導波路部12aを有する微小光記録ヘッド3aを示す。この微小光記録ヘッド3aは、磁気を利用しない光記録を行う構成になっており、磁気記録部12Bと磁気再生部12Cを有しない他は、図2に示す磁気記録ヘッド3と同様の構成になっている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】光アシスト式磁気記録装置の概略構成例を示す斜視図。
【図2】光アシスト式磁気記録ヘッドの一実施の形態を示す概略断面図。
【図3】プラナー導波路の具体例を示す断面図。
【図4】集光機能がレンズ型のプラナー導波路を有する光アシスト部の具体例を示す斜視図。
【図5】集光機能がミラー型のプラナー導波路を有する光アシスト部の具体例を示す斜視図。
【図6】光アシスト部の具体例1を正面側と側面側から見た状態で示す図。
【図7】光アシスト部の具体例1とその変形例のスポットサイズ変換部をそれぞれ示す斜視図。
【図8】光アシスト部の具体例2を正面側と側面側から見た状態で示す図。
【図9】光アシスト部の具体例3を正面側と側面側から見た状態で示す図。
【図10】光アシスト部の具体例2を有するスライダの作製工程の一例を示す断面図。
【図11】光アシスト式磁気記録ヘッド以外の微小光記録ヘッドの一実施の形態を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 筐体
2 記録用のディスク(記録媒体)
3 光アシスト式の磁気記録ヘッド(光学ヘッド)
3a 微小光記録ヘッド(光学ヘッド)
10 光アシスト式の磁気記録装置
11 スライダ
12A 光アシスト部
12B 磁気記録部(磁気記録素子)
12C 磁気再生部(磁気再生素子)
12a 光導波路部
13 光源部
14 基板
15 低屈折率層
16 高屈折率層
17 光導入部
18A レンズ型集光機能を有するプラナー導波路
18B ミラー型集光機能を有するプラナー導波路
19 スポットサイズ変換部
20L,23L 低屈折率層
21H コア
21M サブコア
22M クラッド
24L 導波路基板
25M 集光レンズ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対する情報記録に光を利用する光学ヘッドであって、
集光機能を有するプラナー導波路と、そのプラナー導波路で集光された光のモードフィールド径を縮小するスポットサイズ変換部と、を有することを特徴とする光学ヘッド。
【請求項2】
前記スポットサイズ変換部が2次元導波路を有し、その2次元導波路が断面積を滑らかに変化させることにより前記モードフィールド径の縮小を行うことを特徴とする請求項1記載の光学ヘッド。
【請求項3】
前記プラナー導波路の集光方向とは異なる方向について、前記2次元導波路の光入力側のモードフィールド径をDとし、前記2次元導波路の光出力側のモードフィールド径をdとすると、D>dを満たすことを特徴とする請求項2記載の光学ヘッド。
【請求項4】
前記プラナー導波路内に、前記2次元導波路の一部又は全部が設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の光学ヘッド。
【請求項5】
前記スポットサイズ変換部が1次元導波路を有し、その1次元導波路が断面積を滑らかに変化させることにより前記モードフィールド径の縮小を行うことを特徴とする請求項1記載の光学ヘッド。
【請求項6】
前記プラナー導波路の集光方向とは異なる方向について、前記1次元導波路の光入力側のモードフィールド径をDとし、前記1次元導波路の光出力側のモードフィールド径をdとすると、D>dを満たすことを特徴とする請求項5記載の光学ヘッド。
【請求項7】
前記プラナー導波路内に、前記1次元導波路の一部又は全部が設けられていることを特徴とする請求項5又は6記載の光学ヘッド。
【請求項8】
前記スポットサイズ変換部が、前記プラナー導波路の集光方向に対して略垂直方向に集光を行うことにより、前記モードフィールド径の縮小を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学ヘッド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学ヘッドを備えたことを特徴とする光学記録装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学ヘッドにおいて、記録媒体に対して磁気情報の書き込みを行う磁気記録素子を更に有することを特徴とする光アシスト式磁気記録ヘッド。
【請求項11】
請求項10記載の光アシスト式磁気記録ヘッドを備えたことを特徴とする光アシスト式磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−70476(P2009−70476A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237649(P2007−237649)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】