説明

光学式角度変化検出装置

【課題】近接センサーを用いずに、小型でレイアウト上も有利な角度変化検出装置を提供する。
【解決手段】揺動部材10に対し、揺動角度に応じて導光機能の確保状態から導光機能が得られない曲げ状態(屈曲部21c)へと屈曲可能に取り付けられる光ファイバー21と、光ファイバー21の一端部21a側に対向配置される光源24と、光ファイバー21の他端部21b側に対向配置される光検出手段25と、を備える。光ファイバー21は、一端部21a側が揺動部材10に取り付けられる一方、他端部21b側が固定部材に取り付けられている。光源24が光ファイバー21の一端部21a側に対向して揺動部材10に取り付けられている。光検出手段25が光ファイバー21の他端部21b側に対向して固定部材に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーを用いて角度変化を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用ミシンにおいて、その駆動機構を構成するリンクの角度を検出して、その状態を表示・出力したり、主カムの角度を検出して、所定の制御をすることが行なわれ、従来は近接センサーにより角度検出していた(例えば特許文献1参照)。
図5は従来のリンク(変換レバー)50の角度変化検出の仕方を例示したもので、図示しない針棒駆動機構において、近接センサー51をリンク50の運動軌跡に合わせて適当な位置に設置し、リンク50の運動により、近接センサー51との距離が変わったことを検出していた。
【特許文献1】特開平7−313756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来は、近接センサー51を設置するスペースが必要であるが、リンク50を含む機構の構成や図示しないミシン機枠の大きさの制約から近接センサー51を設置できない場合があったり、近接センサー51を取り付けるために機枠を大きくする必要があった。
【0004】
本発明の課題は、近接センサーを用いずに、小型でレイアウト上も有利な角度変化検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図1及び図2に示すように、揺動部材10に対し、揺動角度に応じて導光機能の確保状態から導光機能が得られない曲げ状態へと屈曲可能に取り付けられる光ファイバー21と、前記光ファイバー21の一端部21a側に対向配置される光源24と、前記光ファイバー21の他端部21b側に対向配置される光検出手段25と、を備える光学式角度変化検出装置を特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、光源からの光が、揺動部材に取り付けられた導光機能確保状態の光ファイバーを通過して光検出手段に達した状態から、揺動部材が揺動し、光ファイバーが導光機能が得られない曲げ状態になると、光源からの光が光ファイバーを他端部まで通過せず、光検出手段に届かなくなる。これにより揺動部材の角度変化が検出される。
【0007】
請求項2に記載の発明は、例えば図3に示すように、揺動部材10に対し揺動部材10の変位にしたがって屈曲可能に取り付けられる光ファイバー21と、前記光ファイバー21の一端部側に対向可能に配置される光源24と、前記光ファイバー21の他端部側に対向可能に配置される光検出手段25と、を備え、前記揺動部材10の変位により前記光源24または光検出手段25と光ファイバー21とが対向状態と非対向状態とに切り換わる光学式角度変化検出装置を特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、光源からの光が、揺動部材に取り付けられた光ファイバーを通過して対向状態の光検出手段に達した状態から、揺動部材が変位し、光ファイバーが屈曲して光検出手段と非対向状態になると、光源からの光が光検出手段に届かなくなる。これにより揺動部材の角度変化が検出される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の光学式角度変化検出装置であって、例えば図1から図3に示すように、前記光ファイバー21は、一端部21a側が前記揺動部材10に取り付けられる一方、他端部21b側が固定部材(不図示)に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、光ファイバーは、揺動部材に取り付けられた一端部側が揺動部材と一緒に揺動し、固定部材に取り付けられた他端部側との間が屈曲し、光が通過しない屈曲部が生じる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学式角度変化検出装置であって、例えば図1から図3に示すように、前記光検出手段25が前記光ファイバー21の他端部21b側に対向して前記固定部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、固定部材に取り付けられた光検出手段が光ファイバーの他端部側に常時対向状態となって、光ファイバーから出射される光の有無の検出が常時可能である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の光学式角度変化検出装置であって、例えば図1及び図2に示すように、前記光源24が前記光ファイバー21の一端部21a側に対向して前記揺動部材10に取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、揺動部材に取り付けられた光源が光ファイバーの一端部側に常時対向状態となって、光ファイバーへ光が常時入射する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の光学式角度変化検出装置であって、例えば図3に示すように、前記光源24が、前記揺動部材10の所定姿勢で前記光ファイバー21の一端部21a側に対向するよう前記固定部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、固定部材に取り付けられた光源が揺動部材の所定位置で光ファイバーの一端部側に対向する位置関係となって、光ファイバーへ光が入射する。また、揺動部材が揺動すると、光ファイバーへ光が入らなくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光源からの光が、揺動部材に取り付けた導光機能確保状態の光ファイバーを通過して光検出手段に達した状態から、揺動部材が揺動し、光ファイバーが導光機能が得られない曲げ状態になると、光源からの光が光ファイバーを他端部まで通過せず、光検出手段に届かなくなることで、揺動部材の角度変化を検出できる。
または、光源からの光が、揺動部材に取り付けられた光ファイバーを通過して対向状態の光検出手段に達した状態から、揺動部材が変位し、光ファイバーが屈曲して光検出手段と非対向状態になると、光源からの光が光検出手段に届かなくなることで、揺動部材の角度変化を検出できる。
しかも、近接センサーを用いずに、揺動部材に光ファイバーを取り付ければよいので、小型化して、機枠内のスペースが有効に使える。
さらに、光検出手段を揺動部材に設けずに固定部材に設けることで、調整が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明を適用する一例を示した図4のように、針棒駆動機構は、図示しないミシン機枠にそれぞれ回転可能に支持されたミシン主軸1および針棒駆動軸9、ミシン機枠にそれぞれ固定された支持軸5、レバー軸10aを有する。
ミシン主軸1には偏心カム2が固定されている。この偏心カム2に一端を軸着された揺動腕3はミシン主軸1の運動にしたがって揺動する。ミシン機枠に支持された支持軸5には、揺動体4がその中間部を揺動可能に支持されている。揺動体4は、その一端の第一連結点4aで揺動腕3の他端と回動可能に連結され、その他端の第二連結点4bで第一連結腕6の一端と回動可能に連結されている。この第一連結腕6は、支持軸5から第二連結点4bまでの距離に等しい長さを有する。
第一連結腕6の他端の第三連結点11には第二連結腕7の一端が回動可能に連結している。第二連結腕7の他端の第四連結点7aには第一ロッド8の一端が回転可能に設けられている。第一ロッド8の他端には針棒駆動軸9が固定されている。この針棒駆動軸9には、針棒駆動腕14の一端が固定され、針棒駆動腕14の他端には針棒15が連結されている。針棒15の下端には図示しない針が固定されていて、針棒駆動軸9の回動に伴い針棒駆動腕14が揺動することにより、針棒15および針が上下動する。
第二連結腕7には第三連結点11および第四連結点7aの中間に第五連結点13が設けられており、この第五連結点13には第二ロッド12の一端が回動可能に連結されている。第二ロッド12の他端には二股状となった双腕の変換レバー10の一端が回動可能に連結されている。変換レバー10の他端は図示しない駆動手段(エアシリンダ、ソレノイド等)に連結されている。この駆動手段は、変換レバー10をミシン機枠に固定されたレバー軸10aの回りへ回転させ、第三連結点11を支持軸5の軸線上の針棒停止位置と、この軸線からはずれた針棒上下動位置とに移動することができる。
【0019】
以上の針棒駆動機構において、実施形態では、図1及び図2に示すように、揺動部材である変換レバー(以下ではリンクと呼ぶ)10において、その二股状をなす一方の腕部の側面に光ファイバー21を沿わせて取り付けている。
すなわち、リンク10の一方の腕部側面に光ファイバー21の一半部を図示では二個の取付具22により固定して取り付けるとともに、この光ファイバー21の一端部21aに対向させて光源24をリンク10の同じ腕部側面に固定して取り付ける。この光源24としてはLEDが用いられる。
また、光ファイバー21の他半部は、図示しない固定部材であるミシン機枠に図示例では一個の取付具23により固定して取り付ける。そして、ミシン機枠には、光ファイバー21の他端部21bと対向させて光検出手段(光センサー)25を固定して取り付ける。取付状態において、光ファイバー21は、図示のように、その中間部が二股状のリンク10の角部を横切る状態となる。
【0020】
このような光ファイバー21、光源24及び光センサー25により光学式角度変化検出装置が構成される。
ここで、光ファイバー21は、図1(a)及び図2(a)に示すように、屈曲が無いか小さくて光が光ファイバー21内を全反射して通過する導光機能確保状態からリンク10が揺動し、図1(b)及び図2(b)に示すように、屈曲が激しく光が十分に通過しない曲げ、すなわち、屈曲が大きくて光が光ファイバー21内で反射できなくなり通過しなくなって導光機能が得られなくなる屈曲部21cが生じるような設計条件とする。
【0021】
以上の光学式角度変化検出装置は、図1(a)及び図2(a)に示すように、光ファイバー21の導光機能確保状態では、光源24からの光が、リンク10に取り付けられた光ファイバー21を通過して光センサー25に到達し、光が常時検出される状態となる。
そして、リンク10が揺動し、図1(b)及び図2(b)に示すように、光ファイバー21に導光機能が得られなくなる屈曲部21cが生じると、光ファイバー21を光が通過せず、光センサー25で光が検出されなくなる。
従って、リンク10の所定の角度変化が検出され、その検出信号に基づいてミシンの動作制御が行なわれる。
【0022】
このように、近接センサーを用いずに、リンク10の角度変化を検出でき、しかも、リンク10に光ファイバー21を取り付ければよいので、小型化して、ミシン機枠内のスペースが有効に使えるものとなる。
また、揺動するリンク10にセンサーがなく、動かないミシン機枠に光センサー25を配置できるで、調整が容易であるという利点もある。
【0023】
(第2実施形態)
この実施形態は、図3に示すように、リンク10の一方の腕部側面に取り付ける光ファイバー21の一端部21aを腕部先端に臨ませて取付具22により固定し、この光ファイバー21の一端部21aに対向可能となるように光源24をミシン機枠に固定して取り付ける。
すなわち、図3(a)に示されるように、光ファイバー21の屈曲が無いか小さくて光が光ファイバー21内を全反射して通過する導光機能が確保される状態のリンク10の姿勢状態において、光ファイバー21の一端部21aに対向する位置に光源24を配置してミシン機枠に固定する。
また、第1実施形態と同様、光ファイバー21の他端部21b側を取付具23によりミシン機枠に固定して取り付け、光ファイバー21の他端部21bと対向させて光センサー25をミシン機枠に固定して取り付ける。
【0024】
この光学式角度変化検出装置によれば、図3(a)に示すように、光ファイバー21の導光機能確保状態では、ミシン機枠に固定の光源24からの光が、リンク10に取り付けられた光ファイバー21を通過して光センサー25に到達し、光が常時検出される状態となる。
そして、リンク10が揺動し、図3(b)に示すように、リンク10に固定の光ファイバー21の一端部21aが、ミシン機枠に固定の光源24から遠ざかるとともに、光ファイバー21に導光機能が得られなくなる屈曲部21cが生じる。すると、光ファイバー21の一端部21aに光源24の光が殆ど入射しなくなると同時に、光ファイバー21を光が通過せず、光センサー25で光が検出されなくなる。
従って、第1実施形態と同様、リンク10の所定の角度変化が検出され、その検出信号に基づいてミシンの動作制御が行なわれる。
【0025】
なお、以上の各実施形態においては、ミシンの針棒駆動機構に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ミシンの他の機構部やミシン以外の機械等に適用しても良い。
また、光源の種類や光ファイバーの取付方も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した第1実施形態の構成を示すもので、検出状態・非検出状態の相違を示した斜視図(a)、(b)である。
【図2】図1の側面図(a)、(b)である。
【図3】本発明を適用した第2実施形態の構成を示すもので、検出状態・非検出状態の相違を示した側面図(a)、(b)である。
【図4】本発明を適用する一例としての針棒駆動機構を示した斜視図である。
【図5】従来の角度変化検出装置を例示したもので、検出状態の斜視図(a)、非検出の状態の斜視図(b)である。
【符号の説明】
【0027】
10 揺動部材
21 光ファイバー
21a 一端部
21b 他端部
21c 導光機能が得られなくなる屈曲部
22・23 取付具
24 光源
25 光検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動部材に対し、揺動角度に応じて導光機能の確保状態から導光機能が得られない曲げ状態へと屈曲可能に取り付けられる光ファイバーと、
前記光ファイバーの一端部側に対向配置される光源と、
前記光ファイバーの他端部側に対向配置される光検出手段と、を備えることを特徴とする光学式角度変化検出装置。
【請求項2】
揺動部材に対し揺動部材の変位にしたがって屈曲可能に取り付けられる光ファイバーと、
前記光ファイバーの一端部側に対向可能に配置される光源と、
前記光ファイバーの他端部側に対向可能に配置される光検出手段と、を備え、
前記揺動部材の変位により前記光源または光検出手段と光ファイバーとが対向状態と非対向状態とに切り換わることを特徴とする光学式角度変化検出装置。
【請求項3】
前記光ファイバーは、一端部側が前記揺動部材に取り付けられる一方、他端部側が固定部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式角度変化検出装置。
【請求項4】
前記光検出手段が前記光ファイバーの他端部側に対向して前記固定部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学式角度変化検出装置。
【請求項5】
前記光源が前記光ファイバーの一端部側に対向して前記揺動部材に取り付けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の光学式角度変化検出装置。
【請求項6】
前記光源が、前記揺動部材の所定姿勢で前記光ファイバーの一端部側に対向するよう前記固定部材に取り付けられていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の光学式角度変化検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−267055(P2006−267055A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89476(P2005−89476)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】