説明

光学測定装置

【課題】試料の全反射光のみならず、拡散反射光や反射ヘイズ率などの反射特性を個別に測定(算出)可能にし、この特徴を活かして試料の膜厚を算出する。
【解決手段】全反射光を積分球2により集光させる第1反射光測定光学系3と、拡散反射光を前記積分球2により集光させる第2反射光測定光学系3と、積分球2により集光された光を検出する検出光学系7とを備え、第1反射光測定光学系3及び検出光学系7により得られた全反射光と第2反射光測定光学系3及び検出光学系7により得られた拡散反射光から反射ヘイズ率を算出するとともに、全反射光から試料の膜厚を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析装置などの光学測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積分球を用いた光学特性測定装置としては、反射型のもの及び透過型のものがある。そして、反射型のものと透過型のものとを組み合わせることで、特許文献1、2に示すように、1つの光学特性測定装置において試料の反射特性及び透過特性を測定可能なものが考えられている。
【0003】
特許文献1に示す光学特性測定装置は、積分球に第1開口、第2開口及び第3開口が設けられている。そして、反射特性測定時には、第1開口に試料が配置されるとともに、第2開口及び第3開口からそれぞれ反射光及び拡散光を受光するように構成されている。一方、透過特性測定時には、第3開口に試料が配置されるとともに、第2開口及び第3開口からそれぞれ透過光及び拡散光を受光するように構成されている。
【0004】
特許文献2に示す光学特性測定装置は、2つの積分球の間に試料を配置して、それら2つの積分球それぞれに検出器を設けたものである。そして、入射側の積分球で全反射光を検出し、反対側の積分球で全透過光を検出するように構成されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2のものでは、全反射光量及び全透過光量のみを検出することを意図したものであり、全反射光量以外の測定項目、例えば拡散反射光や反射ヘイズ率を測定することは意図していない。
【0006】
さらに従来、特許文献3に示すように、積分球を用いて膜厚を測定する場合もあったが、この例でもヘイズ率を測定することは意図されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−243550号公報
【特許文献2】特開平6−201581号公報
【特許文献3】特開2006−214935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、試料の全反射光のみならず、拡散反射光や反射ヘイズ率などの反射特性を個別に測定(算出)可能にし、この特徴を活かして試料の膜厚を算出することができることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る光学測定装置は、試料に光を照射して当該試料からの第1反射光を積分球により集光させる第1反射光測定光学系と、前記試料に光を照射して当該試料からの第2反射光を前記積分球により集光させる第2反射光測定光学系と、前記積分球により集光された光を検出する検出光学系とを備え、前記第1反射光測定光学系及び前記検出光学系により得られた第1反射光と前記第2反射光測定光学系及び前記検出光学系により得られた第2反射光とに基づいて全反射光及び拡散反射光を求め、当該全反射光及び拡散反射光から反射ヘイズ率を算出するとともに、前記全反射光から前記試料の膜厚を算出することを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、第1反射光及び第2反射光から全反射光及び拡散反射光を求めることにより、試料の全反射光率や反射ヘイズ率などの反射特性を個別に測定可能にするだけでなく、その全反射光を用いて試料の膜厚を算出することができる。また膜厚を算出する際に用いる全反射光が積分球を用いて得られたものであるため、光量ロスを防ぐことができ膜厚の測定精度を向上させることもできる。
【0011】
ここで前記第1反射光が全反射光そのものであり、前記第2反射光が拡散反射光そのものであれば、第1反射光及び第2反射光から全反射光及び拡散反射光を算出する手間を省くことができる。なお、前記第1反射光が正反射光であり、前記第2反射光が拡散反射光である場合には、第1反射光及び第2反射光を足し合わせることにより全反射光を求めることができる。
【0012】
また、前記積分球が、試料を臨む位置に設けられた第1の開口部、当該第1の開口部と対向する位置に設けられた第2の開口部を有し、前記第1反射光測定光学系及び前記第2反射光測定光学系が、前記第2の開口部から前記第1の開口部を介して、前記試料に反射測定用の光を照射する共通の反射測定光学系からなり、前記第2の開口部を開閉可能な第1の反射部材をさらに備え、前記第1の反射部材が、反射測定において、前記第2の開口部を開放する開放位置、及び前記第2の開口部の一部を塞ぎ、前記反射測定光学系からの光を前記試料に照射させて当該試料からの正反射光を積分球内に反射させる中間位置の間で移動可能であることが望ましい。これならば、第1反射光測定光学系及び第2反射光測定光学系を共通化して測定誤差発生の要因を減らし、また装置構成を簡略化することができるだけでなく、反射測定において、反射部材を開放位置及び中間位置の間で移動させることで、試料の反射特性を測定することができる。また、試料に対して、積分球とは反対側から第1の開口部に向かって透過測定用の光を照射し、この際反射部材で第2の開口部を開閉することによって試料の透過測定を測定することができる。つまり、本発明は、従来の透過測定に用いられていた積分球を利用して反射測定を行うことができるようになる。したがって、1つの積分球を用いて試料を移動させることなく、反射測定及び透過測定を行うことができるようになる。
【0013】
具体的に1つの試料を移動させることなく反射測定及び透過測定の両方を測定できるようにするためには、前記試料に対して、前記積分球とは反対側から前記第1の開口部に向かって透過測定用の光を照射する透過測定光学系と、前記第2の開口部を開閉可能な第2の反射部材とをさらに備え、前記第2の反射部材が、透過測定において、前記第2の開口部を開放する開放位置、及び前記第2の開口部全体を閉塞する閉塞位置の間で移動可能であることが望ましい。
【0014】
前記反射部材を自動的に移動させることによって試料の各測定項目を1つのシーケンスとして取得可能にするとともに、ユーザの負担を軽減するためには、前記第1の反射部材を移動させる第1の移動機構と、前記第2の反射部材を移動させる第2の移動機構とを備えており、前記第1の移動機構が、反射測定において、前記第1の反射部材を前記開放位置及び前記中間位置の間で移動させるとともに、前記第2の移動機構が、透過測定において、前記第2の反射部材を前記開放位置及び前記閉塞位置の間で移動させるものであることが望ましい。このとき、前記試料の反射測定及び透過測定を連続した1つのシーケンスとして行うことで、反射測定及び透過測定を全自動で測定できるようになる。
【0015】
なお、第1の反射部材、第2の反射部材、第1の移動機構、第2の移動機構と便宜上呼んでいるが、これらは、単一の反射部材や移動機構又は別々の反射部材や移動機構で構成される場合も含む。
【0016】
本発明の光学測定装置を、高速測定を可能にしたものとするためには、前記反射測定において、全反射光率、拡散反射光率、反射ヘイズ率及び膜厚の測定を行うものであり、前記透過測定において、全透過光率、拡散透過光率及び透過ヘイズ率の測定を行うものであることが望ましい。
【0017】
前記光学測定装置において試料の反射ヘイズ率を測定するための反射部材の具体的な位置態様としては、前記反射測定において、全光反射率を測定する際に、前記反射部材が中間位置にあり、拡散反射光率を測定する際に、前記反射部材が開放位置にあることが望ましい。
【0018】
また、本発明に係る光学測定方法としては、試料を臨む位置に設けられた第1の開口部、当該第1の開口部と対向する位置に設けられた第2の開口部、及びそれら開口部とは異なる位置に設けられた受光用開口部を有する積分球と、前記第2の開口部から前記第1の開口部を介して、前記試料に反射測定用の光を照射する反射測定光学系と、前記試料に対して、前記積分球とは反対側から前記第1の開口部に向かって透過測定用の光を照射する透過測定光学系と、前記第2の開口部を開閉可能な反射部材とを備えた光学測定装置を用いた光学測定方法であって、反射測定において、前記反射部材を、前記第2の開口部を開放する開放位置、及び前記第2の開口部の一部を塞ぎ、前記反射測定光学系からの光を前記試料に照射させて当該試料からの正反射光を積分球内に反射させる中間位置の間で移動させ、透過測定において、前記反射部材を、前記開放位置、及び前記第2の開口部全体を閉塞する閉塞位置の間で移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このように構成した本発明によれば、試料の全反射光のみならず、拡散反射光や反射ヘイズ率などの反射特性を個別に測定(算出)可能にし、この特徴を活かして試料の膜厚を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の光学測定装置の構成を概略的に示す図。
【図2】同実施形態の反射測定を示す模式図。
【図3】同実施形態の透過測定を示す模式図。
【図4】変形実施形態の光学測定装置の構成及び測定方法を概略的に示す図。
【図5】変形実施形態の光学測定装置の構成及び測定方法を概略的に示す図。
【図6】変形実施形態の光学測定装置の構成を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る光学測定装置の一例として分光分析装置に適用した場合の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る分光分析装置100は、例えば太陽電池パネル等を構成する透明導電膜(例えばTCO膜)を有するガラス基板や半導体基板において、当該透明導電膜の透過特性及び反射特性を測定するものである。
【0023】
具体的にこのものは、図1に示すように、試料Wの上部に設けられた積分球2と、試料Wに反射測定用の光L1を照射する反射測定光学系3と、試料Wに対して透過測定用の光L2を照射する透過測定光学系4と、反射部材5と、この反射部材5を移動させる移動機構6と、積分球内の光を検出する検出光学系7とを具備する。なお、本実施形態の分光分析装置100は、試料Wが載置されたステージ(不図示)に対して少なくとも水平方向(XY平面上)に相対移動可能に構成されている。なお、符号Hは、積分球2を収容する暗箱である。
【0024】
以下、各部2〜7について具体的に説明する。
【0025】
積分球2は、球内面が白色拡散反射面で構成されており、球外から球内に入射した光束を多重反射するものである。具体的に積分球2は、図1に示すように、試料表面の直上に配置されており、当該下部に試料表面(本実施形態では透明導電膜を有する面)を臨むように第1の開口部21が形成されている。そして、当該第1の開口部21と対向する位置(積分球2の上部)に第2の開口部22が設けられている。また、第1の開口部21及び第2の開口部22とは異なる位置に受光用開口部23が形成されている。本実施形態の受光用開口部23は、前記第1の開口部21及び第2の開口部22の対向方向と直交する位置(具体的には積分球2の側方部)に設けられている。この受光用開口部23には、後述する分光検出器72に光を伝達するための光伝達素子である光ファイバ71が接続されている。このように構成された積分球2は従来の透過測定に用いられている積分球と同様の構成である。なお、受光用開口部23の位置は、直交する位置に限られず適宜設定可能である。
【0026】
反射測定光学系3は、図1及び図2に示すように、第2の開口部22から第1の開口部21を介して試料Wに反射測定用の光L1を照射するものである。具体的に反射測定光学系3は、積分球2の第2の開口部22から第1の開口部21に向かって反射測定用の光L1を照射するものであり、キセノンランプ311を有する光源部31と、当該光源部31からの光を第2に開口部22に伝達する伝達光学系としての光ファイバ32とを備えている。なお、光源部31としては、キセノンランプの他にハロゲンランプ等であっても良い。伝達光学系32としては、光ファイバを用いた構成の他、ミラーやレンズ等の光学素子を用いて構成しても良い。また光源部31は、キセノンランプ311からの光量を制御するシャッタ機構312等を備えている。
【0027】
また反射測定光学系3により第2の開口部22から積分球2に入射する光L1の光軸は、図2に示すように、鉛直方向(第1の開口部21及び第2の開口部22の対向方向、つまり試料表面の法線方向)から若干傾斜している。これにより反射測定用の光L1は、試料表面で正反射して生じる正反射光が第2の開口部22から導出されるとともに再度光源3側に戻らないような位置関係で入射される。
【0028】
透過測定光学系4は、図1及び図3に示すように、試料Wに対して、積分球2とは反対側(試料裏面側)から第1の開口部21に向かって透過測定用の光L2を照射するものであり、前記反射測定光学系3と同様に、キセノンランプ411を有する光源部41と、当該光源部41からの光を第1の開口部21に伝達する伝達光学系としての光ファイバ42とを備えている。なお、光源部41としては、キセノンランプの他にハロゲンランプ等であっても良い。伝達光学系42としては、光ファイバを用いた構成の他、ミラーやレンズ等の光学素子を用いて構成しても良い。また光源部41は、キセノンランプ411からの光量を制御するシャッタ機構412等を備えている。
【0029】
また透過測定光学系4は、それからの光L2が、図3に示すように、試料Wに対して垂直(第1の開口部21及び第2の開口部22の対向方向、つまり試料表面の法線方向に沿って)に入射され、第1の開口部21及び第2の開口部22から外部に射出されるような位置関係で構成される。
【0030】
これら反射測定光学系3及び透過測定光学系4は、演算制御装置8によって制御されて、反射測定用の光L1又は透過測定用の光L2が選択的に積分球2に照射されるように制御される。
【0031】
反射部材5は、第2の開口部22を開閉可能なものであり、反射測定に用いられる第1の反射部材51(図2参照)と透過測定に用いられる第2の反射部材52(図3参照)とを有する。これら反射部材51、52は、第2の開口部22を向く面が積分球内面と同様、白色反射拡散面で構成された反射板である。
【0032】
第1の反射部材51は、図2に示すように、第2の開口部22に対向して設けられて、当該第2の開口部22全体を開放する開放位置P(図2(C)参照)及び第2の開口部22の一部を塞ぐ中間位置Q(図2(A)、(B)参照)の間でスライド移動するように構成されている。この中間位置Qは、反射測定において、反射測定光学系3からの光L1を試料Wに照射させて当該試料Wからの正反射光L11を積分球内に反射させる位置である。中間位置Qの具体例としては、例えば第2の開口部22の半分を塞ぎ半分が開口する位置である。そして第1の反射部材51は、後述する移動機構6によって前記開放位置P及び中間位置Qの間でスライド移動される。
【0033】
また第2の反射部材52は、図3に示すように、第2の開口部22に対向して設けられて、当該第2の開口部22全体を開放する開放位置R(図3(C)参照)及び第2の開口部22全体を閉塞する閉塞位置S(図3(A)、(B)参照)の間でスライド移動するように構成されている。そして第2の反射部材52は、後述する移動機構6によって前記開放位置R及び閉塞位置Sの間でスライド移動される。
【0034】
移動機構6は、前記第1の反射部材51を開放位置P及び中間位置Qに選択的にスライド移動させる第1の移動機構61と、前記第2の反射部材52を開放位置R及び閉塞位置Sに選択的にスライド移動させる第2の移動機構62とを有する。具体的な構成としては、図示しないが、ソレノイド等のアクチュエータと、前記反射部材51、52の各位置P、Q、R、Sを検出する複数の位置センサとを有する。このアクチュエータは、演算制御装置8によって制御されるものであり、位置センサからの位置検出信号を受信した演算制御装置8が、アクチュエータを駆動して所望の位置に第1の反射部材51及び第2の反射部材52を移動させる。
【0035】
検出光学系7は、前記積分球2の受光用開口部23に接続された光伝達部たる光ファイバ71と、当該光ファイバ71により伝達された光を分光する分光検出器72とを備えている。この分光検出器72により得られた各波長毎の光強度信号は演算制御装置8に出力される。なお、光伝達部としては、光ファイバを用いた構成の他、ミラーやレンズ等の光学素子を用いて構成しても良い。演算制御装置8は、得られた光強度信号を用いて、全光反射率(全反射光量)、拡散反射率(拡散反射光量)及び反射ヘイズ率、全光透過率(全光透過量)、拡散透過率(拡散反射光量)及び透過ヘイズ率等を算出する。なお、演算制御装置8は、以下に説明する分光分析装置100の測定シーケンスを自動的に行うための測定用プログラムがメモリに格納されており、その測定シーケンスに基づいて、CPU及び周辺機器が協働して、反射測定光学系3、透過測定光学系4及び移動機構6等を制御する。
【0036】
次にヘイズ率測定を例とした本実施形態の分光分析装置100の動作について図2及び図3を参照して説明する。
【0037】
まず、積分球2の第1の開口部21に設けられた閉塞部材9を移動機構10により移動させて第1の開口部21を閉塞するとともに、第2の開口部22に設けられた第2の反射部材52を第2の移動機構62により閉塞位置Sに移動させて第2の開口部22を閉塞する。なお、移動機構6及び移動機構10は演算制御装置8により制御される。また演算制御装置8は、このとき検出光学系7により得られた光強度信号をバックグラウンド信号(暗電流信号)として記録する。なお、閉塞部材9は、透過測定光学系4の光源部41に設けても良い。
【0038】
その後、演算制御装置8は、閉塞部材9を移動させて第1の開口部21を開放するとともに、第2の反射部材52を開放位置Rに移動させて第2の開口部22を開放する。そして反射測定又は透過測定を行う。以下、反射測定を行った後、透過測定を行う場合の測定シーケンスについて説明する。なお、これらを前後逆に行っても良い。
【0039】
まず、図2の(A)に示すように、積分球2の下部に反射率既知の標準試料Ws(例えばBare Si)を配置して検出光学系7の反射測定用のリファレンス信号を取得する。このとき、第1の反射部材51は、第1の移動機構61によって開放位置P等の初期位置から中間位置Qに移動される。なお、初期位置が中間位置Qであれば第1の反射部材51は移動されない。また、第1の反射部材51が中間位置Qにある状態で第2の反射部材52は開放位置Rにある。そして、この中間位置Qに移動された後に反射測定用光源部31により反射測定用の光L1が第2の開口部22から積分球2内に照射される。積分球2内に照射された光L1は、第1の開口部21を通過して標準試料Wsに照射されて正反射及び拡散反射する。正反射した光L11は、第2の開口部22の一部を塞いでいる第1の反射部材51の反射拡散面に当たり積分球2内部に反射される。また拡散反射した光L12は、積分球2内面で反射する。これらの光L11、L12は、受光用開口部23を介して検出光学系7によって検出される。演算制御装置8は、このとき検出光学系7により得られた光強度信号を反射測定用のリファレンス信号として記録する。
【0040】
次に、図3の(A)に示すように、積分球2の下部に何も配置しない状態(つまり標準試料Wsが空気)で、検出光学系7の透過測定用のリファレンス信号を取得する。このとき、第1の反射部材51は、第1の移動機構61によって開放位置Pに移動されるとともに、第2の反射部材52は、第2の移動機構62によって開放位置Rから閉塞位置Sに移動される。そして、第2の反射部材52が閉塞位置Sに移動された後に、透過測定用光源部41により透過測定用の光L2が第1の開口部21に向かって照射される。第1の開口部21から積分球2内に照射された光は、第2の開口部22を閉塞している第2の反射部材52によって積分球2内部に反射される。この反射された光は積分球2内で反射して受光用開口部23を介して検出光学系7によって検出される。演算制御装置8は、このとき検出光学系7により得られた光強度信号を透過測定用のリファレンス信号として記録する。
【0041】
次に、図2の(B)に示すように、積分球2の下部に測定対象試料である例えばTCO膜を有するガラス基板Wを配置して、全反射光量測定を行う。このとき、第1の反射部材51は中間位置Qにある。そして、反射測定光学系3により反射測定用の光L1が、第1の反射部材51により一部が開口した第2の開口部22から積分球2内に照射される。積分球2内に照射された光L1は、第1の開口部21を通過して測定対象試料Wに照射されて正反射及び拡散反射する。正反射した光L11は、第2の開口部22の一部を塞いでいる第1の反射部材51の反射拡散面に当たり積分球2内部に反射される。また拡散反射した光L12は、積分球2内面で反射する。これらの光L11、L12は、受光用開口部23を介して分光光学系によって全反射光量(=正反射光量+拡散反射光量)として検出される。演算制御装置8は、このとき検出光学系7により得られた光強度信号を全反射光量信号として記録する。
【0042】
この全反射光量測定の後、図2の(C)に示すように、拡散反射光量測定を行う。このとき、第1の反射部材51は、第1の移動機構61によって中間位置Qから開放位置Pに移動される。そして、第1の反射部材51が開放位置Pに移動された後、反射測定光学系3により反射測定用の光L1が第2の開口部22から積分球2内に照射される。積分球2内に照射された光L1は、第1の開口部21を通過して測定対象試料Wに照射されて正反射及び拡散反射する。正反射した光L11は、第2の開口部22から積分球2外部に出る。一方、拡散反射した光L12は、積分球2内部で反射して、受光用開口部23を介して検出光学系7によって拡散反射光量として検出される。演算制御装置8は、このとき検出光学系7により得られた光強度信号を拡散反射光量信号として記録する。
【0043】
以上の一連の反射測定により、全反射光量及び拡散反射光量を測定することができる。また演算制御装置8は、得られたバックグラウンド信号、反射測定用のリファレンス信号、全反射光量信号及び拡散反射光量信号を用いて、全光反射率(={(全反射光量−バックグラウンド光量)/(リファレンス光量−バックグラウンド光量)}×100)、拡散反射光率(={(拡散反射光量−バックグラウンド光量)/(リファレンス光量−バックグラウンド光量)}×100)、及び正反射光率(={(全反射光量−拡散反射光量−バックグラウンド光量)/(リファレンス光量−バックグラウンド光量)}×100)を算出する。また演算制御装置8は、これら全光反射率及び拡散反射率を用いて反射ヘイズ率(=(拡散反射光率/全光反射率)×100)を算出する。さらに、演算制御装置8は、上記各値を光が照射された位置(X座標、Y座標)と関連付けてメモリに記録する。
【0044】
さらに演算制御装置8は、上記で測定した全反射光量及び拡散反射光量から正反射光量のスペクトルを演算して、当該正反射光量のスペクトルから試料Wに形成された膜(例えば透明導電膜)の膜厚を算出することもできる。このとき、演算制御装置8は、前記正反射光量のスペクトルにより得られた膜厚と、別の膜厚測定装置により得られた試料Wの膜厚との相関データを生成し、この相関データに基づいて、前記正反射光量のスペクトルにより得られた膜厚を補正することもできる。
【0045】
次に、図3の(B)に示すように、積分球2の下部に測定対象試料である例えばTCO膜を有するガラス基板Wの全透過光量測定を行う。このとき、第2の反射部材52は閉塞位置Sにある。そして、透過測定光学系4により透過測定用の光L2が、試料Wに対して積分球2とは反対側から第1の開口部21に向かって照射される。透過測定用の光L2は試料Wを透過する際に正透過及び拡散透過する。正透過した光L21は、第2の開口部22全体を閉塞している第2の反射部材52によって積分球2内部に反射される。また拡散透過した光L22は、積分球2内面で反射する。これらの光L21、L22は、受光用開口部23を介して検出光学系によって、全透過光量(=正透過光量+拡散透過光量)として検出される。演算制御装置8は、このとき検出光学系7により得られた光強度信号を全透過光量信号として記録する。
【0046】
この全透過光量測定後、図3の(C)に示すように、拡散反射光量測定を行う。このとき、第2の反射部材52は、第2の移動機構62によって、閉塞位置Sから開放位置Rに移動される。そして、第2の反射部材52が開放位置Rに移動された後、透過測定光学系4により透過測定用の光L2が、試料Wに対して積分球2とは反対側から第1の開口部21に向かって照射される。透過測定用の光L2は試料Wを透過する際に正透過及び拡散透過する。正透過した光L21は、開放された第2の開口部22から積分球2外部に出る。一方、拡散透過した光L22は、積分球2内部で反射して、受光用開口部23を介して検出光学系7によって拡散透過光量として検出される。演算制御装置8は、このとき検出光学系7により得られた光強度信号を拡散透過光量信号として記録する。
【0047】
以上の一連の透過測定により、全透過光量及び拡散透過光量を測定することができる。またこの全透過光量及び拡散透過光量の比(拡散透過光量/全透過光量)によって透過ヘイズ率を算出することができる。また演算制御装置8は、得られたバックグラウンド信号、透過測定用のリファレンス信号、全透過光量信号及び拡散透過光量信号を用いて、全光透過率(={(全透過光量−バックグラウンド光量)/(リファレンス光量−バックグラウンド光量)}×100)、拡散透過光率(={(拡散透過光量−バックグラウンド光量)/(リファレンス光量−バックグラウンド光量)}×100)、及び正透過光率(={(全透過光量−拡散透過光量−バックグラウンド光量)/(リファレンス光量−バックグラウンド光量)}×100)を算出する。また演算制御装置8は、これら全光透過率及び拡散透過率を用いて透過ヘイズ率(=(拡散透過光率/全光透過率)×100)を算出する。さらに、演算制御装置8は、上記各値を光が照射された位置(X座標、Y座標)と関連付けてメモリに記録する。
【0048】
なお、以上の測定シーケンスにおいて、拡散反射光量を測定した後に全反射光量を測定するようにしても良いし、拡散透過光量を測定した後に全透過光量を測定するようにしても良い。その他、拡散反射光量、全反射光量、拡散透過光量及び全透過光量を測定する順番は適宜変更可能である。このように適宜変更が可能なのは、試料Wの移動をすることなく、第1の反射部材51の位置及び第2の反射部材52の位置(つまり第1の移動機構61及び第2の移動機構62の制御)及び反射測定光学系3、透過測定光学系4の動作(つまり光源部31、42内のシャッタ機構311、411等の制御)によって各測定項目の切り替えが可能とされているからである。
【0049】
このように構成した本実施形態に係る分光分析装置100によれば、1つの積分球2を用いて試料Wを移動させることなく、自動的に試料Wの全反射光量、拡散反射光量や反射ヘイズ率などの反射特性測定及び全透過光量、透過拡散光量や透過ヘイズ率などの透過特性測定を行うことができる。
【0050】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態の光学測定装置は、反射測定及び透過測定を行い反射ヘイズ率及び透過ヘイズ率を測定するものであったが、反射測定のみを行い反射ヘイズ率を測定するものであっても良い。また、このとき、反射ヘイズ率を求めるときに測定した全反射光に基づいて、試料表面に形成された膜の膜厚を測定するものであっても良い。この場合、演算制御装置8は、検出光学系7により得られた全光反射光の反射スペクトルを膜厚フィッティングやフーリエ変換することにより、試料表面の膜厚を算出する。このように検出光学系7により得られた全光反射光を用いて膜厚を算出することにより、試料の全反射光率、正反射光率や反射ヘイズ率などの反射特性を個別に測定可能にするだけでなく、その全反射光を用いて試料の膜厚を算出することができる。また膜厚を算出する際に用いる全反射光が積分球を用いて得られたものであるため、光量ロスを防ぐことができ膜厚の測定精度を向上させることができる。
【0051】
反射部材について前記実施形態では、開放位置及び中間位置の間をスライド移動する第1反射部材及び開放位置及び閉塞位置の間をスライド移動する第2反射部材を有するものであったが、単一の反射部材により構成しても良い。この場合、単一の反射部材は単一の移動機構により開放位置、中間位置及び閉塞位置の間を、各位置で停止可能にスライド移動する。
【0052】
反射測定光学系について前記実施形態では、全反射光である第1反射光を測定する第1反射光測定光学系及び拡散反射光である第2反射光測定光学系を単一の反射測定光学系により構成しているが、図4に示すように、個別の光学系3a、3bとして構成しても良い。この場合、第1反射光測定光学系3aは、それからの光が鉛直方向から傾斜して試料Wに照射されるように配置する。第2反射光測定光学系3bは、それからの光が鉛直方向に試料Wに照射されるように配置する。そして、全反射光量測定においては、第1反射光測定光学系3aから光を試料Wに照射する(図4(A)参照)とともに、拡散反射光量測定においては、第2反射光測定光学系3bから光を試料Wに照射する(図4(B)参照)。なお、積分球2には、第1開口部21及び受光用開口部23の他に、第1反射光測定光学系3a及び第2反射光測定光学系3bそれぞれに対応した開口部24、25が設けられている。
【0053】
また反射測定光学系については、図5に示すように、単一の反射測定光学系3を用いて構成しても良い。この場合、積分球2には、入射用の開口部26が設けられるとともに、試料Wにより正反射した光を外部に導出可能な導出用の開口部27が設けられている。さらに開口部27の外側には、当該開口部27を開閉可能な反射部材5が設けられている。この反射部材5は移動機構(不図示)により開口部27全体を閉塞する閉塞位置及び開口部27全体を開放する開放位置の間でスライド移動する。そして、全反射光量測定においては、移動機構により反射部材5を閉塞位置に移動させて、反射測定光学系3により試料Wに光を照射する(図5(A)参照)。一方、拡散反射光量測定においては、移動機構により反射部材5を開放位置に移動させて、反射測定光学系3により試料Wに光を照射する(図5(B)参照)。
【0054】
また、第1の反射部材の中間位置は、反射測定用の光が積分球内に入射する程度に第2開口部が開いており、なおかつ、試料によって正反射した光が積分球内に反射される程度で第2の開口部の一部を塞いでいればよく、前記実施形態のように第2の開口部を半分閉塞した位置に限られない。
【0055】
さらに、前記実施形態では試料を積分球の下部に配置する構成としているが、積分球の上部に配置する構成としても良い。その他、試料を積分球の側方に配置する構成としても良い。
【0056】
加えて、前記実施形態で得られたヘイズ率を、他の分光光度計の測定値と関連付けて、その測定を相関補正するように構成しても良い。
【0057】
その上、前記実施形態では受光用開口部及び検出光学系が1つの例を示したが、それらを複数組有するものであっても良い。また複数の受光用開口部を設け、その受光用開口部からの光を1つの検出光学系により検出するように構成しても良い。
【0058】
さらに加えて、前記実施形態では、反射測定光学系及び透過測定光学系それぞれに光源部を設けているが、図6に示すように、両者光学系の光源部を共通として、伝達光学系により光源部からの光を切り換えて照射するように構成しても良い。
【0059】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
100・・・分光分析装置(光学測定装置)
W ・・・試料
2 ・・・積分球
21 ・・・第1の開口部
22 ・・・第2の開口部
23 ・・・受光用開口部
3 ・・・反射測定光学系
L1 ・・・反射測定用の光
4 ・・・透過測定光学系
L2 ・・・透過測定用の光
51 ・・・第1の反射部材
P ・・・開放位置
Q ・・・中間位置
52 ・・・第2の反射部材
R ・・・開放位置
S ・・・閉塞位置
61 ・・・第1の移動機構
62 ・・・第2の移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に光を照射して当該試料からの第1反射光を積分球により集光させる第1反射光測定光学系と、
前記試料に光を照射して当該試料からの第2反射光を前記積分球により集光させる第2反射光測定光学系と、
前記積分球により集光された光を検出する検出光学系とを備え、
前記第1反射光測定光学系及び前記検出光学系により得られた第1反射光と前記第2反射光測定光学系及び前記検出光学系により得られた第2反射光とに基づいて全反射光及び拡散反射光を求め、当該全反射光及び拡散反射光から反射ヘイズ率を算出するとともに、前記全反射光から前記試料の膜厚を算出することを特徴とする光学測定装置。
【請求項2】
前記第1反射光が全反射光であり、前記第2反射光が拡散反射光である請求項1記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記積分球が、試料を臨む位置に設けられた第1の開口部、当該第1の開口部と対向する位置に設けられた第2の開口部を有し、
前記第1反射光測定光学系及び前記第2反射光測定光学系が、前記第2の開口部から前記第1の開口部を介して、前記試料に反射測定用の光を照射する共通の反射測定光学系からなり、
前記第2の開口部を開閉可能な第1の反射部材をさらに備え、
前記第1の反射部材が、反射測定において、前記第2の開口部を開放する開放位置、及び前記第2の開口部の一部を塞ぎ、前記反射測定光学系からの光を前記試料に照射させて当該試料からの正反射光を積分球内に反射させる中間位置の間で移動可能である請求項1又は2記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記試料に対して、前記積分球とは反対側から前記第1の開口部に向かって透過測定用の光を照射する透過測定光学系と、
前記第2の開口部を開閉可能な第2の反射部材とをさらに備え、
前記第2の反射部材が、透過測定において、前記第2の開口部を開放する開放位置、及び前記第2の開口部全体を閉塞する閉塞位置の間で移動可能である請求項3記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記試料の反射測定及び透過測定を連続して行うものである請求項3又は4記載の光学測定装置。
【請求項6】
前記反射測定において、全反射光率、拡散反射光率及び反射ヘイズ率の測定を行うものであり、前記透過測定において、全透過光率、拡散透過光率及び透過ヘイズ率の測定を行うものである請求項3、4又は5記載の光学測定装置。
【請求項7】
前記反射測定において、全光反射率を測定する際に、前記第1の反射部材が中間位置にあり、拡散反射光率を測定する際に、前記第1の反射部材が開放位置にある請求項2、3、4又は5記載の光学測定装置。
【請求項8】
試料を臨む位置に設けられた第1の開口部、当該第1の開口部と対向する位置に設けられた第2の開口部、及びそれら開口部とは異なる位置に設けられた受光用開口部を有する積分球と、前記第2の開口部から前記第1の開口部を介して、前記試料に反射測定用の光を照射する反射測定光学系と、前記試料に対して、前記積分球とは反対側から前記第1の開口部に向かって透過測定用の光を照射する透過測定光学系と、前記第2の開口部を開閉可能な反射部材とを備えた光学測定装置を用いた光学測定方法であって、
反射測定において、前記反射部材を、前記第2の開口部を開放する開放位置、及び前記第2の開口部の一部を塞ぎ、前記反射測定光学系からの光を前記試料に照射させて当該試料からの正反射光を積分球内に反射させる中間位置の間で移動させ、
透過測定において、前記反射部材を、前記開放位置、及び前記第2の開口部全体を閉塞する閉塞位置の間で移動させることを特徴とする光学測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−132861(P2012−132861A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286937(P2010−286937)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】