説明

光学物品用硬化性組成物

複数のペンダント性及び/又は末端エチレン性不飽和フリーラジカル重合性官能基、フリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマー、並びに、光開始剤を有するオリゴマーを含む硬化性組成物を提供する。前記組成物は、硬化させると、黄変がなく、低収縮及び低複屈折を示すことから、光学レンズ、光ファイバ、プリズム、光ガイド、光学接着剤、及び、光学フィルムのような多くの光学用途に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学物品及びコーティングを作製する目的で重合しやすい(メタ)アクリロイルオリゴマーを含有する硬化性組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
光学物質及び光学製品は、光の流量及び強度を制御するのに有用である。有用な光学製品の例としては、光学レンズ、例えば、フレネルレンズ、プリズム、光学光ファイバ、光パイプ、全面的な内部反射フィルムを備えている光学フィルム、逆反射シート、並びに、輝度向上フィルム及びセキュリティ製品などの微細複製製品が挙げられる。これらの製品例の一部は、米国特許番号第4,542,449号、同5,175,030号、同5,591,527号、同5,394,255号などに記載されている。
【0003】
ポリマー物質は、軽量で、製造コストが高くないことから、光学物品における種々な用途を有していると共に、粉末ガラスから作られている光学物品の代わりに広く用いられている。例えばポリカーボネートは、優れた透明度、耐変色性、高強度、及び、高耐衝撃性を特徴とする。しかし、ポリマーを形成させるためのモノマーの熱重合には一般に、硬化中の高い収縮率(例えば11〜20%)と長い硬化時間(例えば、5〜16時間以上)が伴う。収縮レベルが高いと、この物質から精密光学部品(例えばレンズ又はプリズム)を作製する際、特に、より厚い物品、又は、物品の中心部と縁部との間の厚みの差異がより大きい物を作製する際に困難が生じる。硬化時間が長いと、製造設備が拘束され、物品を成型する型の非効率的な使用につながる。また、モノマーを重合するに用いる熱硬化サイクルで、大量のエネルギーが消費され、望ましくないことに、型に熱応力がかかる。
【0004】
光学製品は、高屈折率(メタ)アクリレートモノマー、ハロゲン化モノマーなどのモノマーなど、及び光学製品技術分野で既知のその他の高屈折率モノマーを含む、高屈折率物質から作製することができる。例えば、米国特許番号第4,568,445号、同4,721,377号、同4,812,032号、及び、同5,424,339号を参照されたい。これらのポリマーの一部は、有用なことに射出成型してよいが、このような成型作業によって、得られた物品の複屈折率が大きくなり、その結果、アニーリング処置が必要となり得る。更に、ポリ(メチルメタクリレート)ポリマーは水分の影響を受けやすく、水分又は湿度にさらされると膨張し、更なる複屈折につながる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いくつかの開示は、通常の厚み50.8マイクロメートル(2ミル)未満の光学コーティングに関するものである。これらには、精密光学部品(フレネルレンズやプリズムのようなレンズなど)の製造の際に必要な低重合時収縮率、低粘度、非着色、高硬度、耐応力亀裂、水分又は湿気感受性、及び、低複屈性といった有用な特性の望ましいバランスを組成物が備えているか否かは記載されていない。その上、注型精密光学物品を提供するのに有用な特性の望ましいバランスをもたらす樹脂を得る方法について記載されていない。更に、ポリマー組成物の多くは一般に粘度が高すぎて、光学物品の注型目的には有用ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のペンダントエチレン性不飽和フリーラジカル重合性官能基を有し、Tが20℃以上(好ましくはTが50℃以上)である(メタ)アクリロイルオリゴマーと、フリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、光開始剤、とを含む硬化性組成物を包含する。前記組成物は、硬化させる場合、黄変がなく、低収縮性及び低複屈性、並びに、水分に対する低感受性を示し、それによって、多くの光学用途(光学レンズ、光ファイバ、プリズム、回折レンズ、マイクロレンズ、マイクロレンズアレイ、フレネルレンズ、光ガイド、光学フィルム、光学コーティングが挙げられるが、これらに限らない)に適合するようになる。前記組成物は低粘度であるため、光学接着剤として、及び、従来の成型作業で用いることが可能で、連鎖成長付加プロセスによって分子量を大きくできる。更に、注型及び硬化プロセスによって物品を作製することが可能で、それによって、射出成形プロセスに起因する複屈折を防ぐ。
【0007】
一般に、相当な量の溶媒、モノマー、及び、反応性希釈剤が含まれている硬化性システムは、体積の正味収縮を引き起こす未硬化状態から硬化状態に変換させると、密度の大幅な増大をもたらし得る。周知のように、収縮は、レンズなどの光学素子の製造の際に必要になるような精密成型作業において予測不能なレジストレーションを引き起こす可能性がある。収縮は、前記光学物品内に残留応力を生じさせる可能性もあり、これは、その後、高複屈折などの光学的欠陥につながる恐れがある。
【0008】
本発明はまた、光学物品などの成形物品、及び、ある1つの実施形態においてその作製方法を提供し、前記方法には、
(1)構成成分を混合して光学的注型組成物を形成する工程と、
(2)場合に応じて前記組成物を脱気する工程と、
(3)場合に応じて前記組成物を加熱する工程と
(4)適切なモールドに前記組成物を取り込む工程と、
(5)組成物の重合、好ましくは光重合を行う工程、とが含まれている。
【0009】
本発明は、電子ディスプレイ、カメラ、双眼鏡、ファックス装置、バーコードスキャナ、光学通信デバイス内での用途用の低複屈性の肉厚精密光学部品(光学レンズ、光ガイド、プリズムなど)を製造するための速硬性且つ無溶媒の硬化性組成物を提供することによって、当該業界のニーズに対応する。本発明は、プリズム、例えば光学式結像システムや光学式読取システム内で用いる偏光ビームスプリッタ(PBS)内で利用されるプリズムを作製する際に特に有用である。「光学式結像システム」という用語には、本明細書で使用する時、観察者が見る画像を生成させる様々な光学システムを包むように企図されている。本発明の光学式結像システムは、例えば、前面投写及び背面投写システム、投写型ディスプレイ、頭装着型ディスプレイ、バーチャルビューワ、ヘッドアップ表示装置、光コンピュータシステム、光相関システム、並びに、その他の光学式観察及び表示システムで用いてよい。
【0010】
PBSは、入射光線を第一の偏光成分と第二の偏光成分に分離させる光学部品である。従来のPBS機能は、光の入射面、つまり、入射光線と偏光面に対し垂直な面で画定される面に基づくものである。入射面は、反射光線と反射面に対し垂直な面で画定される反射面とも呼ばれる。従来の偏光子の動作に基づくと、光は2つの偏光成分、p−成分とs−成分を有するものとして表現される。p−成分は、入射面で偏光した光に対応する。s−成分は、入射面に垂直の光に対応する。
【0011】
光学式画像システムにおいて可能な限り最大の効率を実現させるためには、f/#が低いシステムが望ましい(F.E.ドアニー(Doany)ら、投写型ディスプレイのスループット;光透過と光源収集の効率(Projection display throughput; Efficiency of optical transmission and light-source collection)、IBM研究開発誌(IBM J. Res. Develop.)42巻、5月/7月号、1998、387〜398ページ参照)。f/#は、光学レンズの収光能を示す値であり、以下の式で定義される。
【0012】
f/#=f(焦点距離)÷D(レンズの直径又は開口部)f/#(又はF)は、光学素子を照射する際に用いてよい光錐の大きさを示す値である。f/#が小さくなるにつれ、レンズがより明るく、かつ、光学素子に利用可能な光錐がより大きくなる。より大きな光錐は一般に、より高い光スループットにつながる。従って、より明るい(f/#がより低い)照明システムには、より広範囲の入射角を有する光線を受容可能なPBSが必要となる。最大入射角Θmax(光錐の外部光線)は、F/#から数学的に以下の通り算出することが可能である。
【0013】
Θmax=tan−1((2F)−1
従来の折返し型光路光学式画像システムは、マクニール(MacNeille)偏光子として知られる光学素子を利用している。マクニール(MacNeille)偏光子は、異なる屈折率(n)の2つの媒質間の境界面からp−偏光が反射されないブルースター角と呼ばれる角度が存在するという事実を利用している。ブルースター角は以下の式により得られる。
【0014】
Θ=tan−1(n/n
式中、nは、1つの媒質の屈折率であり、nはもう一方の媒質の屈折率である。入射光線の入射角がブルースター角に達した時点で、反射したビーム部分は、入射面に対して垂直な平面内で偏向する。透過したビーム部分は、入射面に対して平行な平面内で、優先的に(ただし完全にではない)偏向するようになる。s−偏光の効率的な反射を実現させるために、マクニール(MacNeille)偏光子は、望ましい角度のブルースター角条件を満たす物質の薄フィルムの多重層から構築する。フィルムの厚みは、フィルム層の対によって四分の一波のスタックが形成されるように選択する。
【0015】
この構造は、ブルースター角条件が(物質中の分散を除き)波長に依存していないという点で有利である。しかし、マクニール(MacNeille)偏光子では、一対の物質のブルースター角条件が、1つの入射角においてのみ厳密に満たされているという事実により、広角性能を実現させるのは困難である。入射角がこの角度から外れるにつれて、スペクトルが均等でない漏洩が発生する。この漏洩は、フィルムスタック上の入射角がブルースター角よりも更に垂直に近づくにつれて特に重大なものとなる。以下で説明する通り、各光線の反射面を基準にしたp−偏光及びs−偏光の使用に付随する折返し型光路についてのコントラスト上の欠点も存在する。
【0016】
典型的には、マクニール(MacNeille)PBSはガラス立方体の中に収納されており、この場合、PBS薄フィルムスタックは、前記立方体の対角線平面に沿って適用されている。前記立方体内のガラスの指数を適切に選択することにより、前記立方体の面に対して垂直に入射する光がPBSのブルースター角で入射するように、PBSを構築することが可能である。しかし、立方体の使用により、構成成分の偏光性能を低下させる熱応力誘発性複屈折の発生に主に付随のある種の欠点が発生する。予め焼鈍させた高価な立方体でも、この欠点が生じる場合がある。また立方体は、コンパクトなシステムに対しかなりの重量を付加する。
【0017】
純粋s−偏光又は純粋p−偏光の入射ビーム間で100:1を超える消光レベルを提供しながら、f/2.5という低いf/#でのs−偏光とp−偏光の間の識別を行う能力を有するマクニール(MacNeille)型PBSが繰り返し開発されてきたと伝えられている。残念ながら、以下で説明するように、反射型結像装置と共に、折返し型光路内でマクニール(MacNeille)型PBSを使用する場合、コントラストは、主光線の反射面に対して回転した反射面を有する光線の偏光解消により低下する。以下で使用するように、「偏光解消」という用語は、主光線の偏光状態から、ある光線の偏光状態のずれを説明するためのものである。投写システム内の光を一般に円錐として投写させる時、大部分の光線は、主光線に対し完全に平行であるわけではない。偏光解消はf/#が減少するにつれて増大し、色選択性フィルムからの引き続く反射の中で拡大される。この「偏光解消カスケード」は、マクニール(MacNeille)PBSベースのプロジェクターのf/#を事実上約3.3に制限し、それによりこれらのシステムの光スループット効率を制限することを目的として、一部の光学式画像システムの設計者によって計算されてきた。A.E.ローゼンブルース(Rosenbluth)ら、投写型ディスプレイ内の反射型液晶光弁のコントラスト特性(Contrast properties of reflective liquid crystal light valves in projection displays)、IBM研究開発誌(IBM J. Res. Develop.)、42巻、5月/7月号、1998年、359〜386ページを参照されたい。
【0018】
本明細書で使用する時、
「化学線」とは、光化学的に活性な放射線及び粒子線を意味する。化学線としては、加速粒子、例えば電子ビーム、並びに、電磁放射線、例えば、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、及び、ガンマ線が挙げられるが、これらに限らない。放射線は、単色又は多色、干渉性又は非干渉性にすることができ、化学線硬化性組成物に相当な数のフリーラジカルを発生させるのに十分な強度にすべきである。
【0019】
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の双方を意味し、(メタ)アクリロイル基としては、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、及び、メタクリルアミド基が挙げられる。
【0020】
「エチレン性不飽和基」としては、ビニル、ビニルオキシ、(メタ)アクリロイルなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0021】
「溶融加工性」は、従来の成型又はコーティング装置を用いて、100℃以下の温度でコーティング又は成型するのに適切な低粘度を有するか又は実現させるオリゴマー組成物を指す場合に用いる。
【0022】
「光硬化」及び「光重合」は、本出願では、比較的単純な分子が化合して鎖又は網様の巨大分子を形成させる化学線誘発性化学反応を指すために同義的に用いる。
【0023】
「100%ソリッド」は、溶媒などの非反応性種を含まない組成物を意味する。
【0024】
放射エネルギーの「透過率」とは、ある物質を通過する放射エネルギーの割合を指す。
【0025】
「透明性」は、正透過の度合いとみなしてもよく、従って物質のシートを通して物体が見えるという、物質の特性とみなしてもよい。透明物質は、光を大幅に拡散又は散乱しない状態で透過させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基を有し、Tが20℃以上(好ましくはTが50℃以上)である1つ以上の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、フリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、光開始剤、とを含む硬化性物質を提供する。多くの実施形態では、本発明は、精密光学部品及び電子ディスプレイに利用するための、光学的に透明で黄変のない、低収縮、低残留応力及び低複屈折を有する硬化性物質を提供する。
【0027】
本発明の組成物は、(メタ)アクリロイルオリゴマーの分子量、架橋剤及び/又は反応性希釈剤の添加量が最適であるため、収縮率及び複屈折率を最小化させる。本発明の低収縮組成物は、成型用途において又は正確な成型及び/又はレジストレーションが必要となるいずれかの用途において特に有用である。本発明は、100%ソリッドとして配合され、フリーラジカル法によって硬化させてもよく、当該技術分野に適合するか又はそれを超える特性を示す新規組成物を提供する。本発明は、5%未満、好ましくは3%未満の収縮率を示す組成物を提供する。本組成物は低粘度であり、精密成型プロセスを含む成型プロセスに適切である。組成物の粘度は一般に、100℃以下の適用温度において、20Pa.s(20,000センチポアズ)未満、15Pa.s(15,000センチポアズ)未満、又は、10Pa.s(10,000センチポアズ)未満である。組成物の粘度は一般に、100℃以下の温度において、少なくとも0.1Pa.s(100センチポアズ)、又は、少なくとも0.5Pa.s(500センチポアズ)である。
【0028】
本発明の物品の厚みは約0.5ミリメートル超、(絶対)複屈折率は一般的には1×10−6未満、光透過率は約85%を超え、好ましくは90%を超え、及び、厚さ4.8ミリメートルの試料でのCIELAB b*は約1.5単位未満、好ましくは約1.0単位未満にしてよい。
【0029】
本組成物には一般に、
複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基を有し、Tが20℃以上、好ましくは50℃以上であるオリゴマーが50〜99重量部、好ましくは60〜95重量部、及び、最も好ましくは70〜95重量と、
フリーラジカル性重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーが1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部、最も好ましくは5〜30重量部と、
光開始剤が、オリゴマー並びに架橋剤及び/又は反応性希釈剤モノマー100重量部に0.001〜5重量部、好ましくは0.001〜1重量部、最も好ましくは0.01〜0.1重量部含まれている。
【0030】
一部の好ましい実施形態では、架橋剤が、1〜40重量部、好ましくは1〜30重量部、及び、最も好ましくは1〜20重量部を占める。一部の実施形態では、反応性希釈剤が、25重量部未満、好ましくは15重量部未満、及び、最も好ましくは10重量部未満を占める。
【0031】
オリゴマーは一般に、a)及びb)100重量部に対し、
a.20℃以上、好ましくは50℃以上のガラス転移温度を有するポリマーに単独重合可能な(メタ)アクリロイルモノマー単位を50〜99重量部、好ましくは60〜97重量部、最も好ましくは80〜95重量部と(前記(メタ)アクリロイルモノマー単位は(メタ)アクリレートモノマー単位であるのが好ましい)、
b.ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有するモノマー単位を1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部、最も好ましくは5〜20重量部と、
c.20℃未満のガラス転移温度を有するポリマーへと単独重合することが可能なモノマー単位を、40重量部未満、好ましくは30重量部未満、最も好ましくは20重量部未満、とを含む重合モノマー単位を含む。
【0032】
第一のオリゴマー構成成分には、単独重合させる場合、Tが20℃を超え、好ましくは50℃を超えるポリマーを生成させる1つ以上の高Tモノマーが含まれている。好ましい高Tモノマーは、少なくとも6個の炭素原子を持つ単環式及び二環式脂肪族アルコール、及び、芳香族アルコールの1官能性(メタ)アクリレートエステルである。シクロ脂肪族基及び芳香族基の双方とも、例えばC1〜6アルキル、ハロゲン、イオウ、シアノなどで置換することが可能である。特に好ましい高Tモノマーとしては、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−ビフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、及び、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレートが挙げられる。高Tモノマーの混合物も用いることができる。モノマーが、(メタ)アクリレートモノマーを含む他のモノマーと重合可能な場合は、スチレン、ビニルエステルなどを含む任意の高Tモノマーを使用できる。しかし、高Tモノマーは、一般にはアクリレートエステル又はメタクリレートエステルである。
【0033】
その他の高Tモノマーとして、C〜C20アルキル(メタ)アクリレート(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アリルメタクリレート、ブロモエチルメタクリレートなど)、スチレン、ビニルトルエン、ビニルエステル(ビニルプロピオネート、ビニルアセテート、ビニルピバラート、及び、ビニルネオノナノアートなど)、アクリルアミド(N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、及び、N−t−ブチルアクリルアミドなど)、並びに、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。高Tモノマーの混合物を用いてもよい。
【0034】
最も好ましい高Tモノマーは、環境(熱及び光)安定性から、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、及び、これらの混合物などの直鎖、分枝鎖、シクロ、及び、架橋シクロ脂肪族(メタ)アクリレートから選択する。
【0035】
組成物の第一のオリゴマー構成成分には、フリーラジカ重合性不飽和基を包む1つ以上のペンダント基が含まれている。好ましいペンダント性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基((メタ)アクリルオキシ、及び、(メタ)アクリルアミドなど)が挙げられる。このようなペンダント基は、少なくとも2つの方法で、ポリマー内に組み込むことができる。最も直接的な方法は、エチレンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、又は、ビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレートのモノマー単位内に組み込むことである。有用な多価不飽和モノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、プロパルギル(メタ)アクリレート、及び、クロチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、及び、アリル2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテートが挙げられる。
【0036】
ペンダントフリーラジカル重合性官能基を組み込む「直接的な方法」を用いる場合、有用な官能性モノマーとしては、フリーラジカルの付加が可能な官能基(ビニル官能基、ビニルオキシ官能基、(メタ)アクリレート官能基、(メタ)アクリルアミド官能基、及び、アセチレン官能基を含む炭素−炭素二重結合が含まれている群など)を含む、炭素原子を最大で約36個有する不飽和脂肪族化合物、シクロ脂肪族化合物、及び、芳香族化合物が挙げられる。
【0037】
利用可能なポリエチレン性不飽和モノマーの例として、ポリアクリル系官能性モノマー(エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサメチレンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、及び、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及び、1,12−ドデカンジオールジアクリレートなど)、オレフィン性アクリル系官能性モノマー(アリルメタクリレート、2−アリルオキシカルボニルアミドエチルメタクリレート、及び、2−アリルアミノエチルアクリレートなど)、アリル2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテート、ジビニルベンゼン、ビニルオキシ基置換官能性モノマー(2−(エテニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(エチニルオキシ)−1−プロペン、4−(エチニルオキシ)−1−ブテン、及び、4−(エテニルオキシ)ブチル−2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテートなど)などが挙げられるが、これらには限らない。ペンダント性不飽和基を有するポリマーの調製に利用できる有用な多価不飽和モノマー、及び、有用な反応性/共反応性化合物は、U.S.5,741,543号(ウィンズロー(Winslow)ら)により詳しく記載されている。
【0038】
好ましい多価不飽和モノマーは、不飽和基が不均等な反応性を有するものを意味する。当業者であれば、不飽和基に付加している特定部分が、不飽和基の反応性に影響を与えると分かる。例えば、等しい反応性の不飽和基を有する多価不飽和モノマー(例えばHDDA)を用いる場合、組成物の早期ゲル化を、例えば、ラジカルスカベンジャーとして作用する酸素の存在により防がなくてはならない。反対に、異なる反応性の不飽和基を有する多価不飽和モノマーを用いる場合、より反応性が低い不飽和基(例えば、ビニル、アリル、ビニルオキシ、又は、アセチレン)が組成物と反応して架橋を形成させる前に、より反応性が高い基(例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド)が優先的にポリマー骨格内に組み込まれる。直接的な方法は、分枝と早期ゲル化の制御が困難であるため、通常は好ましくない。
【0039】
反対に好ましいのは、重合性不飽和基を含むペンダント基を第一のポリマーに組み込む間接的な方法であり、この方法は、ポリマーのモノマー単位の中に、反応性官能基を含むものを組み込む方法である。有用な反応性官能基としては、ヒドロキシル基、アミノ基(特に2級アミノ基)、オキサゾロニル基、オキサゾリニル基、アセトアセチル基、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、アジリジニル基、ハロゲン化アシル基、及び、環状無水物基が挙げられるが、これらには限らない。これらの中で好ましいのは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、及び、アジリジニル基である。これらのペンダント反応性官能基は、ペンダント反応性官能基と共反応する官能基を含む不飽和化合物と反応する。2つの官能基が反応する時、ペンダント性不飽和基を持つオリゴマーが生じる。
【0040】
ペンダントフリーラジカル重合性官能基を組み込む「間接的な方法」を用いる場合、有用な反応性官能基としては、ヒドロキシル基、2級アミノ基、オキサゾリニル基、オキサゾロニル基、アセチル基、アセトニル基、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、アジリジニル基、ハロゲン化アシル基、ビニルオキシ基、及び、環状無水物基が挙げられる。ペンダント反応性官能基がイソシアナト官能基の場合、共反応性官能基には、2級アミノ基又はヒドロキシル基が含まれているのが好ましい。ペンダント反応性官能基がヒドロキシル基を含む場合、共反応性官能基には、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、無水物基、又は、オキサゾリニル基が含まれているのが好ましい。ペンダント性反応性官能基がカルボキシル基を含む場合、共反応性官能基には、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、又は、オキサゾリニル基が含まれているのが好ましい。最も一般的には、反応は、置換機構又は縮合機構による反応である、求核性官能基と求電子性官能基間で起こる。
【0041】
有用な共反応性化合物の代表例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなど)、アミノアルキル(メタ)アクリレート(3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、及び、4−アミノスチレンなど)、オキサゾリニル化合物(2−エテニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、及び2−プロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オンなど)、カルボキシ置換化合物((メタ)アクリル酸及び4−カルボキシベンジル(メタ)アクリレートなど)、イソシアナト置換化合物(イソシアナトエチル(メタ)アクリレート及び4−イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ置換化合物(グリシジル(メタ)アクリレートなど)、アジリジニル置換化合物(N−アクリロイルアジリジン及び1−(2−プロペニル)−アジリジンなど)、並びに、ハロゲン化アクリロイル((メタ)アクリロイルクロライドなど)が挙げられる。
【0042】
好ましい官能性モノマーは、以下の一般式を有する。
【0043】
【化1】

【0044】
式中、Rは、水素、C〜Cアルキル基、又は、フェニル基、好ましくは水素又はメチル基であり、Rは、エチレン性不飽和基を重合可能又は反応性官能基Aに結合させる単結合又は二価結合基であり、好ましくは34個まで、好ましくは18個まで、より好ましくは10個までの炭素原子、並びに、任意に応じて酸素原子及び窒素原子を含み、Rが単結合でない場合、好ましくは、以下から選択する。
【0045】
【化2】

【0046】
式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基、5〜10個の炭素原子を有する5員又は6員シクロアルキレン基、又は、各アルキレンに1〜6個の炭素原子を含むか、又は、6〜16個の炭素原子を有する二価芳香族基であるアルキレン−オキシアルキレンであり、Aは、炭素−炭素二重結合にフリーラジカル付加が可能な官能基、又は、フリーラジカル重合性官能基の組み込みのため、共反応性官能基と反応可能な反応性官能基である。
【0047】
第一のオリゴマー構成成分に関する上記の記述において、フリーラジカル重合性基を有するエチレン性不飽和モノマーは、架橋剤及び反応性希釈剤とフリーラジカル性重合可能となるように選択することが分かるであろう。官能基間の反応により、構成成分間のエチレン性不飽和基のフリーラジカル性付加反応で共有結合が形成され、架橋が起こる。本発明では、ペンダント性官能基は、副生成物分子が発生しない付加反応により反応し、代表的な反応相手側は、この好ましい方法によって反応する。
【0048】
硬化性組成物を高温で加工し、ペンダント性不飽和を組み込む直接的な方法を用いる場合、これらペンダント基を活性化せず、早期ゲル化を起こさないように留意しなければならない。例えば、ホットメルト加工温度を比較的低温に維持し、重合阻害剤を混合物に添加することができる。従って、組成物の加工に熱を利用する場合、上述の間接的な方法がペンダント性不飽和基の組み込みに好ましい方法である。
【0049】
オリゴマーには、場合に応じて、Tが20℃未満であるポリマーへと単独重合可能な低Tアルキル(メタ)アクリレートエステル又はアミドを更に含めることが可能である。本発明で有用なアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマーとしては、C〜C20アルキル基を含有するアルキルエステルの直鎖、環状、及び、分枝鎖異性体が挙げられる。Tと側鎖の結晶化度を考慮すると、好ましい低Tアルキル(メタ)アクリレートエステルは、C〜Cアルキル基を有するものを意味する。有用なアルキル(メタ)アクリレートエステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、及びデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。最も好ましい(メタ)アクリレートエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレートが挙げられる。低Tアルキル(メタ)アクリレートエステルは、得られるオリゴマーのTが20℃以上となる量で添加する。一般に、このような低Tモノマーは、40重量部以下、好ましくは30重量部以下、最も好ましくは20重量部以下の量で用いる。
【0050】
オリゴマーの理論的T値は、例えば、フォックス(Fox)の等式:1/T=(w/T+w/T)を用いて計算が可能で、式中、wとwは、2つの構成成分の重量分率を示し、TとTは、2つの構成成分のガラス転移温度を示す。これらは例えば、L.H.スパーリング(Sperling)、「高分子物理学入門(Introduction to Physical Polymer Science)」、第二版、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク、357ページ(1992年)、及び、T.G.フォックス(Fox)、米国物理学協会紀要(Bull. Am. Phys. Soc.)、1、123(1956年)に記載されている。モノマー構成成分のTを用いて、オリゴマー内のその重量分率を推定すると、結果としてのオリゴマーのTが算出できる。当業者であれば分かるように、フォックス(Fox)の等式は、3つ以上の構成成分を有する系で用いてもよい。
【0051】
連鎖移動剤の存在下において、反応開始剤とモノマーを混合し、ラジカル重合手法を用いてオリゴマーを調製してもよい。この反応では、連鎖移動剤が1つの成長鎖上の活性部位を他の分子に移動させることで、続いて新しい鎖の伸長を開始でき、そのため、重合度が制御可能になる。結果としてのオリゴマーの重合度は、10〜300、好ましくは15〜200、より好ましくは20〜200にしてよい。重合度が高すぎると、組成物の粘度が高くなりすぎ、溶融加工しにくくなることが判明している。逆に、重合度が低すぎると、硬化組成物の収縮率が大きくなり、硬化組成物に高複屈折性をもたらす。
【0052】
本明細書に記載するモノマーを重合する際に、結果としてのオリゴマーの分子量を制御するために連鎖移動剤を用いることが可能である。適切な連鎖移動剤としては、ハロゲン化炭化水素(例えば、炭素テトラブロミド)及びイオウ化合物(例えば、ラウリルメルカプタン、ブチルメルカプタン、エタンチオール、及び、2−メルカプトエチルエーテル、イソオクチルチオグリコール酸塩、t−ドデシルメルカプタン、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール)が挙げられる。有用な連鎖移動剤の量は、所望のオリゴマーの分子量及び連鎖移動剤の種類によって異なる。連鎖移動剤は、通常はモノマー総重量に対し、約0.1重量部〜約10重量部、好ましくは0.1〜約8重量部、及び、より好ましくは約0.5重量部〜約6重量部の量で用いる。
【0053】
一部の実施形態では、2つ又はそれ以上の官能基を有する多官能性連鎖移動剤を用いて、2つ又はそれ以上のオリゴマー基を有する化合物を生成することができる。多官能性連鎖移動剤の使用により、硬化後のより高い破壊靭性がもたらされる。多官能性連鎖移動剤の例としては、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[2−(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレエート(isocyanureate)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールエタントリチオグリコレート、1,4−ブタンジオールビスメルカプトアセテート、及び、グリセリルチオグリコレート、又は、これらの物質の混合物が挙げられる。多官能性連鎖移動剤は、当該技術分野において既知であるように、α,ω−メルカプトアルカン又はα,ω−アリルアルカンに由来するものでもよく、1,10−ジメルカプトデカン、1,14−ジメルカプトテトラデカン、1,10−ジアリルデカンが挙げられる。その他の連鎖移動剤には、α,ω−ハロゲン置換アルカン、例えば、α,α,α,ω,ω,ω−ヘキサブロモデカンが含まれている。本明細書に参考として組み込まれるUS6,395,804号、及び同6,201,099号(ピーターソン(Peterson)ら)を参照されたい。
【0054】
このオリゴマー化反応に適切な反応開始剤としては、例えば、熱反応開始剤及び光反応開始剤が挙げられる。有用な熱反応開始剤としては、アゾ化合物とペルオキシドが挙げられる。有用なアゾ化合物の例としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、(バゾ(Vazo)52、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール社(E. I. duPont de Nemours & Co.)より市販)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、(バゾ(Vazo)64、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール社(E. I. duPont de Nemours & Co.)より市販)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、(バゾ(Vazo)67、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール社(E. I. duPont de Nemours & Co.)より市販)、1,1’−アゾビス(シアノシクロヘキサン)、(バゾ(Vazo)88、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール社(E. I. duPont de Nemours & Co.)より市販)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、(V−40、和光純薬工業(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)より市販)、及び、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)、(V−601、和光純薬工業(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)より市販)が挙げられる。有用なペルオキシドの例としては、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,ラウロイルペルオキシド、及び、t−ブチルペルオキシピバラートが挙げられる。有用な有機ヒドロペルオキシドとしては、t−アミルヒドロペルオキシド、及び、t−ブチルヒドロペルオキシドなどの化合物が挙げられるが、これらに限らない。
【0055】
有用な光開始剤としては、ベンゾインエーテル(ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインブチルエーテルなど)、アセトフェノン誘導体(2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン、及び、2,2−ジエトキシアセトフェノンなど)、並びに、アシルホスフィンオキシド誘導体及びアシルホスホネート誘導体(ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、イソプロポキシ(フェニル)−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、及び、ジメチルピバロイルホスホネートなど)が挙げられる。これらのうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノンが好ましい。反応開始剤は通常、100重量部のモノマー(1種又は複数種)に対し、0.001〜5重量部の量で用いる。
【0056】
組成物には更に、複数のペンダントエチレン性不飽和フリーラジカル重合性官能基を有する架橋剤が含まれている。有用な架橋剤の平均官能価(1分子あたりのエチレン性不飽和フリーラジカル重合性官能基の平均数)は1を超え、好ましくは2以上である。官能基は、第一のオリゴマー構成成分上のペンダントエチレン性不飽和フリーラジカル重合性官能基と共重合可能なように選択する。有用な官能基としては、第一のオリゴマー構成成分について記載したものが挙げられ、ビニル官能基、ビニルオキシ官能基、(メタ)アクリロイル官能基、及び、アセチレン官能基が挙げられるが、これらに限らない。
【0057】
有用な架橋剤は以下の一般式を有する。
【0058】
R−(Z)
式中、Zは炭素−炭素二重結合などのフリーラジカル重合性官能基であり、nは2以上であり、Rは原子価nを有する有機基である。好ましくは、Rは原子価nの脂肪族アルキルラジカルであり、直鎖状又は分枝鎖状であることが可能である。
【0059】
このような架橋剤の例としては、C〜C18アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、C〜C18アルキレントリオールトリ(メタ)アクリレート、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、スレイトマー社(Sratomer Co.)(ペンシルベニア州エクストン)のCD501などのプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、及び、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、コグニス社(Cognis Co.)のビソマー(Bisomer)(商標)EP100DMAなどのポリアルキレングリコールジメタクリレートが挙げられ、混合を容易にするために、好ましい架橋剤は適用温度で固体ではない。
【0060】
一部の実施形態では、組成物に架橋を含めて、より高いガラス転移温度を硬化組成物に付与するのが望ましい。GB1,567,080号に記載されているような、1〜3個のエチレンオキシド単位及び/又はプロピレンオキシド単位が伸長した、ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカンのジ(メタ)アクリル酸エステル、及び、ビスアリルエーテル、及び、ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカン化合物のジ(メタ)アクリル酸エステルも、強靱性を大きく損なうことなく硬化組成物のTを上昇させるのに特に有用である。一部の実施形態では、このような架橋剤の使用により、強靱性が増す。本明細書に参考として組み込まれるU.S.4,795,823号に記載されている(メタ)アクリル酸エステル、例えば、トリグリコール酸−ビス[3(4)−メタクリルオキシメチル−8(9)−トリシクロ[5.2.1.02.6]−デシルメチルエステルも適切である。
【0061】
本発明による組成物には、少なくとも1つの反応性希釈剤を含めてもよい。反応性希釈剤は、組成物の粘度を調節するために使用できる。従って、反応性希釈剤は、各々が、化学線に暴露した時に重合することができる官能基を少なくとも1つ含有する低粘度モノマーにすることができる。例えば、ビニル反応性希釈剤及び(メタ)アクリレートモノマー希釈剤を使用してもよい。
【0062】
反応性希釈剤に存在する官能基は、硬化性(メタ)アクリレートオリゴマーで用いるものと同じにしてもよい。好ましくは、反応性希釈剤に存在する放射線硬化性官能基は、放射線硬化性オリゴマーに存在する放射線硬化性官能基と共重合することができる。反応性希釈剤は一般に、分子量が約550以内であるか、又は室温での粘度が約500mPascal.sec未満(100%希釈剤で測定)である。
【0063】
反応性希釈剤には、(メタ)アクリロイル又はビニル官能価、及び、C〜C20アルキル残基を含めてもよい。このような反応性希釈剤の例は、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどである。低揮発性アルキル(メタ)アクリレート、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及び、(メタ)アクリル酸が好ましい反応性希釈剤である。
【0064】
反応性希釈剤は、好ましくは、本明細書に記載する試験方法で測定される硬化組成物の収縮率が約5%以下、好ましくは約3%以下である量で添加する。適切な反応性希釈剤の量は、約25重量部未満、好ましくは約0〜約15重量部、及び、より好ましくは約0〜約10重量部であることが判明している。好ましくは、反応性希釈剤量と架橋剤の合計が40重量部未満である。
【0065】
組成物の構成成分は、光開始剤と共に混合及び硬化させてもよい。光開始剤は、硬化速度及び硬化性組成物の変換パーセントを向上させるが、試料の厚みを貫通する透過光を減衰させ得ることから硬化深さ(より厚いコーティング又は成形物品のもの)は悪影響を受ける場合がある。光開始剤は、1.0重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは0.05重量%未満の量で用いる。
【0066】
従来の光開始剤を用いることができる。例としては、α−ヒドロキシアルキルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル、及び、ベンジルケタール、モノアシルホスフィンオキシド、及び、ビス−アシルホスフィンオキシドのようなベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体が挙げられる。好ましい光開始剤は、エチル2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィナート(ルシリン(Lucirin(商標)TPO−L)(BASF(ニュージャージー州、マウントオリーブ)から入手可能)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(イルガキュア(IRGACURE)1173(商標)、チバスペシャルティーズ(Ciba Specialties))、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(イルガキュア(IRGACURE)651(商標)、チバスペシャルティーズ(Ciba Specialties))、フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(イルガキュア(IRGACURE)819、チバスペシャルティーズ(Ciba Specialities))である。その他の適切な光開始剤としては、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾオキサゾール、及び、ヘキサアリールビスイミダゾールが挙げられる。しばしば、光開始剤の混合物は適切なバランスの特性をもたらす。
【0067】
その後、組成物を所望の基板に適用するか又はモールドに添加し、紫外線のような化学線に暴露することができる。組成物は、可視光線又は紫外放射のようないかなる形態の化学線にも暴露させてもよいが、好ましくはUVA(320〜390nm)又はUVB(395〜445nm)放射に暴露させる。一般に、化学線の量は、ねばねばせず、寸法が安定した固体の塊を形成させるのに十分でなければならない。一般に、本発明の組成物を硬化するのに必要なエネルギーの量は約0.2〜20.0J/cmの範囲である。
【0068】
光重合は、炭素アーク光、低、中、又は、高圧水銀蒸気ランプ、渦流プラズマアークランプ、キセノン閃光ランプ、紫外線発光ダイオード、及び、紫外線発光レーザーのような適切な任意の光源により生じる場合がある。多くの用途においては、LED光源又はアレイを用いて硬化を引き起こすことが望ましい場合がある。このようなLED源は、より速い硬化をもたらし、硬化中の組成物の加熱がより小さくなる場合がある。1つの適切なLED源は、ノールクス(Norlux)広域アレイ、シリーズ808(ノールクス(Norlux)(イリノイ州キャロルストリーム)より入手可能)である。
【0069】
好ましいオリゴマー製造法は、断熱重合法によるものである(例えば、U.S.5,986,011(エリス(Ellis))又はU.S.5,753,768(エリス(Ellis))参照)。このような重合において、重合開始剤(1つ又は複数)を低濃度で用いて、ポリマー内に取り込まれた反応開始剤の断片による着色を減少させてもよい。更に、断熱重合の間、一部には反応開始剤濃度が低いため、また一部には重合に伴う温度プロファイルが上昇するため、重合中に又は重合終了時点で本質的に完全に反応開始剤が消費されるように、条件を選択可能である。全ての熱重合開始剤が消費されることで、ペンダントフリーラジカル重合性官能基(本明細書に記載されている)を組み込む「間接的な方法」を使用するオリゴマー官能化工程において、不要な重合と架橋を有利に阻止又は減少させる。更に、熱反応開始剤が有意な量で存在しないことで、成型及び更なる硬化前における、保管又は輸送中の官能化オリゴマーの安定性が有利に改善する。
【0070】
断熱重合プロセスには、
(a)本発明のオリゴマー組成物を回分反応器内に供給する工程と
(b)混合物を脱酸素する工程と(この工程(b)は、場合に応じて工程(c)と少なくとも部分的に重複可能である)、
(c)重合を開始させるために、少なくとも1つの熱的フリーラジカル反応開始剤から十分な量の反応開始剤フリーラジカルを発生させるのに十分な温度まで混合物を加熱する工程と、
(d)前記混合物を本質的に断熱条件下で重合させ、少なくとも部分的に重合した混合物を得る工程と、
(e)場合に応じて混合物を加熱し、反応開始剤フリーラジカルを発生させていない反応開始剤の一部又は全部からフリーラジカルを発生させ、続いて混合物を本質的に断熱条件下で重合させ、更に重合した混合物を得る工程と、
(f)場合に応じて工程(e)を1回以上繰り返す工程と、
(g)任意に応じて工程(a)〜(e)を1回以上繰り返し、繰り返している間に冷却を行う工程、とが含まれる。
【0071】
モノマーが反応熱を有する場合、工程(g)は、高温になり過ぎずに1回の断熱重合工程中に望ましいオリゴマーへの望ましい変換を実現させるのが困難であるという点で有用である。工程(a)〜(e)を繰り返している間に適当な温度まで冷却し、続いて更に1回以上繰り返して断熱的に重合すると、最終重合温度を望ましい程度に制御するのに有益であり得る。これにより、重合熱の結果、ポリマーの分解による黄変を予防することが可能である。
【0072】
反応開始剤(1つ又は複数)とその量を工程(a)で適切に選択し、任意に応じて工程(g)を利用することで、低収縮、低残留応力、及び、低複屈折の硬化性物質を提供するように、ポリマーへの変換を十分高くすることが有益にも制御可能である。更に、場合によっては、反応性希釈剤の官能化及び追加が、同一の反応装置中で、最終硬化性処方の汚染や酸化を最小化しながら、実行される。
【0073】
本発明の組成物及び本発明の光学製品の製造プロセスは、例えば、フレネルレンズ、プリズムなどの光学レンズ、高屈折率フィルム、非ゆがみ性低複屈性フィルムなどの光学フィルム、例えば、全面的内部反射フィルムや輝度向上フィルムなどの微細複製フィルム、フラットフィルム、多層フィルム、逆反射シート、光学光ファイバ、又は光チューブ、及び、その他を含む光学素子を必要とする様々な用途に応用可能である。このような光学製品は、光学アセンブリ、プロジェクションテレビなどの光学投写システム、並びに、光学アセンブリを含むディスプレイ及びその他装置で有用である。本発明の光学製品には、現在、すりガラス、又は射出成形したプラスチックから製造されている物品が含まれる。
【0074】
このような物品の厚みは、約0.5mm以上にしてよく、適切な反応槽内で、いずれかの適切な順序で、オリゴマー、架橋剤及び/又は反応性希釈剤、並びに、光開始剤を混合することにより製造される本発明の硬化性組成物から調製できる。混合は、組成物の構成成分が単一相になるまで継続する。厚み25mmの物品は、本発明の組成物及び硬化プロセスを用いて実現されている。
【0075】
使用時、組成物は、約3.3kPa(25トル)未満の真空を用いて、又は、適切な境界を越え薄フィルム内で組成物を流すことにより、脱気するのが好ましい。脱気した組成物は、場合に応じて約0.2kPa〜39MPa(2〜400Kg/cm)の圧力を用いて、調製を望む物品の形状に呼応するモールドに組み入れる。このようなモールドは一般に、プラスチック、ガラス、若しくは、金属、又は、これらの組み合わせからできている。
【0076】
ある1つの実施形態では、硬化性組成物は、必要な形状を有するモールドの表面に、又は、レンズのような所望の光学物品に対応するモールド素子に、適用してもよい。モールド又はモールド素子に入る硬化性組成物の体積は、モールドの表面を横切るようにスキージを滑らせることによって制御することができる。硬化性組成物の量は、ローラーの使用によるなどのその他の既知のコーティング技術によっても適用できる。所望ならば、組成物の粘度を低下させてより効果的な成型を提供するために、加熱を用いてもよい。記載のように、本発明の多数の実施形態が溶融加工可能であり、すなわち、100℃以下の温度でのコーティング又は成型に適する低粘度を有するか又はそれを実現させる。
【0077】
モールド素子は、完全に充填されていてもよく、又は、部分的に充填されていてもよい。光重合可能な組成物が100%ソリッドの収縮のない硬化性物質である場合、硬化組成物の形状は、モールド素子のそれと同じままであろう。しかし、光重合可能な組成物が硬化時に収縮する場合、当該液体が収縮し、不安定なレジストレーションを発生させ、光学的欠陥をもたらすであろう。好ましくは、光重合可能な組成物には、硬化中に約5体積%未満、好ましくは約3%未満収縮する物質を含有する。
【0078】
光重合を開始するために、モールドを充填し、モールドに収容されている組成物の重合を、本質的に完了(80%超)させるための持続時間及び強度の曝露を提供する高エネルギー紫外線源のような化学線源の下に置く。必要に応じて、反応性構成成分又は光重合に悪影響を及ぼすことがある波長を排除するためにフィルターを使用してもよい。光重合は、硬化性組成物の曝露表面を介して引き起こしてもよく、又は、重合を引き起こすために必要な波長において必要な透過を有するモールド物質を適切に選択することによる「モールドを通した(スルーモールド)」を介して引き起こしてもよい。
【0079】
光開始エネルギー源は、化学線、すなわち、本発明の光学的注型樹脂の付加重合及び連鎖成長重合を開始できるフリーラジカルを直接的又は間接的のいずれかで発生させることができる700ナノメートル以下の波長を有する放射線を放出する。炭素アーク光、低、中、又は、高圧水銀蒸気ランプ、渦流プラズマアークランプ、キセノン閃光ランプ、紫外線発光ダイオード、及び、紫外線発光レーザーのような光開始エネルギー源などの好ましい光開始エネルギー源は、紫外線、すなわち、約180〜460ナノメートルの波長を有する放射線を放出する。特に好ましい紫外線光源は、キセノン社(Xenon Corp)(マサチューセッツ州、ウィルバーン)から入手可能なキセノン閃光ランプ、例えば、モデルRC−600、RC−700、及び、RC−747のパルス紫外可視硬化システム、及び、ノールクス(Norlux)シリーズ808広域アレイ(ノールクス(Norlux)(イリノイ州、キャロルストリーム)より入手可能)などのLED源である。好ましくはないが、硬化性組成物に、前述の従来の熱反応開始剤を使用することもできる。
【0080】
一部の実施形態では、光学製品は、平面又は曲面(凸面及び凹面を含む)や、複製面又は微細複製面(例えばフレネルレンズ)など、1つ以上の特徴を有することができ、いずれも本発明の組成物と適切なモールドから得ることができる。構造体保有物品は、一連の交互に現れる先端と溝を備える複数の直線プリズム型構造を備えるものなど、様々な形態で作製することができる。このようなフィルムの例はBEFであり、対照的な先端と溝の規則的反復パターンを有している。その他の例としては、先端と溝が対称的ではなく、かつ、サイズ、方位、先端と溝との間の距離も均一でないパターンが挙げられる。輝度向上フィルムとして有用な表面構造体保有物品のいくつかの例は、U.S.5,175,030号(ルー(Lu)ら)、及び、U.S.5,183,597号(ルー(Lu))に記載されている。
【0081】
前記ルー(Lu)及びルー(Lu)らの説明によると、構造体保有光学製品は、(a)重合性組成物を調製する工程と、(b)マスターのキャビティを満たすのにかろうじて十分な量でマスターネガミクロ構造化成型表面上に重合性組成物を付着させる工程と、(c)予成形させたベースとマスター(少なくとも一方は可撓性である)との間で重合性組成物のビードを移動させることによりキャビティを満たす工程と、(d)組成物を硬化させる工程、とが含む方法によって作製できる。マスターは、ニッケル、ニッケルメッキ銅、若しくは、黄銅のような金属品にすることができ、又は、重合条件下で安定でありかつマスターから重合物質をきれいに取り出しうる表面エネルギーを好ましくは有する熱可塑性物質にすることができる。
【0082】
好ましい実施形態では、光学物品には偏光ビームスプリッタが含まれており、この場合、入射光線は、画像表示システムで利用可能な第一及び第二の実質的に偏光したビーム状態に分離される。図1に示されているように、ビームスプリッタは、第一のプリズム(60a)、第二のプリズム(60b)、及び、それらの間に配置されている通過軸を有する偏光層(20)を備える。少なくとも1つのプリズムには、即時硬化組成物が含まれている。各プリズムには、偏光層と同一の第一の表面と、2つ又はそれ以上の外表面が備わっている。本明細書で使用する時、「プリズム」という用語は、偏光層を通った入射光線の角度透過と、物品から出る光の角度特性を制御する光学素子を指す。プリズムは、三角柱などの正多角形にしてもよく、又は、物品に屈折力を与える湾曲面などの1つ以上の特徴、又は、マイクロレンズ(及びそのアレイ)又はフレネルレンズなどの微細複製特徴を備えていてもよい。更に、プリズムには、蒸着金属コーティングなどの反射素子、又は、より多くの表面を更に搭載してもよい。
【0083】
プリズムは、2本の三角柱(図1及び2参照)を備えているように示されているが、偏光層の一方又は両方の側面上に配置されているいずれかの適切な形状にして、PBSの所望の目的を達成することが可能である。一部の実施形態では、第一及び第二のプリズムの1つ以上の外表面、すなわち、偏光層に隣接しない面の1つは、凸状又は凹状に湾曲させてもよく、又は、フレネルレンズ表面などの構造化表面を搭載することが可能である。このような曲面により、偏光ビームスプリッタに屈折力を与え、すなわち、それを通る光が収束又は発散する。レンズ又は鏡が光を収束又は発散させる程度は、通常、装置の焦点距離の逆数と等しい。
【0084】
更に、1つ以上の第一の表面(すなわち偏光層に隣接した面)を湾曲化又は微細複製化してもよい。例えば、第一のプリズムが凸状の第一の表面を有し、第二のプリズムが、それらの間に配置されている偏光層と噛み合う凹状の第一の表面を有することが可能である。更に、第一及び第二のプリズムの1つ以上の外表面(すなわち、偏光層に隣接しない面の1つ)は、完全又は部分的に反射性であり得、すなわち蒸着金属コーティングを備えている。
【0085】
本開示に従って作製した代表的なPBSの反射偏光層には、通過軸を有する直線反射性偏光子が含まれている。ある1つの実施形態では、偏光層は、シュナーベル(Schnabel)らによる「サブ波長周期金属ストライプ格子による可視光線偏光の研究(Study on Polarizing Visible Light by Subwavelength-Period Metal-Stripe Gratings)」(光工学(Optical Engineering)、38(2)、220〜226ページ、1999年2月)に記載されているようなワイヤグリッド偏光子であることも可能で、この文献の関連部分は本明細書に参照として組み込まれる。ワイヤグリッド偏光子は、ガラス又はその他の透明基板上にコーティングされている金属の微細な平行線又は平行リボンのアレイから構成されている。ワイヤアレイは、入射波長に比べて幅と間隔が小さい場合、入射光線を効果的に偏光させる。ワイヤグリッドアレイ向けの一般的な金属としては、当該技術分野において既知の物の中でも、金、銀、及び、アルミニウムが挙げられる。
【0086】
ある1つの実施形態では、偏光ビームスプリッタには、第一の表面と少なくとも2つの外表面を有する第一のプリズム、第一の表面と少なくとも2つの外表面を有する第二のプリズム、及び、第一及び第二のプリズムの第一の表面間に配置されているワイヤグリッド偏光子を搭載することが可能である。好ましくは、ガラスなどの基板が含まれているワイヤグリッド偏光子は、光学接着剤を用いて第一の表面に固着させる。それよりも好ましくはないが、ワイヤグリッドは、蒸着技術などにより前記第一の1つの表面の上に付着させ、第二のプリズムはその上に固着させる。
【0087】
ワイヤグリッド偏光子は、受容した光のごく一部を吸収する。これにより基板内に熱が発生するため、好ましくない。例えば、光の5%〜10%は、アルミニウムミラー表面と同じ方法でアルミニウム片によって吸収される。ワイヤグリッド偏光子の性能が金属片の幾何的安定性に感応するので、熱膨張による基板の小さい変化は、偏光子の性能を低下させる。
【0088】
別の実施形態では、偏光層には、プリズムの一方又は両方の第一の表面上に付着させた一対の無機薄フィルム物質の交互に現れる反復層を含めることが可能である。一対の薄フィルム物質には、1つの低屈折率物質及び1つの高屈折率物質が含まれている。マクニール(MacNeille)対と呼ばれる屈折率は、光線の所与の入射角に対し、p−偏光(rd)の反射率が、各薄フィルムの境界面において本質的にゼロになるように選択する。rがゼロの角度はブルースター角と呼ばれており、そのブルースター角を屈折率の数値に関連付ける式は、マクニール(MacNeille)条件と呼ばれている。s−偏光(r)の反射率は、各薄フィルムの境界面においてゼロではない。そのため、薄フィルム層を更に追加するにつれ、s−偏光の全反射率は増加する一方で、p−偏光の反射率は依然として本質的に0である。このように、偏光されていない光線、すなわち薄フィルムスタック上への入射光は、反射されるs−偏光成分の一部又は全部を有する一方で、本質的にp−偏光成分の全部が透過される。
【0089】
ある1つの実施形態では、一対の無機薄フィルム物質(光学スタック)の反復層は、プリズムの第一の表面上に付着させると共に、光学接着剤などを用いて第二のプリズムの第一の表面に固着させて、偏光ビームスプリッタを形成する。偏光ビームスプリッタには、互いに比較して低屈折率及び高屈折率を有する物質の一対の交互層が少なくとも1組含まれている。この層の厚みは、低及び高屈折率物質の各層により、四分の一波長基準が入射平行光線の波長に合致するように選択する。プリズム物質の光学的特性、及び、複合光学スタックの特性を全て組み合わせて、入射光線を2つの偏光成分に分離する。
【0090】
薄フィルムに適している物質としては、対象とするスペクトル内で透明である(低吸収を示す)いずれかの物質が挙げられる。広帯域可視光線では、適切な薄フィルム物質は、二酸化ケイ素(n=1.45)、非晶質水素添加窒化シリコン(n=1.68−2.0)、二酸化チタン(n=2.2−2.5)、フッ化マグネシウム(n=1.38)、氷晶石(NaAlF、n=1.35)、硫化亜鉛(n=2.1−2.4)、酸化ジルコニウム(n=2.05)、酸化ハフニウム(n=2.0)、及び、窒化アルミニウム(n=2.2)である。
【0091】
いくつかの薄フィルム付着技術を用いて、複合光学スタックをプリズム上へ付着させることができ、前記技術としては、熱蒸着及び電子ビーム蒸着、並びに、イオンビームスパッタリング及びマグネトロンスパッタリングが挙げられる。ただし、熱蒸着及び電子ビーム蒸着では、許容可能な製造効率のために、良質な薄フィルムと十分に高い付着率を提供しなければならない。より重要であるのは、フッ化マグネシウムや氷晶石などの低屈折率フィルムがこの方法によって付着し得る。電子ビーム付着は、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、及び、窒化アルミニウムなど、高屈折率の物質を対象としたコーティング業界でよく利用されている。
【0092】
好ましくは、偏光層を多層光学フィルムにしてよい。本開示の実施形態で偏光フィルムとして用いるのに適している反射偏光フィルムの例としては、スリーエム社(3M Corporation)(ミネソタ州、セントポール)製の複屈折物質が含まれている反射偏光子、例えば、U.S.5,882,774号(ジョンザ(Jonza)ら)、U.S.6,609,795号(ウェバー(Weber)ら)、及び、U.S.6,719,426号(マガリル(Magarill)ら)に記載されているものが挙げられる。偏光フィルム22に適している反射偏光フィルムとしては、異なるポリマー物質を含む複数の層を備えているポリマー反射偏光フィルムも挙げられる。例えば、偏光フィルムには第一の層と第二の層を搭載してよく、この場合、第一及び第二の層のポリマー物質は異なっており、第一及び第二の層の少なくとも1つは複屈折する。本開示のある1つの実施形態では、偏光フィルムには、U.S.6,609,795号(ウェバー(Weber)ら)に開示されているように、異なるポリマー物質を含む第一及び第二の代替層の多層スタックを搭載してよい。多層反射偏光子を作製するのに適しているその他の物質は、例えば、ジョンザ(Jonza)らの米国特許番号第5,882,774号、ウェバー(Weber)らの米国特許番号第6,609,795号に列挙されている。本開示の他の実施形態では、多数の反射性偏光フィルムを使用することができる。
【0093】
適切な反射偏光フィルムは典型的に、第一のポリマー物質と第二のポリマー物質の屈折率の差が、前記フィルム面の第一の方向に沿って大きく、第一のポリマー物質と第二のポリマー物質の屈折率の差が、前記フィルム面の第二の方向(前記第一の方向と直交している方向)に沿って小さいことを特徴としている。一部の代表的な実施形態では、反射偏光フィルムも、第一のポリマー物質と第二のポリマー物質(例えば異なるポリマー物質を含む第一の層と第二の層)の屈折率の差が、前記フィルムの厚み方向に沿って小さいことを特徴とする。第一のポリマー物質と第二のポリマー物質の屈折率の適切な差のうち、延伸方向(すなわちx方向)沿いの差の例は、約0.15〜約0.20である。非延伸方向(すなわちy方向とz方向)の屈折率は、所定の物質又は層のそれぞれの約5%以内であると共に、異なる物質又は隣接層の当該非延伸方向の約5%以内であることが望ましい。
【0094】
代表的な多層偏光フィルムの層用として選択されるポリマー物質としては、吸光性のレベルが低い物質を挙げてよい。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)は、1.0×10−5センチメートル−1未満の吸収係数を示す。従って、PETが含まれており、厚みが約125マイクロメートルである反射偏光フィルムでは、予測吸収率は約0.000023%であり、類似のワイヤグリッド偏光子吸収率の約1/200,000である。
【0095】
低い吸収率が好ましく、これは、PBS内で用いる偏光子が非常に高い密度にさらされ、それによって、偏光子の機能不全につながり得るためである。例えば、吸収タイプの偏光子フィルムは、不要な偏光を有する全ての光を吸収する。これは、かなりの熱を発生させる。そのため、偏光フィルムを避けるように熱を伝導させるためには、サファイアのような熱伝導率の高い基板が必要になる。更に、基板は、対応して基板に熱複屈折を発生する高い熱負荷に露出される。この基板内における熱複屈折は、画像表示システムのような光学システムのコントラストとコントラストの均一性を低下させる。このため、従来型PBSの基板用として適している物質はごくわずかしかない(例えばサファイア、石英、鉛含有ガラス、セラミックス)。
【0096】
本発明は、多層光学フィルムと、前記光学フィルムの主要面の一方又は両方上の硬化済み光学コーティングを備えている多層物品を提供する。このようなコーティングを提供することで、環境ストレスから多層光学フィルムが保護され、フィルムに強度と剛性が加わる。多層物品は、多層光学フィルムを提供すると共に、前記多層光学フィルムの少なくとも1つの主要面を硬化性組成物でコーティングしてから硬化させることによって、作製可能である。別の実施形態では、硬化組成物が含まれている別個に作製したフィルムを、多層光学フィルムの一方又は両方の主要表面に、本明細書に更に記載されている光学接着剤によって接着することができる。
【0097】
本発明は、偏光ビームスプリッタを作製する方法を提供する。この方法には、硬化性組成物を適切なモールドに取り込む工程と、組成物を硬化させてプリズムを形成させる工程が含まれている。モールドは、いずれかの適切な形状にすることができ、1つ以上の表面を湾曲させてもよい。続いて、偏光層を、例えば当該技術分野において既知のいずれかの光学接着剤によって、得られるプリズム(単一又は複数)に固着、接着、又は、別の方法で取り付けてもよい。ある1つの実施形態では、第一のプリズムを偏光層の第一の表面に固着し、第二のプリズムを偏光層の曝露面に順次固着してもよい。別の実施形態では、第一及び第二のプリズムは、偏光層の反対面に一度に固着する。
【0098】
有用な光学接着剤には、拡張芳香族構造又は共役二重結合などの紫外吸収発色団が実質的に含まれていない。有用な接着剤としては、例えば、NOA61、UV硬化性チオール−エン系接着剤(ノーランド社(Norland Company)(ニュージャージー州クランベリー)から入手可能)、ロックタイト(Loctite)シリーズ(例えば、3492、3175)UV硬化性アクリル接着剤(ヘンケル・ロックタイト社(Henkel Loctite Corp.)(1001、トラウトブロッククロッシング(Trout Brook Crossing)、コネチカット州ロッキーヒル、06067(www.loctite.com))から入手可能)、OPシリーズ(例えば、21、4−20632、54、44)UV硬化性アクリル接着剤(ダイマックス社(Dymax Corporation)(コネチカット州トリントン)から入手可能)が挙げられる。
【0099】
ある1つの有用な接着剤としては、米国公開出願番号20040202879号(シャ(Xia)ら)に記載されている組成物が挙げられ、この組成物には、感圧性接着剤を形成させる酸又は塩基官能価を有する少なくとも1つのポリマーと、酸又は塩基官能価を持ち100,000を超える重量平均分子量の高Tポリマーと、架橋剤が含まれており、感圧性接着剤と高Tポリマーの官能価により、相溶性混合物を形成させる酸−塩基相互作用がもたらされる。80℃、及び、90%の相対湿度で、約500時間、オーブン内で接着剤組成物を促進老化させた後は、接着剤混合物は半透明又は光学的に透明である。
【0100】
その他の有用な接着剤としてはミクロ構造化接着剤が挙げられ、この接着剤には、ミクロ構造化表面を有する感圧性接着剤の連続層が含まれており、前記ミクロ構造化表面は一連の機構を備えており、前記機構の横方向のアスペクト比は約0.1〜約10の範囲であり、前記機構の空隙部のアスペクト比は約1〜約1.9の範囲であり、各機構の高さは約2.5〜約375マイクロメートルである。このような接着剤は、米国特許第5,650,215号、同6,123,890号、同6,315,851号、同6,440,880号、及び、同6,838,150号(それぞれベンソン(Benson)ら)に記載されている。
【0101】
その他の有用な接着剤としては、ソウケン(Soken)(商標)1885PSA(綜研化学(Soken Chemical & Engineering Co., Ltd,)(日本)から市販)、NEA PSA(米国公開番号第二0040202879号(ルー(Lu)ら)の実施例1に記載されているもの)、レンズボンド(Lens Bond)(商標)タイプC59(熱硬化性スチレン系接着剤、EMSアクイジション社(EMS Acquisition Corp.)の一部門であるサマーズオプティカル(Summers Optical)(ペンシルベニア、ハットフィールド)から入手可能)、及び、NOA61(商標)(UV硬化性チオール−エン系接着剤、ノーランド社(Norland Company)(ニュージャージー州クランベリー)から入手可能)が挙げられる。
【0102】
別の実施形態では、偏光子は、図1に示されているように作製してもよい。この場合、第一の開口表面又は面、並び、任意のタブ11a及び11bを有するプリズムモールド10aは、偏光層20及び剛性サイドプレート30と組み合わされている。モールド面の間の角度は、所望に応じて変えてよく、外側面12a/bの一方又は両方を湾曲させてよく、又は、一体成型できるフレネルレンズなど、面上の回折パターンのようないずれかの所望のパターンを有することが可能である。第一及び第二のプリズムのそれぞれの第一の表面(偏光層20と一致するもの)も、湾曲させてよく、又は、一体的な複製パターンを有することが可能である。有益なことに、第一及び第二のプリズムの湾曲した第一の表面は、各プリズムの間に配置されている偏光層20で、凹面と凸面などで噛み合わせることができるように構成することも可能である。
【0103】
部品10a、20、及び30は、タブ11a/b上のクランプで、又は、その他の適切な方法で固定してもよい。張力を持たせる手段(図示なし)を用いて、偏光層20を平らに維持することが可能である。組み立て済みのモールドをガラスなどの平滑剛直表面15上に置いてもよく、又は、一体型底部(図示なし)をモールド10aに搭載することが可能である。このアセンブリは、プリズム型キャビティ40aを画定し、この空洞の中に硬化性組成物を取り込み、UVエネルギーを加えることにより硬化させる。所望に応じて、第二の剛直表面(図示なし)でモールド上部を覆い、大気中の酸素から保護することが可能である。剛直表面15又は第二の剛直表面は、硬化の際に用いる入射光源を通すガラス又はその他の適切な物質で作製するのが望ましい。第二の剛直表面に代えて、モールドアセンブリを不活性ガラスで覆い、酸素を遮断してもよい。
【0104】
硬化したら、剛性サイドプレート30を除去してよく、第二のプリズムモールド10bを固定して第二のチャンバ40bを形成させ、第一及び第二のプリズムの第一の表面がそれぞれ偏光層に隣接するように、偏光層20でモールド10aと10bとの間に共有面を形成させる。硬化の結果、偏光層は、直ちに第一のプリズム型硬化組成物の第一の表面と一体となる。第二のモールドが、湾曲した外側面、又は、その他の所望の成型形状を有することが可能である(図示なし)。この第二のチャンバ40bを硬化性組成物で満たし、硬化させ、モールドアセンブリを取り除いて、2本のプリズム、及び、プリズムそれぞれの第一の表面上に、プリズム間に配置されている一体型偏光層を有する偏光ビームスプリッタ60aを提供することが可能である。所望に応じて、それぞれのプリズムに、適切な構成のモールドによって、第一及び第二のプリズムを一緒に固定するため、又は、ディスプレイ装置のマウントにビームスプリッタを固定するための一体型連結タブを搭載することが可能である。更に、第一及び第二のプリズムを、偏光層に対して、又は、ディスプレイ装置のマウントに対して相互に整列させるために、第一及び第二のプリズムにタブ又は指示器などの位置合わせ手段を搭載することが可能である。
【0105】
位置合わせ手段には、接合し合う対応する雄部及び雌部を含み得る。偏光ビームスプリッタは、第一のプリズム及び第二のプリズムを含むことが可能で、この場合、第一のプリズムには雄部が、第二のプリズムには雌部が含まれ得る。雄部は、反射偏光フィルムに隣接していると共に、反射偏光フィルムから突出している第一のプリズムの表面部分を包み込んでいる長方形の面にしてもよい。同様に、雌部は、反射偏光フィルムに隣接している第二のプリズムの表面の大半の中に配置されている長方形の凹部にしてもよい。
【0106】
雄部材及び雌部は、対向するプリズム内に配置されているそれぞれの雌型部と噛み合うように構成されている少なくとも1つの雄部材が1つのプリズムの中に含まれるように、他の噛合機構と置換させることが可能である。本開示に応じて、本明細書に例示されている数と異なる数の雄部材及び雌部を使用してよいことを当業者は容易に理解するであろう。例えば、代表的なPBSには、3つ以上の雌部内に受容される3つ以上の雄部材を含めてよい。
【0107】
上記の雄部材及び雌部は、対応する第一及び第二のプリズムと共に成形させてもよい。続いて、第一及び第二のプリズムを雄部と雌部の補助を伴い互いに固定し、偏光ビームスプリッタを形成することが可能である。この技法には、第一のプリズムと第二のプリズムの間に反射偏光フィルムを配置することを含めることが可能である。続いて、第一のプリズムを第二のプリズムと相対する方向に向けて、雄部が当該雌部と揃うようにしてもよい。この位置合わせは、第一のプリズムを第二のプリズムに対して正確に配置させるために有用である。その後、第一のプリズムは、対応する雌部に雄部を同時に挿入することによって、第二のプリズムと嵌合してもよい。これは、滑らか且つ平坦な界面を提供するために、第一のプリズム及び第二のプリズムの入射表面間で、反射性偏光フィルムを圧縮する。雄部は、接着剤によって、対応する雌部に固定してよい。更に、対応する雌部に雄部材を嵌合及び/又は溶接(例えば、超音波、赤外線、熱かしめ、スナップ嵌め、プレス嵌め、及び化学的溶接)することによって第一のプリズムを第二のプリズムに固定することもできる。
【0108】
別の方法が図2に概略的に示されている。この図では、開口面110a及び110b(得られるプリズムの第一の表面に相当する)を有する2本のプリズムモールドが、モールド110a及び110bの第一の共有面間に配置されている偏光層120で、任意のタブ111a及び111b(又はいずれかの適切な手段)によって互いに固定されている。必要に応じて、張力を持たせる手段を用いて、偏光層120を平らに維持させることが可能である。これにより、2つのチャンバ140a/bが形成され、これらを硬化性組成物で満たし、硬化させて、一体型偏光層を備える偏光ビームスプリッタを単一工程で作製する。この場合でも、モールドは、いずれかの適切な形状及び寸法にしてよく、外側面を湾曲させてもよい。
【実施例】
【0109】
これらの実施例は単に例示を目的としたものであり、添付の請求項の範囲を制限することを意味するものではない。特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載されている部、百分率、比率等は全て、重量による。使用する溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、シグマアルドリッチケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー)より入手した。
【0110】
【表1】

【0111】
試験方法
SECによる分子量測定
ウォーターズ(Waters)717プラス(717Plus)オートサンプラー、1515HPLCポンプ、2410示差屈折率検出器、及び、ウォーターズ(Waters)製カラム(スタイラジェル(Styragel)HR 5E、スタイラジェル(Styragel)HR 1)を用いて、分子量と分子量分布に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施した。試料は全て、THF中に、35℃、流速1.0mL/minで流した。直鎖ポリスチレン標品を較正用に用いた。
【0112】
動的機械分析(DMA)測定
LC−ARESテストステーション(レオメトリックサイエンティフィック(Rheometric Scientific)、ニュージャージー州ピスカタウェイ)のねじれモード(torsion mode)を用いて、Tgと硬化組成物の弾性率測定に対するDMAを実施した。試料の寸法は、約25ミリメートル×10ミリメートル×1ミリメートルとした。試料の長さは、前記テストステーションによって測定し、試料の幅及び厚さはキャリパーによって測定した。試験は、温度を25℃から180℃まで、1分につき5℃上昇させることによって実施した。用いた周波数は、1ヘルツであった。
【0113】
耐黄変性試験
直径3.2センチメートル(1.25インチ)×厚み0.5センチメートル(0.19インチ)の硬化済み試料の波長420ナノメートルにおける透過百分率(%T)を、120℃のオーブン内で7日間老化する前及び後に測定した。%Tは、TCSプラス分光分析装置(TCS Plus Spectrophotometer)(BYK−ガードナーUSA(BYK-Gardner USA)、ミズーリ州シルバースプリング)を用いて測定した。一般に、420ナノメートルにおける%Tが85%未満の試料は、黄色を呈す。老化後の420ナノメートルにおける%Tが85%を超える場合、試料は良好な耐黄変性を有すると考えられる。
【0114】
体積収縮率の測定
硬化性組成物と硬化済み物質の密度をピクノメータで測定した。体積収縮率(%)は、硬化性物質の硬化中の密度変化に基づき算出した。体積収縮率(%)=100×(硬化済み物質の密度−硬化前の硬化性物質の密度)/硬化前の硬化性物質の密度。
【0115】
吸水率の測定
直径3.2センチメートル(1.25インチ)×厚み0.5センチメートル(0.19インチ)の硬化済みディスク状試料の重量を測定し、23℃の水中で14日間置く。吸水率(%)=100×(水中に14日間置いた後の試料重量−水浸前の試料重量)/水浸前の試料重量。
【0116】
複屈折の測定
透過分光エリプソメトリー(TSE)を用いて、試料のリターダンスを測定した。試料の複屈折は、リターダンスを試料の厚みで除して算出した。試料は円形ディスク状で、直径3.2センチメートル(1.25インチ)×厚み0.5センチメートル(0.19インチ)である。試料を回転台の上に取り付け、TSEリターダンスのデータを、J.A.ウーラム(Woollam)製のM2000可変角度分光エリプソメーターを用いて、一連の位置において測定した。直交する2つの方向に6ミリメートルずつ離して4点、合計8点の面内測定値を得た。測定したリターダンスを、λ=545−555ナノメートル間の波長範囲で平均した。
【0117】
破壊靭性
破壊靭性は、ASTM D5045−99に記載されている片側切欠き断片破壊試験による方法を用いて測定した。4.5mm厚の物質ディスクを、ダイヤモンドソーを用いて公称幅9mmの断片2つに切断した。続いてダイヤモンドソーを用いて、断片の片側に刻み目を付け、公称厚4.5mm、公称幅9mm、公称長37mm〜47mmの片側切欠き断片試験片を作製した。切欠き部をかみそりの刃で軽くたたき、各試験片に亀裂を入れた。続いて、36mm間隔で配置されており、前記規格に記載されている形状の支持ローラーを備えたシンテック/MTS(Sintech/MTS)負荷フレームを用いて、試験片の破壊試験を行った。試験温度は22℃、負荷速度は10mm/分とした。全てのケースで、荷重変位曲線は線状弾性負荷を示し、その後に突発的急速破壊が続いた。次に、前記規格に記載されている方法で破壊靭性を計算した。
【0118】
(実施例1〜7):
オリゴマーシロップの調製:
実施例1〜7では、表1に従って、IBOA、HEA、連鎖移動剤IOTG又はMCE、及び、熱反応開始剤バゾ(Vazo)52及び88の最初の投入量を、還流凝縮器、温度計、機械的撹拌器、及び、窒素ガス口を備えた四首フラスコに加えた。混合物を撹拌し、窒素下で60℃まで加熱した。反応混合物の温度は、重合中約150℃でピークに達した。反応がピークに達した後、第二の反応開始剤バゾ(Vazo)88を加えることにより、バッチを140℃で30分間更に重合させ、残留するモノマー量を減らし、反応開始剤を除去した。この反応時間の最終時点で、SECによるオリゴマー分子量測定用に試料を採取した。その後、バッチを100℃まで冷却した。HDDMA反応性希釈剤を反応装置に加え、バッチ粘度を低下させた。DBDL触媒のIEM溶液をバッチに加え、IBOA/HEAポリマー鎖上のヒドロキシルと反応させ、メタクリレート官能基をポリマーに組み込ませた。この反応は2時間で完了した。
【0119】
硬化試料の調製:
反応完了後、表1の反応性オリゴマーシロップを0.02重量%のTPOL光開始剤と配合し、試験試料の調製の項に記載されている手順で、キセノン閃光ランプにより硬化した。上記の試験方法の項に記載されている方法を用いて、硬化した試料の体積収縮率(%)、複屈折、Tg、吸水率、透過率、及び、安定性を検査した。
【0120】
【表2】

【0121】
実施例8〜9、及び、比較実施例C1:
実施例8〜9、及び、比較実施例C1の反応性オリゴマーシロップを調製するために、表2に従って、実施例7で調製した反応性オリゴマーシロップの試料にHDDMA反応性希釈剤を加えた。反応性オリゴマーシロップを0.02重量%のTPOL光開始剤と配合し、80℃で5分間、キセノン閃光ランプにより硬化させた。上記の試験方法の項に記載されている方法を用いて、硬化した試料の体積収縮率(%)、複屈折、Tg、吸水率、透過率、及び、安定性を検査した。
【0122】
【表3】

【0123】
(実施例10〜11):
表3の実施例10及び11の反応性オリゴマーシロップを調製するために、140℃で第二の反応開始剤添加後30分以外は、上記実施例1〜7に記載したものと同一の重合手順に従ってMAnhを混合物に加え、効率的に撹拌しながら140℃で更に3時間反応させた。その後、バッチを110℃に冷却し、HDDMA反応性希釈剤を反応装置に加え、バッチ粘度を更に低下させた。
【0124】
【表4】

【0125】
比較実施例C2〜C5:
反応性オリゴマー又はオリゴマーと反応性希釈剤の混合物、CN945A60、CN1963、エベクリル(Ebecryl)600、及び、エベクリル(Ebecryl)830を、0.02%のTPOL光開始剤と配合し、試験試料の調製に記載されている手順で、80℃で5分間、キセノン閃光ランプにより硬化させた。
【0126】
【表5】

【0127】
実施例1〜11、及び、比較実施例C1〜C5の試験試料の調製
実施例及び比較実施例に記載されているオリゴマーシロップと所望の光開始剤とその他添加剤(使用する場合)を80℃に予熱し、DAC−100ミキサーを用いて白色の使い捨てカップ(カップとミキサーの双方とも、フラックテック(Flack Tek Inc)(ニュージャージー州ランドラム)から入手可能)内で混合することによって、硬化性組成物と光開始剤及びその他の添加剤を調製した。前記組成物を真空槽内で脱気し、その後、放置して室温まで冷却した後に使用した。
【0128】
上記硬化性物質の硬化は、次の工程によって実行した。1)約15センチメートル(6インチ)×15センチメートル(6インチ)×0.5センチメートル(0.19インチ)のパイレックス(登録商標)(Pyrex)ガラスプレートの上に、約15センチメートル(6インチ)×15センチメートル(6インチ)の51マイクロメートル(2ミル)のA31剥離ライナーを1枚置いた。2)剥離ライナーの上に、中央に直径3センチメートル(1.25インチ)の開口部があるほぼ同じ寸法のガラス又はシリコーンゴムモールドを置いた。3)続いて、前記モールドに、気泡が生じないように注意しながら硬化性組成物を充填した。4)続いて、約15センチメートル(6インチ)×15センチメートル(6インチ)の第二の51マイクロメートル(2ミル)のA31剥離ライナーを、充填したモールドの上に置いた。5)約15センチメートル(6インチ)×15センチメートル(6インチ)×0.5センチメートル(0.19インチ)の別のパイレックス(登録商標)(Pyrex)ガラスプレートを、前記剥離ライナーの上に置いた。6)最後に、充填したモールドをチャンバ内の80℃の加熱装置上に置き、平衡になるまで放置した。前記硬化性組成物を、キセノン閃光ランプ(モデルNo.4.2ランプハウジング、パルス数8Hz)とRC−747パルス紫外/可視システム(Pulsed UV/Visible System)(キセノン社(Xenon Corporation)、マサチューセッツ州ウォーバーン)を用いて、5分間硬化させた。
【0129】
SEC法で測定した重量平均分子量、動的機械分析(DMA)法で測定したTg、ピクノメータで測定した体積収縮率(%)、及び、エリプソメトリーで測定した複屈折を表5に示す。120℃のオーブン内で7日間老化させた後の、肉眼で分かる色とTCSプラス分光分析装置(TCS Plus Spectrophotometer)で測定した透過率(%)についても表5に示す。上記の試験方法の項で記載されている方法で得た吸水率のデータについては表6に示す。
【0130】
【表6】

【0131】
【表7】

【0132】
(実施例12):
実施例12では、表7に従って、IBOA、HEA、連鎖移動剤IOTG、及び、熱反応開始剤バゾ(Vazo)52及び88の最初の投入量を、還流凝縮器、温度計、機械的撹拌器、及び窒素ガス口を備えている四首フラスコに加えた。この混合物を撹拌し、窒素下で60℃まで加熱した。反応混合物の温度は、重合中約180℃でピークに達した。反応がピークに達した後、第二の反応開始剤バゾ(Vazo)88を加えることにより、バッチを140℃で30分間更に重合させ、残留するモノマー量を減らし、反応開始剤を除去した。その後、バッチを120℃に冷却し、IBOA反応性希釈剤を反応装置に加え、バッチ粘度を低下させた。続いてMAnhをバッチに加え、オリゴマー鎖上のヒドロキシル基と反応させ、メタクリレート基を組み込ませた。反応時間は約6時間であった。続いてHDDMAを加え、溶液を周囲温度まで冷却した。表7の反応性オリゴマーシロップを0.02重量%のルシリン(Lucirin)TPOL光開始剤と配合し、プラスチックプリズムとPBSプリズムを作製するため、硬化性物質組成物を生成させた。
【0133】
【表8】

【0134】
(実施例13):プラスチックプリズムの作製
実施例13では、図1に記載されているプリズムモールドを用いた。部品10aをステンレススチールで作製し、部品15をガラスプレートとし、部品20を用いず、部品30をガラス製顕微鏡スライドとした。実施例12で調製した配合済み反応性オリゴマーシロップで容積40aを満たし、別のガラスプレートを充填済み容積40aの上部に置いた。アセンブリを、キセノン閃光ランプを用いて、室温で5分間硬化させた。
【0135】
(実施例14):プラスチックPBSプリズムの作製
実施例14では、図1に記載されているプリズムモールドを用いた。部品10aをステンレススチールで作製し、部品15をガラスプレートとし、部品20をPBSフィルムとし、部品30をガラス製顕微鏡スライドとした。実施例12で調製した配合済み反応性オリゴマーシロップで容積40aを満たし、別のガラスプレートを充填済み容積40aの上部に置いた。アセンブリを、キセノン閃光ランプを用いて、室温で5分間硬化させた。ガラススライドを取り除き、実施例13で調製したようなプラスチックプリズムをPBSフィルム表面に光学接着剤を用いて取り付け、PBSプリズムをもたらした。
【0136】
(実施例15):プラスチックPBSプリズムの作製
実施例15では、図1に記載されているプリズムモールドを複数用いた。部品10aをステンレススチールで作製し、部品15をガラスプレートとし、部品20をPBSフィルムとし、部品30をガラス製顕微鏡スライドとした。実施例12で調製した配合済み反応性オリゴマーシロップで容積40aを満たし、別のガラスプレートを充填済み容積40aの上部に置いた。アセンブリを、キセノン閃光ランプを用いて、室温で5分間硬化させた。続いて部品30を取り除き、第二のモールド10bを、硬化したモールドのPBSフィルム表面に隣接して置いた。実施例12で調製した配合済み反応性オリゴマーシロップで容積40bを満たし、ガラスプレートを充填済み容積40bの上部に置いた。アセンブリを、キセノン閃光ランプを用いて、室温で5分間硬化させた。
【0137】
(実施例16):プラスチックPBSプリズムの作製
実施例16では、図2に記載されているプリズムモールドを複数用いた。部品110a及び110bをステンレススチールで作製し、部品115をガラスプレートとし、部品120をPBSフィルムとした。実施例12で調製した配合済み反応性オリゴマーシロップで120の両側の容積140a及び140bの一方を満たし、別のガラスプレートを充填済み容積の上部に置いた。アセンブリを、キセノン閃光ランプを用いて、室温で5分間硬化させた。
【0138】
調製実施例17〜22
調製実施例17〜22では、表1に従って、IBOA、HBA、連鎖移動剤(IOTG、PETMP、又はTMPTMP)、及び、熱反応開始剤(バゾ(Vazo)52、バゾ(Vazo)88、ルペロックス(Luperox)130XL45)を、還流凝縮器、温度計、機械的撹拌器、及び、窒素ガス口を備えている四首フラスコに加えた。混合物を撹拌し、窒素下で60℃まで加熱した。反応混合物の温度は、重合中約180℃でピークに達した。反応が最大となったのち、混合物を更に、140℃で30分間加熱した。この反応時間の最終時点で、SECによる分子量測定用に試料(1g)を採取した。混合物の温度を120℃まで冷却し、MAnh及びイルガノックス(Irganox)1076を加えた。反応混合物を120℃で4時間撹拌し、オリゴマー混合物を粘性溶液とした。
【0139】
【表9】

【0140】
試験試料の調製
調製実施例17〜22に記載されているオリゴマー混合物、架橋剤(1つ又は複数)(HDDMA、T−アクリレート、又は、ビソマー(Bisomer)EP100DMA)、及び、0.06重量%のルシリン(Lucirin)TPO−Lの混合物を80℃に予熱し、続いてDAC−100ミキサーを用いて白色の使い捨てカップ(カップとミキサーの双方とも、フラックテック(Flack Tek Inc.)(ニュージャージー州ランドラム)から入手可能)内で混合することによって、硬化性組成物を調製した。前記組成物を真空槽内で脱気した。処方量は表2に示されている。
【0141】
組成物の硬化を、次の工程により実行した。1)約15cm×15cm×0.5cmのパイレックス(登録商標)(Pyrex)ガラスプレートの上に、約15cm×15cmの51マイクロメートルのA31剥離ライナーを1枚置いた。2)剥離ライナーの上に、中央に直径4.7cmの開口部があるほぼ同じ寸法のガラスモールドを置いた。3)続いて、前記モールドに硬化性組成物を充填した。4)続いて、約15cm×15cmの51マイクロメートルの第二のA31剥離ライナーを、充填したモールドの上に置いた。5)約15cm×15cm×0.5cmの別のパイレックス(登録商標)(Pyrex)ガラスプレートを、前記剥離ライナーの上に置いた。6)最後に、充填したモールドを80℃のオーブン内に置き、平衡するまで15分間放置した。続いて、ノールックス(Norlux)808 375ナノメートルのLEDアレイ(ノールックス社(Norlux Corporation)(イリノイ州キャロルストリーム)から入手可能なNAR375808A003)を用いて、曝露時間を1分間としてアセンブリを硬化させた。硬化後、組成物を室温まで冷却し、モールドから外した。
【0142】
硬化組成物の破壊靭性及びTを表9に示す。
【0143】
【表10】

【0144】
表9のデータは、オリゴマーの調製に多官能性連鎖移動剤を使用すると、最終硬化組成物の破壊靭性が増加することを示している。多官能性CTA及びT−アクリレートを伴うオリゴマーから得られた硬化組成物のTg及び破壊靭性が一番高かった。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の方法の概略図。
【図2】本発明の方法の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)及びb)100重量部に対し、
a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基を有し、Tが20℃以上である(メタ)アクリロイルオリゴマーを50〜99重量部と、
b)フリーラジカル重合性架橋剤、及び/又は、希釈剤モノマーを1〜50重量部と、
c)光開始剤を0.001〜5重量部、と含む硬化性組成物。
【請求項2】
前記希釈剤モノマーを25重量部未満含む請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記架橋剤を1〜40重量部含む請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記架橋剤を1〜30重量部含む請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記オリゴマーは、
a)及びb)100重量部に対し、
a.20℃以上のガラス転移温度を有するポリマーに単独重合可能な(メタ)アクリレートエステルモノマー単位を50〜99重量部と、
b.ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有するモノマー単位を1〜50重量部と、
c.20℃未満のガラス転移温度を有するポリマーへと単独重合することが可能なモノマー単位を40重量部未満、とを含む重合モノマー単位を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
更に、多官能性連鎖移動剤由来の単位を0.1〜10重量部含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレートエステルが、50℃以上のガラス転移温度を有するポリマーへと単独重合することが可能である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリレートエステルモノマー単位を60〜97重量部と、ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有するモノマー単位を3〜40重量部、と含む請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有するモノマー単位が、ペンダント反応性官能基を有するモノマー単位を、共反応性官能基を有するモノエチレン性不飽和化合物と反応させることによって調製される、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記ペンダント反応性官能基が、ヒドロキシル基、第二級アミノ基、オキサゾリニル基、オキサゾロニル基、アセチルアセトニル基、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、アジリジニル基、ハロゲン化アシロイル基、及び、環状無水物基から選択されている請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記オリゴマーの重合度が連鎖移動剤により制御されている請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記連鎖移動剤が多官能性連鎖移動剤である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記フリーラジカル重合性架橋剤が少なくとも2の官能価を有し、前記架橋剤が式R−(Z)であり、式中、Zが炭素−炭素二重結合などのフリーラジカル重合性官能基を含み、nが1を超え、Rが原子価nを有する有機基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記架橋剤が、ジ(メタ)アクリル酸エステルと、ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカンのビスアリルエーテルとから選択される請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記架橋剤と前記希釈剤モノマーの総量が40重量部未満である請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
硬化時の収縮率が5容積%未満である、
硬化時の複屈折が1×10−6未満である、
硬化時のTが50℃を超える、
硬化時のCIELAB b*値が1.5未満である、
硬化時の屈折率が約1.45を超え、約1.75未満である、
硬化時の光透過率が約85%を超えるという特性の1つ以上を示す請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記オリゴマーが断熱重合プロセスにより調製されている請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記プロセスが、
(a)本発明のオリゴマー組成物を回分反応器内に供給する工程と、
(b)混合物を脱酸素する工程と(この工程(b)では、場合に応じて工程(c)と少なくとも部分的に重複可能である)、
(c)重合を開始させるために、少なくとも1つの熱的フリーラジカル反応開始剤から十分な量の反応開始剤フリーラジカルを発生させるのに十分な温度まで前記混合物を加熱する工程と、
(d)前記混合物を本質的に断熱条件下で重合させ、少なくとも部分的に重合した混合物を得る工程と、
(e)場合に応じて、前記混合物を加熱し、反応開始剤フリーラジカルを発生させていない反応開始剤の一部または全部からフリーラジカルを発生させ、続いて前記混合物を本質的に断熱条件下で重合させ、さらに重合した混合物を得る工程と、
(f)場合に応じて工程(e)を1回以上繰り返す工程と、
(g)場合に応じて工程(a)〜(e)を1回以上繰り返し、繰り返している間に冷却を行う工程、とを含む請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物を硬化した物。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物を硬化した物を含む成形物品。
【請求項21】
請求項1に記載の組成物を硬化した物を含む光学コーティング。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−526877(P2009−526877A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554263(P2008−554263)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/002397
【国際公開番号】WO2007/094953
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】