説明

光学的なケーブルならびに光学的なケーブルを製作する方法

光学的なケーブル(1)は1つのケーブルシース(11)と、ケーブルシース(11)内に配置されている複数の光学的な伝送エレメント(101,102)とを有している。各伝送エレメントは複数の光導波路(10101,10102)と、光導波路(10101,10102)を包囲する1つのストランドジャケット(1011)とを有している。ストランドジャケット(1011)はマトリックス材料と、マトリックス材料内に埋設される充填材とを有している。マトリックス材料の融点は85℃を超えており、ストランドジャケットにおける充填材の質量割合は少なくとも30%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破断伸びの低いストランドジャケットを備えた光学的な伝送エレメントを有する光学的なケーブルに関する。本発明はさらに、85℃を超える温度に光学的な伝送エレメントを加熱することを可能にする、光学的なケーブルを製作する方法に関する。
【0002】
光学的なケーブルは、「ストランド(Ader)」または「ユニット(Unit)」とも呼ばれる複数の光学的な伝送エレメントを有している。光学的なケーブルはさらにケーブルコアと、ケーブルコアを包囲するケーブルシースとを有している。複数の光学的な伝送エレメントがケーブルコア内に配置されている。光学的なケーブルのケーブルシースは、光学的な伝送エレメントの保護ならびに負荷軽減のために役立つ。ケーブルシースのための適当な材料は高い融点を有している。ケーブルシースのための公知の材料は、例えばポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)またはポリ塩化ビニル(PVC)を有している。
【0003】
光学的なケーブルは12本の光学的な伝送エレメントを有していることができる。光学的な伝送エレメントは12色の区別可能な色により色分けされていることができる。光学的な伝送エレメントを色分けしている色に基づいて、光学的な伝送エレメントの、ケーブル片の両端で露出された端部は互いに一目瞭然に識別される。
【0004】
光学的な伝送エレメントは複数の光導波路と、複数の光導波路を包囲する1つのストランドジャケットとを有している。光学的な伝送エレメントのストランドジャケットは、光学的なケーブル内に含まれる複数の光導波路を、区別可能なグループに分類することを可能にする。光導波路を簡単かつ迅速に露出し得るように、ストランドジャケットは特別な工具なしに除去され得るべきである。ストランドジャケットのための適当な材料はそれゆえ軟らかくあるべきである。特に、この材料は低い引張強さおよび低い列断伸びを有しているべきである。光学的な伝送エレメントのそのような軟らかいストランドジャケットのための公知の材料は、例えばチョークを充填されたポリ塩化ビニルであるか、または高充填されたエチルビニルアセテートである。
【0005】
例えば、光学的な伝送エレメントは12本の光導波路を有していることができる。光導波路は12色の区別可能な色により色分けされていることができる。光導波路を色分けしている色に基づいて、光導波路の、集束ストランド(Buendelader)の区分の両端で露出された端部は互いに一目瞭然に識別される。
【0006】
光導波路は繊維被覆(コーティング)と、繊維被覆により包囲されているガラス繊維とを有している。一般に、光導波路は繊維被覆の色により色分けされている。
【0007】
1本の光学的なケーブル内に含まれる144本の光導波路は例えば、それぞれ12本の光導波路から成る12個のグループに分類されていることができる。特に、1本の光学的なケーブルの12本の光学的な伝送エレメントと、1本の光学的な伝送エレメントの12本の光導波路とは、同じ12色の区別可能な色の使用下で色分けされていることができる。例えば、ある光学的な伝送エレメントのストランドジャケットは、12色のうちの1色で色分けされ、この光学的な伝送エレメントの光導波路の繊維被覆は、12色のうちの1色で色分けされていることができる。この場合、光学的なケーブル内に含まれている144本の光導波路のうちの1本の光導波路の両端は、光導波路の繊維被覆の色と、この光導波路が属する光学的な伝送エレメントのストランドジャケットの色とに基づいて互いに識別される。
【0008】
光学的な伝送エレメントはケーブルシース内に、光学的なケーブルの、ある特定の長さを有する区分内に、光学的な伝送エレメントの、若干大きな長さを有する区分が延在するように配置されている。光学的なケーブル内での光学的な伝送エレメントのこの過剰長さは、光学的なケーブルの曲げまたは捻り時に、過剰な引張応力が光学的な伝送エレメント内に発生しないことを保証する。例えば、円形の横断面を有する光学的なケーブルにおいて、光学的な伝送エレメントは螺旋の形で、ケーブルの長手方向軸線に沿って延在する中心エレメントの周囲に巻かれていることができる。中心エレメントは、光学的なケーブルの長手方向での引張負荷および圧縮負荷を阻止する剛性を有している。
【0009】
軟らかいストランドジャケットのための公知の材料は、その融点もしくは軟化点が85℃よりも低いという欠点を有している。既に約85℃の温度はそれゆえ、光学的な伝送エレメントのストランドジャケットの軟化または溶融を結果として伴う。この場合、光学的なケーブルの、互いに隣接して配置された2つの光学的な伝送エレメントのストランドジャケットは、互いに融着もしくは接着することができる。さらに、光学的な伝送エレメントのストランドジャケットは、光学的なケーブルのケーブルシースと接着するか、またはストランドジャケットにより包囲される光導波路と接着することもできる。隣接する2つの光学的な伝送エレメントのストランドジャケット相互の接着または光学的な伝送エレメントのストランドジャケットとケーブルシースとの接着は、とりわけ光学的なケーブルの実装技術および接続技術に対して不都合に働く。光学的な伝送エレメントのストランドジャケットと光導波路との接着は、とりわけ光学的な伝送特性に対して不都合に働く。接着箇所で、光学的な伝送エレメントの曲げまたは捻り時に、光導波路のマクロベンドが発生し得る。2つの接着箇所間で、曲げにより惹起される圧縮負荷は光導波路のマイクロベンドに至り得る。マクロベンドならびにマイクロベンドはガラス繊維からの光の出射、ひいては光学的な信号の減衰を強める。さらに、ストランドジャケットと接着した光導波路の個別化は困難となる。
【0010】
光学的な伝送エレメントのストランドジャケットのための公知の軟らかい材料を使用することにより、光学的な伝送エレメントが使用され得る温度は、85℃を下回る温度に制限されている。特に、光学的な伝送エレメントが1本の光学的なケーブルに再加工され得る温度は、85℃を下回る温度に制限されている。
【0011】
光学的なケーブルは、まず光学的な伝送エレメントが形成され、その後複数の光学的な伝送エレメントが1本の光学的なケーブルに再加工されることにより製作される。それぞれの光学的な伝送エレメントは、複数の光導波路が、1つのストランドジャケットを複数の光導波路の周囲に押出成形する押出機ヘッドに供給されることにより形成される。複数の光学的な伝送エレメントは、1つのケーブルシースが複数の光学的な伝送エレメントの周囲に形成されることにより、1本の光学的なケーブルに再加工される。その際、ケーブルシースは、特に複数の光学的な伝送エレメントが、側圧もしくは横圧に対して安定な1つの保護ジャケットを複数の光学的な伝送エレメントの周囲に押出成形する押出機ヘッドに供給されることにより形成される。
【0012】
光学的なケーブルを製作するために光学的な伝送エレメントを再加工する、特に側圧もしくは横圧に対して安定な保護ジャケットを押出成形する際に、光学的な伝送エレメントのストランドジャケットは、保護ジャケットの材料および引抜き速度に依存した85℃を超える温度に達し得る。このことは、ストランドジャケットと、光学的な伝送エレメントの光導波路、隣接する別の光学的な伝送エレメントのストランドジャケットまたは光学的なケーブルのケーブルシースとの接着を結果として伴う。
【0013】
光学的な伝送エレメントのストランドジャケットのための別の公知の材料は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレートとポリカーボネートとから成る混合物またはポリプロピレンである。
【0014】
これらの材料はただし、極めて硬いという欠点を有している。それゆえ、これらの材料から成るストランドジャケットは、光導波路を露出させるために、特別な工具なしに除去されることはできない。
【0015】
それに応じて本発明の課題は、光導波路を露出させるために特別な工具なしに除去され得るように、破断伸びが低く、しかも85℃までの温度で軟化することがないように、融点が高いストランドジャケットを備えた光学的な伝送エレメントを有する光学的なケーブルを提供することである。
【0016】
本発明により、上記課題は、特許請求項1の特徴部に記載した特徴を備えた光学的なケーブルにより解決される。
【0017】
本発明による光学的なケーブルは、少なくとも2つの光学的な伝送エレメントを備えたケーブルシースを有している。伝送エレメントはケーブルシース内に配置されている。少なくとも2つの光学的な伝送エレメントのうちの1つの伝送エレメントは、少なくとも1つの光導波路と、少なくとも1つの光導波路を包囲する1つのストランドジャケットとを有している。その際、ストランドジャケットはマトリックス材料と、マトリックス材料内に埋設される充填材とを有している。マトリックス材料の融点は85℃を超えており、ストランドジャケットの総質量における充填材の質量割合は少なくとも30%である。
【0018】
光学的な伝送エレメントのストランドジャケットはつまり、マトリックス材料と充填材とを有している。その際、ストランドジャケットの融点はマトリックス材料の融点により規定される。85℃を超える融点を有するマトリックス材料を選択することにより、光学的なケーブルを製作するために光学的な伝送エレメントを再加工する際に溶融または軟化しないストランドジャケットが得られる。そのようなストランドジャケットを備えた光学的な伝送エレメントを有する光学的なケーブルは、それゆえ極めてフレキシブルであり、光導波路内での光学的な信号の減衰を増すことなく曲げられることができる。さらに、ストランドジャケットの破断伸びは、ストランドジャケットの総質量における、マトリックス材料内に埋設される充填材の質量割合により規定される。例えば、マトリックス材料および充填材の総質量における充填材の質量割合が少なくとも30%であると、ストランドジャケットの破断伸びもしくは引張強さは、ストランドジャケットが特別な工具なしに除去される程度に低下する。このことは、そのようなストランドジャケットを備えた光学的な伝送エレメントを有する光学的なケーブルの取扱いをかなり簡単化する。
【0019】
有利には、光学的な伝送エレメントのストランドジャケットのマトリックス材料が、少なくとも110℃の融点を有する熱可塑性のポリマーであり、マトリックス材料内に埋設される充填材が鉱物である。
【0020】
マトリックス材料として、110℃を超える融点を有する熱可塑性のポリマーを選択することにより、光学的な伝送エレメントの、融点が85℃よりも明らかに高いストランドジャケットが得られる。それゆえ、光学的なケーブルを製作するために光学的な伝送エレメントを再加工する際に、85℃を超える温度にストランドジャケットを加熱するプロセスステップも使用されることができる。充填材として鉱物を選択することにより、充填材も85℃を超える温度に耐えることが保証されている。さらに、鉱物の下に、ストランドジャケットの破断伸びを減じるにすぎないパッシブな充填材(passiver Fuellstoff)と、ストランドジャケットに付加的な有利な特性を付与するアクティブな充填材(akitiver Fuellstoff)とが知られている。例えば、適当なアクティブな充填材は、脱水によりストランドジャケットの難燃性を生ぜしめるか、または吸水により光学的なケーブルの長手方向での水の拡散を阻止することができる。
【0021】
有利には、光学的な伝送エレメントのストランドジャケットにおける充填材の質量割合が、60%〜70%である。
【0022】
光学的な伝送エレメントのストランドジャケットのマトリックス材料が、十分に高い融点または軟化点の他に、過度に高い硬さを有しているとき、ストランドジャケットの破断伸びの必要な低下は、充填材およびマトリックス材料の総質量における充填材の質量割合の上昇により生ぜしめられることができる。
【0023】
有利には、光学的な伝送エレメントのストランドジャケットのマトリックス材料が、ポリオレフィンを有している。
【0024】
光学的な伝送エレメントのストランドジャケットのマトリックス材料はポリエチレン、例えば「低密度ポリエチレン(LDPE=Low Density Polyethylene)」、「中密度ポリエチレン(MDPE=Medium Density Polyethylene)」または「高密度ポリエチレン(HDPE=High Density Polyethylene)」を有していることもできる。
【0025】
特に、光学的な伝送エレメントのストランドジャケットのマトリックス材料は、ポリプロピレンを有していることができる。
【0026】
有利には、光学的な伝送エレメントのストランドジャケットのマトリックス材料が、エラストマーまたはエラストマーのコポリマーを有している。
【0027】
特に、光学的な伝送エレメントのストランドジャケットの充填材は、チョークを有していることができる。
【0028】
一般に、充填材として、85℃を超える融点を有するマトリックス材料内に埋設されるチョークは、ストランドジャケットの破断伸びだけを減じる。チョークはパッシブな充填材である。
【0029】
有利には、光学的な伝送エレメントのストランドジャケットの充填材が、水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムを有している。
【0030】
一般に、充填材として、85℃を超える融点を有するマトリックス材料内に添加される金属水酸化物は、ストランドジャケットの難燃性を生ぜしめる。金属水酸化物はアクティブな充填材である。金属水酸化物が充填されているマトリックス材料の難燃性は、金属水酸化物が酸化時に水を脱離することに基因し得る。
【0031】
アクティブな充填材は膨潤可能な粉末を有していることもできる(SAP=super absorbent polymer:高吸水性ポリマー)。膨潤可能な粉末は、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸の塩、例えばナトリウムポリアクリレートを有していることができる。
【0032】
有利には、光学的なケーブルのケーブルシースが、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリアミドを有している。
【0033】
これらの材料のうちの1つを有するケーブルシースを備えた光学的なケーブルを製作するために光学的な伝送エレメントを再加工する際に、一般に、その経過中に光学的な伝送エレメントのストランドジャケットが85℃を超える温度に達するプロセスステップが生じる。それゆえ、そのようなケーブルシースを備えた光学的なケーブルは、この温度に耐えるストランドジャケットを備えた光学的な伝送エレメントを有しているべきである。
【0034】
本発明の別の課題は、光学的な伝送エレメントと、別の光学的な伝送エレメント、ケーブルシースまたは光導波路との接着を回避する、光学的なケーブルを製作する方法を提供することである。
【0035】
本発明により、上記課題は、特許請求項9の特徴部に記載した特徴を備えた、光学的なケーブルを製作する方法により解決される。
【0036】
光学的なケーブルを製作する本発明による方法は、少なくとも2つの光学的な伝送エレメントを形成する工程と、ストランドジャケットを少なくとも85℃の温度に加熱することを含む、少なくとも2つの光学的な伝送エレメントの周囲にケーブルシースを形成する後続の工程とを有している。その際、2つの光学的な伝送エレメントのうちの少なくとも1つの伝送エレメントの形成は、少なくとも1つの光導波路を準備するステップと、85℃を超える融点を有するマトリックスポリマーおよび充填材を有し、充填材およびマトリックスポリマーの総質量における充填材の質量割合が少なくとも30%である混合物を準備する後続のステップと、ストランドジャケットを充填材およびマトリックスポリマーから成る混合物から押出成形することにより、少なくとも1つの光導波路の周囲にストランドジャケットを形成するさらに後続のステップとにより実施される。
【0037】
光学的なケーブルを製作する本発明による方法により、高い融点および低い破断伸びを有するストランドジャケットを備えた光学的な伝送エレメントが形成される。それゆえ、光学的なケーブルを形成するために光学的な伝送エレメントを再加工する際に、85℃を超える温度にストランドジャケットを加熱しても、光学的な伝送エレメントと、別の光学的な伝送エレメント、ケーブルシースまたは光導波路との接着は発生し得ない。
【0038】
有利には、マトリックス材料を準備するステップが、熱可塑性のポリマーを準備するステップを有し、充填材を準備するステップが、鉱物を準備するステップを有している。
【0039】
有利には、ケーブルシースを形成するステップが、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリアミドを押出成形するステップを有している。
【0040】
図面は本発明の一実施例による光学的なケーブルを示す。
【0041】
図示の光学的なケーブル1は1つのケーブルシース11と複数の光学的な伝送エレメント101,102とを有している。ケーブルシース11はポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)またはポリアミド(PA)を有していることができる。光学的な伝送エレメント101,102はケーブルシース11内に配置されている。光学的なケーブル1は円形の横断面を有している。光学的なケーブル1の、ある特定の長さを有する区分内には、光学的な伝送エレメント101,102の、若干大きな長さを有する区分が配置されている。光学的なケーブル1の区分内での光学的な伝送エレメント101,102のこの過剰長さにより、光学的なケーブル1の曲げまたは捻り時に、過剰な機械的な応力が光学的な伝送エレメント101,102内に発生せずに済む。例えば、光学的な伝送エレメント101,102の過剰長さは、ケーブルシース11の収縮または中心エレメント、例えば膨潤ヤーン(Quellgarn)12への巻付けにより生ぜしめられることができる。
【0042】
光学的なケーブル1は、12本の光学的な伝送エレメント、例えば光学的な伝送エレメント101,102を有していることができる。12本の光学的な伝送エレメントは、相応の数の区別可能な色により色分けされていることができる。例えば、伝送エレメント101のストランドジャケット1011は、12色の区別可能な色のうちの1色を有していることができる。
【0043】
光学的な伝送エレメント101はストランドジャケット1011と複数の光導波路10101,10102とを有している。ストランドジャケットはマトリックスポリマーと、マトリックスポリマー内に埋設されている充填材とを有している。マトリックスポリマーは、85℃を超える融点または軟化点を有している。ストランドジャケットは有利には、少なくとも110℃、すなわち110℃であるかまたは110℃を超える融点を有する熱可塑性のポリマーを有している。ストランドジャケットはポリオレフィン、特にポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)を有していることができる。特に、マトリックスポリマーは、「低密度ポリエチレン(LDPE)」、「中密度ポリエチレン(MDPE)」または「高密度ポリエチレン(HDPE)」を有していることができる。ストランドジャケットは、エラストマーまたはエラストマーのコポリマーを有していてもよい。マトリックスポリマー内に埋設されている充填材により、ストランドジャケットの破断伸びおよび引張強さが減じられる。ストランドジャケットの総質量における充填材の質量割合は、少なくとも30%、すなわち30%であるか、または30%を超える。有利には、ストランドジャケットにおける充填材の質量割合が、60%〜70%である。充填材は有利には鉱物を有している。例えば、充填材はチョークを有していることができる。充填材は金属水酸化物、例えば水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムを有しているか、または膨潤可能な材料、例えばポリアクリル酸またはポリアクリル酸の塩、例えばナトリウムポリアクリレートを有していることもできる。
【0044】
光導波路10101,10102はストランドジャケット1011内に配置されている。図示の光学的な伝送エレメント101は円形の横断面を有している。光学的な伝送エレメント101の、ある特定の長さを有する区分内には、光導波路10101,10102の、若干大きな長さを有する区分が配置されている。光学的な伝送エレメント101の区分内での光導波路10101,10102のこの過剰長さにより、光学的なケーブル1の曲げまたは捻り時に、過剰な引張応力が光導波路10101,10102内に発生せずに済む。例えば、光導波路10101,10102は螺旋の形で区分の長手方向軸線の周りに配置されていることができる。
【0045】
光学的な伝送エレメント101は、12本の光導波路、例えば光導波路10101,10102を有していることができる。12本の光導波路は、相応の数の区別可能な色により色分けされていることができる。例えば、光導波路はガラス繊維と、ガラス繊維を包囲する繊維被覆(コーティング)とを有していることができる。この場合、光導波路の繊維被覆は、12色の区別可能な色のうちの1色を有していることができる。
【0046】
光学的なケーブル1の曲げまたは捻り時に、光学的な伝送エレメント101,102はケーブルシース11内でならびに光導波路10101,10102はストランドジャケット1011内で、機械的な応力が最小化されるように運動する。そのためには、光導波路10101,10102が光学的な伝送エレメント101の長手方向で互いに相対的にかつストランドジャケット1011に対して相対的に軽快に摺動可能であることが必要である。さらには、光学的な伝送エレメント101,102がケーブル1の長手方向に関して互いに相対的にかつケーブルシース11に対して相対的に摺動可能であることが必要である。
【0047】
本発明により、光学的な伝送エレメント101のストランドジャケット1011は、高い融点または軟化点ならびに低い破断伸びを有している。それにより、ストランドジャケット1011と、光学的な伝送エレメント102、ケーブルシース11または膨潤ヤーン12との接着は阻止される。さらに、光学的な伝送エレメント101のストランドジャケット1011と、光導波路10101,10102との接着は阻止される。それにより、光学的な伝送エレメント内での光導波路の最適な可動性および光学的なケーブル内での光学的な伝送エレメントの最適な可動性は維持されたままである。機械的な応力、特に光学的な伝送エレメント内の光導波路への引張応力および圧縮応力と、光学的なケーブル内の光学的な伝送エレメントへの引張応力および圧縮応力とは、それにより効果的に最小化されることができる。
【0048】
本発明による光学的な伝送エレメント101のストランドジャケット1011は、低い破断伸びを有しているので、光導波路を露出させるために、特別な工具なしに除去されることができる。
【0049】
ストランドジャケット1011の、低い破断伸びにつながる低い引張強さは、その際欠点とはならない。それというのも、ストランドジャケット1011の高い融点または軟化点は、ストランドジャケット1011と、光学的なケーブル1内の隣接する表面との接着を阻止し、それにより、光導波路10101,10102相互の高い可動性と、光導波路の、ストランドジャケット1011に対して相対的な高い可動性と、光学的な伝送エレメント101,102相互の高い可動性と、伝送エレメントの、ケーブルシース11に対して相対的な高い可動性とを保証するからである。
【0050】
光学的なケーブル1は、まず複数の光学的な伝送エレメント、例えば光学的な伝送エレメント101,102が形成され、その後複数の光学的な伝送エレメントが1本の光学的なケーブルに再加工されることにより製作される。その都度1つの光学的な伝送エレメント、例えば光学的な伝送エレメント101は、複数の光導波路、例えば光導波路10101,10102が、ストランドジャケット1011を複数の光導波路の周囲に形成する押出機ヘッドに供給されることにより形成される。ストランドジャケット1011は例えば、マトリックス材料と充填材とから成る混合物が準備され、ストランドジャケット1011がこの混合物から押出成形されることにより形成される。マトリックス材料はその際、85℃を超える融点を有しており、混合物の総質量における充填材の質量割合は、少なくとも30%である。マトリックス材料は例えば、少なくとも110℃の融点を有する熱可塑性のポリマーである。マトリックスポリマーは特にポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン、特にLDPE、MDPEまたはHDPEであるか、またはエラストマーまたはエラストマーのコポリマーであることができる。
【0051】
複数の光学的な伝送エレメント、例えば光学的な伝送エレメント101,102は、ケーブルシース11が複数の光学的な伝送エレメントの周囲に形成されることにより、1本の光学的なケーブル1に再加工される。その際、ケーブルシース11は、複数の光学的な伝送エレメントが、側圧もしくは横圧に対して安定な1つの保護ジャケットを複数の光学的な伝送エレメントの周囲に押出成形する押出機ヘッドに供給されることにより形成される。その際、ストランドジャケット1011は、85℃を超える温度に加熱されることができる。
【0052】
挙げた材料から、ストランドジャケット1011と、光学的なケーブル1内の隣接する表面との接着を回避するために、光学的なケーブル1の製作時に達する最高温度を十分に凌駕する融点または軟化点を有するマトリックスポリマーが選択されることができる。さらに、マトリックスポリマーに、ストランドジャケットの質量における質量割合が少なくとも30%である充填材を充填することにより、特別な工具なしに光学的な伝送エレメント101からストランドジャケット1011を除去することを許可するために、十分に低い、ストランドジャケット1011の破断伸びが生ぜしめられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例による光学的なケーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 光学的なケーブル
11 ケーブルシース
12 膨潤ヤーン
101,102 光学的な伝送エレメント
1011 ストランドジャケット
10101,10102 光導波路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的なケーブル(1)において、該ケーブル(1)が、
ケーブルシース(11)と、
該ケーブルシース(11)内に配置されている少なくとも2つの光学的な伝送エレメント(101,102)とを有しており、該伝送エレメントのうちの少なくとも1つの伝送エレメント(101)が、
少なくとも1つの光導波路(10101,10102)と、
少なくとも1つの光導波路(10101,10102)を包囲するストランドジャケット(1011)とを有しており、該ストランドジャケット(1011)がマトリックス材料と、該マトリックス材料内に埋設される充填材とを有しており、該マトリックス材料の融点が85℃を超えており、ストランドジャケット(1011)における前記充填材の質量割合が少なくとも30%である
ことを特徴とする、光学的なケーブル。
【請求項2】
少なくとも2つの光学的な伝送エレメント(101,102)のうちの少なくとも1つの伝送エレメント(101)のストランドジャケット(1011)のマトリックス材料が、少なくとも110℃の融点を有する熱可塑性のポリマーであり、該マトリックス材料内に埋設される充填材が鉱物である、請求項1記載の光学的なケーブル。
【請求項3】
少なくとも2つの光学的な伝送エレメント(101,102)のうちの少なくとも1つの伝送エレメント(101)のストランドジャケット(1011)における充填材の質量割合が60%〜70%である、請求項1または2記載の光学的なケーブル。
【請求項4】
少なくとも2つの光学的な伝送エレメント(101,102)のうちの1つの伝送エレメント(101)のストランドジャケット(1011)のマトリックス材料が、少なくとも110℃の融点を有するポリオレフィンを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の光学的なケーブル。
【請求項5】
少なくとも2つの光学的な伝送エレメント(101,102)のうちの1つの伝送エレメント(101)のストランドジャケット(1011)のマトリックス材料が、少なくとも110℃の融点を有するポリエチレン、ポリプロピレン、エラストマーまたはエラストマーのコポリマーを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の光学的なケーブル。
【請求項6】
少なくとも2つの光学的な伝送エレメント(101,102)のうちの1つの伝送エレメント(101)のストランドジャケット(1011)のマトリックス材料が、少なくとも110℃の融点を有する低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の光学的なケーブル。
【請求項7】
少なくとも2つの光学的な伝送エレメント(101,102)のうちの1つの伝送エレメント(101)のストランドジャケット(1011)の充填材が、チョーク、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸の塩を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の光学的なケーブル。
【請求項8】
ケーブルシース(11)が、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリアミドを有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の光学的なケーブル。
【請求項9】
光学的なケーブル(1)を製作する方法において、
少なくとも2つの光学的な伝送エレメント(101,102)を形成する工程を設け、該工程にて、少なくとも2つの光学的な伝送エレメント(101,102)のうちの少なくとも1つの伝送エレメント(101)の形成が、以下のステップ、すなわち:
少なくとも1つの光導波路(10101,10102)を準備し、
マトリックス材料と充填材とから成る混合物を準備し、ただし、マトリックス材料が85℃を超える融点を有し、前記混合物の総質量における充填材の質量割合が少なくとも30%であるようにし、
前記混合物からストランドジャケット(1011)を押出成形することにより少なくとも1つの光導波路(10101,10102)を包囲するストランドジャケット(1011)を形成する
というステップを有しており、
引き続いて、少なくとも2つの光学的な伝送エレメント(101,102)を包囲するケーブルシース(11)を形成する工程を設け、該工程が、少なくとも85℃の温度にストランドジャケット(1011)を加熱することを含む
ことを特徴とする、光学的なケーブルを製作する方法。
【請求項10】
混合物を準備するステップが、少なくとも110℃の融点を有する熱可塑性のポリマーと、混合物の総質量における質量割合が60%〜70%である鉱物とから成る混合物を準備するステップを有している、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ケーブルシース(11)の形成が、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリアミドの押出成形を有している、請求項9または10記載の方法。

【公表番号】特表2008−506996(P2008−506996A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521789(P2007−521789)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001282
【国際公開番号】WO2006/010359
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(502057980)シーシーエス テクノロジー インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】CCS Technology, Inc.
【住所又は居所原語表記】103 Foulk Road, Wilmington, Delaware 19803, USA
【Fターム(参考)】