説明

光学的に純粋な(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの合成

本発明は、タムスロシン合成の中間体である、光学的に純粋な(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの新規な調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D−アラニンおよびメトキシベンゼンから出発し、フリーデル−クラフツ反応を経由する、(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの新規な合成方法に関する。より詳細には、本発明は、タムスロシンの新規な調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タムスロシンは、α−アドレナリン作動性受容体の拮抗薬の群からの医薬活性物質であり、前立腺の機能障害の処置に用いられる。タムスロシンは化学的に(R)−5−(2−((2−(2−エトキシフェノキシ)エチル)アミノ)プロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミド(式1)であり、ベンゼンスルホンアミド類およびスルファモイルフェネチルアミン類に属する。
【0003】
【化1】

タムスロシンは、純粋な(R)−光学異性体の塩酸塩の形態において市販されており、良性前立腺過形成の処置に用いられる。本発明によれば用語「タムスロシン」は式(1)で表される化合物の塩酸塩の形態を意味し、一方、塩の形態でない化合物はタムスロシン塩基と命名されている。
【0004】
技術的にできるだけ簡単および経済的な方法において最終的な医薬製剤に組み込むのに適した品質を有する薬学的に活性な物質を調製することに対する一定の要求がある。タムスロシンは不斉分子であり、この(R)−光学異性体は治療上活性な物質として用いられる。望ましくない(S)−異性体の割合が最小である光学的に純粋な化合物を提供することは、光学異性体が従来の化学的方法および分離により分離することができないため、比較的解決が困難な重大な技術的問題である。
【0005】
タムスロシンは実施例においてラセミ化合物(キラルマトリックスのカラムクロマトグラフィーによりさらに精製し、光学異性体を得る)の調製を最初に開示する基本特許EP34432に従って調製することができる。
【0006】
特許出願、国際公開第03/37850号および国際公開第03/37851号は、高価なカンファー−5−スルホン酸を用いて精製する、結晶ラセミ体タムスロシン塩基の合成を経由するタムスロシンの別の調製を開示する。国際公開第03/37850号において、最終のラセミ体タムスロシン塩基のかかる分離が明確に報告されているが、最後の工程においてキラル分離が完全でなく、より多くの量の反対の光学異性体が存在する生成物が得られるという危険性が常に存在する。
【0007】
CZ290.708において、酸を用いることによるラセミ体タムスロシンの分離方法が開示されている。
【0008】
このような分離を回避するため、光学的に純粋な(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミド(2)を調製すべきである。
【0009】
【化2】

(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミド(2)は当該技術分野において、タムスロシンの合成における重要な中間体として知られている。(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミド(2)の合成方法は既に先行技術において報告されている。例えば、米国特許第5447958号は化合物(2)の合成を開示している。出発物質は(−)−2−(p−メトキシフェニル)−1−メチルエチルアミンであり、それによるこのものの合成は開示されていない。
【0010】
EP380144において、R(+)α−メチルベンジルアミンを用いた5−アセトニル−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの還元的アミノ化により開始する化合物(2)の合成は、その後水素化される。5−アセトニル−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの合成は開示されていない。
【0011】
他の方法の中でもCA1282077において、化合物(2)を(R)(−)−2−(p−メトキシフェニル)−1−メチルエチルアミンから開始する合成が後者の調製方法を示すことなく開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドをより直接的に調製するための代替の方法であって、中間体の光学分割を必要とせず、この製造物の工業的調製が簡単であり、それにより製造コストが低減される方法を開発するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、D−アラニンおよびメトキシベンゼンから出発し、フリーデル−クラフツ反応を経由する、(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの新規および直接的な調製方法を提供する。
【0014】
本発明による方法は、上記の方法に関するいくつかの不利益:複雑な合成、高価な試薬および出発物質、中間体の光学分割および/または方法の最終工程後のタムスロシンの光学異性体の分離を回避する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
フリーデル−クラフツ反応は従来技術において知られている。例えば、Nordlander等はキラルN−トリフルオロアセチル置換アミノ酸誘導体がベンゼンおよびメトキシベンゼンによりフリーデル−クラフツ反応を受けることを記載している(J.Org.Chem.,50(1985),3481)。さらに、芳香族とN−保護アラニルクロリドとのフリーデル−クラフツ反応が、ホモキラルカテノン(cathinone)の調製方法として報告された(M.Osorio−Olivares等、Tetrahedron:Asymmetry,14(2003),1473)。しかし、D−アラニンおよびメトキシベンゼンのフリーデル−クラフツ反応は従来技術において開示されていない。
【0016】
驚くべきことに最少の工程数を用い、不斉中心のラセミ化が生じない反応を用いることにより、D−アラニンおよびメトキシベンゼンから(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドを合成することが可能であることが見出された。この方法において、(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドを任意の薬学上の使用のためのタムスロシンを調製するのに適した光学的および化学的純度で調製することができる。
【0017】
本発明の第1の実施態様は、D−アラニンおよびメトキシベンゼンから出発し、フリーデル−クラフツ反応を経由する、(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの調製方法に関する。
【0018】
好ましくは、本発明は以下の工程を含む(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの調製方法に関する:
a)D−アラニンのアミノ基を保護する工程、
b)得られたN−保護D−アラニンとメトキシベンゼンを反応させ、対応する4’−メトキシ−2−アミノ保護プロピオフェノンを形成する工程、
c)形成された4’−メトキシ−2−アミノ保護プロピオフェノンのオキソ基を完全に還元して、対応するアミノ保護1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−アミンを形成する工程、
d)得られたアミノ保護1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−アミンをクロロスルホン化し、次いで形成されたクロロスルホニル基をアンモノリシス(ammonolysis)する工程、および
e)アミノ基を脱保護する工程。
【0019】
D−アラニンは中程度の価格および高い光学的純度で、商業的に大量に入手可能な、簡単な原材料である。
【0020】
本発明による方法は、D−アラニンおよびメトキシベンゼンのように簡単な原材料を用い、ラセミ化することなく(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミド(2)を合成することができる。したがって、本発明による方法は直接的な方法であり、不完全であることにより過度に低い鏡像体過剰率(=e.e.)を有する生成物および光学的に不純な生成物をそれぞれもたらす危険性が存在する、エナンチオ選択的合成および/または光学異性体の分離を確実にするための特別な条件を必要としない。したがって、不斉炭素原子上でラセミ化が起こらず、薬学的に活性な物質タムスロシンの合成に用いることのできる光学的に純粋な生成物を生成する反応を選択することが必要である。
【0021】
工程(a)に従って、D−アラニンはペプチド化学においてよく知られ、および一般に用いられ、該方法の後続する工程(スキーム1)において、オキサゾリジノンへの転化を経由するD−アラニンの不斉中心のラセミ化を防止する任意のアミノ保護基(X)により保護される。例えば、適切なアミノ保護基は、トリフルオロアセチル、アルキルオキシカルボニル(t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメチルオキシカルボニル等)、フタルイミドからなる群から選択される。好ましいアミノ保護基はトリフルオロアセチル基である。
【0022】
次にアミノ保護D−アラニンを酸活性化剤を用いて酸活性化アミノ保護D−アラニンへ転化する。上記酸活性化基は酸塩化物、無水物またはペプチド合成においてよく知られている他のどのような酸活性化基であってもよい。例えば、適切な酸活性化基は酸塩化物または無水物からなる群から選択され、好ましくは酸塩化物である。(R)−(N−トリフルオロアセチル)プロピオニルクロリドを調製するためのより好ましい酸活性化剤は塩化オキサリルおよび塩化チオニルである。最も好ましくは塩化チオニルである。
【0023】
酸活性化アミノ保護D−アラニンは単離しても、そのまま次の反応工程(b)に用いてもよく、または単離することなく溶液中でさらに反応工程(b)に移行させてもよい。塩化メチレンは酸活性化アミノ保護D−アラニンの形成およびフリーデル−クラフツ反応の両方に適した溶媒であり、したがって生成した酸活性化アミノ保護D−アラニンを次の工程(フリーデル−クラフツ反応)に直接加えることができる。
【0024】
アニソールとしても知られているメトキシベンゼンは商業的に入手可能である。メトキシベンゼンはフリーデル−クラフツタイプの親電子置換反応のために十分に活性化され、酸活性化アミノ保護D−アラニンとの滑らかな反応を可能にする。好ましくは工程(b)によるフリーデル−クラフツ反応中にルイス酸を加える。適切なルイス酸は、アルミニウム、鉄(III)、スズ(IV)、ビスマス、ホウ素化合物および他の遷移金属またはランタニド元素の塩からなる群から選択される。
【0025】
アニソールと酸活性化アミノ保護D−アラニンの間とのフリーデル−クラフツ反応において、親電子置換反応のための活性化に関し、置換反応はパラ−(メトキシ基から見て4位)またはオルト−(メトキシ基から見て2位)に起こり得る。我々はこの反応においてパラ位がより好ましいことを見出した。オルト−およびパラ−置換生成物の間の比は、反応条件、溶媒、およびとりわけルイス酸の種類に依存する。置換生成物の全体量におけるオルト−置換生成物の割合は、ルイス酸としてAlCl、FeCl、TiClまたはビスマストリフレート(triphlate)を用い、共リガンド(co−ligand)であるニトロメタンが添加または無添加であるとき15から30%の間である。反応は約0から約45℃、好ましくは約20から25℃の温度で行う。最適収量は塩化アルミニウムを使用して室温で得られたので、最適という用語は転化の程度、パラ置換生成物の割合および不斉炭素原子のラセミ化がないことが考慮されることを意味する。
【0026】
フリーデル−クラフツ反応から得られたプロピオフェノン中間体のオキソ基は、メチレン基へ完全に還元する手段により、工程(c)に従ってメチレン基に還元することができる。好ましい還元剤はポリアルキルヒドロキシシロキサンまたはアルキルシランとしての水素化ケイ素である。好ましくはトリエチルシランを用いる。N−保護(R)−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−アミンは工程(c)から得られる。
【0027】
工程(d)に従って、N−保護(R)−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−アミンはクロロスルホン酸によりクロロスルホン化され、親電子置換反応はメトキシ基から見て主に2位に向けられる。工程(d)によるクロロスルホン化は試薬それ自体の中で行ってもよいし、希釈してもよい。塩化チオニルは上記反応に好ましく用いることができる。得られた塩化スルホニルは次にアンモニア、好ましくはアンモニア水溶液を用いてスルホンアミドに転化する。
【0028】
所望する化合物、(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドは、工程(e)によるアミノ保護基の脱保護により得る。この脱保護は当該技術分野においてよく知られている任意の従来技術、例えばT.W.GreeneおよびP.G.Wuts、“Protective groups in organic synthesis”、第2版により行うことができる。例えば、トリフルオロアセチル基の除去は、酸性媒体中、例えば希塩酸中において、または塩基性媒体中、例えばアルコール、好ましくはメタノール、より好ましくはメタノール水溶液中の炭酸カリウムによる加水分解のいずれによっても行うことができる。
【0029】
本発明に従って得られた(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドは、キラルカラムを備えたHPLCを用いることにより検出される望ましくない(S)−異性体が0.3%を超えない、タムスロシン製造のための適切な原材料である。知られている方法を用いて、タムスロシン塩基を任意の医薬使用に適したタムスロシン塩酸塩に転化する。
【0030】
(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの合成に優れた結果を与える本発明による好ましい方法をスキーム2に示す。
【0031】
具体的な実施態様において、本発明による方法はタムスロシンが(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドのアミノ基のo−エトキシフェノキシエチル化後に得られる追加の工程を含む。この後の工程は当該技術分野、例えばEP380144または米国特許第5447958号において開示されている。タムスロシン塩酸塩は続いてタムスロシンをエタノール性HClで処理することにより得ることができる。
【0032】
本発明はまた既に開示された調製方法に従って調製された(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドに関する。
【0033】
本発明はまた既に開示された調製方法に従って得られた(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドから調製されたタムスロシンまたはタムスロシン塩酸塩に関する。
【0034】
本発明のさらに別の目的は、タムスロシンの合成のための(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの使用に関し、(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドが先に開示した調製方法に従って調製されることを特徴とする。
【0035】
本発明の別の目的は以下の新規な中間体の誘導体に関する:
(R)−1−(4−メトキシ−3−スルファモイルフェニル)−2−トリフルオロアセチルアミノプロパン、
(R)−1−(4−メトキシ−3−スルファモイルフェニル)−2−トリフルオロアセチルアミノ−1−プロパノン。
【0036】
本発明の別の目的はタムスロシンまたはタムスロシン塩酸塩を含有する医薬製剤に関し、ここでタムスロシンは先に開示した調製方法に従って調製された(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドから調製される。
【0037】
(実施例)
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されものではなく、本発明の範囲を外れることなく種々の変更および修正を行うことができると理解すべきである。
【実施例1】
【0038】
N−(トリフルオロアセチル)−D−アラニンの合成
無水メタノール(100ml)中のD−アラニン(20.00g;0.224mol)とトリエチルアミン(31.3ml;0.224mol)の混合物に、トリフルオロ酢酸エチル(33.4ml;0.280mol)を加え、室温で撹拌し、混合物を均質化する(約1日)。溶液をロータベーパー(rotavapor)で濃縮し(35℃;16mmHg(約2100Pa))、次いでTHF/水(1:1、140ml)混合液中に溶解する。酸性イオン交換体Dowex 50W−X8(100g)を加え、10分間撹拌し、ろ過およびロータベーパーで再度濃縮する(35℃;16mmHg)。残渣を昇華させる(80℃;0.05mmHg)。無色結晶の形態の純粋な生成物を得る(33.50g;80.8%)。
【実施例2】
【0039】
(R)−N−(トリフルオロアセチル)−α−アミノ−4’−メトキシプロピオフェノンの合成
CHCl(100ml)中のN−(トリフルオロアセチル)−D−アラニン(10.00g;0.054mol)とピリジン(100μl)の混合物に、塩化チオニル(4.1ml;0.057mol)を室温で滴下して加え、次いで45℃で7時間撹拌する。アニソール(7.0ml;0.065mol)を加え、溶液を氷浴上で冷却する。AlCl(7.92g;0.059mol)を少しずつ加え、室温で36時間撹拌する。冷却した1MのHCl(150ml)および氷(100ml)を加えることにより反応を停止させる。有機相を1MのHCl(2×100ml)、水(2×100ml)、飽和NaHCO溶液(2×100ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮する。ヘプタン(35ml)を撹拌しながら残渣に加える。生成したパラ−生成物をろ別し、ヘプタン(2×25ml)で洗浄する。白色針状結晶を得る;4.80g(収率32.3%);>99%e.e.;
【0040】
【化3】

ろ液から結晶の追加部分を形成し、これをろ別し、石油エーテル(2×15ml)で洗浄する:1.4g;オルト:パラ=1:1。
【実施例3】
【0041】
(R)−N−(トリフルオロアセチル)−α−アミノ−4’−メトキシプロピオフェノンの合成
CHCl(20ml)中のD−N−(トリフルオロアセチル)アラニン(1.00g;5.4mmol)とピリジン(1滴)の冷却(0℃)した混合物に、塩化オキサリル(0.50ml;5.7mmol)を滴下して加え、次いで室温で2時間撹拌する。ニトロメタン(330mg;5.4mmol)およびアニソール(0.7ml;6.5mmol)を加え、溶液を氷浴上で冷却する。AlCl(0.79g;5.9mol)を少しずつ加え、室温で36時間撹拌する。冷却した1MのHCl(15ml)および氷(10ml)を加えることにより反応を停止させる。有機相を1MのHCl(2×10ml)、水(2×10ml)、飽和NaHCO溶液(2×10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させる。石油エーテル(2.5ml)を撹拌しながら残渣に加える。生成したパラ−生成物をろ別し、石油エーテル(2×2.5ml)で洗浄する。白色針状結晶を得る:330mg、>99%e.e.
【実施例4】
【0042】
(R)−N−(トリフルオロアセチル)−α−アミノ−4’−メトキシプロピオフェノンの合成
CHCl(10ml)中のD−N−(トリフルオロアセチル)アラニン(1.0g;5.4mmol)とピリジン(5.0μl)の混合物に、塩化チオニル(0.41ml;5.7mmol)を室温で滴下して加え、45℃で5時間撹拌する。ニトロメタン(330mg;5.4mmol)およびアニソール(0.7ml;6.5mmol)を加え、溶液を氷浴上で冷却する。FeCl(0.96g;5.9mol)を少しずつ加え、室温で24時間撹拌する。冷却した1MのHCl(15ml)および氷(10ml)を加えることにより反応を停止させる。有機相を1MのHCl(2×10ml)、水(2×10ml)、飽和NaHCO溶液(2×10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させる。石油エーテル(2.5ml)を撹拌しながら残渣に加える。生成したパラ−生成物をろ別し、石油エーテル(2×2.5ml)で洗浄する。白色針状結晶を得る:405mg、>99%e.e.
【実施例5】
【0043】
(R)−N−(トリフルオロアセチル)−α−アミノ−4’−メトキシプロピオフェノンの合成
CHCl(100ml)中のD−N−(トリフルオロアセチル)アラニン(10.0g;0.054mmol)とピリジン(50μl)の混合物に、塩化チオニル(4.1ml;0.057mol)を室温で滴下して加え、45℃で5時間撹拌する。アニソール(7.0ml;0.065mol)を加え、溶液を氷浴上で冷却する。TiCl(32.1g;0.135mol)を少しずつ加え、室温で36時間撹拌する。1Mの冷HCl(150ml)および氷(100ml)を加えることにより反応を停止させる。有機相を1MのHCl(2×100ml)、水(2×100ml)、飽和NaHCO溶液(2×100ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させる。石油エーテル(25ml)を撹拌しながら残渣に加える。生成したパラ−生成物をろ別し、石油エーテル(2×25ml)で洗浄する。白色針状結晶を得る:0.6g、>99%e.e.
【実施例6】
【0044】
(R)−2−(N−(トリフルオロアセチル)アミノ)−1−(4’−メトキシフェニル)プロパンの合成
CFCOH(21ml;273mmol)中の(R)−2−N−(トリフルオロアセチル)−α−アミノ−4’−メトキシプロピオフェノン(7.5g;27.2mmol)の混合物に、トリエチルシラン(13.5ml;81.8mmol)を滴下して加え、室温で1日撹拌する。次に混合物を氷(40ml)上に注ぎ、4N NaOHで中和する。生成物をEtOAc(3×20ml)で抽出し、MgSOで乾燥、ろ過し、蒸発させる。残渣をヘプタン(3×30ml)で洗浄し、乾燥する。白色無色結晶を得る。6.78g;>99%e.e.;
【0045】
【化4】

【実施例7】
【0046】
(R)−2−(N−(トリフルオロアセチル)アミノ)−1−(4’−メトキシ−3’−スルファモイル)フェニルプロパンの合成
SOCl(4.2ml;57.4mmol)中の(R)−2−(N−(トリフルオロアセチル)アミノ)−1−(4’−メトキシ)フェニルプロパン(5.00g;19.1mmol)の冷却した(−10℃)溶液に、ClSOH(2.5ml;38.2mmol)を滴下して加える。混合物を40℃まで徐々に加熱し、同温度で3時間撹拌する。赤褐色に着色した粘性混合物を得、室温に冷却し、冷却した(0℃)28%アンモニア水溶液(30ml)およびアセトン(15ml)に滴下して加える。添加が完全に終了した後、混合物を10分間撹拌し、次いでアセトンを蒸発させる。白色沈殿物の形態の生成物を得、ろ別、水(2×20ml)で洗浄し、乾燥しさらにi−PrO(40ml)で洗浄する:白色粉末;6.13g;収率94%。
【0047】
【化5】

【実施例8】
【0048】
(R)−2−アミノ−1−(4’−メトキシ−3’−スルファモイル)フェニルプロパンの合成
CO(13g;94mmol)および水(5ml)をMeOH(80ml)中のR−2−(N−(トリフルオロアセチル)アミノ)−1−(4’−メトキシ−3’−スルファモイル)フェニルプロパン(4.00g;11.75mmol)の溶液に加える。混合物を沸点で8時間加熱し、蒸発させる。水(20ml)を残渣に加え、一晩撹拌する。白色沈殿物の形態の生成物を得、ろ別、水(2×5ml)で洗浄し、乾燥し、わずかに着色した白色粉末を得る;2.65g;収率94%、H−NMRによる純度97+%。生成物をi−PrOH(45ml)から再結晶し、わずかに着色した白色粉末を得る;2.55g;収率89%、H−NMRによる純度>98%。
【0049】
【化6】

【実施例9】
【0050】
5−(2−(2−(2−エトキシフェノキシ)−エチルアミノ)−プロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミド塩酸塩(タムスロシン)の合成
(R)−2−(N−(トリフルオロアセチル)アミノ)−1−(4’−メトキシ−3’−スルファモイル)フェニルプロパン(10g)、2−(o−エトキシフェノキシ)エチルブロミド(19g)およびMeOH(170ml)を43時間還流させる。ロータベーパーにより60℃、真空下、MeOHを蒸発させる。残渣に170mlの水、130mlの酢酸エチル、ならびに冷却および撹拌している間に16gの50%NaOHを加える。2つの相が明瞭でない場合は、明瞭になるまでNaOHを加える。2つ相を分離した後、水相を2×100mlの酢酸エチルで抽出する。併せた抽出液を2×130mlの水で洗浄し、ロータベーパーにより60℃、真空下で蒸発させる。得られた粗製タムスロシン塩基はまだかなり過剰な2−(2−エトキシフェノキシ)エチルブロミドを含有する。100mlのEtOHに溶解し、冷却および撹拌している間7mlのエタノール性HCl(約300mgのHCl/ml)を加える。冷却(0℃)しながら4時間撹拌し、塩酸塩の形態で生成した粗製タムスロシンを遠心分離により取り除き、20mlの冷却したEtOHで洗浄し、40℃、真空下で乾燥し、7.0gの生成物を得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】D−アラニンのアミノ基を保護する工程概略図。
【図2】本発明による(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの合成工程概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
D−アラニンおよびメトキシベンゼンから出発し、フリーデル−クラフツ反応を経由することを特徴とする、(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの調製方法。
【請求項2】
a)D−アラニンのアミノ基を保護する工程、
b)得られたN−保護D−アラニンとメトキシベンゼンを反応させ、対応する4’−メトキシ−2−アミノ保護プロピオフェノンを形成する工程、
c)形成された4’−メトキシ−2−アミノ保護プロピオフェノンのオキソ基を完全に還元して、対応するアミノ保護1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−アミンを形成する工程、
d)得られたアミノ保護1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−アミンをクロロスルホン化し、次いで形成されたクロロスルホニル基をアンモノリシスする工程、および
e)アミノ基を脱保護する工程
を含む、請求項1に記載の(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの調製方法。
【請求項3】
工程(a)における前記保護をトリフルオロ酢酸エチルを用いて行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)においてルイス酸を添加する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ルイス酸がビスマス、チタン、鉄(III)またはアルミニウム塩である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ルイス酸が塩化鉄(III)である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記ルイス酸が塩化アルミニウムである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)を還元剤としてトリエチルシランを用いて行う、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)をクロロスルホン化剤としてクロロスルホン酸を用いて行う、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
クロロスルホニル基のアンモノリシスのための試薬がアンモニア水溶液である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
工程(e)における脱保護を炭酸カリウムを用いて行う、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
タムスロシンを(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンのアミノ基のo−エトキシフェノキシエチル化後に得る追加の工程を含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1から11に記載の(a)から(e)の工程の1つ以上を含む、タムスロシンまたは塩酸タムスロシンの調製方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに従って調製された(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミド。
【請求項15】
請求項1から11のいずれかに従って得られた(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドから調製された、タムスロシンまたは塩酸タムスロシン。
【請求項16】
(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドが請求項1から11のいずれかに従って調製されることを特徴とする、タムスロシンを合成するための(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの使用。
【請求項17】
(R)−1−(4−メトキシ−3−スルファモイルフェニル)−2−トリフルオロアセチルアミノプロパン。
【請求項18】
(R)−1−(4−メトキシ−3−スルファモイルフェニル)−2−トリフルオロアセチルアミノ−1−プロパノン。
【請求項19】
タムスロシンが請求項1から11のいずれかに従って調製された(R)−5−(2−アミノプロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミドから調製される、タムスロシンまたは塩酸タムスロシンを含有する医薬製剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−517796(P2007−517796A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546936(P2006−546936)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【国際出願番号】PCT/SI2004/000046
【国際公開番号】WO2005/063701
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】